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特許7425048ゴム組成物と、そのゴム組成物を用いてなる架橋ゴム製品、並びにそのゴム組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ゴム組成物と、そのゴム組成物を用いてなる架橋ゴム製品、並びにそのゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240123BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240123BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240123BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240123BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/00
C08K3/22
C08L101/00
C08J3/22 CES
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021516171
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017367
(87)【国際公開番号】W WO2020218358
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019086701
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 茂樹
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-139141(JP,A)
【文献】特開昭57-159850(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115449136(CN,A)
【文献】特開2022-068754(JP,A)
【文献】特開2022-068753(JP,A)
【文献】特表2021-501244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08J3/00-3/28,99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、共晶化合物と、金属酸化物と、パーオキサイド系架橋剤とを含有し、
前記共晶化合物が、オニウム塩と水素結合供与体との混合生成物であるゴム組成物。
【請求項2】
前記オニウム塩が、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記アンモニウム塩が、第4級アンモニウム塩である、請求項に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム塩が、塩化コリンである、請求項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記水素結合供与体が、尿素誘導体及びアルキレングリコールから選択される少なくとも1種である請求項のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記尿素誘導体が、尿素である、請求項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物が、酸化亜鉛である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記酸化亜鉛の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以下である、請求項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
質量比(前記金属酸化物の質量部/前記パーオキサイド系架橋剤の質量部)が、0.05~0.6である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン三元共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合体ゴム及びネオプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)及びエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項10又は11に記載のゴム組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなる架橋ゴム製品。
【請求項14】
前記架橋ゴム製品が、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト、ホース、クローラからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の架橋ゴム製品。
【請求項15】
ゴム組成物の製造方法であって、
(i) ゴム成分と、共晶化合物と、金属酸化物とを混練し、マスターバッチを製造する工程(A)と、
(ii) 前記マスターバッチと、パーオキサイド系架橋剤とを混練し、ゴム組成物を製造する工程(B)とを含
前記共晶化合物が、オニウム塩と水素結合供与体とを混合して調製される、ゴム組成物の製造方法。
【請求項16】
前記オニウム塩が、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項15に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項17】
前記アンモニウム塩が、第4級アンモニウム塩である、請求項16に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項18】
前記第4級アンモニウム塩が、塩化コリンである、請求項17に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項19】
前記水素結合供与体が、尿素誘導体及びアルキレングリコールから選択される少なくとも1種である、請求項1518のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共晶化合物と、金属酸化物と、パーオキサイド系架橋剤とを含有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、典型的にはステアリン酸と組み合わせて、ゴムの有機過酸化物加硫に一般に使用される。
亜鉛種及び/又は酸化亜鉛は、有機過酸化物架橋のための活性剤として働くと考えられる。
また、酸化亜鉛及びステアリン酸はその場で、亜鉛種を形成し、酸化亜鉛と組み合わせて、有機過酸化物架橋プロセスの速度及び品質に影響を及ぼすと考えられる。
一方、酸化亜鉛の配合量を低減すると、加硫後のゴム組成物の架橋密度が下がってしまうので、各伸張時における引張応力や加硫試験機における加硫曲線の最大トルクFmaxが低下してしまう問題があった。これらの点から、従来のゴム組成物では、ゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛等の金属酸化物を3~10質量部配合することが好ましいとされている。
【0003】
酸化亜鉛として、10m2/gを超えるBET表面積を有するナノ酸化亜鉛も提案されており、ナノ酸化亜鉛の使用は、最終的に酸化亜鉛又は他の亜鉛種のより少ない負荷を必要とする改善されたプロセスを提供することができることが示唆されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ナノ酸化亜鉛の使用は粒子の凝集によるゴム組成物内での分散不良を含むいくつかの困難を提示している。
また、ゴム組成物への酸化亜鉛等の金属酸化物の配合は、亜鉛を含む廃棄物による環境への配慮から、金属酸化物(特に、亜鉛化合物)の使用を抑制する試みがなされている。
本発明は、酸化亜鉛等の金属酸化物の配合量を大幅に減らし、環境への配慮をしつつ、金属酸化物を多量配合するゴム組成物と同等の加硫特性及び加硫後のゴム物性を享受できるゴム組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1]ゴム成分と、共晶化合物と、金属酸化物と、パーオキサイド系架橋剤とを含有するゴム組成物、
[2]前記共晶化合物が、オニウム塩と水素結合供与体との混合生成物である、前記[1]に記載のゴム組成物、
[3]前記オニウム塩が、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である前記[2]に記載のゴム組成物、
[4]前記アンモニウム塩が、第4級アンモニウム塩である、前記[3]に記載のゴム組成物、
[5]前記第4級アンモニウム塩が、塩化コリンである、前記[4]に記載のゴム組成物、
[6]前記水素結合供与体が、尿素誘導体及びアルキレングリコールから選択される少なくとも1種である前記[2]~[5]のいずれか1項に記載のゴム組成物、
[7]前記尿素誘導体が、尿素である、前記[6]に記載のゴム組成物、
[8]前記金属酸化物が、酸化亜鉛である、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載のゴム組成物、
[9]前記酸化亜鉛の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以下である、前記[8]に記載のゴム組成物、
[10]質量比(前記金属酸化物の質量部/前記パーオキサイド系架橋剤の質量部)が、0.05~0.6である、前記[1]~[9]のいずれか1項に記載のゴム組成物、
