(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】編地の編成方法
(51)【国際特許分類】
D04B 1/00 20060101AFI20240123BHJP
D04B 15/06 20060101ALI20240123BHJP
D04B 15/48 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
D04B1/00 Z
D04B15/06 Z
D04B15/48
(21)【出願番号】P 2021008776
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020024627
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】森 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 智士
(72)【発明者】
【氏名】由井 学
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】登尾 佳史
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢
(72)【発明者】
【氏名】武友 俊澄
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-031807(JP,A)
【文献】特開2015-127460(JP,A)
【文献】特開2015-010291(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00
D04B 15/06
D04B 15/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編針を動作させる少なくとも1つのカムシステムを搭載するキャリッジと、前記編針に第一編糸を給糸する第一給糸口と、前記編針に第二編糸を給糸する第二給糸口と、を備える横編機を用いて、
前記キャリッジから見て、主糸が供給される主糸供給位置と、添糸が給糸される添糸供給位置とを規定したとき、
前記第一給糸口が前記主糸供給位置に配置され、前記第二給糸口が前記添糸供給位置に配置される標準プレーティング編成と、
前記第二給糸口が前記主糸供給位置に配置され、前記第一給糸口が前記添糸供給位置に配置される反転プレーティング編成と、
を切り替える編地の編成方法において、
前記キャリッジを一方向にのみ移動させ、前記少なくとも1つのカムシステムの一つによって編幅方向に並ぶ編目列を編成する途中で前記標準プレーティング編成と前記反転プレーティング編成とを切り替える切替動作を少なくとも1回行い、
前記切替動作を行う際、前記第一給糸口と前記第二給糸口のうち、前記主糸供給位置にある給糸口を前記添糸供給位置に向けて移動させると共に、前記添糸供給位置にある給糸口を前記主糸供給位置に向けて移動さ
せ、
前記切替動作は、切り替え前のプレーティング編成の最後の編目を編成する編針が前記第一編糸と前記第二編糸を引っ掛けた後から、切り替え後のプレーティング編成の最初の編目を編成する編針が前記第一編糸と前記第二編糸とを引っ掛けるまでの間に完了させる、
編地の編成方法。
【請求項2】
前記切替動作において、前記第一給糸口と前記第二給糸口の少なくとも一方の給糸口を、前記少なくとも一方の給糸口が最終的に配置される最終位置を通過させた後、反転させて前記最終位置に配置する請求項1に記載の編地の編成方法。
【請求項3】
前記主糸供給位置から前記添糸供給位置に移動する給糸口を、前記添糸供給位置を超える位置まで移動させてから前記添糸供給位置に配置する請求項2に記載の編地の編成方法。
【請求項4】
前記添糸供給位置から前記主糸供給位置に移動する給糸口を、前記主糸供給位置を超える位置まで移動させてから前記主糸供給位置に配置する請求項2または請求項3に記載の編地の編成方法。
【請求項5】
前記切替動作において、前記主糸供給位置から前記添糸供給位置に移動する給糸口と、前記添糸供給位置から前記主糸供給位置に移動する給糸口とが交差する位置を、前記主糸供給位置と前記添糸供給位置との中間位置よりも前記添糸供給位置寄りの位置とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の編地の編成方法。
【請求項6】
前記切替動作の開始から終了までの間に、前記切替動作終了後の最初の編目を編成する編針の動作を一旦停止させる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の編地の編成方法。
【請求項7】
前記横編機は、前記キャリッジの移動方向に沿って、前記キャリッジと独立して移動する自走式の第一キャリア及び第二キャリアを備え、
前記第一キャリアは、前記第一給糸口を備え、
前記第二キャリアは、前記第二給糸口を備え、
上記切替動作において、前記第一キャリアと前記第二キャリアとを個別に動かす請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の編地の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレーティング編成を含む編地の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の編針を有する針床を備える横編機を用いて編地を編成することが行なわれている。
