(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】制動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 67/02 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
F16D67/02 K
(21)【出願番号】P 2021126140
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯山 俊男
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-230128(JP,A)
【文献】特開2013-082320(JP,A)
【文献】特開2019-120298(JP,A)
【文献】特開2001-032655(JP,A)
【文献】特開昭49-085893(JP,A)
【文献】特開昭54-058170(JP,A)
【文献】特開平01-105026(JP,A)
【文献】特開2007-255695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体が回転可能な状態と、前記回転体が回転不能な状態とに切り換えると共に、前記回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに回転自在に支持されていると共に前記回転体に連結される入力軸と、
前記入力軸に回転自在に篏合された円筒状の内輪と、
前記入力軸の軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着され、前記内輪に制動力を付与する制動手段と、
前記入力軸に入力された回転を増速して前記内輪に伝達する増速手段とを備え、
前記制動手段は、第1の制動力を前記内輪に付与して前記回転体を回転不能にする第1の軸方向位置と、前記第1の制動力よりも小さい第2の制動力を前記内輪に付与しつつ前記回転体の回転を許容する第2の軸方向位置と、前記内輪に制動力を付与しない第3の軸方向位置とに位置づけられ
、
前記ハウジングの内周面には雌ねじが形成されており、
前記制動手段は、軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着された可動体を含み、前記可動体の外周面には、前記ハウジングの前記雌ねじに嵌め合わされる雄ねじが形成されている制動装置。
【請求項2】
回転体が回転可能な状態と、前記回転体が回転不能な状態とに切り換えると共に、前記回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに回転自在に支持されていると共に前記回転体に連結される入力軸と、
前記入力軸に回転自在に篏合された円筒状の内輪と、
前記入力軸の軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着され、前記内輪に制動力を付与する制動手段と、
前記入力軸に入力された回転を増速して前記内輪に伝達する増速手段とを備え、
前記制動手段は、第1の制動力を前記内輪に付与して前記回転体を回転不能にする第1の軸方向位置と、前記第1の制動力よりも小さい第2の制動力を前記内輪に付与しつつ前記回転体の回転を許容する第2の軸方向位置と、前記内輪に制動力を付与しない第3の軸方向位置とに位置づけられ
、
前記制動手段は、前記内輪に接触して制動力を付与する制動片と、前記制動片を前記内輪に向かって押し付けるバネと、前記内輪に対する前記制動片の接近を制限する制限片とを含む制動装置。
【請求項3】
回転体が回転可能な状態と、前記回転体が回転不能な状態とに切り換えると共に、前記回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに回転自在に支持されていると共に前記回転体に連結される入力軸と、
前記入力軸に回転自在に篏合された円筒状の内輪と、
前記入力軸の軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着され、前記内輪に
接触して制動力を付与する
制動片を含む制動手段と、
前記入力軸に入力された回転を増速して前記内輪に伝達する増速手段とを備え、
前記制動手段は、第1の制動力を前記内輪に付与して前記回転体を回転不能にする第1の軸方向位置と、前記第1の制動力よりも小さい第2の制動力を前記内輪に付与しつつ前記回転体の回転を許容する第2の軸方向位置と、前記内輪に制動力を付与しない第3の軸方向位置とに位置づけられ、
前記ハウジングの内周面には内歯車が形成され、前記内輪の外周面には太陽歯車が形成されており、
前記増速手段は、前記ハウジングの前記内歯車と噛み合うと共に、前記内輪の前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、キャリアとを含み、
前記キャリアは、前記入力軸に回転自在に挿入され外周面に太陽歯車が形成された円筒部と、前記円筒部の外周面から径方向外側に延びる環状部と、前記環状部の片面から軸方向に突出するキャリア軸とを含み、前記遊星歯車は前記キャリア軸に回転自在に支持されており、
