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  • 特許-帯電ローラ及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】帯電ローラ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G03G15/02 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021527322
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2019048439
(87)【国際公開番号】W WO2020255449
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019112083
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】奥元 佳織
(72)【発明者】
【氏名】大津留 真
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032821(JP,A)
【文献】特開2018-060162(JP,A)
【文献】特開2015-212812(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135324(WO,A1)
【文献】特開2013-120361(JP,A)
【文献】特開2007-248945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、該シャフトの外周側に、少なくとも、基層と、ローラ表面を構成する表層とを備えた帯電ローラであって、
前記表層は、バインダ樹脂及び粒子を含み、該粒子は、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分を50質量%以上含有し、
前記表層における前記粒子の含有量が、前記バインダ樹脂100質量部に対して30~120質量部であり、
前記粒子の含有する、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分が、アクリルモノマーであることを特徴とする、帯電ローラ。
【請求項2】
前記粒子の平均粒径が、3~30μmであることを特徴とする、請求項1に記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記基層が、紫外線硬化性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の帯電ローラ。
【請求項4】
前記アクリルモノマーが、多官能のアクリレートを含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の帯電ローラ。
【請求項5】
前記多官能のアクリレートが、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートであることを特徴とする、請求項に記載の帯電ローラ。
【請求項6】
前記表層のバインダ樹脂が、ウレタンアクリレートオリゴマーと、光重合開始剤と、導電剤と、アクリルモノマーと、を含む紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の帯電ローラ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の帯電ローラを備えることを特徴とする、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ローラ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真装置では、まず、感光体の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成する静電潜像プロセスにより静電潜像を得た後、トナーの付着によりトナー像を形成し、紙等の記録媒体にトナー像を転写することによって、プリントを行う方法が用いられている。
【0003】
この場合、最初の感光体を帯電させる操作としては、従来、コロナ放電方式が一般に採用されていた。しかし、コロナ放電方式は6~10kVもの高電圧印加が必要とされるために、機械の安全保守の観点から好ましくなく、また、コロナ放電中にオゾン、NOX等の有害物質が発生するために、環境上の問題もあった。このため、コロナ放電に比べて低い印加電圧で帯電を行うことができ、かつ、オゾン等の有害物質の発生を抑制することができる新たな帯電方式への取り組みがなされている。具体的には、電圧を印加した帯電用部材を感光体等の被帯電体に所定の圧力で接触させることにより被帯電体を帯電させる、接触方式による帯電方法が提案されている。
【0004】
この接触帯電方式で使用される帯電部材としては、例えば、シャフトの外周側に、ゴムやウレタンフォーム等からなる導電性弾性層(基層)を形成し、さらに、表面性の改良のための表層を設けた多層構造からなる帯電ローラが知られている。そして、表面粗さを制御し、高い放電特性を得ることを目的として、帯電ローラの表層中に樹脂等からなる粒子を含有させる技術が知られている。
【0005】
上述した表層中に粒子を含有させる技術としては、例えば特許文献1には、シャフトの外側に1層以上の樹脂層を設け、微粒子が樹脂100重量部に対して、0.1~100重量部配合されている現像ローラ、が開示されている。
また、特許文献2には、表層にフッ素を含有する真球状のアクリル粒子が、樹脂100質量部に対して10質量部以上配合されている帯電ローラ、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-65188号公報