図6は、横編機の針床30をその上面から見た模式図である。
図6に示されるように、針床30の歯口側の先端部には各編針3A,3B,3Cに並列されるシンカー5A,5B,5Cが設けられている。シンカー5A,5B,5Cは、編針3A,3B,3
Cのフック3Fに給糸された編糸1Y,2Yが針床30に引き込まれたときに、編糸1Y,2Y全体が針床30側に引き込まれないように押さえる部材である。シンカー5A,5B,5
Cによって編糸1Y,2Yが押さえられることで、編目4と編目4の間を繋ぐシンカーループ4Sが形成される。
【0003】
図6は、二つの異なる編糸を並列させて編成するプレーティング編成の様子を示した模式図でもある。プレーティング編成では、編地の表側に配置される主糸と、編地の裏側に配置される添糸とが一つの編針3A,3Bに引き込まれる。
図6では、第一キャリア11の第一給糸口1から給糸される第一編糸1Yが主糸、第二キャリア12の第二給糸口2から給糸される第二編糸2Yが添糸である。第一給糸口1は、キャリッジから見た所定位置である主糸供給位置に配置される。第二給糸口2は、キャリッジから見た所定位置である添糸供給位置に配置される。第二給糸口2は、両編糸1Y,2Yが引き込まれる編針3Bに対して、第一給糸口1よりも近い位置にある。そのため、第二給糸口2からシンカー5Cに延びる第二編糸2Yと水平線との角度が、第一編糸1Yのそれよりも大きくなる。つまり、編針3Bのフック3F内において第一編糸1Yよりも第二編糸2Yの方が高い位置に配置される。編地の編成時におけるこの第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下関係に起因して、編地の表面側に第一編糸1Yが配置され、第二編糸2Yは編地の裏面側に配置される。
【0004】
特許文献1から特許文献3には、編地の表面側に第一編糸が配置される標準プレーティング編成に加え、編地の表面側に第二編糸が配置される反転プレーティング編成を行う技術が開示されている。特許文献1の技術では、反転プレーティング編成において、編針で第一編糸と第二編糸を引き込む際にシンカーを揺動させ、シンカー上で第一編糸と第二編糸の上下位置を入れ替えている。特許文献2,3では、反転プレーティング編成において、編針の上下動のタイミングを変化させ、第一編糸と第二編糸の上下位置とを入れ替えている。これらの動作は、給糸口を所定の位置に保った状態で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-176159号公報
【文献】特開2018-178292号公報
【文献】特開2018-178293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
標準プレーティング編成と反転プレーティング編成との切替箇所では、切替のタイミングなどによって添糸の一部が編地の表面側に露出する『滲み』が発生する場合がある。この滲みを発生し難くする編地の編成方法が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを切り替える際、滲みが発生し難く、安定して編地を編成できる編地の編成方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>本発明の編地の編成方法は、
編針を動作させる少なくとも1つのカムシステムを搭載するキャリッジと、前記編針に第一編糸を給糸する第一給糸口と、前記編針に第二編糸を給糸する第二給糸口と、を備える横編機を用いて、
前記キャリッジから見て、主糸が供給される主糸供給位置と、添糸が給糸される添糸供給位置とを規定したとき、
前記第一給糸口が前記主糸供給位置に配置され、前記第二給糸口が前記添糸供給位置に配置される標準プレーティング編成と、
前記第二給糸口が前記主糸供給位置に配置され、前記第一給糸口が前記添糸供給位置に配置される反転プレーティング編成と、
を切り替える編地の編成方法において、
前記キャリッジを一方向にのみ移動させ、前記少なくとも1つのカムシステムの一つによって編幅方向に並ぶ編目列を編成する途中で前記標準プレーティング編成と前記反転プレーティング編成とを切り替える切替動作を少なくとも1回行い、
前記切替動作を行う際、前記第一給糸口と前記第二給糸口のうち、前記主糸供給位置にある給糸口を前記添糸供給位置に向けて移動させると共に、前記添糸供給位置にある給糸口を前記主糸供給位置に向けて移動させる。
【0009】
上記編地の編成方法では、切替動作時に第一給糸口の位置と第二給糸口の位置とが入れ替えられる。切替動作の前に主糸であった編糸は、切替動作の後には添糸になり、切替動作の前に添糸であった編糸は、切替動作の後には主糸になる。つまり、主糸供給位置に配置される給糸口から給糸される編糸は主糸、添糸供給位置に配置される給糸口から給糸される編糸は添糸である。
【0010】