[11]前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン三元共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合体ゴム及びネオプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記[1]~[10]のいずれか1項に記載のゴム組成物。
[12]前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載のゴム組成物、
[13]前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)及びエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記[11]又は[12]に記載のゴム組成物、
[14]前記[1]~[13]のいずれかに記載のゴム組成物を用いてなる、架橋ゴム製品、
[15]前記架橋ゴム製品が、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト、ホース、クローラからなる群から選択される少なくとも1種である、前記[14]に記載の架橋ゴム製品、
[16]ゴム組成物の製造方法であって、
(i) ゴム成分と、共晶化合物と、金属酸化物とを混練し、マスターバッチを製造する工程(A)と、
(ii) 前記マスターバッチと、パーオキサイド系架橋剤とを混練し、ゴム組成物を製造する工程(B)とを含む、ゴム組成物の製造方法、
[17]前記共晶化合物が、オニウム塩と水素結合供与体とを混合して調製される、前記[16]に記載のゴム組成物の製造方法、
[18]前記オニウム塩が、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である、前記[17]に記載のゴム組成物の製造方法。
[19]前記アンモニウム塩が、第4級アンモニウム塩である、前記[18]に記載のゴム組成物の製造方法、
[20]前記第4級アンモニウム塩が、塩化コリンである、前記[19]に記載のゴム組成物の製造方法、及び
[21]前記水素結合供与体が、尿素誘導体及びアルキレングリコールから選択される少なくとも1種である、前記[17]~[20]のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛等の金属酸化物の配合量を大幅に減らすことができ、環境への配慮をしつつ、金属酸化物を多量配合するゴム組成物と同等の加硫特性及び加硫後のゴム物性を享受できるゴム組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態に係るゴム組成物について、詳細に説明する。
[ゴム組成物]
本発明において、ゴム組成物は、「架橋後」との限定がある場合を除き、架橋前の未架橋ゴム組成物を示す。
本発明は、ゴム成分と、共晶化合物と、金属酸化物と、パーオキサイド系架橋剤とを含有するゴム組成物である。
上記の配合材料に加えて、所望により、充填材、硫黄含有架橋剤(硫黄を含む。)、ステアリン酸、及び有機金属化合物(例えば、有機酸金属塩)を含む。また、加工油及び/又は増量剤油、樹脂、ワックス、架橋促進剤、スコーチ抑制剤、分解防止剤、酸化防止剤、及び当技術分野で知られている他のゴム配合添加剤などの他の任意の成分も含まれてよい。しかしこれらに限定されない、他の任意の成分も含まれてよい。
【0008】
[共晶化合物]
本発明に係る共晶化合物は、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のオニウム塩、及び水素結合供与体との混合生成物であることが好ましい。この共晶化合物は、液状であってもよく、液状の場合は、共晶溶媒又は深共晶溶媒(DES)とも呼ばれ、室温(23℃)で液状である。
1つ以上の実施形態では、共晶化合物は、組み合わされるそれぞれの化合物よりも低い融点を有する。結果として、共晶化合物は、2つ以上の化合物を組み合わせることによって形成される組成物を含む。
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、共晶成分は他の方法で反応又は相互作用して複合体を形成すると考えられる。
したがって、共晶化合物、又は共晶組合せ、共晶対、又は共晶錯体へのいかなる言及も、それぞれの成分よりも低い融点を生じる、組み合わされた成分間の組合せ及び反応生成物又は錯体を含む。例えば、1つ又は複数の実施形態では、有用な共晶組成が式Iによって定義することができる。
【0009】
CatzY ・・・・・(I)
ここで、Catは陽イオンであり、Xは対アニオン(例えばルイス塩基)であり、zは対アニオン(例えばルイス塩基)と相互作用するY分子の数を指す。
ルイス塩基。例えばCatは、アンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウム陽イオンを含むことができる。
として、例えば、ハロゲン化物イオンを含むことができる。
1つ以上の実施形態ではzは深い共晶溶媒を達成する数、又は他の実施形態ではそれぞれの共晶成分よりも低い融点を有する錯体を達成する数である。
【0010】
1つ以上の実施形態において、有用な共晶化合物は酸及び塩基の組み合わせを含み、酸及び塩基は、ルイス酸及び塩基、又はブレンステッド酸及び塩基を含み得る。
1つ又は複数の実施形態では、有用な共晶化合物が第4アンモニウム塩と金属ハロゲン化物(タイプI共晶化合物と呼ばれる)との組合せ、第4アンモニウム塩と金属ハロゲン化物水和物(タイプII共晶化合物と呼ばれる)との組合せ、第4アンモニウム塩と水素結合供与体(タイプIII共晶化合物と呼ばれる)との組合せ、又は金属ハロゲン化物水和物と水素結合供与体(タイプIV共晶化合物と呼ばれる)との組合せを含む。
【0011】
(オニウム塩)
アンモニウム塩の代わりにスルホニウム塩又はホスホニウム塩を用いた類似の組合せも使用することができる。
即ち、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のオニウム塩が水素結合供与体と混合され、混合生成物である共晶化合物が得られる。
本発明において、オニウム塩の内、アンモニウム塩が好ましく、アンモニウム塩の中でも第4級アンモニウム塩が特に好ましい。
【0012】
(第4級アンモニウム塩)
1つ以上の実施形態において、第4級アンモニウム塩は、20℃で固体である。
これら又は他の実施形態では、金属ハロゲン化物及び水素結合供与体は20℃で固体である。
【0013】
1つ以上の実施形態において、有用な第4級アンモニウム塩(これはまた、アンモニウム化合物と呼ばれ得る)は、式IIによって定義され得る。
【0014】
(R)(R)(R)(R)-N-Φ ・・・・・(II)
ここで、各R、R、R、及びRは個々に水素又は一価の有機基であるか、又は代替的に、R、R、R、及びRの2つが結合して2価の有機基を形成し、Φは対向アニオンである。
1つ以上の実施形態では、R、R、R、及びRの少なくとも1つ、他の実施形態では少なくとも2つ、及び他の実施形態では少なくとも3つは水素ではない。
【0015】
1つ以上の実施形態では、対陰イオン(例えばΦ)がハロゲン化物(X)、硝酸塩(NO)、テトラフルオロホウ酸塩(BF)、過塩素酸塩(ClO)、トリフラート(SOCF)、トリフルオロ酢酸塩(COOCF)からなる群から選択される。
1つ以上の実施形態では、Φはハロゲン化物イオンであり、特定の実施形態では塩化物イオンである。
【0016】
1つ以上の実施形態では、一価有機基はヒドロカルビル基を含み、二価有機基はヒドロカルビレン基を含む。
1つ以上の実施形態において、一価及び二価の有機基はヘテロ原子(例えば、酸素及び窒素、及び/又はハロゲン原子が挙げられるが、これらに限定されない)を含む。
従って、一価の有機基は、アルコキシ基、シロキシ基、エーテル基、及びエステル基、ならびにカルボニル又はアセチル置換基を含み得る。
1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビレン基が1個(又は適切な最小数)~約18個の炭素原子、他の実施形態では1個~約12個の炭素原子、及び他の実施形態では1個~約6個の炭素原子を含む。ヒドロカルビル基及びヒドロカルビレン基は、分枝状、環状、又は線状であってもよい。ヒドロカルビル基の典型的なタイプには、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルキルアリール基が含まれる。ヒドロカルビレン基の典型的なタイプには、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアルキルアリーレン基が含まれる。
特定の実施形態では、ヒドロカルビル基がメチル基、エチル基、オクタデシル基、フェニル基、及びベンジル基からなる群から選択される。
特定の実施形態では、ヒドロカルビル基はメチル基であり、ヒドロカルビレン基はエチレン基又はプロピレン基である。
【0017】
有用な種類のアンモニウム化合物には、第2級アンモニウム化合物、第3級アンモニウム化合物、及び第4級アンモニウム化合物が含まれる。これら又は他の実施形態ではアンモニウム化合物が塩化アンモニウムなどのハロゲン化アンモニウムを含むが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、アンモニウム化合物が第4級塩化アンモニウムである。
特定の実施形態では、R、R、R、及びRは水素であり、アンモニウム化合物は塩化アンモニウムである。
1つ以上の実施形態では、アンモニウム化合物は不斉である。
【0018】
1つ又は複数の実施形態では、アンモニウム化合物はアルコキシ基を含み、式IIIによって定義することができる。
【0019】
