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特許7424989METHANOMASSILIICOCCALES目の古細菌の単離及び純粋培養
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】METHANOMASSILIICOCCALES目の古細菌の単離及び純粋培養
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240123BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20240123BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20240123BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20240123BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/04
C12N15/09 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020547305
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018083212
(87)【国際公開番号】W WO2019106181
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】1761536
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 32684
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 32565
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506261567
【氏名又は名称】ルサッフル・エ・コンパニー
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
(73)【特許権者】
【識別番号】520188961
【氏名又は名称】ウニベルジテ クレルモン オーベルニュ
(73)【特許権者】
【識別番号】520188972
【氏名又は名称】アンスティテュ ドゥ ルシェルシェ プール ル デブロプマン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ワディ ベン ハニア
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ ブリュジェール
(72)【発明者】
【氏名】マリー-ロール ファルドー
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール オリビエ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02990954(FR,A1)
【文献】国際公開第2017/160711(WO,A1)
【文献】Journal of Bacteriology,2012年,194(24),6944-6945
【文献】Clinical Microbiology Reviews,2015年,28(1),208-236
【文献】International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,2012年,62,1902-1907
【文献】Medical Journal of Indonesia,1994年,3(2),85-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/36
C12Q 1/00-1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託された、純粋な単離されたメタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)Mx-05古細菌株。
【請求項2】
メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌の単離及び/又は純粋培養のための、エゲルテラ(Eggerthella)属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地の使用。
【請求項3】
前記培地が更に、アミノ酸を提供する1つ以上の化合物を含有する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記培地がコエンザイムMを含有する、請求項2又は3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記培地が、KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液, 2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3を含有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記エゲルテラ(Eggerthella)属細菌が、エゲルテラ・レンタ(Eggerthella lenta)又は2017年7月13日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32565で寄託されたエゲルテラ・sp.(Eggerthella sp.)Eg01-Mx05株から選択される、請求項2~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌を単離するプロセスであって、以下:
a)メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌を含有する生体試料を、嫌気条件下二水素H2を含む気体雰囲気中中温条件下で、
(i)KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液を含有するベース培地、
(ii)2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3、ビタミン混合物、
(iii)アミノ酸を提供する1つ以上の化合物、及び
(iv)メチルアミン又はメタノール、
を含有する培養培地中に播種する工程;
b)工程a)の培養培地を、アミノ酸を提供する化合物が欠乏し、ビタミンが添加された、同一の培養培地によって置き換える工程;
c)前記播種された試料中のメタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌の正の富化を検出する工程;及び
