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特許7425000LIDAR出力信号の方向を調整するための光学スイッチング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】LIDAR出力信号の方向を調整するための光学スイッチング
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020571353
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 US2019036604
(87)【国際公開番号】W WO2020005537
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】62/689,716
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/277,790
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520437076
【氏名又は名称】シルク テクノロジーズ インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】アスガリ、メヘディ
(72)【発明者】
【氏名】フォン、ダゾン
(72)【発明者】
【氏名】ルフィ、ブラッドレー ジョナサン
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003852(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024246(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184450(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356983(US,A1)
【文献】国際公開第2015/200800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発LIDAR信号を複数の異なる代替導波路の1つに誘導するように構成されたスイッチを含む、LIDARチップであって、
各代替導波路は、出発LIDAR信号が代替導波路に向けられたときに通過するファセットで終端する、LIDARチップ及び
前記代替導波路のいずれか1つからの前記出発LIDAR信号を受信するように構成され、かつ、受信されたLIDAR出力信号を再誘導し、それにより、該出発LIDAR信号が再誘導構成要素から離れる方向は、前記代替導波路の変化に応答して変化し、前記再誘導構成要素は、前記代替導波路から前記出発LIDAR信号を受信するように構成された再誘導構成要素
を含み、
前記ファセットは、再誘導構成要素の複数の異なる焦点を結ぶ円弧状の焦点線に沿って配置される、光学システム。
【請求項2】
前記再誘導構成要素は、前記再誘導構成要素が異なる代替導波路から出発LIDAR信号を受信するときに、該出発LIDAR信号が異なる方向に前記再誘導構成要素から離れるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記再誘導構成要素は、前記再誘導構成要素が異なる代替導波路から出発LIDAR信号を受信したときに、前記出発LIDAR信号が異なる送信角度に前記再誘導構成要素から離れるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記出発LIDAR信号が前記再誘導構成要素から離れる方向のいずれも、互いに平行しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記再誘導構成要素は、前記出発LIDAR信号が前記再誘導構成要素から離れるにつ
れて平行化されるように、前記出発LIDAR信号を平行させる、請求項1に記載のシス
テム。
【請求項6】
前記再誘導構成要素がレンズである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記レンズが、ファセットのいずれか1つを通過する出発LIDAR信号を受信するように配置される、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記出発LIDAR信号と前記レンズとの間の入射角が、前記出発LIDAR信号を受信した前記代替導波路の関数である、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記レンズが、光学スイッチに対して静止している、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
さらに相対速度および/または反射物体とLIDAR出力信号源との間の距離を示すLIDARデータを生成するように構成された電子回路を含み、前記LIDARデータは合成信号のビート周波数から計算され、合成信号には、物体によって反射された後に光学システムに戻ってきた出発LIDAR信号からの光と組み合わされた参照信号からの光が含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記出発LIDAR信号が前記再誘導構成要素から遠ざかる方向を変えるようにスイッチを操作する電子回路の結果として、前記出発LIDAR信号が視野内で導かれる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
異なる代替導波路のファセットにおける出発LIDAR信号の伝播方向が、異なる代替導波路ごとに異なる、請求項1に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本出願は、2018年6月25日に出願された「光学センサシステム」と題する米国仮特許出願シリアル番号62/689,716号の優先権を主張する。その開示は本明細書に全て組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は光学装置に関する。詳細には、本発明はLIDARチップに関する。
【背景技術】
【0003】
ADAS(先進運転支援システム)及びAR(拡張現実感)のようなアプリケーションにおいて経済的に展開できる3D感知システムに関する商業的需要が高まっている。LIDAR(光検出及び測距)センサを用いて、シーンをレーザ光で照らし、返された信号を測定することにより目標シーンの3D画像を構築する。
【0004】
周波数変調連続波(FMCW)は、LIDARアプリケーションに使用できる一貫した検出方法の一例である。該FMCW技術は、1回の測定で物体の距離及び速度の両方を測定できる。また、FMCW技術は、周囲の光及び他のLIDARシステムからの光に対する感度を減少させている。
【0005】
多くのLIDARアプリケーションでは、視野の画像を構築するために外部から光ビームを走査する必要がある。ビームを走査する方法は、レーザを含む組立てを回転させること、機械的なミラーを回転させること、及びMEMSミラーなどの機械的方法を含む。"固体状態"のアプローチは、移動部品の欠如のために興味深いものであり、走査速度を向上させることができる。しかし、試みられてきた固体状態のアプローチは、角度範囲が限られ、多数の制御要素を必要とする。その結果、実用的な固体状態の走査機構が求められている。
【発明の概要】
【0006】
光学システムは、出発LIDAR信号を複数の異なる代替導波路の1つに誘導するように構成されたスイッチを含むLIDARチップを有する。該システムは、また、該代替導波路のいずれかからの出発LIDAR信号を受信するように構成された再誘導構成要素を含む。該再誘導構成要素も、受信された出発LIDAR信号を再誘導するように構成される。それによって、出発LIDAR信号が該再誘導構成要素から離れる方向が、前記再誘導構成要素が該出発LIDAR信号を受信する前記代替導波路の関数である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】LIDARチップの平面図である。
【0008】
図2】シリコン・オン・インシュレータ・ウェハから構築された図1に係るLIDARチップの断面図である。
【0009】
図3】オフチップ走査機構で用いられる図1のLIDARチップを示す。
【0010】
図4】オフチップ走査機構の他の実施形態で用いられる図1のLIDARチップを示す。
【0011】
図5】統合された走査機構を有する図1のLIDARチップの断面図である。
【0012】
図6】LIDARチップ及び再誘導構成要素を含むLIDARシステムの概略図である。
【0013】
図7】円弧状線に沿って位置するレンズの焦点を示す。
【0014】
図8A】円弧状線に沿って位置するファセットで終端する代替導波路を有するLIDARチップを示す。
【0015】
図8B】ファセットで終端する代替導波路を有するLIDARチップを示す。該代替導波路の少なくとも一部は、出発LIDAR信号が異なる方向から該ファセットに接近するように湾曲している。
【0016】
図9】湾曲している線に沿って位置するファセットで終端する代替導波路を有するLIDARチップを示す。これにより、代替導波路n=f乃至n=Nのファセットが円弧状焦点線に近似的に沿って配置される。
【0017】
図10】直線が各ファセットを通過できるように配置されたファセットで終端する代替導波路を有するLIDARチップを示す。該LIDARチップは、ファセットの一部が円弧状焦点線の一方の側に位置し、ファセットの別の部分が該円弧状焦点線の他方の側に位置し、かつ、該円弧状焦点線が該ファセットを少なくとも2回直線的に通るように配置される。
