(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】物品排除装置および物品検査システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/46 20060101AFI20240123BHJP
B07C 5/36 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B65G47/46 H
B07C5/36
(21)【出願番号】P 2021035515
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高柳 光男
(72)【発明者】
【氏名】岡部 光紀
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-153822(JP,A)
【文献】特開2012-236135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/46
B07C 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品搬送ラインに組み込まれ、エア源からエア配管を通して供給される圧縮空気をレギュレータにより所定圧力に制御しつつ電磁弁の開閉に応じてエアノズルに供給し、該エアノズルからのエアブローにより排除対象物品を前記物品搬送ラインから排除する物品排除装置であって、制御ユニットにより、予め設定されたタイミングで前記電磁弁が開閉制御されたとき、前記エア配管から分岐し、前記レギュレータを通して該開閉制御された前記電磁弁側に供給される圧縮空気の流量を、前記エア配管の該分岐と該電磁弁との間で検出し、該流量が前記タイミングに応じて予め設定された下限流量に達しているか否かを判定して、判定結果を出力する流量監視手段を備えることを特徴とする物品排除装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、起動時に、前記電磁弁の開閉を制御し、
前記流量監視手段は、前記流量が前記下限流量に達している否かを判定し、達していないと判定したときにエラー信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の物品排除装置。
【請求項3】
物品搬送ライン中の物品を検査し、検査結果信号を出力する検査部と、
エア源からエア配管を通して供給される圧縮空気をレギュレータにより所定圧力に制御しつつ電磁弁
を開閉制御して前記検査部の後段側に位置するエアノズルに供給し、選別制御信号に基づいて前記エアノズルからのエアブローにより排除対象物品を前記物品搬送ラインから排除するための選別部と、
前記選別制御信号を出力する制御部と、を備えた物品検査システムであって、
前記選別部は、
前記選別制御信号を受けたとき、前記エア配管から分岐し、前記レギュレータを通して該開閉制御された前記電磁弁側に供給される圧縮空気の流量を、前記エア配管の該分岐と該電磁弁との間で検出し、該流量が予め設定された下限流量に達しているか否かを判定して、判定結果を前記制御部に出力する流量監視手段を有していることを特徴とする物品検査システム。
【請求項4】
前記圧縮空気の流量が前記下限流量に達しないときに、エラー表示出力または/およびアラーム音出力を実行する異常報知手段をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の物品検査システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記検査部の運転開始時に、前記検査部が不良品を検出したときに前記電磁弁を制御する条件で前記選別制御信号を出力し、
前記選別部は、前記選別制御信号を受けて、前記電磁弁を開閉させて前記エアノズルに供給される圧縮空気の流量を前記流量監視手段により検出することを特徴とする請求項3または4に記載の物品検査システム。
【請求項6】
前記物品搬送ライン中の物品を所定方向に搬送する搬送手段をさらに有し、
前記選別部は、前記圧縮空気の流量が前記下限流量に達しないときには、前記搬送手段による前記物品の搬送を停止させることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか一項に記載の物品検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品排除装置および物品検査システムに関し、特にエアブロー式の物品排除
装置および物品検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気の噴流の風圧力(以下、単にエア噴射圧力ともいう)を用いて生産ライン上か
ら検査結果が不良である排除対象の物品を排除したり、特定の搬出先の製品を物品搬送ラ
インの特定の搬出ラインに振り分け排出したりするエアブロー式の物品排除装置および物
品検査システムが、従前より多用されている。
【0003】
この種の物品排除装置および物品検査システムにおいては、物品の形状や搬送姿勢等に
よってエア噴射圧力を排除対象物品に有効に加えることができず、的確な排除動作が困難
になる場合がある。
【0004】
そこで、従来、コンベア上の物品の位置ずれ等による搬送間隔や向きの変化を考慮しつ
つその物品の重心位置を予測する等して、エア噴射による物品排除の的確性を高めるよう
にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、重量測定に対してエア噴射圧力が影響し得る影響時間範囲が、重量測定部による
測定タイミングと重ならないように、エア噴射のタイミングと重量測定のタイミングとを
設定して、重量測定へのエア噴射の影響を抑えるようにしたものがある(例えば、特許文
献2参照)。
【0006】
さらに、近時においては、搬送方向に隣り合う複数のエアノズルから順番にエア噴射を
行うように複数のエアノズルへのエア供給タイミングを制御し、物品搬送状態の多様な変
化に対し排除対象の物品の排除の確実化を図るものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-179969号公報
【文献】特開2007-136249号公報
【文献】特開2018-95327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述のような従来の物品排除装置および物品検査システムは、エア源か
ら供給される圧縮空気をレギュレータで所定圧力に制御(一般には減圧調整)し、その下
流側の電磁弁を開弁させることで、搬送中の排除対象物品がコンベア上の所定のエアブロ
ー区間を通過する期間中に、エアノズルから圧縮空気を噴射させる構成となっていた。
【0009】
そのため、例えばエア源から他の空圧作動機器への供給流量が多くなっている状態下で
