(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】皮膚の外観を改善するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/728 20060101AFI20240123BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20240123BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240123BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240123BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240123BHJP
A61L 27/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K31/728
A61K31/167
A61K47/10
A61K47/22
A61P17/00
A61L27/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021024837
(22)【出願日】2021-02-19
(62)【分割の表示】P 2017541828の分割
【原出願日】2016-02-09
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2015/000347
(32)【優先日】2015-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511032040
【氏名又は名称】アラーガン・アンデュストリー・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN INDUSTRIE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ルブルトン ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ゲッタ オリヴィエ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504623(JP,A)
【文献】国際公開第2014/198406(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0194758(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118206(US,A1)
【文献】国際公開第2013/040242(WO,A1)
【文献】SUMMARY OF SAFETY AND EFFECTIVENESS DATA (SSED) I. GENERAL INFORMATION DEVICE GENERIC NAME: 以下備考,[ONLINE],2014年06月13日,http://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf4/P040024S072b.pdf,INJECTABLE DERMAL FILLER DEVICE TRADE NAME: RESTYLANE SILK INJECTABLE GEL DEVICE PROCODE: 以下省略
【文献】MARCIA RAMOS-E-SILVA; LIVIA FONTELES; CECILIA LAGALHARD; ET AL,STYLAGE(R): A RANGE OF HYALURONIC ACID DERMAL FILLERS CONTAINING MANNITOL. PHYSICAL 以下備考,CLINICAL, COSMETIC AND INVESTIGATIONAL DERMATOLOGY,2013年10月,PAGE(S):257-261,http://dx.doi.org/10.2147/CCID.S35251,PROPERTIES AND REVIEW OF THE LITERATURE
【文献】News Release,株式会社マンダム,2010年05月31日,p.1-4
【文献】ROBERT KASTEN,VOLUMISIERUNG DES MITTELGESICHTS,[ONLINE],2014年04月,http://www.zwp-online.info/archiv/pub/sim/fa/2014/fa0414/fa0414_10_14_kasten.pdf
【文献】THE EUROPEAN AESTHETIC GUIDE,[ONLINE],2011年,http://cdn.coverstand.com/3708/63217/63217.5.pdf
【文献】J U,VARIODERM TM ES,[ONLINE],2011年,http://www.cirugiadeavanzada.com/PDF/VARIODERM.PDF
【文献】ALSOUFI,NEW AND INNOVATIVE DEVELOPMENTS IN HYALURONIC ACID FILLERS FOR LIP ENHANCEMENT AND CONTOURING,EUROPEAN DERMATOLOGY,2011年,VOL:5,PAGE(S):50-53,http://www.adoderm.com/literature/20100428 Eur Derm Vol. 5 Issue 1, New Innovative Developm..., Dr. Alsoufi.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus(STN)
JSTplus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋HAマトリックスを含む
ヒアルロン酸(HA)ゲルを含む、皮膚の表在性陥凹の外観を低減させるための注入可能な組成物であって、
前記組成物のHA濃度が10.0mg/g~14.0mg/gであり、
架橋HAマトリックスが、
(i)HA材料の総質量を基準として70質量%を越える量の、400,000Daから800,000Daの間の質量平均分子量を有する低分子量HA材料と、
(ii)質量平均分子量が1.0MDa~4.0MDaである高分子量HA材料と
を含み、
架橋HAマトリックスは、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される架橋剤で架橋されており、かつ、
前記注入可能な組成物がアスコルビン酸誘導体を含まない、上記組成物。
【請求項2】
組成物の総質量を基準として10質量%未満の量で未架橋HAをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
皮膚に導入されてから少なくとも3ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観を維持する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の総質量を基準として5質量%未満の量で未架橋HAを含む、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
架橋HAマトリックスが、HA材料の総質量を基準として90質量%を超える量で、低分子量HA材料を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の総質量を基準として、0.1質量%から5質量%の間の量でリドカインをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
組成物の複数の皮内注入物を、単回の処置セッションで皮膚領域に導入することにより、皮膚の質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを改善する方法であって、組成物の複数の皮内注入物が、5mmから20mmの間の間隔で離間している方法、において使用するための、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
組成物が7.2を超えるpHを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が7.5を超えるpHを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が9.0を超えるpHを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
注入物が、10mmから15mmの間の間隔で離間している、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
注入物が、0.5mmから5.0mmの間の深さにある、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
注入物が、1.0mmから4.0mmの間の深さにある、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
注入物が、1.5mmから3.0mmの間の深さにある、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
処置された皮膚が、処置により、増加した滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも一つを、少なくとも3ヶ月間維持する、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、注射可能な組成物に関し、より詳細には、皮膚の小じわを処置するためのヒアルロン酸ベース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔全体または他の主要な皮膚の表面領域の皮膚の質を改善するための現在の注射可能な処置の選択肢は、複数の処置セッション(典型的には、3~4週間毎に3~4回の処置)を必要とし、効果持続期間が比較的短い。
皮膚は表皮と真皮で構成されている。最も外側の表皮は、下層に基底膜を有する重層扁平上皮からなる。ここには血管は含まれておらず、真皮からの拡散により栄養が与えられる。表皮を構成する主な細胞型は角化細胞であり、メラニン形成細胞およびランゲルハンス細胞も存在する。皮膚のこの層は、体内に水分を保持し、有害な化学物質や病原体の侵入を防ぐ役割を担っている。