【文献】特開2013-142879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、特許文献1及び2に開示された技術については、帯電ローラが感光体と当接した際、表層中の粒子に負荷が加わり、粒子が帯電ローラの表層から脱離する場合があった。粒子が帯電ローラの表層から脱離した場合、所望の帯電性が得られず、画像品質の低下を招くおそれもあることから、粒子の脱離を抑制できる技術の開発が望まれていた。
【0008】
そのため、本発明の目的は、画像品質に優れるとともに、表層中の粒子の脱離を抑制できる、帯電ローラを提供することにある。また、本発明の他の目的は、帯電ローラの表層中の粒子の脱離を抑制でき、画像品質に優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の帯電ローラは、シャフトと、該シャフトの外周側に、少なくとも、基層と、ローラ表面を構成する表層とを備えた帯電ローラであって、
前記表層は、バインダ樹脂及び粒子を含み、該粒子は、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分を50質量%以上含有することを特徴とする。
上記構成を具えることによって、表層中に含有される粒子の脱離を抑制できるとともに、画像品質に優れた帯電ローラを提供できる。
【0010】
また、本発明の帯電ローラについては、前記粒子の含有する、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分が、アクリルモノマーであることが好ましい。表層中の粒子の脱離抑制効果と画像品質とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0011】
さらに、本発明の帯電ローラについては、前記粒子の平均粒径が、3~30μmであることが好ましい。表層中の粒子の脱離抑制効果と画像品質とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0012】
また、本発明の帯電ローラについては、前記表層における前記粒子の含有量が、前記バインダ樹脂100質量部に対して30~120質量部であることが好ましい。表層中の粒子の脱離抑制効果と画像品質とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0013】
さらに、本発明の帯電ローラについては、前記基層が、紫外線硬化性樹脂を含むことが好ましい。画像品質をより向上できるためである。
【0014】
また、本発明の帯電ローラについては、前記アクリルモノマーが、多官能のアクリレートを含有することが好ましく、該多官能のアクリレートが、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートであることがより好ましい。表層中の粒子の脱離抑制効果と画像品質とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0015】
さらにまた、本発明の帯電ローラについては、前記表層のバインダ樹脂が、ウレタンアクリレートオリゴマーと、光重合開始剤と、導電剤と、アクリルモノマーと、を含む紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の帯電ローラ。
【0016】
本発明の画像形成装置は、上述した本発明の帯電ローラを備えたことを特徴とする。
上記構成によって、帯電ローラの表層中の粒子の脱離を抑制できるとともに、優れた画像品質を実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画像品質に優れるとともに、表層中の粒子の脱離を抑制できる、帯電ローラを提供することができる。また、本発明によれば、帯電ローラの表層中の粒子の脱離を抑制でき、画像品質に優れた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の帯電ローラの一実施形態を、模式的に示した断面図である。
図2】本発明の帯電ローラの一実施形態における表層の一部を、模式的に示した断面図である。
図3】本発明の画像形成装置の一実施形態を、模式的に示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の帯電ローラは、シャフトと、該シャフトの外周側に、少なくとも、基層と、ローラ表面を構成する表層とを備えた帯電ローラであって、前記表層は、バインダ樹脂及び粒子を含み、該粒子は、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分を50質量%以上含有することを特徴とする。
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、必要に応じて図面を用いて説明する。
ここで、図1は、本発明の帯電ローラの一実施形態を、模式的に示した断面図であり、図2は、本発明の帯電ローラの一実施形態について、表層の一部を拡大し、模式的に示したものである。
<帯電ローラ>
本実施形態の帯電ローラは、図1に示すように、シャフト2と、該シャフト2の外周側に、少なくとも、基層3と、ローラの表面を構成する表層4とを備えた帯電ローラ1である。
【0021】
そして、本実施形態では、前記表層4は、図2に示すように、バインダ樹脂41及び粒子42を含み、該粒子42は、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分(図2では「A]として示している。)を50質量%以上含有し、前記表層における前記粒子の含有量が、前記バインダ樹脂100質量部に対して30~120質量部である。
【0022】
本実施形態の帯電ローラ1では、前記粒子42が、前記バインダ樹脂41中の成分Aと同じ成分を一定量(50質量%)以上含有するとともに、粒子42の含有量を適正範囲に規定することによって、前記粒子42と前記バインダ樹脂41との相溶性が改善され、前記粒子42と前記バインダ樹脂41との接着性が高まる結果、粒子42の脱離抑制効果を大きく向上できる。その結果、本実施形態の帯電ローラ1は、ローラ中に粒子42を含むことによる画像品質向上効果を、長期間維持することが可能となる。