【0018】
図11】LIDARチップに統合されたレンズを有するLIDARチップの平面図である。
【0019】
図12A】LIDARチップ及び再誘導構成要素の別の実施形態を含むLIDARシステムの概略の平面図である。該再誘導構成要素は、LIDAR出力信号の複数の異なるモードを出力する。
【0020】
図12B図12Aに示されたLIDAR出力信号モードの一部について重複する角度範囲を示すように修正された図12Aの概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0021】
LIDARシステムは、出発LIDAR信号を複数の異なる代替導波路のいずれか1つに誘導するように構成されたスイッチを含むLIDARチップを有する。再誘導構成要素は、該代替導波路のいずれか1つから出発LIDAR信号を受信する。該再誘導構成要素も、受信された出発LIDAR信号を再誘導する。これにより、該再誘導構成要素から離れる方向が、該再誘導構成要素が出発LIDAR信号を受信する代替導波路の変化に応答して変化する。その結果、該光学スイッチを動作することにより、視野内の異なるサンプル領域に出発LIDAR信号を操作し、出発LIDAR信号が誘導された代替導波路を変更することができる。該光学スイッチは、縦に接続された2X2マッハ-ツェンダー(MZ)変調器のような光学構成要素を含むか、またはそれからなる固体状態の光学スイッチとすることができる。また、適切な再誘導構成要素の一例は、1つまたは複数のレンズ及び/または1つまたは複数のミラーである。該1つまたは複数のレンズ及び/または1つまたは複数のミラーは、前記光学スイッチに対して静止していてもよい。その結果、実用的な固体状態の装置により出発LIDAR信号の操作を実現することができる。さらに、代替導波路の間をさらに分離させることにより、出発LIDAR信号を操作できる角度範囲を増大させることができる。その結果、該LIDARシステムは、角度範囲の広い固体状態の操作メカニズムを有することができる。
【0022】
適切な再誘導構成要素の別の例は、代替導波路のいずれか1つから出発LIDAR信号を受信し、該出発LIDAR信号を出力信号に分割するように構成されたスプリッタを含む。該再誘導構成要素は、異なる出力信号の1つを受信するようにそれぞれ構成された複数の操作導波路も含む。該操作導波路のいずれは、ファセットで終端する。該ファセットは、ファセットを通って操作導波路から出る出力信号が、再形成された出発LIDAR信号が再誘導構成要素から離れるように、出発LIDAR信号を再形成するように配置される。該操作導波路の少なくとも一部は、いずれも出力信号間の位相差を調整するように構成された位相チューナを含む。これにより、再形成された出発LIDAR信号が該再誘導構成要素から離れる方向が変化する。その結果、位相チューナと代替導波路の選択との両方でLIDAR出力信号の操作を達成することができる。このような操作メカニズムの組合せにより、出発LIDAR信号を視野内で連続的に操作することが可能となる。また、スプリッタ、操作導波路及び位相チューナは、いずれも移動部品を除外することができる。その結果、実用的な固体状態の装置により出発LIDAR信号の操作を実現することができる。さらに、代替導波路の間をさらに分離させることにより、出発LIDAR信号を操作できる角度範囲を増加させることができる。その結果、該LIDARシステムは、角度範囲の広い固体状態の操作メカニズムを有することができる。
【0023】
図1は、レーザ共振器を有する構成要素組立て8を含むLIDARチップの平面図である。該レーザ共振器は、レーザ用の利得媒体(図示せず)を含むか、またはそれらからなる光源10を含む。該チップはまた、光源10からの光信号を受信する共振器導波路12を含む。該光源は凹部13内に配置することができる。これにより、光源のファセットは、光源及び共振器導波路12が光信号を交換できるようにするために、共振器導波路12のファセットと光学的に位置合わせされる。該共振器導波路12は、光信号を部分反射装置14に伝送する。図示された部分反射装置14は、ブラッグ格子のような光学格子である。しかし、他の部分反射装置14を使用することができる。例えば、ミラーは、echelle格子や配列された導波路格子と共に使用できる。
【0024】
部分反射装置14は、光信号の反射部分を反射信号として共振器導波路12に反射する。例えば、共振器導波路12は、光信号の反射部分が利得媒体を通過するように、反射信号を光源10に反射する。光源10は、反射信号の少なくとも一部が、共振器導波路12で受信される光信号に加算されるように構成されている。例えば、光源10は、利得媒体から受信された反射信号を利得媒体に戻すように反射する、高度、完全にまたは部分的な反射装置15を含むことができる。その結果、部分反射装置14と反射装置15との間で光を共振させ、分布ブラッグ反射器(DBR)レーザ共振器を形成することができる。DBRレーザ共振器は、DFBレーザよりも本質的に狭い線幅及びより長い一貫した長さを有し、したがって、チップからLIDAR出力信号を反射する物体が、該チップから遠く離れて位置するときの性能を改善する。
【0025】
部分反射装置14は、共振器導波路12から受信した光信号の一部を、チップに含まれるユーティリティ導波路16に渡す。ユーティリティ導波路16が部分反射装置14から受信する光信号の部分は、レーザ共振器の出力として機能する。レーザ共振器の出力は、ユーティリティ導波路16上のLIDAR出力信号として機能する。ユーティリティ導波路16は、ファセット18で終端し、LIDAR出力信号をファセット18に伝送する。ファセット18は、ファセット18を通って進行するLIDAR出力信号がチップを出てLIDAR出力信号として機能するように配置することができる。例えば、ファセット18は、チップの縁部に配置することができ、その結果、ファセット18を通って進行するLIDAR出力信号がチップを出てLIDAR出力信号として機能する。
【0026】
LIDAR出力信号は、チップから離れて進行し、LIDAR信号の経路内の物体によって反射される。反射信号は、該物体から離れて進行する。反射信号の少なくとも一部は、ユーティリティ導波路16のファセット18に戻る。したがって、反射信号の一部は、ファセット18を通ってユーティリティ導波路16に入射し、ユーティリティ導波路16に誘導されたLIDAR入力信号として機能することができる。
【0027】
ユーティリティ導波路16は、ファセット18の前にテーパ部を含むことができる。例えば、ユーティリティ導波路16は、ファセット18で終端するテーパ20を含むことができる。テーパ20は、ユーティリティ導波路16とLIDAR入力光や出発LIDAR信号との効率的な結合のために必要な整列の許容誤差を緩和することができる。したがって、テーパ20は、処理のためにチップに連続的に反射されるLIDAR入力信号のパーセンテージを増加させることができる。いくつかの例では、テーパ20は、ファセット18が、ユーティリティ導波路16の直線部分の断面積の2、5または10倍以上の面積を有するように構築されている。図1は、テーパ20を水平テーパとして示しているが、テーパ20は、水平及び/または垂直テーパとすることができる。水平及び/または垂直テーパーは、直線状及び/または曲線状であってもよい。いくつかの例では、テーパ20は断熱テーパである。
【0028】
チップは、データ分岐24を含む。そこで、LIDARデータ(反射物体とLIDAR出力信号源との間の相対速度及び/または距離)のために処理される光学信号が生成される。該データ分岐は、ユーティリティ導波路16からの光信号の一部をデータ分岐に移動させる光カプラ26を含む。例えば、光カプラ26は、ユーティリティ導波路16からの出発LIDAR信号の一部を参照信号として参照導波路27に結合させる。該参照導波路27は、該参照信号を光結合部28に伝送する。
【0029】
光カプラ26は、また、ユーティリティ導波路16からのLIDAR入力信号の一部を比較信号として比較導波路30に結合させる。該比較信号は、LIDAR入力信号からの光の少なくとも一部を含む。該比較信号は、参照光信号からの光を排除することができる。比較導波路30は、該比較信号を光結合部28に伝送する。
【0030】
図示の光カプラ26は、参照導波路27及び比較導波路30に十分に近接してユーティリティ導波路16を配置し、ユーティリティ導波路16からの光を参照導波路27及び比較導波路30に結合する結果である。しかし、他の信号分岐構成要素を用いて、ユーティリティ導波路16からの光信号の一部を参照導波路27及び比較導波路30に移すことができる。適切な信号分岐構成要素の例には、これらに限定されないが、y結合器、マルチモード干渉カプラ(MMIs)、及び集積光サーキュレータが含まれる。
【0031】
光結合部28は、比較信号及び参照信号を合成信号に合成する。参照信号は、出発LIDAR信号からの光を有している。例えば、参照信号は、出発LIDAR信号のサンプルとして機能できる。参照信号は、出発LIDAR信号及びLIDAR入力信号からの光を排除できる。これに対し、比較信号光は、LIDAR入力信号からの光を有している。例えば、比較信号は、LIDAR入力信号のサンプルとして機能できる。したがって、比較信号は、チップから離れた物体によって反射されている一方、出発LIDAR信号は、反射されていない。チップ及び反射物体が、相対的に移動している場合、比較信号及び参照信号は、ドップラー効果に起因する異なる周波数を有する。その結果、比較信号と参照信号との間でうなりが生ずる。
【0032】
