(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】保護リング、それを備えた接着面保護構造、及び接着面保護方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 Y
(21)【出願番号】P 2021195075
(22)【出願日】2021-12-01
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田窪 毅
(72)【発明者】
【氏名】細川 敦
(72)【発明者】
【氏名】林 伸幸
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3219636(JP,U)
【文献】特表2020-526936(JP,A)
【文献】特開2021-44305(JP,A)
【文献】特表2015-515760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に形成された環状溝に装着される弾性部材よりなる環形状の保護リングであって、
帯状のリング本体と、
上記リング本体の内面幅方向中央から膨出し、上記環状溝に押し付けられる突条とを備え、
上記突条が、上記リング本体の幅よりも小さい直径の断面半円形状に連続して形成され、
上記リング本体の幅が、上記保護リングの半径方向の厚さよりも大きい
ことを特徴とする保護リング。
【請求項2】
上記リング本体の幅W1が、半径方向の厚さT1の1.5倍よりも大きく、
W1>1.5T1 を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の保護リング。
【請求項3】
フッ素ゴム、シリコーンゴム又はパーフルオロエラストマーよりなる一体成形品である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保護リング。
【請求項4】
第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に形成された環状溝を弾性部材よりなる環形状の保護リングで保護する接着面保護構造であって、
上記環状溝が、断面半円形、断面半楕円形、断面三角形又は断面台形に凹陥形成され、
上記保護リングが、
上記環状溝を外方から覆う帯状のリング本体と、
上記リング本体の内面幅方向中央から膨出し、上記環状溝に当接して該環状溝を塞ぐ断面半円形又は断面半楕円形の突条とを有し、
上記リング本体の両端を上記環状溝の内面には接触させずに、上記突条よりも突出した状態で該環状溝の周縁を覆っている
ことを特徴とする、接着面保護構造。
【請求項5】
上記リング本体の幅W1が、半径方向の厚さT1の1.5倍よりも大きく、
W1>1.5T1 を満たす
ことを特徴とする請求項4に記載の接着面保護構造。
【請求項6】
上記突条が、上記リング本体の幅よりも小さい直径の断面半円形状であり、
上記リング本体の両端断面が、上記突条の断面の半径よりも小さい半径の断面半円形である
ことを特徴とする請求項5に記載の接着面保護構造。
【請求項7】
上記第1円筒状部材及び上記第2円筒状部材が、静電チャックの部品であり、
上記保護リングが、上記突き合わせ接着面の接着剤を半導体製造装置におけるラジカル又はプラズマ環境から保護するように構成されている
ことを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の接着面保護構造。
【請求項8】
第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に断面半円形、断面半楕円形、断面三角形又は断面台形に凹陥形成された環状溝を保護する接着面の保護方法であって、
上記環状溝を外方から覆う帯状のリング本体と、
上記リング本体の内面幅方向中央から膨出し、上記環状溝に当接して該環状溝を塞ぐ断面半円形又は断面半楕円形の突条とを有する、弾性部材よりなる環形状の保護リングを準備し、
上記保護リングを伸長させて上記環状溝を外側から覆い、
縮小した保護リングの、上記突条を上記環状溝の内面に圧接させ、
上記リング本体の両端を上記環状溝の内面には接触させずに、上記突条よりも突出させた状態で該リング本体により該環状溝の周縁を覆う
