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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】コベチック材料
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/18 20220101AFI20240123BHJP
   C23C 4/04 20060101ALI20240123BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20240123BHJP
【FI】
B22F1/18
C23C4/04
B22F1/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021543202
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2020015133
(87)【国際公開番号】W WO2020214226
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】62/797,306
(32)【優先日】2019-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/839,995
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/868,493
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/460,177
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/903,649
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519124844
【氏名又は名称】ライテン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LYTEN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ストーウェル,マイケル ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ラニング,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ピーター トッド
(72)【発明者】
【氏名】クック,ダニエル
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537826(JP,A)
【文献】特開昭60-243275(JP,A)
【文献】特表2018-516311(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105965025(CN,A)
【文献】特開2015-222705(JP,A)
【文献】特開平06-124796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0265359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/18
B22F 9/08
C23C 4/134
C23C 16/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器であって、
炭化水素プロセスガスを受容するように構成された入口と、
前記入口に結合され、断面積および全長により定められたサイズを有する反応チャンバーであって、少なくとも部分的に、前記炭化水素プロセスガスに基づいて、プラズマおよび複数の炭素含有粒子を生成するように構成された、反応チャンバーと、
前記反応チャンバーに結合され、溶融金属により前記複数の炭素含有粒子を被覆することに基づいて、前記反応チャンバー内でコベチック材料を生成するように構成された溶融装置と、
前記反応チャンバーに結合され、前記コベチック材料を出力するように構成された出口と、
を有する、反応器。
【請求項2】
さらに、前記反応チャンバー内にマイクロ波エネルギーを放出するように構成された回路を有する、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記反応チャンバーは、前記マイクロ波エネルギーによる前記炭化水素プロセスガスの励起に応答して、前記プラズマおよび前記複数の炭素含有粒子を生成するように構成される、請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
前記溶融金属は、アルミニウム、銅または銀の1または2以上である、請求項1に記載の反応器。
【請求項5】
前記反応チャンバーの前記断面積は、前記反応チャンバーの前記全長に沿って、前記入口から遠ざかるとともに徐々に減少する、請求項1に記載の反応器。
【請求項6】
前記反応チャンバーは、
前記入口に近接する比較的高温に維持された第1の領域と、
前記出口に近接する比較的低温に維持された第2の領域と、
を有する、請求項1に記載の反応器。
【請求項7】
前記複数の炭素含有粒子の生成は、少なくとも部分的に、前記第1の領域における前記比較的高温と前記第2の領域における前記比較的低温の間の差に基づく、請求項6に記載の反応器。
【請求項8】
さらに、前記出口に結合されたトーチを有する、請求項1に記載の反応器。
【請求項9】
前記トーチは、金属プラズマトーチまたはマイクロ波プラズマトーチの1または2以上である、請求項8に記載の反応器。
【請求項10】
前記トーチは、前記出口に近接する前記反応チャンバーの一部に、イオン化炭素粒子またはプラズマラジカルの1または2以上を放射するように構成される、請求項8に記載の反応器。
【請求項11】
前記コベチック材料は、前記イオン化炭素粒子またはプラズマラジカルの少なくとも一部を有する、請求項10に記載の反応器。
【請求項12】
前記トーチは、前記イオン化炭素粒子からグラフェンを生成するように構成される、請求項10に記載の反応器。
【請求項13】
前記イオン化炭素粒子は、1または2以上の準安定炭素種を有する、請求項10に記載の反応器。
【請求項14】
前記反応チャンバーは、少なくとも部分的に、前記1または2以上の準安定炭素種に基づき、ナノ-炭素-金属複合構造を生成するように構成される、請求項13に記載の反応器。
【請求項15】
さらに、前記反応チャンバー内に電場を生成するように構成された、電極の組を有する、請求項1に記載の反応器。
【請求項16】
前記電場は、前記溶融金属を通る電流を生成するように構成される、請求項15に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許出願第16/460,177号、出願日2019年7月2日、名称「PLASMA SPRAY SYSTEMS AND METHODS」の一部継続出願であり、当該出願は、米国仮出願番号第62/720,677号、出願日2018年8月21日、名称「PLASMA SPRAY SYSTEMS AND METHODS」の優先権を主張するとともに、米国仮出願番号第62/714,030号、出願日2018年8月2日、名称「PLASMA SPRAY DEPOSITION」の優先権を主張し、ならびに、本出願は、米国仮出願番号第62/903,649号、出願日2019年9月20日の優先権を主張し、ならびに、本出願は、米国仮出願番号第62/868,493号、出願日2019年6月28日の優先権を主張し、ならびに、本出願は、米国仮出願番号第62/839,995号、出願日2019年4月29日の優先権を主張し、ならびに、本出願は、米国仮出願番号第62/797,306号、出願日2019年1月27日の優先権を主張し、これら出願は全て、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。
【0002】
本開示は、概して、コベチック(covetic)材料の作製及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
コベチック材料という用語は、ナノ規模寸法の炭素粒子と融合した金属を示す。コベチック材料は、従来の非炭素融合材料の能力を超える物理特性、化学特性、及び電気特性を多く備えていることから、様々な用途において望ましいものである。ただ、従来のコベチック材料製造技法から得られるコベチック材料は、上記の物理特性、化学特性、及び電気特性の多くを達成できずにいる。
【0004】
上記の物理特性、化学特性、及び電気特性を呈する材料への強い要望を前にしてさえ、多くの技術的困難により、コベチック材料の作製及び使用のための技術開発は妨げられてきた。そのような技術的困難は、複数の領域から生じるものであり、困難として、(1)高度の特異性を持つ個別化合物について炭素含有量を測定するのに必要な分析方法と微小構造またはナノ構造の特性決定法を組み合わせることの難しさ、(2)これまでに製造された試料で見られる含有炭素分布の比較的高い変動性、(3)特性測定における変動性及び潜在的予測不能性、(4)炭素粒子と粒子を取り囲むマトリクスの間で観察される強力な結合のまさに原因である科学的機構に関する不確実性、が挙げられる。
【0005】
コベチック炭素金属複合合金の製造に使用される従来の金属溶融法は、一貫性のない変換収率に苦しんでおり、一貫性のなさは、得られる材料の特性で観察される広い多様性の一因となっている。例えば、融液中の炭素分散における不規則性ゆえに、望ましくない集塊物形成及び望ましくないクラスター化が生じることが多い。金属中の炭素分散におけるそのような不規則性は、亀裂及び細孔の形成を招く可能性があり、これら亀裂及び細孔は、最終的に、得られる材料の早期不具合の原因となる。さらに、炭素の金属への溶解性が高いことで、金属が冷却され固化していくにつれて、金属表面での不均一な炭素成長(例えば、より厚くなる)がもたらされる場合がある。また、炭素の溶解性は、金属のバルク中よりも自由表面近くの方が高くなる場合があり、より高い溶解性が、融液空気界面での界面エネルギーと組み合わせられることで、融液空気界面での望ましくない析出に有利になってしまう。
【0006】
従来の熱利用金属溶融法によるコベチック炭素金属複合合金の製造は、現在のところ、得られるコベチック材料が望ましく調節されたまたは標的とする特性のセットを呈するように、プロセス条件を調節しやすくすることができていない。得られるコベチック材料が調節された特性のセットを呈するようにプロセス条件を制御することが不能であることは、そのような特定の特性セットを要求する特定用途にコベチック材料を応用することが(それに対応して)不能となることにつながる。必要とされているのは、ある範囲で調節可能な特性を呈するコベチック材料産物を製造する技術である。そのうえさらに、必要とされているのは、広範囲にわたる最終使用領域及び用途(例えば、材料強化から長寿性能の向上の範囲にわたる、企業間または企業消費者間使用など)で使用可能なコベチック材料産物である。
【発明の概要】
【0007】
この概要は、選定された概念を単純化した形で紹介するために提供され、当該概念は、以下の詳細な説明でさらに説明される。この概要は、特許請求される発明対象の重要な特徴または本質的特徴を特定することも意図しなければ、特許請求される発明の主題の範囲を限定することも意図しない。その上、本開示のシステム、方法、及びデバイスは、それぞれが、複数の革新的態様を有し、それらのどれか1つだけが、単独で本明細書中開示される望ましい属性を担うものではない。
【0008】
本明細書中開示される発明の主題の様々な実施形態は、概して、炭素金属複合材料の装置、方法、及び様々な組成に関する。様々な炭素金属結合組成物を生成するためのプラズマ溶射トーチ装置の制御された利用と関連する装置を、表示及び検討する。この炭素金属結合組成物を、概して、及び本開示において、「コベチック材料」と称する。
【0009】
プラズマ溶射トーチの1つの構成は、複数の溶融金属ナノ規模寸法粒子と混合される炭化水素プロセスガスを受け取るように構成された反応チャンバーと、反応チャンバーに電力を提供するように反応チャンバーと操作可能に連結されたマイクロ波エネルギー源と、ならびに炭化水素プロセスガスが解離してその構成炭素原子になるような、及び溶融金属ナノ規模寸法粒子上で炭素原子から単層グラフェン(SLG)または数層グラフェン(FLG)が成長して複数の炭素金属ナノ規模寸法粒子を形成するような条件を反応チャンバー中に作り出すようにマイクロ波エネルギー源を調節するコントローラと、を備える装置として実体化される。一部の構成において、反応チャンバー中の条件は、以下をもたらす:(i)炭素原子が溶融金属ナノ規模寸法粒子中に溶解する第一温度、及び(ii)溶解した炭素原子の少なくとも一部が、結晶学的配置で溶融金属と結び付く第二温度。装置の構成によっては、複数の炭素金属ナノ規模寸法粒子を冷却して粉末状にする冷却帯を利用し、この粉末状の粒子は、反応チャンバーの近くに並置される格納容器に収集され貯蔵される。
【0010】
本開示中記載される発明の主題の1つまたは複数の実施形態の詳細を、以下の添付の図面及び説明において説明する。他の特徴、態様、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかとなるだろう。なお、以下の図面の相対寸法は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【0011】
本明細書中開示される発明の主題の実施形態を、例示として図解するが、これらは、添付の図面の図により限定されることを意図しない。図面及び明細書全体を通じて、似たような数字は似たような構成要素を示す。なお、以下の図面の相対寸法は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。カラー図面を伴う本特許または特許出願公開の複写は、米国特許商標局に要求し、必要な料金を支払うことで、米国特許商標局から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】2種の異なるコベチック材料形成技法、及びそれぞれについて、一部の実施形態に従ってそれぞれから得られる材料例を示す、比較図である。
図1B】一部の実施形態による、高分解透過電子顕微鏡像114及び高分解エネルギー分散型X線分析像116を提示する。
図2】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させる製造プロセスを描写する。
図3】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるためにパルスマイクロ波エネルギー源をどのように使用するかを示すプラズマエネルギー状態図を描写する。
図4】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるために使用される電子温度制御技法を描写する。
図5】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるために使用される二重プラズマトーチ装置を図解する。
図6】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるように調節されるパルスマイクロ波プラズマ溶射トーチ装置を図解する。
図7】開示される実施形態の1つまたは複数による、コベチック体(または関連材料)、プラズマトーチ溶射、及び/または堅固に合成された複合体カーボンコーティングに関連する発明の主題の共通領域の共通集合を描写した図である。
図8A】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上に炭素粒子を溶射するために使用されるプラズマ溶射プロセスを描写した概要図である。
図8B】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上に炭素粒子を溶射するために使用されるプラズマ溶射プロセスを描写した概要図である。
図9】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上に炭素粒子を溶射することの効果を示す、走査型電子顕微鏡像である。
図10】開示される実施形態の1つまたは複数による、グラフェン成長温度プロファイル及び二元状態図を描写した図を示す。
図11】開示される実施形態の1つまたは複数による、プラズマ炎装置の横断面図である。
図12】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるときに使用されるパルスマイクロ波プロセスの流れを描写する。
図13】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるために使用されるパルスマイクロ波プラズマ溶射導波装置の斜視図である。
図14】開示される実施形態の1つまたは複数による、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるために使用されるマイクロ溶接技法の概要図である。
図15】開示される実施形態の1つまたは複数による、同軸構成のプラズマ溶射装置の概要図である。