一方、従来の帯電ローラでは、前記粒子42と前記バインダ樹脂41との相溶性が高くないため、十分な粒子の脱離抑制効果を得ることができない。
【0023】
以下、本実施形態の帯電ローラの各構成部材について説明する。
(表層)
本実施形態の帯電ローラ1を構成する表層4は、図1に示すように、前記基層3上に、直接又は任意の中間層を介して形成される層である。
前記表層4は、図2に示すように、バインダ樹脂41及び粒子42を含み、該粒子42は、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分(図2では「A]として示している。)を50質量%以上含有する。これによって、前記粒子42が前記バインダ樹脂41から脱離するのを効果的に抑制できる。同様の観点から、前記粒子42は、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分を、70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0024】
ここで、前記粒子が含有する、「バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分」とは、分類上、同じグループに属するだけでなく、前記バインダ樹脂が含有している成分のうちの少なくとも一種と組成が同じものを意味する。
【0025】
また、図2に示すように、前記表層4が粒子42を含むことによって、感光体を帯電させるため、帯電ローラ1を感光体に接触させた際、前記表層4の表面の多数の粒子が感光体の表面と当接して、帯電ローラ1と感光体の間に、多数の粒子で支持されて形成される微小なギャップ(隙間)を存在させやすくなる。その結果、前記微小なギャップ(隙間)によって、電圧が印加された帯電ローラ1から感光体へ均一に放電が起きるため、画像品質についても向上できる。
【0026】
前記表層中の粒子を構成する材料については、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分を50質量%以上含有していれば特に限定はされない。前記粒子の材料として、例えば、アクリルモノマー、アミン、メラミン等が挙げられる。
これらの中でも、前記表層は、表層中の粒子の脱離抑制効果と画像品質とを、より高いレベルで両立できる観点から、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分が、アクリルモノマーであることが好ましい。
【0027】
さらに、前記粒子の含有する、前記バインダ樹脂を構成する成分のうちから選択される少なくとも一種と同一の成分は、アクリルモノマーの中でも、多官能アクリレートであることが好ましく、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートであることがより好ましい。表層中の粒子の脱離抑制効果と画像品質とを、さらに高いレベルで両立できるためである。
なお、前記アクリルモノマーの種類等については、後述するバインダ樹脂中のアクリルモノマーの中で説明している。
【0028】
なお、前記粒子については、1種類の粒子とすることもできるが、複数種類の粒子の混合物とすることもできる。ただし、複数種類の粒子の混合物とする場合には、いずれの種類の粒子についても、前記バインダ樹脂を構成する成分と同一の成分を50質量%以上含有する必要がある。
【0029】
また、本実施形態では、前記粒子の平均粒径が、3~30μmであることが好ましく、より好ましくは6~10μmであり、さらに好ましくは10~28μmである。粒子の平均粒径を3μm以上とすることにより、帯電ローラと感光体との間の微小なギャップの距離を適度にしつつ、微小なギャップを表層上に十分均一に形成しやすくなる。また、前記粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、粒径が大きい粒子において帯電ローラから感光体へ放電が起きず、白抜けと呼ばれる現象が生じ得、その結果、画像解像度が低下するおそれがある。しかし、粒子の平均粒径を30μm以下とすることにより、前記帯電ローラから感光体への放電を適切に起こすことができるので、画像解像度を効果的に確保することができる。
なお、前記粒子の平均粒径は、前記表層に含まれる粒子が複数種類の粒子の混合よりなる場合には、当該複数種類の粒子が混合された状態で測定された平均粒径とする。また、前記粒子の平均粒径については、レーザー回折・散乱法によって求められる体積平均粒径(Mv)を意味している。前記粒子の平均粒径は、表層4に含まれる粒子が複数種類の粒子の混合よりなる場合(表層に含まれる粒子の粒径分布曲線の形状が多峰性である場合)には、当該複数種類の粒子が混合された状態で測定された平均粒径とする。
【0030】
また、前記表層中に含有される前記粒子の含有量は、前記バインダ樹脂100質量部に対して、30~120質量部であることを要する。前記粒子の含有量を、前記バインダ樹脂100質量部に対して30質量部以上とすることにより、微小なギャップを帯電ローラの表層に設けることができ、画像品質について向上を図ることができ、前記粒子の含有量を、前記バインダ樹脂100質量部に対して120質量部以下とすることにより、前記粒子の脱離をより効果的に抑制できるためである。
同様の観点から、前記粒子の含有量は、前記バインダ樹脂100質量部に対して好ましくは50~100質量部であり、より好ましくは60~90質量部である。
【0031】
ここで、本実施形態の帯電ローラ1においては、図2に示すように、前記表層4が、前記粒子42に加えて、バインダ樹脂41を含む。該バインダ樹脂41は、前記表層4の基材となる成分である。
前記バインダ樹脂41及び前記粒子42を含む表層4については、例えば後述する層形成用原料から形成することができる。
【0032】