ここで、標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを切り替える場合、切り替え直前の編針が第一編糸と第二編糸を引っ掛けた後、歯口に進出した切り替え直後の編針が第一編糸と第二編糸を引っ掛けるまでの間に両給糸口の位置の入れ替えが完了する必要がある。例えば、標準プレーティング編成から反転プレーティング編成に切り替える場合、切り替え直前の編針は、標準プレーティング編成の最後の編目を編成する編針であり、切り替え直後の編針は、反転プレーティング編成の最初の編目を編成する編針である。
【0011】
<2>本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記切替動作において、前記第一給糸口と前記第二給糸口の少なくとも一方の給糸口を、前記少なくとも一方の給糸口が最終的に配置される最終位置を通過させた後、反転させて前記最終位置に配置する形態が挙げられる。
【0012】
上記最終位置とは、標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを切り替えた後における、キャリッジの特定位置からキャリッジの進行方向に所定長離れた給糸口の定常位置のことである。
【0013】
<3>上記<2>に係る編地の編成方法の一形態として、
前記主糸供給位置から前記添糸供給位置に移動する給糸口を、前記添糸供給位置を超える位置まで移動させてから前記添糸供給位置に配置する形態を挙げることができる。
この形態<3>における添糸供給位置が、上記形態<2>における最終位置に相当する。
【0014】
<4>上記<2>または<3>に係る編地の編成方法の一形態として、
前記添糸供給位置から前記主糸供給位置に移動する給糸口を、前記主糸供給位置を超える位置まで移動させてから前記主糸供給位置に配置する形態を挙げることができる。
この形態<4>における主糸供給位置が、上記形態<2>における最終位置に相当する。
【0015】
<5>本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記切替動作において、前記主糸供給位置から前記添糸供給位置に移動する給糸口と、前記添糸供給位置から前記主糸供給位置に移動する給糸口とが交差する位置を、前記主糸供給位置と前記添糸供給位置との中間位置よりも前記添糸供給位置寄りの位置とする形態が挙げられる。
【0016】
<6>本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記切替動作の開始から終了までの間に、前記切替動作終了後の最初の編目を編成する編針の動作を一旦停止させる形態が挙げられる。
【0017】
<7>本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記横編機は、前記キャリッジの移動方向に沿って、前記キャリッジと独立して移動する自走式の第一キャリア及び第二キャリアを備え、
前記第一キャリアは、前記第一給糸口を備え、
前記第二キャリアは、前記第二給糸口を備え、
上記切替動作において、前記第一キャリアと前記第二キャリアとを個別に動かす形態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の編地の編成方法では、キャリッジから見て、第一給糸口と第二給糸口とを反対方向に動かして第一給糸口の位置と第二給糸口の位置とを入れ替えることで、フック内における第一編糸と第二編糸の上下位置をスムーズに入れ替えている。キャリッジから見て、第一給糸口と第二給糸口とを互いに反対方向に動かすことで、キャリッジを一方向にのみ移動させる間に、一つのカムシステムによって標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを行える。また、一つのカムシステムを一方向に移動させて標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを行っても、編地に滲みが発生し難い。また、本発明の編地の編成方法では、編目列の編成時にキャリッジを反転させないので、編地が効率的に編成される。
【0019】
編針のフックに固定され、各給糸口に延びる第一編糸と第二編糸は、両給糸口の位置を入替える際に、重なって絡む。上記<2>の編地の編成方法では、第一給糸口と第二給糸口の少なくとも一方の給糸口を、その給糸口が最終的に配置される最終位置を通過させている。このような動作が行われることで、第一編糸と第二編糸とが絡む位置が、キャリッジの進行方向と反対側、切替前のプレーティング編成の最後の編目が配置される側に寄せられる。その結果、第一編糸と第二編糸の上下位置の入れ替えが行われ易くなる。
【0020】
上記形態<3>の編地の編成方法では、主糸供給位置から添糸供給位置に移動する給糸口を、添糸供給位置を超える位置まで移動させることで、その給糸口からシンカーに延びる添糸と水平線との角度が大きくなる。その結果、添糸と主糸とのなす角が大きくなり、主糸と添糸とが絡む位置が、切替前のプレーティング編成の最後の編目が配置される側に寄せられ易くなる。
【0021】
上記形態<4>の編地の編成方法では、添糸供給位置から主糸供給位置に移動する給糸口を、主糸供給位置を超える位置まで移動させることで、その給糸口からシンカーに延びる主糸と水平線との角度が小さくなる。その結果、主糸と添糸とのなす角が大きくなり、主糸と添糸とが絡む位置が、切替前のプレーティング編成の最後の編目が配置される側に寄せられ易くなる。