真皮は表皮の下に位置し、血管、神経、毛包、平滑筋、腺、およびリンパ組織などの数多くの構造を含んでいる。真皮(dermisまたはcorium)は、典型的には3~5mmの厚さであり、ヒト皮膚の主要構成要素である。これは、結合組織の網状構造、主に、支持力をもたらすコラーゲン原線維と柔軟性をもたらす弾性組織とで構成される。主な細胞型は、線維芽細胞、脂肪細胞(脂肪貯蔵庫)、および大食細胞である。ヒアルロン酸(HA)は、真皮組成物の一部であり、細胞外マトリックスの主成分である。
【0003】
顔面加齢は、皮膚内の固有の変化、重力の影響、皮膚に作用する顔面筋(動線)、軟部組織の損失または移動、および骨の損失、および組織弾性の損失といういくつかの因子の結果として起こる。表皮が薄くなり始めると皮膚が老化し、真皮との接合部が平坦になる。コラーゲンは人が老化するにつれて減少し、皮膚膨圧を与えるコラーゲンの束が緩み、強度を失う。皮膚が弾力を失うと、伸びへの抵抗能が低下する。重力、筋肉の引っ張り、および組織の変化と相まって皮膚にしわができ始める。水分損失および細胞間の結合の破壊もまた、皮膚のバリア機能を低下させ、これは、皮膚の毛穴の大きさを増大させ得る。
眼がしばしば加齢の徴候を示す最初の顔面特徴であることはよく知られている。眼の周りは皮膚がより薄いため、眼の周りでは顔面の残りの部分よりも皮膚変化が早く起こる。ここの皮膚は含まれる腺が少なく、目を瞬く、細める、こする、向けるという動きに絶え間なくさらされている。頬が垂れ始めると中顔面が老化し鼻唇溝が生じる。鼻唇溝は鼻側部から口角まで走る線である。下顔面領域では顔面が老化するにつれて顔面組織が下降する。この結果いわゆる「笑いじわ」が生じる。これらおよび他のひだおよびしわは、一般的に、皮膚に失われたボリュームを与えることによってひだおよびしわの外観を低減する美容用顔面充填材の皮下(subdermal)および経皮(dermal)注射によって処置される。
【0004】
ヒアルロン酸(HA)は、ヒアルロナン(hyaluronan)としても知られており、現在、最も一般的に用いられている皮膚充填材成分の1つである。ヒアルロン酸は天然に存在する水溶性多糖、具体的にはグリコサミノグリカンであり、これは細胞外マトリックスの主要成分であり、動物組織に広く分布している。ヒアルロン酸がすべての種および組織において同一構造であることにより、この多糖は健康および医学におけるバイオ材料として用いるのに理想的な物質となっている。
HAは優れた生体適合性を有し、コラーゲンとは異なって移植前にいかなる皮膚試験も必要としない。さらに、HAは大量の水に結合する能力を有し、そのため軟部組織の優れた増容積剤となる。
インビボにおけるその寿命を高めるために、皮膚充填材のHAは一般に架橋されている。化学的に架橋されたHAは、非架橋のHAを適切な反応条件下で架橋剤と反応させることによって形成される。
【0005】
高粘度のHAベース皮膚充填材、例えば、高度に架橋され、および/または、高分子量HAから構成され、および/または、高HA濃度を有するものは、体内でより長く存続する傾向があることが一般に認められている。逆に、低粘度のHAベース皮膚充填材、例えば、より軽度に架橋され、および/または、低分子量HAから構成され、および/または、低HA濃度を有するものは、体内での存続期間がより短い場合がある。当然ながら、針による高粘性材料の注入は相対的により困難であり、一般に、相対的に低粘性の材料の注入よりもゲージの低い針(例えば、27Gまたは30Gに比べて21Gまたは23G)が必要である。高ゲージ針(すなわち、細い針)による注入が簡単であり、かつ、体内での存続期間が長いHAベース組成物を開発することは困難であることが立証されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、注射可能な組成物に関し、より詳細には、皮膚への皮内(intradermal)注射のための注射可能な組成物に関する。組成物および方法は、表在性皮膚陥凹(superficial skin depression)の充填ならびに/または皮膚の質および外観の改善により、改善された皮膚の外観および質を提供する。一態様では、組成物および方法は、改善された皮膚の質感、増加した皮膚水和度、および増加した弾力の少なくとも1つを提供する。
一態様では、本組成物は、ヒアルロン酸(HA)およびHAの医薬として許容される塩、例えばヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)に基づく。本発明の持続性が長く注射性の高い組成物の多くは、比較的低分子量のHAを用いて作られた架橋HAマトリックスを含む。いくつかの実施形態では、組成物は比較的低濃度のHAを有する。有利には、本明細書で提供される組成物の多くは、より長い作用持続期間を有する。例えば、従来の皮内注射処置法で一般的であるように3~4週間毎に複数の処置を繰り返し必要とするのではなく、本明細書で提供される本組成物および本方法の多くは、3ヶ月間、4ヶ月間、6ヶ月間から1年間、またはそれ以上の作用持続期間を有する。
【0007】
本発明の広範な態様において、一般に、低分子量HA材料を含有するか、本質的に低分子量HA材料からなるHAゲルを含む組成物が提供される。HA成分は、50質量%を超える、例えば少なくとも70質量%の、例えば約90質量%の低分子量HAを含む。低分子量HA材料は、約0.20MDaから約0.99MDa以下、例えば約0.4MDaから約0.8MDaの質量平均分子量を有する。
いくつかの実施形態では、HAゲルは、高分子量HA、すなわち、少なくとも約1.0MDaから約4.0MDaの分子量を有するHA材料をさらに含有し得る。一般に、高分子量HA材料を含む本発明の実施形態では、高分子量HA材料の質量平均分子量は、低分子量HA材料の質量平均分子量の少なくとも2倍である。
【0008】
HAゲルのHAは架橋されていてもよい。例えば、HAは、適切な架橋剤によって化学的に架橋されていてもよい。いくつかの実施形態では、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、または1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ブタン、または1,4-ビスグリシジルオキシブタン(これらはすべて、BDDEとして一般的に知られている)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、組成物は、約10.0mg/gから最大約17.0mg/gのHA濃度を有する。いくつかの実施形態では、HA濃度は、約17.0mg/g未満、例えば約15.0mg/g未満である。いくつかの実施形態では、HA濃度は、約10.0mg/gから約14.0mg/gの間である。いくつかの実施形態では、HA濃度は、約10.0mg/g、約11.0mg/g、約12.0mg/g、約13.0mg/g、または約14.0mg/gである。
【0009】
本発明の別の態様では、本組成物を用いて皮膚を処置する方法が提供される。例えば、皮膚の1つもしくは複数の質を改善する、または皮膚の外観もしくは質感を改善する方法が提供される。
一態様では、皮膚の乾燥、質感もしくは荒れ、および/または弾力を処置する方法が提供される。該方法は、一般に、架橋HAを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を皮膚の領域に導入することによって、該領域を処置することを含み、処置された皮膚は、処置によって、例えば、少なくとも約3ヶ月間から約1年間、またはそれ以上の長期の持続期間にわたり、改善された水和度、より滑らかな質感、または増加した弾力を維持する。特に有利な実施形態では、導入するステップは、単回の処置セッションのみで実施され、それによって、効果持続期間を維持するために処置を繰り返す必要がなくなる。
いくつかの実施形態では、導入するステップは、約2mmから約30mmの間の間隔で離間した注射で組成物を導入することを含む。例えば、導入するステップは、約5mmから約20mmの間、または約10mmから約15mmの間隔で離間した注射で組成物を導入することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約500μmから約2000μmの間の注入深さ、例えば、約1000μmの深さに導入される。好ましい実施形態では、組成物は、約0.5mmから約5.0mmの間、好ましくは約1.0mmから約4.0mm、より好ましくは約1.5mmから約3.0mmの注入深さで導入される。一般に、より深い注射は改善された水和度の結果をもたらす。
別の態様では、本発明は、架橋HAを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を皮膚の領域に導入することによって、該領域を処置することを含む、皮膚の荒れを処置する方法を提供し、処置された皮膚は、処置によって、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、より滑らかな質感を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コルネオメトリーに用いたバッチC1の外植片を、4×10μLの注射可能な製品で(四角注射)、各注射点を0.5cmずつ離して処置した。コルネオメトリーに用いたバッチC2の外植片を、4×10μLの注射可能な製品で(四角注射)、各注射点を1cmずつ離して処置した。
【
図2】各バッチについてのコルネオメトリーの測定値を示す図である。
【
図3】各バッチについてのコルネオメトリーの測定値を示す図である。
【
図4】3人のドナーについてのコルネオメトリー測定値の結果を3つの値の平均として表した図である。
【
図5】3人のドナーについてのコルネオメトリー測定値の結果を3つの値の平均として表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
数値の文脈において「約」という用語は、当業者によって容易に理解されるものであり、好ましくは、特定値が±10%まで修正され得ることを意味する。範囲の端点に関して、修飾語「約」は、好ましくは、下端点を10%まで減少させ、上端点を10%まで増加させ得ることを意味する。本出願で開示される各数値または範囲は絶対的であり得る、すなわち、修飾語「約」が削除され得ることも企図される。
HAの「分子量」を表す本明細書中のすべての数字は、質量平均分子量(Mw)をダルトンで示すものとして理解される。