前記入力軸は、円柱状の軸部と、前記軸部の外周面から径方向外側に延びるフランジ部と、前記フランジ部の片面から突出する支持部とを含み、
前記増速手段は、さらに、前記入力軸の前記支持部に回転自在に支持され、前記ハウジングの前記内歯車と噛み合うと共に、前記キャリアの前記太陽歯車と噛み合う付加遊星歯車を含
み、
前記内輪は、軸方向片側端部に向かって次第に外径が小さくなる円錐台形状外周面を有し、
前記制動手段の前記制動片は、前記内輪の前記円錐台形状外周面に対応する円錐台形状内周面を有し、前記円錐台形状内周面が前記内輪の前記円錐台形状外周面に接触することによって前記内輪に制動力を付与する制動装置。
【請求項4】
前記内輪は、軸方向片側端部に向かって次第に外径が小さくなる円錐台形状外周面を有し、
前記制動手段の前記制動片は、前記内輪の前記円錐台形状外周面に対応する円錐台形状内周面を有し、前記円錐台形状内周面が前記内輪の前記円錐台形状外周面に接触することによって前記内輪に制動力を付与する、請求項
2に記載の制動装置。
【請求項5】
前記第1の軸方向位置と、前記第2の軸方向位置と、前記第3の軸方向位置とに前記制動手段を位置づけるための位置決め手段を備える、請求項1から4までのいずれかに記載の制動装置。
【請求項6】
前記第2の軸方向位置から前記第3の軸方向位置に前記制動手段が移動する際に、前記内輪と前記制動手段との間に隙間を生成する隙間生成手段を備える、請求項1から5までのいずれかに記載の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体が回転可能な状態と、回転体が回転不能な状態とに切り換えると共に、回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の出入口には、開閉可能なシャッタ装置が取り付けられることがある。出入口に取り付けられるシャッタ装置としては、たとえば、昇降自在に支持されたスラットと、スラットを巻き取る回転軸と、回転軸を回転させるモータとを備えるものがある。このようなシャッタ装置においては、モータによって回転軸を回転させることにより、スラットを巻き取って上昇させ、出入口を開放すると共に、スラットを下降させて展開し、出入口を閉塞するようになっている。
【0003】
一般に、シャッタ装置の回転軸には、スラットを下降させている途中、モータの駆動が停止された際に、スラットの自重によってスラットが下降してしまうのを防止する制動装置が装着される。シャッタ装置の回転軸に装着される制動装置には、楔形空間内に配置されたローラの噛み込み作用で、シャッタ装置の回転軸を回転不能にするローラ型の一方向クラッチの原理を応用したものがある(たとえば特許文献1参照。)。この制動装置においては、操作レバーの位置に応じて、回転軸(回転体)が回転可能な状態と、回転軸(回転体)が回転不能な状態との2つの状態のいずれかに切り換えることができるように構成されている。
【0004】
また、回転体に制動力を付与するための制動装置は、歩行支援装置に装着されることもある。典型的な歩行支援装置は、フレームと、フレームを支持する車輪と、フレームに固定されたハンドルとを含む(たとえば特許文献2参照。)。そして、高齢者のような歩行困難者は、歩行支援装置のハンドルを握り、歩行支援装置を押しながら歩行することにより、歩行支援装置によって支援されつつ、歩行することができる。
【0005】
歩行困難者は、通常、ゆっくりとしたペースで歩行するので、歩行支援装置の車輪に適宜の制動力が付与されていないと、歩行困難者のペースよりも大きい速度で歩行支援装置が前方に飛び出してしまうおそれがある。そこで、歩行支援装置の車輪には、適宜の制動力を付与するための制動装置が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-232367号
【文献】特開2020-80945号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されている制動装置には、操作性に改善の余地がある。詳述すると、シャッタ装置のスラットは、通常、質量が大きいことから、シャッタ装置の回転軸には、スラットから大きなトルクが作用する。このため、シャッタ装置の回転軸を回転不能な状態にすると、ローラが楔形空間内に強く噛み込むことになる。したがって、シャッタ装置の回転軸を回転不能な状態にした後、操作レバーを操作してローラの噛み込みを解除する際には、ローラの強固な噛み込みを解除する必要があるため、大きな操作力を操作レバーに加えなければならない。
【0008】
また、上記特許文献1に開示されている制動装置においては、上記のとおり、回転体が回転可能な状態と、回転体が回転不能な状態との2つの状態のいずれかに切り換えるものなので、回転体に付与する制動力を段階的に調整することができず、歩行支援装置に装着するには不向きである。