(R)(R)(R)-N-(R-OH)Φ ・・・・・(III)
ここで、各R、R、及びRは個々に水素又は一価の有機基であり、あるいは代替として、R、R、及びRのうちの2つが結合して二価の有機基を形成し、Rは二価の有機基であり、Φは対アニオンである。
1つ以上の実施形態では少なくとも1つ、他の実施形態では少なくとも2つ、及び他の実施形態ではR、R、Rのうちの少なくとも3つは水素ではない。
【0020】
式IIIによって定義されるアンモニウム化合物の例には、N-エチル-2-ヒドロキシ-N, N-ジメチルエタンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(塩化コリンとしても知られる)、及びN-ベンジル-2-ヒドロキシ-N,N-ジメチルエタンアミニウムクロリドが挙げられる。
【0021】
1つ以上の実施形態では、アンモニウム化合物がハロゲン含有置換基を含み、式IVによって定義することができる:
【0022】
Φ-(R)(R)(R)-N-RX ・・・・・(IV)
ここで、R、R、及びRはそれぞれ、水素又は一価の有機基であり、又は、代替的に、R、R、及びRの2つが結合して2価の有機基を形成する場合、Rは2価の有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Φは対向アニオンである。
1つ以上の実施形態では少なくとも1つ、他の実施形態では少なくとも2つ、及び他の実施形態ではR、R、Rのうちの少なくとも3つは水素ではない。
1つ以上の実施形態において、Xは塩素である。
【0023】
式IVによって定義されるアンモニウム化合物の例には2-クロロ-N,N,N-トリメチルエチルアミニウム(クロロコリンクロリドとも呼ばれる)、及び2-(クロロカルボニルオキシ)-N,N,N-トリメチルエチルアミニウムクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明における第4級アンモニウム塩の具体例として、塩化コリン、塩化アセチルコリン、塩化ラウロイルコリン、β-メチル塩化コリン、カルバミル塩化コリン、メタ塩化コリン、トリメチルアセトヒドラジドアンモニウムクロリド、ベンゾイル塩化コリン、及び、上述の、N-エチル-2-ヒドロキシ-N, N-ジメチルエタンアミニウムクロリド、N-ベンジル-2-ヒドロキシ-N,N-ジメチルエタンアミニウムクロリド、並びにテトラメチルアンモニウムクロリドが挙げられ、特に、塩化コリン、塩化アセチルコリン、塩化ラウロイルコリンが好ましい。
【0025】
[水素結合供与体]
1つ以上の実施形態では水素結合供与体(HBD化合物)は、アミン、アミド、カルボン酸、及びアルコールを含むが、これらに限定されない。
1つ以上の実施形態において、水素結合供与体は、炭化水素鎖成分を含む。炭化水素鎖成分は、少なくとも2個、他の実施形態では少なくとも3個、他の実施形態では少なくとも5個の炭素原子を含む炭素鎖長を含むことができる。また、他の実施形態では、炭化水素鎖構成要素が30未満、他の実施形態では20未満、他の実施形態では10未満の炭素原子の炭素鎖長を有する。
【0026】
1つ以上の実施形態において、有用なアミンには、式aによって定義される化合物が含まれる。
【0027】
-(CH-R ・・・・・(a)
ここで、R及びRは-NH、-NHR、又はNRであり、xは少なくとも2の整数である。
1つ以上の実施形態において、xは2~約10であり、他の実施形態においては約2~約8であり、他の実施形態においては約2~約6である。
【0028】
有用なアミンの特定の例としては脂肪族アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、N, N'-ビス-(2アミノエチル)ピペラジン、ピペラジンエチレンジアミン、及びテトラエチレンペンタアミン、プロピレンアミン、アニリン、置換アニリン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
(アミド化合物)
1つ以上の実施形態において、有用なアミドは、式bによって定義される化合物が含まれる。
【0030】
R-CO-NH ・・・・・(b)
式中、RはH、NH、CH又はCFである。
【0031】
有用なアミドの特定の例としては尿素、1-メチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、チオ尿素、ベンズアミド、アセトアミド、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
1つ以上の実施形態において、有用なカルボン酸は、単官能性、二官能性、及び三官能性有機酸を含む。これらの有機酸は、アルキル酸、アリール酸、及び混合アルキル-アリール酸を含むことができる。
【0033】
有用な一官能性カルボン酸の特定の例としては脂肪族酸、フェニルプロピオン酸、フェニル酢酸、安息香酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
二官能性カルボン酸の具体例としてはシュウ酸、マロン酸、アジピン酸、コハク酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
三官能性カルボン酸の特定の例としては、クエン酸、トリカルバリル酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
アルコールの種類としてはモノオール、ジオール、及びトリオールが挙げられるが、これらに限定されない。モノオールの特定の例には、脂肪族アルコール、フェノール、置換フェノール、及びそれらの混合物が含まれる。ジオールの特定の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、レゾルシノール、置換レゾルシノール、及びそれらの混合物が含まれる。トリオールの特定の例にはグリセロール、ベンゼントリオール、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
水素結合供与体の好適な具体例としては、尿素誘導体及びアルキレングリコールが挙げられる。
尿素誘導体としては、式cによって定義される化合物が含まれる。
【0036】
N-CX-NR ・・・・・(c)
式中、RはH又は1価の有機基、XはO(酸素原子)又はS(硫黄原子)である。1価の有機基としては、ヘテロ原子を有していてもよい1価の炭化水素基が好ましい。
尿素誘導体の具体例としては、尿素、1-メチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、チオ尿素、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
(アルキレングリコール)
水素結合供与体として、尿素誘導体と共に、アルキレングリコールが挙げられる。このアルキレングリコールとしては、炭素数2のエチレングリコール、炭素数3のプロピレングリコール、炭素数4のブチレングリコールが好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。
【0038】
(金属ハロゲン化物)
金属ハロゲン化物の種類としては塩化物、臭化物、ヨウ化物及びフッ化物が挙げられるが、これらに限定されない。
1つ以上の実施形態において、これらの金属ハロゲン化物は遷移金属ハロゲン化物を含むが、これらに限定されない。
当業者は、対応する金属ハロゲン化物水和物を容易に想像することができる。
【0039】
有用な金属ハロゲン化物の特定の例としては塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
当業者は、対応する金属ハロゲン化物水和物を容易に想像することができる。
例えば、塩化アルミニウム六水和物及び塩化銅二水和物は、上記のハロゲン化物に相当する。
【0040】
(共晶化合物の生成)
当業者は所望の共晶化合物の共晶組成を提供するために、適切なモル比で適切な共晶部材を選択することができる。
当業者は対の第1の化合物(例えば、ルイス塩基)と対の第2の化合物(例えば、ルイス酸)とのモル比が、選択された化合物に基づいて変化することを理解する。
共晶化合物の融点は、2つの構成成分の融点の間に存在し、モル比に応じて共晶化合物の融点が決まる。
しかし、第1の化合物と第2の化合物とのモル比は、それにもかかわらず、最小融点ではない第1及び第2の化合物の個々の融点に対する共晶溶媒の融点の抑制をもたらすように変化させることができる。
したがって、本発明の1つ又は複数の実施形態の実施は、共晶点の外側のモル比で共晶溶媒を形成することを含む。
【0041】
本発明に係る共晶化合物において、1つ又は複数の実施形態では共晶対の化合物、ならびに第1の化合物と対の第2の化合物とのモル比は130℃未満、他の実施形態では110℃未満、他の実施形態では100℃未満、他の実施形態では80℃未満、他の実施形態では60℃未満、他の実施形態では40℃未満、及び他の実施形態では30℃未満の融点を有する混合物を生じるように選択される。
これら又は他の実施形態では共晶対の化合物、ならびに化合物のモル比は0℃を超える融点、10℃を超える他の実施形態では20℃を超える他の実施形態では30℃を超える他の実施形態では40℃を超える他の実施形態では混合物を生じるように選択される。
【0042】
本発明に係る共晶化合物は、1つ以上の実施形態では共晶対の化合物、ならびに第1の化合物対の第2の化合物のモル比は所望の金属化合物を溶解する能力又は能力を有する共晶溶媒を生じるように選択され、これは溶解度又は溶解力と呼ばれ得る。
当業者には理解されるように、この溶解度は、飽和溶液が調製される場合、特定の温度及び圧力で、特定の時間にわたって、共晶溶媒の所与の質量に溶解した金属化合物の質量に基づいて定量化することができる。