、エアブローによる排除動作の期間が長くなったり動作頻度が高くなったりすると、レギ
ュレータの一次側圧力が低下する前にレギュレータを通る圧縮空気の流量が低下してしま
い、レギュレータによる制御圧力(二次側調整圧力)が表示の上では所要の圧力レベルで
あったとしても、エアノズル側に供給される圧縮空気の流量が十分確保できなくなり、エ
アノズルのエアブローによる排出力(排出可能な質量)が低下してしまう場合があった。
特に、設備の起動時には他の空圧作動機器に設けられているエアタンクに一時的に多くの
圧縮空気が供給されることで発生する。このように、エアの制御圧レベルが所要レベルに
達しているにもかかわらず、実際のエアブローにおいて流量が不足してしまうと、空気圧
パワーの低下に伴い排除対象物品が正しく排除されずに後段に流出してしまうという不都
合が生じる。
【0010】
これに対し、エア源のコンプレッサ能力を高める等すると、コンプレッサ等の消費動力
が大きくなったり各要素の耐圧負荷が増加したりすることで、設備の管理コストが増加し
、生産コストの増加を招来してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる従来の課題を解決すべくなされたものであり、コスト高を招くことな
くエアブローによる物品排除時に圧縮空気の流量が不足することを防止し、確実な排除動
作が可能な物品排除装置および物品検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る物品排除装置は、上記目的達成のため、物品搬送ラインに組み込ま
れ、エア源から供給される圧縮空気をレギュレータにより所定圧力に制御しつつ電磁弁の
開閉に応じてエアノズルに供給し、該エアノズルからのエアブローにより排除対象物品を
前記物品搬送ラインから排除する物品排除装置であって、制御ユニットにより、予め設定
されたタイミングで前記電磁弁が開閉制御されたとき、前記エア源側から前記レギュレー
タを通して前記電磁弁側に供給される圧縮空気の流量を検出し、前記タイミングに応じて
予め設定された下限流量に達しているか否かを判定して、判定結果を出力する流量監視手
段を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明では、電磁弁の開閉が制御されたとき、エア源からのエア(圧縮空気)がレギュレータにより所定圧力に制御されるとともに、その電磁弁の開閉動作によるレギュレータへのエア源からの供給流量が予め設定された下限流量以上であるか否かが判定される。したがって、エアノズルから圧縮空気を噴射させて排除対象物品を物品搬送ラインから排除するのに際して、所要の排出力に対応する空気圧パワーで排除対象物品を的確に排除可能な流量が噴射されたか否かを判定でき、その判定結果を出力することによって流量不足を把握できることになる。
【0014】
なお、ここにいう流量監視手段は、下限流量に達しているか否かを判定可能なもの、例
えばレギュレータの前後差圧に応動する受圧部品の変位を検出するようなものでもよいが
、渦流量計、熱式質量流量計、コリオリ流量計等といった流量計やエアパワーメータを用
いるものでもよい。
【0015】
(2)本発明の好ましい実施形態においては、前記制御ユニットは、起動時に、前記電
磁弁の開閉を制御し、前記流量監視手段は、前記流量が前記下限流量に達している否かを
判定し、達していないと判定したときにエラー信号を出力する構成とすることができる。
【0016】
この場合、制御ユニットの起動時にエア源から供給される圧縮空気の供給量を判定でき
ることとなり、この供給量が不足していればエラー信号が出力され、このエラー信号を物
品搬送ラインの制御盤等に出力したり、エラー表示やアラーム音出力で異常を報知したり
することができ、排除対象物品が搬送されてからではなく、エア源からの供給流量が予め
設定された下限流量以上であるか否かが事前に判定でき、エア源やエア配管のチェックを
予防的に実施でき、物品搬送ライン稼働後の異常停止を回避することができる。
【0017】
(3)本発明に係る物品検査システムは、物品搬送ライン中の物品を検査し、検査結果
信号を出力する検査部と、エア源から供給される圧縮空気をレギュレータにより所定圧力
に制御しつつ電磁弁の開閉を制御して前記検査部の後段側に位置するエアノズルに供給し
、選別制御信号に基づいて前記エアノズルからのエアブローにより排除対象物品を前記物
品搬送ラインから排除するための選別部と、前記選別制御信号を出力する制御部と、を備
えた物品検査システムであって、前記選別部は、前記選別制御信号を受けたとき、前記エ
ア源側から前記レギュレータを通して前記電磁弁側に供給される圧縮空気の流量を検出し
、該流量が予め設定された下限流量に達しているか否かを判定して、判定結果を出力する
流量監視手段を有していることを特徴とする。
【0018】
この構成により、本発明では、選別部は、制御部から出力される選別制御信号を受けた
ときに、エア源からの供給流量が予め設定した下限流量以上であるか否かが判定される。
したがって、排除対象物品を排除するためにエアノズルからエアブローさせたときに、所
要の排出力に対応する空気圧パワーで排除対象物品を的確に排除可能な流量が噴射された
か否かを判定でき、エア源から供給される圧縮空気の供給流量が予め設定された下限流量
に達しないと判定されたときには、その判定結果を物品搬送ラインの制御盤等で受けてそ
のラインを停止させ、メンテナンスを行うなど、後工程への排除対象物品の流出を防止す
る措置がとられることになる。
【0019】
(4)本発明の好ましい実施形態においては、前記圧縮空気の流量が前記下限流量に達
しないときに、エラー表示出力または/およびアラーム音出力を実行する異常報知手段を
さらに有する構成とすることができる。
【0020】
この構成により、物品搬送ラインの管理者は、物品搬送ラインから報知される様々な異
常信号のうちから、エア源から供給される圧縮空気の供給流量が不足していることを的確
に把握でき、速やかにエア源やエア配管のチェックなどのメンテナンスを行えるようにな
る。
【0021】
(5)また、本発明の好ましい実施形態においては、前記制御部は、前記検査部の運転
開始時に、前記選別制御信号を出力し、前記選別部は、前記選別制御信号を受けて、前記
電磁弁を開閉させて前記エアノズルに供給される圧縮空気の流量を前記流量監視手段によ
り検出する構成とすることができる。
【0022】
この構成により、検査部の運転開始時にエア源から供給される圧縮空気の供給量を判定
し、この判定結果またはエラー表示やアラーム音出力による異常の報知を受けて、エア源
からの供給流量が予め設定された下限流量以上であるか否かが判定でき、検査部の検査結
果により排除対象物品が実際に排除する前に、エア源やエア配管のチェックなどのメンテ
ナンスを予防的に行なえ、物品検査システム稼働後の異常停止を防止することができる。
【0023】