【0009】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、シャッタ装置の回転軸のように大きなトルクが作用する回転体に装着された場合でも、回転体が回転可能な状態と、回転体が回転不能な状態とに比較的小さい操作力で容易に切り換えることができると共に、回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の制動装置が提供される。すなわち、回転体が回転可能な状態と、前記回転体が回転不能な状態とに切り換えると共に、前記回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置であって、ハウジングと、前記ハウジングに回転自在に支持されていると共に前記回転体に連結される入力軸と、前記入力軸に回転自在に篏合された円筒状の内輪と、前記入力軸の軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着され、前記内輪に制動力を付与する制動手段と、前記入力軸に入力された回転を増速して前記内輪に伝達する増速手段とを備え、前記制動手段は、第1の制動力を前記内輪に付与して前記回転体を回転不能にする第1の軸方向位置と、前記第1の制動力よりも小さい第2の制動力を前記内輪に付与しつつ前記回転体の回転を許容する第2の軸方向位置と、前記内輪に制動力を付与しない第3の軸方向位置とに位置づけられ、前記ハウジングの内周面には雌ねじが形成されており、前記制動手段は、軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着された可動体を含み、前記可動体の外周面には、前記ハウジングの前記雌ねじに嵌め合わされる雄ねじが形成されている制動装置が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記課題を解決する以下の制動装置が提供される。すなわち、回転体が回転可能な状態と、前記回転体が回転不能な状態とに切り換えると共に、前記回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置であって、ハウジングと、前記ハウジングに回転自在に支持されていると共に前記回転体に連結される入力軸と、前記入力軸に回転自在に篏合された円筒状の内輪と、前記入力軸の軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着され、前記内輪に制動力を付与する制動手段と、前記入力軸に入力された回転を増速して前記内輪に伝達する増速手段とを備え、前記制動手段は、第1の制動力を前記内輪に付与して前記回転体を回転不能にする第1の軸方向位置と、前記第1の制動力よりも小さい第2の制動力を前記内輪に付与しつつ前記回転体の回転を許容する第2の軸方向位置と、前記内輪に制動力を付与しない第3の軸方向位置とに位置づけられ、前記制動手段は、前記内輪に接触して制動力を付与する制動片と、前記制動片を前記内輪に向かって押し付けるバネと、前記内輪に対する前記制動片の接近を制限する制限片とを含む制動装置が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記課題を解決する以下の制動装置が提供される。すなわち、回転体が回転可能な状態と、前記回転体が回転不能な状態とに切り換えると共に、前記回転体に付与する制動力を段階的に調整可能な制動装置であって、ハウジングと、前記ハウジングに回転自在に支持されていると共に前記回転体に連結される入力軸と、前記入力軸に回転自在に篏合された円筒状の内輪と、前記入力軸の軸方向に移動自在に前記ハウジングに装着され、前記内輪に接触して制動力を付与する制動片を含む制動手段と、前記入力軸に入力された回転を増速して前記内輪に伝達する増速手段とを備え、前記制動手段は、第1の制動力を前記内輪に付与して前記回転体を回転不能にする第1の軸方向位置と、前記第1の制動力よりも小さい第2の制動力を前記内輪に付与しつつ前記回転体の回転を許容する第2の軸方向位置と、前記内輪に制動力を付与しない第3の軸方向位置とに位置づけられ、前記ハウジングの内周面には内歯車が形成され、前記内輪の外周面には太陽歯車が形成されており、前記増速手段は、前記ハウジングの前記内歯車と噛み合うと共に、前記内輪の前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、キャリアとを含み、前記キャリアは、前記入力軸に回転自在に挿入され外周面に太陽歯車が形成された円筒部と、前記円筒部の外周面から径方向外側に延びる環状部と、前記環状部の片面から軸方向に突出するキャリア軸とを含み、前記遊星歯車は前記キャリア軸に回転自在に支持されており、前記入力軸は、円柱状の軸部と、前記軸部の外周面から径方向外側に延びるフランジ部と、前記フランジ部の片面から突出する支持部とを含み、前記増速手段は、さらに、前記入力軸の前記支持部に回転自在に支持され、前記ハウジングの前記内歯車と噛み合うと共に、前記キャリアの前記太陽歯車と噛み合う付加遊星歯車を含み、前記内輪は、軸方向片側端部に向かって次第に外径が小さくなる円錐台形状外周面を有し、前記制動手段の前記制動片は、前記内輪の前記円錐台形状外周面に対応する円錐台形状内周面を有し、前記円錐台形状内周面が前記内輪の前記円錐台形状外周面に接触することによって前記内輪に制動力を付与する制動装置が提供される。
【0013】