ことを特徴とする、接着面保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護リング、それを備えた接着面保護構造、及び接着面保護方法に関し、特に、溝底が円筒形部材同士の接着面に位置する溝に装着し、溝底の接着剤がラジカル又はプラズマ環境等に晒されるのを抑制するものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の保護リングとしては、従来、断面円形のリング、すなわち、Oリングが一般的に使用されてきた。
【0003】
一方、例えば、特許文献1のように、環状溝に装着する断面V型のシールが知られている。
【0004】
また、特許文献2のような、上下面に凹部を有する環状シールも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6664298号公報
【文献】特開2020-012512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
V字型溝を形成する2側面に接触するようなOリングを伸長させて溝に装着する場合、Oリングにいくらかのねじれが発生することは避けられず、そのねじれにより封止が不十分となりラジカル又はプラズマの侵入を許したり、また周上で発生するひずみが不均一となり、ひずみの大きい部分がラジカル又はプラズマに晒されることで、クラックが発生して破断し、保護機能を喪失したりすることがある。
【0007】
また、上記特許文献1及び2の技術では、リングを軸方向に圧縮して使用するため、使用できるのは、構成面のうちの2側面が平行又はほぼ平行である溝に限られる。溝に装着するためには、溝の外側から中心軸に向かってリングを圧縮させながら押し込むための機構が必要であり、溝の周囲に十分なスペースがない装置などでは、リングが劣化した場合に劣化したリングを除去したり、新品のリングに交換したりすることが困難であった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、突き合わせ接着面の環状溝への装着性、装着の簡便性を維持しながら、装着時のねじれを防止して、装着した場合の周上での変形(ひずみ)の不均一性をなくし、全周にわたってラジカル又はプラズマによる消耗、クラックの発生を抑制して保護リングを長寿命化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、保護リングの形状に工夫を加えた。
【0010】
具体的には、第1の発明では、
第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に形成された環状溝に装着される弾性部材よりなる環形状の保護リングを対象とし、
上記保護リングは、
帯状のリング本体と、
上記リング本体の内面幅方向中央から膨出し、上記環状溝に押し付けられる突条とを備え、
上記突条が、上記リング本体の幅よりも小さい直径の断面半円形状に連続して形成され、
上記リング本体の幅が、上記保護リングの半径方向の厚さよりも大きい。
【0011】
上記の構成によると、リング本体の両端が突条よりも外側に突出することで、断面円形のOリングのような、ねじれが生じにくくなり、突条部分で環状溝を確実に塞ぐことができる。また、リング本体の両端が突条よりも突出しているので、Oリングに比べて環状溝がラジカル又はプラズマに晒されにくくなる。さらに、ねじれにくさを確保しながら、断面積を増やしてラジカル消耗を防ぐことができる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記リング本体の幅W1が、半径方向の厚さT1の1.5倍よりも大きく、
W1>1.5T1 を満たす。
【0013】
上記の構成によると、リング本体の幅W1が半径方向の厚さT1の1.5倍よりも大きいので、装着時にねじれが生じたとしても、ねじれを発見しやすく、また、断面積が増えてラジカル消耗等を防ぐことができる。
【0014】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
フッ素ゴム、シリコーンゴム又はパーフルオロエラストマーよりなる一体成形品である。
【0015】
上記の構成によると、ラジカル又はプラズマ環境で劣化しにくい、適度な弾性を有する保護リングが得られる。
【0016】
第4の発明では、
第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に形成された環状溝を弾性部材よりなる環形状の保護リングで保護する接着面保護構造であって、
上記環状溝が、断面半円形、断面半楕円形、断面三角形又は断面台形に凹陥形成され、
上記保護リングが、
上記環状溝を外方から覆う帯状のリング本体と、