(6)さらに、本発明の好ましい実施形態においては、前記生産ライン中の物品を所定
方向に搬送する搬送手段をさらに有し、前記選別部は、前記圧縮空気の流量が前記下限流
量に達しないときには、前記搬送手段による前記物品の搬送を停止させる構成としてもよ
い。
【0024】
この構成により、物品搬送ラインおよび物品検査システムの稼働中であって、物品検査
システムの検査部の検査結果に応じて排除対象物品を排除したときに、エア源から供給さ
れる圧縮空気の供給量が不足していると判定された場合、この排除対象物品を搬送してい
るタイミングでこの搬送手段を停止するように物品検査システムが制御できるようになる
。すなわち、この搬送手段上に物品があれば、その物品は排除対象品であるにもかかわら
ず、正しく排除できなかったものであることが容易に把握できるようになる。一方、この
搬送手段上に物品がなければ、圧縮空気の供給量が不足していても正しく排除できていた
ことが把握でき、不要な確認作業を行う必要なく物品検査システムを再稼働することがで
きる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エア源からの圧縮空気の供給流量が変動したとしても、コスト高を招
くことなくエアブローによる物品排除時に圧縮空気の供給量が不足していないかを判定す
ることにより確実な排除動作が可能であり、さらに、圧縮空気の供給量が不足していると
判定したときにも適切な対応をとることができ、不要なメンテナンスを行うことによって
生じる長時間の停止をも防止することが可能な物品排除装置および物品検査システムを提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る物品排除装置を備えた物品検査システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る物品検査システムにおけるエアジェット選別機でのエアブロー特性を異なる複数の供給流量時で比較して示すグラフで、縦軸は供給流量を、横軸はレギュレータ制御されるエア圧を、それぞれ示している。
【
図3】本発明の一実施形態に係る物品検査システムにおけるエアジェット選別機でのエアブロー特性を異なる複数の供給流量時で比較して示すグラフで、エアブローにより選別排出可能な質量を、横軸は供給流量を、それぞれ示している。
【
図4】本発明の一実施形態に係る物品検査システムにおける流量監視手段の処理機能を説明するタイミングチャートである。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る物品排除装置を備えた物品検査システムの概略構成図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る物品排除装置を備えた物品検査システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1ないし
図4は、本発明の一実施の形態に係る物品排除装置を備えた物品検査システ
ムを示している。
【0029】
まず、物品検査システム1の構成および各部の基本動作について説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の物品検査システム1は、検査機10とエアブロー式の物品排除装置であるエアジェット選別機20
(選別部)とを含んで構成されている。
【0031】
検査機10は、被検査品(物品)であるワークWを所定の搬送方向(
図1中のX方向)
に搬送する搬送部11と、所定の物品検査を行う検査部12(物品検査部)と、それらを
制御する制御部13とを具備している。
【0032】
搬送部11は、例えば複数のローラに無端のコンベアベルトを巻回したベルトコンベア
式のものであり、X方向に物品搬送可能なコンベア搬送路11aを有している。
【0033】
検査部12は、例えばX線検査を行うもので、その検査のためのX線発生器およびX線
検出器、ならびに検出した信号を処理して異物の検出などを行なう信号処理部を有してい
る。ただし、検査部12は、他の検査、例えば金属検査や質量計測、形状検査等を行うも
の、あるいは、そのような複数の検査のうち少なくとも1つの検査を行うものであっても
よい。
【0034】
制御部13は、例えば搬送部11によるワークWの搬送速度や搬送間隔等を制御すると
ともにエアジェット選別機20に対応する搬送制御信号Cbを出力する搬送制御手段13
aと、X線発生器の出力を制御したりワークWの搬送速度に応じたX線検出器のX線ライ
ン検出周期および検査期間等を制御したりする検査制御手段13bと、両手段による物品
検査および物品搬送を制御するため各種制御値を演算する演算制御手段13cと、図示し
ない物品検知センサによる物品検知情報や検査結果に応じた制御信号をエアジェット選別
機20側に所定のタイミングで出力する選別制御手段13dと、各種操作入力や設定、お
よび画面表示が可能なタッチパネル式の操作・表示手段13eを含んでいる。
【0035】
具体的には、検査機10は、検査部12での検査結果に応じて、例えば検査中のワーク
WのX線検査によりワークW中に異物が検出されたとき、物品検知センサによる今回のワ
ークWの物品搬入検知時点から所定の選別遅延時間内に、異物が検出されたワークWの選
別排出を指令する選別制御信号Rjを生成して、エアジェット選別機20側に出力するよ
うになっている。
【0036】
一方、エアジェット選別機20は、検査機10のコンベア搬送路11aの下流側に位置
するコンベア搬送路21aを有する搬送部21と、コンベア搬送路21a(選別搬送路)
の側方に配置されたエアノズル22と、エアノズル22の上流側でエア供給経路を開閉す
る電磁弁23と、電磁弁23の上流側でエアノズル22に供給される圧縮空気の圧力、す
なわちエアの圧力を所定圧力に制御するフィルタレギュレータ24(レギュレータ)と、
フィルタレギュレータ24より上流側で図外のエアコンプレッサ等のエア源に接続するエ
ア配管25を具備していて、エア源からエア配管25を通して供給される圧縮空気をフィ
ルタレギュレータ24により所定圧力に調整し、電磁弁23の開閉によりエアノズル22
に供給するようになっている。
【0037】
また、エアジェット選別機20のフィルタレギュレータ24より上流側には、エア配管
25を通してエア源側から供給される圧縮空気の流量、すなわちエアの供給流量Qsを検
出する流量計26がエア配管25に接続されていて、検査機10からの選別制御信号Rj
に応じて電磁弁23を開閉させる信号(開閉制御信号)を出力するとともに、流量計26
からの各検出信号が入力される制御ユニット30が設けられている。
【0038】
なお、エア源側から供給される圧縮空気の変化について圧縮空気の圧力を圧力計で監視
することもできるが、この圧力計では、エアブローによる瞬間的な流量低下に伴うエア圧
低下を捉えることが難しい(エアブロー時の流量の過渡的な変化をエア圧で捉えられない
