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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】給液式気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20240123BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20240123BHJP
   F04B 49/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F04B49/10 331H
F04B39/06 P
F04B49/02 331B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021153094
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2023044951
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】梶江 雄太
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-72708(JP,A)
【文献】特開平2-78777(JP,A)
【文献】実開昭57-78790(JP,U)
【文献】国際公開第2019/049415(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0157404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
F04B 39/06
F04B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
前記電動機によって駆動され、作動室に液体を供給しつつ気体を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体の吸入側に設けられた吸込み絞り弁と、
前記圧縮機本体から吐出された圧縮気体から液体を分離する分離器と、
前記分離器で分離された液体を前記圧縮機本体の前記作動室へ供給する液体供給系統と、
冷却ファンと、
前記液体供給系統に設けられ、前記冷却ファンによって生起された冷却風を用いて液体を冷却する液体冷却器と、
前記圧縮機本体の吐出側圧力を検出する吐出側圧力センサと、
前記電動機、前記吸込み絞り弁、及び前記冷却ファンを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記電動機の駆動中、前記吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の上限値まで上昇したとき、前記吸込み絞り弁を制御して負荷運転から無負荷運転に切換え、
前記無負荷運転の継続時間が所定値に達したとき、前記電動機を停止し、その後、前記吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の下限値まで下降したとき、前記電動機を再始動すると共に前記吸込み絞り弁を制御して前記負荷運転に切換える、給液式気体圧縮機において、
前記制御装置は、
前記無負荷運転の継続時間が前記所定値に達して前記電動機が停止するとき、前記冷却ファンを停止し、
前記電動機の停止中又は前記無負荷運転中における前記吐出側圧力センサの検出履歴に基づき、前記圧縮機本体の吐出側圧力が前記所定の下限値まで下降して前記電動機が再始動する復帰タイミングを予測すると共に、前記復帰タイミングまで前記冷却ファンを停止する場合の、前記復帰タイミング時の前記圧縮機本体の吐出側温度を予測し、
予測された吐出側温度が所定の許容値以下である場合に、前記冷却ファンの停止を継続し、予測された吐出側温度が前記所定の許容値を超える場合に、前記電動機より先行して前記冷却ファンを再始動することを特徴とする給液式気体圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の給液式気体圧縮機において、
前記圧縮機本体の吐出側温度を検出する吐出側温度センサを備え、
前記制御装置は、
前記冷却ファンの停止中における前記吐出側温度センサの検出履歴を記憶し、
その後、前記吐出側温度センサの検出履歴に基づき、前記復帰タイミングまで前記冷却ファンを停止する場合の、前記復帰タイミング時の前記圧縮機本体の吐出側温度を予測することを特徴とする給液式気体圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の給液式気体圧縮機において、
前記圧縮機本体の吸入側温度を検出する吸入側温度センサを備え、
前記制御装置は、
前記電動機及び前記冷却ファンの停止前における負荷運転の時間及び無負荷運転の時間に基づいて負荷率を演算し、
演算された負荷率と前記吸入側温度センサで検出された吸入側温度を含む条件が同じであり、且つ前記電動機及び前記冷却ファンの停止中の、吐出側温度の時系列データを外部サーバから取得し、