図16】開示される実施形態の1つまたは複数による、一連の非平衡エネルギー状態を通じて加工することによる材料の進展を示すプラズマ溶射装置の概要図である。
図17】開示される実施形態の1つまたは複数による、溶融粒子上にグラフェンを成長させるための表面波プラズマシステムを描写する。
図18A1】開示される実施形態の1つまたは複数による、プラズマ溶射反応器の様々な構成を描写する。
図18A2】開示される実施形態の1つまたは複数による、プラズマ溶射反応器の様々な構成を描写する。
図18B】開示される実施形態の1つまたは複数による、プラズマ溶射反応器の様々な構成を描写する。
図18C】開示される実施形態の1つまたは複数による、プラズマ溶射反応器の様々な構成を描写する。
図18D】開示される実施形態の1つまたは複数による、プラズマ溶射反応器の様々な構成を描写する。
図19】開示される実施形態の1つまたは複数による、エネルギー対パルスオン及びパルスオフの間の時間を描写した図である。
図20A1】開示される実施形態の1つまたは複数による、プラズマ溶射トーチを使用して炭素と銅を組み合わせたときに生じる有機金属結合を描写した図である。
図20A2】開示される実施形態の1つまたは複数による、基材材料に施される傾斜組成物を描写するとともに複数(例えば、3つ)の材料特性帯を示す図である。
図20B】開示される実施形態の1つまたは複数による、炭素をバルクアルミニウムに付加したときに生じる複数積層構成を描写した材料進展図である。
図21A】ある実施形態に従って、材料の溶融混合物を基材に溶射する装置を描写する。
図21B-1】開示される実施形態の1つまたは複数による、コベチック材料を基材に溶射する方法を描写する。
図21B-2】開示される実施形態の1つまたは複数による、コベチック材料を基材に溶射する方法を描写する図21B-1に続く図である。
図21C】開示される実施形態の1つまたは複数による、皮膜を溶射するために使用されるプラズマ溶射プロセスの概要図である。
図22A】開示される実施形態の1つまたは複数による、炭素粒子を溶融金属で包むための装置を描写する。
図22B-1】開示される実施形態の1つまたは複数による、炭素粒子を溶融金属で包むための方法を描写する。
図22B-2】開示される実施形態の1つまたは複数による、炭素粒子を溶融金属で包むための方法を描写する図22B-1に続く図である。
図23A】開示される実施形態の1つまたは複数による、例示の堆積技法を描く。
図23B】開示される実施形態の1つまたは複数による、例示の堆積技法を描く。
図23C】開示される実施形態の1つまたは複数による、例示の堆積技法を描く。
図23D】開示される実施形態の1つまたは複数による、例示の堆積技法を描く。
図24】A及びBは、開示される実施形態の1つまたは複数による、材料を基材上に配置する従来の堆積技法を描く。
図25】A及びBは、開示される実施形態の1つまたは複数による、基材表面に共有結合をもたらす例示の堆積技法を描く。
図26A】アルミニウムの面心立方構造の正方形中の部位と炭素のある種の結晶学的構造に生じる六角形中の部位との間に、共有結合がどのように形成されるかを図解する概要図である。
図26B】アルミニウムの面心立方構造の正方形中の部位と炭素のある種の結晶学的構造に生じる六角形中の部位との間に、共有結合がどのように形成されるかを図解する概要図である。
図26C】アルミニウムの面心立方構造の正方形中の部位と炭素のある種の結晶学的構造に生じる六角形中の部位との間に、共有結合がどのように形成されるかを図解する概要図である。
図26D】アルミニウムの面心立方構造の正方形中の部位と炭素のある種の結晶学的構造に生じる六角形中の部位との間に、共有結合がどのように形成されるかを図解する概要図である。
図26E】アルミニウムの面心立方構造の正方形中の部位と炭素のある種の結晶学的構造に生じる六角形中の部位との間に、共有結合がどのように形成されるかを図解する概要図である。
図27A】開示される実施形態の1つまたは複数による、粉末状のコベチック材料を製造するための例示装置を描写する。
図27B1】開示される実施形態の1つまたは複数による、流体中で粉末コベチック材料を冷却し及び取り扱うための例示の流動床装置を描く。
図27B2】開示される実施形態の1つまたは複数による、流体中で粉末コベチック材料を冷却し及び取り扱うための例示の流動床装置を描く。
図27C】開示される実施形態の1つまたは複数による、粉末コベチック材料の製造に使用されるプラズマ溶射プロセスの概要図である。
図28-1】一部の実施形態に従って、射出成形技法を用いて粉末コベチック材料から構成要素を作製する方法を描く。
図28-2】一部の実施形態に従って、射出成形技法を用いて粉末コベチック材料から構成要素を作製する方法を描く図28-1に続く図である。
図29】コベチック材料の様々な特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の態様は、炭素系材料を溶融金属スラリーのバルクに混合することによるのではなく、溶射技法を用いてコベチック材料を製造するアプローチに関する。一部の実施形態は、格子間炭素構造の寸法をナノメートル(nm)規模に低下させる技法に関する。添付の図面及び本明細書中の検討は、「コベチック」材料を製造するための例示の環境、例示のシステム、及び例示の方法を提供し、これらの例示により、一般的に理解され及び本明細書中定義されるとおり、高濃度(>6重量%)の炭素が含まれ、溶融またはマグネトロンスパッタリング中に炭素が分離しない様式で金属(または金属含有材料)に組み込まれていることが暗に示されている。得られる材料は、その材料の原料となる土台金属に勝る独自の及び改善された特性を多数有する。炭素は、材料特性の改善に寄与する複数の様式で金属マトリクス中に分散される。炭素は、コベチック材料と非常に強力に結合し、その形状を検出及び特性決定する際の多くの標準的方法に耐えることが多い。ナノ規模の炭素を包含することで、融点及び表面張力が上昇する。コベチック体は、より高い温間加工強度及び冷間加工強度を有する。
【0014】
問題点及び機会の特定及び意義
金属マトリクス複合体は、(少なくとも)金属または金属合金(特に強度または耐食性を高めるために、2種以上の金属元素を組み合わせることにより作られた金属を示す)マトリクスを、より強度の高い弾性セラミック、カーボン系補強剤、あるいは連続または断続繊維、ウィスカー、もしくは粒子の形状のマイクロ充填剤と組み合わせて、構成することができる。ミクロン寸法の補強剤金属は、土台合金に勝る許容可能なレベルまで改善された強度及び剛性を呈することが可能であるとおり、補強剤の寸法は重要である。それにもかかわらず、加工中に粒子間の望ましくない集塊化が生じるために、そのような補強剤は、望ましくない乏しい延性ならびに望ましくない低い降伏強度、機械加工性、及び負荷限界での破壊靱性も伴う場合がある。不適合性ミクロン寸法補強剤を含む金属マトリクス複合体の早期ひび割れ及び他の欠点を回避するためには、補強相の寸法をナノメートル規模に低下させることが必須となる可能性がある。さらに、補強相が金属合金マトリクス中に組み込まれるような方法が必要である。
【0015】
機械特性、温度特性、電気特性、及び摩擦学的特性(相対運動における相互作用表面の科学及び工学を示す)の顕著な上昇が、上記の炭素系補強剤の付加に相応して観察されている。注目すべきは、補強剤の寸法がミクロン規模からナノ規模(例えば、<100nm)へと低下することで、マトリクスと粒子の間の凝集力が上昇することにより、そのような特性が、変化する及び/または改善する場合があることである。特性の改善は、効率的な強化機構を促進する強力な界面の形成に起因する可能性がある。引張強度及び降伏強度の向上が、ナノ寸法粒子(約20nm)とミクロン寸法粒子(約3.5μm)の対比で報告されたが、もっとも、桁数を同じにすると、ナノ寸法の粒子の添加体積はミクロン寸法粒子に比べて小さくなる。したがって、過去の技法は、ナノメートル規模では補強を提供することができない可能性がある。したがって、格子間の空孔を含んでいる炭素構造をナノメートル規模に縮小させることが現在必要とされている。
【0016】
マイクロ波(MW)プラズマトーチ反応器
マイクロ波(MW)プラズマトーチ反応器を用いて、原始3D数層グラフェン(FLG)粒子を、メタンガスなどの炭素含有種の大気圧蒸気流中で、連続して、例えばインフライトで核形成させることができ、この場合、そのような核形成は、最初に合成された炭素系のまたは炭素含有「たね」粒子から生じる。複数層のFLG(例えば、5~15層)で構成された、緻密に高度構造化された調節可能な3Dメソ多孔性炭素系粒子が炭素含有種から成長するときに、金属元素または金属系合金の同時混入が合わせて起こることで、少なくとも部分的に共有結合した(ならびに少なくとも部分的に、金属結合またはイオン結合した)炭素金属複合体が形成される。この炭素金属複合体は、本明細書中「コベチック」粒子構造体とも称する。一部の実施形態において、「原始」グラフェン(欠陥がほとんどまたはまったくないグラフェンを示す)は、記載されるMWトーチ反応器に提供されまたは反応器中で生成し、これは酸化されていないか、酸素を含有するとしてもごくわずかである(例えば、<1%)。一部の実施形態において、金属は、それ自体により(得られるコベチック材料において)、金属結合で互いに固定されており、炭素は、それ自体により(グラフェンまたは一部の他の組織化された炭素系2Dもしくは3D構造、例えばマトリクスまたは格子中に広く)、(主に)共有結合で互いに固定されている。複合炭素金属構造は、金属炭素界面で生じる炭素原子と金属原子の間の共有結合を含む場合がある。
【0017】
本開示のマイクロ波プラズマ利用反応器プロセスは、反応及び加工環境を提供し、この環境では、気固反応を、非平衡状態下で制御することができる(非平衡状態とは、熱力学的平衡にはないが、熱力学的平衡にある体系を規定するのに使用される変数の外挿を表す変数を単位として記載することが可能である物理系を示す。非平衡熱力学は、移動プロセス及び化学反応速度に関するものであり、金属粉末の初発溶融は、熱エネルギーと合わせてイオン化ポテンシャル及び運動量により独立して制御することができる)。インサイチュ(反応器または反応チャンバー内のその場であることを示す)での核形成後、固体、実質的に固体、または半固体の炭素系粒子は、プラズマトーチから出て、1層ずつ付加する様式で、温度制御された基材(ドラムなど)に堆積することができる。出てくる粒子は、特定の基材に溶射されて、基材上または基材中に結合することができる。場合によっては、基材を使用するのではなく、出てくる半固体粒子を集合させて、1つまたは複数の、方向が組織化された自立型自己支持型構造体を形成させる。標準的なプラズマトーチでは、操作の流れ、電力、及び構成に限界があるのとは異なり、本開示のマイクロ波プラズマトーチは、制御機構(例えば、流れ制御、電力制御、温度制御など)を備えることで、1つまたは複数の構成材料温度及び気固反応化学を独立して制御して、有利で驚くべき非常に高度の均一性を有する独特の緻密に高度組織化された共有結合炭素金属構造体を作り出す。
【0018】
本開示のMW反応器を利用した技法により生成するコベチック材料は、本開示以外では現在の材料または製品において得ることのできない様々な競争優位をもたらす。そのような利点の1つは、独特の、物理的及び化学的に安定した、汎用金属炭素複合体を配合できる固有の拡張性及び多用途性に関し、配合される汎用金属炭素複合体は、様々な構成及び/または構築物中で、予測可能な変形(応力、歪み、弾性、またはある種の他の確認可能な物理的特徴を示す)を呈し、構成及び/または構築物としては、例えば、以下がある(が、それらに限定されない):(1)高密度薄膜インプラント、(2)コーティング、(3)厚ストリップ材、及び(4)その後の再溶融及び鋳造を受け得る、及び/または工業用金属合金構成要素を形成するのに使用される、粉末粒子。上記の高密度薄膜MW反応器で製造された炭素系金属複合体インプラント、及び/またはコーティング、及び/またはストリップ材、及び/または粉末粒子のどれであっても、全て、既存の母材金属合金配合物と比較した場合に向上した物理特性、化学特性、及び電気特性を呈する。
【0019】
概要
本明細書中の開示は、グラフェンなどの低量ナノ充填剤炭素系材料と金属の統合について記載する。グラフェンは、その固有の構造的特徴で知られており、例えば、高いアスペクト比及び「2D」平面構造を有する。グラフェンは、その平面内spC=C結合(これが2D平面形状をもたらす)により、驚くほど好適な機械特性、物理特性、熱特性、及び電気特性を有する。したがって、グラフェンは、マイクロ充填剤のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維などの代替物と比較した場合に、金属マトリクス複合体にとって理想的な補強剤として機能すると思われる。なお、グラフェンナノプレートレット含有量(添加量)が低かったとしても、異方性(対象または物体が、異なる方向で測定したときに異なる値を示す物性を有することを示す)のある3Dネットワークが形成され、この結果、熱及び電気伝導性ならびに機械特性が顕著に改善される。
【0020】
金属マトリクス複合体に炭素ナノ充填剤を使用する際に遭遇する問題として、濡れ(液体が固体表面と接触を維持する能力を示し、2者が接触したときに分子間相互作用から生じ、濡れの度合いは、濡れ性と称し、これは接着力と粘着力の間の力の均衡により決定される)が乏しいために分散が困難であることが挙げられる。ナノ充填剤がもたらす表面積の増加は、粒子が集塊してクラスター化すること及び炭素原子間のファン・デル・ワールス力によるひねりを引き起こす。金属マトリクス複合体中のナノ充填剤の集塊物及びクラスター化は、望ましくない亀裂及び細孔の形成を招く可能性があり、亀裂及び細孔は、最終的に、得られる材料の構造完全性を損なって、高負荷または高使用条件下で早期不具合をもたらす可能性がある。
【0021】
金属マトリクス複合体の製造に多数の加工アプローチ、例えば、従来の粉末冶金、熱間圧延、鋳造、及び積層造形などが使用されてきた(そして現在も使用されている場合がある)ものの、依然として、ナノ充填剤の均一分散には問題がつきまとう。圧密中にかかる応力によるナノ充填剤の損傷、ならびに焼結及び鋳造中の高温でマトリクスと起こす望ましくないまたは制御不能な化学反応は、ナノ充填剤の分散を達成する試み中に直面する問題の一部の例である。
【0022】
グラフェンの無欠陥底面は、グラフェンシートの側部及び端部と比較して並外れて好ましい化学的安定性を呈する。側部及び端部は、底面より金属と相互作用しやすく、その結果カーバイドを形成する可能性がある(ギブス自由エネルギーにより熱力学的に好ましい)。しかしながら、加工中、欠陥は底面に容易に形成され、それがカーバイド形成及び複合体特性への悪影響を招く可能性がある。それゆえ、相対的に厳しい加工条件、例えば、高温及び高圧は、炭素ナノ充填剤とそれらを取り囲む金属系マトリクスの間の界面の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。具体的には、高温及び高圧は、濡れ性、構造完全性に悪影響を及ぼす可能性があり、カーバイド形成に望ましくない影響を及ぼす可能性があり、その他にも有害な界面反応を引き起こす可能性がある。
【0023】
コベチック体と称する(先に導入したとおり)代替プロセスを用いることで、炭素ナノ充填剤を金属マトリクスに組み込むことに成功した。コベチック関連プロセスでは、印加電界を使用することによりグラフェン「リボン」とナノ粒子のネットワークが液体金属内に形成されることが示されており、このネットワークは、再溶融後でさえ,金属マトリクス内で並外れた安定性を呈する。それに相応して、複合体構造は、母材金属よりも効率的に熱及び電気を伝導する。
【0024】
均一分散
グラフェンを金属マトリクス中に組み込む際の問題点の1つが、均一分散を達成することであったことから、コベチック体加工は、印加電界内のグラフェンリボン及び/または粒子の相伴う剥離及び濡れ(炭素電極からまたは炭素付加物の破壊からのいずれかによる)を通じてこの問題を克服する。酸素及び水素などの不純物は、粒子表面での酸化還元反応を介して管理することが可能であり、表面の誘導電圧が適切であると仮定すると、濡れ/分散を促進することが可能である。問題は、グラフェンリボン及び/または粒子の構造完全性及び均一性(例えば、寸法、欠陥などに関する均一性など)を制御すること、ならびに高温時に金属との化学反応性を制御すること、ならびにバルク中ならびに融液表面における粒子の分布を制御することのうちの1つである。
【0025】
さらなる複雑さ