前記層形成用原料は、前記粒子を含む。さらに、前記層形成用原料は、前記バインダ樹脂を構成する成分として、前記粒子の50質量%以上を占める成分と同一である成分、また、その他にも、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマーと、光重合開始剤と、導電剤とを含む紫外線硬化型樹脂組成物を含むことができる。なお、この層形成用原料には、本発明の目的を害しない限り、種々の添加剤を配合することができる。
【0033】
ここで、前記層形成用原料に用いるウレタンアクリレートオリゴマーとしては、ポリオールとして、下記式(I)、
(式中、xはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)であり、yはポリオールの総不飽和度(meq/g)である)を満足する高純度ポリオールを、単独で、または、他のポリオールとともに用いて合成され、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)を1つ以上有し、ウレタン結合(-NHCOO-)を複数有する化合物を用いることができる。かかるウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、(i)高純度ポリオール単独又は高純度ポリオールおよび他のポリオールの混合物と、ポリイソシアネートとから合成したウレタンプレポリマーに、水酸基を有するアクリレートを付加させたり、(ii)高純度ポリオール単独または高純度ポリオールおよび他のポリオールの混合物とポリイソシアネートとから合成したウレタンプレポリマーと、他のポリオールとポリイソシアネートとから合成したウレタンプレポリマーとの混合物に水酸基を有するアクリレートを付加させることで合成することができる。なお、ウレタンプレポリマーの合成に用いる高純度ポリオールは、例えば、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、複合金属シアン化物錯体、セシウム化合物等の触媒の存在下、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびこれらにアルキレンオキシドを反応させて得られる化合物等の多価アルコールに、プロピレンオキシドやエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させて合成することができ、不飽和末端等のモノオール副生物が少なく、従来のポリオールに比べて高純度である。
【0034】
前記式(I)の関係を満たす高純度ポリオールを用いて合成したウレタンアクリレートオリゴマーを用いて紫外線照射により層を形成することで、圧縮残留歪を低減しつつ、帯電ローラの隣接部材に対する汚染性を低減することができる。かかる効果を得る観点から、上記高純度ポリオールの総不飽和度は、0.05meq/g以下であることが好ましく、0.025meq/g以下であることがより好ましく、0.01meq/g以下であることがさらに好ましい。
【0035】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーの合成に用いる高純度ポリオールは、重量平均分子量(Mw)が1,000~16,000であることが好ましい。高純度ポリオールの分子量を1,000以上とすることで、層の硬度を低く抑えて、良好な画像性を確保することができるものとなり、一方、16,000以下とすることで、圧縮残留歪の増大を抑えて、帯電ローラの変形に起因する画像不良の発生を抑制することができる。
【0036】
また、前記ウレタンアクリレートオリゴマーの合成において、前記高純度ポリオールとともに用いることができる他のポリオールは、水酸基(OH基)を複数有する化合物であり、かかるポリオールとして、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、アルキレンオキサイド変性ポリブタジエンポリオールおよびポリイソプレンポリオール等が挙げられる。なお、前記ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させて得られる。また、前記ポリエステルポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多価カルボン酸とから得られる。これらポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0037】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーの合成において、前記高純度ポリオール(a1)とともに他のポリオール(a2)を使用する場合、高純度ポリオール(a1)と他のポリオール(a2)との質量比(a1/a2)は、100/0~30/70の範囲にあることが好ましい。高純度ポリオール(a1)と他のポリオール(a2)との総量(a1+a2)に占める高純度ポリオール(a1)の割合を30質量%以上とすることで(すなわち、他のポリオール(a2)の割合を70質量%以下とすることで)、層の圧縮残留歪を低減しつつ、感光体等の隣接部材に対する汚染性を十分に低減することができる。
【0038】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーの合成においては、ウレタン化反応用の触媒を用いることが好ましい。かかるウレタン化反応用触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類;テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類;ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類;トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール、ピリジン等の環状アミン類;ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類;p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート、水酸化リチウム、アルミニウムアルコラート、水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマス化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これら触媒の中でも、有機スズ化合物が好ましい。これら触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記触媒の使用量は、前記ポリオール100質量部に対して0.001~2.0質量部の範囲が好ましい。
