(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】杭打ちシステム
(51)【国際特許分類】
E02D 7/20 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
E02D7/20
(21)【出願番号】P 2021527204
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 NL2019050762
(87)【国際公開番号】W WO2020106147
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】523026709
【氏名又は名称】アイキューアイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バウデヴェイン・カスペル・ユング
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクス・ヘラルドゥス・アンドレアス・ファン・フェッセム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリブロルドゥス・アデルベルトゥス・マリア・ブラウワー
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139931(WO,A1)
【文献】西独国特許出願公開第1634661(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第108396742(CN,A)
【文献】実公昭50-032001(JP,Y1)
【文献】特開昭52-056462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00
9/00
11/00
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打ちシステム(1)であって、クレーン(4)の巻上ケーブル(3)に取り付けられた、または取り付け可能な吊り上げ要素(2)と、前記吊り上げ要素(2)に取り付けられ、前記吊り上げ要素(2)に対して杭打ち方向(X)に移動可能な杭打ち機(6)と、前記吊り上げ要素(2)に対する前記杭打ち機(6)の動きを制動するためのブレーキとを備え、
前記ブレーキは、前記吊り上げ要素(2)および前記杭打ち機(6)において協働する摺動部材(8,10,18,19,23,24)を備え、前記摺動部材は、相互の摺動方向(X)に対して横に延在する方向に互いに押しつけられて
おり、
相互の摺動方向(X)における前記吊り上げ要素(2)にかかる前記杭打ち機(6)の所定の力レベルまで、前記摺動部材(8,10,18,19,23,24)間の静止摩擦によって前記ブレーキが前記杭打ち機(6)を前記吊り上げ要素(2)に対して固定位置に保つように、前記摺動部材(8,10,18,19,23,24)間の力が選択されるように前記摺動部材(8,10,18,19,23,24)が構成されていることを特徴とする、杭打ちシステム(1)。
【請求項2】
前記所定の力レベルが前記杭打ち機(6)の重量の少なくとも1.1
倍である、請求項
1に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記摺動部材(8,10,18,19,23,24)が、油圧シリンダーによって他方の前記摺動部材に対して押しつけられる、請求項
1または2に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記摺動部材(18)が、バネ(20)によって他方の前記摺動部材に対して押しつけられる請求項
1または2に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記摺動部材(8,10,18,19,23,24)が、弾性材
料で作られている、請求項
1または2に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項6】
前記杭打ち機(6)および前記吊り上げ要素(2)の一方には、前記杭打ち方向(X)に延在し、前記杭打ち機(6)および前記吊り上げ要素(2)の他方によって誘導されるロッド(8,24)が設けられ、前記ロッド(8,24)は、前記杭打ち機(6)および前記吊り上げ要素(2)の一方において前記摺動部材を形成し、前記杭打ち機(6)および前記吊り上げ要素(2)の他方における前記摺動部材(10,23)と協働する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項7】