光結合部28は、また、得られた複合サンプル信号を第1の検出器導波路36及び第2の検出器導波路38上に分割する。第1の検出器導波路36は、複合サンプル信号の第1の部分を複合サンプル信号の第1の部分を第1の電気信号に変換する第1の光センサ40に伝送する。第2の検出器導波路38は、複合サンプル信号の第2の部分を複合サンプル信号の第2の部分を第2の電気信号に変換する第2の光センサ42に伝送する。好適な光センサの例には、ゲルマニウム・フォトダイオード(PDs)、及びアバランチ・フォトダイオード(APDs)が含まれる。
【0033】
光結合部28、第1の光センサ40及び第2の光センサ42を、電気データ信号を出力するバランス型光検出器として接続できる。例えば、光結合部28、第1の光センサ40及び第2の光センサ42を、信号光電流の直流成分が相殺するように接続でき、検出感度を改善する。第1の光センサ40及び第2の光センサ42をバランス型光検出器として接続するための適切な方法には、第1の光センサ40及び第2の光センサ42を直列に接続することが含まれる。一例では、第1の光センサ40及び第2の光センサ42は、直列に接続されたアバランチ・フォトダイオードである。小さな信号変動の検出には、バランス型光検出が望ましい。
【0034】
好適な光結合部28の一例は、2×2MMI装置のようなマルチモード干渉(MMI)装置である。他の適切な光結合部28は、断熱スプリッタ、及び指向性カプラを含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、例示された光結合部28の機能は、2つ以上の光学部品または光学部品の組み合わせによって実施される。
【0035】
単一の光センサは、第1の光センサ40及び第2の光センサ42に置き換えることができ、データ信号を出力できる。単一の光センサが、第1の光センサ40及び第2の光センサ42を置き換わる場合、光結合部28は、光分割機能を有する必要はない。その結果、図示された光結合部28は、図示の2x1光結合部よりも、2x1光結合部にできる。例えば、図示された光結合部は、2x1MMI装置にできる。これらの例では、チップは、複合サンプル信号を光センサに伝送する単一の検出器導波路を含む。
【0036】
データ分岐は、比較導波路30に沿って配置されるデータ光減衰器44を有し、データ光減衰器44を操作し、比較導波路30の比較信号を減衰できる。チップは、また、ユーティリティ導波路16に沿って配置される出力光減衰器46を有し、出力光減衰器46操作し、ユーティリティ導波路16上の出発LIDAR信号を減衰できる。データ光減衰器44及び/または出力光減衰器46のための適切な減衰器は、光信号の強度を減衰させるように構成される。光信号の強度を減衰させるように構成された適切な減衰器の例には、キャリア注入ベースのPINダイオード、電気吸収変調器、及びマッハ・ツェンダ(MZ)変調器が含まれる。
【0037】
チップは、また、比較導波路30からの比較信号の一部をサンプリング導波路52に結合するサンプリング指向性カプラ50を有している。比較信号の結合部分は、サンプリング信号として機能する。サンプリング導波路52は、サンプリング信号をサンプリング光センサ54に伝送する。図1は、サンプリング導波路52への比較信号の一部を伝送するサンプリング指向性カプラ50を示しているが、他の信号分岐構成要素を用い、比較導波路30からの比較信号の一部をサンプリング導波路52に伝送できる。適切な信号分岐構成要素の例には、これらに限定されないが、y結合器及びMMIが含まれる。
【0038】
チップは、レーザ共振器の動作を制御するための制御分岐55を有している。制御分岐は、ユーティリティ導波路16からの出発LIDAR信号の一部を制御導波路57に伝送する指向性カプラ56を有している。出発LIDAR信号の結合部分は、分岐信号として機能する。図1は、出発LIDAR信号の一部を制御導波路57に移動させる指向性カプラ56を示しているが、他の信号分岐構成要素を用い、ユーティリティ導波路16からの出発LIDAR信号の一部を制御導波路57に伝送できる。適切な信号分岐構成要素の例には、y結合器及びMMIsが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
制御導波路57は、分岐された信号を分割し、次に、分岐された信号の異なる部分を分岐された信号の部分間の位相差で再合成する干渉計58に、分岐された信号を伝送する。図示の干渉計58は、マッハ・ツェンダ干渉計であるが、他の干渉計を用いることもできる。
【0040】
干渉計58は、制御光信号を干渉計導波路60に出力する。干渉計導波路60は、制御光信号を電気制御信号としての電気信号に変換する制御光センサ61に、制御光信号を伝送する。干渉計信号は、出発LIDAR信号の周波数の関数である強度を有する。例えば、マッハ・ツェンダ干渉計は、フリンジパターンを有する正弦波制御光信号を出力する。出力LIDAR信号の周波数に関する変化は、制御光信号の周波数に関する変化を引き起こす。したがって、制御光センサ61から出力される電気制御信号の周波数は、出発LIDAR信号の周波数の関数である。他の検出メカニズムを、制御光センサ61の代わりに用いることができる。例えば、制御光センサ61は、光結合部28、第1の光センサ40及び第2の光センサ42として配置されたバランス型光検出器に置き換えできる。
【0041】
電子回路62は、チップ上の1つ以上の構成要素を動作させることができる。例えば、電子回路62は、光源10、データ光減衰器44、出力光減衰器46、第1の光センサ40、第2の光センサ42、サンプリング光センサ54、及び制御光センサ61と電気的に通信でき、その動作を制御できる。電子回路62は、チップ外に示されているが、電子回路の全部または一部をチップ上に含めることができる。例えば、チップは、第1の光センサ40を第2の光センサ42と直列に接続する導電体を含むことができる。
【0042】
チップの動作中、電子回路62は、光源10を動作させる。これにより、レーザ共振器が、出発LIDAR信号を出力する。次いで、電子回路62は、各サイクルが、視野中のサンプル領域の1つに関連するLIDARデータ(反射物体とLIDAR出力信号源との間の相対速度及び/または距離)を生成する一連のサイクルを通して、チップを動作させる。各サイクルは、複数のサンプリングの間を含むことができる。各サンプルの間に、電子回路は、出発LIDAR信号の周波数を調整できる。以下でより詳細に説明するように、電子回路は、時間の関数としての出発LIDAR信号の周波数が電子回路に知られるように、出発LIDAR信号の周波数を制御するために、制御分岐からの出力を使用できる。いくつかの例では、サイクルは、第1のサンプル及び第2のサンプルを有している。第1のサンプルの間、電子回路62は、出発LIDAR信号の周波数を増加させることができ、また、第2のサンプルの間、電子回路62は、出発LIDAR信号の周波数を減少させることができる。例えば、レーザ共振器を、1550nmの波長を有する出発LIDAR信号(したがって、LIDAR出力信号)を出力するように構成できる。第1のサンプルの間、電子回路62は、出発LIDAR信号(したがって、LIDAR出力信号)の周波数を増加させ、波長が1550nmから1459.98nmに減少し、続いて、出発LIDAR信号の周波数を減少させ、波長が1459.98nmから1550nmに増加するようにできる。
【0043】
第1のサンプルの間、出発LIDAR信号の周波数を増加するときに、LIDAR出力信号は、チップから離れて進み、そして、LIDAR入力信号としてチップに戻る。LIDAR入力信号の一部は、比較信号になる。LIDAR出力信号及びLIDAR入力信号が、チップと反射物体との間を移動している間に、出発LIDAR信号の周波数は増加し続ける。出発LIDAR信号の一部は参照信号となるので、参照信号の周波数は増加し続ける。結果として、比較信号は、光結合部に同時に入射する参照信号よりも低い周波数で光結合部に入射する。さらに、反射物体がチップから遠く配置されるほど、参照信号の周波数は、LIDAR入力信号がチップに戻る前に、より増加する。したがって、比較信号の周波数と参照信号の周波数との差が大きいほど、反射物体は、チップからさらに離れる。その結果、比較信号の周波数と参照信号の周波数との差は、チップと反射物体との間の距離の関数である。
【0044】
同じ理由で、第2のサンプルの間、出発LIDAR信号の周波数を減少するときに、比較信号は、光結合部に同時に入射する参照信号よりも高い周波数で、光結合部に入射し、また、第2のサンプル中の比較信号の周波数と参照信号の周波数との間の差も、チップと反射物体との間の距離の関数である。
【0045】
いくつかの例では、チップ及び反射物体の相対的な移動もまた比較信号の周波数に影響を及ぼすので、比較信号の周波数と参照信号の周波数との間の差をドップラー効果の関数にできる。例えば、チップが、反射物体に向かって、または、反射物体から離れて移動し、及び/または、反射物体が、チップに向かって、または、チップから離れて移動しているとき、ドップラー効果は、比較信号の周波数に影響を及ぼす可能性がある。比較信号の周波数は、反射物体が、チップに向かって、または、チップから離れて移動している速度、及び/または、チップが、反射物体に向かって、または、反射物体から離れて移動している速度の関数であるため、比較信号の周波数と参照信号の周波数との差も、反射物体が、チップに向かって、または、チップから離れて移動している速度、及び/または、チップが、反射物体に向かって、または、反射物体から離れて移動している速度の関数である。したがって、比較信号の周波数と参照信号の周波数との差は、チップと反射物体との間の距離の関数であり、また、ドップラー効果の関数でもある。
【0046】