【0022】
上記形態<5>の編地の編成方法では、添糸供給位置に向かう給糸口と、主糸供給位置に向かう給糸口とが交差する位置、即ち両給糸口がすれ違う位置を、主糸供給位置と添糸供給位置との中間位置よりも添糸供給位置寄りの位置としている。そうすることで、両給糸口が交差する位置において、各給糸口から延びる編糸と水平線との角度が大きくなる。その結果、第一編糸と第二編糸の上下位置が入れ替わり易くなる。上記形態<5>の編地の編成方法は、特にキャリッジの移動速度が速い場合に有効である。
【0023】
上記形態<6>の編地の編成方法では、切替動作時に編針を一旦停止させている。そうすることで、第一編糸と第二編糸の上下位置を入れ替えるための時間を稼ぐことができるので、両編糸の上下位置の入れ替えがより確実に行われる。
【0024】
上記形態<7>の編地の編成方法に示されるように、第一キャリアと第二キャリアとが、キャリッジの移動と独立して移動する自走式であれば、切替動作時に第一編糸と第二編糸の上下位置が素早く入れ替えられる。そのため、短いスパンで標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とが切り替え可能になる。また、第一キャリアと第二キャリアとが個別に移動可能であれば、上記形態<2>の編地の編成方法を実施し易い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】
図1Aは、実施形態1に係る編地の編成方法を説明する第一の説明図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態1に係る編地の編成方法を説明する第二の説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る編地の編成方法によって得られた編地の写真を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る別例の編地の編成方法によって得られた編地の写真を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態2に係る編地の編成方法を説明する第一の説明図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態2に係る編地の編成方法を説明する第二の説明図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態3に係る編地の編成方法を説明する第一の説明図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態3に係る編地の編成方法を説明する第二の説明図である。
【
図6】
図6は、プレーティング編成時における針床上の編糸の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態1>
以下、
図1A,1Bに基づいて、第一編糸1Yが編地の表面側に配置される標準プレーティング編成と、第二編糸2Yが編地の表面側に配置される反転プレーティング編成と、を適宜切り替える編地の編成方法を説明する。
図1A,1Bでは、編成に関与する前側の針床30のみが示され、前側の針床に対向する後側の針床は省略されている。本例の編成方法に使用する横編機は、2枚ベッドの横編機であっても良いし、4枚ベッドの横編機であっても良い。横編機に備わる編針は、フックを開閉するラッチを備えるラッチニードルでも良いし、フックを開閉するスライダーを備える複合針でも良い。
【0027】
横編機は、少なくとも一つのカムシステム6を搭載するキャリッジ7を備える。編地の編成時、キャリッジ7は針床30の長さ方向に沿って移動し、カムシステム6が針床30の各編針3A,3B,3Cを動作させる。
図1に示されるカムシステム6とキャリッジ7は簡素化されており、実際のカムシステム6とキャリッジ7とは形状も大きさも異なる。
【0028】
また、本例の横編機は、第一編糸1Yを給糸する第一キャリア11と、第二編糸2Yを給糸する第二キャリア12とを備える。第一キャリア11と第二キャリア12はそれぞれ、レールに接触する走行ローラを備え、レールに沿って走行する。本例では、前側の針床30と後側の針床(図示せず)との対向方向における前側の針床30から見て第一キャリア11が手前側、第二キャリア12が奥側に配置されている。つまり、第一キャリア11と、第二キャリア12とは異なる走行ルート上に取付けられ、個別に自走する。キャリア11,12を自走させるには、例えば、キャリア11,12が固定されるベルトと、ベルトを動かすモータとを備える構成が挙げられる。この構成では、ベルトの動きに伴って、キャリア11,12の位置が変化する。
【0029】
本例では、
図1A,1Bを参照して、キャリッジ7を一方向にのみ移動させ、キャリッジ7に備わる一つのカムシステム6によって編目列40を編成する途中で標準プレーティング編成から反転プレーティング編成に切り替える切替動作を説明する。キャリッジ7の下にある白抜き矢印はキャリッジ7の進行方向であり、編目列40の編成方向である。