上記リング本体の内面幅方向中央から膨出し、上記環状溝に当接して該環状溝を塞ぐ断面半円形又は断面半楕円形の突条とを有し、
上記リング本体の両端を上記環状溝の内面には接触させずに、上記突条よりも突出した状態で該環状溝の周縁を覆っている構成とする。
【0017】
上記の構成によると、リング本体の両端が突条よりも外側に突出することで、断面円形のOリングのような、ねじれが生じにくくなり、突条部分で、第1円筒状部材と第2円筒状部材との突き合わせ接着面に形成された環状溝を確実に塞ぐことができる。また、リング本体の両端が突条よりも突出しているので、Oリングに比べて環状溝がラジカル又はプラズマ等の環境に晒されにくくなる。これにより、第1円筒状部材と第2円筒状部材との突き合わせ接着面の接着剤が保護されて耐久性が向上する。
【0018】
第5の発明では、第4の発明において、
上記リング本体の幅W1が、半径方向の厚さT1の1.5倍よりも大きく、
W1>1.5T1 を満たす。
【0019】
上記の構成によると、リング本体の幅W1が半径方向の厚さT1の1.5倍よりも大きいので、装着時にねじれが生じたとしても、ねじれを発見しやすく、また、断面積が増えてラジカル消耗等を防ぐことができる。
【0020】
第6の発明では、第5の発明において、
上記突条は、上記リング本体の幅よりも小さい直径の断面半円形状であり、
上記リング本体の両端断面は、上記突条の断面の半径よりも小さい半径の断面半円形である。
【0021】
上記の構成によると、保護リング本体自体の厚さを厚くしすぎずに適度な厚さでねじれを防止することができる。
【0022】
第7の発明では、第4から第6のいずれか1つの発明において、
上記第1円筒状部材及び上記第2円筒状部材は、静電チャックの部品であり、
上記保護リングは、上記突き合わせ接着面の接着剤を半導体製造装置におけるラジカル又はプラズマ環境から保護するように構成されている。
【0023】
上記の構成によると、第1円筒状部材と第2円筒状部材との間の接着剤を確実に保護することにより、耐久性の高い静電チャックが得られる。
【0024】
第8の発明では、
第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に断面半円形、断面半楕円形、断面三角形又は断面台形に凹陥形成された環状溝を保護する接着面の保護方法を対象とし、
上記保護方法は、
上記環状溝を外方から覆う帯状のリング本体と、
上記リング本体の内面幅方向中央から膨出し、上記環状溝に当接して該環状溝を塞ぐ断面半円形又は断面半楕円形の突条とを有する弾性部材よりなる環形状の保護リングを準備し、
上記保護リングを伸長させて上記環状溝を外側から覆い、
縮小した保護リングの、上記突条を上記環状溝の内面に圧接させ、
上記リング本体の両端を上記環状溝の内面には接触させずに、上記突条よりも突出させた状態で該リング本体により環状溝の周縁を覆う構成とする。
【0025】
上記の構成によると、リング本体の両端が突条よりも外側に突出することで、断面円形のOリングのような、ねじれが生じにくくなり、突条部分で第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に形成された環状溝を確実に塞ぐことができる。また、リング本体の両端が突条よりも突出しているので、Oリングに比べて環状溝がラジカル又はプラズマ等の環境に晒されにくくなる。これにより、第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面の接着剤が保護されて耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、保護リングが本来の機能を発揮できるよう正確に装着できるようになり、その結果、その保護効果や製品寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本発明の実施形態に係る保護リングを拡大して示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る接着面保護構造を含む半導体製造装置の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
-接着面保護構造及び保護リング-
図1~
図3に示すように、本発明の実施形態に係る接着面保護構造8を有する半導体製造装置20は、半導体ウエハ5を静電気力によって吸着固定する静電チャック6を備えている。静電チャック6の外周が外筒部材4で覆われており、半導体ウエハ5を処理するために、半導体製造装置20内は、ラジカル又はプラズマ環境に晒されるようになっている。