前記内輪は、軸方向片側端部に向かって次第に外径が小さくなる円錐台形状外周面を有し、前記制動手段の前記制動片は、前記内輪の前記円錐台形状外周面に対応する円錐台形状内周面を有し、前記円錐台形状内周面が前記内輪の前記円錐台形状外周面に接触することによって前記内輪に制動力を付与するのが望ましい。
【0014】
前記第1の軸方向位置と、前記第2の軸方向位置と、前記第3の軸方向位置とに前記制動手段を位置づけるための位置決め手段を備えるのが好都合である。
【0015】
前記第2の軸方向位置から前記第3の軸方向位置に前記制動手段が移動する際に、前記内輪と前記制動手段との間に隙間を生成する隙間生成手段を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の制動装置においては、回転体に連結される入力軸と、制動手段から制動力が付与される内輪との間に増速手段が介在しているため、増速手段により、入力軸から内輪に伝達される回転が増速されると共に、入力軸から内輪に伝達されるトルクが低減されるので、シャッタ装置の回転軸のように大きなトルクが作用する回転体に装着された場合でも、回転体が回転可能な状態と、回転体が回転不能な状態とに比較的小さい操作力で容易に切り換えることができる。
【0019】
本発明の制動装置においては、制動手段の位置が第1・第2・第3の軸方向位置に切り換えられることによって、制動手段から内輪に付与する制動力を調整することができる。そして、内輪に付与された制動力は、増速手段および入力軸を介して回転体に伝達される。したがって、本発明の制動装置は、回転体に付与する制動力を段階的に調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に従って構成された制動装置の正面図。
【
図2】
図1におけるII-II線断面図(拡大断面図)。
【
図5】(a)
図1に示すハウジング本体の正面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図6】(a)
図1に示すシールドの背面図、(b)(a)におけるB-B線断面図、(c)(a)に示すシールドの正面図。
【
図7】(a)
図1に示すシールド補助片の背面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図8】(a)
図1に示す入力軸の背面図、(b)(a)におけるB-B線断面図、(c)(a)に示す入力軸の正面図。
【
図9】(a)
図1に示す内輪の背面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図10】(a)
図1に示す可動体の背面図、(b)(a)におけるB-B線断面図、(c)(a)に示す可動体の正面図。
【
図11】(a)
図1に示す制動片の正面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図12】(a)
図1に示す制限片の背面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図13】(a)
図1に示す遊星歯車の正面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図14】(a)
図1に示すキャリアの背面図、(b)(a)におけるB-B線断面図、(c)(a)に示すキャリアの正面図。
【
図15】(a)
図1に示すキャリア補助片の正面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図16】制動手段が第2の軸方向位置に位置づけられた状態における制動装置の断面図。
【
図17】制動手段が第3の軸方向位置に位置づけられた状態における制動装置の断面図。
【
図18】増速手段が1段である場合の制動装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に従って構成された制動装置の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(制動装置2)
図1ないし
図2を参照して説明すると、全体を符号2で示す制動装置は、ハウジング4と、ハウジング4に回転自在に支持されていると共に、回転体(図示していない。)に連結される入力軸6と、入力軸6に回転自在に篏合された円筒状の内輪8(
図2参照。)と、入力軸6の軸方向(
図2における左右方向)に移動自在にハウジング4に装着され、内輪8に制動力を付与する制動手段10と、入力軸6に入力された回転を増速して内輪8に伝達する増速手段12(
図2参照。)とを備える。
【0023】
(ハウジング4)
図2に示すとおり、ハウジング4は、有底筒状のハウジング本体14と、ハウジング本体14の開放側端部に装着されたシールド16と、シールド16に付設されたシールド補助片18とを含む。
【0024】
(ハウジング4のハウジング本体14)
図5を参照して、ハウジング本体14について説明する。ハウジング本体14は、四隅が面取りされた矩形状の端面壁20と、端面壁20の周縁から軸方向片側に延びる筒状の側壁22とを有する。端面壁20の中心部分には、円形の支持穴24が形成されている。
【0025】