1つ以上の実施形態では、本発明の共晶溶媒が大気圧下での50℃で24時間にわたって、100 ppmを超える、他の実施形態では500 ppmを超える、他の実施形態では1000 ppmを超える、他の実施形態では1200 ppmを超える、他の実施形態では1400 ppmを超える、及び他の実施形態では1600 ppmを超える酸化亜鉛の溶解度を達成するように選択され、ここでppmは質量溶質対質量溶媒基準で測定される。
【0043】
1つ以上の実施形態において、共晶化合物は溶媒組成物(すなわち、所望の温度での液体組成物)を提供するために、適切なモル比で第1の化合物を第2の化合物と組み合わせることによって形成される。
共晶混合物は、固体状態混合又はブレンド技術を含むが、これらに限定されない種々の技術を使用することによって機械的に撹拌され得る。
一般的に言えば、共晶化合物を生成するための共晶混合物は、視覚的に均一な液体が形成されるまで混合されるか、又は他の方法で撹拌される。
また、共晶混合物は、高温で形成されてもよい。例えば、共晶化合物は、共晶混合物を50℃超、他の実施形態では70℃超、他の実施形態では90℃超の温度に加熱することによって形成することができる。
混合は、共晶混合物の加熱中に継続することができる。所望の混合物が形成されたら、共晶溶媒を室温に冷却することができる。
1つ又は複数の実施形態では、共晶混合物の冷却が1℃/分未満の速度などの制御された速度で行うことができる。
【0044】
1つ又は複数の実施形態では、有用な共晶化合物を商業的に入手することができる。例えば、深共晶溶媒は、Scionixから商品名Ionic Liquidsで市販されている。
有用な共晶化合物はまた、米国特許公報に記載されているように一般に知られている。
Nos. 2004/0097755 A1及び2011/0207633 A1は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本発明に係る共晶化合物において、第4級アンモニウム塩と水素結合供与体との組み合わせが好ましく、そのモル比(第4級アンモニウム塩/水素結合供与体)が、1/100~10/1が好ましく、1/10~5/1がより好ましく、1/5~2/1が更に好ましく、1/5~1/1が特に好ましい。モル比(第4級アンモニウム塩/水素結合供与体)が、1/100~10/1の範囲であれば、共晶化合物が効率的に生成するからである。特に、このモル比が1/100以上であれば、第4級アンモニウム塩よりも融点がさがり好ましく、10/1以下であれば、水素結合供与体よりも低融点であり好ましい。この場合、第4級アンモニウム塩と水素結合供与体との共晶混合物は、50~150℃、好ましくは70~120℃の範囲内で共晶溶媒が生成するように温度が設定される。
【0046】
(ゴム成分)
1つ又は複数の実施形態では、ゴム成分として、ゴム又は架橋性エラストマーとも呼ばれ得る架橋性ゴムが架橋されてゴム状又はエラストマー特性を有する組成物を形成することができるポリマーを含むことができる。
これらのゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。合成ゴムは、典型的には共役ジエンモノマー重合体ゴム、共役ジエンモノマーとビニル置換芳香族モノマーのような他のモノマーとの共重合体ゴム、又はエチレンと1種以上の α-オレフィン及び任意に1種以上のジエンモノマーとの共重合体ゴムが挙げられる。
【0047】
ゴム成分の具体例としては、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン三元共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合体ゴム及びネオプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらのゴム成分は、線状、分岐、及び星形構造を含む無数の巨大分子構造を有することができる。これらのゴム成分はまた、典型的にはヘテロ原子を含む、1つ以上の官能性単位を含み得る。
本発明においては、ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ゴム成分が、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)及びエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0048】
[金属酸化物]
上記で示唆したように、本発明の架橋性ゴム組成物は、金属活性化剤として金属酸化物を含む。
1つ以上の実施形態において、金属酸化物は活性剤である(すなわち、ゴムの架橋又は硬化を補助する)。
他の実施形態では、金属活性化剤となる金属酸化物として、酸化亜鉛が好ましい。
特定の実施形態では、金属酸化物が酸化亜鉛と有機酸(例えば、ステアリン酸)との間の反応又は相互作用によってin situで形成される有機酸亜鉛である。
また、酸化亜鉛に加えて、金属酸化物となる金属化合物として、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物、金属化合物が酸化鉄などの鉄化合物、金属化合物がカルボン酸コバルトなどのコバルト化合物を配合しても良い。
【0049】
(酸化亜鉛)
本発明において、架橋性ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以下の酸化亜鉛を含むことが好ましい。また、他の実施形態では1 質量部以下の酸化亜鉛を含むことが好ましく、さらに他の実施形態では0.7質量部以下の酸化亜鉛を含むことが好ましい。
本発明においては、亜鉛種などの金属酸化物の限られたレベルしか含まないが、それにもかかわらず、架橋ゴム製品である架橋物は室温でJIS K6251:2010によって決定されるように、3 MPaを超える、他の実施形態では5 MPaを超える、及び他の実施形態では7 MPaを超える300%伸び引張応力によって特徴付けられる。
【0050】
(充填材)
上記で示唆したように、本発明の架橋性ゴム組成物は、1つ以上の充填材を含み得る。
これらの充填材は、補強充填材及び非補強充填材を含むことができる。例示的な充填材としては、カーボンブラック、シリカ、及び種々の無機充填材が挙げられる。
【0051】
(カーボンブラック)
有用なカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックが挙げられる。
カーボンブラックのより具体的な例には、ファーネスブラックとして、SAFブラック、ISAFブラック、HAFブラック、チャネルブラックとして、中間処理チャネルブラック、硬質処理チャネルブラック、導電チャネルブラック、及びアセチレンブラックが含まれる。
【0052】
特定の実施形態ではカーボンブラックが少なくとも20m2/g、他の実施形態では少なくとも35m2/gのCTAB比表面積を有することができ、比表面積値はセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)技術を使用してASTM D-1765によって決定することができる。
カーボンブラックは、ペレット化された形態又はペレット化されていない綿状形態であってもよい。
カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム組成物を混合するために使用される混合装置のタイプに依存し得る。
【0053】
(無機充填材)
本発明の架橋性ゴム組成物に用いられる無機充填材として、シリカの以外では、下記一般式(V)で表される無機化合物を挙げることができる。
【0054】
nM・xSiO・zHO ・・・・・(V)
【0055】
式(V)中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数及び0~10の整数である。これら充填材は、一種を単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化鉄、マイカ、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、及び粘土(水和ケイ酸アルミニウム)が挙げられる。
一般式(V)で表される無機化合物としては、Mがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。中でも充填材としては、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0056】
有用な有機充填材の例としては、デンプンが挙げられる。
【0057】
(シリカ)
適切なシリカ充填材の例としては、沈降アモルファスシリカ、湿式シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0058】
1つ以上の実施形態では、シリカがそれらの補強特性の尺度を与える、それらの表面積によって特徴付けられてもよい。表面積を測定する方法として、The Brunauer, Emmet and Teller ("BET") method (described in J. Am. Chem. Soc., vol. 60, p. 309 et seq.)が挙げられる。
シリカのBET表面積は、一般に450m2/g未満である。
表面積の有用な範囲には、約32~約400m2/g、約100~約250m2/g、及び約150~約220m2/gが含まれる。
【0059】
1つ以上のシリカが使用される場合、シリカのpHは、一般に約5~約7又はわずかに7を超えるか、又は他の実施形態では約5.5~約6.8である。
【0060】
シリカが充填材として(単独で、又は他の充填材と組み合わせて)使用される1つ以上の実施形態において、シリカとエラストマーとの相互作用を増強するために、カップリング剤及び/又は遮蔽剤が、混合の間にゴム組成物に添加され得る。