HAの分子量は、固有粘度測定値から、以下のMark Houwinkの関係式:
固有粘度(m3/kg)=9.78×10-5×Mw0.690
を用いて算出される。
【0012】
固有粘度は、欧州薬局方(HAモノグラフN°1472、01/2009)に規定の手順に従って測定される。
本明細書で使用される高分子量HAは、少なくとも約100万(1.0 million)ダルトン(Mw≧106Daまたは1MDa)から約5.0MDaの分子量を有するHA材料を表す。例えば、本組成物中の高分子量HAは、約1.5MDaから約3.0MDaの範囲の分子量を有してもよく、または高分子量HAは約2.0MDaの質量平均分子量を有してもよい。別の例では、高分子量HAは約3.0MDaの分子量を有してもよい。別の例では、高分子量HAは、上に示したMark Houwinkの関係式に従って算出した場合の固有粘度1.35m3/kgに相当する約1MDa、1.5MDa(1.35m3/kg)、2MDa(2.18m3/kg)、3MDa(2.88m3/kg)、5MDa(4.10m3/kg)、0.2MDa(0.44m3/kg)、0.4MDa(0.72m3/kg)、0.8MDa(1.1m3/kg)、0.99MDa(1.34m3/kg)の分子量を有し得る。
【0013】
本明細書で使用される低分子量HAは、約1.0MDa未満の分子量を有するHA材料を表す。低分子量HAは、約200,000Da(0.2MDa)から1.0MDa未満、例えば約400,000Daから約800,000Da、例えば約386,000Da(0.386MDa)から約740,000Da(0.74MDa)の分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、架橋HAマトリックスを製造するために使用される低分子量HAは、0.99MDa以下である。
好ましくは、低分子量HAと高分子量HAとの混合物は二峰性分子量分布を有する。混合物はまた、多峰性(multi-modal)分子量分布を有していてもよい。
【0014】
本発明の一態様において、組成物は、高分子量成分および低分子量成分を有するHAを含み、高分子量成分は、低分子量成分の質量平均分子量の少なくとも2倍の質量平均分子量を有する。
例えば、本発明のこの態様に係る組成物は、約500,000Daの質量平均分子量を有する低分子量成分と、約1.0MDaまたは少なくとも約1.0MDaの質量平均分子量を有する高分子量成分とを含むことができる。
別の例では、本発明に係る組成物は、約800,000Daの質量平均分子量を有する低分子量成分と、約1.6MDaまたは少なくとも約1.6MDaの質量平均分子量を有する高分子量成分とを含むことができる。
架橋度は、HA二糖単位に対する架橋剤の最終質量比によって測定される。
【0015】
本明細書で使用される未架橋HAは、相互に架橋されていない個々のHAポリマー分子を指す。非架橋HAは一般に水溶性のままである。
本明細書において、皮膚を処置するための組成物、例えば、皮膚の外観または質を改善するために、例えば、水和度、質感、および/または弾力を改善するために皮内に導入することができる注射可能な組成物が提供される。この組成物はまた、皮膚の小じわの処置および表在性皮膚陥凹(superficial cutaneous depression)の低減にも効果的であり得る。これらの組成物の製造方法、ならびに、これらの組成物を使用する処置方法も提供される。組成物は、ヒアルロン酸(HA)およびHAの医薬として許容される塩、例えばヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)に基づく。
本明細書で使用する場合、ヒアルロン酸(HA)は、その任意のヒアルロン酸塩を指すことができ、これらに限定されるものではないが、ヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。HAおよびその医薬として許容される塩のいずれも本発明に使用することができる。
【0016】
一般に、本組成物のいくつかにおけるHAの濃度は、約10.0mg/gから最大約17.0mg/gである。いくつかの実施形態では、HA濃度は約17.0mg/g未満、例えば約15.0mg/g未満である。いくつかの実施形態では、HA濃度は、約10.0mg/gから約14.0mg/gである。いくつかの実施形態では、HA濃度は、約10.0mg/g、約11.0mg/g、約12.0mg/g、約13.0mg/g、または約14.0mg/gである。
本発明の組成物のいくつかは、追加の薬剤、例えば組成物の注射時に経験される痛みを緩和するのに有効な量の麻酔剤を含む。麻酔剤は、アムブカイン、アモラノン、アミロカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタニリカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジサイクロミン、エクゴニジン、エクゴニン、塩化エチル、エチドカイン、ベータ-ユーカイン、ユープロシン、フェナルコミン、フォルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、p-アミノ安息香酸イソブチル、ロイシノカインメシレート、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン、ナエパイン、オクタカイン(octocaine)、オルソカイン(orthocaine)、オキセサゼイン、パルエトキシカイン(parethoxycaine)、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、シュードコカイン(pseudococaine)、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、およびそれらの塩の群から選択することができる。一実施形態では、少なくとも1つの麻酔剤はリドカイン、例えばリドカインHClの形態にあるものである。本明細書に記載の組成物は、組成物の約0.1質量%から約5質量%、例えば、組成物の約0.2質量%から約1.0質量%のリドカイン濃度を有し得る。一実施形態では、組成物は組成物の約0.3質量%(w/w%)のリドカイン濃度を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は、有益な添加剤、例えば抗酸化剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、マンニトールを含む。マンニトールは、約0.1質量%から約2.0質量%、または約0.3質量%から約0.9質量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、マンニトールは、約1.0質量%未満、約1.0質量%以下、または約1.0質量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、マンニトールは約0.9質量%の量で存在する。他の実施形態では、マンニトールは、約0.1質量%、または約0.2質量%、または約0.3質量%、または約0.4質量%、または約0.5質量%、または約0.6質量%、または約0.7質量%、または約0.8質量%、または約0.9質量%、または約1.0質量%の量で存在する。他の実施形態では、マンニトールは、約1.0質量%を超える量で存在する。いくつかの実施形態では、マンニトールは、約1.0質量%から約5.0質量%の量で存在する。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物は、ビタミン、例えばビタミンCをさらに含む。より好ましい実施形態では、ビタミンはビタミンCの誘導体または安定化形態、例えばアスコルビン酸2-グルコシドである。ビタミンは、約0.1質量%から約2.0質量%、または約0.2質量%から約1.0質量%、または約0.3質量%から約0.6質量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、ビタミンCは、約0.6質量%の量で存在する。他の実施形態では、ビタミンC誘導体は、約0.1質量%、または約0.2質量%、または約0.3質量%、または約0.4質量%、または約0.5質量%、または約0.6質量%、または約0.7質量%、または約0.8質量%、または約0.9質量%、または約1.0質量%の量で存在する。他の実施形態では、ビタミンC誘導体は1.0%を超える量で存在する。いくつかの実施形態では、ビタミンC誘導体は約1.0質量%から約5.0質量%の量で存在する。
【0019】
いくつかの実施形態では、組成物は、マンニトールおよびアスコルビン酸2-グルコシドの組み合わせをさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、マンニトールは1.0質量%以下、例えば0.9質量%の量で存在し、アスコルビン酸2-グルコシドは約0.6質量%の量で存在する。
【0020】
いくつかの実施形態では、組成物は抗酸化剤またはビタミンを含まない。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、架橋剤で架橋されたヒアルロン酸および水を含むか、本質的にそれらからなる。これらの組成物は、リドカインなどの麻酔剤を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0021】
本製品および本組成物は、好ましくは滅菌形態で提供される。組成物は、従来の方法、例えばオートクレーブを用いて滅菌することができる。例えば、組成物は、組成物を少なくとも約120℃から約130℃の温度、および/または少なくとも1平方インチ当たり約12ポンド(PSI:pound per square inch)から約20PSIの圧力に、少なくとも約1分から約15分暴露することにより滅菌することができる。
組成物の製造方法は、乾燥HA繊維または粉末の形態の原料HA材料を提供するステップを含む。原料HA材料は、HA、その塩、および/またはそれらの混合物であってよい。好ましい実施形態では、HA材料は、NaHAの繊維または粉末、例えば、細菌由来のNaHA繊維を含む。本明細書のいくつかの態様において、HA材料は動物由来であってもよい。HA材料は、HAと、少なくとも1つの他の多糖類、例えばグリコサミノグリカン(GAG)とを含む原材料の組み合わせであってもよい。