d)請求項2~6のいずれか1項に規定されたエゲルテラ(Eggerthella)属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物が添加された工程a)又はb)の培地を用いて、メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌のクローンが得られるまで、工程c)で得られた正の強化の連続液体希釈又はロールチューブ法を実施する工程;
を含む、プロセス。
【請求項8】
前記単離プロセスが、更に、工程c)と工程d)の間に、生体試料を含有する培養培地が濾過される工程c´)を含み、当該工程c´)で得られた濾過物が、その後工程d)で連続希釈を実施するのに用いられる、請求項7に記載の単離プロセス。
【請求項9】
前記メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌のクローンが得られたことの判定が、顕微鏡、メタン生産及びH2消費、PCR、qPCR又はシークエンシングによって実施される、請求項7又は8のいずれかに記載の単離プロセス。
【請求項10】
純粋な、又は微生物共同体中に含まれる、メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌を培養する方法であって、以下の工程:
a)メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌を含有する生体試料、又は純粋なメタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌のいずれかを、
(i)KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液、2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3を含有するベース培地、
(ii)アミノ酸を提供する1つ以上の化合物、
(iii)メチルアミン又はメタノール、及び
(iv)請求項2~6のいずれか1項に規定されたエゲルテラ(Eggerthella)属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物、
を含有する培養培地中に播種する工程;
b)工程a)で作製した播種物を嫌気条件下二水素H2を含む気体雰囲気中に置く工程;及び
c)2日以上、メタンを放出する指数増殖期に達するまで、中温条件下でインキュベーションする工程;
を含む、方法。
【請求項11】
前記培地がコエンザイムMを含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エゲルテラ(Eggerthella)属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物が、エゲルテラ(Eggerthella)属の細菌の細菌濾過物である、請求項2~6のいずれか1項に記載の使用、請求項7~9のいずれか1項に記載のプロセス、又は請求項10又は11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記エゲルテラ(Eggerthella)属の細菌の細菌濾過物が、以下の工程:
a)エゲルテラ(Eggerthella)属の細菌を培地中に播種する工程、ここで当該培地は、ビオトリプケース、酵母抽出物、ペプトン、アミノ酸、肉抽出物ヘミン、及び/又はビタミンK1又はK3、及び単糖類を含有する;
b)温度20~40℃で1日以上、前記細菌を含有する培地をインキュベーションする工程;
c)前記細菌を含有する培養培地を濾過する工程;及び
d)工程c)の後に得られる濾過物を回収する工程;
を含む方法によって調製される、請求項12に記載の使用、請求項12に記載のプロセス、又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記メタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌が、請求項1に規定されるメタノメチロフィルス・アルブス(Methanomethylophilus alvus)古細菌である、請求項2~6及び12~13のいずれか1項に記載の使用、請求項7~9、及び12~13のいずれか1項に記載のプロセス、又は請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を単離するプロセス、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を単離及び/又は培養するための、Eggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地の使用、及び純粋な単離された古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05に関する。また、本発明は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の培養方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
古細菌型の原核微生物であるMethanomassiliicoccales目は、2つの主要なクレードからなる(Sollinger et al, 2015; Borrel et al, 2017)。それらの1つは、殆ど排他的に動物(昆虫から人まで)の消化管中に生息する微生物で構成され、「宿主関連クラスター」又は共生クレードと呼ばれる。このクレードは、特に、人体の腸内細菌叢の天然のメンバーを含み、それらの中の幾つかは、電子供与体として水素を使用してトリメチルアミン(TMA)をメタンに変換できる。TMAは、様々な栄養の腸内微生物代謝に由来する粥腫発生促進化合物である。これらの微生物のプロバイオティクスとしての、特に腸内TMAレベルの低下による心臓血管疾患の防止のための使用の可能性は、過去に報告されている(Brugere et al, 2014)。即ち、これは、アテローム性動脈硬化を引き起こす様々なメカニズムに関与する代謝物である、肝臓を通過して腸吸収後に生じる(フラビン含有モノオキシゲナーゼによる肝酸化)TMAの誘導体の減少をもたらす。現在、TMAを人にとって不活性と考えられている代謝物、即ちメタンに再誘導出来ることが知られている人腸内細菌叢の構成成分は他に知られていない。
【0003】
しかしながら、このバイオレメディエーション作用を有する微生物群(共生クレード)の代表は未だ単離及び純粋培養で取得されていない。
【0004】