図1Aには、第一編糸1Yが主糸、第二編糸2Yが添糸である標準プレーティング編成によって、編目列40を構成する一部の編目4を編成する様子が示されている。標準プレーティング編成では、第一給糸口1が主糸供給位置P1に配置され、第二給糸口2が添糸供給位置P2に配置された状態で編成が行われる。
【0030】
主糸供給位置P1と添糸供給位置P2は、キャリッジ7の特定位置からキャリッジ7の進行方向に所定長離れた定常位置である。キャリッジ7の特定位置と主糸供給位置P1との距離L1は、キャリッジ7の特定位置と添糸供給位置P2との距離L2よりも大きい。編目列40の編成時、キャリッジ7は移動するため、横編機の外側から見た主糸供給位置P1と添糸供給位置P2もキャリッジ7と共に移動する。ここで、主糸供給位置P1と添糸供給位置P2は、編糸の素材や編成速度などの編成条件に応じて適切な位置が変化する。
【0031】
第二給糸口2は、標準プレーティング編成の最後の編目4が係止される編針3Bに対して、針床30の長さ方向に第一給糸口1よりも近い位置にある。そのため、第二給糸口2からシンカー5Cに延びる第二編糸2Yと水平線との角度βが、第一給糸口1からシンカー5Cに延びる第一編糸1Yと水平線との角度αよりも大きくなる。シンカー5Cは、編針3Bに対してキャリッジ7の進行方向に隣接する位置にある。フック3F内において第一編糸1Yよりも第二編糸2Yの方が高い位置に配置される。編地の編成時におけるこの第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下関係に起因して、第一編糸1Yが主糸として編地の表面側に配置され、第二編糸2Yが添糸として編地の裏面側に配置される。第一編糸1Yと第二編糸2Yは、編針3Bのフック3Fに引っ掛けられ、その位置関係が固定されている。
【0032】
図1Aの状態から反転プレーティング編成に切り替える場合、
図1Bに示されるように、キャリッジ7の速度(例えば、0.8m/s~1.0m/s)を緩めることなく、第一給糸口1の位置と第二給糸口2の位置とを入れ替える。より具体的には、主糸供給位置P1にある第一給糸口1を添糸供給位置P2に移動させると共に、添糸供給位置P2にある第二給糸口2を主糸供給位置P1に移動させる。添糸供給位置P2に向かって移動する第一給糸口1から給糸される第一編糸1Yは添糸になり、主糸供給位置P1に向かって移動する第二給糸口2から給糸される第二編糸2Yは主糸になる。本例では、第一給糸口1を備える第一キャリア11を、キャリッジ7と同方向にキャリッジ7の移動速度よりも遅く移動させる。また、第二給糸口2を備える第二キャリア12を、キャリッジ7と同方向にキャリッジ7の移動速度よりも早く移動させる。そうすることで、キャリッジ7の特定位置から見たときに、第一キャリア11はキャリッジ7の移動方向と反対方向に移動し、第二キャリア12はキャリッジ7の移動方向に移動する。本例とは異なり、第一キャリア11を停止させることで、キャリッジ7から見て、第一キャリア11をキャリッジ7の移動方向と反対方向に移動させても良い。その他、キャリッジ7の移動速度が遅い場合、第一キャリア11を動かすモータを逆回転させ、第一キャリア11をキャリッジ7の移動方向と逆方向に移動させても良い。ここで、移動するキャリッジ7から見て、仮に第一キャリア11と第二キャリア12とを同時に、同速度となるように移動させた場合、主糸供給位置P1と添糸供給位置P2との中間位置CPにおいて第一給糸口1と第二給糸口2とがすれ違う。つまり、第一給糸口1と第二給糸口2とが中間位置CPにおいて交差する。
【0033】
第一給糸口1と第二給糸口2の位置の入れ替えは、下記条件I,IIを満たす間に終わらせる必要がある。
・条件I…標準プレーティング編成の最後の編目が、下降中の編針3Bのフック3Fに引っ掛けられて固定された状態。
・条件II…第一編糸1Yと第二編糸2Yとが、反転プレーティング編成の最初の編目を形成するための編針3Cに備わるフック3Fに引っ掛けられて固定される前の状態。
図1Bでは、第一編糸1Yと第二編糸2Yとが編針3Cのフック3F内に配置されているが、編針3Cのフック3Fに引っ掛けられてはいない。
【0034】
図1Aにおいて、第一給糸口1が、前側の針床30と図示しない後側の針床との対向方向における針床30側から見て、第二給糸口2よりも手前側にある場合、第一編糸1Yと第二編糸2Yとがシンカー5Cに接触する箇所で、第一編糸1Yがシンカー5Cと第二編糸2Yとで挟まれた状態となり易い。そのため、
図1Bに示されるように、第一給糸口1が添糸供給位置P2に移動されても、シンカー5Cの先端側の近傍における第一編糸1Yと第二編糸2Yとが絡む位置が、編針3Bに係止される標準プレーティング編成の最後の編目4に近い位置にずれ難い。つまり、針床30側から見て、主糸供給位置P1にある給糸口が、添糸供給位置P2にある給糸口よりも手前側にある状態から切替動作を行うことは難しい。そこで、本例では、第一編糸1Yと第二編糸2Yとが絡む位置を、標準プレーティング編成の最後の編目4に近い位置にずらすために、補助動作Aと補助動作Bとが行われている。補助動作A及び補助動作Bの詳細については後述する。
【0035】