図5(a)に示すとおり、側壁22の内周形状は円筒形状であり、側壁22の内周面には、内歯車26が形成されている。また、側壁22の軸方向片側端面には、軸方向に延びる4個のねじ穴28が設けられており、ねじ穴28の内周面には、雌ねじが形成されている。ねじ穴28の雌ねじには、ハウジング本体14にシールド16を固定するためのボルト(図示していない。)が嵌め合わされる。
【0026】
(ハウジング4のシールド16)
図6を参照して説明すると、シールド16は、四隅が面取りされた矩形板状である。シールド16には、軸方向に延びる円筒形状の開口30が形成されている。開口30は、段付きであり、
図6(b)において右から順に、第1部分30aと、第1部分30aよりも直径が小さい第2部分30bと、第2部分30bよりも直径が小さい第3部分30cと、第3部分30cよりも直径が小さい第4部分30dと、第4部分30dよりも直径が小さい第5部分30eとを有する。
【0027】
図6(b)に示すとおり、シールド16には、開口30の第1部分30aにおいて、径方向に貫通する装着穴32が設けられている。装着穴32の内周面には、雌ねじが形成されている。装着穴32には、後述する位置決め手段94が装着される。開口30の第2部分30bの内周面には雌ねじが形成されており、第2部分30bの雌ねじには、後述する制動手段10の可動体54の雄ねじが嵌め合わされる。
【0028】
シールド16には、開口30の第4部分30dよりも径方向外側において、開口30の第3部分30cから軸方向に貫通する複数の支持穴34が形成されている。
図6(a)および
図6(c)に示すとおり、支持穴34は、周方向に等間隔をおいて8個設けられている。シールド16の四隅には、ハウジング本体14にシールド16を固定するための上記ボルト(図示していない。)が通る穴36が設けられている。
【0029】
(ハウジング4のシールド補助片18)
図7に示すとおり、シールド補助片18は、環状板部38と、環状板部38の片面から軸方向に突出する複数の突起40とを有する。環状板部38の外径は、シールド16の開口30の第3部分30cの直径に対応している。環状板部38の内径は、開口30の第4部分30dの直径よりも小さい。図示の実施形態の突起40は、周方向に等間隔をおいて4個設けられている。
【0030】
そして、
図2に示すとおり、環状板部38がシールド16の開口30の第3部分30cに位置づけられると共に、突起40がシールド16の支持穴34に挿入されて、シールド補助片18がシールド16に固定されている。
【0031】
(入力軸6)
図8を参照して、入力軸6について説明する。図示の実施形態の入力軸6は、円柱状の軸部42と、軸部42の外周面から径方向外側に延びる環状のフランジ部44と、フランジ部44の片面から軸方向に突出する円柱状の支持部46とを有する。軸部42の両端には、対向する一対の平坦部42aが設けられており、入力軸6は、平坦部42aを介して回転体(図示していない。)に連結される。支持部46は、周方向に間隔をおいて複数(図示の実施形態では4個)設けられている。
【0032】
図2に示すとおり、入力軸6の軸部42は、ハウジング本体14の支持穴24に挿入され、ハウジング本体14に回転自在に支持されている。後述するが、入力軸6は、制動手段10にも回転自在に支持されている。また、入力軸6のフランジ部44および支持部46は、ハウジング4の内部に収容されている。
【0033】
(内輪8)
図9に示すとおり、全体として円筒状の内輪8は、軸方向片側端部に向かって次第に外径が小さくなる円錐台形状外周面48を有する。内輪8の軸方向他側の外周面には、太陽歯車50が形成されている。内輪8の軸方向中間部の外周面には、径方向外側に突出する環状の鍔52が設けられている。
図9(b)を参照することによって理解されるとおり、図示の実施形態の内輪8の内径は一定である。
【0034】
そして、
図2に示すとおり、内輪8は、入力軸6の軸部42に回転自在に篏合され、軸部42に支持されている。内輪8が入力軸6に支持された状態において、内輪8の鍔52は、シールド16の開口30の第4部分30dに位置している。軸方向に見て、鍔52とシールド補助片18の環状板部38とが重なっている。すなわち、内輪8が軸方向片側(
図2の右側)に移動するのがシールド補助片18によって阻止されている。
【0035】
(制動手段10)
図2に示すとおり、図示の実施形態の制動手段10は、ハウジング4のシールド16に軸方向に移動自在に装着された可動体54と、内輪8に接触して制動力を付与する制動片56と、制動片56を内輪8に向かって押し付けるバネ58と、内輪8に対する制動片56の接近を制限する制限片60とを含む。
【0036】
(制動手段10の可動体54)
図10を参照して可動体54について説明する。可動体54は、
図10(b)の右から見て、操作部54aと、位置決め部54bと、篏合部54cとを有する。
【0037】
図10(a)および
図10(c)を参照することによって理解されるとおり、図示の実施形態における可動体54の操作部54aは、軸方向に見て六角形状に形成されているが、六角形状に限定されず、種々の形状が採用され得る。
【0038】
可動体54の位置決め部54bは、円筒形状である。位置決め部54bの外周面には、軸方向に延びる複数の位置決め溝62が形成されている。複数の位置決め溝62は、周方向に間隔をおいて設けられている。