高度に酸素感受性である(EOS, Extremely Oxygen Sensitive)ことが知られているこれらの微生物の嫌気微生物学に関連する技術的問題はさておき、この種の微生物を単離する通常の手順は、特定の操作条件を要する。メタン生成古細菌が富化され優勢になった後、2つのアプローチが利用される:(i)「クローニング」ロールチューブ法による固体培地を用いた培養(Hungate, 1969)又は(ii)特に非メタン生成醗酵微生物の除去のための液体培地中での当該富化物の希釈/絶滅。
【0005】
現在まで、これらの技術は、使用された単離条件に拘らず、共生クレードの単離にとって、これらの技術は非効率的であることが示されている(様々な科学文献に報告されており、特にSollinger et al, 2015)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
純粋な株の利用可能性及びその増殖のコントロールは、治療的用途の想定にとっての前提条件である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、Methanomethylophilus alvus種の純粋Mx-05株は、完全に革新的なアプローチを通じて単離された。
【0008】
本発明は、純粋な単離された古細菌(Archaeaドメイン)Methanomethylophilus alvus Mx-05株に関し、当該株は、2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託されている。
【0009】
本発明は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の単離及び/又は純粋培養(無菌)のための、Eggerthella属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地の使用にも関する。有利な場合、当該培養及び/又は単離培地は、前記Eggerthella属細菌の培養物から得られた増殖因子を含有する。
【0010】
更に本発明は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を単離するプロセスに関し、当該方法は、以下:
a)好ましくは動物又は人の便である、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を含有する生体試料を、嫌気条件下二水素H2を含む気体雰囲気中中温条件下で、
(i)KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液を含有するベース培地、
(ii)2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3、ビタミン混合物、
(iii)ビオトリプケース(Biotrypcase)、ペプトン及び/又はカザミノ酸、及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する1つ以上の化合物、及び
(iv)メチルアミン又はメタノール等のメチル化化合物、
を含有する培養培地中に播種する工程;
b)工程a)の培養培地を、アミノ酸を提供する化合物が欠乏し、ビタミンが添加された、同一の培養培地によって置き換える工程;
c)特に顕微鏡、メタン生産及びH2消費、PCR、qPCR又はシークエンシングによって、前記播種された試料中のMethanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の正の富化を検出する工程;及び
d)本発明のEggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物が添加された工程a)又はb)の培地を用いて、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌のクローンが得られるまで、工程c)で得られた正の強化の連続液体希釈又はロールチューブ法を実施する工程;
を含む。
【0011】
最後に本発明は、純粋な、又は微生物共同体中に含まれる、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を培養する方法に関し、当該方法は、以下の工程:
a)好ましくは動物又は人の便である、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を含有する生体試料、又はMethanomassiliicoccales目共生クレードの純粋な古細菌のいずれかを、
(i)KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液、2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3を含有するベース培地、
(ii)ビオトリプケース(Biotrypcase)、ペプトン及び/又はカザミノ酸、及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する1つ以上の化合物、
(iii)メチルアミン又はメタノール等のメチル化化合物、及び
(iv)本発明のEggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物、
を含有する培養培地中に播種する工程;
b)工程a)で作製した播種物を嫌気条件下二水素H2を含む気体雰囲気中に置く工程;及び
c)2日以上、好ましくは15日以下、メタンを放出する指数増殖期に達するまで、中温条件下でインキュベーションする工程;
を含む。
【0012】
古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05
上記のように、本発明は、純粋な単離された古細菌(Archaeaドメイン)Methanomethylophilus alvus Mx-05株に関し、当該株は、2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託されている。
【0013】
この寄託は、Universite Clermont Auvergne, 49 boulevard Francois Mitterrand - 63000 Clermont-Ferrand - Franceにより行われた。
【0014】
「純粋」は、本発明の分野の当業者が通常用いる意味で理解される。特に、「純粋」は、コンタミナントを含まず、古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05の株、コロニー又はクローンが単独で存在することを意味する。純度の基準は当業者が通常用いるものである。特に、本発明において、当該基準は、均一な細胞の形態、メタンの生産及びメタン生成古細菌によって消費されないが存在する場合メタン生成コンタミナントの証拠となる炭化水素を含有する複合培地(SMS)中での不増殖である。