ここで、本例とは異なり、第一給糸口1が、針床30から見て第二給糸口2よりも奥側にある場合、第一編糸1Yは、シンカー5Cと第二編糸2Yとで挟まれ難い。そのため、第一給糸口1が添糸供給位置P2に移動されたときに、第一編糸1Yと第二編糸2Yとが絡む位置が、標準プレーティング編成の最後の編目4に近い位置にずれ易い。つまり、針床30側から見て、主糸供給位置P1にある給糸口が、添糸供給位置P2にある給糸口よりも奥側にある状態から切替動作を行うことは容易である。
【0036】
≪補助動作A≫
補助動作Aは、
図1Bの左側の折り返し矢印で示すように、第一給糸口1が添糸供給位置P2を超える位置(以下、超過位置P20)まで移動する動作のことである。超過位置P20は、添糸供給位置P2を挟んで主糸供給位置P1の反対側の位置である。第一給糸口1は、超過位置P20に移動した後、添糸供給位置P2に移動する。第一給糸口1が超過位置P20に配置されると、第一給糸口1からシンカー5Cに延びる第一編糸1Y(添糸)と水平線との角度αが大きくなる。そのため、第一編糸1Yと第二編糸2Y(主糸)とのなす角γが大きくなり、第一編糸1Yと第二編糸2Yとがシンカー5Cに接触する箇所の近傍で、第一編糸1Yと第二編糸2Yとが絡む位置が編針3B側にずれ易い。従って、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置の入れ替えが、標準プレーティング編成の最後の編目に近い位置で行われ易い。
【0037】
補助動作Aにおいて、第一給糸口1は上方に移動することが好ましい。より具体的には、第一給糸口1は超過位置P20に向かうに従って、歯口から離れる方向に徐々に上昇することが好ましい。第一給糸口1が上昇することで、上記角度αがより大きくなり、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置の入れ替えが、標準プレーティング編成の最後の編目に近い位置で行われ易くなる。第一給糸口1が超過位置P20から添糸供給位置P2に移動する際、第一給糸口1は添糸供給位置P2に向かうに従って、歯口に近づく方向に徐々に下降することが好ましい。第一給糸口1を上下動させるには、第一キャリア11を上下方向に揺動させる構成を用いれば良い。例えば、キャリアの上方にキャリアの高さを変化させるガイドカムを設けた特許4125319号公報(公報1)の構成、あるいは糸ガイドレールに平行な軸線の周りに回転駆動可能な制御素子によってキャリアの垂直位置を調整できるようにした特表2012-524842号公報(公報2)の構成などが挙げられる。これらの公報の構成は、キャリアの高さを2段階に調整する構成であるが、キャリアの高さを連続的に調整できる構成であっても良い。例えば、公報1のガイドカムにおけるカム面(公報1の符号39)を、外側に向かうに従って高くなる傾斜面とすることが挙げられる。この場合、ガイドカムの傾斜面におけるキャリアが止まる位置を変化させることで、キャリアの高さを変化させることができる。また、例えば公報2の構成において、制御素子の回転角度を調整できるようにすることで、キャリアの高さを変化させることができる。第一給糸口1が超過位置P20に向かうに従って上昇する構成では、上昇しない構成に比べて、添糸供給位置P2から超過位置P20までの距離を短くできる。
【0038】
≪補助動作B≫
補助動作Bは、
図1Bの右側の折り返し矢印で示すように、第二給糸口2が主糸供給位置P1を超える位置(以下、超過位置P10)まで移動する動作のことである。超過位置P10は、主糸供給位置P1を挟んで添糸供給位置P2の反対側の位置である。第二給糸口2は、超過位置P10に移動した後、主糸供給位置P1に移動する。第二給糸口2が超過位置P10に配置されると、第二給糸口2からシンカー5Cに延びる第二編糸2Y(主糸)と水平線との角度βが小さくなる。そのため、第一編糸1Y(添糸)と第二編糸2Yとのなす角γが大きくなり、第一編糸1Yと第二編糸2Yとがシンカー5Cに接触する箇所の近傍で、第一編糸1Yと第二編糸2Yとが絡む位置が編針3B側にずれ易い。従って、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置の入れ替えが、標準プレーティング編成の最後の編目に近い位置で行われ易い。
【0039】
図1Bでは補助動作A及び補助動作Bの両方が行われている。本例とは異なり、補助動作Aのみが行われても良いし、補助動作Bのみが行われても良い。補助動作Aのみが行われる場合、補助動作Bのみが行われる場合に比べて、第一編糸1Yと第二編糸2Yとのなす角γが大きくなり易い。ここで、超過位置P10,P20は、編糸の素材や編成速度などの編成条件に応じて適切な位置が変化する。
【0040】
実施形態1に係る編地の編成方法では、移動可能に構成されている第一給糸口1と第二給糸口2とを互いに反対方向に動かして第一給糸口1の位置と第二給糸口2の位置とを入れ替えることで、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置を入れ替えている。つまり、本例の編地の編成方法では、特許文献1~3とは異なる手段によって、両編糸1Y,2Yの上下位置を入れ替えている。
【0041】