【0039】
また、上記ウレタンアクリレートオリゴマーの合成に用いることができる水酸基を有するアクリレートは、水酸基を1つ以上有し、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)を1つ以上有する化合物である。かかる水酸基を有するアクリレートは、前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に付加することができる。水酸基を有するアクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これら水酸基を有するアクリレートは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
前記層形成用原料に用いる光重合開始剤は、紫外線を照射されることによって、上述したウレタンアクリレートオリゴマー、さらには後述するアクリルモノマーの重合を開始させる作用を有する。かかる光重合開始剤としては、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノンおよび4,4-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジルおよびベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体;ベンゾインおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体;ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントンおよびチオキサントン誘導体;フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記層形成用原料に含む導電剤は、層に導電性を付与する作用を有する。かかる導電剤としては、紫外線を透過できるものが好ましく、イオン導電剤や透明な電子導電剤を用いることが好ましく、イオン導電剤を用いることが特に好ましい。イオン導電剤は、前記ウレタンアクリレートオリゴマーに溶解する上、透明性を有するため、導電剤としてイオン導電剤を用いた場合、シャフト上に層形成用原料を厚く塗布しても、紫外線が十分に内部まで到達し、層形成用原料を十分に硬化させることができる。ここで、イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。また、透明な電子導電剤としては、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物の微粒子;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属の微粒子:導電性酸化チタンウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。さらに、電子導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック、酸化処理等を施したカラー用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト等を使用してもよい。これら導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記層形成用原料は、さらに、アクリルモノマーを含むことが好ましい。前記バインダ樹脂中にアクリルモノマーが含有されることとなり、前記粒子がアクリルモノマーを含有する場合、前記粒子との相溶性が高くなり、粒子の脱落抑制効果をより向上できる。ここで、前記アクリルモノマーについては、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)を1つ以上有するモノマーであり、反応性希釈剤として作用し、すなわち、紫外線で硬化することに加え、層形成用原料の粘度を低下させることが可能である。アクリルモノマーは、官能基数が1.0~10であることが好ましく、1.0~3.5であることがより好ましい。また、アクリルモノマーは、分子量が100~2,000であることが好ましく、100~1,000であることがより好ましい。
【0043】
ここで、前記アクリルモノマーとしては、イソシアヌル酸トリアクリレート、イソミリスチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これらアクリルモノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、前記アクリルモノマーについては、上述した中でも、多官能のアクリレートを含有することがより好ましい。多官能アクリレートにより合成された粒子は、官能アクリレートから合成された粒子よりも硬度が高くなるため、帯電ローラと感光体との間の微小なギャップの距離をより適度に保つことが出き、より優れた画像品質が得られる。
【0044】
前記多官能のアクリレートの種類については、特に限定はされない。例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、表層中の粒子の脱離抑制効果と画像品質とを、より高いレベルで両立できる観点からは、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートを用いることがさらに好ましい。