【0015】
「単離された」は、本発明の分野の当業者が通常用いる意味で理解される。特に、単離された古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05は、潜在的に出発試料中に含有され得る他の古細菌及び/又は細菌及び/又は酵母又は他の真核コンタミナントから分離された古細菌であり得る。
【0016】
上記のように、Methanomassiliicoccalesは、上記株が属するいわゆる「共生」クレードを含む2つの主要なクレードからなる古細菌型の原核微生物である。共生クレードは、殆ど排他的に動物(昆虫から人まで)の消化管中に生息する微生物で構成され、当該株は、電子供与体として水素を使用してトリメチルアミン(TMA)をメタンに変換できるものに属する。
【0017】
当該純粋な、単離された、2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託された、古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05は、本発明に係るMethanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を単離する方法を用いて特に取得され得、及び/又は、本明細書の「実施例」の項目で示されている、Eggerthella属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地を用いて単離され得る。
【0018】
Eggerthella属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地の使用
上記のように、本発明は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の単離及び/又は純粋培養のための、Eggerthella属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地の使用にも関する。
【0019】
上記のように、有利な場合、前記培養及び/又は単離培地は、Eggerthella属細菌の培養物から得られた増殖因子を含有する。
【0020】
前記培養及び/又は単離培地は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の単離又は培養に有用であり得る任意の化合物を更に含有し得る。
【0021】
特に、前記培地は、ビオトリプケース(Biotrypcase)、ペプトン及び/又はカザミノ酸、及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する1つ以上の化合物を含有する。
【0022】
例えば、前記培地は、0.5~50g/Lのビオトリプケース、ペプトン、カザミノ酸、酵母抽出物(特に各化合物10g/L)を更に含有する。加えて、前記培地は、コエンザイムMを含有する。このo-因子は、メタン生成に必須である。古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05において、コエンザイムMは省略され得る。
【0023】
更に、前記培地は、追加でKH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液, 2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3を含有する。
【0024】
更に、前記培地は、メチル化化合物、例えばメチルアミン又はメタノールを含有する。
【0025】
「メチルアミン」は、特に、モノ-、ジ-、又はトリ-メチルアミンを意味する。
【0026】
ベース培地と呼ばれる前記培地の一例は、実施例の表3に示されている。
【0027】
これらの化合物はいずれも市販されている化合物であり、及び/又は当業者に周知のものである。
【0028】
例えば、前記ベース培地は、N2/CO2気体雰囲気(80:20%v/v)中で調製される。
【0029】
タングステン-セレナイト溶液は、例えば1リットルあたり以下の組成を有する:0.4 g NaOH, 2 mg Na2SeO3及び4 mg Na2WO4.5H2O。
【0030】
Widdel微量元素溶液は例えば下記のような組成を有し、以下のように調製され得る。
【0031】
塩化鉄を塩酸に溶解する。二重蒸留水を添加し、微量元素の塩を添加する。pHは、HCl又はNa2CO3により7.1~7.3に調整される。
【0032】
この微量元素の溶液は、例えば培地1リットルあたり1mLの割合で使用され得る。
【表1】
【0033】
本発明の培養培地は、蒸留水を含有する場合は液体であり、又は蒸留水の添加を通じて再生成され得る凍結乾燥体であり、又は固体、特にゲル、より具体的にはアガー、特に2%最終濃度のアガーを添加して形成されたゲルであり得る。
【0034】
「Eggerthella」は、Coriobacteriaceae科Actinobacteria属の一種である。この属のメンバーは、嫌気性の桿菌であり、非胞子形成性、非移動性、グラム陽性であり、ペア又は短い鎖状に分離して発達する。それらは特に人の結腸で見られる。
【0035】
本発明において、Eggerthella属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物は、特に、Eggerthella lenta又は2017年7月13日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32565で寄託されたEggerthella sp. Eg01-Mx05株から選択される細菌に由来する。
【0036】
この寄託は、Universite Clermont Auvergne, 49 boulevard Francois Mitterrand - 63000 Clermont-Ferrand - Franceにより行われた。
【0037】
「滅菌抽出物」は、本発明の技術分野の当業者によって通常用いられる意味で理解され、即ち生きた生物が存在しないことを意味する。
【0038】
特に、本発明において、滅菌抽出物は、抽出物の生理活性を損なわない限り任意の当業者に公知の技術を用いて取得される。0.22μmフィルター等による濾過、例えば得られた溶液の細菌培養物の直接使用によるEggerthella属細菌の細菌培養に対する直接オートクレーブ、又はEggerthella属細菌の細菌培養物の直接オートクレーブ後得られた溶液の遠心分離等のオートクレーブ、又は遠心分離及び/又は濾過工程と併用する又はしないEggerthella属細菌の培養の完了後の抗生物質の使用等が例として挙げられる。
【0039】