金属におけるエネルギー伝導(熱及び電気の両方において)の基本的様式は、(少なくとも一部は)電子によって行われる可能性があり、グラフェンなどの充填剤の結晶性及び不純物の度合いにより制御されて金属マトリクス複合体の熱伝導度が向上するものの(伝導がグラフェン中の音子を介する場合)、金属格子(追加的にまたは代替的に、足場、マトリクス、または構造と称する)とのある程度の繋がり方(registry)及び/または干渉性(例えば、一体的に結合したナノ規模炭素)あるいはプレートレット間の伝導にとって限界となる最小限のプレートレット間隔(例えば、近接またはネットワーク)いずれかが存在することが必要である(例えば、グラフェンは、単層またはほんの数層であること、及び長さが10数ナノメートルであることを必要であろう)。しかしながら、金属マトリクスの強化に関しては、グラフェンは、適切な荷重伝達のためマトリクスと化学結合(または場合によっては、物理結合も)することが必要となる場合がある(なお、最大荷重伝達のためには、グラフェンの長さは、約0.5μmを超えることも可能である)。固溶強化は、炭素(グラフェン)ナノ充填剤と金属格子の間の粘着及び/または半粘着弾性ひずみに頼るが、これとは別に、離散したグラフェンナノ粒子は、結晶粒界で、転位の堆積またはピン止めに対する障壁として働く可能性があり(ホール・ペッチの結晶粒微細化など、これは、平均結晶子(粒)径を変更することによる材料強化法を示す。この方法は、結晶粒界が転位にとって乗り越えられない境界であるという知見、及び結晶粒内の転位数が、隣接する結晶粒中でどのように応力が構築されるかに影響し、これは最終的に転位源を活性化し、従って隣り合う結晶粒中での転位を可能にするという知見にも基づいている。そのため、粒径を変更することにより、結晶粒界での転位の堆積数に影響を及ぼし、強さをもたらすことが可能である)、これらは両方とも機械特性を改善する。
【0026】
またしても、グラフェンは、金属構造内のスリップ面に沿った整列に加えて、その2D性質及び広い表面積のおかげで、結晶粒界で領域に沿って方向を合わせることができる。関心対象の特性が、化学特性、機械特性、熱特性、電気特性のどれであるかに関わらず、ナノ充填剤の整列及び周囲の金属マトリクス結晶構造との繋がり方(registry)(原子レベルで)が大きくなるほど、金属マトリクス複合体構造の特性の安定性ならびに向上の仕方がより大きくなる。
【0027】
根本的に、炭素が、金属表面で成長する(異種性)のか、または、融液から析出する(同種性)のかは、炭素の金属に対する溶解性に依存する(図10の右側に示す二元状態図のとおり)。炭素の純遷移金属(及び概して多くの純金属)に対する溶解性は、例えば、金属の融点付近では非常に低いが、温度が、金属の融点を十分に上回るほど高くなれば(例えば、2,000℃以上)、溶解性も上昇する。炭素のニッケルに対する溶解性は、例えば、過共晶点付近で2.5%前後であるが、これは、純金属に対する炭素の溶解性の高い方のうちの1つである。なお、格子間不純物、例えば、酸素、ホウ素、もしくは窒素など、または置き換え原子を金属に加えると、炭素の溶解性に影響が出る可能性(例えば、上昇する可能性)がある。炭素の金属に対する溶解性が高くなるほど、または溶融金属の温度が高くなるほど、金属が冷却されて固化するときに金属表面に析出する炭素が厚くなることが示されている。注目すべき重要点として、炭素の溶解性は自由表面に近いほうが高く、このことは、液体空気界面の界面エネルギーと合わせて、金属融液空気界面での固形炭素の析出に有利に働く。この現象に付帯する問題を解消するための機器及び当該機器の操作技法については、図面及び対応する説明と関連させて取り上げる。
【0028】
定義及び図面の利用
参照しやすくするため、この説明で使用される用語の一部を以下に定義する。提示される用語及びそれらの個々の定義は、当該定義に厳密に限定されるのではない。ある用語は、本開示内でのその用語の使われ方によりさらに定義される場合がある。「例示の」という用語は、本明細書中、例、事例、または図解として機能することを意味するために使用される。本明細書中「例示の」として記載される態様または設計は、どれであっても、それが他の態様または設計よりも好適あるいは有利であるとは、必ずしも解釈すべきではない。そうではなくて、例示という語の使用は、具体的な様式で概念を提示することを意図する。本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または」という用語は、排他的「または」ではなく両立的「または」を意味することを意図する。すなわち、特に記載がない限り、または文脈から明らかではない限り、「Xは、AまたはBを利用する」は、自然な全てを含む変形のいずれかを意味することを意図する。すなわち、XがAを利用する、XがBを利用する、またはXがAとBの両方を利用するならば、「Xは、AまたはBを利用する」は、上記例のいずれの場合でも満たされる。本明細書中使用される場合、AまたはBのうち少なくとも1つ、は、Aのうち少なくとも1つ、あるいはBのうち少なくとも1つ、あるいはA及びBの両方のうち少なくとも1つ、を意味する。言い換えると、この語句は、選言的である。冠詞の「a」及び「an」は、本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、特に記載がない限り、または文脈から明らかに単数形を対象としているのではない限り、概して「1つまたは複数の」を意味すると解釈すべきである。
【0029】
様々な実施形態が、図面を参照して本明細書中記載される。なお、図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、類似構造または類似機能の構成要素は、図面全体を通じて似た参照文字で表される場合がある。同じくまた、図面は、開示される実施形態を説明しやすくすることのみを意図する。開示される実施形態は、全ての可能な実施形態を網羅して代表するものではないし、特許請求の範囲に関していかなる限定を帰属させることも意図しない。また、図解される実施形態は、必ずしも、特定の環境のいずれかにおける使用の全ての態様または利点を描写してはいない。
【0030】
特定の実施形態と合わせて説明される態様または利点は、必ずしも、当該実施形態に限定されず、他のどのような実施形態においても、たとえそのように解説されていないとしても、実行可能である。本明細書全体を通じて「一部の実施形態」または「他の実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して記載される、特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれていることを示す。すなわち、本出願全体を通じて様々な箇所における「一部の実施形態において」または「他の実施形態において」という語句の出現は、必ずしも同一の実施形態(単数または複数)を示してはいない。開示される実施形態は、特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【0031】
実施形態例の説明
図1Aは、2種の異なるコベチック材料形成技法102、及びそれぞれを利用することで得られるそれぞれの例示材料を示す、比較図1A00である。
【0032】
コベチック材料を生成する従来の金属溶融法103の場合、固形炭素を、溶融金属に加える。この従来の金属溶融技法は、印加電流下でのカーバイド形成及び固液(例えば、炭素金属)界面を横断する相互拡散の動力学により制御されており、印加電流は、炭素原子と金属原子の間の積層欠陥エネルギーを解消するための追加エネルギーを提供する。そのため、コベチック加工を形成するための従来の金属溶融技法は、粉末冶金及び/または熱間圧延などの他の複合体加工法とは大きく変わらない。こうした複合体加工には、第二相粒子を金属マトリクスに圧密することを伴う。このような従来の複合体加工法は、分散及び/または分布、反応性、及び材料特性の変動性と関連した多くの問題に直面する。そのうえさらに、従来のコベチック加工は、バッチ加工に依存しており、一貫性のない変換率、ならびに得られる特性の幅広い変動性がもらされることが多い。
【0033】
集塊像105で描写されるとおり、従来の金属溶融法103を用いたとき、得られる材料には、極度の炭素集塊という問題がつきまとい、この結果として、(1)格子を補強するという炭素の役割が制限され、及び(2)表面機能化のための表面形態の調節可能性が制限される。比較して、本開示の技法を用いたとき、得られる材料は、ほぼ均一の均質性(例えば、集塊物がない)を呈し、この均質性は、炭素が格子中に均一に分散することから生じる。このことは、均質像106に示される。
【0034】
均質像106で描写されるようなコベチック材料は、多くの望ましい材料特性108、例えば、均一性、高い炭素添加量、表面における低い炭素含有量など、を特徴とすることができる。こうした特性は、従来の金属溶融法103を用いて形成された材料では呈することのない非常に望ましいものである。したがって、追求されているのは、従来の金属溶融法103の欠点を克服する改善されたアプローチである。
【0035】
そのような改善されたアプローチの1つには、プラズマ溶射トーチ法104を含む。プラズマ溶射トーチ法を利用することで、コベチック材料の一貫した収率をもたらし、それにより従来の金属溶融法の収率の欠点を克服する。そのうえ、プラズマ溶射トーチ法の利用は、上記の改善された機械特性、改善された熱特性、及び改善された電気特性を保持するコベチック材料をもたらし、それにより従来の金属溶融法により得られる材料の欠点を克服する。
【0036】
改善されたアプローチ
図のとおり、プラズマ溶射トーチ法104は、投入材料を、導入されたとおりに使用する(メタンなどのガス状の炭素含有原料種の提供、及びメタンガスなどに向けてMWエネルギーを印加することによる原料種へのエネルギー付加を示す)ように構成することができる。しかしながら、高温では炭素含有ガス(メタンまたは他の炭化水素源など)が解離することにより、炭素、及びより詳細には、原始グラフェンの自己限定的単層が、金属(例えば、銅、金、亜鉛、錫、及び鉛)格子上または格子中に成長する可能性がある。単層の数は、少なくとも部分的に、炭素の金属に対する溶解性に依存する。金属基材上のグラフェン皮膜の成長動態、結合、及び最終構造は、金属の価電子及び対称性(最密充填平面)に依存する。同様に、金属は、炭素上で成長するときに、炭素の欠陥部位で、または選択的に酸素末端もしくは水素末端部位でも同様に、優先的に核形成及び成長を行う可能性がある。次いで、単層の炭素及び金属の交互積層が形成されて、グラフェン強化金属複合体構造の向上した特性が実現する。
【0037】
マイクロ波プラズマ反応器を用いることで、炭化水素ガス源から、原始3D数層グラフェン粒子の核形成及び成長を連続して行うことができる。また、選択元素をプラズマガス流に加えることにより、それらを3Dグラフェン粒子足場に組み込むことができる。マイクロ波プラズマ反応器プロセスは、独自の反応環境を提供し、その環境中、気固反応を非平衡状態下で制御することができる(例えば、イオン化ポテンシャル及び運動量を熱エネルギーと合わせて、それらにより化学反応を独立制御することができる)。反応物は、固体、液体、または気体として、プラズマ反応器帯中に導入することで、独自の非平衡構造(例えば、グラフェンが金属上にある、及び金属がグラフェン上にある)の核形成及び成長動態を独立制御することができる。
【0038】
例えば、統合されたグラフェン金属複合体をナノメートル規模で製造するには、微細なナノメートル規模の金属粒子を、メタンなどの炭化水素ガスと一緒に、マイクロ波プラズマトーチに導入すればよい。メタンは、解離して、水素と炭素になり(例えば、C及びCを形成するのに理想エネルギーのマイクロ波プラズマを用いる)、次いで、これらが、金属粒子の半溶融表面上で核形成して規則正しいグラフェンを成長させることができる。非平衡エネルギー状態は、プロセス条件を調節して、金属表面に対する炭素の反応性及び送達に関して金属温度を独立制御することにより、作り出すことができる。制御された低エネルギー状態にあるイオン化水素(または他のイオン)を用いて、グラフェン金属組成物の構造に損傷を加えることなく、成長中のグラフェン表面と金属表面に作用する/スパッタリングすることができる。これは、次いで、交互グラフェン金属層のさらなる成長を促進する。また、プラズマ反応帯内の滞留時間及びエネルギーに応じて、特定の特性を持つ金属グラフェン構造体を製造することができ、この特定の特性は、金属グラフェン構造体が、制御された温度で基材に溶射される際に急速冷却されても保持される。金属グラフェン構造体が、プラズマ内において制御されたエネルギーで、ならびに基材の温度が制御された状態で形成されることにより、こうしたコベチック材料の全進展の全体を通じてエネルギー状態の独立制御がもたらされる。
【0039】
グラフェンは、「スパッタリング」(固形材料自体がプラズマまたはガスのエネルギー粒子により衝撃を与えられた後、当該材料の微視的粒子がその表面から駆出される現象を示す。スパッタリングが材料の極めて薄い層に作用するようにできるという事実は、科学及び産業で頻繁に活用されており、そこでは、スパッタリングは、正確なエッチングを行い、分析技法を実行し、ならびに光学系コーティング、半導体デバイス、及びナノ技術製品などの製造において薄膜層を堆積させるのに利用されている)により、材料の金属または金属含有層上に施す(及び/または堆積させる)ことができる。そのようなスパッタリングを本開示のMWプラズマ反応器とともに使用した場合、当該スパッタリングは、記載のとおりであることから、プラズマ反応帯内の滞留時間及びエネルギーを制御することにより制御して、交互グラフェン金属層の成長を促進することができる。こうした交互グラフェン金属層は、規則的(例えば、結晶学的)配置にある原子のコヒーレント面において組織化される。この結晶学的配置は、グラフェン金属層が、より低温の基材上で迅速クエンチ(材料科学の分野では、クエンチ、または迅速/急速クエンチは、ワークピースを、水、油、また空気中で制御しながら急速冷却して、ある特定の材料特性を得ることを示す。ある種の熱処理であるクエンチは、望まない反応が熱力学的に優先されるものでありかつ動力学的に到達可能であるものとなる時間枠を狭めることにより、望まない低温プロセス、例えば相変態が起こるのを防ぐまたは制御する。例えば、クエンチは、金属材料及びプラスチック材料両方の結晶粒寸法を低下させ、それらの硬度を上昇させることができる)されたときも保持される。迅速クエンチは、記載のとおりであることから、グラフェンを、プラズマ反応器内で形成された所望の結晶学的配置で、金属に対して本質的に「凍結する」(単なる液体から固体への従来の相変化の定義ではなく、実質的に固体に維持することを示す)ように機能する。得られる材料内及び上の均質性は、極めて均一である。この極めて均一な均質性を利用して、金属溶融法104を用いて形成された材料を区別することができる。これは、金属溶融法104が、イオンエネルギーを熱エネルギーとは独立させて制御することができないという理由による。より詳細には、金属溶融法104は、熱エルギーとは独立してイオンエネルギーを望みどおりに高くすることができないため、金属溶融反応チャンバーの温度が、グラフェン金属層にとって高くなりすぎ、所望の結晶学的配置にある原子のコヒーレント面でグラフェン金属層を組織化させることができない可能性がある。
【0040】
したがって、金属溶融法104を用いるとき、グラフェン金属の所望の結晶学的配置は決して生じることはなく、したがって、グラフェン金属層がより低温の基材上でクエンチされるときでも、所望の結晶学的配置が保持されることはあり得ない。代わりに、金属溶融法104を用いるとき、望まない炭素析出が生じ(例えば、炭素が融液から析出する)、次いでこの析出は望まない集塊物を招き、次いでこの集塊物は、産物中に不均一性をもたらす。産物中のこの不均一性により、得られる材料の化学的及び/または物理的(機械的)特徴が理想に届かなくなる可能性があり、例えば、早期の機械的不具合に限定されないが、これを招く可能性がある。
【0041】
図1Bは、高分解能透過電子顕微鏡像114及び高分解能エネルギー分散型X線分析象116を提示する。図1Aの均質像106を、便宜上ここにも示す。
【0042】
この例示の画像セットで描写されるとおり、炭素は、金属格子全体にわたり均一に分布している。このことは、高分解能透過電子顕微鏡像114で強調される。その上、金属格子中の炭素添加量が極めて高いことが、高分解能エネルギー分散型X線分析象116で明白に示される。この例では、炭素添加量は、銅炭素格子全体の約60%を占める。このことは、高分解能エネルギー分散型X線分析象116に示される。この特定画像において、暗い領域は炭素であり、明るい領域(点として出現している)は銅である。
【0043】
画像から見て取れるとおり、及び詳細には、高分解能エネルギー分散型X線分析象116のパターンから見て取れるとおり、炭素及び母材金属(例えば、この場合は銅)は、均一に分散している。この均一な格子レベルの分散は、図のとおり、表面に存在し、その上、この均一な格子レベルの分散は、母材金属の深部にも存在する。コベチック材料のさらなる画像を、図20A1図20A2、及び図20Bに示すが、これらの図は、(1)材料進展プロセス、(2)プラズマ溶射トーチ装置、及び(3)プラズマ溶射トーチの様々な構成について検討した後のものである。
【0044】
1つの使用シナリオでは、図1Bのコベチック材料は、統合されたグラフェン金属複合体皮膜を高速及び大量に生成する調節可能なマイクロ波プラズマトーチを用いて、製造することができる。グラフェンが溶融金属小粒子上に成長する特定の製造プロセスの1つを、ここから簡潔に説明する。
【0045】