【0045】
また、前記層形成用原料における、前記光重合開始剤の配合量は、前記ウレタンアクリレートオリゴマーと前記アクリルモノマーとの合計100質量部に対して、0.2~5.0質量部の範囲が好ましい。光重合開始剤の配合量を0.2質量部以上とすることで、層形成用原料の紫外線硬化を開始させる効果を確実に得ることができ、一方、5.0質量部以下とすることで、圧縮残留歪等の物性の低下を抑制して、層形成用原料のコスト性も高めることができる。
【0046】
さらに、前記層形成用原料における、導電剤の配合量は、前記ウレタンアクリレートオリゴマーと前記アクリレートモノマーとの合計100質量部に対して、0.1~5.0質量部の範囲が好ましい。導電剤の配合量を0.1質量部以上とすることで、層の導電性を十分に確保して、帯電ローラに所望の導電性を付与することができ、一方、5.0質量部以下とすることで、層の導電性を適切に抑えて、圧縮残留歪等の物性の低下を抑制し、良好な画像を確保することができる。
【0047】
さらに、前記表層は、厚さが5~10μmであることが好ましい。表層の厚さが5μm以上であれば、粒子を十分に保持しやすくなり、一方、10μm以下であれば、表層の表面から露出せず内部に内包される粒子を低減することができる。
【0048】
(基層)
本実施形態の帯電ローラ1は、図1に示すように、シャフト2の径方向外側に位置する基層3を備える。前記基層3を形成する層形成用原料としては、前記表層4が含有する粒子を必須の成分としないこと以外は、前記表層4を形成するのと同様の層形成用原料を用いることができる。
【0049】
前記層形成用原料により形成される基層は、アスカーC硬度が30~70度であることが好ましい。ここで、アスカーC硬度は、高さ12.7mm、直径29mmの円柱状サンプルの平面部分を測定した際の値である。アスカーC硬度が30度以上であれば、帯電ローラとして十分な硬度を確保することができ、一方、70度以下であれば、他のローラやブレードとの追従性が良好となる。
【0050】
また、前記基層は、圧縮残留歪(圧縮永久歪)が3.0%以下であることが好ましい。ここで、圧縮残留歪は、JIS K 6262(1997年)に準拠して測定でき、具体的には、高さ12.7mm、直径29mmの円柱状サンプルに対し、規定の熱処理条件(70℃で22時間)の下、サンプルを高さ方向に25%圧縮して求めることができる。基層の圧縮残留歪が3.0%以下であると、帯電ローラ表面に他部材による圧接痕が発生し難くなり、形成した画像にスジ状の画像不良が発生し難くなる。
【0051】
さらに、前記基層は、厚さが1~3,000μmであることが好ましい。前記基層の厚さが1μm以上であれば、帯電ローラが十分な弾性を有するものとなり、一方、前記基層の厚さが3,000μm以下であれば、紫外線照射において基層の深部まで紫外線が十分に到達し、層形成用原料を確実に紫外線硬化させることができ、高価格である紫外線硬化樹脂原料の使用量を少なくすることができる。
【0052】
さらにまた、前記基層は、特に限定されるものではないが、固有抵抗が104~108Ωであることが好ましい。ここで、固有抵抗値は、平板または円筒状の対極に、前記シャフト上に前記基層のみ形成したローラの外周面を所定圧力で押し当て、シャフトと対極との間に300Vの電圧を印加し、その際の電流値から求めることができる。
【0053】
なお、前記基層は、特に限定はされないが、紫外線硬化性樹脂を含むことが好ましい。前記基層を短時間かつ確実に作製できるためである。
前記層形成用原料により前記基層を形成する場合、本実施形態の帯電ローラは、シャフトの外表面に前記層形成用原料を塗布した後、紫外線照射することにより基層を形成し、さらに、形成された基層の表面に、前記複数の粒子を含む前記層形成用原料を塗布し、紫外線照射して表層を形成することにより、容易に作製することができる。
そのため、本実施形態の帯電ローラは、大量の熱エネルギーを必要とせず、短時間で製造することが可能となる。また、製造にキュアー炉等が不要であるため、多額の設備費用を必要としない。なお、前記層形成用原料をシャフト2の外表面または基層3の表面に塗布する方法としては、スプレー法、ロールコーター法、ディッピング法、ダイコート法等が挙げられる。また、紫外線照射に用いる光源としては、水銀灯、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。紫外線照射の条件は、層形成用原料に含まれる成分、組成および塗布量等に応じて適宜選択され、照射強度や積算光量等を適宜調整すればよい。
【0054】
また、本実施形態の帯電ローラにおいては、前記基層を、ポリウレタンフォームにより形成することもできる。この場合、例えば、後述する金属シャフト2A(図1を参照。)の半径方向外側に、ポリウレタンフォームからなる基層を直接担持させることができる。
【0055】
なお、前記基層を構成することができるポリウレタンフォームに用いるポリウレタン樹脂としては、従来公知の材料を適宜選択して用いることができ、特に制限されるものではない。また、ポリウレタンフォームの発泡倍率としては、特に制限されるものではないが、1.2~50倍、特には1.5~10倍程度が好ましく、フォーム密度は、0.1~0.7g/cm3程度が好ましい。
【0056】
また、前記基層を構成することができるポリウレタンフォームには、導電剤を添加することができ、これにより、導電性を付与し、または調整して、所定の抵抗値とすることができる。かかる導電剤としては、特に限定されず、上述した紫外線硬化型樹脂に配合できるのと同様の導電剤を単独で、または、2種以上を混合して、適宜使用することができる。また、これら導電剤の配合量は、要求される性能に応じて適宜選定され、例えば、基層3の固有抵抗が前述の範囲となるように調整される。
【0057】