前記吐出側温度の時系列データに基づき、前記復帰タイミングまで前記冷却ファンを停止する場合の、前記復帰タイミング時の前記圧縮機本体の吐出側温度を予測することを特徴とする給液式気体圧縮機。
【請求項4】
電動機と、
前記電動機によって駆動され、作動室に液体を供給しつつ気体を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体の吸入側に設けられた吸込み絞り弁と、
前記圧縮機本体から吐出された圧縮気体から液体を分離する分離器と、
前記分離器で分離された液体を前記圧縮機本体の前記作動室へ供給する液体供給系統と、
冷却ファンと、
前記液体供給系統に設けられ、前記冷却ファンによって生起された冷却風を用いて液体を冷却する液体冷却器と、
前記圧縮機本体の吐出側圧力を検出する吐出側圧力センサと、
前記電動機、前記吸込み絞り弁、及び前記冷却ファンを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記電動機の駆動中、前記吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の上限値まで上昇したとき、前記吸込み絞り弁を制御して負荷運転から無負荷運転に切換え、
前記無負荷運転の継続時間が所定値に達したとき、前記電動機を停止し、その後、前記吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の下限値まで下降したとき、前記電動機を再始動すると共に前記吸込み絞り弁を制御して前記負荷運転に切換える、給液式気体圧縮機において、
前記制御装置は、
前記無負荷運転の継続時間が前記所定値に達して前記電動機が停止するとき、前記無負荷運転中における前記吐出側圧力センサの検出履歴に基づき、前記圧縮機本体の吐出側圧力が前記所定の下限値まで下降して前記電動機が再始動するまでの休止時間を予測し、
予測された休止時間が所定の許容値以上である場合に、前記冷却ファンを停止し、予測された休止時間が前記所定の許容値に満たない場合に、前記冷却ファンの駆動を継続することを特徴とする給液式気体圧縮機。
【請求項5】
請求項4に記載の給液式気体圧縮機において、
前記圧縮機本体の吐出側温度を検出する吐出側温度センサを備え、
前記制御装置は、
前記電動機の停止且つ前記冷却ファンの駆動中、前記吐出側温度センサで検出された吐出側温度が所定の許容値以下であるときに、前記冷却ファンを停止することを特徴とする給液式気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動室に液体を供給しつつ気体を圧縮する給液式気体圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、給液式気体圧縮機の一つである給油式空気圧縮機を開示する。特許文献1の給油式空気圧縮機は、電動機と、電動機によって駆動され、作動室に油(液体)を供給しつつ空気(気体)を圧縮する圧縮機本体と、圧縮機本体から吐出された圧縮空気(圧縮気体)から油を分離する分離器と、分離器で分離された油を圧縮機本体の作動室へ供給する油供給系統(液体供給系統)と、冷却ファンと、油供給系統に設けられ、冷却ファンによって生起された冷却風を用いて油を冷却するオイルクーラ(液体冷却器)とを備える。圧縮機本体の作動室で空気を圧縮する際に熱が発生し、この熱によって圧縮空気の温度が上昇する。圧縮機本体の作動室に供給された油によって圧縮空気を冷却することにより、圧縮空気の温度を抑える。
【0003】
特許文献1の給油式空気圧縮機は、圧縮機本体の吸入側に設けられた吸込み絞り弁と、圧縮機本体の吐出側圧力を検出する吐出側圧力センサと、電動機及び吸込み絞り弁を制御する制御装置とを更に備える。制御装置は、電動機の駆動中、吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の上限値まで上昇したとき、吸込み絞り弁を開状態から閉状態に切換えて負荷運転から無負荷運転に切換える。そして、無負荷運転の継続時間が所定値に達したとき、電動機を停止する。その後、吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の下限値まで下降したとき、電動機を再始動すると共に吸込み絞り弁を開状態に切換えて負荷運転に切換える。圧縮機本体の吐出側圧力に応じて無負荷運転又は停止することにより、省エネを図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-072708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には明確に記載されていないものの、制御装置は、例えば電動機と連動するように、冷却ファンを制御する。すなわち、無負荷運転の継続時間が所定値に達して電動機が停止するとき、冷却ファンを停止する。また、吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の下限値まで下降して電動機が再始動するとき、冷却ファンを再始動する。
【0006】