【0039】
可動体54の篏合部54cは、位置決め部54bと同様に円筒形状である。篏合部54cの外径は、位置決め部54bの外径よりも小さい。篏合部54cの外周面には雄ねじが形成されている。
図2に示すとおり、篏合部54cの雄ねじは、シールド16の開口30の第2部分30bの雌ねじに嵌め合わされる。このように、可動体54は、篏合部54cの雄ねじと、シールド16の雌ねじとのねじ結合によって、軸方向に移動自在にシールド16に装着されている。
【0040】
図10に示すとおり、可動体54には、軸方向に延びる円筒形状の支持穴64と、支持穴64に連なって軸方向に延びる円筒形状の保持穴66とが形成されている。支持穴64には、ハウジング本体14の支持穴24と同様に、入力軸6の軸部42が回転自在に挿入されている。つまり、可動体54は、入力軸6を回転自在に支持している。
【0041】
保持穴66は、段付きであり、
図10(b)において右から順に、第1部分66aと、第2部分66bと、第3部分66cとを有する。第1部分66aの直径と第2部分66bの直径とはほぼ同一であるが、第2部分66bには、周方向に延びる弧状溝68が形成されている。図示の実施形態の弧状溝68は、周方向に間隔をおいて複数設けられているが、弧状溝68は1個であってもよい。第3部分66cの直径は、第2部分66bの直径よりも大きい。
【0042】
(制動手段10の制動片56)
図11を参照して説明すると、制動手段10の制動片56は、全体として円筒状である。制動片56の外周面には、周方向に延びる弧状突起70が形成されている。図示の実施形態の弧状突起70は、可動体54の弧状溝68の位置および数量に対応して、周方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0043】
制動片56は、内輪8の円錐台形状外周面48に対応する円錐台形状内周面72を有し、円錐台形状内周面72が内輪8の円錐台形状外周面48に接触することによって内輪8に制動力を付与する。また、制動片56の中心部分には円形開口74が形成されている。
図2に示すとおり、円形開口74には、入力軸6の軸部42が回転自在に挿入される。
【0044】
制動片56の円錐台形状内周面72と軸方向とのなす角度θ(
図11参照。)は、内輪8の円錐台形状外周面48と軸方向とのなす角度θ(
図9参照。)と同一である。角度θが小さいほど、制動片56が内輪8に付与する制動力が大きくなる。一方、角度θが小さすぎると、内輪8と制動片56とがきつく嵌り合い、内輪8と制動片56とが離れにくくなる。このため、できるだけ大きな制動力が得られると共に、内輪8と制動片56との離れやすさを確保する観点から、角度θは、7~13°程度であるのが好ましい。
【0045】
図2に示すとおり、制動片56は、可動体54の保持穴66に配置され、可動体54に保持される。制動片56が可動体54に保持された状態においては、
図3に示すとおり、可動体54の弧状溝68に制動片56の弧状突起70が嵌め合わされている。このため、可動体54に対する制動片56の回転が阻止される。一方、可動体54に対する制動片56の軸方向の移動は許容されている。
【0046】
(制動手段10のバネ58)
図2に示すとおり、制動手段10のバネ58は、可動体54の保持穴66の底面と、制動片56の端面(
図2における右側端面)との間に配置されている。バネ58の形態としては、たとえば波バネでよい。そして、バネ58は、内輪8に向かって(
図2における左側に向かって)制動片56を押し付けるようになっている。
【0047】
(制動手段10の制限片60)
図12に示すとおり、制動手段10の制限片60は、環状である。制限片60の外径は、可動体54の保持穴66の第3部分66cの直径に対応している。
図2に示すとおり、制限片60は、保持穴66の第3部分66cに嵌め合わされて、可動体54に固定されている。また、制限片60の内径は、制動片56の外径(弧状突起70のない部分の外径)よりも大きいが、弧状突起70のある部分の外径よりは小さい。
【0048】
制動片56はバネ58によって内輪8に向かって押し付けられているところ、制動片56の弧状突起70が制限片60に接触しない範囲においては、制動片56の軸方向の移動を制限片60が阻害することはない。ただし、制動片56の弧状突起70が制限片60に接触した際には、制動片56が内輪8に向かって、それ以上接近するのを阻止する。このように、制限片60は、内輪8に対する制動片56の接近を制限するようになっている。
【0049】
制動手段10においては、上記のとおり、可動体54の篏合部54cの雄ねじと、シールド16の雌ねじとのねじ結合によって、軸方向に移動自在に可動体54がシールド16に装着されている。このため、可動体54に回転操作が加えられると、ハウジング4に対して軸方向に制動手段10が移動する。そして、制動手段10は、第1の制動力を内輪8に付与して回転体を回転不能にする第1の軸方向位置と、第1の制動力よりも小さい第2の制動力を内輪8に付与しつつ回転体の回転を許容する第2の軸方向位置と、内輪8に制動力を付与しない第3の軸方向位置とに位置づけられる。
【0050】