本発明の広範な態様において、組成物のHA材料は、約5%から約95%の低分子量HAと、高分子量HAを含むHA材料の残部とを用いて作られた架橋HAマトリックスを含むことができる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、本組成物を製造するために使用されるHA材料は、ほぼ全体が、低分子量HAを含むか、低分子量HAからなる。いくつかの実施形態では、本組成物を製造するために使用されるHA材料のほぼ100%が上に定義したような低分子量HAであり得る。他の実施形態では、組成物を製造するために使用されるHA材料は、上に定義したような比較的高分子量のHAと比較的低分子量のHAとの組み合わせを含む。ある実施形態では、組成物中のHA材料の少なくとも約50質量%、例えば少なくとも約70質量%、例えば少なくとも約90質量%またはそれ以上が、上に定義したような低分子量HAであり、HAの残部は高分子量HAである。一実施形態では、組成物は、90:10の低分子量HA対高分子量HA比を用いて製造される。すなわち、これらの実施形態の組成物は、HAの約90質量%が低分子量HAである高分子量HAと低分子量HAとの組み合わせを用いて製造される。
【0023】
一実施形態では、純粋な乾燥NaHA繊維をアルカリ性溶液中で水和させて未架橋NaHAゲルを生成する。このステップでは、NaHAを水和するために、任意の適切なアルカリ性溶液、例えば、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、水酸化リチウム(LiOH)などを含有する水溶液を用いることができる。別の実施形態では、適切なアルカリ性溶液は、NaOHを含有する水溶液である。得られるアルカリ性ゲルは7.5を超えるpHを有することとなる。得られるアルカリ性ゲルは、9を超えるpH、または10を超えるpH、または11を超えるpH、または12を超えるpH、または13を超えるpHを有し得る。
【0024】
製造プロセスにおける次のステップは、水和したアルカリ性NaHAゲルを適切な架橋剤で架橋するステップを含む。架橋剤は、多糖類およびそれらの誘導体をヒドロキシル基を介して架橋するのに適していることが知られている任意の薬剤であってよい。適切な架橋剤としては、これらに限定されるものではないが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(または1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ブタンまたは1,4-ビスグリシジルオキシブタン、これらはすべてBDDEとして一般的に知られている)、1、2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンが挙げられる。複数の架橋剤または異なる架橋剤の使用は、本開示の範囲から除外されない。一実施形態では、本明細書に記載のHAゲルはBDDEを用いて架橋される。
架橋ステップは、当業者に知られている任意の手法を使用して実施することができる。当業者であれば、HAの性質に応じて架橋の条件を最適化する方法、および最適化された程度まで架橋を行う方法を理解している。
【0025】
別の実施形態では、HAの架橋は、架橋剤、例えばBDDEを含有するアルカリ性溶液中で、高分子量繊維と低分子量繊維との組み合わせを水和することによって、HA繊維の水和中に達成される。
本組成物のHA成分における架橋度は、少なくとも約1%、最大約20%BDDE/HA、質量/質量(w/w)であり、例えば約4質量%から約12質量%、例えば約10質量%、例えば約8質量%、例えば約6質量%、例えば約5質量%、例えば約4質量%である。
水和した架橋HAゲルは、所望のHA濃度とするために膨潤させてもよい。このステップは、例えば、HClなどの酸を含有する水溶液を添加することによって、架橋された水和HAゲルを中和することにより達成することができる。次いで、ゲルをリン酸緩衝食塩(PBS)液中で膨潤させる。
【0026】
ゲルは、リン酸緩衝液に対する透析、またはアルコール沈殿などの従来の手法により精製して、架橋した材料を回収し、材料のpHを安定化させ、任意の未反応の架橋剤を除去してもよい。組成物は均質になるように混合される。好ましくは、均質化ステップは、制御されたせん断力でゲルを混合、撹拌、または叩解して実質的に均質な混合物を得ることを含む。いくつかの実施形態では、混合中または混合後にリン酸緩衝液を添加して、最終組成物中のHAを所望の濃度とする。
【0027】
いくつかの実施形態では、(例えば、リドカインHClの形態の)リドカインまたは別の適切な麻酔剤が組成物に添加される。例えば、精製された実質的に中性pHのゲルのpHは、ゲルがわずかにアルカリ性になるように調整して、ゲルのpHが約7.2を超える、例えば約7.5~約8.0となるようにする。あるいは、ゲルをアルカリ性になるように調整して、ゲルのpHが約9を超える、例えば約10.0~約11.0となるようにする。このステップは、任意の適切な手段、例えば、希NaOH、KOH、NaHCO3もしくはLiOH、または当業者に知られている任意の他のアルカリ性分子、溶液および/もしくは緩衝化組成物を適切な量でゲルに添加することによって達成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、リドカインHClは粉末形態で提供され、注射用水(WFI)を用いて可溶化される。次いでリドカインを(わずかに)アルカリ性のゲルに添加する。次いで、所望により、非架橋HAをリドカイン含有ゲルに添加してもよい。例えば、一実施形態では、望ましいHA濃度は約12.0mg/gである。リドカインを含む組成物は、組成物の約0.1質量%から約5質量%、例えば、組成物の総質量を基準として約0.3質量(またはw/w)%のリドカイン濃度を有し得る。未架橋HAを含む組成物は、組成物の10質量%未満または5質量%未満、例えば、好ましくは約0.5質量%から約1.5質量%、例えば、組成物の総質量を基準として約0.9~1.0%の未架橋HA濃度を有し得る。未架橋HAは、好ましくは高い分子量を有する。
【0028】
組成物は、送達装置、例えば注射器に導入される。本明細書において有用な注射器としては、粘性の皮膚充填材組成物を送達することができる当該技術分野で知られている任意の注射器が挙げられる。注射器は、約0.4mLから約3mL、約0.5mLから約1.5mL、または約0.8mLから約1.0mLの内部容積を有し得る。
他の実施形態では、組成物は、マルチプルマイクロデポー(multiple microdepot)注射を用いて皮膚の比較的浅く表層の表面へ組成物を送達するのに適した注入装置に導入される。
本組成物を送達するために使用される針のゲージとしては、約18Gから約40Gのゲージが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物を送達するための針は、約25Gから約33G、例えば、約31Gから約33Gまたは約32Gから約33Gである。いくつかの実施形態では、組成物は、28G、29G、30G、32G、または33Gのゲージを有する針を使用して送達される。
【0029】
本発明の別の態様では、本組成物を用いて皮膚を処置する方法が提供される。例えば、皮膚の1つ以上の品質を改善する、または皮膚の外観もしくは質感を改善する方法が提供される。
一態様では、皮膚の乾燥、質感もしくは荒れ、および/または弾力を処置する方法が提供される。該方法は、一般に、架橋HAを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を皮膚の領域に導入することによって該領域を処置することを含み、処置された皮膚が、処置によって、例えば、少なくとも約3ヶ月間から約1年、またはそれ以上の長期の持続期間にわたり、改善された水和度、より平滑な質感、または増加した弾力を維持する。
特に有利な実施形態では、導入するステップは、単回の処置セッションのみで実施され、それにより、効果持続期間を維持するために処置を繰り返す必要性がなくなる。
本発明の一態様では、皮膚領域への組成物の複数の注射を含む処置セッション中に組成物を皮膚に導入することを含む、皮膚を処置する方法が提供される。
一実施形態では、処置セッションは、患者が施術者を1回訪問することを含む。処置セッション中に、皮膚、例えば特定の皮膚領域に、複数の注射を投与することができる。
【0030】
単回の処置セッションの複数の注射は、例えば、2~約500注射、約50~約200注射を含むことができる。いくつかの実施形態では、処置セッションは、例えば、皮膚領域への少なくとも2注射、少なくとも10注射、少なくとも20注射、少なくとも40注射、少なくとも60注射、少なくとも80注射、少なくとも100注射、少なくとも140注射、少なくとも180注射、少なくとも200注射、少なくとも300注射、少なくとも400注射、少なくとも500注射、またはそれ以上を含む。
いくつかの実施形態では、処置セッションに要する時間は、1処置領域当たり、約45分以下、約30分以下、約15分以下、または約10分以下である。処置領域は、本組成物および本方法で処置される皮膚領域と定義される。処置領域は、顔、首、またはデコルテの少なくとも1つの皮膚領域を含むか、それらからなるものであってよい。処置領域はまた、顔面、首、またはデコルテ以外の皮膚の領域、例えば手の甲、膝、肘、前腕、ふくらはぎ、大腿部、背中の皮膚領域、または本組成物および本方法を使用して処置することができ、それによって恩恵を受け得るまたは改善され得る他の任意の皮膚の領域を含むか、それらからなるものであってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、導入するステップは、組成物を約2mmから約30mmの間隔で離間した注射で導入することを含む。例えば、導入するステップは、組成物を約5mmから約20mmの間隔で離間した注射で導入するステップを含む。いくつかの実施形態では、導入するステップは、組成物を約10mmから約15mmの間隔で離間した注射で導入することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、注射は皮膚の非常に浅い深さに提供される。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、約2000μm以下の深さに導入される。例えば、注射は、約500μmから約2000μm、約800μmから約1600μm、または約1000μmから約1200μmの深さに提供され得る。好ましい実施形態では、組成物は、約0.5mmから約5.0mm、好ましくは約1.0mmから約4.0mm、より好ましくは約1.5mmから約3.0mmの注入深さに導入される。一実施形態では、注射は、1注射当たり約1μLから約200μL、例えば約5μLから約100μL、1注射当たり例えば約20μLから約80μL、例えば約40μLから約60μLの量で導入される。いくつかの実施形態では、注射は、1注射当たり約5μLから約500μL、1注射当たり約10μLから約400μL、約50μLから約200μL、または約100μLの量で導入される。