電動機及び冷却ファンの停止中、圧縮熱が発生しないし、油が強制冷却されない。そのため、自然放熱のみによって油の温度が緩やかに減少し、圧縮機本体の吐出側温度も緩やかに減少する。そして、例えば電動機及び冷却ファンの停止時間が短ければ、油の温度や圧縮機本体の吐出側温度が十分に下がらないまま、電動機を再始動することになる。そして、電動機の回転数の増加に伴い、圧縮機本体の発生熱量が急激に増加するため、圧縮機本体の吐出側温度が過剰に高くなる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、再始動時の圧縮機本体の吐出側温度を抑えることを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、電動機と、前記電動機によって駆動され、作動室に液体を供給しつつ気体を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体の吸入側に設けられた吸込み絞り弁と、前記圧縮機本体から吐出された圧縮気体から液体を分離する分離器と、前記分離器で分離された液体を前記圧縮機本体の前記作動室へ供給する液体供給系統と、冷却ファンと、前記液体供給系統に設けられ、前記冷却ファンによって生起された冷却風を用いて液体を冷却する液体冷却器と、前記圧縮機本体の吐出側圧力を検出する吐出側圧力センサと、前記電動機、前記吸込み絞り弁、及び前記冷却ファンを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記電動機の駆動中、前記吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の上限値まで上昇したとき、前記吸込み絞り弁を制御して負荷運転から無負荷運転に切換え、前記無負荷運転の継続時間が所定値に達したとき、前記電動機を停止し、その後、前記吐出側圧力センサで検出された吐出側圧力が所定の下限値まで下降したとき、前記電動機を再始動すると共に前記吸込み絞り弁を制御して前記負荷運転に切換える、給液式気体圧縮機において、前記制御装置は、前記無負荷運転の継続時間が前記所定値に達して前記電動機が停止するとき、前記冷却ファンを停止し、前記電動機の停止中又は前記無負荷運転中における前記吐出側圧力センサの検出履歴に基づき、前記圧縮機本体の吐出側圧力が前記所定の下限値まで下降して前記電動機が再始動する復帰タイミングを予測すると共に、前記復帰タイミングまで前記冷却ファンを停止する場合の、前記復帰タイミング時の前記圧縮機本体の吐出側温度を予測し、予測された吐出側温度が所定の許容値以下である場合に、前記冷却ファンの停止を継続し、予測された吐出側温度が前記所定の許容値を超える場合に、前記電動機より先行して前記冷却ファンを再始動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再始動時の圧縮機本体の吐出側温度を抑えることができる。
【0010】
なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態における給油式空気圧縮機の構成を表す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態における吸込み絞り弁の制御手順を表すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施形態における電動機及び冷却ファンの制御手順を表すフローチャートである。
図4】本発明の第1の実施形態における電動機及び冷却ファンの動作並びに圧縮機本体の吐出側圧力及び吐出側温度の変化を表すタイムチャートである。
図5】本発明の第1の変形例における給油式空気圧縮機の構成を表す概略図である。
図6】本発明の第2の実施形態における電動機及び冷却ファンの制御手順を表すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態における電動機及び冷却ファンの動作並びに圧縮機本体の吐出側圧力及び吐出側温度の変化を表すタイムチャートである。
図8】本発明の第2の変形例における電動機及び冷却ファンの制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における給油式空気圧縮機の構成を表す概略図である。
【0014】
本実施形態の給油式空気圧縮機1(以降、単に圧縮機1という)は、電動機2と、電動機2によって駆動され、作動室に油(液体)を供給しつつ空気(気体)を圧縮する圧縮機本体3と、圧縮機本体3の吸入側に設けられたエアフィルタ4及び吸込み絞り弁5と、圧縮機本体3から吐出された圧縮空気(圧縮気体)から油を分離する分離器6と、分離器6で分離された圧縮空気を圧縮機1の外部へ供給する圧縮空気供給系統7(圧縮気体供給系統)と、分離器6で分離された油を圧縮機本体3の作動室へ供給する油供給系統8(液体供給系統)と、制御装置9とを備える。なお、圧縮機1は、前述した機器を筐体内に収納したユニットとして構成されている。
【0015】
圧縮機本体3は、例えば、互いに噛み合う雌雄一対のスクリューロータと、スクリューロータを収納するケーシングとを有しており、スクリューロータの歯溝に複数の作動室が形成されている。各作動室は、ロータの回転に伴ってロータの軸方向に移動すると共に、空気を吸入する吸入過程と、空気を圧縮する圧縮過程と、圧縮空気を吐出する吐出過程とを順次行う。圧縮機本体3と分離器6の間には、吐出側温度センサ10が設けられている。吐出側温度センサ10は、圧縮機本体3の吐出側温度を検出して制御装置9へ出力する。