複合サンプル信号及びデータ信号は、それぞれ、比較信号及び参照信号を有効に比較する。例えば、光結合部は、比較信号及び参照信号を結合し、これらの信号は、異なる周波数を有するので、比較信号と参照信号との間でうなりが生ずる。したがって、複合サンプル信号及びデータ信号は、比較信号と参照信号との間の周波数差に関連するビート周波数を有し、ビート周波数を用いて、比較信号及び参照信号の周波数の差を判定できる。複合サンプル信号及び/またはデータ信号に関するより高いビート周波数は、比較信号及び参照信号の周波数の間に、より高い差を示す。その結果、データ信号のビート周波数は、チップ、及び反射物体の間の距離の関数であり、ドップラー効果の関数でもある。
【0047】
上述のように、ビート周波数は、2つの未知数、チップと反射物体との間の距離、及び、チップ及び反射物体の相対速度(すなわち、ドップラー効果の寄与)の関数である。比較信号と参照信号との間の周波数差の変化(Δf)は、Δf=2Δvf/cで与えられる。ここで、fは、LIDAR出力信号、したがって、参照信号の周波数である。また、Δvは、チップ及び反射物体の相対速度である。また、cは、空気中の光の速度である。多数の異なるサンプルを用いることにより、電子回路62は、2つの未知数を解決できる。例えば、第1のサンプルについて判定されたビート周波数は、未知の距離及びドップラー寄与に関連し、また、第2のサンプルについて判定されたビート周波数も、未知の距離及びドップラー寄与に関連する。2つの関係を利用することによって、電子回路62は、2つの未知数を解決できる。したがって、ドップラー効果に影響されることなく、チップと反射物体との間の距離を判定できる。さらに、いくつかの例では、電子回路62は、この距離をドップラー効果と組み合わせて用いて、チップに向かうまたはチップから離れる反射物体の速度を判定する。
【0048】
ターゲット及びソースの相対速度がゼロ、または非常に小さい場合では、ビート周波数に対するドップラー効果の寄与は、本質的にはゼロである。これらの場合では、ドップラー効果は、ビート周波数に実質的に寄与せず、また、電子回路62は、第1のサンプルだけを取って、チップと反射物体との間の距離を判定できる。
【0049】
動作中、電子回路62は、制御光センサ61から出力される電気制御信号に応答して、出発LIDAR信号の周波数を調整することができる。前記のように、制御光センサ61から出力される電気制御信号の大きさは、出発LIDAR信号の周波数の関数である。したがって、電子回路62は、制御の大きさに応じて、出発LIDAR信号の周波数を調整できる。例えば、1つのサンプルの間に出発LIDAR信号の周波数を変化させながら、電子回路62は、時間の関数として、電気制御信号の大きさに関する適切な値の範囲を有することができる。サンプルの間の複数の異なる時点で、電子回路62は、電気制御信号の大きさを、サンプルの間の現在の時間に関連する値の範囲と比較できる。電気制御信号の大きさが、出発LIDAR信号の周波数が電気制御信号の大きさの関連付けられた範囲外であることを示す場合、電子回路62は、光源10を動作させて、出発LIDAR信号の周波数を変化させて、それが関連付けられた範囲内に入射するようにできる。電気制御信号の大きさが、出発LIDAR信号の周波数が電気制御信号の大きさの関連付けられた範囲内にあることを示す場合、電子回路62は、出発LIDAR信号の周波数を変化させない。
【0050】
動作中、電子回路62は、サンプリング光センサ54からのサンプリング信号に応じて、出力光減衰器46によって提供される減衰のレベルを調整できる。例えば、電子回路62は、出力光減衰器46を動作させ、第1の信号閾値を超えるサンプリング信号の大きさに応じて、減衰量を増加させ、及び/または第2の信号閾値未満であるサンプリング信号の大きさに応じて、出力低下の大きさを減少させる。
【0051】
いくつかの例では、電子回路62は、出力光減衰器46によって提供される減衰のレベルを調整し、レーザ共振器の性能上の逆反射の影響を防止、または低減する。例えば、第1の信号閾値、及び/または第2の信号閾値は、レーザ共振器の性能上の逆反射の影響を防止、または低減するように、任意に選択できる。LIDAR入力信号の一部が戻りLIDAR信号としてレーザ共振器に戻るとき、逆反射が起こる。いくつかの例では、ファセット18を通過するLIDAR入力信号の50%程度が、レーザ共振器に戻る。部分反射装置14に入射する戻りLIDAR信号の出力が、最小出力低下閾値を超えて、部分反射装置14から出射する出発LIDAR信号の出力よりも下回って減少(「出力低下」)しない場合、戻りLIDAR信号は、レーザ共振器の性能に影響を及ぼす可能性がある。図示のチップでは、最小出力低下閾値は約35dB(0.03%)にできる。したがって、戻りLIDAR信号は、部分反射装置14に入射する戻りLIDAR信号の出力が、部分反射装置14から出射する出発LIDAR信号の出力よりも35dB以下である場合に、レーザ共振器の性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0052】
電子回路62は、出力光減衰器46を動作させ、例えば、目標物体が非常に近くにある、または、高い反射性を有している、または、その両方であるときに、低出力低下の影響を低減できる。図1から明らかなように、減衰のレベルを増大するように出力光減衰器46を動作させることにより、部分反射装置14に入射する戻りLIDAR信号の出力が低減され、及び、部分反射装置14から離れた位置で、反射出発LIDAR信号の出力が低減される。出力光減衰器46が部分反射装置14から離れて配置されているため、部分反射装置14から出射する出発LIDAR信号の出力は、出力光減衰器46の動作によって、直接的には、影響されない。したがって、減衰のレベルを増大させるように出力光減衰器46を動作させることは、出力低下のレベルを増大する。その結果、電子回路は、光減衰器46を使用して、出力低下を調整できる。
【0053】
さらに、サンプリング信号の大きさは、出力低下に関連付けられる。例えば、サンプリング信号の大きさは、図1から明らかなように、比較信号の出力に関連付けられる。比較信号は、LIDAR入力信号の一部であるため、サンプリング信号の大きさは、LIDAR入力信号の出力に関連付けられる。この結果は、戻りLIDAR信号が、LIDAR入力信号の一部であるので、サンプリング信号の大きさも、戻りLIDAR信号の出力に関連付けられることを意味する。したがって、サンプリング信号の大きさは、出力低下に関連付けられる。
【0054】
サンプリング信号の大きさが出力低下に関連付けられるため、電子回路62は、サンプリング信号の大きさを用いて、出力光減衰器を動作させ、比較信号出力の大きさを目標範囲内に維持できる。例えば、電子回路62は、出力低下の大きさが第1の閾値以下であることを示すサンプリング信号に応じて、出力低下の大きさを増加させるように出力光減衰器46を動作させることができ、及び/または、電子回路62は、出力低下の大きさが第2の閾値以上であることを示すサンプリング信号に応じて、出力低下の大きさを減少させるように出力光減衰器46を動作させることができる。いくつかの例では、第1の閾値は、最小出力低下閾値以上である。一例では、電子回路62は、第1の信号閾値を超えるサンプリング信号の大きさに応じて、出力低下の大きさを増加させるように出力光減衰器46を動作させ、及び/または、第2の信号閾値未満のサンプリング信号の大きさに応じて、出力低下の大きさを減少させる。第1の閾値、第2の閾値、第1の信号閾値、及び第2の信号閾値からなる群から選択された1つ、2つ、3つ、または4つの変数の識別を、LIDARチップシステムのセットアップ中の光チップのキャリブレーションから判定できる。
【0055】
複合光信号の出力が出力閾値を超えると、光センサは、飽和になる可能性がある。光センサが飽和になると、データ信号の大きさは、出力閾値を超えて複合光信号の出力に増加があっても、増加しない最大値に行き当たる。したがって、複合光信号の出力が出力閾値を超えると、データが、失われる可能性がある。動作中、電子回路62は、データ光減衰器44によって提供される減衰のレベルを調整し、その結果、複合光信号の出力は、出力閾値未満に維持される。
【0056】
図1から明らかなように、サンプリング信号の大きさは、比較信号の出力に関連付けられる。したがって、電子回路62は、サンプリング信号からの出力に応じて、データ光減衰器44を動作できる。例えば、電子回路62は、サンプリング信号の大きさが比較信号の出力を示す場合に、データ光減衰器を動作させて、比較信号の減衰を増加させ、及び/または、サンプリング信号の大きさが比較信号の出力を示す場合に、データ光減衰器を動作させて、比較信号の減衰を減少させ。例えば、いくつかの例では、電子回路62は、サンプリング信号の大きさが上側比較閾値以上であるときに、比較信号の減衰を増加させることができ、及び/または、サンプリング信号の大きさが上側比較信号閾値以下であるときに、電子回路62は、比較信号の減衰を減少させることができる。
【0057】
上述のように、電子回路62は、サンプリング信号に応じて、出力光減衰器46によって提供される減衰のレベルを調整できる。電子回路62は、追加的に、または、サンプリング信号に応じて、出力光減衰器46によって提供される減衰のレベルを調整する代わりに、サンプリング信号に応じて、データ光減衰器44によって提供される減衰のレベルを調整できる。
【0058】
チップのための適切なプラットフォームには、シリカ、リン化インジウム、及びシリコン・オン・インシュレータ・ウェハが含まれるが、これらに限定されない。図2は、シリコン・オン・インシュレータ・ウェハから構成されたチップの一部の断面図である。シリコン・オン・インシュレータ(SOI)・ウェハは、基板82と光伝送媒体84との間に、埋め込み層80を有している。シリコン・オン・インシュレータ・ウェハでは、埋め込み層は、シリカである一方、基板及び光伝送媒体は、シリコンである。SOIウェハなどの光学プラットフォームの基板は、チップ全体の基盤として機能できる。例えば、図1に示された光学部品は、基板の上面及び/または側面に接して、または上に配置できる。