【0061】
(カップリング剤)
有用なカップリング剤及びシールド剤は、米国特許番号に開示されている。
3,842,111, 参照により本明細書に組み込まれる、3,997,581、3,978,594、3,580,919、3,583,583,245、5,663,396、5,674,932、5,684,171、5,684,172、5,696,197、6,608,145、6,667,362、6,579,949、6,590,017。
硫黄含有シランカップリング剤の例には、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィド又はメルカプト-オルガノアルコキシシランが含まれる。
ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドの種類には、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィド及びビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドが含まれる。
ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドの具体例としては、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)ジスルフィド及びビス(トリアルコキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0062】
(樹脂)
上記で示唆したように、本発明の架橋性ゴム組成物は、1つ以上の樹脂を含み得る。
これらの樹脂には、フェノール樹脂及び炭化水素樹脂、例えば脂環式樹脂、脂肪族樹脂、芳香族樹脂、テルペン樹脂、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。
有用な樹脂としては例えば、Chemfax、Dow Chemical Company、Eastman Chemical Company、Idemitsu、Neville Chemical Company、Nippon、PolySat Inc、Resinall CoRp、Pinova Inc、YasuhaRa Chemicalで市販されている樹脂が挙げられる。
【0063】
1つ以上の実施形態では、有用な炭化水素樹脂が約30~約160℃、他の実施形態では約35~約60℃、他の実施形態では約70~約110℃のガラス転移温度(Tg)を特徴とすることができる。
1つ又は複数の実施形態では、有用な炭化水素樹脂がその軟化点がそのTgよりも高いことを特徴とすることもできる。
特定の実施形態では、有用な炭化水素樹脂が約70~約160℃、他の実施形態では約75~約120℃、他の実施形態では約120~約160℃の軟化点を有する。
【0064】
特定の実施形態では、1つ以上の脂環式樹脂が1つ以上の脂肪族、芳香族、及びテルペン樹脂と組み合わせて使用される。
1つ以上の実施形態において、1つ以上の脂環式樹脂が樹脂の全負荷に対して主要な質量成分(例えば、50質量%を超える)として使用される。例えば、使用される樹脂は、少なくとも55質量%、他の実施形態では少なくとも80質量%、他の実施形態では少なくとも99質量%の1種以上の脂環式樹脂を含む。
【0065】
1つ以上の実施形態では、脂環式樹脂が脂環式ホモポリマー樹脂と、脂環式モノマーから誘導されるものを含む脂環式コポリマー樹脂との両方を、任意選択で1つ以上の他の(非脂環式)モノマーと組み合わせて含み、すべてのモノマーの質量の大部分は脂環式である。
好適な有用な脂環式樹脂の非限定的な例としては、シクロペンタジエン(「CPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(「DCPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
脂環式コポリマー樹脂の非限定的な例としては、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、CPD/テルペンコポリマー樹脂、DCPD/テルペンコポリマー樹脂、CPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5留分コポリマー樹脂)、DCPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C9フラクチオ)が挙げられる。DCPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/芳香族コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C9フラクションコポリマー樹脂)、CPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5及びC9フラクションコポリマー樹脂)、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂)、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/スチレン)コポリマー樹脂)、CPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/CPDコポリマー樹脂)及びDCPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/DCPDコポリマー樹脂)。
特定の実施形態では、脂環式樹脂が上述の脂環式樹脂のうちの1つの水素化形態(すなわち、水素化脂環式樹脂)を含み得る。
他の実施形態では、脂環式樹脂が水素化脂環式樹脂を排除する;換言すれば、脂環式樹脂は水素化されない。
【0066】
特定の実施形態において、1つ以上の芳香族樹脂は、脂肪族、脂環式、及びテルペン樹脂の1つ以上と組み合わせて使用される。
1つ以上の実施形態において、1つ以上の芳香族樹脂が樹脂の全負荷に対して主要な質量成分(例えば、50質量%を超える)として使用される。例えば、使用される樹脂は、少なくとも55質量%、他の実施形態では少なくとも80質量%、他の実施形態では少なくとも99質量%の1種以上の芳香族樹脂を含む。
【0067】
1つ以上の実施形態では、芳香族樹脂が芳香族ホモポリマー樹脂と、1つ以上の他の(非芳香族)モノマーと組み合わせた1つ以上の芳香族モノマーに由来するものを含む芳香族コポリマー樹脂との両方を含み、任意のタイプのモノマーの最大量は芳香族である。
有用な芳香族樹脂の非限定的な例としては、クマロン-インデン樹脂及びアルキル-フェノール樹脂、ならびにビニル芳香族ホモポリマー又はコポリマー樹脂(例えば、以下のモノマーの1つ以上に由来するもの)が挙げられる: αメチルスチレン、スチレン、オルトメチルスチレン、メタメチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分又はC8-C10留分から生じる任意のビニル芳香族モノマー。
ビニル芳香族コポリマー樹脂の非限定的な例としては、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5留分樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD(シクロペンタジエン)/スチレンコポリマー樹脂、及びDCPD(ジシクロペンタジエン)/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。
アルキルフェノール樹脂の非限定的な例としてはp-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(低重合度を有するものなど)が挙げられるが、特定の実施形態では芳香族樹脂が上述の芳香族樹脂のうちの1つの水素化形態(すなわち、水素化芳香族樹脂)を含み得る。
他の実施形態では、芳香族樹脂が水素化芳香族樹脂を除外し、換言すれば、芳香族樹脂は水素化されない。
【0068】
特定の実施形態において、1つ以上の脂肪族樹脂は、1つ以上の脂環式、芳香族及びテルペン樹脂と組み合わせて使用される。
1つ以上の実施形態において、1つ以上の脂肪族樹脂が樹脂の全負荷に対して主要な質量成分(例えば、50質量%を超える)として使用される。例えば、使用される樹脂は、少なくとも55質量%、他の実施形態では少なくとも80質量%、他の実施形態では少なくとも99質量%の1種以上の脂肪族樹脂を含む。
【0069】
1つ又は複数の実施形態では、脂肪族樹脂が脂肪族ホモポリマー樹脂と、1つ又は複数の他の(非脂肪族)モノマーと組み合わせた1つ又は複数の脂肪族モノマーから誘導されるものを含む。
有用な脂肪族樹脂の非限定的な例としては、C5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分/C9留分コポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、C5留分/脂環式コポリマー樹脂、C5留分/C9留分/脂環式コポリマー樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
脂環式モノマーの非限定的な例としてはシクロペンタジエン(「CPD」)及びジシクロペンタジエン(「DCPD」)が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、脂肪族樹脂が上述の脂肪族樹脂のうちの1つの水素化形態(すなわち、水素化脂肪族樹脂)を含み得る。
他の実施形態では脂肪族樹脂が水素化脂肪族樹脂を排除する;換言すれば、このような実施形態では脂肪族樹脂は水素化されない。
【0070】