【0016】
圧縮空気供給系統7は、調圧逆止弁11と、調圧逆止弁11の下流側に配置されたアフタークーラ12(圧縮気体冷却器)とを備える。アフタークーラ12は、冷却ファン13によって生起された冷却風を用いて、圧縮空気を冷却する。アフタークーラ12の下流側には、吐出側圧力センサ14が設けられている。吐出側圧力センサ14は、圧縮機本体3の吐出側圧力を検出して制御装置9へ出力する。
【0017】
油供給系統8は、分離器6と圧縮機本体3の作動室との圧力差によって、圧縮機本体3の作動室に油を供給する。油供給系統8は、オイルクーラ15(液体冷却器)と、オイルクーラ15をバイパスするバイパス経路16と、油の温度に応じてオイルクーラ15の分流比とバイパス経路16の分流比を調節する温調弁17と、オイルクーラ15からの油とバイパス経路16からの油が合流する合流部より下流側に配置されたオイルフィルタ18とを備える。オイルクーラ15は、冷却ファン13によって生起された冷却風を用いて、油を冷却する。
【0018】
なお、本実施形態の温調弁17は、オイルクーラ15の分流比が100%になる場合があるものの、0%になる場合がないように構成されている。しかし、例えば冷却ファン13によって生起された冷却風の一部を用いて圧縮機本体3が直接冷却されていれば、温調弁17は、オイルクーラ15の分流比が0%になる場合があるように構成されてもよい。
【0019】
制御装置9は、プログラムに従って処理を実行するプロセッサと、プログラムやデータを記憶するメモリとを有する。制御装置9は、上述した電動機2、吸込み絞り弁5、及び冷却ファン13を制御する。
【0020】
次に、本実施形態の制御装置9による吸込み絞り弁5の制御について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態における吸込み絞り弁の制御手順を表すフローチャートである。
【0021】
制御装置9は、運転スイッチ(図示せず)の操作に応じて、電動機2及び冷却ファン13を始動すると共に(ステップS1)、吸込み絞り弁5を開状態に制御して、負荷運転を行う(ステップS2)。
【0022】
制御装置9は、負荷運転中、吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の上限値Puまで上昇したかどうかを判定する(ステップS3)。吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の上限値Puまで上昇したとき、吸込み絞り弁5を閉状態に制御して、無負荷運転に切換える(ステップS4)。
【0023】
制御装置9は、無負荷運転中、無負荷運転の継続時間が所定値Aに達したかどうかを判定すると共に(ステップS5)、吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の下限値Pdまで下降したかどうかを判定する(ステップS6)。無負荷運転の継続時間が所定値Aに達せず、吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の下限値Pdまで下降したとき、吸込み絞り弁5を開状態に制御して、負荷運転に切換える(ステップS2)。
【0024】
次に、本実施形態の制御装置9による電動機2及び冷却ファン13の制御について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態における電動機及び冷却ファンの制御手順を表すフローチャートである。
【0025】
制御装置9は、負荷運転中、吐出側温度センサ10で検出された吐出側温度が所定の目標値T1(後述の図4参照)となるように、冷却ファン13の目標回転数を可変して制御する。無負荷運転中、吐出側温度センサ10で検出された吐出側温度が所定の目標値T1以下となるように、且つ、冷却ファン13の目標回転数が所定の最小値以上となるように、冷却ファン13の目標回転数を可変して制御する。
【0026】
制御装置9は、上述の図2のステップS5にて無負荷運転の継続時間が所定値Aに達したとき、電動機2及び冷却ファン13を停止する(ステップS7)。その後、所定時間における吐出側圧力センサ14及び吐出側温度センサ10の検出履歴を記憶する。但し、電動機2の停止中における吐出側圧力センサ14の検出履歴に代えて、若しくは加えて、無負荷運転中における吐出側圧力センサ14の検出履歴を記憶してもよい。
【0027】
制御装置9は、電動機2及び冷却ファン13が停止してから上述の所定時間が経過した後、上述の吐出側圧力センサ14の検出履歴に基づき、圧縮機本体3の吐出側圧力が所定の下限値Pdまで下降して電動機2が再始動する復帰タイミングを予測する(ステップS8)。また、復帰タイミングまで冷却ファン13を停止する場合を仮定し、この場合における復帰タイミング時の圧縮機本体3の吐出側温度を、上述の吐出側温度センサ10の検出履歴に基づいて予測する(ステップS9)。
【0028】