【0059】
図2に示されたチップの部分は、シリコン・オン・インシュレータ・ウェハから構築されたチップと共に用いられるのに適した導波路構造を有している。光伝送媒体のリッジ86は、光伝送媒体のスラブ領域88から離れて延伸する。光信号は、リッジの頂点と埋め込み酸化物層との間に制限される。
【0060】
リッジ導波路の寸法は、図2で表示されている。例えば、リッジは、wで表示された幅及びhで表示された高さを有している。スラブ領域の厚さは、Tと表示される。LIDARアプリケーションに関して、これらの寸法は、他のアプリケーションで用いられるよりも高いレベルの光電力を用いる必要があるため、他のアプリケーションよりも重要である。リッジ幅(wと表示される)は、1μmより大きく、かつ、4μm未満であり、リッジ高さ(hと表示される)は、1μmより大きく、かつ、4μm未満であり、スラブ領域の厚さは、0.5μmより大きく、かつ、3μm未満である。これらの寸法は、導波路の直線部分、または、実質的な直線部分、導波路の湾曲部分、及び導波路のテーパ部分に適用できる。したがって、導波路のこれらの部分は、シングルモードとなる。しかし、いくつかの例では、これらの寸法は、導波路の直線部分、または、実質的な直線部分に適用される一方、導波路の湾曲部分、及び/または、導波路のテーパ部分は、これらの範囲外の寸法を有する。例えば、図1に示すユーティリティ導波路16のテーパ部分は、4μmより大きく、かつ、4μm~12μmの幅、及び/または高さを有することができる。追加的または代替的に、導波路の湾曲部分は、導波路の湾曲部分における光損失を低減するために、薄くされたスラブ厚さを有することができる。例えば、導波路の湾曲部分は、0.0μm以上、かつ、0.5μm未満の厚さで、スラブ領域から離れるように延伸するリッジを有することができる。上記の寸法によって、一般的には、シングルモード構造を有する導波路の直線部分、または、実質的な直線部分が提供される一方、それらは、結果として、マルチモードであるテーパ部分、及び/または、湾曲部分にできる。マルチモード・ジオメトリとシングルモード・ジオメトリとの間の結合は、高次モードを実質的に励起しないテーパを使用して行うことができる。したがって、導波路で伝送される信号が、マルチモードの寸法を有する導波路セクションで伝送される場合であっても、シングルモードで伝送されるように、導波路を構築できる。図2の導波路の構造は、共振器導波路12、ユーティリティ導波路16、参照導波路27、比較導波路30、第1の検出器導波路36、第2の検出器導波路38、サンプリング導波路52、制御導波路57、及び干渉計導波路60からなる群から選択された導波路の全部、または一部に適している。
【0061】
ユーティリティ導波路16とインターフェイスで接続される光源10は、チップから離れており、その後、チップに取り付けられる利得要素にできる。例えば、光源10は、フリップチップ配置を用いてチップに取り付けられる利得要素にできる。
【0062】
フリップチップ配置の使用は、光源10が、シリコン・オン・インシュレータ・ウェハから構築されたチップ上のリッジ導波路とインターフェイス接続されるであろう場合に適している。シリコン・オン・インシュレータ・ウェハから構成されたチップ上のフリップチップ利得要素とリッジ導波路との間の適切なインターフェイスの例を、それぞれが全体として本出願に組み込まれる、2017年7月11日に発行された米国特許番号9、705、278号及び1999年11月23日に発行された米国特許番号第5、991、484号に見つけることができる。これらの構築は、光源10としての使用に適している。光源10が利得要素である場合には、電子回路62は、利得要素を介して印加される電流のレベルを変化させることによって、出発LIDAR信号の周波数を変更できる。
【0063】
減衰器は、チップから分離しており、その後、チップに取り付けられる構成要素にできる。例えば、減衰器をフリップチップ配置のチップに取り付けられる減衰器チップに含めることができる。減衰器チップの使用は、データ減衰器及び制御減衰器からなる群から選択された減衰器の全部または一部に適している。
【0064】
離れた構成要素上に減衰器を含める代わりに、減衰器の全部または一部をチップに統合できる。例えば、シリコン・オン・インシュレータ・ウェハから構築されたチップ上のリッジ導波路とインターフェイス接続される減衰器の例を、それぞれが全体として本出願に組み込まれる、1999年6月1日に発行された米国特許番号第5、908、305号に見つけることができる。チップと統合された減衰器の使用は、データ減衰器及び制御減衰器からなる群から選択された光センサの全部または一部に適している。
【0065】
チップ上の導波路とインターフェイス接続される光センサは、チップから分離しており、その後、チップに取り付けられる構成要素にできる。例えば、光センサは、フォトダイオード、または、バランチフォトダイオードにできる。好適な光センサ構成要素の例には、日本の浜松市に所在するHamamatsu製InGaAs PINフォトダイオード、または、日本の浜松市に所在するHamamatsu製InGaAs APD(アバランチフォトダイオード)が含まれるが、これらに限定されない。これらの光センサを、図1に示すように、チップに集中的に配置できる。或いは、光センサで終端する導波路の全部または一部をチップの端部に配置されるファセット18で終端させるようにでき、また、光センサをファセット18上のチップの端部に取り付け、光センサがファセット18を通過する光を受光するようにできる。チップとは離れた構成要素である光センサの使用は、第1の光センサ40、第2の光センサ42、サンプリング光センサ54、及び制御光センサ61からなる群から選択された光センサの全部または一部に適している。
【0066】
離れた構成要素である光センサの代わりに、光センサの全部、または、一部をチップに統合できる。例えば、シリコン・オン・インシュレータ・ウェハから構成されたチップ上のリッジ導波路とインターフェイス接続される光センサの例を、全体として本出願に組み込まれる、Optics Express Vol.15、No.21、13965-13971(2007)、20012年1月10日に発行された米国特許番号第8,093,080号、2012年8月14日に発行された米国特許番号第8,242,432号、及び2000年8月22日に発行された米国特許番号第6,108,8472号に見つけることができる。チップに統合された光センサの使用は、第1の光センサ40、第2の光センサ42、サンプリング光センサ54、及び制御光センサ61からなる群から選択された光センサの全部または一部に適している。
【0067】
様々な光学装置プラットフォームと統合された光学格子構造が、利用できる。例えば、リッジの頂点及び/またはリッジの後側に溝を形成することによって、リッジ導波路にブラッグ格子を形成できる。
【0068】
いくつかの例では、LIDAR出力信号を走査することが望ましい。上記のチップ構造は、LIDARアプリケーションで使用される様々な走査機構との使用に適している。例えば、LIDAR出力信号を、1つ以上の反射装置、及び/または、1つ以上の平行装置によって受信できる。1つ以上の反射装置を、LIDA出力信号を再誘導、及び/または、操作するように構成し、LIDAR出力信号の走査を提供するようにできる。好適な反射装置には、機械的に駆動されるミラー及び微小電気機械システム(MEMS)ミラーを含むミラーが含まれるが、これらに限定されない。1つ以上の平行装置は、LIDA出力信号の平行を提供し、したがって、ユーティリティ導波路16で受信されるLIDA入力信号の部分を増加できる。好適な平行装置には、単一レンズ及び複合レンズが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
図3は、反射装置90及び平行装置92と共に使用される上述のチップを示している。例えば、レンズは、LIDA出力信号を受信し、該LIDA出力信号の平行または集束を提供する平行または集束装置として機能する。ミラーは、LIDA出力信号を受信し、該LIDA出力信号を所望の方向に反射する反射装置90として機能する。Aで表示される矢印で示されているように、電子回路は、平行にされた、または集束されたLIDA出力信号を操作し、及び/または、平行にされた、または集束されたLIDA出力信号を走査するように、ミラーを動かすことができる。ミラーの動作は、2次元または3次元にできる。適切なミラーには、機械的に駆動されるミラー及び微小電気機械システム(MEMS)ミラーが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
図4は、反射装置90及び平行または集束装置92と共に使用される上述のチップを示している。例えば、ミラーは、LIDA出力信号を受信し、LIDA出力信号を所望の方向に反射する反射装置90として機能する。Aで表示された矢印で示されているように、電子回路は、LIDA出力信号を操作し、及び/または、LIDA出力信号を走査するように、ミラーを動かすことができる。レンズは、ミラーからLIDA出力信号を受信し、該LIDA出力信号の平行または集束を提供する平行または集束装置92として機能する。レンズを、ミラーの動作とともに動くように構成し、レンズが、ミラーの異なる位置でLIDA出力信号を受信し続けるようにできる。或いは、ミラーの動作を十分に制限し、レンズが、ミラーの異なる位置でLIDA出力信号を受信し続けるようにできる。ミラーの動作は、2次元または3次元にできる。適切なミラーには、機械的に駆動されるミラー及び微小電気機械システム(MEMS)ミラーが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