1つ以上の実施形態では、テルペン樹脂がテルペンホモポリマー樹脂と、1つ以上の他の(非テルペン)モノマーと組み合わせた1つ以上のテルペンモノマーに由来するものを含むテルペンコポリマー樹脂との両方を含み、任意のタイプのモノマーの最大量はテルペンである。
有用なテルペン樹脂の非限定的な例としては、アルファ-ピネン樹脂、ベータ-ピネン樹脂、リモネン樹脂(例えば、L-リモネン、D-リモネン、L-及びD-異性体のラセミ混合物であるジペンテン)、ベータ-フェランドレン、デルタ-3-カレン、デルタ-2-カレン、ピネン-リモネンコポリマー樹脂、テルペン-フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
特定の実施形態では、テルペン樹脂が上述のテルペン樹脂のうちの1つの水素化形態(すなわち、水素化テルペン樹脂)を含むことができる。
他の実施形態ではテルペン樹脂が水素化テルペン樹脂を排除する;換言すれば、このような実施形態ではテルペン樹脂は水素化されない。
【0071】
[パーオキサイド系架橋剤]
本発明における架橋剤としては、パーオキサイド系架橋剤を用いる。このパーオキサイド系架橋剤としては、ジアシルパーオキサイド類 、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、パーオキシケタール類 、アルキルパーエステル類 、パーカーボネート類、ケトンパーオキサイド類 等が挙げられる。
これらの内、過安息香酸、過酸化ベンゾイル、クメンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサネート等が好ましく挙げられる。本発明においては、これらのパーオキサイド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0072】
パーオキサイド系架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.1~2質量部が更に好ましい。パーオキサイド系架橋剤の配合量を上記範囲内にすることで、伸長疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性を損なうことなく耐熱性が得られ、また不飽和脂肪酸の金属塩とのラジカル反応において所望の発熱が得られ、加硫時間が短縮化される。
【0073】
本発明において、所望により、パーオキサイド系架橋剤に加えて、硫黄又は硫黄含有架橋剤を用いても良い。適切な硫黄架橋剤の例には、二硫化アミン、ポリマーポリスルフィド又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与架橋剤;及び不溶性ポリマー硫黄が含まれる。
架橋剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。当業者は、所望の架橋レベルを達成するために架橋剤の量を容易に選択することができる。
【0074】
本発明においては、質量比(前記金属酸化物の質量部/前記パーオキサイド系架橋剤の質量部)が、0.05~3.0であることが好ましく、0.07~2.0であることがより好ましく、0.10~0.6であることが更に好ましく、0.20~0.6であることが特に好ましい。この質量比が0.05以上であれば、の理由で好ましく、0.6以下であれば、金属酸化物(特に、酸化亜鉛)使用量低減の観点から好ましい。
【0075】
(硬化促進剤)
1つ以上の実施形態において、架橋剤は、架橋促進剤と組み合わせて使用される。
1つ以上の実施形態において、促進剤は架橋に必要な時間及び/又は温度を制御し、架橋物の特性を改善するために使用される。
促進剤の例には、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジル-スルフェンアミド(CBS)などのチアゾール加硫促進剤、及びジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン加硫促進剤が含まれる。
当業者は、所望の硬化レベルを達成するために架橋促進剤の量を容易に選択することができるのであろう。
【0076】
(その他の配合剤)
ゴム配合に典型的に使用されるその他の配合剤もゴム組成物に添加することができる。
これらには、促進剤、促進剤活性剤、油、追加の可塑剤、ワックス、スコーチ抑制剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化樹脂、ステアリン酸などの脂肪酸、解こう剤、及び抗酸化剤及び抗オゾン剤などの分解防止剤が含まれる。
特定の実施形態では、軟化剤として従来使用されるものが含まれる。軟化剤として使用することができる有用な油又は増量剤には芳香油、パラフィン油、ナフテン油、ヒマシ油以外の植物油、MES、TDAE、及びSRAEを含む低PCA油、ならびに重質ナフテン油が含まれるが、これらに限定されない。
適切な低PCA油には、野菜、ナッツ、及び種子から収穫することができるような、様々な植物由来の油も含まれる。
非限定的な例としては大豆又は大豆油、ヒマワリ油、ベニバナ油、トウモロコシ油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ラクダリア油、ホバ油、マカダミアナッツ油、ココナッツ油、及びパーム油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
1つ以上の実施形態では、有機酸はカルボン酸である。
特定の実施形態では、カルボン酸が飽和及び不飽和脂肪酸を含む脂肪酸である。
特定の実施形態では、ステアリン酸などの飽和脂肪酸が使用される。
他の有用な酸としてはパールミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、リノール酸、及びアラキドン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
(共晶化合物の配合量)
1つ以上の実施形態では、架橋可能な組成物が、ゴム成分100質量部に対して、0.005質量部を超える、他の実施形態では0.01質量部を超える、他の実施形態では0.02質量部を超える共晶化合物を含む。
これら又は他の実施形態では、架橋可能なゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、3質量部未満、他の実施形態では1質量部未満、及び他の実施形態では0.1質量部未満の共晶化合物を含む。
1つ以上の実施形態では、架橋可能なゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、約0.005~約3質量部、他の実施形態では約0.01~約1質量部、他の実施形態では約0.02~約0.1質量部の共晶化合物を含む。
【0079】
1つ又は複数の実施形態では、共晶化合物の量が金属酸化物(酸化亜鉛など)の配合量を参照して説明することができる。
1つ以上の実施形態では、架橋可能な組成物が架橋可能な組成物内に存在する共晶化合物及び金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)の総質量に基づいて、2質量%を超える、他の実施形態では3質量%を超える、及び他の実施形態では5質量%を超える共晶溶媒を含む。
これら又は他の実施形態では、架橋可能な組成物が架橋可能な組成物内に存在する共晶化合物及び金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)の総質量に基づいて、20質量%未満、他の実施形態では15質量%未満、及び他の実施形態では12質量%未満の共晶溶媒を含む。
1つ以上の実施形態では、架橋可能な組成物が架橋可能な組成物内に存在する共晶溶媒及び金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)の総質量に基づいて、約2~約15質量%、他の実施形態では約3~約12質量%、及び他の実施形態では約5~約10質量%の共晶化合物を含む。
【0080】
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、0.05質量部を超える、他の実施形態では0.1質量部を超える、他の実施形態では0.15質量部を超える金属酸化物(例えば酸化亜鉛)を含む。
これら又は他の実施形態では、架橋性ゴム組成物が2質量部未満、他の実施形態では1質量部未満、及び他の実施形態では0.75質量部未満の金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)質量部を含む。
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、約0.05~約2、他の実施形態では約0.1~約1質量部、他の実施形態では約0.15~約0.75質量部の金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)質量部を含む。
【0081】
(有機酸)
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部を超え、他の実施形態では0.7質量部を超え、他の実施形態では1.0質量部を超える有機酸(例えばステアリン酸)を含む。
これら又は他の実施形態では、架橋性ゴム組成物が5質量部未満、他の実施形態では3質量部未満、他の実施形態では2質量部未満の有機酸(例えばステアリン酸)質量部を含む。
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、約0.5~約5質量部、他の実施形態では約0.7~約3質量部、他の実施形態では約1.0~約2質量部の有機酸(例えばステアリン酸)質量部を含む。
【0082】
(充填材の配合量)
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、少なくとも0質量部、他の実施形態では少なくとも10質量部、及び他の実施形態では少なくとも20質量部の充填材を含む。