図2は、小溶融粒子上にグラフェンを成長させる製造プロセス200を描写する。任意選択として、製造プロセス200もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。製造プロセス200またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0046】
可能な方法の1つは、「非平衡エネルギー」マイクロ波プラズマトーチを使用して、炭素生成とは独立して金属の温度を非平衡制御することである。次いで、このプラズマトーチエネルギーを、溶融及び/または半溶融金属粒子表面に向ける。この技法により、成長のための時間が、融液で生じることが可能になる。トーチ内で生成した融液(または半溶融もしくはコアシェル材料)での成長は、主要プラズマプルームを通じて金属表面に流れ出てそこで成長することになり、次いで、迅速クエンチされる。この技法は、厚い皮膜を成長させる手段を提供し、このフィルムは、積層することで、均質な厚いインゴットへと成長すること及び/または後で機械加工されるもしくは再溶融されて利用される構成要素部品中または上で成長することが可能である。
【0047】
また、図2は、グラフェンを小溶融粒子上で成長させるときに、構成材料温度及び気固反応化学を独立制御することの効果を図解するために提示されている。図2は、コベチック材料製造の複数のプロセスを通じた進展を示し、及び、プラズマトーチを利用したコベチック材料の形成で使用されるプロセスを提示する。
【0048】
図のとおり、プラズマトーチから出てくる半固体粒子は、1層ずつ付加する様式で、温度制御された基材上に堆積することができる。標準的なプラズマトーチでは、電力及び他の配置の制御だけでなく、操作可能な流れが制限されているが、これとは異なり、ここで検討されるマイクロ波プラズマトーチは、構成材料温度ならびに気固反応化学を独立制御するように操作することができる。
【0049】
上記の開示から見て取れるとおり、マイクロ波プラズマ源は、以下(例として)をもたらすことができる:(1)より高いプラズマ密度、(2)より狭いイオンエネルギー分布のイオンエネルギー、及び(3)改善されたコーティング特性。これは、少なくとも部分的には、2.45GHzでの電力結合及び(電磁エネルギー)吸収の改善によるものである。圧力に依存して、典型的な電子温度は、1eV~15eVのオーダーにあり、>1011cm-3のプラズマ密度をもたらす。それほど低い電子温度は、プラズマ化学反応の制御に関して有利であるだけでなく、アルゴン系同軸マイクロ波プラズマのためのイオンエネルギーも合わせてイオンエネルギーの制限に関しても有利である。アルゴン系同軸マイクロ波プラズマのためのイオンエネルギーは、典型的には、5eV~80eVの範囲にある。こうした高密度プラズマを使用して形成される狭いプラズマシースの結果として、イオンエネルギー分布の衝突広がりが阻止され、その結果、イオンエネルギー分布は鋭くなり、このことがある種の皮膜堆積プロセスの精密制御を支援する。また、パルス電力をマイクロ波プラズマに利用することで、非平衡エネルギーを形成及び制御することができる。マイクロ波エネルギーの印加中、電力は、プラズマが形成される予定の体積全体に送達され、したがって、エネルギーは段階的な衝突エネルギー型で蓄積される。
【0050】
図2の上記検討には、マイクロ波エネルギー電力を印加するための技法が含まれ、この技法については、以下でより詳細に開示する。
【0051】
図3は、グラフェンを小溶融粒子上に成長させるためにどのようにパルスマイクロ波エネルギー源を使用するかを示す、プラズマエネルギー状態図300を示す。
【0052】
マイクロ波プラズマ源は、2.45GHzでの改善された電力結合及び吸収の結果として、より高いプラズマ密度、より狭いイオンエネルギー分布のイオンエネルギー、及び改善されたコーティング特性を達成する可能性を秘めている。圧力に依存して、典型的な電子温度は、1eV~15eVのオーダーにあり、>1011cm-3のプラズマ密度をもたらす。それほど低い電子温度は、プラズマ化学反応の制御に関して有利であるだけでなく、アルゴン系同軸マイクロ波プラズマのためのイオンエネルギーも合わせてイオンエネルギーの制限に関しても有利であり、アルゴン系同軸マイクロ波プラズマのためのイオンエネルギーは、典型的には、5eV~80eVの範囲にある。こうした高密度プラズマを使用して形成される狭いプラズマシースの結果として、イオンエネルギー分布の衝突広がりが阻止され、その結果、イオンエネルギー分布は鋭くなるが、この狭いイオンエネルギー分布は、一部の皮膜堆積プロセスの精密制御に必要である。また、マイクロ波反応器に送達される電力にパルス電力を使用することを通じて、プラズマ非平衡エネルギーを形成及び制御することができる。マイクロ波エネルギーの印加中、電力は、プラズマが形成される予定の体積全体に送達され、したがって、エネルギーは段階的な衝突エネルギー型で蓄積される。
【0053】
体積の大部分で初期プラズマが形成されると、送達アンテナでエネルギーは最大となり、非常に局所的な様式で増大し続ける。近くのプラズマ密度は、プラズマが収縮するまで、わずかに減少する。パルスマイクロ波エネルギー源を作製及び使用する一般的アプローチに関するさらなる詳細は、米国特許公開第10,332,726号、2019年6月25日発行、に記載されており、その全体が本明細書により参照として援用される。
【0054】
図3は、プラズマの初期エネルギーが、安定温度で大幅に低下するまでは、非平衡状態において非常に高いことを示す。より詳細には、プラズマエネルギー状態図は、初期の高エネルギー非平衡状態から、それより低エネルギーの安定平衡状態への遷移を描写する。初期プラズマが形成されると、送達アンテナでエネルギーは最大となり、プラズマが収縮し、エネルギー遮蔽によりチャンバーの残部で失われるまで、非常に局所化された様式で増大し続ける。
【0055】
パルスマイクロ波エネルギー源は、グラフェンを小溶融粒子上で成長させるために電子温度を最適化するように制御することができる。これは、圧力が>>20Torrである場合に、特に有効である。プラズマによる化学的解離が均質であることを確実にするため、及び材料のコーティングも同じく均質であることを確実にするため、チャンバーの環境は制御されなければならない。
【0056】
図3に示すとおり、エネルギープロファイルは、初期エネルギーが高く、その後、それより低いレベルに低下し、電力が取り除かれるまで、そのレベルにとどまることを示す。プラズマは消滅し、そして再開された後は、このエネルギーサイクルを再度辿る。初期プラズマ発火とプラズマが安定する時点の間の時間を短縮することにより、プラズマは、主にシステムのバルクにとどまり、システムのバルクで材料のより均質な解離を起こすことが可能である。初期プラズマ発火とプラズマが安定する時点の間の時間を短縮することは、パルスの周波数及びデューティーサイクルを制御することにより、達成可能である。
【0057】
パルスマイクロ波反応器中の電子温度を制御する1つの技法を、図4に関連して表示及び説明する。
【0058】
図4は、グラフェンを小溶融粒子上で成長させるために使用される電子温度制御技法400を描写する。任意選択として、電子温度制御技法400もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。電子温度制御技法400またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0059】
図4は、溶融スラリーのバルクに炭素を混合するのではなく、溶融したナノ規模寸法粒子上に数層のグラフェンを成長させることに関する態様を図解する。具体的には、この図は、マイクロ波パルス周波数の制御を通じたプラズマ温度の制御に対する、この技法の寄与に関連して提示されている。
【0060】
パルス周波数の制御を介したプラズマ温度の制御
上記図3に描写されるとおり、エネルギープロファイルは、初期エネルギーが高く、その後、それより低いレベルに抑制され、電力が取り除かれるまで、そのレベルにとどまることを示している。プラズマは消滅し、そして再開された後は、このエネルギーサイクルを再度辿る。初期プラズマ発火と安定化の間の時間を短縮することにより、プラズマは、主にシステムのバルクにとどまり、システムのバルクで材料のより均質な解離を起こすことが可能である。
【0061】
図4に示すとおり、この効果は、実質的に、マイクロ波エネルギー源のオン/オフサイクルのタイミングに依存する。パルス周波数を制御することにより、最適な化学解離及び均一コーティングをもたらすことができる。そのうえさらに、パルス周波数を設定することにより、プラズマの平均温度も同様に制御可能である。
【0062】
マイクロ波プラズマトーチ中のプラズマ温度制御
本明細書中検討される統合されたマイクロ波プラズマトーチは、既存の金属合金及び従来の複合体加工法よりも向上した機械特性、熱特性、及び電子特性を持つ統合された、第二相炭素金属複合構造体の形成を取り扱うために使用される。そのうえさらに、マイクロ波プラズマトーチを使用することで、高価値資産構成要素上で直接、炭素金属複合体コーティング及び粒子を形成することができる。しかもさらに、上記方法及び機器は、配電の改善及び効率的変圧ならびに熱交換器性能に関する多くのクリーンエネルギー目標を満たす。
【0063】
マイクロ波プラズマトーチの実用的応用
統合されたマイクロ波プラズマトーチ技術を用いて、材料を、高速で、経済的に(例えば、高い費用効率で)堆積及び/または形成させることができ、多種多様な構成で応用することができる。この技術の恩人として、様々なエネルギー生産業、特に送電及び貯蔵に関するもの、輸送産業、軍装備品産業、ならびに他の多くの製造業が挙げられる。1つの具体的な実用化例として、飛行機の金属表面を、プラズマ溶射により処理して、金属空気界面にコベチック材料を生成することができる。こうすると、金属表面は、腐食しにくくなる。また、表面近くの炭素原子は、他の材料が、炭素原子と化学結合すること及び/または表面に付着することを可能にする。炭素原子と化学結合することが可能な上記他の材料は、様々な実用的応用で生じる必要条件に基づいて選択される可能性がある。
【0064】
別の具体的な実用化例として、飛行移動手段(例えば、飛行機、ヘリコプター、ドローン、発射物、ミサイルなど)の金属表面を、プラズマ溶射により処理して、赤外線隠蔽体(obscurant)(例えば、検出の対抗手段として)として作用するコベチック材料コーティングを生成することができる。
【0065】
図5は、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるために使用される二重プラズマトーチ装置500を図解する。任意選択として、二重プラズマトーチ装置500もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。二重プラズマトーチ装置500またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0066】
示される機器設定として、以下を用いる:(1)溶融金属を、加熱された基材(Al、Cu、Agなど)の表面に溶射するための金属プラズマ溶射トーチ、及び(2)溶融金属上でコベチック体の成長が引き起こされるように、イオン化炭素及びプラズマラジカルを溶融表面に送達するためのマイクロ波プラズマトーチ。
【0067】
システムを、不活性ガス環境に、または大気制御されたチャンバーに挿入して、材料の酸化のより良好な制御をもたらす。1つの実施形態において、図5のトーチの設定及び操作は、表1に示すとおりであり、その詳細については、以下で検討する。
【表1】
【0068】
工程D1:反応物材料の同定及び選択
任意の数の金属を、準安定炭素種と一緒に同時にプラズマ溶射して、ナノ炭素金属複合構造体を形成することができる。熱力学的溶解限度を超える濃度で2Dグラフェンを形成するとき、高い電気伝導度及び熱伝導度を持つ異なる金属を使用することができる。場合によっては、それぞれ異なる炭素溶解限度及び/または異なる融点及び/または異なる密度及び/または異なる結晶構造を有する2種の異なる金属を選択する。
【0069】
工程D2:マイクロ波プラズマトーチ及び「標準」プラズマ溶射トーチの選択、修飾、及び検証
図5の装置は、「標準」の入手容易なプラズマ溶射トーチ及びマイクロ波プラズマトーチで実質的に構成されていることが可能である(ある特定の実施形態において)。2つのトーチを有することにより、2つの異なる加工工程、すなわち以下が可能になる:(1)金属の初発溶融、及び(2)炭化水素源からのグラフェンプレートレットの核形成/成長。2つのトーチはそれぞれ、互いに独立して制御することができる。
【0070】
図5に示すとおり、2つのトーチは、同時操作または順次操作用に配列されている。具体的には、電子温度が低く電子密度が高いマイクロ波プラズマを用いて、グラフェン形成を最適化(炭素過飽和限界での核形成速度を含む)することができ、一方で標準プラズマ溶射トーチを用いることで、金属粉末/粒子を加熱して溶融または半溶融状態にし、次いで粒子を(核形成したイオン化炭素/グラフェンと一緒に)基材に向かって加速させることができる。2つの独立した流れは、半溶融粒子表面での微細規模のグラフェン成長を達成するように調和させることができる。場合によっては、二重トーチ構成は、トーチの出口流でまたはその付近で及び基材の表面の衝突領域でまたはその周囲で、不活性雰囲気(例えば、カバーガス)を維持する手段を含む。これは、周辺空気からの混入物(例えば、酸素、窒素、及び水分)が、炭素原子と金属原子の間の結合に影響を及ぼす可能性があるためである。したがって、ある特定の実施形態において、二重トーチシステムは、材料酸化の有効な制御をもたらすように、完全制御された不活性ガス環境(例えば、チャンバー)に挿入されるように構成される。
【0071】
工程D3:プラズマ加工パラメーターの理論的根拠及び定義
反応物(例えば、炭化水素)及び不活性ガスならびに流れは、プラズマの安定性を確保するように、及びプラズマ内の核形成及び成長プロセスの制御(例えば、所定のガス混合物の過飽和限界及び流速)を確保するように選択される。準安定炭素の加速度及び温度は、プラズマから基材への運動の間、制御される。それに応じて、炭素が衝突及び反応することのできる圧密化薄膜を生成するように、標準プラズマ溶射トーチのプロセス条件が設定される。表面温度及び局所気相環境は、準安定炭素相の相互作用及び成長を促進するように制御される。
【0072】
工程D4:二重(金属及びマイクロ波)プラズマトーチの操作
金属及びマイクロ波プラズマトーチ両方のプロセス枠の様々なパラメーターは、独立して制御されるように、または一部の実施形態では、互いに連動して制御されるように構成される。金属及びマイクロ波プラズマトーチ(本明細書中、「二重プラズマトーチ」と称する)のうち1つまたは複数の操作前、操作中、または操作後、統合された炭素金属形成のプロセス枠が特性分析される。そのうえ、1つまたは複数のパラメーターまたはパラメーターの組み合わせが選択され、炭素金属の堆積が観察され、当該分野で既知である任意の技法を用いて、堆積したままの試料を、様々な違いに関して特性分析することができ、そのような違いとして以下が挙げられる(が、それらに限定されない):形態(例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して)、構造(例えば、X線回折(XRD)により及びラマン分光法により)、及び/または、物理的及び化学組成。
【0073】
図6は、小溶融粒子上にグラフェンを成長させるために調節可能なパルスマイクロ波プラズマ溶射トーチ装置600を図解する。例として、パルスマイクロ波プラズマ溶射トーチ装置600(またはその任意の態様)の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。パルスマイクロ波プラズマ溶射トーチ装置600(またはその任意の態様)は、任意の環境において実践可能である。
【0074】
この構成では、横方向電気的(TE)マイクロ波電力手段を、中央誘電体管上(または、一部の実施形態において、実質的にその中を貫通する場合もある)で結合して、中央誘電体管全体にわたりその中にマイクロ波エネルギーを伝搬することができる。中心領域に供給されるガス(この例の場合)は、マイクロ波放射を吸収するメタンなどの炭化水素ガスが可能である。金属粉末が供給されて(実質的に不活性な担体ガスにより運搬される)、パルスマイクロ波プラズマ溶射トーチ装置600の本体(または主要チャンバー)内で、プラズマ由来エネルギー及び供給された熱エネルギーの組み合わせにより加熱される。そのようなエネルギーに曝露すると、金属粉末は融点に達して溶融し、粘稠な流動性液体材料、または液滴(半固体材料を含有する可能性がある)、または任意の他のあり得る分散物(付随する溶融条件に大きく依存する)を生成する。
【0075】