さらに、前記基層には、前記導電剤の他にも、必要に応じて、耐水化剤、湿潤剤、発泡剤、整泡剤、硬化剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、成膜助剤等の公知の添加剤を適量配合することができる。
なお、この場合の前記基層の厚さとしては、1.0~5.0mmであることが好ましく、1.0~3.0mmであることがより好ましい。前記基層の厚さを上記範囲とすることで、スパーク放電を防止することができる。
【0058】
前記ポリウレタンフォームにより基層を形成する場合、本実施形態の帯電ローラは、シャフト2の外周に、円筒状モールドを用いた型成形等によりポリウレタンフォームを担持させた後、このポリウレタンフォームからなる基層の表面に、上記の粒子を含む上記層形成用原料を塗布し、紫外線照射して表層を形成することにより、作製することができる。この場合の、上記層形成用原料の塗布方法、紫外線照射用の光源および照射条件としては、前述と同様とすることができ、特に制限されない。
【0059】
(その他の層)
なお、本実施形態の帯電ローラについては、前記基層と前記表層との間に中間層等のその他の層を設けることができる。その他の層を構成する材料については特に制限はなく、例えば、湿気硬化性の樹脂を使用してもよいし、アクリレートを含むオリゴマーにアクリロイルモルフォリンモノマーなどのアミド含有モノマーを配合した紫外線硬化性の樹脂を使用してもよい。
【0060】
また、本実施形態の帯電ローラは、固有抵抗が104~108Ωであることが好ましい。ここで、固有抵抗は、平板または円筒状の対極にローラの外周面を所定圧力で押し当て、シャフトと対極との間に300Vの電圧を印加し、その際の電流値から求めることもできる。
【0061】
(シャフト)
本発明の帯電ローラは、図1に示すように、シャフト2を備える。前記シャフト2を構成する材料は、良好な導電性を有する限り、特に制限はなく、例えば、金属からなるシャフト2Aのみから構成されても良いし、高剛性の樹脂基材2Bのみからなるシャフト、又は、これら(金属からなるシャフト2A、高剛性の樹脂基材2B)の組み合わせとすることができる。また、内部を中空にくりぬいた金属製又は高剛性樹脂製の円筒体とすることもできる。
【0062】
なお、前記シャフトに高剛性の樹脂を使用する場合、高剛性樹脂に導電剤を添加・分散させて、十分に導電性を確保することが好ましい。ここで、高剛性樹脂に分散させる導電剤としては、カーボンブラック粉末やグラファイト粉末、カーボンファイバー、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末等の粉末状導電剤が好ましい。これら導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電剤の配合量は、特に制限されるものではないが、高剛性樹脂の全体に対して5~40質量%の範囲が好ましく、5~20質量%の範囲がより好ましい。
【0063】
前記金属シャフトや金属製円筒体の材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられ、これらに対して、亜鉛やニッケル等のめっきを施したものでもよい。また、上記高剛性の樹脂基材2Bの材質としては、ポリアセタール、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド12、ポリアミド4・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミドMXD6、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアセタール、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートが好ましい。これら高剛性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
前記シャフト2が、金属シャフト2A又はその外側に高剛性の樹脂基材2Bを配設したシャフトである場合、金属シャフト2Aの外径は、4.0~8.0mmの範囲が好ましい。また、前記シャフト2が、金属シャフト2Aの外側に高剛性の樹脂基材2Bを配設したシャフトである場合、樹脂基材2Bの外径は、10~25mmの範囲が好ましい。なお、前記シャフト2に高剛性樹脂を使用することで、シャフト2の外径を大きくした場合であっても、シャフト2の質量の増加を抑制することができる。
【0065】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した本発明の帯電ローラを備えたことを特徴とする。
画像形成装置中に、上述した本発明の帯電ローラを備えることによって、帯電ローラの耐久性を高めることができるとともに、優れた画像品質を実現できる。
【0066】
ここで、図3は、本発明の画像形成装置の一実施形態を模式的に示したものであるが、本実施形態の画像形成装置では、静電潜像を保持した感光体10と、感光体10の近傍(図では上方)に位置して感光体10を帯電させるための帯電ローラ1と、トナー11を供給するためのトナー供給ローラ12と、トナー供給ローラ12と感光体10との間に配置された現像ローラ13と、現像ローラ13の近傍(図では上方)に設けられた成層ブレード14と、感光体10の近傍(図では下方)に位置する転写ローラ15と、感光体10に隣接して配置されたクリーニングローラ16と、を備えている。なお、
図示する画像形成装置は、さらに、画像形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。
【0067】