【0033】
いくつかの実施形態では、注射は、少なくとも27G、例えば28G、30G、または32Gのゲージを有する針を通して送達される。
好都合には、処置方法は、比較的短い時間持続する単回の処置セッションを含むか、該単回の処置セッションからなるものとすることができる。いくつかの実施形態では、処置される皮膚領域をカバーする処置セッションは、皮膚領域への複数の皮内注射を含み、処置セッションに要する時間は約45分以下である。いくつかの実施形態では、処置セッションに要する時間は約30分以下である。さらに他の実施形態では、処置セッションに要する時間は、約20分以下、または約15分以下、または約10分以下である。
【0034】
また、皮膚の荒れを処置する方法も提供され、該方法は、架橋HAを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物を複数の離間した注射で皮膚領域に導入することによって該領域を処置することを含み、処置された皮膚は、処置によって、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、より滑らかな質感を維持する。
【0035】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、12mg/mlの濃度の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)で架橋された非動物由来のヒアルロン酸(HA)ゲルの無菌生理学的溶液を含む。組成物は、未処置の表在性皮膚陥凹と比較した場合の皮膚の質感の改善、ならびに滑らかさ、水和度、および弾力などの皮膚の質の改善として測定される表在性皮膚陥凹の処置に有用である。特定の実施形態では、処置方法としては、標的となる解剖学的領域にわたる32G針を使用した真皮内への注射、例えばデポー(depot)注射が挙げられる。標的となる解剖学的領域としては、顔の皮膚領域および首の皮膚領域が挙げられる。皮膚の外観の改善、例えば、非処置の皮膚と比較した場合の陥凹、小じわ、および、平らでないまたは荒れた質感の外観の低減が患者にとって著しく顕著となり得、また、わずか45分間、またはわずか30分間、またはわずか20分間、またはわずか15分間、またはそれ以下の単回の処置セッションの後、少なくとも4ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、または12ヶ月間の持続期間にわたり改善が持続し得る。皮膚の質感の改善は適切な尺度を使用して評価することができる。適切な機器を用いて水和度および弾力の皮膚の質の測定を行うことができ、また、ベースライン、すなわち未処置の皮膚と比較することができる。他の評価方法、例えば、FACE QおよびGAISを利用して、対象および研究者の満足度をそれぞれ評価することができる。特定の実施形態では、処置後の製品の作用持続期間は少なくとも約4ヶ月間、例えば約6ヶ月間である。
【0036】
組成物にリドカインを添加すると、いくつかの実施形態では、処置領域の痛みが低減される。しかしながら、いくつかの実施形態では、リドカインに対するアレルギーおよび疼痛感受性に関する患者のニーズに対応するために、組成物はリドカインを含まない。
別の実施形態は、皮膚における滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも1つを増加させる方法であって、皮膚領域に、約500μmから約5000μmの深さで、BDDE架橋HAと未架橋HAとを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を単回の処置セッションで導入することを含む方法を提供し、注射は、1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入され、注射は28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達され、注射は約5mmから約20mmの間隔で離間している。
いくつかの実施形態では、皮膚領域は、処置によって、少なくとも約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間、またはそれ以上、増加した滑らかさ、水和度、および/または弾力を維持する。
別の実施形態では、皮膚の滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも1つを増加させるための組成物が提供され、該組成物は、約400,000Daから約800,000Daの質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られた架橋HAマトリックスを含むヒアルロン酸(HA)ゲルを含み、組成物のHA濃度は約10.0mg/gから約14.0mg/gであり、組成物は、処置によって、複数の離間した組成物の注射を含む単回の処置セッションで皮膚に導入されてから少なくとも約6ヶ月間、増加した滑らかさ、水和度、および/または弾力を維持し、注射は、1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入され、28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達され、約5mmから約20mmの間隔で離間している。皮膚領域は、処置によって、少なくとも約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間、またはそれ以上、増加した滑らかさ、水和度、および/または弾力を維持し得る。組成物は、マンニトールおよびビタミンCの少なくとも1つをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、マンニトールおよびビタミンC誘導体の両方が組成物中に存在する。
【0037】
組成物は、0.1Hzで測定した場合、約50~200Pa、例えば100~150Paまたは120Paの、5Hzで測定した場合、約100~300Pa、例えば150~200Paまたは175Paのゲル硬度G’を伴う。ゲル硬度を測定する方法は当該技術分野で知られている。ゲル硬度は皮膚充填材の柔らかさの指標である。
【0038】
組成物はさらに、0.1Hzで測定した場合、約10~100Pa、例えば15~40Paまたは20Paの、5Hzで測定した場合、約10~100Pa、例えば20~40Paまたは30Paのゲル粘度G”を伴う。粘度を測定する方法は当該技術分野で知られている。
【0039】
組成物はまた、約5~20N、例えば10~15Nまたは12Nの圧縮率を伴う。圧縮率を測定するための方法は当該技術分野で知られている。圧縮率は、皮膚充填材の変形抵抗の指標である。一般に、圧縮率が低いほど充填材のリフトスプレダビリティ(lift spreadibility)が低くなり、すなわち、充填材が、より深い注射およびボリュームの復元により好適なより高い圧縮率を有する充填材に比べて、顔面または首の表面のしわおよびひだの処置により適したものとなる。
【実施例】
【0040】
(例1)
フリーラジカル分解試験により、(HAの主な分解経路の1つである)フリーラジカルによるHA鎖の分解に対するゲル試料の耐性を評価することができる。フリーラジカル分解試験は、本組成物の3つの異なるバッチで行った。得られた結果を表1に示す。すべての測定値が一致することが判明した(CVr<10%)。
【表1】
【0041】
バッチ間変動は3つの異なるバッチで約3%であり、分解時間の平均値は4985秒である(表2)。
【表2】
【0042】
(例2)
37歳の女性は、加齢、乾燥した気候、および/または生涯にわたる太陽/風への曝露により、荒れた、乾燥した顔面皮膚を呈する。医師は、皮内、マイクロデポー注射によって、本明細書に記載の組成物を投与する。処置は、32G/4mm針を用いた1皮膚領域当たり10から約100回の浅層注射からなる。処置される皮膚領域は、顔、首、およびデコルテである。処置セッションは、患者のすべての皮膚領域全体で、初回注射から最後の注射まで約40分間続く。各処置領域に、適切な量の組成物を離間した注射で投与する。例えば顔面領域には、およそ約10mmから約15mmの間隔で離間した浅層単回注射によって投与される約2mLから約3mLの組成物を投与する。首は約1mLから2mLの組成物で処置し、注射はおよそ15mmから約20mmの間隔で離間している。処置後、処置された皮膚の領域を、視覚、触覚、および圧迫の感覚によって検査する。処置の開始時および終了時に写真評価を行う。患者は医師に処置が最小限の不快感しかもたらさなかったことを報告する。患者は処置直後に日常活動に戻る。処置された右手の皮膚の小さな領域に斑状出血が見られるが、これは抗炎症クリームの塗布後数日で解決する。患者はフォローアップ評価のために処置の4ヶ月後に医師のもとに再度来院する。フォローアップ評価来院の前には、患者に対してさらなる充填材の注射やメソセラピー処置は行わない。フォローアップ来院時の客観的検査では、処置によって、表皮の質感の改善、乾燥の減少、および皮膚の明るさの改善がもたらされている。これらの改善は、写真による記録である程度明らかである。処置された皮膚領域を穏やかに触診すると、水和度、柔軟性、弾力、およびトーンが向上しているものと見受けられる。患者は、自己評価アンケートの記入によって、処置への高い満足度を表す。患者は処置された領域が改善され、その結果に非常に満足していると主張する。興味深いことに、これらの良好な結果は、単回の処置セッションのみに基づいて達成され、反復注射、「トップアップ(top-ups)」、または処置セッションとフォローアップ来院との間の追加の注射処置は行われていない。
【0043】
(例3)