)ため、ここでは流量監視に流量計26を用いている。
【0039】
制御ユニット30は、電磁弁23が閉弁している状態における流量計26の検出信号に
基づき、エアの供給流量Qsが所定流量以下に低下したときには、検査機の制御部13に
対して圧縮空気の圧力低下の発生が推定されることを表す異常信号を出力する。
【0040】
通常、エアジェット選別機20の制御ユニット30は、検査機10側からの電源供給を
受け、検査機10が起動しているときには、検査機10の制御部13と相互に信号を送受
信し、連携して動作可能となるように電気的に接続されているが、検査機10とエアジェ
ット選別機20とに別体のユニットとして設けられていなくても良く、複数の機能を有す
る一体のユニットとして検査機10側に設けて小型化を図っても良いが、本実施形態にお
いては、検査機10を制御する機能を制御部13にて実行し、エアジェット選別機20を
制御する機能を制御ユニット30にて実行するものとしている。
【0041】
搬送部21は、例えば、制御ユニット30によって運転開始および運転停止を制御され
るモータ等の駆動源(図示せず)を有し、複数のローラに無端のコンベアベルトを巻回し
たベルトコンベア式のものであり、
図1中の右側に物品搬送可能なコンベア搬送路21a
を有している。この搬送部21は、勿論、ベルトコンベア式に限定されるものではない。
【0042】
エアノズル22は、検査機10の検査部12の後段側に位置する略矩形断面のフラット
型のものが広く用いられ、フィルタレギュレータ24で所定圧力Pjに制御されたエアが
電磁弁23を介して供給されるとき、選別搬送部21の所定搬送区間である選別区間Zj
内にエアジェット噴射を行うことで、その所要のエア流量とエア圧力による空気圧パワー
の風圧力によって選別区間Zj内のワークWをコンベア搬送路21a上から側方(
図1中
の下方)に排出させるように吹き飛ばすかまたはスリップさせるようになっている。
【0043】
電磁弁23は、制御ユニット30からの開閉制御信号の入力に応じて開弁したとき、エ
ア源側から供給されフィルタレギュレータ24により所定圧力に制御された圧縮空気をエ
アノズル22に流入させることができる一方、制御ユニット30からの開閉制御信号の入
力がなくなって閉弁したとき、エア源側から供給されフィルタレギュレータ24により所
定圧力に制御された圧縮空気をエアノズル22から遮断することができるようになってい
る。なお、ここでいう開閉制御信号は、印加電圧を高レベルと低レベルとに切替えること
により電磁弁を開閉制御するオン・オフ信号であるとよい。
【0044】
エア配管25は、図外のエアコンプレッサ等のエア源に接続するとともに、それぞれに
図示しない空気圧作動部を有する複数の他装置A、Bに共有されて接続されており、エア
源からの圧縮空気を各装置A、Bおよび本実施形態の物品検査システム1に供給すること
ができる。エア源からは、各装置A、Bおよび本実施形態の物品検査システム1の通常想
定される動作において圧縮空気を消費しても、十分な供給量が得られるようにエア源から
圧縮空気が供給されている。
【0045】
エア配管25より下流側の空気圧回路で構成されたエアジェット選別機20の物品排出
性能(空気圧パワーに応じた排出質量)は、概ねエアの供給圧力と供給流量に応じて規定
されるが、供給圧力Psについては例えば0.4~0.9[MPaG]に設定される。ま
た、供給流量Qsは、標準状態(20℃、1atm、湿度65%)の大気に換算した流量
値(ANR)で、例えば空圧部品の一般的な基準流量レベルである400[L/min]
ないし500[L/min](ANR)に設定されている。
【0046】
流量計26は、フィルタレギュレータ24を通してエアノズル22側に流れるエアの流
量であり、ここではエア配管25の物品検査システム1側への分岐点付近で供給流量Qs
について予め設定された下限流量Qt(
図2参照)に達している否かを判定可能な流量監
視手段として機能し得るものである。この流量監視手段は、例えばフィルタレギュレータ
24の前後差圧に応動するダイヤフラム等の可動受圧部品の変位により下限流量Qtを下
回ったことを検出するようなもの、あるいは、フィルタレギュレータ24の上流側に配置
される渦流量計、熱式質量流量計、コリオリ流量計等といった流量計やエアパワーメータ
を用いるものとすることができる。ここで、予め設定された下限流量Qtとは、エア源で
あるエアコンプレッサの不調やエア配管25の漏れや詰まり、他の装置でのエアの過大な
使用等が発生することで、初期のエアの供給流量Qsの設定値に対して所定比率、例えば
2割程度以上の低下が生じた場合のエア流量であり、例えば供給流量Qsが
図2に示すq
s5(例えば500L/min[ANR])である場合、下限流量Qt=qs4(例えば
400L/min[ANR])に設定される。
【0047】
制御ユニット30は、検査機10の制御部13から検査部12の検査結果に応じた選別
制御信号Rjが入力されたとき、その選別制御信号Rjを基に専用制御基板やプログラマ
ブルコントローラ等によるON/OFF制御で電磁弁23を開閉制御するように構成され
ている。
【0048】
この制御ユニット30は、検査機10の制御部13から出力される選別制御信号Rjを
受けて電磁弁23を開閉制御する際に、検査後の選別区間Zjまでの搬送距離および搬送
速度に応じた所定のタイミングとエアブロー時間で電磁弁23を開閉させる信号を出力す
るようになっている。
【0049】
さらに、制御ユニット30は、流量計26と共に流量監視手段として機能し、電磁弁2
3の開閉の制御によって、エア源側からフィルタレギュレータ24に供給されるエアの供
給流量Qsを検出し、その流量が予め設定された下限流量Qtに達しているか否かを判定
して、その流量判定結果Knを検査機10の制御部13に出力するようになっている。具
体的には、前述のように500[L/min]の供給流量Qsを設定した場合に、下限流
量Qtは、400[L/min]と設定することができる。
【0050】
エアの供給流量Qsは、エアジェット選別機20でエアブローされていない(エアが流
れていない)状態では0[L/min]となり、電磁弁23の開閉時間比率等に応じても
変化し得るが、エア供給流量Qsの低下(供給空気圧エネルギの低下)を監視する必要か
ら、ここでのエア供給流量Qsは、連続エアブローした状態での実供給流量値[L/mi
n]とする。
【0051】
次に、物品検査システム1の制御部13およびエアジェット選別機20の制御部30に
おいて実行される圧縮空気の供給流量Qsの監視動作について説明する。
【0052】
この供給流量Qsは、
図4に示すように、主として3つの確認モードで監視される。
【0053】
(1)起動時(電源投入時)確認モード(M1)
本システムの電源投入による起動時(同図中のt1)に、操作・表示手段13eのタッ
チパネルには圧縮空気の供給量確認を実行するか否かを選択するための操作ボタンが表示