図3に示す画像形成装置では、まず、感光体10に帯電ローラ1を当接させて、感光体10と帯電ローラ1との間に電圧を印加し、感光体10を一定電位に帯電させた後、露光機(図示せず)により静電潜像を感光体10上に形成する。次に、感光体10と、トナー供給ローラ12と、現像ローラ13とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー供給ローラ12上のトナー11が現像ローラ13を経て感光体10に送られる。現像ローラ13上のトナー11は、成層ブレード14により、均一な薄層に整えられ、現像ローラ13と感光体10とが接触しながら回転することにより、トナーが現像ローラ13から感光体10の静電潜像に付着して、潜像が可視化される。潜像に付着したトナーは、転写ローラ15で紙等の記録媒体に転写され、転写後に感光体10上に残留するトナーは、クリーニングローラ16によって除去される。
【実施例
【0068】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
各サンプルの帯電ローラを製造するために用いた材料は、以下のとおりである。
(1)ウレタンアクリレートオリゴマー
2官能で分子量4,000の高純度ポリオール(プレミノールS-X4004、旭硝子(株)製、PO鎖からなるポリオール、水酸基価=27.9mgKOH/g、総不飽和度=0.007meq/g、式(I)の右辺(0.6/x+0.01)=0.03)100質量部、イソホロンジイソシアネート8.29質量部(イソシアネート基/ポリオールの水酸基=3/2=1.50(モル比))、およびジブチルスズジラウレート0.01質量部を加温撹拌混合しながら、70℃で2時間反応させて、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。さらに、このウレタンプレポリマー100質量部に2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2.88質量部を撹拌混合し、70℃で2時間反応させて、分子量が9,000のウレタンアクリレートオリゴマーを合成した。得られたウレタンアクリレートオリゴマーは、B型粘度計で測定した25℃での粘度が80,000mPas/secであった。
(2)光重合開始剤
IRGACURE 819(BASFジャパン(株)製)
(3)導電剤
導電剤(i):カリウム金属イオン
導電剤(ii):ケッチェンブラック(花王(株)製)
(4)アクリルモノマー
エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学(株)製「NKエステル A-9300」)
【0070】
(サンプル1~26)
続いて、各サンプルの帯電ローラの製造方法を説明する。
外径6.0mmの金属シャフト上の外表面に、上記のウレタンアクリレートオリゴマー100質量部に対し、上記の光重合開始剤3質量部と、上記の導電剤(i)3質量部とを配合して得られた層形成用原料をダイコーターにより厚さ1,500μmで塗布し、塗布しながらスポットUV照射により硬化して、基層を形成した。このようにして得られた基層形成済みローラに対し、さらに、窒素雰囲気下で回転させながら、UV照射強度700mW/cm2で5秒間UV照射した。
次いで、上記のウレタンアクリレートオリゴマー100質量部に対し、上記の光重合開始剤3質量部と、上記の導電剤(ii)3質量部と、上記のアクリルモノマー15質量部と、表1及び2に示す予め準備した種類・含有量の粒子(表1(サンプル1~20)では「粒子A」のみを含有し、表2(サンプル21~26)では「粒子A」及び「市販の粒子」を含有している。)と、を配合して層形成用原料を作製した。その後、作製した層形成用原料を上記で得た基層形成済みローラの表面にロールコーターにて塗布し、UV照射して、厚さ15μmにて表層を形成し、各サンプルの帯電ローラを得た。
【0071】
(評価)
作製した帯電ローラの各サンプルについて、複写機(サムスン社製「SLX-4300LX」)に組み込んだ状態で印刷を実施し、以下の評価を行った。
【0072】
(1)粒子の脱離
各サンプルの帯電ローラの粒子の脱離については、温度35℃、湿度80%の環境下に24時間放置後、5万枚印刷した後の帯電ローラの、軸方向中央の表面と、両端部からそれぞれ25mm隔離した位置の表面の3か所をレーザー顕微鏡(500倍)にて、粒子の脱離の有無(複数の粒子を含む場合にはそれぞれの粒子の脱離の有無)を観察し、下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○:粒子の脱離なし
×:粒子の脱離有り(一か所でも脱落あれば×)
【0073】
(2)画像品質
各サンプルの帯電ローラの画像品質については、5万枚印刷した後の、印刷画像に表示される横スジ(マイクロジッター)の状態を目視によって観察し、下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○:全く観察されない
△:薄い横スジがごく少量観察されるが、はっきりとした横スジは観察されない
×:はっきりとした横スジが観察される
【0074】
【表1】
【表2】
【0075】
表1の結果から、実施例の範囲に属する各サンプルの帯電ローラは、比較例の範囲に属する各サンプルの帯電ローラに比べて、表層中の粒子の脱落がなく、良好な結果を示すことがわかった。
また、表2の結果から、粒子を混合させた場合、バインダ樹脂中のアクリルモノマーと同様のアクリルモノマーを含有する粒子Aについては、脱離がないものの、市販の粒子については脱離していることがわかった。なお、画像品質については、粒子Aの含有量がバインダ樹脂100質量部に対して40質量%以上あれば、ある程度の画像品質が得られていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、画像品質に優れるとともに、表層中の粒子の脱離を抑制できる、帯電ローラを提供することができる。また、本発明によれば、帯電ローラの表層中の粒子の脱離を抑制でき、画像品質に優れた画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:帯電ローラ、 2:シャフト、 3:基層、 4:表層、 41:バインダ樹脂、 42:粒子、 10:感光体、 11:トナー、 12:トナー供給ローラ、 13:現像ローラ、 14:成層ブレード、 15:転写ローラ、 16:クリーニングローラ
図1
図2
図3