前記杭打ち機(6)および前記吊り上げ要素(2)の他方における前記摺動部材が、反対側で前記ロッド(8)に係合する一対の摩擦ブロック(10,23)を備える、請求項
6に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項8】
前記吊り上げ要素(2)から離れる前記杭打ち機(6)の移動中に前記摩擦ブロック(10,23)間の距離が増加するように、前記ロッド(8)がテーパー状である請求項
7に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項9】
前記吊り上げ要素(2)が前記杭打ち機(6)の円筒形内面内に少なくとも部分的に収容される円筒形外面を備え、前記内面および前記外面の一方には、前記杭打ち方向(X)に延在する少なくとも1つの突出リブ(19)が設けられ、前記内面および前記外面の他方には、前記リブ(19)にクランプ力を加える一対の摩擦ブロック(18)が設けられている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項10】
前記吊り上げ要素(2)から離れる前記杭打ち機(6)の移動中
に前記摩擦ブロック(18)間の距離が増加するように、前記リブ(19)がテーパー状である、請求項
9に記載の杭打ちシステム(1)。
【請求項11】
前記摺動部材(8,10,18,19,23,24)の前記相互の摺動方向と、前記杭打ち方向(X)が同じである、請求項1~
10のいずれか一項に記載の杭打ちシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの巻上ケーブルに取り付けられた、または取り付け可能な吊り上げ要素と、吊り上げ要素に取り付けられ、吊り上げ要素に対して杭打ち方向に移動可能な杭打ち機と、吊り上げ要素に対する杭打ち機の動きを制動するためのブレーキとを備える杭打ちシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような杭打ちシステムは、特許文献1から知られており、杭打ち機が自由落下した後のクレーンへの衝撃負荷を軽減するのに適している。これは通常、杭の設置中に杭の先端が低抵抗を提供する地層に到達した場合に発生する。杭の自重と杭に載置される杭打ち機の重さにより、杭が地面に食い込む場合がある。杭打ち機はクレーンで拘束されているため、衝撃荷重が大きくなる。既知の杭打ちシステムは、複雑な油圧減衰および圧縮回路によって、吊り上げ要素に対する杭打ち機の動きを制動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/139931号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、自由落下する杭打ち機によって生じる衝撃荷重を最小化するのに適した比較的単純な杭打ちシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明によるシステムによって達成され、このシステムは、ブレーキが、吊り上げ要素および杭打ち機において協働する摺動部材を備え、摺動部材が、相互の摺動方向に対して横方向に延びる方向に互いに押し付けられることを特徴とする。
【0006】
摺動部材を互いに押し付けることにより、摺動部材間に比較的高い静止摩擦を発生させる機会が提供され、相互の摺動方向における杭打ち機の吊り上げ要素への一定の力レベルまで、杭打ち機が吊り上げ要素に対して固定位置に留まる。巻上ケーブルが自由落下状態にある杭打ち機を拘束すると、巻上ケーブルは吊り上げ要素と摺動部材を介して杭打ち機に力を加え、杭打ち機の減速を引き起こす。この力が摺動部材間の静止摩擦に打ち勝つと、杭打ち機は、吊り上げ要素に対して移動するが、協働する摺動部材同士がこすれるため動摩擦が発生する。結果として、運動エネルギーが熱エネルギーに変換されることにより、吊り上げ要素に対する杭打ち機の動きが徐々に減速され、比較的簡単な方法で衝撃荷重が回避される。熱エネルギーへの変換により、摺動部材の熱膨張がさらに進み、摩擦が次第に増大する可能性がある。
【0007】
摺動部材同士の摺動方向とは、摺動部材同士が摺動する経路の方向である。実際には、摺動部材の相互摺動方向と杭打ち方向は同じでもよい。杭打ち方向とは、運転条件下で杭打ち機が杭を打ち込む方向と、その反対方向とを指すことに注意されたい。
【0008】