制御装置9は、予測された吐出側温度が所定の許容値T2(言い換えれば、電動機2の回転数の増加に伴い、圧縮機本体3の吐出側温度が上昇しても許容範囲に抑えることが可能な、吐出側温度の初期値)を超えるかどうかを判定する(ステップS10)。予測された吐出側温度が所定の許容値T2以下である場合に、冷却ファン13の停止を継続する(ステップS11)。その後、吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の下限値Pdに達したとき、電動機2及び冷却ファン13を再始動する(ステップS12,13)。
【0029】
制御装置9は、予測された吐出側温度が所定の許容値T2を超える場合に、電動機2より先行して冷却ファン13を再始動する(ステップS14)。その後、吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の下限値Pdに達したとき、電動機2を再始動する(ステップS15,16)。
【0030】
次に、本実施形態の動作及び作用効果について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態における電動機及び冷却ファンの動作並びに圧縮機本体の吐出側圧力及び吐出側温度の変化を表すタイムチャートである。
【0031】
使用者が運転スイッチを操作すると(時間t1)、電動機2及び冷却ファン13が始動すると共に、吸込み絞り弁5が開状態に制御される。すなわち、負荷運転が行われる。そして、圧縮機1から外部への圧縮空気の供給量と外部の圧縮空気の使用量のバランスにより、圧縮機本体3の吐出側圧力が変動する。圧縮機本体3の吐出側圧力の変動に応じて、負荷運転と無負荷運転が切換えられる。
【0032】
無負荷運転の継続時間が所定値Aに達すると(時間t2)、電動機2及び冷却ファン13が停止する。電動機2及び冷却ファン13が停止してから所定時間が経過すると(時間t3)、制御装置9は、電動機2を再始動する復帰タイミング(時間t4)を予測する。また、図4中点線で示すように復帰タイミングまで冷却ファン13を停止する場合を仮定し、この場合における復帰タイミング時の圧縮機本体3の吐出側温度を予測する。
【0033】
制御装置9は、図4中点線で示すように予測された圧縮機本体3の吐出温度が所定の許容値T2を超える場合に、電動機2より先行して冷却ファン13を再始動する。これにより、図4中実線で示すように復帰タイミング時の圧縮機本体3の吐出側温度を所定の許容値T2以下に抑えることができる。また、油の温度も低下することができる。したがって、電動機2の回転数の増加に伴い、圧縮機本体3の発生熱量が急激に増加しても、圧縮機本体3の吐出側温度が過剰に高くならない。その結果、不要な警報や停止制御を防止することができる。
【0034】
なお、第1の実施形態において、制御装置9は、冷却ファン13の停止中における吐出側温度センサ10の検出履歴を記憶し、その後、吐出側温度センサ10の検出履歴に基づき、復帰タイミングまで冷却ファン13を停止する場合の、復帰タイミング時の圧縮機本体3の吐出側温度を予測する場合を例にとって説明したが、これに限られない。
【0035】
本発明の第1の変形例を、図面を参照しつつ説明する。図5は、本変形例における給油式空気圧縮機の構成を表す概略図である。なお、本変形例において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0036】
本変形例の圧縮機1は、圧縮機本体3の吸入側温度を検出する吸入側温度センサ19を更に備える。
【0037】
制御装置9は、電動機2及び冷却ファン13の停止中における吐出側温度センサ10の検出履歴により、圧縮機本体3の吐出側温度の時系列データを取得する。また、電動機2及び冷却ファン13の停止中に吸入側温度センサ19で検出された吸入側温度を取得する。また、電動機2及び冷却ファン13の停止前における負荷運転の時間及び無負荷運転の時間に基づき、負荷率を演算する。そして、前述した吐出側温度の時系列データを、前述した吸入側温度及び負荷率と関連付けさせながら、通信ネットワーク20を介し外部サーバ21へ送信する。外部サーバ21は、複数の圧縮機1から受信した複数の吐出側温度の時系列データを、対応する吸入側温度及び負荷率と共に蓄積する。
【0038】
制御装置9は、第1の実施形態と同様、無負荷運転の継続時間が所定値Aに達したとき、電動機2及び冷却ファン13を停止する。このとき、負荷率を演算し、この負荷率と吸入側温度センサ19で検出された吸入側温度を含む条件が同じである吐出側温度の時系列データを、通信ネットワーク20を介し外部サーバ21から取得する。そして、外部サーバ21から取得した吐出側温度の時系列データに基づき、復帰タイミングまで冷却ファン13を停止する場合の、復帰タイミング時の圧縮機本体3の吐出側温度を予測する。
【0039】
以上のように構成された本変形例においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