炭化水素ガスが分解してその構成元素種になるにつれて、炭素ラジカルが、溶融した金属液滴の露出表面上で核形成する。マイクロ波のエネルギー調節設定及び熱プルーム温度設定の組み合わせにより、パルスマイクロ波プラズマ溶射トーチ装置600の中心領域において、溶融温度とプラズマ分解/イオン化温度の間で異なる温度が可能になる。プラズマ溶射トーチ装置の中心チャンバーまたは領域内の非平衡状態(温度、熱などを示す)は、グラフェン/炭素が格子内部に場所を取ること(炭素材料の合成された格子構造が任意の投入金属(複数可)とともに、個々の炭素原子及び金属原子が少なくとも部分的に整列できるように、位置決めすることを示す)を可能にし(または、何にせよ促進し)、一方で迅速クエンチは、コベチック材料の成長を助長する状態を作り出す。炭素原子及び金属原子が少なくとも部分的に整列するように、炭素格子及び金属格子が配向されている内部格子を示す図を、図8A図8B図12図26C、及び図26Dに提示するとともに、以下で、対応する文章での記述でも提示する。
【0076】
図6の単一の統合マイクロ波プラズマトーチは、以下の表2に描写するとおりに設定及び操作することができる。その詳細を以下に説明する。
【表2】
【0077】
工程S1:単一の統合マイクロ波プラズマトーチを配備する
図6は、単一の統合マイクロ波プラズマトーチを描写する。トーチは、ガス流の制御に少量の不活性ガスまたは差動排気真空(例えば)を使用して、固体、液体、及び蒸気の反応物原料種を加工する能力を有する。トーチは、任意の環境(実験室、研究施設、または大手工業会社などを示す)に配備することができる。
【0078】
工程S2:グラフェン添加金属複合(「コベチック」)合金を形成させるため単一の統合マイクロ波プラズマトーチを操作する
マイクロ波エネルギーは、効率的マイクロ波エネルギー吸収のための中央集中ガス供給システムを伴う共線導波管配置で送達される。マイクロ波エネルギー源を使用して、金属を加熱し、半溶融状態にする。CH(または他の炭化水素源)が、表面波プラズマガス解離管中に向けられた排気プルーム内で分解される(その構成種になる)につれて、炭素ラジカルは、プラズマラジカル(金属液滴に向けられている)による励起を介して、金属液滴の表面で核形成(例えば、組織化された1層ずつの様式で)することができる。マイクロ波熱プルーム温度及びプラズマのエネルギー調節により、パルスマイクロ波プラズマ溶射トーチ装置600の中心領域内で生じる溶融とプラズマ分解/イオン化との間で温度を独立制御することができる
【0079】
プロセス条件を、測定及び最適化する。所望のプロセス条件は、統合マイクロ波プラズマトーチにより、または統合マイクロ波プラズマトーチ用に制御され、そうすることにより、単一または多段階プラズマ反応トーチ内で直接グラフェン添加金属複合材料を形成させる。プラズマトーチを、表面波プラズマの異なる領域内で変調させることで、共鳴(変調)時間を向上させ、及び目的の金属炭素構造の形成を最適化することができる。
【0080】
描写される位置で示されるプロセスガスポート(例えば、炭化水素プロセスガス605の導入用)に加えて、追加ポート604を、異なる位置に提供することができる。そのような追加ポートを用いて、プロセスガスをどのようにマイクロ波場に導入するか制御すること、及び他のプロセスガスを導入することができる。例として、プロセスガスは、SiHまたはNHである可能性がある。一部の実施形態では、複数のガス用投入口または複数の粒子用投入口(例えば、1つは炭素用及び1つは金属用)を備えている場合があり、投入口の位置は、プラズマトーチの異なる帯に位置決めすることができる。
【0081】
上記の設定及び条件、ならびに他の条件を最適化することで、基材表面に、衝突粒子が圧密化されて皮膜になることが可能な状態がもたらされる。堆積したそのままの皮膜を、以下の工程S3で概要を示す方法に従って、分析及び特性決定する。
【0082】
工程S3:グラフェン(二次相)金属粒子を検証/特性決定する
堆積したそのままの統合炭素金属複合構造体の特性決定は、複数の技法を用いて達成する。例えば、X線光電子分光法(XPS)及び/またはSEM-EDSを用いて、化学組成、結合エネルギー(ナノ規模の炭素検出)、及び分布を特定することができる。同じく、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)及び/またはSEM、及び/またはラマン分光法、及び/またはXRDを用いて、形態を特定する及び/または粒子径及び構造の態様を測定することができる。複合材料の電気特性及び熱特性、ならびに引張強度及び弾性は、任意の既知の技法を用いて評価することができる。
【0083】
結果
上記技法は、マイクロ波プラズマトーチを用いて、金属マトリクス複合体を連続製造する。この加工は、プラズマ内に材料の核形成及び成長帯の形成を伴い、続いて基材上で材料を圧密化するための加速及び衝突帯を伴う。各帯は、異なる材料の合成/配合及び統合の独自制御を提供する。いわゆる、プラズマ内での合金粒子の選択的及び独自の形成、次いで粒子は、基材に衝突する間の運動量(主に速度)及び熱エネルギーの制御を通じて、圧密パラメーター、例えば、空隙率、欠陥密度、残留応力、化学的及び熱勾配、相変態、及び異方性などを制御するための独自の付加プロセスを可能にする。
【0084】
プラズマ操作環境内の広範囲の成長動態にまたがる使用のため、様々な材料が選択される。詳細には、特定比の炭素対酸素及び水素を含む異なる炭化水素ガス源、ならびに異なる炭素溶解性、融点、及び結晶構造を持つ固体金属(または金属合金)粒子源を、パルスエネルギープラズマトーチ加工システムを通じて加工することができる。そのため、具体的なプラズマ加工パラメーターについては、粒子の相伴う初発表面溶融と、核形成/成長、及び2Dグラフェンの組み込み、及び金属表面で再スパッタリングされた金属とを合わせて、これらに関して同定することができる。
【0085】
グラフェンがマイクロ波プラズマトーチから金属に組み込まれると、堆積したそのままの材料/皮膜は、「コベチック様」特性に関して特性決定される。例として、こうしたコベチック様特性は、以下について特性決定することができる(例えば):(1)化学組成(例えば、不純物の検出のためまたは炭素の形状の検出のため)、(2)炭素の分布(例えば、格子間、これは、粒内または粒間で、炭素原子または炭素種の位置が金属マトリクスまたは格子内にあることを示す)、(3)電気伝導度、及び(4)材料の機械強度。特性決定は、グラフェンが添加されたものと非合金の母材金属の間の対比を含む場合がある。さらに、及び厳密に例として、マイクロ波プラズマトーチを用いて、堆積したそのままの材料は、約3%~90%の範囲(これらの値を含む)全体にわたり炭素対金属比を呈する場合がある。状況によっては、炭素対金属比は、約10%~約40%の範囲(これらの値を含む)全体にわたる。状況によっては、炭素対金属比は、約40%~約80%の範囲(これらの値を含む)全体にわたる。状況によっては、炭素対金属比は、約80%~約90%の範囲(これらの値を含む)全体にわたる。状況によっては、炭素対金属比は、90%超(この値を含む)である。炭素対金属比は、コーティングプロセスを規定するパラメーターまたは仕様(例えば、温度、厚さ、均質性など)により影響を受ける(またはさらに影響される)可能性がある。
【0086】
図7は、コーティングプロセスを描写した図700である。この図は、金属基材を示し、この基材は、コベチック材料のプラズマトーチ溶射に供され、その結果、複合炭素コーティングが合成される。金属基材は、銅、アルミニウム、または他のバルク金属材料のうち任意の1種または複数を含む可能性がある。コベチック材料は、炭素、グラフェン、ナノオニオン、カーボンナノチューブ(CNT)、カーバイド注入材料などのうち1種または複数を含む可能性がある。
【0087】
プラズマトーチ溶射は、投入材料を堆積材料でコーティングする働きをし、パルスエネルギーを用いて操作することができる。図のとおり、堆積した(例えば、1層ずつのスパッタリングにより)材料は、炭素、金属(例えば、Al、Cu、Ti、Taなど)、及び/または酸化物もしくは窒化物のうち任意の1種または複数であることが可能である。
【0088】
上記のトーチを使用することから複数の利点が浮上する。それらの中でもとりわけ、独自の安定金属炭素複合体を様々な構成/構築物に配合するプロセスの拡張性及び汎用性という利点がある。こうした構成/構築物は、十分に緻密な薄膜コーティングから、その後再溶融されて加工金属合金構成要素へと鋳造/成形される厚ストリップ材または粒子までの範囲にわたる。上記範囲全体にわたる化学種のそれぞれが、既存の母材金属合金配合物と比較した場合に、予想外に好適な(及び望ましい)向上した機械特性、熱特性、及び電気特性を呈する。また、熱力学的溶解性限界を超える、金属合金マトリクス中の共有結合2Dグラフェンの濃度及び分布の調節可能性、ならびに非平衡環境での積層形成は、特定用途に対応するように及び/または特定の性質必要条件に対応するように加工可能な新規クラスの複合材料を可能にする。その上、これは、他の技法と比較した場合に大幅に削減された製造費用で行うことができる。
【0089】
向上した機械特性、熱特性、及び電気特性は、銅及びアルミニウム合金を使用する大多数の用途に適用することができる。例として、そのような用途として以下が挙げられる(が、それらに限定されない):導線及び高電圧送電ケーブル、マイクロエレクトロニクス温度管理及び熱交換器、ならびに薄膜電導体を使用する多数の用途、例えば、バッテリー、燃料電池、及び光発電。詳細には、マイクロ波プラズマトーチプロセスと実施可能な炭素金属合金製造の組み合わせにより、製造時のエネルギーが大幅に削減されることになるとともに、最終用途性能における熱効率の上昇及び電気損失の減少がもたらされる。
【0090】
上記のプラズマ溶射技法は、コベチック材料の作製法のうちの一部門を描写するにすぎない。別の部門には、炭素粒子を溶融金属の小粒子上に溶射することを含む。そのような部門及び当該部門に含まれる様々な化学種を、図8A図8B図9図10図11図12図13、及び図14に関して、ならびに本明細書中の図面の説明において、表示及び検討する。
【0091】
図8A図8Bは、炭素粒子を小溶融粒子上に溶射するために使用されるプラズマ溶射プロセス800を描写した概要図である。任意選択として、プラズマ溶射プロセス800(もしくはその任意の態様)の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施の構築物または機能性の文脈において実践可能である。プラズマ溶射プロセス800またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0092】
図のプラズマ溶射技法は、加熱した材料を表面に溶射する様々なコーティングプロセスで使用される。原料(例えば、コーティング前駆体)は、電気的手段(例えば、プラズマまたはアーク)及び/または化学的手段(例えば、燃焼炎)により加熱される。そのようなプラズマ溶射技法を使用することにより、プロセス及び原料に応じて、約20μm~約3mmの範囲の厚さを有するコーティングを提供することができる。コーティングは、高い堆積速度で広範囲にわたり施すことができる。上記技法を用いると、堆積速度は、従来のコーティングプロセス、例えば電気メッキまたは物理及び化学蒸着により達成可能な速度よりも非常に速い。
【0093】
上記の例示材料に加えて(またはその代わりに)、プラズマ溶射に利用可能なコーティング材料の種類として、金属、合金、セラミックス、プラスチック、及び複合体が挙げられる。こうした材料を粉末状でまたはワイヤー形状で溶射トーチに供給し、次いで加熱して溶融または半溶融状態にし、そしてマイクロメートル寸法の粒子の形状で基材に向かって加速させる。燃焼または電気的アーク放電を、プラズマ溶射のエネルギー源として利用することができる。得られるコーティングは、溶射された粒子が何層も累積することにより出来上がっている。多くの用途において、基材の表面は、それほど加熱されず、したがって、最も可燃性の高い物質も含めて多くの物質のコーティングが促進される。
【0094】
図9は、炭素粒子(例えば、粒径が20nm~40ミクロンのもの)を溶融金属小粒子上に溶射することの効果を示す走査型電子顕微鏡像900である。溶融金属小粒子上に溶射された炭素粒子は、様々な専門用途で使用可能である。例えば、プラズマアルミニウムグラファイト複合体は、タービン機関のコーティングを提供するために専用で設計される可能性がある。代替例として、アルミニウム及びチタン合金の使用が挙げられる。このプラズマ溶射コーティング材料の成長速度は、放物型である。プラズマ溶射コーティング材料は、短時間で析出し、この析出は、温度にほとんど依存しない。材料表面の準備のため、ある特定のプロセスには、材料の予備加熱が含まれる。一部の実施形態において、グリットによるブラスト加工も同様に、材料表面の準備のために行われる。一部の実施形態において、表面に溶射される粒子の一部は、まだ十分に熱いうちに、基材の表面でコベチック結合を形成する。他の場合では、小溶融粒子は、金属金属結合を形成する温度にある。
【0095】
本開示のマイクロ波プラズマトーチ技法の使用により、従来トーチの使用と比べた場合に改善された材料の製造が可能になる。具体的には、従来のプラズマトーチに固有の電力制御の限界及び他の構成的制約は、従来のプラズマトーチが投入材料及び他の条件を独立制御する能力を制限するが、この能力は、大幅に高い品質及び均質性を呈するコベチック材料の製造に有効である炭素を生成するために必要である。
【0096】
図10は、グラフェン成長温度プロファイル1000を描写する図及び二元状態図を示す。任意選択として、グラフェン成長温度プロファイル1000もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。グラフェン成長温度プロファイル1000またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。図は、二元状態図も示しており、二元状態図中、X軸は、選択した金属(例えば、図のとおり、銅)中の炭素濃度を原子パーセントで表示する。図中の温度プロファイルの温度も、状態図に示す。様々な金属が使用可能である(例えば、銀、錫など)。場合によっては、合金が形成される。
【0097】
溶融金属上での単層グラフェン(SLG)または数層グラフェン(FLG)の成長の背後にある概念は、ある特定の温度で遷移金属溶融液中に炭素原子を溶解させ、次いで、それより低い温度で、溶融炭素を析出させる(溶液から固体を作り出すことを示す)。
【0098】
概要図は、以下(例えば)による溶融ニッケルからのグラフェン成長を描写する:(1)ニッケルを、グラファイト(炭素源として)と接触させながら、溶融させる、(2)炭素を、高温で、溶融液中に溶解させる、及び(3)グラフェンを成長させるために温度を低下させる。
【0099】
図のとおり、所定の温度で溶融液を炭素源と接触したままに維持することにより、金属炭素二成分系相転移に基づいて、溶融液への炭素原子の溶解及び溶融液中における炭素原子の飽和が生じることになる。温度を低下させると、溶融金属中の炭素の溶解性が低下することになり、過剰量の炭素が溶融液の頂部に析出することになる。
【0100】
図11は、(従来型)プラズマ炎装置1100の横断面図である。この図は、本開示のマイクロ波プラズマトーチの利用との比較として、過去のプラズマ炎装置の利用を区別するために提示されている。具体的には、過去のプラズマ炎装置の使用は、金属表面に、ダイヤモンドまたはダイヤモンド様材料を生成することができるものの、このプロセスは、最終材料が金属表面上に析出するように炭素材料を溶解及び拡散させるのに大幅な時間を必要とする。本開示の実施形態を用いて本明細書中開示されるとおりの金属炭素複合材料を製造している間、グラフェンは、金属または金属含有複合材料の層間(または格子もしくはマトリクス部位内)で格子間式に成長しそこに固定されることが望ましい。しかしながら、そうするためには、温度が高速で調節されなければならない。残念ながら、過去のプラズマトーチは、格子間炭素構造の寸法をナノメートル規模に低下させるために必要とされる、温度及び他の条件の実質的な(本明細書中望まれるとおりのコベチック材料の達成と関連して望ましいと思われるとおりの)制御を提供しない。
【0101】
対照的に、パルスマイクロ波反応器(上記で導入されるとおりの本開示の実施形態に関連するとおり)及び対応するプロセスを、図12に表示及び説明することで、格子間炭素構造の寸法をナノメートル規模に低下させるために必要とされる、温度及び他の条件の制御について十分な詳細を提供する。
【0102】
図12は、グラフェンを「成長させる」ときに使用されるパルスマイクロ波プロセス流れ1200を描写し、「成長させる」は、溶融金属粒子の実質的に平坦な露出表面にグラフェンを1層ずつ秩序立って堆積させるまたは施すことを示す。任意選択として、パルスマイクロ波プロセス流れ1200もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。パルスマイクロ波プロセス流れ1200またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0103】
示されるパルスマイクロ波プロセス流れ1200を使用する場合、グラフェンは、小溶融粒子上に成長する。これは、パルスマイクロ波反応器内の入口1204周囲(例えば、金属粉末及び担体ガスが反応器チャンバーに入る場所)で起こる相互作用により達成される。入口1204の他に、プロセスガスポート1202及び追加ポート(例えば、追加ポート1203及び追加ポート1203)が、反応器装置の側部に異なる高さで提供される。導波管は、反応器の側部のプロセスガスポート1202の位置から反応器の側部の入口1204の位置までの距離を少なくとも横断する。グラフェンを小溶融粒子上で成長させるためのそのような反応器中に材料を導入及び連続供給するために、ポートをどのように作り使用するかについての詳細を、以下でさらに開示する。より詳細には、図12の反応器のある特定の構成要素について、図13に関連して表示及び説明する。