特定の実施形態では、摺動部材は、そのように構成され、摺動部材間の力は、相互摺動方向における吊り上げ要素にかかる杭打ち機の所定の力レベルまで、摺動部材間の静止摩擦によって、ブレーキが吊り上げ要素に対して杭打ち機を固定位置に保つことができるように選択される。
【0009】
所定の力レベルは、杭打ち機の重量の少なくとも1.1倍、好ましくは少なくとも1.4倍である。これは、巻上ケーブルの張力の増加により吊り上げ要素と杭打ち機がすでに減速した後に、静止摩擦を上回ることを意味する。
【0010】
摺動部材の少なくとも一方は、油圧シリンダーによって他方に対して押し付けられてもよい。
【0011】
あるいは、摺動部材の少なくとも一方は、バネによって他方に押し付けられてもよい。
【0012】
さらに別の実施形態では、摺動部材の少なくとも一方は、弾性材料、例えばゴムでできている。
【0013】
特定の実施形態において、杭打ち機および吊り上げ要素の一方は、杭打ち方向に延在し、杭打ち機および吊り上げ要素の他方によって案内されるロッドを備え、ロッドは、杭打ち機と吊り上げ要素の一方における摺動部材を形成し、その摺動部材は、杭打ち機と吊り上げ要素の他方の摺動部材と協働する。
【0014】
杭打ち機および吊り上げ要素の他方の摺動部材は、ロッドの両側でロッドと係合する一対の摩擦ブロックを含むことができる。
【0015】
ロッドは、吊り上げ要素から離れて杭打ち機が動く際に摩擦ブロック間の距離が大きくなるように先細りでもよい。これにより、漸進的な制動動作が実現する。摩擦ブロックがロッドに押し付けられている場合、移動中にバネ力が増加する。油圧の場合、移動中に油圧が増加する。この場合、油圧システムにアキュムレータを設けることができる。
【0016】
代替実施形態では、吊り上げ要素は、杭打ち機の円筒形内面内に少なくとも部分的に収容される円筒形外面を備え、内面および外面の一方には、杭打ち方向に延びる少なくとも突出リブが設けられ、内面および外面の他方には、リブにクランプ力を及ぼす一対の摩擦ブロックが設けられている。
【0017】
以下、本発明の実施形態を例として示す非常に概略的な図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による杭打ちシステムの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1と同様の図であるが、代替の実施形態を示す。
【
図3】
図2に示す杭打ちシステムの一部の切断側面図である。
【
図4】
図3と同様の図であるが、異なる状態の杭打ちシステムを示す。
【
図7】
図1と同様の図であるが、本発明による杭打ちシステムの代替実施形態を示す。
【
図8】
図7と同様の図であるが、異なる状態の杭打ちシステムを示す。
【
図9】
図7のIXによって示される一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明による杭打ちシステム1の一実施形態を示す。杭打ちシステム1は、バージ5上のクレーン4の巻上ケーブル3に取り付けられた吊り上げ要素2を備える。クレーン4には、巻上ケーブル3を出し入れするウインチ(図示せず)が設けられている。杭打ちシステム1は、水中地盤、例えば、海底にモノパイル(図示せず)を設置するのに適しているが、システム1を陸上で適用することも考えられる。
【0020】
杭打ちシステム1は、互いに固定された油圧杭打ち機6と移行シリンダー7とをさらに備える。杭打ち機6と移行シリンダー7にはロッド8が取り付けられている。ロッドの下端には、移行シリンダー7内で移動可能なプレート8aが設けられている。通常の杭打ち作業中、杭打ち機6による2回の連続打撃の間、プレート8aは移行シリンダー7の内側のカラー7a上に載置されている。杭打ち機6とモノパイルが打撃中に共に下降すると、移行シリンダー7も下降する。通常の杭打ち条件下では、ロッド8は吊り上げ要素2に対して固定された位置にあり、これは、杭打ち機6の打撃時に、移行シリンダー7がロッド8を含む吊り上げ要素2に対して下方に移動できることを意味する。一方、ロッド8を含む吊り上げ要素2は、いくらか後に移動に追随することができる。通常の杭打ち条件下では、巻上ケーブル3には最小限の張力負荷がかかるか、または張力負荷がないため、クレーン4への繰り返しの負荷パルスは回避されることに留意されたい。
【0021】
特定の条件下では、ロッド8はまた、吊り上げ要素2の内部に位置するシリンダー9内で、吊り上げ要素2に対して垂直杭打ち方向Xに移動可能である。これについては後述する。