特に、本発明において、滅菌抽出物はEggerthella属細菌の細菌濾過物である。
【0040】
「濾過物」は、当業者が通常採用する意味で用いられ、即ち、生細胞の通過を阻む孔径のフィルターを通す濾過工程後に回収される液体を意味する。
【0041】
特に、本発明において、前記Eggerthella属の細菌の細菌濾過物は、以下の工程:
a)ATCC 260又は1490及びDSMZ 78又は209等Eggerthella属の細菌を、公知の培地中に播種する工程、ここで当該培地は、ビオトリプケース、酵母抽出物、ペプトン、アミノ酸、肉抽出物ヘミン、及び/又はビタミンK1又はK3、及び単糖類を含有する;
b)温度20~40℃、好ましくは37℃で、1日以上、好ましくは15日以下、前記細菌を含有する培地をインキュベーションする工程;
c)好ましくは生きた微生物の通過を阻止するフィルターを用いて、特に孔径0.2μmのフィルターで、前記細菌を含有する培養培地を濾過する工程;及び
d)工程c)の後に得られる濾過物を回収する工程;
を含む方法によって調製される。
【0042】
「単糖類」は、5又は6個の炭素原子を有する単糖類を意味し、例えばグルコースである。
【0043】
特に、前記濾過物を調製する方法の工程a)における培養培地は、例えば0.5~50g/Lのビオトリプケース、ペプトン、カザミノ酸、酵母抽出物(好ましくは10g/L)、及び0~100mMのグルコース(好ましくは20mM)を含有する。
【0044】
工程b)で示した温度は20~40℃である。従って、例えば30~40℃、又は35~40℃である。従って、例えば21, 22, 25, 27, 28, 30, 32, 34, 35, 36, 37, 38, 39℃、特に37℃である。
【0045】
インキュベーションは、当業者に公知の嫌気条件下で実施され、例えばATCCやDSMZ等の微生物受託機関によるEggerthella lenta種において記載されるものである。
【0046】
インキュベーションは、1日以上、好ましくは15日以下続けられる。例えば、インキュベーション時間は1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14又は15日間、特に7日間である。
【0047】
細菌濾過物を調製する方法の工程c)に示す濾過による滅菌は、使用される方法が抽出物の生理活性を損なわない限り、本発明の抽出物を滅菌状態で得られることが知られている任意の技術によって置き換えられ得る。
【0048】
細菌濾過物は、フィルター、好ましくは生きた生物の通過を阻止するフィルター、特に孔径0.2μm、特に孔径0.22μmのフィルターを通す濾過によって調製される。これらのフィルターは市販のもので、例えばシリンジ(Ref: SLGP033RS by Merck)に取り付けられる直径25mmの(Ref: 13-100-106, Fisher Scientific)PES(ポリエーテルスルホン)中のFisher Scientific製BasixTM放射線滅菌フィルターである。
【0049】
特に工程c)は生きたEggerthella細胞や生きたコンタミナントの除去を可能とする。
【0050】
濾過物は、工程c)の後、良好な保存が可能な条件下、特に嫌気条件下、室温で、又は保存期間が数ヶ月に及ぶ場合4℃で回収される。
【0051】
特に、本発明における使用において、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌は、Methanomethylophilus alvus古細菌、特に純粋な単離されたMethanomethylophilus alvus Mx-05古細菌、より具体的には2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託された株である。
【0052】
Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の単離方法
上記のように、本発明は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を単離する方法に関し、当該方法は、以下の工程:
a)好ましくは動物又は人の便である、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を含有する生体試料を、嫌気条件下二水素H2を含む気体雰囲気中中温条件下で、
(i)KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液を含有するベース培地、
(ii)2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3、ビタミン混合物、
(iii)ビオトリプケース(Biotrypcase)、ペプトン及び/又はカザミノ酸、及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する1つ以上の化合物、及び
(iv)メチルアミン又はメタノール等のメチル化化合物、
を含有する培養培地中に播種する工程;
b)工程a)の培養培地を、アミノ酸を提供する化合物が欠乏し、ビタミンが添加された、同一の培養培地によって置き換える工程;
c)特に顕微鏡、メタン生産及びH2消費、PCR、qPCR又はシークエンシングによって、前記播種された試料中のMethanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の正の富化を検出する工程;及び
d)本発明のEggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物が添加された工程a)又はb)の培地を用いて、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌のクローンが得られるまで、工程c)で得られた正の強化の連続液体希釈又はロールチューブ法を実施する工程;
を含む。
【0053】
特に、本発明の方法は、更に、工程c)と工程d)の間に、生体試料を含有する培養培地が、好ましくは孔径0.45μm以上のフィルターで濾過される工程c´)を含み、当該工程c´)で得られた濾過物は、その後工程d)で連続希釈を実施するのに用いられる。
【0054】
好ましくは孔径0.45μm以上のフィルターによる濾過工程は任意であるが、これは他の存在する微生物と比較してMethanomassiliicoccales共生クレードの比率を増大出来る。なぜなら、このクレードは多くの望ましくない細胞とは異なり、フィルターを部分的に通過する小型の細胞(約0.5μm±0.2)からなるからである。この工程は、Methanomassiliicoccalesの富化を促進する。
【0055】
「播種」は、本発明の技術分野における当業者が通常用いる意味で、特に嫌気条件下で培養培地に生体試料を植え付ける行為を意味すると理解される。