本発明の第2の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、無負荷運転の継続時間が所定値に達して電動機が停止するとき、冷却ファンを停止するか若しくは冷却ファンの駆動を継続するかを判定する実施形態である。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分(図1及び図2参照)は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0041】
図6は、本実施形態における電動機及び冷却ファンの制御手順を表すフローチャートである。
【0042】
制御装置9は、無負荷運転の継続時間が所定値Aに達したとき、電動機2を停止する(ステップS17)。そして、無負荷運転中における吐出側圧力センサ14の検出履歴に基づき、圧縮機本体3の吐出側圧力が所定の下限値Pdまで下降して電動機2が再始動するまでの休止時間を予測する(ステップS18)。
【0043】
制御装置9は、予測された休止時間が所定の許容値B(言い換えれば、復帰タイミングまで冷却ファン13を停止する場合を仮定し、この場合における復帰タイミング時の吐出側温度が所定の許容値T2以下となる、休止時間の最小値)以上であるかどうかを判定する(ステップS19)。
【0044】
制御装置9は、予測された休止時間が所定の許容値B以上である場合に、冷却ファン13を停止する(ステップS20)。その後、吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の下限値Pdに達したとき、電動機2及び冷却ファン13を再始動する(ステップS12,13)。
【0045】
制御装置9は、予測された休止時間が所定の許容値Bに満たない場合に、冷却ファン13の駆動を継続する(ステップS21)。その後、吐出側圧力センサ14で検出された吐出側圧力が所定の下限値Pdに達したとき、電動機2を再始動する(ステップS15,16)。
【0046】
次に、本実施形態の動作及び作用効果について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態における電動機及び冷却ファンの動作並びに圧縮機本体の吐出側圧力及び吐出側温度の変化を表すタイムチャートである。
【0047】
無負荷運転の継続時間が所定値Aに達すると(時間t2)、電動機2が停止する。このとき、制御装置9は、電動機2の休止時間を予測する。制御装置9は、予測された休止時間が所定の許容値Bに満たない場合に、冷却ファン13の駆動を継続する。言い換えれば、図7中点線で示すように冷却ファン13を停止すれば、復帰タイミング時(t4)の吐出側温度が所定の許容値T2を超える場合に、冷却ファン13の駆動を継続する。これにより、図7中実線で示すように復帰タイミング時の圧縮機本体3の吐出側温度を所定の許容値T2以下に抑えることができる。また、油の温度も低下することができる。したがって、電動機2の回転数の増加に伴い、圧縮機本体3の発生熱量が急激に増加しても、圧縮機本体3の吐出側温度が過剰に高くならない。その結果、不要な警報や停止制御を防止することができる。
【0048】
なお、第2の実施形態において、特に説明しなかったが、例えば図8で示す第2の変形例のように、制御装置9は、ステップS21にて冷却ファン13の駆動を継続した後(言い換えれば、電動機2の停止且つ冷却ファン13の駆動中)、吐出側温度センサ10で検出された吐出側温度が所定の許容値T2以下であるかどうかを判定してもよい(ステップS22)。そして、吐出側温度センサ10で検出された吐出側温度が所定の許容値T2以下であるときに、冷却ファン13を停止する(ステップS20)。一方、吐出側温度センサ10で検出された吐出側温度が所定の許容値T2を超えるときに、冷却ファン13の駆動を継続する(ステップS21)。このような変形例においても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2の実施形態と比べ、冷却ファン13の駆動時間を減らし、省エネを図ることができる。
【0049】
また、第1及び第2の実施形態並びに第1及び第2の変形例において、制御装置9は、吐出側温度センサ10の検出結果に応じて、冷却ファン13の目標回転数を可変して制御する場合を例にとって説明したが、これに限られない。制御装置9は、吐出側温度センサ10の検出結果にかかわらず、冷却ファン13の目標回転数を固定して制御してもよい。
【0050】
なお、以上においては、給油式空気圧縮機(すなわち、作動室に油を供給しつつ空気を圧縮するもの)に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、他の給液式気体圧縮機(すなわち、作動室に油以外の他の液体を供給するもの、若しくは、空気以外の他の気体を圧縮するもの)に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…給油式空気圧縮機、2…電動機、3…圧縮機本体、5…吸込み絞り弁、6…分離器、8…油供給系統(液体供給系統)、9…制御装置、10…吐出側温度センサ、13…冷却ファン、14…吐出側圧力センサ、15…オイルクーラ(液体冷却器)、19…吸入側温度センサ、21…外部サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8