図1に示す実施形態では、ロッド8は、長方形の断面を有するが、異なる形状、例えば円形も考えられる。
【0022】
杭打ちシステム1には、油圧チャンバ11によってロッド8に押し付けられる摩擦ブロック10の形態のブレーキが設けられている。これは、ロッド8が第1の摺動部材を形成し、摩擦ブロック10が2つの協働する摺動部材の第2の摺動部材を形成することを意味し、第1の摺動部材は、杭打ち機6に位置し、第2の摺動部材は吊り上げ要素2に位置する。摺動部材は、相互の摺動方向に相対移動でき、この方向は、この場合、杭打ち方向Xと同じ方向である。
【0023】
また、バネ等により摩擦ブロック10をロッド8に押し付けてもよい。摩擦ブロック10は、例えばゴムブロックなどの弾性材料で作られ、ロッド8に対して圧縮状態で取り付けられることも考えられる。さらに、杭打ちシステム1は、例えば、
図1に摩擦ブロック10が示されている位置に対してロッド8の反対側に、2つ以上の摩擦ブロック10を有してもよい。
【0024】
図1に示す杭打ちシステムを使用してモノパイル(図示せず)を海底に打ち込む場合、移行シリンダー7および杭打ち機6は、モノパイル上に載る一方、
図1に示すように、ロッド8を含む吊り上げ要素2は、巻上ケーブル3から吊り下げられる。モノパイルの先端が低抵抗の地層に到達した場合、モノパイルは自重とモノパイル上にある杭打ち機6の重さにより地面内に進み始める可能性があり、杭打ち機6の一撃がこの状態を引き起こす可能性がある。杭打ち機1は、自由落下状態となる。その後、巻上ケーブル3がシステム1を拘束する。最初、移行シリンダー7は、プレート8aが移行シリンダー7の上部のカバーに接触するまで、ロッド8を含む吊り上げ要素2に対してほぼ自由に移動することができる。これは、ブレーキの存在により、ロッド8と移行シリンダー7の間の摩擦がロッド8と吊り上げ要素2の間の摩擦よりもはるかに小さいためである。続いて、杭打ち機6の慣性により、ロッド8の下向きの力が摩擦ブロック10に加わる。ロッド8と摩擦ブロック10の間の摩擦挙動に応じて、杭打ち機6と移行シリンダー7を含むロッド8は、そのような条件下で吊り上げ要素2に対して下方に移動し始める場合がある。
【0025】
油圧チャンバ11は常に摩擦ブロック10をロッド8に押し付けている。つまり、杭打ち機6とロッド8が吊り上げ要素2に対して固定位置にある場合、および杭打ち機6とロッド8が吊り上げ要素2に対して移動する場合もそうである。後者の場合、摩擦ブロック10とロッド8との間に動摩擦が生ずる一方、前者の場合は、摩擦ブロック10とロッド8との間に静摩擦が生じる。杭打ちシステム1は、静摩擦に打ち勝って、吊り上げ要素2に対して杭打ち機6を動かし始めるために、摩擦ブロック10に対するロッド8の下向きの力が杭打ち機6の重量の1.4倍より大きくなければならないように適合されている。移動中は発熱による摺動部材の熱膨張により動摩擦が急激に増加する。移動中に漸進的な制動挙動を生み出すために、ロッド8はわずかにテーパー状になっていて、吊り上げ要素2に対する杭打ち機6とロッド8の移動中に、油圧チャンバ11の容積を圧縮することにより、摩擦ブロック10の押し付け力が増加する。代替として、吊り上げ要素2に対する杭打ち機6およびロッド8の移動中に追加の油圧を発生させてもよい。
【0026】
図2は、杭打ちシステム1の代替実施形態を示す。この実施形態では、移行シリンダー7は、前述の実施形態と同様に、杭打ち機6に固定されているが、異なる形状を有する。吊り上げ要素2は、移行シリンダー7内で杭打ち方向Xに移動可能である。この実施形態では、移行シリンダー7の内側には、摩擦ブロックの対18が設けられ、吊り上げ要素2の外側から突出する協働する半径方向リブ19と係合する。リブ19は杭打ち方向Xに延在し、吊り上げ要素2の周囲に等角間隔で分散配置される。摩擦ブロックの対18は、通常の杭打ち条件下での静止摩擦と、システム1が自由落下状態から減速した場合に、杭打ち機6が吊り上げ要素2に対して移動する場合の動摩擦を提供するために、リブ19に締め付け力を及ぼす。
【0027】
図3および
図4は、吊り上げ要素2に対する杭打ち機6の動きを示している。
図3は、杭打ち機6が吊り上げ要素2に対して固定位置にある通常の杭打ち状態での状況を示し、
図4は、移行シリンダー7を含む杭打ち機6が摩擦ブロック18および協働するリブ19によって減速している状態を示す。移行シリンダー7は、摩擦ブロック18に沿った移動中にリブ19の安定した案内を生成するために、移行シリンダー7内の異なる高さに追加の摩擦ブロックを備えることができる。
【0028】
図5および