【0104】
図13は、グラフェンを小溶融粒子上で成長させるために使用される従来のパルスマイクロ波プラズマ溶射導波管装置1300の斜視図である。任意選択として、パルスマイクロ波プラズマ溶射導波管装置1300もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。パルスマイクロ波プラズマ溶射導波管装置1300またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0105】
この実施形態において、マイクロ波送達構成要素とパルス電力供給は、統合されて、「サーファガイド(surfaguide)」(または同様の)ガス反応器を形成している。図のとおり、これら構成要素の組み合わせは、マイクロ波プラズマトーチを用いて、グラフェンが小溶融粒子上で成長するのを促進するように構成されている。
【0106】
代替的アプローチは、金属を部分的または完全に溶融するためにタングステン不活性ガス(TIG)プラズマ源を使用してマイクロ溶接を行うことである。そのようなマイクロ溶接技法について、図14に関連して表示及び説明する。
【0107】
図14は、グラフェンを小溶融粒子上で成長させるために使用されるマイクロ溶接技法1400の概要図である。任意選択として、マイクロ溶接技法1400もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。マイクロ溶接技法1400またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0108】
低電力、低流量のTIG溶接機電力供給と、カスタムプラズマ格納部を備えた制御装置とを有効に使用して、全ての種類の金属粒子を加熱することができる。図のとおり、排気プルームは、表面波プラズマガス解離管中に導入された場合、温度をグラフェンの成長に十分な高さに維持させる。非平衡状態下で形成された、炭化水素及び他の添加ガスで構成されるプラズマラジカルの制御を含むこの成長様式は、多様な構成のマイクロ波プラズマ溶射装置により利用可能な調節機会を多数提供する。図15図18A図18B図18C、及び図18D、ならびに他の図面及び対応する説明文は、プラズマ溶射装置の例示構成を開示する。
【0109】
図15は、同軸構成1500のプラズマ溶射装置の概要図である。任意選択として、同軸構成1500もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。同軸構成1500またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0110】
同軸様式の実施形態において、マイクロ波エネルギー送達は、アンテナに供給されるTEM波を介して達成され、アンテナの同軸部材の外側部分は石英管であり、その外側を、粉末金属粒子が流れる。この例で中心領域に供給されるガスは、メタンなどの炭化水素ガスであり、ガスがマイクロ波放射を吸収する。粉末は、中心領域から漏れたマイクロ波エネルギーにより、及び外部誘導加温により加熱され、この加熱が、金属粉末(粒子形状)の、表示する反応チャンバーの傾斜部分、または頂部付近での溶融を引き起こす。CHが分解する(その構成種である、炭素、水素、及び/またはそれらの誘導体になる)につれて、炭素ラジカルが、プラズマラジカルのエネルギーを介して、溶融金属液滴の表面で核形成する。マイクロ波デューティーサイクルの調節、ならびに誘導加温の調節、ならびにプラズマ特性の調節により、溶融とプラズマ分解/イオン化領域の間の温度差の維持が促進される。その上、非平衡温度により、グラフェン/炭素の格子内配置が可能になり(促進され)、及び迅速クエンチにより、コベチック材料のさらなる成長を助長する条件が作り出される。
【0111】
図16は、一連の非平衡エネルギー状態を通じて加工することによる材料の進展を示すプラズマ溶射装置1600の概要図である。任意選択として、プラズマ溶射装置1600(もしくはその任意の態様)の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。プラズマ溶射装置1600またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0112】
この図は、材料が装置を通過するにつれて進展するところを描写する。具体的には、この図は、先端付近の領域で、グラフェンが金属溶融の小粒子上に成長するように、進展上異なる変化が生じる領域を描写する。この材料は、基材上に堆積する。
【0113】
図17は、グラフェンを溶融粒子上に成長させるための表面波プラズマシステム1700を描写する。任意選択として、表面波プラズマシステム1700もしくはその任意の態様の1つまたは複数の変異形態が、本明細書中記載される実施形態の構築物または機能性の文脈において実践可能である。表面波プラズマシステム1700またはその任意の態様は、任意の環境において実践可能である。
【0114】
示される構成において、供給ガスは、装置の中心領域に供給される。この例では、メタンなどの炭化水素ガスが使用される。炭化水素ガスは、マイクロ波放射を吸収し、これが、金属粉末を加熱する熱源をもたらす。したがって、金属粉末は、以下の両方から加熱される:(1)中心領域から漏れたマイクロ波エネルギー、及び(2)先端付近で溶融して溶融液にするための外部誘導加温。炭化水素ガスが分解するにつれて、炭素ラジカルが、プラズマラジカルのエネルギーを介して溶融金属液滴の表面で核形成する。
【0115】
図18A1は、プラズマ溶射トーチの軸方向電場構成1810を描写する。コベチック材料の形成については、複数の異なる装置及び対応するプロセスを用いて検討済みである。上記の装置及び対応するプロセスのどれでも、調節してコベチック材料の形成のための特定条件を達成することができる。図の具体的な軸方向電場構成では、プロセスは、電極間に電場1804を形成して、金属材料及び炭素材料の溶融液を通る電流を作り出すことを含む。具体的には、図のとおり、特別に構成されたプラズマトーチは、外部から制御される電場を有し、ここで溶融粒子はプラズマを形成し、次いでこのプラズマがメタ電極(meta electrode)になる。電場の反対側の電極は、示されている成長板1803により形成されている。コベチック材料は、加速帯1821を通じて加速され、次いで表面上に堆積する。生成した合金及びコベチック材料は、衝突帯1823において成長板上及び/または先に堆積した材料上に堆積し続ける。この堆積技法は、炭素添加が均質でありしかも高濃度である材料をもたらす。
【0116】
投入材料は、特定の性質を呈する材料を達成するように選択及び変更することができる。例えば、図のとおり、プラズマ溶射トーチへの投入物は、様々な投入ガス1812ならびに投入金属及び/または炭素粒子1818を含むことができる。上記の投入物は、1つまたは複数の投入ポート1862に導入することができる。場合によっては、投入金属及び/または炭素粒子は、投入ガス1812の流れの中に混入されている。そのうえさらに、成長板は、堆積の進行中に板自体の寸法及び組成を変更することが可能である。例えば、図のとおり、成長板1803は、最初は、基材1816であることが可能であり、その頂部にトーチ流の熱コベチック材料が堆積し、この熱コベチック材料が、堆積するにつれて、基材を少なくとも部分的に溶融させる。堆積した熱コベチック材料は、溶融または部分溶融状態から冷却されて、クエンチされた層1824を形成する。
【0117】
この様式では、任意の数の層を形成することができる。基材及び/または最上層のもしくはその近くの温度は、材料の次の層が、直前に堆積した層の溶融金属に着地したら、新たに堆積した層が横方向に成長してこの溶融金属の表面に単層グラフェンを生成するように、制御することができる。この機構は、従来の金属溶融法103では、炭素が溶融金属スラリーから析出するのとは対照的に、本開示のプラズマ溶射トーチ法104の応用は、炭素がマトリクスから析出するには足りないような短時間でのクエンチをもたらすという、少なくともその点において、他の技法とは区別される。このため、コベチック結合は層全体にそのまま維持される。クエンチにより金属及び十分に分散した炭素からなる固体が形成された後すぐに、別の層がその固体の頂部に溶射されるといった具合で、それにより、積層した単層グラフェンが形成され、この単層グラフェンは、成長し、固定され、迅速クエンチされることで、マトリクス内に炭素添加量が極度に高い真のコベチック材料を生成した。1つの例として、従来の金属溶融法103(図1Aを参照)を用いる場合、炭素添加量は、6%炭素金属を達成する可能性があると思われる。対照的に、プラズマ溶射トーチ法104(図1Aを参照)を用いる場合、60%の炭素添加量が、容易に達成される。場合によっては、投入及びプラズマ溶射トーチのプロセスパラメーター及びその環境の厳密な制御により、炭素添加量が、得られる材料中、多ければ90%もの炭素に近づくことを可能にする。
【0118】
プラズマ溶射トーチを用いた実験結果は、高添加量で高均一性のコベチック層が少なくとも2種類の迅速クエンチ(例えば、「スプラット」)法により形成可能であることを示した。第一の方法は、炭素粒子で金属粒子を覆い(例えば、プラズマ中)、得られる熱混合物を、それよりかなり低温の基材上に溶射する。第二の方法は、プラズマ中でグラフェンを生成させ、次いで溶融金属でグラフェンを覆う。どちらの場合も、プラズマプルームの中にある間に、真のコベチック結合(共有結合と金属化学結合の組み合わせを示す)を生じ、溶射物の迅速クエンチは、混合物を有機金属格子中に固定する働きをする。
【0119】
クエンチされた層の深さまたは厚さは、プラズマ炎1814と基材の間の距離を制御することにより、及び/または基材の温度を制御する(例えば、周囲より高温または低温のいずれかにする)ことにより、及び/または反応器中及び反応器周囲の圧を制御することにより、厚くするまたは薄くすることができる。
【0120】
図18Bは、プラズマ溶射トーチの径方向電場構成1820を描写する。この構成では、溶融した粒子が、トーチ内でプラズマを形成し、このプラズマが、メタ電極になる。他方の電極は、内壁の側部により形成される。
【0121】
上記の図18A及び図18Bの構成は、例にすぎない。異なる投入材料及び異なる投入ポート構成を含む異なる構成が、本明細書中開示されるプラズマ溶射トーチの概念から逸脱することなく、可能である。その上、異なる投入材料及び異なる投入ポート構成を含む異なる構成は、同じ意図した結果を達成することができる。例えば、同じ材料産物が得られるように調節された異なる構成2つを、図18C及び図18Dに関連して表示及び説明する。具体的には、図18C及び図18Dの例示構成は、セラミック皮膜材料を炭素含有粒子(例えば、グラフェン含有粒子)上にプラズマ溶射トーチ堆積させるために使用することができる。
【0122】
実際、炭素含有材料の薄膜堆積(例えば、大気圧化学蒸着(APECVD)及び/または化学蒸着(CVD)の他の変異形態を介して)は、材料加工の多くの分野で利用されてきている。そのような炭素含有材料を含む様々な複合体及びコーティングは、物理特性(例えば、強度、腐食の不浸透性など)の改善を示す可能性がある。様々な2D及び3D炭素の形態学的特徴は、炭素含有材料内の分子レベルの構成のおかげで、こうした物理特性の改善を複合体及びコーティングで発揮させる。場合によっては、2D及び3D炭素を複合体及びコーティングに使用することで、得られる炭素含有材料の高温不浸透性が大きく上昇する。しかしながら、場合によっては、こうした高温は、約2100℃よりも高くなり、そのような高温は、2D及び3D炭素自体が燃焼するのに十分な高さである。残念ながら、2D炭素及び3D炭素が破壊されると、次に複合体またはコーティング中の炭素により元々獲得された利益が破壊される。したがって、堆積技法(例えば、プラズマ溶射トーチ構成)は、炭素の燃焼温度より高温であってさえ、温度に影響されない複合体またはコーティングを作り出す必要がある。
【0123】
図18Cは、そのような構成を描写するが、これは厳密に、非限定的な例示にすぎない。投入及び様々な反応器内条件を調節することにより、グラフェン含有材料を、有機修飾したケイ素(ORMOSIL)の熱吸収層でコーティングすることができる。ORMOSILセラミック材料をグラフェン含有材料上に堆積させることは、複数の方法により達成可能であり、そのような方法には、ケイ素含有前駆体1841(例えば、ヘキサメチルジシロキサン)及び酸素などの反応性ガスを用いた、大気圧反応性プラズマ支援化学蒸着プロセスを通じたものが含まれる。ケイ素含有前駆体と酸素のこの特定混合物は、プラズマ内で反応性になる。プラズマ炎内で生じる分子解離は、上記の成長板1803などの表面上への酸化ケイ素の堆積を招く。これを達成するため、炭素含有粒子が反応器中で形成されるにつれて、その表面上に、有機修飾したケイ素セラミックが堆積するように、反応器内条件が制御される。反応器内成長及び反応器内堆積の制御(例えば、APECVDプロセスを制御することによる)は、炭素含有粒子の周囲に薄い石英コーティングをもたらし、次いでこれらの粒子が基材上に堆積する。薄い石英コーティングは、難燃性層として作用することで、炭素含有粒子を高温での燃焼から保護する。
【0124】
図18Dは、代替構成を描写するが、これは厳密に、非限定的な例示にすぎない。図のとおり、金属及び/または炭素含有材料が、反応器に投入される。マイクロ波エネルギー1822は、炭素含有材料を解離させる温度(例えば、図10のT(c-溶解))を少なくとも達成するように制御される。ケイ素含有前駆体1841(例えば、HMDSO、HMDSNなど)が、プラズマ炎中に導入され、プラズマ残光では温度が低下する。温度が低下するにつれて、炭素粒子が形成されはじめ、酸化ケイ素でコーティングされる。次いで、酸化ケイ素でコーティングされた炭素粒子が、基材上に堆積する。
【0125】
1つの実施形態において、こうした3D材料のおよそ10nm厚さの薄層を、基材上に堆積させることができ、この薄層は、たとえ1200℃でも燃焼または引火しない。これは、原始炭素(例えば、グラフェン)が結晶化している、例えば、それが非晶質材料ではないためである。むしろ、炭素は、単にそれ以上燃焼することがない状態まで細かくされてしまっている。
【0126】
1つの使用例において、上記のプラズマ溶射トーチ技法を用いて、非共晶である新型のはんだを生成することができる。あるいは、別の使用例として、プラズマ溶射トーチは、コーティング材料を直接基材上に溶射して、下層の材料が酸化するのを防ぐ。
【0127】
材料の周囲に石英を置くことは、大気圧中でたとえ1200℃でも発火しない材料が形成されるという他に、応用上の大きな利点をもたらすことが多い。
【0128】
有機修飾したケイ素だけでなく、他の有機物質が、炭素粒子または炭素層のコーティングに使用可能である。コーティングの特性は、制御可能である。1つの例として、溶射される材料の表面の細孔を調節して、水力学的に滑らかにすることができる。
【0129】
プラズマ溶射トーチを使用して、グラフェン及びケイ素で構成された、ガラスコーティングされた熱吸収不燃性グラフェンを形成することができ、この場合、ケイ素は、グラフェンが1600℃を超える高温に耐えることができるように、グラフェンをコーティングしている。そのようなガラスコーティングされた熱吸収不燃性グラフェンは、赤外線エネルギーを吸収する。
【0130】
有機修飾ケイ素コーティングを生成する1つの具体的方法は、以下の工程を含む(例えば):(1)ケイ素含有前駆体をプラズマ溶射トーチ装置に導入すること、(2)ケイ素含有前駆体を、炭素粒子を含む担体ガスと混合すること、この担体ガスは前駆ガスを同伴する、及び(3)炭素粒子をケイ素でコーティングすること。
【0131】
図18C及び/または図18Dのプラズマ溶射トーチ構成から得られる難燃性及び赤外線隠蔽材料の特性は、少なくとも部分的に、反応器を通じた時間温度経路を制御することにより調節可能である。より一般的には、図18A図18B図18C、または図18Dのプラズマ溶射トーチ構成から得られる材料の特性は、少なくとも部分的に、反応器内のマイクロ波エネルギーを制御する(例えば、パルスにする)ことにより、調節可能である。
【0132】
図19は、パルスオン及びパルスオフの間のエネルギー対時間を描写した図1900である。より詳細には、この図は、1回の全時間サイクルを示し、T=0から50マイクロ秒までは、マイクロ波は連続してオンになっており、次いで、示されるサイクルの残部は、マイクロ波がオフになっている時間を描写する。プロットされた曲線は、サイクルにわたる(1)密度の変化、及び(2)温度の変化、を描写する。T=0時点で、温度は最低点にある(例えば、図の起点に描かれるとおり)。温度は急速に上昇し、その後下降するが、それまでの間の時間、プラズマ密度は、相対的に安定した値に到達している。T=50マイクロ秒時点でマイクロ波がオフになるとき、プラズマ密度及び経時的電子温度の両方が、急速に下降する。パルス時間及びデューティーサイクルは、任意の時点で特定の密度及び時間を達成するように制御することができる。