【0056】
「生体試料」は、人又は動物の試料、特に人又は動物の便を意味する。
【0057】
「嫌気条件」は、本発明の技術分野の当業者に公知の意味で理解され、特に二酸素の状態で酸素が存在しない条件を意味する。
【0058】
「気体雰囲気」は、例えば二水素(特に2バール)からなる大気を意味する。
【0059】
「中温条件」は、20~40℃、例えば30~40℃又は35~40℃の温度を意味する。従ってこの温度は、例えば21, 22, 25, 27, 28, 30, 32, 34, 35, 36, 37, 38, 39℃、特に37℃である。
【0060】
「ベース培地」は、本発明の技術分野の当業者に通常使用される用語で、上記条件下古細菌を培養するのに要する化合物を含有する培地を意味する。当該培地は、例えば実施例の表3に詳細に記載されている。Widdel微量元素溶液及びセレナイト-タングステン溶液は、Eggerthella属細菌の細菌濾過物を含有する培養及び/又は単離培地の使用に関する上記項目に規定されている。
【0061】
前記ベース培地の組成に含まれる化合物は市販の化合物であり、当業者に公知である。
【0062】
例えば、ベース培地は、気体N2/CO2大気(80:20 % v/v)中で調製される。
【0063】
ベース培養培地は、蒸留水を含有する場合は液体であり、又は蒸留水の添加を通じて再生成され得る凍結乾燥体であり、又は固体、特にゲル、より具体的にはアガー、特に2%最終濃度のアガーを添加して形成されたゲルであり得る。
【0064】
上記のように、生体試料は、ビオトリプケース、ペプトン及び/又はカザミノ酸、酵母抽出物及びメチル化化合物等のアミノ酸を提供する化合物が添加されたベース培地中に播種される。
【0065】
従って、本発明の単離プロセスの一つの態様において、生体試料は、ビオトリプケース、ペプトン及び/又はカザミノ酸、酵母抽出物及びメチル化化合物が添加されたベース培地中に播種される。
【0066】
メチル化化合物は、例えばメタノール及び/又はメチルアミンである。「メチルアミン」は、例えばモノ-、ジ-、トリ-メチルアミンを意味する。
【0067】
本発明のプロセスの1つの態様において、ベース培地に酵母抽出物1g/L及び単純なメチル化化合物10~80mMが添加される。
【0068】
上記単離プロセスの工程a)の一つの態様において、前記生体試料は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を含有する。
【0069】
本発明の単離プロセスの工程b)に示すように、工程a)の培養培地は、ビオトリプケース、ペプトン及び/又はカザミノ酸、酵母抽出物等のアミノ酸を提供する化合物が欠乏し、ビタミンが添加された、同一の培養培地によって置き換えられる。
【0070】
「欠乏」は、培地中のビオトリプケース、ペプトン又はカザミノ酸及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する化合物の濃度が、工程a)で最初に含まれる濃度よりも少ないことを意味する。この濃度は0であってもよく、即ち、ビオトリプケース、ペプトン又はカザミノ酸及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する化合物は、この第二の培地において含有していなくてもよい。
【0071】
添加され得るビタミンは、当業者にとって適切であると知られるビタミンである。
【0072】
例えば、Balchビタミン溶液(Balch et al, 1979)が用いられ得る。
【0073】
当該溶液は、下記表2に示す組成を有するように調製され得る。単位は1リットルの蒸留水あたりのmgである。
【表2】
【0074】
工程a)の培養培地は、3~15日後、例えば3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12,13, 14, 15日後に置き換えられ、又は工程a)の培養培地は、Methanomassiliicoccalesの増殖指標の追跡結果に応じて、例えば前記株のメタン生成の通常の記録がプラトーの発生を示唆した直後、工程b)の培地によって置き換えられる。
【0075】
上記単離プロセスに示すように、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の量は、工程c)に示す技術の1つによって評価される。
【0076】
これらの技術は全て増殖の検出のための当業者に周知の技術である。
【0077】
顕微鏡は、細胞の形状の決定を可能とし、メタン及びH2の測定は例えば気相クロマトグラフィーによって実施され、qPCRは集団の定量を可能とし、そしてシークエンシングは、優勢な増殖した種の決定を可能とする。これらの技術は、個別又は一緒に使用される。シークエンシングは、特に一般の又は特定の分子マーカー(例えばそれぞれ小16Sリボソームサブユニットの16S RNA及びメタン生成に特異的なメチルコエンザイムMレダクターゼのアルファサブユニットをそれぞれコードする16S及びmcrA遺伝子)のシークエンシング、又はショットガンメタゲノムシークエンシングアプローチである。
【0078】
そのような単離は、上記の方法の工程d)で実施される。
【0079】
Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌が増えた培地は、液体又は固体希釈を経て、即ち当業者に公知の液体培地中の希釈技術、例えば培養培地を含有するHungateチューブを用いて、又は固体培地希釈技術(培養培地を含有するロールチューブ)を用いて希釈される。希釈は、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌のクローンが取得されるまで実施される。
【0080】
「クローン」は、「株」と同様に使用され、本発明の単離プロセスは、最後の工程で、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の純粋な株を単離することを意図する。
【0081】
工程d)で使用される培養培地は、本発明で規定されるようなEggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物が添加された工程a)又はb)に規定される培地である。
【0082】
培養培地は、従って、複雑な有機化合物(アミノ酸を提供する化合物)を含まないがビタミンを含有するベース培地、又はビオトリプケース、ペプトン及び/又はカザミノ酸及び2g/Lの酵母抽出物、及びメチル化化合物等のアミノ酸を提供する1つ以上の化合物を含有するベース培地を含有し得る。
【0083】
固体希釈に関して、液体培地中で得られたコロニーをサブカルチャーし、そしてそれらを液体培地中に再稀釈することが出来、最後の陽性の液体希釈は、単離された株を表す。