され、この操作ボタンをユーザーが選択操作することで、流量チェックモードに移行し、
制御部13から予め設定された動作時間Tp1だけエアブロー動作するように選別制御信
号Rjが出力される。
【0054】
制御ユニット30は、制御部から出力される選別制御信号Rjを受けて、電磁弁23を
開閉制御し、エアブロー動作を実行させて、エアブロー動作中の流量を流量計26により
検出し、計測値を取り込むことで、流量チェックする。
【0055】
このときの動作時間Tp1は、流量計26が精度よく計測値を出力できる程度に長い時
間でエアブロー動作するように設定されている。
【0056】
制御部13は、流量計26が流量を精度よく検出するのに必要な時間間隔に相当する所
定間隔で、制御ユニット30に選別制御信号Rjを所定回数(例えば2ないし3回)出力
し、これに応じて、制御ユニット30は供給流量Qsをそれぞれ検出し、下限流量Qtと
対比して流量チェックする。流量判定結果Knは、所定の電圧レベル(ハイレベル/ロー
レベル)を有する流量判定結果Knとして制御部13に信号出力される。
【0057】
制御部13の操作・表示手段13eは、入力された流量判定結果Knに基づいて、流量
チェックの結果を、予め設定された所定の表示形態でタッチパネルの所定位置に表示する
。
【0058】
また、流量チェックは、エアブローごとの各計測値を用いて下限流量Qtと対比するだ
けでなく、各計測値の平均値を用いて精度を向上させてもよいし、追加的に各計測値のば
らつきを算出したり、各計測値を前半と後半に分けて前半および後半の各平均値の差から
変動幅を算出して、これらの値を含んだ流量判定結果Knを信号出力し、表示するように
してもよい。
【0059】
(2)停止中確認モード(M2)
停止中確認モード(M2)における圧縮空気の流量チェックの基本的な動作は、起動時
確認モード(M1)と共通であるので、相違点を中心に説明する。以降の実施形態も同様
とする。
【0060】
本システムは、電源投入後、各部の起動処理が行われると検査待機状態となる。停止中
確認モード(M2)は、このような検査待機状態すなわち運転停止中に圧縮空気の流量チ
ェックを行うことをいい、例えば、エアジェット選別機20のフィルタレギュレータ24
の制御圧力を調整したときなど、ユーザーの操作入力により任意のタイミング(
図4中の
t2)でも実施できるようになっていて、操作・表示手段13eの操作メニューから、エ
ア流量チェック機能を実行することにより開始される。
【0061】
検査機10は、運転停止中におけるユーザーの確認要求操作入力時(同図中のt2、t
3またはt7)に、その入力に応じて、予め指定された動作時間Tp2またはTp3だけ
連続エアブロー動作(疑似選別制御信号により動作)させて、そのエアブロー動作中の流
量を流量計26により検出し、制御ユニット30に計測値を取り込むことで、流量チェッ
クする。
【0062】
この流量チェックは、例えば、エアジェット選別機20のフィルタレギュレータ24の
制御圧力を調整したときなど、ユーザーの操作入力により任意のタイミング(同図中のt
2)で実施できるようになっていて、操作・表示手段13eの操作メニューから、エア流
量チェック機能を実行することにより開始される。
【0063】
まず、ユーザーが操作・表示手段13eのタッチパネルを操作メニューから、流量チェ
ックを選択する。
【0064】
制御部13は、予め設定された動作時間Tp2だけエアブロー動作するように選別制御
信号Rjを制御ユニット30に対して出力し、制御ユニット30は、供給流量Qsの計測
値を取り込み、下限流量Qtと対比する。
【0065】
ここで、供給流量Qsが予め設定された下限流量Qtに満たなかった場合を説明する。
【0066】
制御ユニット30は、流量計26で検出した供給流量Qsが下限流量Qtに満たないと
判定したとき、制御部13に流量判定結果を表す流量判定結果Knを出力する。
【0067】
制御部13は、制御ユニット30から流量判定結果Knとして流量エラー信号を受け、
操作・表示手段13eはエラーメッセージ(例えば「運転禁止」)をタッチパネルの所定
位置に表示し、ユーザーに流量不足であることを視覚的に報知するとともに、物品搬送ラ
インの制御盤に対してエラー信号を出力するための操作ボタンを表示させてもよい。また
、速やかに物品搬送ラインを停止できるように、制御ユニット30から物品搬送ラインの
制御盤にエラー信号を直接出力してもよい。
【0068】
そして、物品搬送ラインを停止させてエア源やエア配管25のチェックが行われると、
再び操作・表示手段13eが操作され(同図中のt3)、エラーメッセージが一旦リセッ
トされて流量チェックが開始される。
図4に示す例は、2回目の流量チェックで正常とな
った場合を示している。なお、エアブロー動作時間Tp3は、停止時確認モードにおける
再チェック用に設定してもよいし、起動時確認モード(M1)に適用される動作時間Tp
1を用いてもよいし、再びTp2を用いてもよい。
【0069】
(3)運転開始時確認モード(M3)
物品検査を伴う運転の開始時(
図4中のt4)に先立ち、予め指定された動作時間Tp
4だけ連続エアブロー動作させて、そのエアブロー動作中の流量を流量計26により検出
し、制御ユニット30に計測値を取り込むことで、流量チェックする。
【0070】
具体的には、ユーザーが、制御部13の操作・表示手段13eのタッチパネルにより運
転開始操作を行うと、選別制御手段13dは、検査対象の物品の種類(品種)に応じて設
定されたパラメータにより定められたエアブロー時間だけ電磁弁23を開弁するように選
別制御信号Rjを出力して、流量チェックする。
【0071】
制御部13は、流量判定結果Knが圧縮空気の供給流量Qsが下限流量Qtに達してい
れば、運転開始時確認モード(M3)を終了し、搬送制御手段13aは検査機10の搬送
部11のコンベアを作動させる。制御部13は、エアジェット選別機20の制御ユニット
30に運転開始信号を出力して、エアジェット選別機20の選別搬送部21を制御させる
。
【0072】
なお、運転開始時確認モード(M3)では、実際の不良品排出時、具体的には物品の搬
送速度が速い時や搬送間隔が短い時には、排除対象物品を排除するためのエアブロー時間
が短くなることが多いため、流量計26が十分に応答せず、精度よく流量を計測できずに
流量値が安定しないことがあるため、流量チェックを所定間隔で所定回数エアブロー動作
を繰り返して、この間の供給流量Qsの平均値を用いたり、設定されたエアブロー時間が
所定値よりも小さいときには、流量チェック用のエアブロー時間を適用してもよい。
【0073】
上記したように、各確認モードM1、M2またはM3において、エア源側からの供給流
量Qsが下限流量Qtに達している場合(下限流量以上の場合)には、検査機10の制御
部13は、制御ユニット30からの判定OK(
図4中の流量チェックで正常の場合)の流