図6は、摩擦ブロック18およびリブ19の相対位置をより詳細に示している。
図6は、杭打ち機6が吊り上げ要素2に対して下方に移動する場合に漸進的な制動力を提供するために、リブ19が小さな角度αだけわずかにテーパー状になっていることを示している。
図5および
図6は、移行シリンダー7に固定され、摩擦ブロック18をリブ19に押し付けるバネ20を示す。
【0029】
図2は、通常の杭打ち条件下で、すなわち、リブ19が摩擦ブロック18に対して同じ位置にある場合に、杭打ち機6に対して吊り上げ要素2を自由に動かす機構を示していない。これは
図1に示す実施形態における移行シリンダー7内で移動可能であるプレートに匹敵する。このようなメカニズムは、
図2の実施形態にも存在し得る。
【0030】
図7~
図9は、杭打ちシステム1の別の代替実施形態を示す。前述の実施形態と同様に、この実施形態では、吊り上げ要素2は、バージ5上のクレーン4の巻上ケーブル3に取り付けられている。この場合、油圧杭打ち機6は、杭打ち機6に固定されたハンマークランプ21と、ハンマークランプ21に摺動可能に取り付けられ、杭打ち機6の両側に位置する一対のスライダー22を介して吊り上げ要素2に結合される。
【0031】
スライダー22は、
図1に示す実施形態における移行シリンダー7内のプレート8aと同様の機能を有する。通常の杭打ち作業中、
図7に示すように、吊り上げ要素2は巻上ケーブル3から吊り下げられ、2回の連続打撃の間、杭打ち機6の上に載っている一方、杭打ち機の打撃の間、杭打ち機6は、スライダー22を介して吊り上げ要素2に対して下方に移動することができ、その後、巻上ケーブル3を含む吊り上げ要素2が移動に追従することができる。
【0032】
杭打ちシステム1には、吊り上げ要素2とそれぞれのスライダー22との間に、摩擦ブロック23の形態であるブレーキが設けられている(
図9を参照)。摩擦ブロック23は、それぞれの油圧チャンバ25によってロッド24に押し付けられる。
図7に示す杭打ちシステム1は、2系列の3本のロッド24を有し、1系列は杭打ち機6の一方の側にあり、他系列はその反対側にある。両系列の3本のロッド24は、それぞれのスライダー22に回転可能に取り付けられた下部ヨーク26に固定されている。協働する一連の摩擦ブロック23および対応する油圧チャンバ25は、バー29を介して上部ヨーク28に固定されたそれぞれのハウジング27に収容されている。上部ヨーク28は、吊り上げ要素2に回転可能に取り付けられている。
【0033】
図7に示す杭打ちシステムを使用してモノパイル(図示せず)を海底に打ち込む場合、吊り上げ要素2は巻上ケーブル3から吊り下げられ、ブレーキおよびスライダー22を介して杭打ち機6の上に載っている。杭打ちシステム1が自由落下状態で回転し、巻上ケーブル3がシステム1を拘束すると、6本のロッド24とそれぞれの摩擦ブロック23の間の摩擦は、スライダー22とハンマークランプ21との間の摩擦よりもはるかに高いため、杭打ち機6は、最初はスライダー22のみを介して吊り上げ要素2とブレーキに対して下方に移動する。続いて、杭打ち機6の慣性がロッド24と摩擦ブロック23との間の最大静止摩擦力を超える摩擦ブロック23へのロッド24の下向きの力を引き起こす場合に、スライダー22と杭打ち機6を含むロッド24は、吊り上げ要素2に対して下方に移動する。この動きの間、杭打ち機6は減速し、やがて停止する。移動後の状態を
図8に示す。
【0034】
以上により、様々なタイプのブレーキが考えられることが明らかであるが、それぞれのタイプは、吊り上げ要素2を拘束した後、吊り上げ要素2に対して杭打ち機6の移動を可能にする一方、制御された方法で結果として生じる動きを制動する役割を果たす。実際、杭打ち機6が自由落下した後にクレーン4に衝撃荷重を発生させるピーク加速度は、衝撃の持続時間を延長することによって減少する。
【0035】
本発明は、図面に示され、これまでに説明された実施形態に限定されず、特許請求の範囲およびそれらの技術的同等物の範囲内で異なる方法で変更され得る。
【符号の説明】
【0036】
1 杭打ちシステム
2 吊り上げ要素
3 巻上ケーブル
4 クレーン
5 バージ
6 杭打ち機
7 移行シリンダー
8 摺動部材,ロッド
9 シリンダー
10 摺動部材,摩擦ブロック
11 油圧チャンバ
18 摺動部材,摩擦ブロック
19 摺動部材,突出リブ
20 バネ
21 ハンマークランプ
22 スライダー
23 摺動部材,摩擦ブロック
24 摺動部材,ロッド,
25 油圧チャンバ
26 下部ヨーク
27 ハウジング
28 上部ヨーク
29 バー