【0084】
特に、本発明の単離プロセスにおいて、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌のクローンの取得の決定は、顕微鏡、メタン生産及びH2消費、qPCR又はシークエンシングを通じて実施される。シークエンシングは、特に一般の又は特定の分子マーカー(例えばそれぞれ小16Sリボソームサブユニットの16S RNA及びメタン生成に特異的なメチルコエンザイムMレダクターゼのアルファサブユニットをそれぞれコードする16S及びmcrA遺伝子)のシークエンシング、又はショットガンメタゲノムシークエンシングアプローチである。
【0085】
加えて、上記のように、本発明の方法の一つの態様において、本発明の方法は、更に、工程c)と工程d)の間に、生体試料を含有する培養培地が濾過される工程c´)を含む。この濾過工程は、本発明の技術分野における当業者に公知の任意の技術を用いて実施される。
【0086】
特に、濾過は、孔径0.45μm以上、有利な場合0.45μmのフィルターを用いて実施される。これらのフィルターは市販のもので、例えばPES(ポリエーテルスルホン)中のFisher Scientific製BasixTM滅菌0.45μmフィルター(Reference 13-100-107)である。
【0087】
工程c´)の後に得られる濾過物は、続いて連続希釈物を得るための工程d)で使用される。
【0088】
特に、本発明の方法において、Eggerthella属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物は、Eggerthella属細菌の細菌濾過物である。
【0089】
より具体的には、前記濾過物は、以下の工程:
a)ATCC 260又は1490及びDSMZ 78又は209等Eggerthella属の細菌を、公知の培地中に播種する工程、ここで当該培地は、ビオトリプケース、酵母抽出物、ペプトン、アミノ酸、肉抽出物ヘミン、及び/又はビタミンK1又はK3、及び単糖類を含有する;
b)温度20~40℃、好ましくは37℃で、1日以上、好ましくは15日以下、前記細菌を含有する培地をインキュベーションする工程;
c)好ましくは生きた微生物の通過を阻止するフィルターを用いて、特に孔径0.2μmのフィルターで、前記細菌を含有する培養培地を濾過する工程;及び
d)工程c)の後に得られる濾過物を回収する工程;
を含む方法によって調製される。
【0090】
この方法は、Eggerthella属細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地の使用における上記項目において規定されている。
【0091】
特に、本発明において、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌は、Methanomethylophilus alvus古細菌、特に純粋な単離されたMethanomethylophilus alvus Mx-05古細菌、より具体的には2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託された株である。
【0092】
Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌の培養方法
上記のように、本発明は、純粋な、又は微生物共同体中に含まれる、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を培養する方法に関し、当該方法は以下の工程:
a)好ましくは動物又は人の便である、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌を含有する生体試料、又はMethanomassiliicoccales目共生クレードの純粋な古細菌のいずれかを、
(i)KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液、2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3を含有するベース培地、
(ii)ビオトリプケース(Biotrypcase)、ペプトン及び/又はカザミノ酸、及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する1つ以上の化合物、
(iii)メチルアミン又はメタノール等のメチル化化合物、及び
(iv)請求項2~6のいずれか1項に規定されたEggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物、
を含有する培養培地中に播種する工程;
b)工程a)で作製した播種物を嫌気条件下二水素H2を含む気体雰囲気中に置く工程;及び
c)2日以上、好ましくは15日以下、メタンを放出する指数増殖期に達するまで、中温条件下でインキュベーションする工程;
を含む。
【0093】
「播種」、「生体試料」、「滅菌抽出物」、「純粋」、「嫌気条件」、「気体雰囲気」及び「中温条件」は、上記項目で示したのと同じものを意味する。
【0094】
「微生物共同体」は、様々な種で構成され(即ち純粋培養ではない)、共同で生活する微生物の群を意味する。
【0095】
インキュベーションは2日以上、好ましくは15日以下続けられる。従って、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14又は15日である。
【0096】
インキュベーションは、当業者に公知の技術を用いて、例えばHungateチューブを用いて実施される。
【0097】
上記のように、ベース培地は、
(i)KH2PO4, NaCl, MgSO4.7H2O, NH4Cl, CaCl2.2H2O, 酢酸ナトリウム, システイン-HCl, レサズリン, Widdel微量元素溶液, セレナイト-タングステン溶液、2 % Na2S及び/又は10 % NaHCO3を含有するベース培地、
(ii)ビオトリプケース(Biotrypcase)、ペプトン及び/又はカザミノ酸、及び酵母抽出物等のアミノ酸を提供する1つ以上の化合物、
(iii)メチルアミン又はメタノール等のメチル化化合物、及び
(iv)本発明のEggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物、
からなる。
【0098】
加えて、前記培地は、コエンザイムMを含有し得る。この補因子は、メタン生成に必須である。Methanomethylophilus alvus Mx-05古細菌にとって、コエンザイムMは省略され得る。
【0099】
特に、本発明の方法において、Eggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物は、Eggerthella属の細菌の細菌濾過物である。