ヒト生体皮膚外植片の表皮および真皮構造に対する注射可能な組成物の水和度をコルネオメトリー(corneometry)測定により評価した。すなわち、CM825 Corneometer(登録商標)(COURAGE & KHAZAKA)を使用して、角質層の最も外側の皮膚層の保湿レベルを測定した。Corneometer(登録商標)の動作原理は、コンデンサの形態に設計された検出器の電気容量の変化に基づいている。皮膚と接触した測定ヘッドの表面では、皮膚の保湿レベルに従ってその電気容量が変化する。D0(=0日目)では、AU(任意単位)で表される電気表皮容量が皮膚水和度の指標となる。本開示に係る以下の組成物を測定した。
【0044】
【0045】
外植片の調製:45歳の白人女性由来の腹部形成術において、9個の外植片を調製した。
外植片を、湿潤、5%-CO2雰囲気中、37℃でBEM培地(BIO-EC’s Explants Medium)中で生存させた。外植片は3バッチに振り分けた(Nb=数)。
【0046】
【0047】
製品適用:コルネオメトリーに用いたバッチC1の外植片を、4×10μLの注射可能な製品で(四角注射)、各注射点を0.5cmずつ離して処置した(
図1を参照されたい)。コルネオメトリーに用いたバッチC2の外植片を、4×10μLの注射可能な製品で(四角注射)、各注射点を1cmずつ離して処置した(
図1を参照されたい)。未処置対照には何ら処置をしなかった。
コルネオメトリー:D0、D2、D7、およびD9における外植片について、CM825 Corneometer(登録商標)(COURAGE & KHAZAKA)を使用して、皮膚の水和度の指標である表皮静電容量を評価した。測定は直径1cmのプローブを用いて四角形の外植片の中央で行った。測定を10回行い、平均値をコルネオメーターによって計算する。
サンプリング:D0において、バッチT0からの3個の外植片を採取し、2つの部分に切断し、半分を-80℃で凍結させ、半分をホルモルに固定した。D2、D7、およびD9において、各バッチから3個の外植片を採取し、同じ方法で処理した。
【0048】
統計分析:統計分析は、スチューデントt検定に従って行った。スチューデントt検定は、2つのバッチが有意に異なる確率「p」を与える。2つのバッチ間の差は、p<0.05(*)であれば有意であり、したがって2つのバッチについて95%の確率で有意差があり、または、p<0.01(**)であれば有意であり、したがって2つのバッチについて99%の確率で有意差がある。
【0049】
結果:各バッチについてのコルネオメトリーの測定値(
図2および3も参照されたい)
【表5】
【0050】
コルネオメトリーにより、製品Pclについて、コルネオメトリー値が、D2において44.0%**対T、D7において34.9%**対T、およびD9において43.6%**対T高いことが示される。製品Pc2について、コルネオメトリー値は、D2において30.7%*対T、D7において38.6%**対T、およびD9において41.9%**対T高い。(スチューデントt検定によると、*p<0.05(95%)で有意;**p<0.01(99%)で有意)。本開示に係る組成物は、試験した条件(Pc1およびPc2それぞれについて各々0.5cmまたは1cmの間隔をあけた10μLの4ヶ所の注射)にかかわらず良好な水和活性を示し、これにより、皮膚水和度を増加させる表皮静電容量値の強い増加が誘導される。
【0051】
(例3)
ヒトの生体皮膚外植片の表皮および真皮構造に対する本開示に係る注射可能な組成物の皮膚水和度を追加のコルネオメトリー測定によって評価した。以下の組成物を測定した。
【表6】
製品は試験期間中室温で保存されている。
【0052】
外植片の調製:第1ドナーについては、59歳の白人女性からの腹部形成術において1.5cm×2cmの大きさの9個の外植片を調製した。第2のドナーについては、42歳の白人の女性からの腹部形成術において1.5cm×2cmの大きさの9個の外植片を調製した。第3のドナーについては、52歳の白人女性からの腹部形成術において1.5cm×2cmの大きさの9個の外植片を調製した。各ドナーについて、9個の外植片を以下のように3バッチに振り分けた。
【0053】
【0054】
製品適用:D0において、3×50μLの製品P1またはP2を長方形の外植片(1.5×2cm)の真皮に針で注入した。未処置対照には何ら処置をしなかった。
D1、D2、D5、およびD7に培地の半量(1ml)を交換した。
コルネオメトリー:外植片について、D0、D1、D2、およびD8にCM825 Corneometer(登録商標)(COURAGE&KHAZAKA)を使用して皮膚水和度の指標である表皮静電容量を評価した。
【0055】
結果:3人のドナーについてのコルネオメトリー測定値の結果を3つの値の平均として表した(
図4および5も参照されたい)。
【表8】
【0056】
3人のドナーについて、コルネオメトリーは、製品P1が、D1においてD0と比較してコルネオメトリー値の15%の増加を誘導し、D2において18%まで増加し続け、D8において22%まで増加することを示す。製品P2は、D0からD1への37%の急速な増加を誘導し、D2からD8まで増加し続けて49%に達する。これらの実験条件によると、また、D8(TJ8)のブランクバッチと比較すると、以下のとおり結論づけることができる。
【0057】
【0058】
概して、この試験の実験条件下において、これらの結果は、本開示による製品(P2)が製品P1および未処置対照Tと比較して8日目(D8)の角質層において皮膚水和度の増加を示すことを示す。
本発明をある程度の詳細事項を伴って説明し例示してきたが、本開示は例としてのみなされたものであり、当業者であれば、以下に請求される本発明の範囲から逸脱することなく、部品、工程および要素の組み合わせおよび配置に関して数多くの変更を用いることができることが理解される。
【0059】
本発明を以下の実施形態によりさらに説明することができる。
1.皮膚の表在性陥凹の外観を低減するのに有用な注射可能な組成物であって、組成物は、
約0.20MDaから約0.99MDaの質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られた架橋HAマトリックスを含むヒアルロン酸(HA)ゲルを含み、
組成物のHA濃度は約17.0mg/g未満であり、
組成物は、皮膚に導入されてから少なくとも約3ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観を維持する、注射可能な組成物。
2.組成物が、皮膚に導入されてから少なくとも約6ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観を維持する、項目1の組成物。
3.組成物が、皮膚に導入されてから少なくとも約9ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観を維持する、項目1の組成物。
4.マンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含む、項目1の組成物。
5.マンニトールが約0.3%質量%から約0.9質量%の量で存在する、項目4の組成物。
6.ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、項目4の組成物。
7.アスコルビン酸2-グルコシドが約0.3質量%から約0.6質量%の量で存在する、項目6の組成物。
8.約0.9質量%のマンニトールおよび約0.6質量%のアスコルビン酸2-グルコシドをさらに含む、項目1の組成物。
9.低分子量HA材料の質量平均分子量が約400,000Daから約800,000Daである、項目1の組成物。
10.架橋HAマトリックスが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ブタン、1,4-ビスグリシジルオキシブタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される架橋剤で架橋されている、項目1の組成物。
【0060】
11.HA濃度が約10.0mg/gから約14.0mg/gである、項目1の組成物。
12.HA濃度が約12.0mg/gである、項目1の組成物。
13.皮膚の表在性陥凹の外観を低減させるため、または皮膚の質を改善させるために有用な注射可能な組成物であって、組成物は、
架橋HAマトリックスを含むヒアルロン酸(HA)ゲル、
マンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つ
を含み、
組成物のHA濃度は約17.0mg/g未満であり、
組成物は、皮膚に導入されてから少なくとも約3ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観または改善された皮膚の質を維持する、注射可能な組成物。
14.組成物が、皮膚へ導入されてから少なくとも約6ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観または改善された皮膚の質を維持する、項目13の組成物。
15.組成物が、皮膚へ導入されてから少なくとも約9ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観または改善された皮膚の質を維持する、項目13の組成物。
16.マンニトールが約0.3質量%から約0.9質量%の量で存在する、項目13の組成物。
17.ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、項目13の組成物。
18.アスコルビン酸2-グルコシドが約0.3質量%から約0.6質量%の量で存在する、項目17の組成物。
19.マンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つが、約0.9質量%で存在するマンニトールおよび約0.6質量%で存在するビタミンC誘導体の両方を含む、項目13の組成物。
20.ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、項目19の組成物。
【0061】
21.HA濃度が約10.0mg/gから約14.0mg/gである、項目13の組成物。
22.HA濃度が約12.0mg/gである、項目13の組成物。
23.皮膚の質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを改善する方法であって、方法は、
架橋HAを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を単回の処置セッションで皮膚領域に導入することによって皮膚の領域を処置することを含み、