これら又は他の実施形態では、架橋性ゴム組成物が多くとも200質量部、他の実施形態では多くとも100質量部、他の実施形態では多くとも70質量部の充填材を含む。
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、約0~約200質量部、他の実施形態では約10~約100質量部、他の実施形態では約20~約70質量部の充填材を含む。
【0083】
(カーボンブラックの配合量)
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、少なくとも0質量部、他の実施形態では少なくとも10質量部、他の実施形態では少なくとも20質量部のカーボンブラックを含む。
これら又は他の実施形態では、架橋性ゴム組成物が多くとも200質量部、他の実施形態では多くとも100質量部、他の実施形態では多くとも70質量部のカーボンブラックを含む。
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、約0~約200質量部、他の実施形態では約10~約100質量部、他の実施形態では約20~約70質量部のカーボンブラックを含む。
【0084】
(シリカの配合量)
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、少なくとも5質量部、他の実施形態では少なくとも25質量部、他の実施形態では少なくとも50質量部のシリカを含む。
これら又は他の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、最大で200質量部、他の実施形態では最大で130質量部、他の実施形態では最大で80質量部のシリカを含む。
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、約5~約200質量部、他の実施形態では約25~約130質量部、他の実施形態では約50~約80質量部のシリカ質量部を含む。
【0085】
(充填材の充填比率)
本発明の架橋性ゴム組成物において、カーボンブラック単独、又はシリカ単独を配合しても良いが、カーボンブラックとシリカとの両方を配合しても良い。
1つ又は複数の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、第1の充填材の量対第2の充填材の量の比によって特徴付けることができる。
1つ以上の実施形態では、カーボンブラック対シリカの質量比が約1:1、他の実施形態では約10:1、他の実施形態では約14:1、他の実施形態では約20:1である。
1つ以上の実施形態では、カーボンブラック対シリカの質量比が約1:5、他の実施形態では約1:10、他の実施形態では約1:14、及び他の実施形態では約1:20である。
【0086】
(シランカップリング剤の配合量)
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、シリカ100質量部に対して、少なくとも1質量部、他の実施形態では少なくとも2質量部、他の実施形態では少なくとも5質量部のシランカップリング剤を含む。
これら又は他の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、100質量部のシリカに対して、多くとも20質量部、他の実施形態では多くとも15質量部、及び他の実施形態では多くとも10質量部のシランカップリング剤を含む。
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物が、シリカ100質量部に対して、約1~約20質量部、他の実施形態では約2~約15質量部、他の実施形態では約5~約10 質量部のシランカップリング剤を含む。
【0087】
(樹脂の配合量)
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物がゴム成分100質量部に対して、1より多く、他の実施形態では15より多く、他の実施形態では25質量部(質量部)より多くの樹脂(例えば炭化水素樹脂)を含む。
これら又は他の実施形態では、架橋性ゴム組成物がゴム成分100質量部に対して、150未満、他の実施形態では120未満、他の実施形態では90質量部未満の樹脂(例えば炭化水素樹脂)質量部を含む。
1つ以上の実施形態では、架橋性ゴム組成物がゴム成分100質量部に対して、約1~約150、他の実施形態では約15~約120、他の実施形態では約25~約90質量部の樹脂(例えば炭化水素樹脂)質量部を含む。
【0088】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法であって、
(i) ゴム成分と、共晶化合物と、金属酸化物とを混練し、マスターバッチを製造する工程(A)と、
(ii) 前記マスターバッチと、パーオキサイド系架橋剤とを混練し、ゴム組成物を製造する工程(B)とを含む、ゴム組成物の製造方法が好ましい。
1つ以上の実施形態では、架橋可能な組成物が架橋可能なゴムと共融溶媒とを混合してマスターバッチを形成し、その後、マスターバッチに架橋剤を添加することによって調製される。
マスターバッチの調製は例えば、最初の混合物が2つ以上の成分を混合することによって調製された後に、所望により、1つ以上の成分が連続的に組成物に添加され得る、1つ以上のサブ混合工程を使用して行われ得る。
また、従来の技術を用いて、カーボンブラック、追加の充填材、化学的に処理された無機酸化物、シリカ、シランカップリング剤、シリカ分散剤、加工油、酸化亜鉛及び脂肪酸などの加工助剤、及び酸化防止剤又はオゾン防止剤などの分解防止剤などの追加の成分を、これらに限定されないが、架橋可能な組成物の調製において添加することができる。
【0089】
本発明において、共晶化合物が、第4級アンモニウム塩及び水素結合供与体を混合して調製されることが好ましい。本発明において、ゴム成分に共晶化合物を導入する前に、共晶化合物が調製されることが好ましい。
即ち、共晶化合物を構成する混合物の第1の成分(第4級アンモニウム塩)は共晶化合物を架橋可能なゴム組成物に導入する前に、混合物の第2の成分(水素結合供与体)と事前に混合されることが好ましい。
1つ以上の実施形態では、混合物の組み合わされた成分が均一な液体組成物が観察されるまで混合される。
【0090】
共晶化合物を配合することにより、酸化亜鉛等の金属酸化物の配合量を大幅に減らすことができ、環境への配慮をしつつ、金属酸化物を多量配合するゴム組成物と同等の加硫特性及び加硫後のゴム物性を享受できるゴム組成物を得ることができる。さらに、架橋後のゴム組成物の耐破壊特性(特に、耐亀裂成長性)が向上する。
即ち、共晶化合物と金属酸化物との両方をゴム組成物に配合することにより、架橋後のゴム組成物の耐破壊特性(特に、耐亀裂成長性)が、さらに、飛躍的に向上する。
これらの実施形態では共晶化合物が酸化亜鉛のキャリアになっていると推測される。
例えば、共晶化合物はより多量の酸化亜鉛と組み合わせることができ、酸化亜鉛は、酸化亜鉛と共晶化合物との組み合わせを固体としてミキサー内のゴムに送達するための担体として作用する。
さらに他の実施形態では共晶対の部材のうちの1つは共晶化合物のための固体キャリアとして作用し、したがって、共晶化合物の第1及び第2の成分の組合せはミキサー内のゴムに固体として添加することができる予備組合せを形成する。
当業者はこの性質の混合物が固体組成を所望の温度に維持するために、過剰の第1又は第2の共晶部材を、他の共晶部材に対して過剰に組み合わせることによって形成することができることを理解するのであろう。
【0091】
1つ以上の実施形態において、共晶化合物は、ゴムマスターバッチの形成における初期成分として架橋性ゴム組成物に導入される。
その結果、共晶化合物は、ゴム成分との高剪断高温混合を受ける。
1つ以上の実施形態では、共晶化合物(特に、共晶溶媒)が110℃を超える最低温度で、他の実施形態では130℃を超える最低温度で、他の実施形態では150℃を超える最低温度でゴム成分と混合される。
1つ以上の実施形態において、高剪断高温混合は、約110℃~約170℃の温度で行われる。
【0092】
他の実施形態では、共晶化合物がパーオキサイド系架橋剤と共に、連続的に又は同時に架橋可能なゴムに導入される。
その結果、共晶化合物は、110℃未満、他の実施形態では105℃未満、他の実施形態では100℃未満の最高温度で架橋性ゴムと混合される。
1つ以上の実施形態では、架橋剤との混合が約70℃~約110℃の温度で行われる。
【0093】
共晶化合物と同様に、酸化亜鉛及びステアリン酸は初期成分としてゴムマスターバッチに添加することができ、したがって、これらの成分は、高温、高剪断混合を受ける。
あるいは、酸化亜鉛及びステアリン酸が硫黄系架橋剤と一緒に添加することができ、それによって低温混合を受けるだけである。
【0094】
1つ又は複数の実施形態では、酸化亜鉛が共晶化合物とは別個に、かつ個別に架橋可能なゴムに導入される。
他の実施形態では酸化亜鉛及び共晶化合物が、酸化亜鉛マスターバッチを形成するために予備混合され、酸化亜鉛マスターバッチを得ることが好ましい。この場合、酸化亜鉛が共晶化合物中に溶解されることが好ましい。酸化亜鉛及び共晶化合物の混合物である酸化亜鉛マスターバッチにおいて、酸化亜鉛が共晶化合物中に溶解された場合は、この酸化亜鉛マスターバッチをゴム組成物に添加することにより、酸化亜鉛のゴム組成物中への分散が改善される。
【0095】
(混合条件)
1つ以上の実施形態では、架橋可能な組成物が最初に、架橋可能なゴムと共晶化合物とを約110~約180℃、又は他の実施形態では約130~約170℃の温度で混合することによって調製される。
特定の実施形態では、最初の混合に続いて、組成物(すなわち、マスターバッチ)を100℃未満、又は他の実施形態では80℃未満の温度に冷却し、架橋剤を添加する。