(増速手段12)
増速手段12は、遊星歯車機構から構成されている。増速手段12は、
図2および
図4に示すとおり、ハウジング本体14の内歯車26に噛み合うと共に、内輪8の太陽歯車50に噛み合う複数(図示の実施形態では4個)の遊星歯車76を含む。
図13に示すとおり、遊星歯車76の中心部分には、軸方向に延びる貫通穴78が形成されている。
【0051】
図示の実施形態の増速手段12は、複数の遊星歯車76を回転自在に支持するキャリア80を備える。
図14に示すとおり、キャリア80は、外周面に太陽歯車82aが形成された円筒部82と、円筒部82の外周面から径方向外側に延びる環状部84と、環状部84の片面から軸方向に突出する複数の円柱状のキャリア軸86とを含む。キャリア80の円筒部82は、入力軸6の軸部42に回転自在に挿入されている。複数のキャリア軸86は、周方向に間隔をおいて設けられている。
【0052】
そして、
図2および
図4に示すとおり、遊星歯車76の貫通穴78にはキャリア80のキャリア軸86が挿入されており、遊星歯車76がキャリア軸86に回転自在に支持されている。各キャリア軸86の先端は、
図15に示す環状のキャリア補助片88の円形穴90に挿入されている。このため、
図2に示すとおり、遊星歯車76は、キャリア80の環状部84とキャリア補助片88とで挟み込まれて支持されている。
【0053】
図2に示すとおり、図示の実施形態の増速手段12は、さらに、入力軸6の支持部46に回転自在に支持され、ハウジング本体14の内歯車26に噛み合うと共に、キャリア80の太陽歯車82aに噛み合う付加遊星歯車92を含む。なお、付加遊星歯車92の構成は、上記遊星歯車76の構成と同一でよい。
【0054】
図示の実施形態の増速手段12においては、回転体から入力軸6に入力された回転が、入力軸6に支持された付加遊星歯車92によって増速され、かつ、キャリア80に支持された遊星歯車76によって、さらに増速される2段階の増速機構になっている。言い換えると、回転体から入力軸6に入力されたトルクは、1段階目の付加遊星歯車92によって低減され、2段階目の遊星歯車76によって一層低減されて、内輪8に伝達される。したがって、内輪8を回転不能な状態にするために、内輪8に対して付与する制動力は、比較的小さい力で済むことになる。
【0055】
(位置決め手段94)
図示の実施形態の制動装置2は、第1の軸方向位置と、第2の軸方向位置と、第3の軸方向位置とに制動手段10を位置づけるための位置決め手段94(
図2参照。)を備えている。位置決め手段94は、シールド16の装着穴32に径方向に移動自在に挿入されたボール96と、装着穴32の雌ねじに嵌め合わされた調整ねじ98と、ボール96と調整ねじ98との間に配置されたバネ100とを含む。
【0056】
位置決め手段94においては、位置決め部54bの位置決め溝62と位置決め手段94とが整合した際に、バネ100によってボール96が押し込まれて位置決め溝62に入るので、可動体54の回転を所定位置で止めることができ、これによって制動手段10を第1~第3の軸方向位置に位置づけることができる。
【0057】
次に、上述したとおりの制動装置2に作動について説明する。
【0058】
(第1の軸方向位置)
制動手段10の可動体54の操作部54aに対して所定方向の回転操作が加えられ、可動体54が第1の軸方向位置に位置づけられると、位置決め手段94のボール96が可動体54の位置決め溝62に入ると共に、
図2に示すとおり、内輪8の円錐台形状外周面48に制動片56の円錐台形状内周面72が接触し、かつ、制動手段10のバネ58が圧縮する。圧縮したバネ58は、内輪8に向かって制動片56を押し付ける。これによって、制動片56から内輪8に第1の制動力が付与され、内輪8が回転不能な状態になる。
【0059】
内輪8が回転不能な状態になると、内輪8の太陽歯車50と噛み合っている遊星歯車76も回転不能となる(
図4参照。)。また、遊星歯車76を支持しているキャリア80も回転不能となると共に、キャリア80の太陽歯車82aと噛み合っている付加遊星歯車92も回転不能となる。したがって、付加遊星歯車92を支持している入力軸6も回転不能になるため、入力軸6に連結される回転体も回転不能になる。
【0060】
このように、制動手段10は、可動体54が第1の軸方向位置に位置づけられた際に、第1の制動力を内輪8に付与して、入力軸6に連結される回転体を回転不能にする。
【0061】
(第2の軸方向位置)
可動体54が第1の軸方向位置に位置づけられた状態から、位置決め手段94のボール96が次の位置決め溝62に入るまで、上記所定方向と逆方向の回転操作が可動体54に加えられると、内輪8から遠ざかる方向(
図2における右側)に可動体54が移動して、第2の軸方向位置に可動体54が位置づけられる。
【0062】
そうすると、
図16に示すとおり、制動手段10のバネ58の圧縮量が若干減少し、バネ58が制動片56を押し付ける力も若干減少する。このため、内輪8の回転が許容されると共に、入力軸6に連結される回転体の回転も許容されることになる。
【0063】
ただし、内輪8の円錐台形状外周面48と、制動片56の円錐台形状内周面72とは接触したままである。このため、第1の制動力よりも小さい第2の制動力が制動片56から内輪8に付与される。