量判定結果Knの入力信号と検査部12の検査結果に応じて、エアブローによる選別排出
を指令する選別排出信号Rjを選択的に生成する。そして、物品排除装置であるエアジェ
ット選別機20は、選別制御信号Rjにより選別排出が要求されたとき、検査機10のコ
ンベア搬送路11aより下流側のコンベア搬送路21a上の選別区間Zj内で、選別対象
のワークWをコンベア搬送路11a上から外れるY方向(
図1中の下方側に)へとエアブ
ローにより選別排出させることができる。
【0074】
そして、制御ユニット30は、流量計26により計測される供給流量Qsが下限流量Q
tに達していないと判定したときには、判定NG(
図4中の流量チェックで異常の場合)
の流量判定結果Knをエラー信号として出力するようになっている。
【0075】
具体的には、流量計26により計測された供給流量Qsが、エア源であるエアコンプレ
ッサの不調やエア配管25の漏れや詰まり、他の装置でのエアの過大な使用等が発生した
と判断される程度に低下している場合、制御ユニット30は、検査機10の制御部13に
対して、判定NGの流量判定結果Knに対応するアラーム出力を、アナログ電圧やパルス
電圧、流量値のシリアル通信コマンド等の形で実行する。そして、このアラーム出力を受
け取った検査機10の制御部13は、操作・表示手段13eによりエラー表示や警告表示
を実行することで、ユーザーによるライン停止操作やメンテナンス作業の実行を促すよう
になっている。これと併せて、制御ユニット30に接続された図示しない何らかの出力デ
バイスから警告音その他の警告出力を行ってもよいことは勿論である。
【0076】
すなわち、エア源側からフィルタレギュレータ24に供給されるエアの供給流量Qsが
下限流量Qtに達していない場合(下限流量未満の場合)、検査機10の制御部13は、
制御ユニット30からの判定NGの流量判定結果Knの入力信号と検査部12の検査結果
に応じて、エアジェット選別機20に搬送部21による物品搬送の停止指令信号Ctを出
力するとともに、自機の搬送部11による物品搬送と検査部12による物品検査とを停止
させるようになっている(
図4中の運転禁止状態)。
【0077】
また、エアブロー動作を所定間隔および所定回数で実行させ、1回目のエアブロー動作
について計測される供給流量Qs(1)だけでなく、2回目以降のエアブロー動作につい
て計測される供給流量Qs(2)、Qs(3)、・・・がそれぞれ下限流量Qtに達して
いるか否かを判定しても良い。
【0078】
このように、本実施形態の物品検査システム1においては、エア源からの供給エアをフ
ィルタレギュレータ24により制御しつつ検査機10の検査結果に応じ電磁弁23を開閉
させてエアノズル22に選択的に供給し、エアノズル22からのエアブローにより排除対
象物品を選別排出するエアジェット選別機20を備えている。
【0079】
また、エアジェット選別機20は、物品検査システム1の物品搬送ラインであるコンベ
ア搬送路11a、21aに組み込まれており、フィルタレギュレータ24により所定圧力
に制御したエアを制御ユニット30による電磁弁23の開閉制御に応じてエアノズル22
に供給し、そのエアノズル22からのエアジェット噴射による風圧荷重で、排除対象のワ
ークWを選別排出する。
【0080】
さらに、このエアジェット選別機20では、エア源側からフィルタレギュレータ24お
よび電磁弁23側に供給される圧縮空気の供給流量Qsを検出する流量計26と、その供
給流量Qsが予め設定された下限流量Qtに達しているか否かを判定し、その判定結果を
検査機10の制御部13側に出力する制御ユニット30とによって、流量監視手段が構成
されている。
【0081】
この流量監視手段を用いることで、物品検査システム1において、エアジェット選別機
20は、フィルタレギュレータ24によるエア圧制御下で、エアの供給流量Qsによりワ
ークWが安定排出可能かどうかを、物品検査システム1の運転開始直前にあるいはユーザ
ーの確認要求時に判定可能にしている。
【0082】
また、本実施形態では、エアの供給流量Qsが下限流量Qtに達しないときに、流量判
定結果Knに基づいてエラー表示出力または/およびアラーム音出力を実行する異常報知
手段の機能を、検査機10の制御部13の制御プログラム等に持たせている。
【0083】
さらに、本実施形態では、エアジェット選別機20は、検査機10の確認モード起動時
に、電磁弁23を開弁させてエアノズル22に所定圧力に制御されたエアを供給するとと
もに、フィルタレギュレータ24を通して電磁弁23側に供給されるエアの供給流量Qs
を流量計26により検出し、エアの供給流量Qsが下限流量Qtに達しないときには、制
御ユニット30からの判定NGの流量判定結果Knに基づいて、搬送部11、21(搬送
手段)によるワークWの搬送を停止させるようになっている。
【0084】
次に、物品検査システム1の動作について説明する。
【0085】
上述のように構成された本実施形態の物品検査システム1においては、物品搬送ライン
により順次搬入されるワークWについて、検査機10の検査部12での検査結果に応じて
、そのワークWの物品搬入検知時点から所定時間内に、異物検出等により検査NGとなっ
たワークWが、対応する選別制御信号Rjに基づいてエアジェット選別機20により選別
排出される。
【0086】
このような物品検査システム1において、制御部13には、起動時確認モードM1、停
止中確認モードM2または運転開始時確認モードM3のいずれかを実施するかがパラメー
タとして設定されていて、各確認モードにおいて、電磁弁23の開閉を制御する制御ユニ
ット30の弁開閉制御ごとに、エア源からのエアがフィルタレギュレータ24により所定
圧力に制御されるとともに、エア源側からフィルタレギュレータ24に供給されるエアの
供給流量Qsが流量計26により計測され、その供給流量Qsが許容し得る下限流量Qt
以上であるか否かが判定される。
【0087】
例えば、
図4には、各確認モードで実行される流量チェックの動作タイミングが示され
ている。
【0088】
電源投入時t1における起動時確認モードM1が「有効」に設定されていると、検査機
10の制御部13は、起動処理の終了後に圧縮空気の供給量確認を実行するか否かを選択
可能なメッセージ画面を操作・表示手段13eのタッチパネルに表示させ、「実行する」
が選択設定されると、予め指定された動作時間Tp1だけ連続したテストエアブローが実
行され、そのエアブロー中の供給流量Qsが流量計26により検出されて、流量チェック
がなされる。
【0089】
一方、「実行しない」が選択されると、表示されているメッセージ画面を閉じ、起動時
確認モードM1は実施されない。
【0090】
また、運転停止中における停止中確認モード(M2)が「有効」に設定されていると、
検査機10の搬送部11が制御部13の搬送制御手段13aにより運転状態から停止状態