組成物のHA濃度は約17.0mg/g未満であり、
処置された皮膚は、処置によって、少なくとも約3ヶ月間、改善された質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを維持する、方法。
24.処置された皮膚が、処置によって、少なくとも約6ヶ月間、改善された質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを維持する、項目23の方法。
25.処置された皮膚が、処置によって、少なくとも約12ヶ月間、改善された質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを維持する、項目23の方法。
26.HA濃度が約10.0mg/gから約14.0mg/gである、項目23の方法。
27.HA濃度が約12.0mg/gである、項目23の方法。
28.注射が約5mmから約20mmの間隔で離間している、項目23の方法。
29.注射が1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入される、項目23の方法。
30.処置に要する時間が約45分以下である、項目23の方法。
【0062】
31.注射が28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達される、項目23の方法。
32.組成物がマンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含む、項目23の方法。
33.マンニトールが約0.3質量%から約0.9質量%の量で存在する、項目23の方法。
34.ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、項目23の方法。
35.アスコルビン酸2-グルコシドが約0.3質量%から約0.6質量%の量で存在する、項目34の方法。
【0063】
36.皮膚の滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも1つを増加させる方法であって、
皮膚領域に、約0.5~約4.0mmまたは約0.5~約5.0mmの深さで、BDDE架橋HAと未架橋HAとを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を単回の処置セッションで導入することを含み、
注射は、1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入され、
注射は、28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達され、
注射は、約5mmから約20mmの間隔で離間しており、そして
皮膚領域は、処置によって、少なくとも約6ヶ月間、増加した滑らかさ、水和度、および/または弾力を維持する、方法。
37.組成物がマンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含む、項目36の方法。
38.皮膚の滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも1つを増加させるための組成物であって、
約400,000Daから約800,000Daの質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られた架橋HAマトリックスを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含み、
組成物のHA濃度は約10.0mg/gから約14.0mg/gであり、
組成物は、処置によって、複数の離間した組成物の注射を含む単回の処置セッションで皮膚に導入されてから少なくとも約6ヶ月間、増加した滑らかさ、水和度および/または弾力を維持し、注射は、1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入され、28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達され、約5mmから約20mmの間隔で離間している、組成物。
39.組成物がマンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含む、項目38の組成物。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕HA材料の総質量を基準として50質量%を超える、少なくとも70質量%の、または少なくとも約90質量%の、約0.20MDaから約0.99MDaの間、好ましくは約400,000Daから約800,000Daの間の質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られた架橋HAマトリックスを含むヒアルロン酸(HA)ゲルを含む、皮膚の表在性陥凹の外観を低減させるための注射可能な組成物であって、
組成物のHA濃度が、約17.0mg/g未満、例えば約10.0mg/g~約14.0mg/g、好ましくは約12mg/gであり、
架橋HAマトリックスが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される架橋剤で架橋されており、
組成物が、好ましくは抗酸化剤またはビタミンを含有せず、
組成物が、皮膚に導入されてから少なくとも約3ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観を維持する、注射可能な組成物。
〔2〕皮膚に導入されてから少なくとも約6ヶ月間、好ましくは少なくとも約9ヶ月間または12ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観を維持する、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕未架橋HAを、好ましくは組成物の総質量を基準として10質量%未満または5質量%未満の量で含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕マンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含むか、またはリドカインを好ましくは組成物の約0.1質量%から約5質量%の間、例えば0.3質量%の量でさらに含む、前記〔1〕から〔3〕に記載の組成物。
〔5〕マンニトールが、組成物の総質量を基準として約0.3質量%から約0.9質量%の間の量で存在する、前記〔4〕に記載の組成物。
〔6〕ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、前記〔4〕に記載の組成物。
〔7〕アスコルビン酸2-グルコシドが、組成物の総質量を基準として約0.3質量%から約0.6質量%の間の量で存在する、前記〔6〕に記載の組成物。
〔8〕組成物の総質量を基準として、約0.9質量%のマンニトールおよび約0.6質量%のアスコルビン酸2-グルコシドをさらに含む、前記〔1〕から〔4〕に記載の組成物。
〔9〕架橋HAマトリックスを含むヒアルロン酸(HA)ゲル、
マンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つ
を含む、皮膚の表在性陥凹の外観を低減させるため、または、皮膚の質を改善するための注射可能な組成物であって、
組成物のHA濃度が、約17.0mg/g未満、例えば約10.0mg/g~約14.0mg/g、好ましくは約12.0mg/gであり、
組成物が、皮膚に導入されてから少なくとも約3ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観または改善された皮膚の質を維持する、注射可能な組成物。
〔10〕架橋HAマトリックスが、HA材料の総質量を基準として50質量%を超える、少なくとも70質量%の、または少なくとも90質量%の約0.20MDaから約0.99MDaの間の質量平均分子量、好ましくは約400,000Daから約800,000Daの間の質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られる、前記〔9〕に記載の注射可能な組成物。
〔11〕架橋HAマトリックスが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される架橋剤で架橋されている、前記〔9〕から〔11〕に記載の注射可能な組成物。
〔12〕皮膚に導入されてから少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、皮膚の表在性陥凹が低減された外観または改善された皮膚の質を維持する、前記〔9〕から〔11〕に記載の組成物。
〔13〕リドカインを、好ましくは組成物の約0.1質量%から約5質量%の間、例えば0.3質量%の量でさらに含む、前記〔9〕から〔12〕に記載の組成物。
〔14〕マンニトールが、組成物の総質量を基準として約0.3質量%から約0.9質量%の間の量で存在する、前記〔9〕から〔13〕に記載の組成物。
〔15〕ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、前記〔9〕から〔14〕に記載の組成物。
〔16〕アスコルビン酸2-グルコシドが、組成物の総質量を基準として約0.3質量%から約0.6質量%の間の量で存在する、前記〔15〕に記載の組成物。
〔17〕マンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つが、組成物の総質量を基準として、約0.9質量%で存在するマンニトールおよび約0.6質量%で存在するビタミンC誘導体の両方を含む、前記〔9〕から〔13〕に記載の組成物。
〔18〕ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、前記〔17〕に記載の組成物。
〔19〕皮膚の質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを改善する方法における使用のための組成物であって、方法が、