SOI MEMS(Silicon-On-Insulator Micro Electro Mechanical System)技術のような技術を、MEMSミラーなどの反射装置をチップに組み込むために、用いることができる。例えば、図5は、ユーティリティ導波路16の長手方向軸を通って得られるチップの一部の断面図である。図示されたチップは、シリコン・オン・インシュレータ導波路上に形成されている。ミラー凹部は、光伝送媒体を通って基盤まで延在する。該ミラーは、該ユーティリティ導波路からLIDAR出力信号を受信するように、ミラー凹部内に配置される。レンズは、ミラーからLIDAR出力信号を受信し、LIDAR出力信号の平行または集束を提供する平行または集束装置92として機能する。レンズを、ミラーの動作とともに動くように構成し、レンズが、ミラーの異なる位置でLIDAR出力信号を受信し続けるようにできる。或いは、ミラーの動作を十分に制限し、レンズが、ミラーの異なる位置でLIDA出力信号を受信し続けるようにできる。電子回路は、ミラーの動作を2次元または3次元で制御できる。
【0072】
上記チップは、反射装置に加えて、または代替装置としてLIDAR出力信号を走査及び/または操作する代替的な方法を含むことができる。例えば、該チップは、LIDAR出力信号を複数の出力信号に吐き出すための構成要素を含むことができる。次いで、該チップは、異なる出力信号間の位相差を調整して、LIDAR出力信号が該チップから離れる方向を制御することができる。LIDAR出力信号は、出力信号間の位相差のレベルを変化させることにより、操作または走査することができる。LIDAR出力信号を操作するために出力信号間の位相差を採用する適切なシステムは、それぞれが全体として本明細書に組み込まれる、2018年6月12日に出願された米国特許出願シリアル番号62/683,958号、及び2018年6月5日に出願された米国特許出願シリアル番号62/680,787号に記載されている。
【0073】
LIDAR出力信号を走査及び/または操作するための別の方法は、光学スイッチングを含むことができる。図6は、LIDARチップ及び再誘導構成要素を含むLIDARシステムを示す。図6では、LIDARチップの一部が示されている。LIDARチップの図示された部分は、LIDAR出力信号を操作するために光学スイッチングを使用するように構成される。図6に示されていないチップの部分は、本特許出願の他の場所に記載されているように構築することができる。例えば、図6に示されたユーティリティ導波路16は、図1に開示されたLIDARチップのようなLIDARチップのユーティリティ導波路16とすることができる。
【0074】
ユーティリティ導波路16は、出発LIDAR信号をいずれも導波指数n=1乃至Nに関連する複数の代替導波路102のうちの1つに導く光学スイッチ100に出発LIDAR信号を伝送する。代替導波路102のいずれは、ファセット18で終端する。出発LIDAR信号を受信する代替導波路102は、該代替導波路102から出て、出発LIDAR信号が通過するファセット18に出発LIDAR信号を導き、LIDAR出力信号として機能する。これにより、光学スイッチ100は、出発LIDAR信号が通過するファセット18のいずれか1つに出発LIDAR信号を導くことができ、LIDAR出力信号として機能する。
【0075】
LIDAR出力信号は、チップから離れた対象物から反射することができる。反射信号の少なくとも一部は、ファセット18に戻って、該ファセット18を通って代替導波路から出て、LIDAR入力信号として関連する代替導波路102に入射する。代替導波路102は、LIDAR入力信号を、LIDAR入力信号をユーティリティ導波路16に戻す光学スイッチ100に誘導する。そして、該チップ及び電子回路は、LIDAR入力信号を処理することができる。
【0076】
電子回路は、光学スイッチ100を動作させて、出発LIDAR信号を受信する代替導波路102を変更することができる。したがって、電子回路は、出発LIDAR信号を、代替導波路102のうちの特定の1つに、また、これにより、ファセット18の特定の1つに誘導されるようにすることができる。
【0077】
LIDARシステムは、また、代替導波路のいずれか1つから出発LIDAR信号を受信し、受信された出発LIDAR信号を再誘導するように構成された再誘導構成要素を含み、その結果、出発LIDAR信号が再誘導構成要素から離れる方向が、再誘導構成要素が該出発LIDAR信号を受信する代替導波路の関数である。出発LIDAR信号の方向は、出発LIDAR信号が再誘導構成要素から離れる方向が、再誘導構成要素が出発LIDAR信号を受信する代替導波路の変化に応答して変化するという点で、代替導波路の関数とすることができる。いくつかの例では、再誘導構成要素は、異なる方向のいずれも互いに平行でないように構成される。例えば、再誘導構成要素が、再誘導構成要素に対して測定された送信角度を有する異なる代替導波路から出発LIDAR信号を受信するときに、異なる送信角度で、出発LIDAR信号が再誘導構成要素から離れるように、再誘導構成要素を構成することができる。
【0078】
図6において、レンズ104は、再誘導構成要素103として機能する。レンズ104は、LIDAR出力信号として機能する出発LIDAR信号を受信するように配置される。レンズ104及び代替導波路102は、異なる代替導波路102からのLIDAR出力信号が、レンズ104の入射側の異なる領域に入射し、かつ/またはレンズ104の入射側で異なる入射角を有するように配置される。その結果、異なる代替導波路102からのLIDAR出力信号は、異なる方向にレンズ104から離れる。例えば、代替導波路102は、図6ではn=1乃至n=Nと表示されている。図6では、再誘導構成要素103が、n=1からNまで表示された代替導波路からのLIDAR出力信号を受信したときのLIDAR出力信号(出発LIDAR信号)の送信角度は、図6においてθで表示されている。したがって、LIDAR出力信号がn=1と表示された代替導波路に誘導されると、LIDAR出力信号は送信角度θを有する。該送信角度は、再誘導構成要素103に対して測定される。例えば、送信角度は、レンズの光軸とLIDAR出力信号との間で測定することができる。図6から明らかなように、角度θは、異なる代替導波路102に対して異なる。異なる代替導波路102からのLIDAR出力信号が異なる方向にレンズ104から離れて移動するので、電子回路は、スイッチを操作することによってLIDAR出力信号の方向を制御することができる。これにより、LIDAR出力信号を、所望の方向を有するLIDAR出力信号を提供する代替導波路102に誘導する。1つの代替導波路102から別の代替導波路102への方向の変化の程度は、レンズ構造の関数とすることができる。これにより、レンズ構成を変更して、代替導波路間の方向の変化の程度を増減させることができる。
【0079】
システムの動作中、電子回路は、チップが所望の処理に必要とされるLIDAR入力信号を受信するまで、出発LIDAR信号を受信する代替導波路102をスイッチングすることを遅延させることができる。その結果、LIDAR出力信号及び関連するLIDAR入力信号は、同一の代替導波路102によって誘導される。
【0080】
図6において、Rはレンズの入射側のLIDAR出力信号の半径を表し、R'はレンズ半径を表し、sはレンズからの物体距離を表す。R'の値は、レンズによって捕捉される発散光の量を増加させるように選択できる。R/sの比は、R'に必要な値を概算するために用いることができ、導波路ファセットからの光の発散角の関数とすることができる。発散光の捕捉を増加させるために、発散半角Φの2倍を用いることができる。この場合、R/sは、少なくともtan(2Φ)とすることができる。例えば、横方向10μmの代替導波路ファセット寸法については、横方向発散半角Φは約6°である。この場合、R/sは、少なくともtan(12°)=1/5とすることができる。R'は、LIDAR出力信号(R)の半値幅よりも大きくすることができ、代替導波路間のスイッチングによるレンズ上のLIDAR出力信号の位置の変化を収容するレンズ半径を表す。いくつかの例では、R'は、R、1.3R、または1.6R以上であり、かつ/または4R、または6R以下である。ここで、Rは、stan(2Φ)以上である。
【0081】
ファセット18の中心間距離は、図6においてdで示されている。dを減少させることによって角度分解能を改善することができる。いくつかの場合では、隣接するファセット組ごとについて、該中心間距離は一定である。しかし、異なるファセット組について、該中心間距離は異なることがある。ファセット18間の適切な中心間距離は、5、10、または50μmを超える距離、かつ/または100、1,000または10,000μm未満の距離を含むが、これらに限定されない。
【0082】
Nの最大値は、(1+2(R'-R)/d)に最も近い整数値であってもよく、ここで、Rは、レンズ104の入射側のLIDAR出力信号の直径である。ここで、R'はレンズ半径である。したがって、チップは、(1+2(R'-R)/d)に最も近い整数値以下の数の代替導波路102を含むことができる。いくつかの例では、Nは、5、10、または50以上であり、かつ/または100、500または1000未満である。LIDAR出力信号を導波路102のいずれに順次に導いて走査できる角度範囲(2θ)は、Nの増加により増加させることができる。したがって、dの減少により改善された分解能を得ることができ、光学システムの限界内におけるNの増加により改善された走査範囲を得ることができる。