に制御されてから次の運転開始操作がなされるまでの間、圧縮空気の供給量確認を実行す
るためのアイコン(不図示)を操作・表示手段13eのタッチパネルの所定位置に表示さ
せる。このアイコンがユーザーにより選択操作されると、停止中確認モード(M2)に入
り、圧縮空気の供給量確認を開始指示する操作ボタンが表示される。
【0091】
ユーザーの操作入力があると、その操作入力時t2に、動作時間Tp2だけ連続エアブ
ロー動作され、そのエアブロー動作中の供給流量Qsが流量計26により検出される。そ
して、供給エア流量がまだ下限流量Qt未満である場合は、一旦流量NGの異常状態と判
定され、メッセージ表示とともに再チェックを実施するための操作ボタンを表示した後、
再チェックを指示するボタン操作のタイミングt3で流量チェックされる。正常判定であ
れば、次いで、運転操作に移行可能となるが、異常判定時は、流量チェックが異常となっ
たことを示すメッセージ画面を再度表示させて、搬送および検査を停止した運転禁止状態
とすることで、点検を促すとともにエアの供給流量Qsが不足した状態、すなわち異常状
態での運転開始を抑止する。
【0092】
この運転禁止状態は、再度流量チェックを実施してその結果が正常となるまで維持され
るようになっている。
【0093】
次いで、運転開始時確認モード(M3)が「有効」に設定されているときの動作を説明
する。
【0094】
物品検査を伴う運転の開始要求があると、制御部13は、その運転開始時すなわち検査
機10の搬送部11が搬送制御手段13aにより運転開始するタイミングt4に先立って
運転開始時確認モード(M3)に入り、所定の動作時間Tp4だけ検査装置10の運転条
件として設定されている不良品検出時と同様な条件で連続エアブロー動作させて、そのエ
アブロー動作中の供給流量Qsを流量計26により検出し、流量チェックする。この流量
チェックの結果が正常であれば、運転開始を許可する(t4)。
【0095】
さらに、いずれの確認モードも「有効」と設定されていない場合であっても、エア源や
エア配管25のメンテナンス、検査対象のワークWの品種変更や生産ロット切替えその他
の理由で運転が休止されるときには、エア配管25を共有する他の機器の圧縮空気の消費
が一時的に増大したり、エアジェット選別機20のエアブロー時間の設定が変更されるこ
とがあり、このような運転停止期間においても流量チェックを実行できるように、操作・
表示手段13eのタッチパネルから各確認モード(例えばM2やM3)で流量チェックを
実行するための操作メニューが設定されていて、操作入力があると、その操作入力時t5
に、対応する確認モードに入り、動作時間Tp5だけ連続エアブロー動作され、異常判定
時は搬送および検査を停止した運転禁止状態となり、正常判定であれば、次いで、運転操
作に移行可能となる。
【0096】
このように、本実施形態では、検査機10の電源投入(起動)時や検査機10による物
品検査を伴う運転の開始や再開に先立って、すなわち、エアノズル22からエアブローに
より排除対象物品のワークWを物品搬送ラインから排除するのに先立って、あるいは、必
要時に、それぞれ所要の空気圧パワーに足る供給流量Qsか否かが適時に判定可能となり
、以降の運転中のエアブローに際して所要の排出力に対応する空気圧パワーで排除対象物
品を的確に排除可能か否かを判定できることになる。
【0097】
通常、電磁弁23の閉弁状態下で、フィルタレギュレータ24の制御圧(2次側設定圧
力)を
図2のグラフの横軸側に示す範囲内のエア圧のいずれか、例えば1次側圧力に比較
的近い高圧側の2次側圧力に設定した後、電磁弁23を開弁させると、フィルタレギュレ
ータ24の流量特性に応じてレギュレータ制御圧は設定圧よりわずかに小さくなるが、供
給エア流量が下限流量以上の必要十分な値、例えば
図2に示す流量Q1(Qt以上かつQ
s以下の任意の流量)となる。この場合、フィルタレギュレータ24の2次側でエア圧P
j4(例えば0.4Mpa)以上の所要のレギュレータ制御圧と所要の制御圧エア流量が
得られる。したがって、エアノズル22からのエアブローにより、所要の排出質量、例え
ば
図3に示す質量wt4(例えば400[g])のワークWを確実に選別排出可能な風圧
力を発生させることができる。
【0098】
一方、供給エア流量が下限流量未満に低下した場合、例えば
図2に示す下限流量Qtを
明確に下回る低流量Q2となった場合には、同図中に仮想の流量値を示すように、フィル
タレギュレータ24の設定圧をPj4以上の高圧側に設定しても、前述の所要の制御圧エ
ア流量が得られず、エアノズル22からからのエアブローにより所要の排出質量のワーク
Wを確実に選別排出可能な風圧力を発生させることができず、例えば
図3に示す質量wt
3(例えば300[g])程度の排出質量に物品排除性能が低下してしまう。
【0099】
これに対し、本実施形態では、制御ユニット30が、物品検査システム1の電源投入に
よる起動時等の所定条件の成立時に、確認モードM1、M2またはM3に入り、予め設定
されたタイミングで電磁弁23の開閉を制御するとともに、流量監視手段である流量計2
6および制御ユニット30によって、供給エアの流量が下限流量に達している否かが判定
され、達していないときにはエラー表示や警告表示が実行される。したがって、そのよう
なエラー表示や警告表示によって、ユーザーによるライン停止操作やメンテナンス作業の
実行を促すことができ、排除対象物品が搬送中であれば、排除対象物品のコンベア搬送を
停止することができる。
【0100】
よって、本実施形態では、物品検査システム1の起動時等の所定条件成立時に、所要の
排出力に対応する空気圧パワーで排除対象のワークWを的確に排除可能か否かを確実に判
定できることになり、エアの制御レベルが所要レベルに達しているにもかかわらず、エア
の供給流量不足によって実際のエアブローにおいて流量不足となる事態を有効に回避でき
、排除対象のワークWが正しく排除されずに後段に流出してしまうという不具合を未然に
確実に防止できることになる。
【0101】
また、本実施形態では、エア源からの供給圧を過度に高めることでエアコンプレッサ等
の消費動力が大きくなったり空気圧回路内の各要素の耐圧負荷が増加したりすることがな
いから、生産コストの増加を招来してしまうといった問題も解消されることになる。
【0102】
このように、本実施形態の物品検査システム1では、排除対象物品の排除のために電磁
弁23の開閉が制御されたとき、所定の確認モードM1、M2またはM3を起動させるこ
とで、エア源からのエアがフィルタレギュレータ24により所定圧力Pjに制御されると
ともに、そのフィルタレギュレータ24への供給流量Qsが下限流量Qt以上であるか否
かが制御ユニット30により判定される。したがって、排除対象物品に対しエアノズル2
2からエアブローを噴射させるのに先立って、事前に所要の排出力(排出質量)に対応す
る空気圧パワーで排除対象物品を的確に排除可能か否かを判定でき、その判定結果を出力