【0133】
図20A1は、プラズマ溶射トーチを用いて、炭素と銅を組み合わせた場合に生じる有機金属結合を示す画像を表示する。図のとおり、炭素2052は、銅2054内に深く埋没している。一般的に理解されるとおり、及び本明細書中称するとおり、有機金属化学は、有機金属化合物、すなわち有機分子の炭素原子と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属をはじめとする金属との間に少なくとも1本の化学結合を有する化学物質についての学問を意味し、時には、ホウ素、ケイ素、及び錫などのような半金属も含むように拡大される。オルガニル(organyl)断片または分子との結合とは別に、一酸化炭素(金属カルボニル)、シアニド、またはカーバイドのような「無機」炭素との結合もまた、一般に有機金属とみなされる。関連化合物、例えば、遷移金属水素化物及び金属ホスフィン錯体は、有機金属化合物の検討において含まれる場合があるが、厳密に言えば、これらは必ずしも有機金属ではない。
【0134】
有機金属化学の範疇において、有機銅化合物は、炭素と銅の化学結合を有するものであり、独自の物理特性、合成、及び反応性を有する場合がある。有機銅化合物は、構造及び反応性に多様性があってもよいが、酸化状態が銅(I)である、例えば、Cuで表されるという若干の限定が依然としてある。d10金属中心として、銅(I)は、Ni(0)と関連性があるが、こちらの酸化状態の方が高いため、π逆供与への関与が少ない。中間体としてCu(II)及びCu(III)の有機誘導体が出てくる可能性があるが、これらは、単離されることはおろか観察されることさえ珍しい。幾何構造に関しては、銅(I)は、その球面電子殻に合わせて、対称構造を採用する。典型的には、3つの配位構造のうちの1つを採用することができる:直線型二配位、三角形三配位、及び四面体四配位である。有機銅化合物は、様々なソフトな配位子、例えば、アルキルホスフィン(RP)、チオエーテル(RS)、及びシアニド(CN)と錯体を形成する。
【0135】
上記技法のいずれか1つまたは複数により、図20A1及び図20A2に描写される炭素は、銅と化学結合する。これは、銅と並置されてファン・デル・ワールス力(例えば、原子または分子間の距離依存性相互作用を示す)によりそこに付着するにすぎないのとは対照的である。イオン結合または共有結合とは異なり、ファン・デル・ワールス引力は、化学的電子結合から生じるのではない。ファン・デル・ワールス力は、比較的弱く、したがって外乱の影響をより受けやすい。その上、ファン・デル・ワールス力は、相互作用する分子間の距離が長くなるとすぐに消失する。代わりに、望ましいものが、金属と炭素の間の有機金属結合である。
【0136】
図20A2は、基材材料に施された傾斜組成物の画像を表示し、画像には3つの材料特性帯が示されている。バルク金属帯2066は、これら3つの材料特性帯のうちの第一材料特性帯である。図のとおり、第一材料特性帯は、第一結晶学的編成にある金属を含み、第一結晶学的編成は、第一材料特性帯に存在する金属原子間に、実質的な金属結合を有する。この第一材料特性帯は、第二材料特性帯と実質的に隣接しており、この第二材料特性帯は、第一材料特性帯と、少なくとも部分的に重なりあっている。コベチック材料帯2064は、第二結晶学的編成にある少なくとも一部の炭素原子を含み、第二結晶学的編成は、第二材料特性帯に存在する炭素原子の一部と第一材料特性帯に存在する金属原子の一部の間に、少なくともいくつかの共有結合を有する。頂面帯2062は、第三材料特性帯であり、この第三材料特性帯は、第二材料特性帯と、少なくとも部分的に重なりあっている。この頂面帯は、第三結晶学的編成で配向したさらなる炭素原子を含む。第三結晶学的編成は、第三の材料特性帯に存在するさらなる炭素原子の1つ1つの間に少なくともいくつかの共有結合を有することを特徴とする。様々な実施形態において、これら材料特性帯のどれにでもいくらか金属原子が存在する可能性があり、これら材料特性帯のどれにでもいくらか炭素原子が存在する可能性があるが、この実施形態は、金属含有量の高い帯2074がバルク金属帯2066に隣接していることを特徴とする。様々な実施形態において、こちらでは、これら材料特性帯のどれかにいくらか炭素原子が存在する可能性があり、あちらでは、これら材料特性帯のどれかにいくらか金属原子が存在する可能性があるが、この実施形態は、炭素含有量の高い帯2072が頂面帯2062に隣接していることを特徴とする。
【0137】
図20Bは、炭素をバルクアルミニウムに添加した場合に生じる、数層が積層した構成を描写した材料進展図20B00である。これらの実施形態において、材料は、存在する、富炭素コベチック基材またはカーバイド層上に溶射されて、炭素焼結及び/または金属溶融カプセル化を通じて炭素炭素結合を生成させ、次いでこの結合が、付着をもたらして複合体皮膜を形成する。材料進展図20B00は、アルミニウムバルク材料上に溶射される組み合わせ材料(ケイ素カーバイド)の一例にすぎない。プロセスを調節して、バルク材料上に堆積するコベチックまたはコベチック様皮膜を生成させることができる。次いで、得られる材料をコーティングして、機能化最上層を生成させることができる。基材上に組み合わせ材料を溶射するための装置の可能な構成の1つを、図21Aに提示する。
【0138】
図21Aは、材料の溶融混合物を基材上に溶射するための装置を描写する。この図は、格納容器の内側に複数の領域を備えるマイクロ波反応器を描写する。パルスマイクロ波エネルギーは、格納容器内に送達される。炭化水素プロセスガス605は、入口を通じて提供される。マイクロ波エネルギーは、プロセスガスを、プラズマを形成するのに十分な高温に加熱する。格納容器内で材料が膨張することにより、プラズマプルームが生成する。材料を格納容器中に連続添加すると、上記の膨張と相まって、プルーム中及び周囲にトーチ効果がもたらされる。プラズマプルーム内及び周囲が高温になった結果、炭素が水素と解離し、それによる複数の異なる炭化水素種(例えば、CH、CH)が形成される。温度が上昇し続けることで(例えば、図のとおり、第一領域2104中で)、全てまたはほぼ全ての炭素原子は、水素と解離する。任意の既知の技法を用いることで(例えば、気固分離装置の使用)、水素のみの化学種を固体炭素種から分離する。
【0139】
格納容器の第一領域2104と格納容器の第二領域2106の間の界面で、溶融金属もしくは溶融金属複合体、または溶融セラミック金属、または金属マトリクス、または任意の種類の金属混合物が、第二の入口を通じて格納容器に導入される(図のとおり)。第二の入口の場所は、プラズマプルームの寸法及び/または格納容器への入り口地点での溶融金属温度に基づいて選択される。より詳細には、金属融液2108は、溶融金属が炭素種と混ざり合う場所で、反応器に導入される。混合物が格納容器を通じて流れていく(例えば、高速で)につれて、混合物の温度は低下していく。流れている混合物は、炭素と溶融金属の混合物が出口2110から溶射されるように、高速で格納容器を出る。混合物は、標的基材2116上に堆積する(例えば、溶射材料2112の溶射を介して)。溶射材料2112及び/または得られる堆積材料2114の均一性を制御するための様々な機構を、図23A図23Dに関連して表示及び検討する。
【0140】
第二領域の温度は、炭素の少なくとも一部が混合物から析出するのに十分な低さである。しかしながら、解離した炭素の大部分は、溶融金属との混合物中にある。炭素と混合された溶融金属は、標的基材2116に到達すると、冷却されて固体になる。溶融混合物から固体堆積物へと転移する間に、炭素は金属と炭素の層間に捕捉される。ある特定の温度で、炭素は金属と共有結合を形成し、その結果、コベチック材料が得られる。このコベチック材料は、金属マトリクスと炭素の間の凝集力(例えば、共有結合)が増大していることにより、ある範囲の機械特性、熱特性、電気特性、及び摩擦学的特性を呈する。
【0141】
そのようなコベチック材料は、反応器の第一領域及び第二領域における材料の構成物のエネルギー分布を制御するのにパルスマイクロ波エネルギーを利用した結果である。より詳細には、反応器の第一領域及び第二領域における材料の構成物のエネルギー分布は、部分的にはパルスマイクロ波の使用により、及び部分的には反応器のチャンバーの外部環境で金属粒子を前溶融することにより(例えば、完全溶融したまたは部分溶融した金属を反応器チャンバーに導入するように)、制御することができる。任意の既知技法を、単独でまたは金属粒子の溶融と併用して、使用することができる。そのため、粒子が完全溶融しているのか部分溶融しているかの度合い及び/または混ざり具合を制御することができる。
【0142】
図21Bは、コベチック材料を基材上に溶射する方法を描写する。この方法は、図21Aの装置と合わせて使用することができる。図のとおり、この方法は、プロセスガス用入口、金属融液用入口、及び出口を備えるマイクロ波反応器を用いて行われる。操作の前に、マイクロ波反応器を配置する(操作21B02)。操作21B10では、入口は、炭化水素プロセスガスを反応器の第一領域に導入する働きをする。マイクロ波エネルギーを使用して、金属融液に到達する前に、炭化水素プロセスガスが解離して炭素種と水素種になるように、反応器の第一領域の温度を上昇させる。異なる入口は、金属融液を反応器の第二領域に導入する働きをする(操作21B20)。第二領域の高温は、解離した炭素が金属融液と混ざり合うまで維持される(操作21B30)。上記プルームの効果は、混合物を反応器の第三領域中へと移動させるように働く(操作21B40)。マイクロ波エネルギー源から離れていく移動には、炭素の少なくとも一部が濃縮により混合物から出てくるまで混合物の温度を低下させる効果がある(操作21B50)。しかしながら、たとえ温度が低下したとしても、プラズマトーチ効果は、混合物を高速で出口を通じて移動させる働きをする(操作21B60)。そうして、溶融混合物は、基材上に溶射される(操作21B70)。
【0143】
図21Cは、皮膜を溶射するために使用されるプラズマ溶射プロセスを描写した概要図である。図のとおり、炭素ラジカル、多環式芳香族、グラフェンシート、及び金属粒子が、プラズマ反応器中、高温で混合される(例えば、図の第一領域2104を参照)。こうした高温で核形成が起こり、そして反応器内の温度が低下するにつれて(例えば、図の第二領域2106を参照)、成長及び組み立てが始まる。可能な成長機構の1つは、サブミクロン寸法のアルミニウム粒子が、数層グラフェンでコーティングされることで描写される。サブミクロン寸法のアルミニウム粒子は、金属結合、共有結合、及びコベチック結合の組み合わせでひとまとまりになっている。より詳細には、及び2nmスケールで示すとおり、炭素原子がアルミニウム原子と結合している。炭素原子は、アルミニウムマトリクス中に位置するコヒーレントグラフェン面内で組織化される。アルミニウムを含む上記検討は、例にすぎない。他の金属も使用可能である。実際、コヒーレントグラフェン面は、面心立方(FCC)金属格子中だけでなく、体心立方(BCC)金属格子、または六方最密(HCC)金属格子中にも位置することができる。
【0144】
次いで、上記のコーティングされた粒子を焼結して、100ミクロンのオーダーの直径を有する粒子を形成する。次いで、これら半溶融粒子を、反応器を通じて加速させ、基材に衝突させる(例えば、第一路で)、または先に堆積した衝突粒子層に衝突させる(例えば、第二路または第N番路で)。
【0145】
図22Aは、炭素粒子を溶融金属で包むための装置である。図22Aの装置の構成は、溶融金属の導入が、溶融装置2209を使用して制御されるという、少なくともその点において、図21Aの装置の構成とは異なる。金属融液は、反応器に導入されたときに炭素粒子を包み込む溶融金属を生成するように制御される。
【0146】
図22Bは、炭素粒子を溶融金属で包む方法を描写する。この方法は、操作22B30において、炭素粒子種の一部が解離した炭素から形成されるように、反応器の異なる領域の温度が維持されるという、少なくともその点において、図21Bの方法とは異なる。操作22B50において、炭素粒子の少なくとも一部は、溶融金属で包まれる。炭素粒子の構成原子と溶融金属の原子の間に一部の結合が形成される。操作21B60において、金属に包まれた炭素粒子は、出口を通って移動し、さらに温度が低下する。金属に包まれた炭素粒子が基材上に堆積するとき(操作21B70)、さらなる結合が、金属に包まれた炭素粒子と基材の金属の間に形成される。
【0147】
図23A図23B図23C、及び図23Dは、一部の実施形態に従う堆積技法の例を描写する。
【0148】
図23Aに示すとおり、堆積した材料は、高さのある中間領域とそれより低い末端領域により特徴付けられる曲面形状を有する。場合によっては、これは、スポット状に堆積した材料にとって所望の形状である。他の場合では、より広い面積にわたり堆積材料を溶射することが望ましい。これは、溶射物を基準に基材を移動させることにより、または基材を基準に溶射物を移動させることにより、達成可能である。図23Bは、供給リール上に配置された可動式基材2310を表示する。可動式基材は、巻き上げリールに引き揚げたり巻き上げリールに巻き取ることができる。そのため、及び図23Bの構成において、溶射により、コベチック材料は、移動する基材上に均一に堆積する。溶射される材料2112と基材の間の相対的移動が制御されるとき、得られる堆積材料は、均一な厚さのものになる。
【0149】
状況によっては、平坦ではないが、堆積した材料の表面に均一なパターンを有することが望まれる。そのような場合、基材の移動を、一連の離散した位置を通じて段階的にすることができ、その結果、図23Cのパターンになる。それに加えて、またはそれに代えて、スロット付きアンテナを、溶射される材料2112と基材の間に配置することができる。スロット付きアンテナは、スロット付きアンテナの横方向距離にまたがり均等に溶射物を分配することにより機能する。そのようなスロット付きアンテナを使用することで、1箇所の溶射された材料2112は、実質的に図23Dに示すとおりの厚さ及び表面均一性を有することができる。
【0150】
図24A及び図24Bは、材料を基材上に堆積させる従来技法を描写する。図24Aに示すとおり、炭素集塊物は、結合剤(例えば、重合体添加物)の使用を通じてひとまとまりになっている。この結果、炭素集塊物と基材の間の界面では結合が弱くなる。図24Bは、結合剤を使用した、基材上の炭素材料のコーティングを描写する。結合剤を使用する従来の堆積法には、剥離の問題がつきまとう。その上、基材の表面を機械的に前処理する及び/または結合剤材料の堆積で前処理するときでさえ、基材と炭素集塊物の間の相互作用は弱い。
【0151】
ここまで説明してきたとおり、結合剤を使用して及び/またはコーティング技法を使用して基材上に材料を堆積させることに基づくコーティング(例えば、図24A及び図24Bに関連して表示及び説明されるものなど)には、剥離、低い強度特性、及び他の望ましくない機械特性という問題がつきまとう。プラズマ溶射技法に基づく改善を、図25A及び図25Bに関連して表示及び検討する。
【0152】
図25A及び図25Bは、一部の実施形態に従い、基材の表面に共有結合をもたらす例示の堆積技法を描写する。具体的には、及び図のとおり、本開示の技法を使用したとき、炭素と基材の間の共有結合によりコベチック材料が形成される。そのため、結合剤は必要ない、すなわち使用されない。そのうえ、基材とコベチック材料の間の界面で形成される結合の多くは、強力な共有結合である。1つの具体的例において、基材はアルミニウムであり、共有結合は、アルミニウムの面心立方構造にある原子と六面構造にある炭素原子の間で形成される。界面結合の概要図を、図25Bに表示する。
【0153】
図26A図26B図26C、及び図26Dは、アルミニウムの面心立方構造の正方形中の部位と炭素のある種の結晶学的構造で生じる六角形中の部位の間にどのように共有結合が形成されるのかを描写する概要図を提示する。
【0154】
図26Aは、アルミニウムの面心立方構造の正方形を示す直交面の図である。図26Bは、アルミニウムのある種の結晶学的構造で生じる六角形を示す直交面の図である。
【0155】
図26Cは、炭素のある種の結晶学的構造で生じる六角形をアルミニウムの面心立方構造の正方形の最上部に重ね合わせる場合に可能な重なり方の1つを描写する。図26Dは、ある特定部位で形成される共有結合を示す。アルミニウムの面心立方構造の例は、1例にすぎない。他の結晶学的構造を有する他の材料でも可能である。
【0156】
図26Eは、積層したコベチック材料26E00の例であり、ここでは、グラフェン様構造が、金属材料の層間に挟まれている。下側の金属材料層は、基材層である。上の金属材料層は、クエンチされた材料で形成されたものであり、この材料は、その前は、反応器中にある間、溶融していたものである。金属材料の層間に挟まれているグラフェン様構造は、2つの金属層の間に金属金属結合が形成されていることにより、2つの金属層の間に捕捉されている。金属結合に加えて、グラフェン様材料を金属層間に閉じ込める働きをする他の結合が形成される。複数箇所で、炭素格子に欠陥が存在する。そのような欠陥の間または付近で、様々な種類の結合が形成される。