【0083】
レンズ104が異なるファセットからのLIDAR出力信号を平行にするようにレンズ104を構成することができる。または/代わりに、1つ以上のファセットがレンズ104の焦点に位置するようにレンズ104を配置することができる。しかし、典型的には、該焦点は円弧状の線に沿って配置される。例えば、図7は、焦点距離25mmのレンズの焦点を示している。y軸は、レンズの光軸からファセット18の中心の距離を表す。該レンズは、x=0mmに配置される。ファセットが該レンズの焦点に配置されるために、ファセットは、図7中に円弧状線に沿って配置される。図8Aに示すように、ファセット18が円弧状線(破線)に沿って配置されるようにチップを構築することができる。シリコン・オン・インシュレータ・ウェハ上に構築されたチップは、シリコン光伝送媒体中のファセット18をエッチングすることによって、円弧状線に沿って配置されたファセット18を備えることができる。図8から明らかなように、この配置は、ファセット18の全部または一部がチップの縁部からまたは基板の縁部から後方に配置することになる。あるいは、チップの縁部は円弧状であってもよく、ファセット18はチップの縁部に配置することができる。
【0084】
円弧状焦点線に沿ってファセット18を配置することの代わりに、または円弧状焦点線に沿ってファセットを配置することに加えて、異なる代替導波路102のファセットにおける出発LIDAR信号の伝播方向が異なる代替導波路102に対して異なるように、代替導波路102を湾曲させることができる。例えば、図8Bは、出発LIDAR信号が異なる方向からファセット18に接近するように湾曲した代替導波路102の一部を示す。代替導波路102の湾曲は、他の光をレンズに結合させることができる。図8Bは、円弧状焦点線に沿って配置されたファセットを示しているが、該ファセットは円弧状焦点線に沿って配置される必要はない。
【0085】
別の代替方法は、ファセット18の少なくとも一部が円弧状焦点線を近似する線に沿って配置されるように、チップ及び/またはファセットを角度付けすることである。特に、レンズの光軸の片側のファセット18は、円弧状焦点線を近似する線に沿って配置できる。例えば、図9は、代替導波路n=f乃至n=Nのファセットが円弧状焦点線を近似する線に沿って配置されるように角度付けられた線に沿って配置されたファセット18を有するLIDARチップを示している。しかし、代替導波路n=(f-1)乃至n=1のファセットは、代替導波路n=1に近づくにつれて円弧状焦点線からさらに遠く離れるようになる。その結果、電子回路は、代替導波路n=(f-1)乃至n=1の全てまたは一部を動作させることができない。あるいは、代替導波路n=1乃至n=(f-1)の全部または一部を含まずにチップを構築することもできる。あるいは、該チップは、ファセットのすべて、50%以上、または75%以上が光軸の同じ側にあるように配置することができる。
【0086】
ファセット18が円弧状焦点線を近似する線に沿って配置されるようにチップを配置することは、ファセット18の一部が円弧状焦点線の一方の側に位置し、該ファセットの別の部分が円弧状焦点線の他方の側に位置するようにチップを配置することを含むことができる。いくつかの例では、チップは、1本の線がファセットのいずれを通過できるように配置されたファセットを含み、該チップは、ファセット18の一部が円弧状焦点線の一方の側に位置し、該ファセット18の別の部分が円弧状焦点線の他方の側に位置し、かつ、円弧状焦点線がファセット18を通って少なくとも2回通過するように配置される。図10は、破線が焦点線を表し、チップの端部の一部分がファセット18を通る線分を表している配列図を示している。ファセットは、関連する代替導波路における伝播方向に対して非垂直であることが多いので、ファセットを通る線は、各ファセットの面に平行でないことが多い。
【0087】
レンズはチップから間隔を置いて図示されているが、レンズはチップと統合されることができる。例えば、図11は、レンズ104を含むように修正された上記チップの一部を示す。該レンズは、レンズ104がLIDAR出力信号を受信するように、代替導波路のファセット18と光学的に位置合わせされる。該レンズは、凹部106内に配置することができる。該チップがシリコン・オン・インシュレータ上に構築されている場合、凹部は光透過媒体の中に、またはそれを通って延在することができる。いくつかの例では、凹部は、光透過媒体を通ってベース内に延在する。例えば、該凹部は、光透過媒体を通って、埋込層の中に、またはそれを通って延在することができる。いくつかの例では、凹部は、埋め込み層を通って基板内に延在する。いくつかの例では、レンズは、マイクロ光学組立てやピックアンドプレース技術のような技術を使用してチップに取り付けられる別の構成要素である。いくつかの例では、レンズは、エッチングのような技術を用いて形成された一体型チップ部品である。例えば、チップがシリコン・オン・インシュレータ上に構築されている場合、前記光透過媒体をエッチングすることによりレンズを形成することができる。
【0088】
チップと共に使用するのに適した光学スイッチは、熱のまたはキャリアなしの注入移相器を使用する縦に接続された2X2マッハ-ツェンダー(MZ)変調器、及びマイクロリング共振器スイッチを含むが、これらに限定されない。
【0089】
上記の説明では、レンズを再誘導構成要素として使用しているが、他の再誘導構成要素を使用することもできる。例えば、レンズの代わりにミラーを使用することができる。適切なミラーは、放物線状の曲面ミラーのような曲面ミラーを含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、ミラーは、LIDAR出力ビームをLIDARチップの表面の上方または下方に反射するように傾斜しており、または、角度で研磨されたファセットを使用して、LIDAR出力信号を最初にチップの平面上に誘導するようにしてもよい。図12Aは、再誘導構成要素103の別の実施形態を含むLIDARシステムを示す。図12Aでは、LIDARチップの一部が示されている。LIDARチップの図示された部分は、LIDAR出力信号を操作するために光学スイッチングを使用するように構成される。図12Aに示されていないチップの部分は、本特許出願の他の場所に記載されているように構築することができる。例えば、図12Aに示されるユーティリティ導波路16は、図1に開示されたLIDARチップのようなLIDARチップのユーティリティ導波路16とすることができる。
【0090】
ユーティリティ導波路16は、複数の代替導波路102のうちの1つに出発LIDAR信号を誘導する光学スイッチ100に出発LIDAR信号を伝送する。出発LIDAR信号を受信する代替導波路102は、出発LIDAR信号を再誘導構成要素103に導く。図6の再誘導構成要素はLIDARチップから離れて配置されているが、図12Aの再誘導構成要素は該LIDARチップに統合することができる。
【0091】
電子回路は、光学スイッチ100を動作させて、出発LIDAR信号を受信する代替導波路102を変更することができる。したがって、該電子回路は、出発LIDAR信号が代替導波路102のうちの特定の1つに誘導されるようにすることができる。
【0092】
再誘導構成要素は、代替導波路のいずれか1つから出発LIDAR信号を受信し、次いで、異なる代替導波路から受信された出発LIDAR信号が、異なる方向で再誘導構成要素103から離れるように、受信された出発LIDAR信号を誘導するように構成される。いくつかの例では、再誘導構成要素は、異なる方向のいずれも互いに平行でないように構成される。
【0093】
再誘導構成要素103は、出発LIDAR信号を操作導波路112に伝送された複数の出力信号に分割するスプリッタ110を含む。操作導波路112のいずれは、ファセット18で終端する。ファセット18を通ってチップから出る出力信号が結合してLIDAR出力信号を形成するように、かつ/または出発LIDAR信号を効果的に再形成するように、ファセット18は配置される。
【0094】
隣接する操作導波路112のファセット18における出力信号間の位相差がないように、スプリッタ110及び操作導波路112を構築することができる。例えば、スプリッタ110から出る出力信号が同相であり、操作導波路112がそれぞれ同じ長さを有するように、スプリッタ110を構築することができる。或いは、隣接する操作導波路112のファセット18における出力信号間の直線的に増大する位相差が存在するように、スプリッタ110及び操作導波路112を構築することができる。例えば、操作導波路数jの位相がf+(j-1)fとなるように、操作導波路112を構築することができる。ここで、jは1乃至Mの整数であり、図12Aに示されるように操作導波路が順次に付番されたときの操作導波路に関連する数を表す。fは、位相チューナ(以下に記載)が位相差を影響しないときの隣接する操作導波路間の位相差である。また、fは、操作導波路j=1のファセット18における出力信号の位相である。いくつかの例では、該位相差は、操作導波路が直線的に増大する長さの差を有するように、操作導波路を構築することによって達成される。例えば、操作導波路jの長さは、1+(j-1)Δlで表すことができる。ここで、jは1乃至Mの整数であり、図12Aに示されるように操作導波路が順次に付番されたときの操作導波路に関連する数を表す。Δlは、隣接する操作導波路間の長さの差である。1は、操作導波路j=1の長さである。操作導波路が同じ長さであるとき、Δlの値はゼロであり、fの値はゼロである。適切なΔlは、これらに限定されないが、0、または5より大きく、かつ/または10、または15μm未満を含む。適切なfは、これらに限定されないが、0π、または7πより大きく、かつ/または15π、または20π未満を含む。適切なMは、これらに限定されないが、10、100、または1000より大きく、かつ/または10000、または50000未満を含む。