第一給糸口1と第二給糸口2とを互いに反対方向に動かすことで、標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを、一つのカムシステム6によって連続的に行える。また、一つのカムシステム6によって標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを行っても、編目列40における所望の位置で第一編糸1Yと第二編糸2Yとが入れ替わり易く、編地に滲みが発生し難い。具体例として、実施形態1に係る編地の編成方法によって得られた編地の写真を
図2に示す。
図2における中央から左側にある濃いグレーの部分は、第一編糸1Yが主糸となる標準プレーティング編成によって得られた部分である。中央から右側にある薄いグレーの部分は、第二編糸2Yが主糸となる反転プレーティング編成によって得られた部分である。
図2に示されるように、編地の編幅方向における中央の位置で、第一編糸1Yと第二編糸2Yとが綺麗に入れ替わっている。また、反転プレーティング編成によって得られた部分において滲みがなく、編地の見栄えが良い。
【0042】
対比として、
図1に示される補助動作A,Bを行わなかった編地の写真を
図3に示す。
図3の見方は
図2と同じである。
図3に示されるように、編地の編幅方向における中央の位置で、おおむね第一編糸1Yと第二編糸2Yとが入れ替わっている。しかし、反転プレーティング編成によって得られた部分の一部に滲みが生じている。滲みの発生は、第一編糸1Yを給糸する第一給糸口1が、針床30から見て第二給糸口2よりも手前側にあることが関係している。反転プレーティング編成から標準プレーティング編成に切り替える際は、主糸である第二編糸2Yを給糸する第二給糸口2が、針床30から見て第一給糸口1よりも奥側にあるため、滲みは生じ難い。
【0043】
<実施形態2>
実施形態2では、
図4A,4Bに基づいて、上下方向に揺動可能に構成される第一給糸口1と第二給糸口2とを備える横編機を用いた標準プレーティング編成と反転プレーティング編成との切り替えを説明する。
図4A,4Bでは、針床の図示を省略している。
【0044】
図4Aには、第一給糸口1が主糸供給位置P1に、第二給糸口2が添糸供給位置P2に配置される標準プレーティング編成が示されている。第一給糸口1と第二給糸口2が上下方向に揺動する構成では、キャリッジ7の特定位置から高さ方向に高さH1だけ離れた位置が主糸供給位置P1、高さH2だけ離れた位置が添糸供給位置P2である。高さH2は、高さH1よりも高い。第二給糸口2は第一給糸口1よりも高い位置に配置されるので、第二給糸口2から給糸される第二編糸2Yの角度βは、第一給糸口1から給糸される第一編糸1Yの角度αよりも大きい。従って、第一編糸1Yが主糸、第二編糸2Yが添糸となる。
【0045】
図4Aの状態から反転プレーティング編成に切り替える場合、
図4Bに示されるように、第一給糸口1を添糸供給位置P2に移動させると共に、第二給糸口2を主糸供給位置P1に移動させる。第一給糸口1は、添糸供給位置P2よりも高い超過位置P20に移動させる補助動作Aを行ってから、添糸供給位置P2に移動されることが好ましい.また、第二給糸口2は、主糸供給位置P1よりも低い超過位置P10に移動させる補助動作Bを行ってから、主糸供給位置P1に移動されることが好ましい。
【0046】
第一給糸口1(第二給糸口2)を上下方向に揺動可能に構成するには、第一キャリア11(第二キャリア12)に揺動機構を搭載させると良い。揺動機構は、第一キャリア11(第二キャリア12)を高さ方向に揺動させる機構である。
【0047】
<実施形態3>
実施形態3では、
図5A,5Bに基づいて、第一給糸口1と第二給糸口2とを有する回転式キャリア13を備える横編機を用いた標準プレーティング編成と反転プレーティング編成との切り替えを説明する。
【0048】
図5Aには、第一給糸口1が主糸供給位置P1に、第二給糸口2が添糸供給位置P2に配置される標準プレーティング編成が示されている。
図5Aの状態から反転プレーティング編成に切り替える場合、
図5Bに示されるように、回転式キャリア13を180°回転させる。その結果、第一給糸口1が添糸供給位置P2に移動され、第二給糸口2が主糸供給位置P1に移動される。
【0049】
回転式キャリア13を回転可能に構成するには、回転式キャリア13が取り付けられるキャリアに回転機構を搭載させると良い。回転機構は、キャリアに対して回転式キャリア13を回転させる機構である。
【0050】
回転式キャリア13が自走可能に構成されている場合、回転式キャリア13を回転させると共に、瞬間的に回転式キャリア13をキャリッジ7の進行方向と反対側に移動させることが好ましい。第一給糸口1が超過位置P20に移動され、第一編糸1Yの角度αが大きくなり、第一編糸1Yと第二編糸2Yとが分離され易くなる。
【0051】
<実施形態4>
実施形態4では、実施形態1~3とは異なる手段によって、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置を入れ替え易くする編地の編成方法を説明する。もちろん、本例の編地の編成方法は、実施形態1~3と組み合わせて行うことができる。本例の説明にあたっては、
図1Aを参照する。
【0052】
本発明者らの検討によれば、キャリッジ7の移動速度が高速(例えば、1.0m/s以上)になると、針床30から見た第一給糸口1と第二給糸口2の前後関係に起因する両編糸1Y,2Yの上下位置の入れ替え難さが変化することが分かった。