特定の実施形態では、混合が最終架橋性ゴム組成物を調製するために、約90~約110℃、又は他の実施形態では約95~約105℃の温度で継続される。
【0096】
1つ又は複数の実施形態ではマスターバッチ混合ステップ、又はマスターバッチ混合ステップの1つ又は複数のサブステップは混合中に組成物によって得られるピーク温度によって特徴付けることができる。このピーク温度は、降下温度とも呼ばれる。
1つ以上の実施形態では、マスターバッチ混合工程中の組成物のピーク温度が少なくとも140℃、他の実施形態では少なくとも150℃、他の実施形態では少なくとも160℃であってもよい。
これら又は他の実施形態では、マスターバッチ混合工程中の組成物のピーク温度が約140~約200℃、他の実施形態では約150~約190℃、他の実施形態では約160~約180℃であってもよい。
【0097】
(最終混合工程)
マスターバッチ混合工程に続いて、架橋剤又は架橋剤系を組成物に導入し、混合を続けて最終的に架橋可能な物質組成物を形成する。
この混合ステップは、最終混合ステップ、架橋混合ステップ、又は生産的混合ステップと呼ぶことができる。
この混合工程から得られる生成物は、架橋性ゴム組成物(又は、未架橋ゴム組成物)と呼ぶことができる。
【0098】
1つ又は複数の実施形態では、最終混合ステップが最終混合中に組成物によって得られるピーク温度によって特徴付けることができる。
当業者が認識するように、この温度は、最終液滴温度とも呼ばれ得る。
1つ以上の実施形態では、最終混合中の組成物のピーク温度が多くとも130℃、他の実施形態では多くとも110℃、他の実施形態では多くとも100℃であってもよい。
これら又は他の実施形態では、最終混合中の組成物のピーク温度が約80~約130℃、他の実施形態では約90~約115℃、他の実施形態では約95~約105℃であってもよい。
【0099】
(混合装置)
架橋性ゴム組成物の全ての成分は内部ミキサー(例えば、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等)、押出機、混練機、及び2本ロールミルなどの標準的な混合装置と混合することができる。
混合は、単独で又はタンデムで行うことができる。
上記で示唆したように、成分は、単一段階で、又は他の実施形態では2つ以上の段階で混合することができる。
例えば、典型的にはゴム成分及び充填材を含む第1段階(すなわち、混合段階)では、マスターバッチが調製される。
マスターバッチが調製されると、架橋剤は最終混合段階でマスターバッチに導入され、混合されてもよく、これは、典型的には早すぎる架橋の機会を低減するために、比較的低い温度で行われる。
マスターバッチ混合段階と最終混合段階との間に、時にはリミルと呼ばれる追加の混合段階を使用することができる。
【0100】
架橋性ゴム組成物は、標準的なゴム成形、成形及び硬化技術を含む通常のタイヤ製造技術に従ってタイヤ構成要素に加工することができる。
典型的には、架橋が架橋可能な組成物を金型内で加熱することによって行われ、例えば、約140℃~約180℃に加熱することができる。
硬化又は架橋されたゴム組成物は、架橋ゴムと呼ばれてもよく、架橋ゴム組成物は一般に、熱硬化性である三次元ポリマーネットワークを含む。
充填材及び加工助剤などの他の成分は、架橋ネットワーク全体に均一に分散させることができる。
ニューマチックタイヤは、米国特許番号に記載されているように製造することができる。
5,866,171, 5,876,527、5,931,211、及び5,971,046(これらは、本明細書中で参考として援用される)。
【0101】
(架橋ゴム製品)
上記のように、本発明の架橋性ゴム組成物は、架橋硬化され、架橋ゴム製品となる。架橋ゴム製品として、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト、ホース、クローラからなる群から少なくとも1種選択されるものが挙げられる。
【0102】
本発明の態様によれば、架橋物である架橋ゴム製品は亜鉛種などの比較的低レベルの金属酸化物を含みながら、有利な架橋特性を得ることができる。
【実施例
【0103】
以下、実施例により本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例における、ゴム組成物及びゴム組成物の架橋物は、以下の方法によって評価した。
全ての量は特に断らない限り、ゴム成分100質量部に対しての質量部で表される。
1.架橋特性
調製した各ゴム組成物を用いて、キュラストメータ(JSR株式会社製「CURELASTOMETER7」)により、JIS K6300-2:2001に準拠して、155℃における10%加硫時間{tc(10)}(単位:分)、90%加硫時間{tc(90)}(単位:分)及び最大トルク(Fmax) (単位:dN・m)を測定した。
2.架橋後の物性
(1)100%伸び引張応力 (単位:MPa)
調製した各ゴム組成物で厚さ2mmのスラブシートを作成し、160℃、15分で架橋した。得られた架橋後のスラブシートから、ダンンベル状7号形試験片又は直径25mmで太さが2mmのリング状試験片を採取し、室温(23℃)でJIS K6251:2010に準拠し引張試験を行い、100%伸長時の引張応力 (単位:MPa)を測定した。
【0104】
[共晶化合物の形成]
共晶化合物は1モルの塩化コリンと2モルの尿素とを100℃で混合して共晶化合物を形成することによって調製した。標準条件(1気圧)下、で室温(23℃)に冷却した。
この塩化コリンと尿素とで構成される共晶化合物は、共晶溶媒又は深共晶溶媒(DES)とも呼ばれ、室温(23℃)で液状である。
【0105】
[共晶化合物と酸化亜鉛との混合]
次に、質量比(共晶化合物0.1質量部/酸化亜鉛1.0質量部)の比率で、共晶化合物と酸化亜鉛とをミキサー内で混合し、共晶化合物と酸化亜鉛との混合物を得た。
【0106】
実施例1~2及び比較例1~4
表1及び2に提供される配合組成のゴム組成物を以下の手順で調製した。
表1及び2に示す配合組成に基づき、ゴム成分、カーボンブラック、軟化剤、ステアリン酸、及びステアリン酸亜鉛を、バンバリーミキサーによるマスターバッチ混合ステップにより、マスターバッチを得た。バンバリーミキサーを、70RPM(回転/分)で操作し、最高温度160℃にて混錬した。この最高温度とは、バンバリミキサーからの排出直後のマスターバッチ内最高温度をいう。マスターバッチはマスターバッチ混合ステップ後、室温(23℃)に冷却された。
次に、室温(23℃)に冷却された各種マスターバッチのみをリミル混合ステップにて、バンバリーミキサーを75RPM(回転/分)で操作し、最高温度160℃にて混錬した後、室温(23℃)に冷却した。
次いで、リミル混合ステップ後の各種マスターバッチ、共晶化合物と酸化亜鉛との混合物、及びパーオキサイド系架橋剤(表1)、又はパーオキサイド系架橋剤及び硫黄(表2)をバンバリーミキサーにて40RPM(回転/分)で操作し、最高温度100℃にて混錬した後、室温(23℃)に冷却した。
上記の共晶化合物と酸化亜鉛との混合物は、表1においては、1.1質量部配合し、表2においては、2.2質量部配合した。
得られた6種類のゴム組成物の架橋特性、架橋後の物性及び耐破壊特性を上記の方法で評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】

【0109】
表1及び表2に示す各成分は以下の通りである。
*1:エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM):JSR株式会社製、商品名「JSR EP11」
*2:塩化ブチルゴム :日本ブチル株式会社製、商品名「JSR CHLOROBUTYL 1066」
*3:カーボンブラック:東海カーボン株式会社製、商品名「シースト N」
*4:共晶化合物 :上記のように、1モルの塩化コリンと2モルの尿素とを100℃で混合して得られた共晶化合物
塩化コリン:関東化学株式会社製、商品名「塩化コリン」
尿素:関東化学株式会社製、商品名「尿素」
*5:ステアリン酸:花王株式会社製、商品名「ルナック S-50V」
*6:酸化亜鉛:堺化学工業株式会社製、商品名「酸化亜鉛1種」
*7:パーオキサイド系架橋剤:日本油脂株式会社製、商品名「ペロキシモンF-40」
*8:エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM):JSR株式会社製、商品名「EP35」
*9:軟化剤 :出光興産株式会社製、商品名「ダイナロンプロセスオイル」
*10:旭電化工業株式会社製、商品名「ステアリン酸亜鉛」
*11:硫黄 :三新化学工業株式会社製、商品名「サンフェル EX」
【0110】
表1及び2から、共晶化合物の存在下で酸化亜鉛の配合量をかなり減少させることができることがわかる。即ち、共晶化合物の存在下で、金属酸化物を多量配合するゴム組成物と同等の加硫特性及び加硫後のゴム物性を享受できるゴム組成物を得ることができた。
天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴムをゴム成分に用いた場合も、表1や表2と同様に、金属酸化物の配合量が少ない場合においても、金属酸化物を多量配合するゴム組成物と同等の加硫特性及び加硫後のゴム物性を享受できるゴム組成物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛等の金属酸化物の配合量を大幅に減らし、環境への配慮をしつつ、金属酸化物を多量配合するゴム組成物と同等の加硫特性及び加硫後のゴム物性を享受できるゴム組成物を得ることができ、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト、ホース、クローラ等の架橋ゴム製品に好適に用いられる。