架橋HAマトリックスの総質量を基準として50質量%を超える、少なくとも70質量%の、または少なくとも約90質量%の、約0.20MDaから約0.99MDaの間、好ましくは約400,000Daから約800,000Daの間の質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られた架橋HAマトリックスを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む前記組成物の複数の離間した注射を、単回の処置セッションで皮膚領域に導入することにより皮膚の領域を処置することを含み、
架橋HAマトリックスが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される架橋剤で架橋されており、
組成物のHA濃度が、約17.0mg/g未満、例えば約10.0mg/g~約14.0mg/g、好ましくは約12.0mg/gであり、
注射が、約5mmから約20mmの間、例えば5mmまたは10mmの間隔で離間しており、
処置された皮膚が、処置によって、少なくとも約3ヶ月間、改善された質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを維持する、組成物。
〔20〕HA材料の総質量を基準として50質量%を超える、少なくとも70質量%の、または少なくとも約90質量%の、約0.20MDaから約0.99MDaの間、好ましくは約400,000Daから約800,000Daの間の質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られた架橋HAマトリックスを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を、単回の処置セッションで皮膚領域に導入することにより皮膚の領域を処置することを含む、皮膚の質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを改善する非治療的方法であって、
架橋HAマトリックスが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される架橋剤で架橋されており、
組成物のHA濃度が、約17.0mg/g未満、例えば約10.0mg/g~約14.0mg/g、好ましくは約12.0mg/gであり、
注射が、約5mmから約20mmの間、例えば5mmまたは10mmの間隔で離間しており、
処置された皮膚が、処置によって、少なくとも約3ヶ月間、改善された質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを維持する、非治療的方法。
〔21〕処置された皮膚が、処置によって、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、改善された質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを維持する、前記〔19〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕に記載の非治療的方法。
〔22〕処置された皮膚が、処置によって、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、改善された質感、水和度、および弾力の少なくとも1つを維持する、前記〔19〕もしくは〔21〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕もしくは〔21〕に記載の非治療的方法。
〔23〕注射が1注射当たり約5μL~約100μLの量で導入される、前記〔19〕および〔21〕から〔22〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕から〔22〕に記載の非治療的方法。
〔24〕処置に要する時間が約45分以下である、前記〔19〕および〔21〕から〔23〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕から〔23〕に記載の非治療的方法。
〔25〕注射が28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達される、前記〔19〕および〔21〕から〔24〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕から〔24〕に記載の非治療的方法。
〔26〕組成物がマンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含む、または組成物が抗酸化剤もしくはビタミンを含まない、および/または組成物がリドカインを好ましくは組成物の約0.1質量%から約5質量%の間、例えば0.3質量%の量でさらに含む、前記〔19〕および〔21〕から〔25〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕から〔25〕に記載の非治療的方法。
〔27〕マンニトールが、組成物の総質量を基準として約0.3質量%から約0.9質量%の間の量で存在する、前記〔19〕および〔21〕から〔26〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕から〔26〕に記載の非治療的方法。
〔28〕ビタミンC誘導体がアスコルビン酸2-グルコシドである、前記〔19〕から〔27〕に記載の使用のための組成物または前記〔20〕から〔27〕に記載の非治療的方法。
〔29〕アスコルビン酸2-グルコシドが、組成物の総質量を基準として約0.3質量%から約0.6質量%の間の量で存在する、前記〔28〕に記載の使用のための組成物または前記〔28〕に記載の非治療的方法。
〔30〕皮膚の滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも1つを増加させる方法における使用のための組成物であって、方法が、
皮膚領域に、約0.5mmから約5.0mmの間、好ましくは約1.0mmから約4.0mm、より好ましくは約1.5mmから約3.0mmの注入深さで、BDDE架橋HAと未架橋HAとを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む前記組成物の複数の離間した注射を単回の処置セッションで導入することを含み、
組成物のHA濃度が、約17.0mg/g未満、例えば約10.0mg/gから約14.0mg/g、好ましくは約12.0mg/gであり、
注射が、1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入され、
注射が、28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達され、
注射が、約5mmから約20mmの間、例えば5mmまたは10mmの間隔で離間しており、
皮膚領域が、処置によって、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、増加した滑らかさ、水和度、および/または弾力を維持する、組成物。
〔31〕皮膚領域に、約0.5mmから約5.0mmの間、好ましくは約1.0mmから約4.0mm、より好ましくは約1.5mmから約3.0mmの注入深さで、BDDE架橋HAと未架橋HAとを含有するヒアルロン酸(HA)ゲルを含む組成物の複数の離間した注射を単回の処置セッションで導入することを含む、皮膚の滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも1つを増加させる非治療的方法であって、
組成物のHA濃度が、約17.0mg/g未満、例えば約10.0mg/gから約14.0mg/g、好ましくは約12.0mg/gであり、
注射が、1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入され、
注射が、28Gから33Gのゲージを有する針を通して送達され、
注射が、約5mmから約20mmの間、例えば5mmまたは10mmの間隔で離間しており、
皮膚領域が、処置によって、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、増加した滑らかさ、水和度、および/または弾力を維持する、非治療的方法。
〔32〕組成物がマンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含む、または組成物が抗酸化剤もしくはビタミンを含まない、ならびに/または、組成物がリドカインを好ましくは組成物の約0.1質量%から約5質量%の間、例えば0.3質量%の量でさらに含む、前記〔30〕に記載の使用のための組成物または前記〔31〕に記載の非治療的方法。
〔33〕約0.20MDaから約0.99MDaの間、好ましくは約400,000Daから約800,000Daの間の質量平均分子量を有する低分子量HA材料を用いて作られた架橋HAマトリックスを含むヒアルロン酸(HA)ゲルを含む、皮膚の滑らかさ、水和度、および弾力の少なくとも1つを増加させるための組成物であって、
組成物のHA濃度が、約17.0mg/g未満、例えば約10.0mg/gから約14.0mg/g、好ましくは12.0mg/gであり、
組成物が、処置によって、複数の離間した組成物の注射を含む単回の処置セッションで皮膚に導入されてから少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、増加した滑らかさ、水和度、および/または弾力を維持し、注射が、1注射当たり約5μLから約100μLの量で導入され、28Gから33G、好ましくは32Gのゲージを有する針を通して送達され、約5mmから約20mmの間、例えば5mmまたは10mmの間隔で離間している、組成物。
〔34〕組成物がマンニトールおよびビタミンC誘導体の少なくとも1つをさらに含む、または、組成物が抗酸化剤もしくはビタミンを含まない、ならびに/または、組成物がリドカインを好ましくは組成物の約0.1質量%から約5質量%の間、例えば0.3質量%の量でさらに含む、前記〔33〕に記載の組成物。
〔35〕架橋HAマトリックスが、HA材料の総質量を基準として50質量%を超える、少なくとも70質量%の、または少なくとも約90質量%の前記低分子量HA材料を用いて作られる、前記〔33〕から〔34〕に記載の組成物。
〔36〕架橋HAマトリックスが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、および1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される架橋剤で架橋されている、前記〔33〕から〔35〕に記載の組成物。