図1Aでは、針床30側から見て、主糸供給位置P1にある第一給糸口1が、添糸供給位置P2にある第二給糸口2よりも奥側にある状態から切替動作を行う場合、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置が入れ替わり難いという現象が生じた。その対策として、本実施形態では、第一給糸口1と第二給糸口2とが交差する位置を、中間位置CPよりも添糸供給位置P2寄りの位置とする。そうすることで、第一給糸口1と第二給糸口2との交差時における第一編糸1Yの角度αと第二編糸2Yの角度βとが、中間位置CPにおいて両給糸口1,2が交差する場合よりも大きくなる。その結果、キャリッジ7の移動速度が高速であっても、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置が入れ替わり易くなる。
【0053】
両給糸口1,2が交差する位置を添糸供給位置P2寄りの位置とする具体的な構成として、主糸供給位置P1にある給糸口を、添糸供給位置P2にある給糸口よりも早いタイミングで動作させることが挙げられる。
図1Aでは、第一給糸口1を第二給糸口2よりも早いタイミングで移動させる。その他、移動するキャリッジ7から見て、主糸供給位置P1から添糸供給位置P2に移動する給糸口の移動速度を、添糸供給位置P2から主糸供給位置P1に移動する給糸口の移動速度よりも速くすることが挙げられる。
図1Aでは、第一給糸口1の移動速度を第二給糸口2よりも速くする。
【0054】
<実施形態5>
実施形態5では、実施形態1~4とは異なる手段によって、第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置を入れ替え易くする編地の編成方法を説明する。もちろん、本例の編地の編成方法は、実施形態1~4と組み合わせて行うことができる。本例の説明にあたっては、
図1Aを参照する。
【0055】
切替動作において第一編糸1Yと第二編糸2Yの上下位置の入れ替えがより確実に行われるように、上記入れ替えの時間を稼ぐことが好ましい。その手段として、本実施形態では、切替動作の開始から終了までの間の少なくとも一部において、切替動作終了後の最初の編目を編成する編針3Cの動作を一旦停止させる。つまり、
図1Aの編針3Cが紙面下方に移動しない時間が設けられる。編針3Cの動作が停止しているために、両編糸1Y,2Yの上下位置の入れ替えの確実性が上がる。
【0056】
編針3Cの動作を一旦停止させる構成として、カムシステム6に備わる一部のカムの形状を変更することが挙げられる。具体的には、編針3Cを歯口から後退させる斜面を有するカムにおいて、ニット編成時に編針の動きを制御するバットに作用する斜面の途中に、キャリッジ7の進行方向に平行な平坦部を設けることが挙げられる。上記斜面を有するカムとしては、例えば、特公平2-10262号公報の
図1に示されるガイドカム(公報の符号37)、ライジングカム(公報の符号12)、及びニッティングカム(公報の符号13,14)などが挙げられる。この構成によれば、キャリッジ7を停止させることなく、編針3Cの動作を停止させられる。
【0057】
<参考例>
本発明の編地の編成方法に関連する編地の編成方法として、以下の構成が挙げられる。
編針を動作させる少なくとも1つのカムシステムを搭載するキャリッジと、前記編針に第一編糸を給糸する第一給糸口と、前記編針に第二編糸を給糸する第二給糸口と、を備える横編機を用いて、
前記キャリッジから見て、主糸が供給される主糸供給位置と、添糸が給糸される添糸供給位置とを規定したとき、
前記第一給糸口が前記主糸供給位置に配置され、前記第二給糸口が前記添糸供給位置に配置される標準プレーティング編成と、
前記第二給糸口が前記主糸供給位置に配置され、第一給糸口が前記添糸供給位置に配置される反転プレーティング編成と、
を切り替える編地の編成方法において、
前記少なくとも1つのカムシステムの一つによって編幅方向に並ぶ編目列を編成する途中で前記標準プレーティング編成と前記反転プレーティング編成とを切り替える切替動作を少なくとも1回行い、
前記切替動作を行う際、前記第一給糸口と前記第二給糸口のうち、前記主糸供給位置にある給糸口を前記添糸供給位置に向けて移動させると共に、前記添糸供給位置にある給糸口を前記主糸供給位置に向けて移動させる編地の編成方法。
【0058】
参考例に係る構成では、編幅方向に並ぶ編目列を編成する際、キャリッジの移動方向が変わっても良い。例えば、標準プレーティング編成と反転プレーティング編成とを一針ごとに切り替える場合、第一給糸口と第二給糸口の位置の入れ替えが間に合わないおそれがある。そのようなときは、キャリッジを進行方向と反対側に移動させ、第一編糸と第二編糸との入替時間を稼ぐと良い。この場合も、補助動作A及び補助動作Bの少なくとも一方を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 第一給糸口、1Y 第一編糸
2 第二給糸口、2Y 第二編糸
3A,3B,3C 編針、3F フック、30 針床
4 編目、4S シンカーループ、40 編目列
5A,5B,5C シンカー
6 カムシステム
7 キャリッジ
11 第一キャリア、12 第二キャリア、13 回転式キャリア
P1 主糸供給位置、P2 添糸供給位置
P10,P20 超過位置
CP 中間位置