【0030】
静電チャック6の部品を構成する第1円筒状部材としてのベース基盤1と、第2円筒状部材としての電極部2とは、その突き合わせ接着面で接着剤3によって固定されている。本実施形態に係る保護リング10は、この突き合わせ接着面の接着剤3を保護するものである。接着剤3は、例えば、シリコーン樹脂系の接着剤、特に熱伝導性を向上させるためのフィラーを添加したものがよい。
【0031】
図1に拡大して示すように、本実施形態の接着面保護構造8は、ベース基盤1と、電極部2との突き合わせ接着面に形成された環状溝7を弾性部材よりなる環形状の保護リング10で保護する構造である。具体的には、保護リング10は、接着剤3を半導体製造装置20におけるラジカル又はプラズマ環境から保護するように構成されている。
【0032】
環状溝7は、例えば、断面三角形に凹陥形成されている。本実施形態では、断面が二等辺三角形状である。例えば、環状溝7は、電極部2側が0.7mmの面取りで、ベース基盤1側も0.7mmの面取りで形成される。
【0033】
一方、例えば、電極部2の半径がベース基盤1の半径よりも若干小さくなることで、環状溝7が断面不等辺三角形状であっていてもよい。この場合、環状溝7は、電極部2側が0.5mmの面取りで、ベース基盤1側が0.7mmの面取りで形成されていてもよい。また、環状溝7の溝側面が断面円弧状である断面円形や、有底の断面台形であってもよい。
【0034】
図2に拡大して示すように、保護リング10は、環状溝7を外方から覆う帯状のリング本体11と、環状溝7に当接して環状溝7を塞ぐ断面半円形の突条12とを有する。
【0035】
保護リング10は、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム又はパーフルオロエラストマーよりなる一体成形品である。保護リング10は、これらの材料から射出成形型を用いて射出成形される。
【0036】
突条12は、断面半円形ではなく断面半楕円形や断面半長円形でもよい。円弧状断面部分が環状溝7の側面に圧接することで、接着剤3を確実に封止できるようになっている。突条12は、リング本体11の幅W1よりも小さい半径R1の断面半円形状であり(R1<W1)、突条12の半径R1は、例えば、0.5mmである。これは、従来のOリングの半径0.3mmに比べると大きい半径となっている。
【0037】
リング本体11の両端13の断面は、突条12の断面の半径R1よりも小さい半径R2(例えば、R2=0.17mm)の断面半円形である(R2<R1)。つまり、両端13をできるだけ厚く、かつ丸い形状とした。また、リング本体の幅W1は、環状溝7の幅W2よりも大きく(W1>W2)、例えば2mmである。環状溝7の幅W2は、環状溝7が0.7mmの面取りで形成されている場合、W2=1.0mm程度である。
【0038】
図2に示すように、保護リング10は、幅方向中央の中心線を境として上下対称となっている。それにより、環状溝7に取り付けたときに上下反対に取り付けてしまうことはない。
【0039】
そして、保護リング10で環状溝7を覆ったときに、突条12の湾曲面で環状溝7の内側面に圧接しつつ、リング本体11の両端13は、環状溝7の内面には当接せず、半径方向外側から見たときに、環状溝7が露出しないようになっている。
【0040】
また、リング本体11の幅W1は、保護リング10全体の半径方向の厚さT1よりも大きい(W1>T1)。好ましくは、リング本体11の幅W1が、半径方向の厚さT1の1.5倍よりも大きく、W1>1.5Tを満たす。例えば、W1=2.0mmに対してT1=0.9mmである。つまり、できるだけ、幅W1を大きくしているので、装着時にねじれが生じたとしても、ねじれを発見しやすい。また、保護リング10の断面積も増えてラジカル消耗等を防ぐことができる。
【0041】
両端13から突条12に連続する隅角部は、環状溝7の周縁への干渉を防ぐため、できるだけ小さい半径とし、例えば、R3=0.2mmとしている。また、尖った角部や隅角部を設けずに全体として曲線を連続させた滑らかな断面とすることで、応力集中しにくくなり、破断しにくくなっている。
【0042】
本実施形態では、上述した材料から保護リング10を、射出成形型を用いて射出成形されるようにしたので、製造しやすく、ラジカル又はプラズマ環境で劣化しにくい、適度な弾性を有する保護リング10が得られる。
【0043】