することによって流量不足を把握できることになる。
【0103】
さらに、本実施形態では、検査機10の制御部13およびエアジェット選別機20の制
御ユニット30に、エアの供給流量Qsが下限流量Qtに達しないときに、エラー信号を
外部に出力したり、エラー表示出力または/およびアラーム音出力を実行する異常報知手
段の機能を付加することで、異常報知手段を簡素に構成可能となる。
【0104】
さらに、本実施形態では、生産ライン中の物品を所定方向に搬送する搬送部11、21
を有し、エアの供給流量Qsが下限流量Qtに達しないときには、搬送部11、21によ
るワークWの搬送を停止させるので、不良品が良品搬出側に入ってしまうことをより確実
に防止できる。
【0105】
以上のように、本実施形態においては、エア源からのエアの供給流量Qs等の空気圧パ
ワー供給状態が変動したとしても、エアブローによる物品排除を伴う運転の開始または再
開に先立って、エア圧を制御するフィルタレギュレータ24へのエアの供給流量Qsを確
認するので、所要のエア供給状態下でエアブローによる物品排出を行うことができ、確実
な排除動作が可能な物品排除装置および物品検査システムを提供することができる。
【0106】
なお、上述の一実施形態においては、エア源からの空気圧パワーの供給状態をエアの供
給流量Qsでチェックすることとしていたが、
図5に示す他の実施形態のように、エア源
側からフィルタレギュレータ24に供給されるエアの供給圧力Psを直接に検出する圧力
計27を、フィルタレギュレータ24と電磁弁23の間(2次側圧力を計測)、又は流量
計26とフィルタレギュレータ24の間(1次側圧力を計測)に設けてもよい。この場合
、制御ユニット30は、流量計26および圧力計27からの検出信号を基に、検査機10
からの選別制御信号Rjに応じて電磁弁23を開閉させる信号(開閉制御信号)を出力す
ることになるから、圧力計27により検出された圧力Psと流量計26により検出された
流量Qsとに基づいて、供給エアの空気圧パワーをより的確に把握して電磁弁23をより
的確に開閉制御することができることになる。
【0107】
具体的には、圧力計27は、エア源側から供給される圧縮空気の圧力Psをモニタし、
検出信号を制御ユニット30に出力する。この検出信号は、検出圧力Psに応じた電圧レ
ベルを有するアナログ信号でも良いし、圧力計27に設定された下限値を下回ったことを
表す電圧レベルを有するディジタル信号でもよい。また、圧力計27では、エアブローに
よる瞬間的な流量低下に伴うエア圧低下を捉えることが難しい(エアブロー時の流量の過
渡的な変化をエア圧で捉えならない)ため、エアブロー時用の流量監視に流量計26を用
いている。制御ユニット30は、圧力計27の検出信号に基づいて、供給されているエア
の圧力が所定圧力以下に低下したときに検査機の制御部13に対してエアの圧力低下が発
生していることを表すエラー信号を出力する。
【0108】
この実施形態において、流量計26は電磁弁23が開閉制御されて供給流量Qsを測定
するが、圧力計27は電磁弁23が開閉制御されなくても圧力Psを測定するため、物品
検査システム1の運転中(検査部12、エアジェット選別機20の動作中)に供給エアの
圧力Psを監視することができ、圧力低下を検知したときにエラー信号により運転停止し
、確認モードにて流量チェックを実施できる。この実施形態の他の構成は一実施形態と全
く同様である。
【0109】
また、上述の一実施形態においては、フィルタレギュレータ24の下流側に電磁弁23
を介してエアノズル22を配置する構成となっているが、
図6に示すさらに他の実施形態
のように、フィルタレギュレータ24と電磁弁23の間に蓄圧可能なエアタンク28を設
けてもよい。この場合、電磁弁23の閉弁時にフィルタレギュレータ24の逆止機能によ
りエアタンク28に蓄圧させ、電磁弁23の開弁時におけるエアブローの安定化および強
化を図ることができるとともに、エア源側の異常発生時にライン停止やメンテナンス対応
に有効な作業時間を確保し、より的確な対応が可能となる。この実施形態の他の構成は図
5に示す他の実施形態と全く同様である。
【0110】
また、上述の一実施形態の変形例として、供給流量Qsを監視する3つの確認モードに
加え、運転中に確認する運転中確認モード(M4)を実施するようにし、運転中であって
も物品排出が不要な期間中(例えば前後の工程が一時的に停止してワークWが搬送されな
い期間やワーク間隔が空いたとき)において、前述した停止中確認モードM2と同様に、
操作・表示手段13eの操作メニューからエア流量チェック機能を実行するようにしても
よい。
【0111】
なお、上述の各確認モードの実行は、操作・表示手段13eからの操作入力に限らず、
検査機10からの外部入力が可能であり、その要求元が他の外部装置となる場合が含まれ
る。
【0112】
以上説明したように、本発明の物品排除装置および物品検査システムは、エア源からの
圧縮空気の供給流量が変動したとしても、コスト高を招くことなくエアブローによる物品
排除時に圧縮空気の供給量が不足していないかを判定することにより確実な排除動作が可
能であり、さらに、圧縮空気の供給量が不足していると判定したときにも適切な対応をと
ることができ、不要なメンテナンスを行うことによって生じる長時間の停止をも防止する
ことが可能な物品排除装置および物品検査システムを提供することができるものである。
かかる本発明は、圧縮空気の噴流の風圧力を用いるエアブロー式の物品排除装置および物
品検査システム全般に有用である。
【符号の説明】
【0113】
1 物品検査システム
10 検査機
11 搬送部(検査搬送部)
11a コンベア搬送路
12 検査部(物品検査部)
13 制御部
13a 搬送制御手段
13b 検査制御手段
13c 演算制御手段
13d 選別制御手段
13e 操作・表示手段
20 エアジェット選別機(選別部)
21 搬送部(選別搬送部)
21a コンベア搬送路(選別搬送路)
22 エアノズル
23 電磁弁
24 フィルタレギュレータ
25 エア配管
26 流量計
27 圧力計
28 エアタンク
30 制御ユニット
M1 起動時確認モード(電源投入時確認モード、確認モード)
M2 停止中確認モード(確認モード)
M3 運転開始時確認モード
Pj1、Pj2、Pj3、Pj4、Pj5、Pj6 エア圧(レギュレータ制御圧)
Q1 流量(必要十分な流量)
Q2 低流量
Qs 流量(エア源側からのエアの供給流量)
qs1、qs2、qs3、qs4、qs5、qs6 流量
Qt 下限流量
t1 電源投入時
t2、t3、t7 要求操作入力時(停止中の確認要求操作入力時)
t4 運転開始時
t5、t6 要求操作入力時(運転開始時または停止中の確認要求操作入力時)
Tp1、Tp2、Tp4、Tp5 動作時間(エアブロー時間)
W ワーク(被検査品、物品、良品、不良品)
X 搬送方向
Y エアブロー方向
Zj 選別区間