【0095】
位相チューナ104は、操作導波路102の少なくとも一部に沿って配置することができる。位相チューナ104は、最初及び最後の操作導波路に沿って配置するように示されているが、これらの位相チューナは任意である。例えば、チップは、操作導波路j=1上に位相チューナを含む必要はない。
【0096】
電子回路は、位相チューナを動作させるように構成することができ、これにより、隣接する操作導波路102のファセット18における出力信号間に位相差を生成する。該電子回路は、位相差が操作導波路にわたって直線的に増加するという点で一定であるように、位相チューナを動作させることができる。例えば、電子回路は、番号jの操作導波路のチューナ誘起位相が(j-1)αであるように位相チューナを動作させることができる。ここで、jは1乃至Mの整数であり、図12に示されるように操作導波路112が順次に付番されたときの操作導波路112に関連する数を表す。αは、隣接する操作導波路間のチューナ誘起位相差である。したがって、番号jの操作導波路の位相はf+(j-1)f+(j-1)αとなる。図12は、例示を簡略化するために、4つの操作導波路のみを有するチップを示しているが、該チップは、より多くの操作導波路を含むことができる。例えば、該チップは、4つより多い操作導波路、100より多い操作導波路、または1000より多い操作導波路、かつ/または5000未満の操作導波路を含むことができる。
【0097】
電子回路は、位相チューナを動作させるように構成し、位相差αの値を調整することができる。位相差αの値を調整することは、LIDAR出力信号がチップ(θ)から離れる方向を変化させる。これにより、電子回路は、位相差αを変化させることにより、LIDAR出力信号を走査することができる。LIDAR出力信号が走査可能な角度の範囲はΦであり、いくつかの例では、α=0のときにLIDAR出力信号の方向に測定されるΦ=0°のときに、Φから-Φの範囲である。Δlの値がゼロでない場合、長さの差は、異なる波長の光が異なる方向(θ)でチップから遠ざかるように回折を引き起こす。したがって、チップから離れるにつれて、出発LIDAR信号のいくらかの拡散が存在する可能性がある。さらに、回折のレベルを変化させることにより、α=0°のときに、出発LIDAR信号がチップから遠ざかる角度を変化させる。しかし、長さの差(Δl≠0)を有する操作導波路を設けることにより、チップ上の操作導波路のレイアウトを簡略化することができる。
【0098】
代替導波路102は、異なる代替導波路102が出発LIDAR信号をスプリッタ110の入射側の異なる位置に誘導するように構成される。該スプリッタは、出力信号が、出発LIDAR信号がスプリッタ110に入射する位置に応答して変化する位相差で操作導波路112に入射するように構成される。その結果、出力信号間の位相差は、出発LIDAR信号が、スプリッタ110に入射するために使用される代替導波路に基づいて変化する。スプリッタ110は、デマルチプレクサとは対照的に、波長に依存しなくてもよい。出発LIDAR信号がスプリッタ110に入射する位置に応答して出力信号間の位相差が変化する、波長に依存しないスプリッタの例には、スターカプラが含まれるが、これに限定されない。
【0099】
出力信号間の位相差は、出発LIDAR信号がスプリッタ110に入射するために使用する代替導波路に基づいて変化するので、結果として生じる出発LIDAR信号が再誘導構成要素から離れる方向は、LIDAR出力信号がスプリッタ110に入射するために使用する代替導波路102の関数である。その結果、LIDAR出力信号は異なる代替導波路102に関連付けることができる。例えば、図12Aは、LOSと表示された複数の異なるモードを含むLIDAR出力信号を示す。ここで、nが代替導波路102指数n=1乃至Nに相当する。その結果、LOS(LIDAR出力信号モード2)の光は、指数n=2の代替導波路102上のスプリッタ110に入射し、LOSの光は、指数n=Nの代替導波路102上のスプリッタ110に入射する。LOS乃至LOSのいずれが、異なる方向に再誘導換構成要素103から離れるため、LIDAR出力信号(出発LIDAR信号)の再誘導構成要素から離れる方向が出発LIDAR信号がスプリッタ110に入射する代替導波路102の変化に応じて変化する。この方向の変化は、スプリッタ110によって誘起される位相シフトのために生じるので、移相器114は、図12Aに示される方向の変化を引き起こすように動作または変更される必要はない。その結果、電子回路は、光学スイッチ100が出発LIDAR信号を誘導する代替導波路102を変更することによって、LIDAR出力信号(出発LIDAR信号)の方向を変更することができる。
【0100】
光学スイッチ100は、隣接する操作導波路のファセット18における隣接する出力信号間の位相差に影響を与えるためにも使用できるので、隣接する操作導波路のファセット18における隣接する出力信号間の位相差は、スプリッタ110の構築、操作導波路112の構築、任意の位相チューナ104の動作、及び出発LIDAR信号が誘導された代替導波路102からなる群から選択される1つ以上の要素の関数とすることができ。その結果、LIDAR出力信号が再誘導構成要素103から離れる方向は、スプリッタ110の構築、操作導波路112の構築、任意の位相チューナ104の動作、及び出発LIDAR信号が誘導された代替導波路102からなる群から選択された1つ以上の要素の関数である。
【0101】
これらの要素のうちの1つ以上を用いて、出発LIDAR信号の方向を調整することができる。例えば、光学スイッチ100及び位相チューナ104を併用して、LIDAR出力信号の方向を調整することができる。図12AにおいてLOSと表示されたLIDAR出力信号のいずれは、位相チューナ104を用いて角度範囲Φに亘って調整され得る。図12AにおいてLOSと表示されたLIDAR出力信号の角度範囲は、図12BにΦと表示された位相チューナ104を用いて調整でき、また、図12AにおいてLOSと表示されたLIDAR出力信号の角度範囲は、図12BにΦと表示された位相チューナ104を用いて調整できる。各角度範囲は、Φn,a~Φn,bの角度を包含する。ここで、異なる角度範囲のいずれによって包含された角度が異なってもよいため、角度範囲がΦn,a及びΦn,bの値と同じ2つのものがない。図12Bに示されるように、いくつかの例では、再誘導構成要素は、異なるLIDAR出力信号モード(LOS)の角度範囲が互いに重なり合うように構成される。その結果、位相チューナ(Φ)に提供される操作と、光学スイッチに提供される操作とを組み合わせることにより、LIDAR出力信号は、全視野にわたって連続した方向の範囲内で操作することができる。
【0102】
様々な手法を用いて、LIDAR出力信号モード(LOS)の角度範囲を増大させることができる。例えば、導波路102間の分離を増加させることにより、LIDAR出力信号モード(LOS)の角度範囲を増大させることができる。
【0103】
隣接する操作導波路112のファセット18における隣接する出力信号間の位相差が直線的に変化するように、代替導波路102、スプリッタ110及び操作導波路112の構造、また任意の位相チューナ104の動作を選択すると、得られるLIDAR出力信号は平行にされる。隣接する操作導波路112のファセット18における隣接する出力信号間の位相差が非直線的に変化するように、代替導波路102、スプリッタ110及び操作導波路112の構造、また任意の位相チューナ104の動作を選択すると、得られるLIDAR出力信号を集束させることができる。したがって、代替導波路102の選択、スプリッタ110の構築、操作導波路112の構築、及び任意の位相チューナ104の動作からなる群から選択された1つ以上の要素を構築することによって、分岐、平行、または集束のレベルを選択することができる。
【0104】
LIDAR出力信号は、チップから離れた対象物から反射することができる。反射信号の少なくとも一部は、後方から操作導波路112に進み、出発LIDAR信号がLIDAR入力信号または入射LIDAR信号として生成される代替導波路102に入射する。代替導波路102は、LIDAR入力信号を、LIDAR入力信号をユーティリティ導波路16に戻すように誘導する光学スイッチ100に誘導する。そして、チップ及び電子回路は、本出願の他の箇所で説明したようにLIDAR入力信号を処理することができる。
【0105】
システムの動作中に、電子回路は、チップが所望の処理に必要とされる反射されたLIDAR入力信号を受信するまで、出発LIDAR信号を受信する代替導波路102をスイッチングすることを遅延させることができる。その結果、LIDAR出力信号と関連するLIDAR入力信号とは、同一の代替導波路102に誘導される。
【0106】
光学スイッチ100は、同じLIDARチップ上に単一的に統合されてもよく、または、LIDARチップから分離され、光学ファイバによって接続されてもよい。
【0107】
本発明のその他の実施形態、組合せ及び修正は、これらの教示に鑑みて当業者によって容易に生じるであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。上記の明細書及び図面と関連させる場合に、該特許請求の範囲は、全ての実施形態及び修正を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B