また本実施形態では、両端13をできるだけ厚く、かつ丸い形状としたことにより、保護リング10本体自体の厚さを厚くしすぎずに適度な厚さでねじれを防止することができる。また、両端13の断面の半径R2を小さくしすぎないので、重曹やドライアイスによる射出成形型の洗浄が容易である。
【0044】
-接着面保護方法-
次いで、本実施形態に係る接着面保護方法について説明する。
【0045】
まず、ベース基盤1と電極部2との間に接着剤3を塗布し、突き合わせ接着する。接着剤3は、環状溝7の底部に露出している。
【0046】
次いで、ベース基盤1と電極部2のいずれかの側から保護リング10を引っ張って拡げながら環状溝7を外側から覆うようにして環状溝7に嵌め込む。
【0047】
このとき、縮小した保護リング10の突条11を環状溝7の内面に圧接させる。一方で、リング本体11の両端13側は環状溝7の内面には接触させずに、突条11よりも突出した状態で環状溝7の周縁を覆う。
【0048】
保護リング10を引っ張って拡げて環状溝7に嵌め込んだときに、その圧縮力により、突条12の半球面状部分が環状溝7の側面に隙間なく圧接する。
【0049】
このように、リング本体11の両端13が突条12よりも外側に突出することで、断面円形のOリングのようにねじれようとしたときに、両端13が環状溝7の周縁に当接するので、それ以上ねじれることはない。
【0050】
このため、突条12部分で、ベース基盤1と電極部2との突き合わせ接着面に形成された環状溝7を確実に塞ぐことができる。
【0051】
さらに、保護リング10の外径を拡げるようにして環状溝7に嵌め込めばよいので、従来のようにリングを圧縮させながら押し込むための機構は必要ではなく、外筒部材4が環状溝7の半径方向外側にあったとしても、保護リング10の脱着が極めて容易である。
【0052】
また、リング本体11の両端13が突条12よりも突出しているので、Oリングに比べて保護リング10自体及び環状溝7がラジカル又はプラズマに晒されにくくなる。これにより、ベース基盤1と、電極部2との突き合わせ接着面の接着剤3が保護されて耐久性が向上する。
【0053】
上記実施形態では、保護リング10が適度な厚さと幅を有するリング本体11を有するので、ねじれにくさを確保しながら、断面積を増やしてラジカル消耗を防いで製品寿命を向上できるようになっている。
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、保護リング10が本来の機能を発揮できるよう正確に装着できるようになり、その結果、その保護効果や製品寿命を向上させることができる。また、ベース基盤1と電極部2との間の接着剤3を確実に保護することにより、耐久性の高い静電チャック6が得られる。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0056】
すなわち、上記実施形態では、環状溝7は断面V字型としたが、一部底があるU字型やコの字型でもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、突条12の断面を半円形としたが、半楕円形状、半長円形状でもよく、要は、三角形断面、台形断面、U字型断面等の環状溝7に圧接して封止できる形状であればよい。
【0058】
本実施形態では、
図1に示す突条12の高さHは、ほぼR1に等しいが、断面半楕円形など、そうでない場合であって、例えば本実施形態のように環状溝7が45°面取りで形成されている場合、環状溝7の深さをCとしたときに、環状溝7の周縁角部に当たる半径RがR=C×√2になることから、突条12の高さHは、湾曲面の半径Rに対し、H>R-R/2×√2を満たす。これは、突条12の湾曲面が環状溝7の側面に当接する関係を示す。H≦R-R/2×√2であると、環状溝7の周縁角部に当たってしまって環状溝7の側面に当接しにくくなり、十分な密閉度が得られないからである。
【0059】
上記実施形態では、第1円柱状部材及び電極部2は、半導体製造装置の静電チャック6の構成部材としたが、これに限定されない。要は、第1円筒状部材と、第2円筒状部材との突き合わせ接着面に形成された環状溝に装着され、この接着面の接着剤などが劣化等しないように保護するような箇所であれば、本発明を適用できる。
【0060】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 ベース基盤
2 電極部
3 接着剤
4 外筒部材
5 半導体ウエハ
6 静電チャック
7 環状溝
8 接着面保護構造
10 保護リング
11 リング本体
12 突条
13 両端
20 半導体製造装置