【0064】
したがって、制動手段10は、可動体54が第2の軸方向位置に位置づけられた際に、第1の制動力よりも小さい第2の制動力を内輪8に付与しつつ、内輪8および回転体の回転を許容する。
【0065】
(第3の軸方向位置)
可動体54が第2の軸方向位置に位置づけられた状態から、位置決め手段94のボール96が次の位置決め溝62に入るまで、上記所定方向と逆方向の回転操作が可動体54に加えられると、内輪8から遠ざかる方向に可動体54がさらに移動して、第3の軸方向位置に可動体54が位置づけられる。
【0066】
この際は、制動片56がバネ58によって内輪8に向かって押し付けられるものの、制動片56の弧状突起70が制限片60に接触することによって、内輪8に対する制動片56の接近が制限される。したがって、
図17に示すとおり、制動片56の円錐台形状内周面72が内輪8の円錐台形状外周面48から離れるので、制動片56から内輪8に付与されていた制動力が解除される。このように、制動手段10は、可動体54が第3の軸方向位置に位置づけられた際には、内輪8に制動力を付与しないようになっている。
【0067】
(隙間生成手段)
ところで、内輪8の円錐台形状外周面48と、制動片56の円錐台形状内周面72とには、グリース等の適宜の潤滑剤が塗布されている。この潤滑剤によって、わずかながら、内輪8と制動片56とを接着する効果が働く。このため、制動装置2においては、第2の軸方向位置から第3の軸方向位置に制動手段10が移動する際に、内輪8と制動手段10との間に隙間を生成する隙間生成手段を備えているのが好ましい。
【0068】
図示の実施形態では、第2の軸方向位置から第3の軸方向位置に制動手段10が移動する際に、内輪8が制動片56に追従することが、シールド補助片18によって阻止される。また、第2の軸方向位置から第3の軸方向位置に制動手段10が移動する際に、制動片56が残留することが、制限片60によって阻止される。
【0069】
つまり、図示の実施形態では、シールド補助片18および制限片60によって隙間生成手段が構成されており、第2の軸方向位置から第3の軸方向位置に制動手段10が移動する際に、シールド補助片18および制限片60によって、内輪8と制動手段10の制動片56との間に隙間が生成される。
【0070】
以上のとおりであり、図示の実施形態の制動装置2においては、回転体に連結される入力軸6と、制動手段10から制動力が付与される内輪8との間に増速手段12が介在しているため、増速手段12により、入力軸6から内輪8に伝達される回転が増速されると共に、入力軸6から内輪8に伝達されるトルクが低減される。よって、制動装置2は、シャッタ装置の回転軸のように大きなトルクが作用する回転体に装着された場合でも、回転体が回転可能な状態と、回転体が回転不能な状態とに比較的小さい操作力で容易に切り換えることができる。
【0071】
また、制動装置2においては、制動手段10の位置が第1・第2・第3の軸方向位置に切り換えられることによって、制動手段10から内輪8に付与する制動力を調整することができる。そして、内輪8に付与された制動力は、増速手段12および入力軸6を介して回転体に伝達される。したがって、制動装置2は、回転体に付与する制動力を段階的に調整可能である。
【0072】
なお、増速手段12については、図示の実施形態では2段階であるが、
図18に示すように、1段階であってもよい。
図18に示す形態においては、キャリア80および付加遊星歯車92が設けられておらず、増速手段12の遊星歯車76が、入力軸6の支持部46に支持され、ハウジング本体14の内歯車26と噛み合うと共に、内輪8の太陽歯車50と噛み合っている。
【0073】
また、図示の実施形態では、シールド16とシールド補助片18とが別体であるが、シールド16とシールド補助片18とが一体の部材から構成されていてもよい。
【0074】
図示の実施形態では、制動手段10が第1~第3の軸方向位置に位置づけられる例を説明したが、第1~第3の軸方向位置以外の位置にも制動手段10が位置づけられるようになっていてもよい。たとえば、第1の制動力よりも小さいが第2の制動力よりも大きい第4の制動力を内輪8に付与しつつ回転体の回転を許容する第4の軸方向位置や、第2の制動力よりも小さい第5の制動力を内輪8に付与しつつ回転体の回転を許容する第5の軸方向位置等に制動手段10が位置づけられるようになっていてもよい。言い換えると、回転体の回転を許容しつつ、異なる大きさの複数の制動力を内輪8に付与できるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
2:制動装置
4:ハウジング
6:入力軸
8:内輪
10:制動手段
12:増速手段
42:軸部(入力軸)
44:フランジ部(入力軸)
46:支持部(入力軸)
48:円錐台形状外周面(内輪)
50:太陽歯車(内輪)
54:可動体
54a:操作部
54b:位置決め部
54c:篏合部
56:制動片
58:バネ
60:制限片
72:円錐台形状内周面(制動片)
76:遊星歯車
80:キャリア
82:円筒部
82a:太陽歯車
84:環状部
86:キャリア軸
92:付加遊星歯車
94:位置決め手段