【0100】
より具体的には、前記濾過物は、以下の工程:
a)ATCC 260又は1490及びDSMZ 78又は209等Eggerthella属の細菌を、公知の培地中に播種する工程、ここで当該培地は、ビオトリプケース、酵母抽出物、ペプトン、アミノ酸、肉抽出物ヘミン、及び/又はビタミンK1又はK3、及び単糖類を含有する;
b)温度20~40℃、好ましくは37℃で、1日以上、好ましくは15日以下、前記細菌を含有する培地をインキュベーションする工程;
c)好ましくは生きた微生物の通過を阻止するフィルターを用いて、特に孔径0.2μmのフィルターで、前記細菌を含有する培養培地を濾過する工程;及び
d)工程c)の後に得られる濾過物を回収する工程;
を含む方法によって調製される。
【0101】
この方法は、Eggerthella属の細菌の細菌培養物の滅菌抽出物を含有する培養及び/又は単離培地の使用における上記項目に記載されている。
【0102】
特に、本発明の方法において、Methanomassiliicoccales目共生クレードの古細菌は、Methanomethylophilus alvus古細菌、特に純粋な単離されたMethanomethylophilus alvus Mx-05古細菌、より具体的には2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託された株である。
【0103】
また、本発明は、本発明の単離プロセス又は本発明の培養方法を実施するための、本発明のArchaea古細菌の検出キットに関し、当該キットは:
-上記のような好ましくは凍結乾燥又は固体状態の1つ以上の培養培地;及び/又は
-PCR型のDNA酵素増幅を実施するための試薬;及び/又は
-上記のような細菌培養の滅菌抽出物;
を備えることを特徴とする。
【0104】
下記実施例において本発明はより詳細に例示される。
【実施例
【0105】
1リットルあたりのベース培地(BM)の組成
【表3】
【0106】
Balchビタミン溶液の組成(Balch et al, 1979)
【表4】
【0107】
Widdel微量元素溶液の組成及び調製
塩酸に塩化鉄を溶解した。二重蒸留水を添加し、様々な微量元素の塩を添加した。pHをHCl又はNa2CO3を用いて7.1~7.3に調整した。
【0108】
この微量元素溶液は、培養培地1リットルあたり1mLの割合で使用された。
【表5】
【0109】
古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05の富化
ベース培地を、気体N2/CO2雰囲気(80:20 % v/v)中嫌気条件下で調製した。富化は、このベース培地に、1g/Lの酵母抽出物と、最終電子受容体として10~80mMのメチル化化合物(メタノール、メチルアミン)を添加した。それらは、電子供与体として二水素H2からなる嫌気気体雰囲気の存在下(2バール)、中温条件下(20~40℃でのインキュベーション)で行われた。
【0110】
その後使用された培養培地(Balchビタミン溶液を含有する)は、古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05の集団が優勢になるように酵母抽出物が欠乏していた(必要に応じて完全に欠如する(酵母抽出物0g/L))点を除き、同一の培地であった。
【0111】
古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05の存在量の評価は、以下の手段:
-顕微鏡観察による細胞の形態及び富化物の純度の判定;
-気相クロマトグラフィーによるメタン生成及びH2消費の測定;
-qPCRによる当業者に公知のプライマー及びプロトコル(Borrel et al, 2017)を用いた細菌及び古細菌の集団の定量;
-シークエンシングによる富化物中の優勢な種の決定;
により実施された。
【0112】
H2及びメチル化化合物の存在下の液体培地(5mL培養培地を入れたHungateチューブ)又は固体培地(5mL培養培地を入れたロールチューブ)による希釈実験を実施した。それらは予備濾過(0.45μmフィルター)により殆どの細菌を除去した後に実施され、純粋な単離された古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05は、直径500μm未満の細胞の小型の球菌の形態をとる。Methanomethylophilus alvus Mx-05の増殖は、濾過により調製された(0.22μmフィルター)Eggerthella sp.の培養物の滅菌抽出物の存在下でのみ得られた(下記「Eggerthella sp.濾過物の調製」参照)。
【0113】
Eggerthella sp.の濾過物の調製
2017年7月13日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32565で寄託されたEggerthella sp. Eg01-Mx05株を、10g/Lビオトリプケース、10g/L酵母抽出物、10 g/Lペプトン、10g/Lカザミノ酸及び20mMグルコースを含有するベース培地中に播種された。これを37℃で1週間インキュベーションした。斯かるEggerthella培養培地を濾過した後(0.22μmフィルター)、当該濾過物0.5mLを、古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05の富化物の希釈のために用いられるチューブ中に入れた培養培地5mLに添加した。
【0114】
純粋な古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05の単離
嫌気培養中の純粋な単離された古細菌Methanomethylophilus alvus Mx-05を取得するため、複雑な有機化合物(例えば酵母抽出物、ビオトリプケース等)を含有しないがBalchビタミン及びWiddel微量元素溶液を含有する、又は対照的にこれらの化合物が添加された(2g/Lの酵母抽出物、ビオトリプケース、ペプトン、カザミノ酸)、ベース培地を使用して、液体又は固体培地中の連続希釈が行われた。この最後の操作により、最後の陽性の希釈における何らかの従属栄養性のコンタミナントのより容易な検出が可能となる。固体培地中のコロニーを取得した後、これらを液体培地中でサブカルチャーし、液体培地中で再稀釈して、試験されるべき回収株を表す最後の陽性液体希釈が得られた。
【0115】
純粋な単離されたMethanomethylophilus alvus Mx-05古細菌株は、2017年9月18日にブダペスト条約の下Leibniz-Institut (DSMZ, Braunschweig, Germany)により番号DSM32684で寄託された。