【0157】
コベチック材料を形成するための上記技法のどれでもまたは全てが、他種多様な基材を含む多くの用途に使用可能である。その上、溶射物と基材の間の相対的移動は、任意の厚さの堆積をもたらすように制御可能である。任意の既知の技法を使用して、相対的移動を制御することができる。例えば、固定された基材に対して出口を移動させることができる。これは、手持ち式のデバイスまたは固定された基材に対して移動する機械制御されたデバイスを使用して達成可能である。場合によっては、出口から出て溶射される材料の少なくとも一部が基材表面に電気的に誘引されるように、基材にバイアス電圧をかけることができる。これは、基材が均一な平坦性を持たない用途に応用できる。例として、基材が均一な平坦性を持たない用途として、以下を挙げることができる:(1)厳しい腐食条件に供される機械で使用される成形された構成要素、(2)タービン翼、(3)熱交換器構成要素など。こうした用途の多くについて、以下でさらに検討する。
【0158】
他の状況では、堆積物の特性(例えば、厚さ、横方向均一性など)は、様々な化学蒸着技法及び/またはその組み合わせの使用を通じて向上させることができる。厳密に1つの例として、当該分野で既知であるプラズマ支援化学蒸着技法に関する態様またはパラメーターは、堆積したコベチック材料層の特性が最適化されるように制御することができる。別の例として、コベチック材料を表面上に堆積させて皮膜またはコーティングを形成させるのではなく、コベチック材料を粒子状に形成させて(例えば、低温環境中に溶射することにより)、粒子を粉末として収集することができる。粉末コベチック材料の製造及び使用を含む様々な技法について、以下で簡潔に検討する。
【0159】
粉末コベチック材料
状況によっては、コベチック材料を皮膜またはコーティングとして基材上または基材中に形成させるのではなく、コベチック材料粉末として、コベチック材料を送達することができる。そのような粉末コベチック材料は、コベチック材料が反応器から出てくるところで、コベチック材料の融点より低い温度に冷却し、粉末として収集することにより、収集できる。そうすると、この粉末は、室温で取り扱い可能になる(例えば、貯蔵する、輸送する、注ぐ、混合するなど)。その後、粉末は、再溶融して圧縮成形する、または再溶融して再溶射することが可能である。例として、腐食性の高い環境で使用される構成要素を、射出成形または押出成形を用いて、そのような粉末コベチック材料から形成することができる。多くの装置を、単独でまたは組み合わせて使用することで、コベチック材料粉末の形成及び輸送が可能である。装置例を、図27A及び図27Bに関連して表示及び説明する。
【0160】
図27Aは、粉末コベチック材料2710を製造する装置例27A00を描写し、この装置例は、溶射物がマイクロ波反応器の出口2110を通じて押し出されると、冷却領域2702を使用して溶射された材料2112を冷却する。任意の1種または複数の冷却技法を任意の組み合わせで使用して、冷却領域2702中のコベチック材料の温度を、コベチック材料の融点より低い温度に低下させることができる。冷却領域2702は、1つまたは複数の装置を収容して、冷却を引き起こすことが可能である。例えば、及び図のとおり、収集容器2704に、1つまたは複数の装置を装着して、収集容器にサイクロン効果を引き起こし、それによりコベチック材料の温度を低下させるための時間を延長させることが可能である。場合によっては、コベチック材料の冷却時間は、コベチック材料が非常に規則的な結合を持って焼き鈍しされるように制御される(例えば、時間を延長するまたは短縮することにより)。場合によっては、コベチック材料が冷却される時間を制御することにより、コベチック材料が、粉末状を維持したままで、結晶化して非常に規則的な結晶構造になることを可能する。一部の実施形態において、機械式タンブラー撹拌器を、マイクロ波反応器の出口2110と収集容器2704の間に装着することが可能である。タンブラー撹拌器は、周期的に洗浄または交換することができる。
【0161】
代替的または追加的に、ならびに粉末コベチック材料を流体に含ませて収容する及び/または輸送することが好都合である及び/または必要とされる状況において、流動床装置が使用可能である。例えば、粉末の粒子集塊を回避するため、粉末コベチック材料を液体中に保持することができる。一部の実施形態において、流動床装置を、マイクロ波反応器の出口2110と収集容器2704の間に装着させることができる。そのような流動床装置の1つの実施形態について、図27Bに関連して表示及び説明する。
【0162】
図27Bは、粉末コベチック材料を流体中で冷却し及び取り扱うための流動床装置例27B00を描写する。
【0163】
図のとおり、溶融金属と炭素の混合物は、反応器の出口を通じて押し出されるとともに流動床2750の頂部に押し入れられる。溶融金属と炭素の混合物は、出口を通じて押し出されるにつれて、粒子を形成する様式で冷却される。粒子には、下向きの重力が作用し(例えば、図のとおり下向きの方向で)、一方それと同時に、プロセス流体2754は、流動床の底部から押し込まれて、上向きの力を生み出す。そのため、粒子は、流動床の底部に向かって加速するが、その加速度は局所重力の加速度よりも遅い。流動の動態は、流動床の幾何構造により部分的に調節することができる。例えば、図のとおり、流動床のある長さを先細胴体2762にすることができ、先細胴体の第一端は、第一寸法D1を有し、先細胴体の第二端は、第二寸法D2を有し、ただし、D1>D2である。流動床の各部分内の温度は、部分的には、コイルに電力を供給する電源2752により(図のとおり)及び/またはプロセス流体2754を加熱する熱源2760により、プロセス流体が流動床の底部に入る前に、制御することができる。
【0164】
流動床内の及び流動床の環境界面での圧力及び流速ならびに他の条件は、粉末と流体の混合物が一緒になって流体として挙動するように機能する。混合物は、流体としての性質及び特徴、例えば、重力下で自由に流動する能力及び/または流体取り扱い技法を用いて送ることができる能力を呈する。
【0165】
図27Bの実施形態において、流動床は、複数のポートを先細胴体の様々な高さで有する。このため、第一粉末を含む流体2756が特定温度/圧力で流れ出る一方で、第二粉末を含む流体2756は第二の異なる特定温度/圧力で流れ出るようになっている。複数のポートを通じた流れは、収集容器が第一粉末を含む流体2756及び第二粉末を含む流体2756を任意の比または量で受け取ることができるように、制御することができる。
【0166】
コベチック材料の形成法
表3は、粉末コベチック材料の形成法の一部の例であって限定ではない。
【表3】
【0167】
方法例1
方法1の一部の実施形態において、マイクロ波反応器の第一領域で、構造化炭素(例えば、炭素同素体)を形成させる(例えば、炭化水素プロセスガスの解離を通じて)。第一領域より低温にある第二領域で、金属化炭素材料(例えば、有機金属材料)が形成されるように、構造化炭素を金属で修飾する。金属化炭素材料をさらに、金属の融点より低い温度に冷却する。一部の実施形態において、金属化炭素材料は、最初、金属で修飾された炭素粒子の形状をしている。粒子を、粉末が形成されるように、さらに冷却する。粉末は、収集して利用施設に輸送することができる。コベチック結合を有する金属化炭素材料を含む粉末は、粉末から構成要素を形成する任意の既知技法と併用して、再溶融及び使用することができる。厳密に例として、構成要素は、型押成形に続いて再溶融、等方圧加工に続いて再溶融、熱間鋳造、金属射出成形、レーザー焼結などを用いることにより、粉末から形成することができる。
【0168】
方法例2
この方法2では、1種または複数の炭化水素ガス(または場合によってはガス及び液体)を、システムに投入する。厳密に例として、システムに投入可能なガス及び/または液体として、メタン、エタン、メチルアセチレン-プロパジエンプロパン(MAPP)、及びヘキサンが挙げられる。第一温度にある第一領域2104において、炭素原子が、他の原子と解離する(例えば、水素と解離する)。溶融金属2108は、金属粒子として反応器に導入される。次いで、第二領域2106において、第一領域で生成した炭素が、金属粒子と結び付く。炭素は、金属粒子の表面上に成長する、及び/または金属粒子の内部で成長する。一部の状況及び一部の条件下において、炭素の成長は、金属粒子上または中での2D炭素の成長を含む。他の状況及び/または他の条件下において、炭素の成長は、金属粒子上または中での3D炭素の成長を含む。上記の成長状況のいずれにおいても、成長は、格子が許容する最大限度まで進行することができる。例えば、溶融金属は、面心立方(FCC)結晶構造を持つアルミニウムであることが可能であり、炭素は、特定濃度までアルミニウムとの固溶体を形成することができる。一部の実施形態において炭素は、金属の特性(例えば、結晶構造)により決定される濃度まで金属との溶液を形成し、次いで金属炭素溶液から析出して、金属粒子上及び/または内に2Dまたは3D炭素を形成する。
【0169】
この方法2での成長は、非平衡温度条件下で行われる。具体的には、様々な異なる温度条件は、以下(例えば)を制御するものである:(1)上記解離を制御するために必要である第一領域の第一温度(例えば、高温側)、及び(2)第二領域における金属粉末の初発溶融及び/または金属炭素粒子の形成及び特性を制御するための、第二領域の第二温度(例えば、低温側)。これら2つの帯における温度は、独立制御が可能である。この方法を用いると、溶射された材料は、真のコベチック挙動を呈する真のコベチック材料である。
【0170】
方法例3
限定するものではないなおさらなる例において、材料及び/またはコーティングを、混合材料、例えば、トリメチルアミン(TMA)、トリメチルグリシン(TMG)、及びメチルアセチレン-プロパジエンプロパンから、投入粒子上に生成または堆積させることができる。粒子は、冷却して粉末として収集することができる。第一帯で標的材料から生成可能な粒子の例の一部としては、相化炭素、炭化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、または金属がある。場合によっては、投入粒子は金属であり、化合物皮膜(例えば、金属酸化物または金属窒化物)が、投入金属粒子をコーティングし、一方で他の場合では、投入粒子は、化合物材料を含有し、金属コーティングが投入粒子上に堆積する。第一帯中で投入ガスから生成可能な粒子の例の一部としては、炭素同素体(例えば、固有の炭素)、ケイ素、ZnO、AlOx、及びNiOがある。
【0171】
一部の実施形態において、ガスは、様々な非炭化水素ガスまたはアルコールも含めて、第一帯に投入され、第一帯は、スパッタリング装置及び電源を備えており、スパッタリング装置は、選択された標的材料から複数のイオン種を生成するように構成されている。標的材料及びイオン種は、結び付くことで、複数の粒子を形成する。電源は、AC、DC、RF、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HIPIMS)電源が可能であり、電源の電力、電圧、周波数、反復率、及び/または他の特性を調節することにより、標的材料から複数のイオン種を生成するように構成することができる。
【0172】
図27Cは、粉末コベチック材料の製造に使用されるプラズマ溶射プロセスを描写した概要図である。
【0173】
粉末材料加工の順序
図27Cに、炭化水素分解及び粒子核形成(例えば、図の第一領域2104)から、グラフェン成長(例えば、図の第二領域2106)に至り、半溶融粒子を冷却し(例えば、図の冷却領域)及び粉末コベチック材料を収集する(例えば、収集領域中で、及び収集容器2104に入れる)粉末材料加工の順序の例を視覚的に表示したものを示す。粉末材料加工順序の例の有効性の基礎となる機構を、ここで簡単に検討する。
【0174】
金属前駆体(有機金属形状か粒子形状かにかかわらず)が存在しない場合、マイクロ波プラズマは、メタンを解離させて、炭素ラジカル(ならびに多環式芳香族/アセチレン)を形成させ、その後、この炭素ラジカルがそれぞれ数層(FL)グラフェン(または積層ラメラ)構造を形成することになる。しかしながら、プラズマ帯(例えば、図21A及び図22Aの反応器を示す)に金属前駆体が存在する場合、金属(有機金属核または粒子のいずれかに由来)は、不均一炭素成長(例えば、イオン化ラジカル、グラフェン核、または多環式芳香族(アセチレン)の形状の炭素)の種地として機能することができる。
【0175】
溶解性の低い金属、例えば、AlまたはCuを使用する場合、グラフェンシートは、金属表面上で成長する可能性がある(例えば、吸着原子/単量体のいずれかを通じて、またはクラスターとして)。成長の特性は、少なくとも部分的に、金属表面における対称性及び界面自由エネルギー最小化に依存する。そのため、炭素成長は、金属粒子において、表面での金属原子再スパッタリング事象と並行して起こり、混合した及び/または積層した金属/炭素構造を生成する。当該分野で既知であるとおり、金属粒子の半径(例えば、表面曲率)は、炭素の金属粒子に対する溶解性に影響を及ぼす可能性がある。例として、半径が小さいほど(例えば、曲率が高くなることに相当する)、平衡に対する溶解性が上昇し(平坦表面で)、この溶解性の上昇は、次いで、グラフェン層の厚さに影響を及ぼす可能性がある。
【0176】
粉末コベチック材料2710が収集容器に収集されてしまえば、粉末コベチック材料は、従来技法(例えば、射出成形技法、粉末金属を用いる他の技法)を使用してさらに加工することができる。
【0177】
粉末コベチック材料を用いる製造技法
図28は、射出成形技法を用いて粉末コベチック材料から構成要素を作製する方法を描写する。図のとおり、この方法は、特定用途及び/または環境で使用される構成要素の特性のセットを集めることで始まり(操作2810)、次いで、当該用途または環境のための特性のうち少なくとも1つに基づいて特定の粉末コベチック材料を選択する(操作2820)。選択は、構成要素に望まれる機械特性に基づいて、及び/または目的とする使用に対応する環境で構成要素に望まれる抗食性に基づいて、及び/または他の望まれる特性に基づいて行うことができる。選択は、複数の望まれる特性に基づいて行うことが可能であり、場合によっては選択のツールが、特性のセット及び目的関数に基づいて最適化問題を解決することが可能であると思われる。
【0178】
コベチック材料が選択されたら(操作2820)、選択された粉末コベチック材料2825を溶融させ(操作2830)、型に導入する(操作2840)。型の内側で、所定温度及び所定圧力を、所定期間維持し(操作2850)、その後、型の内側の温度及び圧力を、約30℃及び約大気圧にする(操作2860)。構成要素を、型から離型させ(操作2870)、目的の用途に配備する(操作2880)。
【0179】
ここまで記述したとおり、特定のコベチック材料の選択は、複数の所望の特性に基づく可能性があり、そのような特性の一部は、目的関数の変数として使用される可能性がある。場合によっては、特定のコベチック材料の選択は、特定の支配的特性(例えば、機械強度、重量、抗食性など)に基づく可能性がある。場合によっては、関心対象の特性は、他の特性との比(例えば、強度対重量、比熱対重量など)である。場合によっては、支配的特性は、他の特性に課される1つまたは複数の制約に対して最大化(または最小化)される対象となる。
【0180】
そのため、粉末コベチック材料は、広範囲にわたる用途に配備することができる。多くの場合、粉末コベチック材料製の得られる構成要素は、他の材料製の構成要素より優れている。ある種の支配的特性と相関する使用例の一部を、以下の図29に関連して表示及び検討する。
【0181】
図29は、コベチック材料の様々な特性を描写する。図の特性には、力学的属性、熱伝導度、抗酸化性、耐久性、高温での抗軟化性、抗疲労性、及び電気伝導度が含まれる。個別パラメーター及び/またはこれらパラメーターの組み合わせは、特定用途用に特定コベチック材料を選択するときに支配的となる。
【0182】
厳密に例として、抗酸化性は、耐食弁の製造に使用するめのコベチック材料を選択するときに、支配的パラメーターとなる可能性がある。別の例として、飛行機エンジンのタービン用翼の製造に使用される特定コベチック材料を選択する場合、力学的属性、例えば、強度対重量比、強度最小制約の対象が、支配的力学的属性となる可能性がある。この翼は、非常に高い抗疲労性も呈する必要がある可能性がある。
【0183】
典型的には、コベチック材料は、上記特性を呈するだけでなく、コベチック粉末の作製に使用される金属または合金よりも低い密度も呈する。密度が低いほど、形成された構成要素の重量も、同じ構成要素を炭素添加の不在下で金属または合金から作製した場合と比較して、それに応じて軽くなることが多い。そのため、トラック部品(例えば、図のとおりの、キャブ構成要素)、自動車部品(例えば、ドア、フェンダー、屋根パネルなど)、オートバイ部品、自転車部品、ならびに航空機、及び/または船舶、及び/または宇宙用ビークルもしくはプラットフォームの様々な構成要素(例えば、構造部材)は、コベチック材料の作製に使用される土台金属または合金と比較した場合に、コベチック材料のより低い重量対強度比を利用することができる。
【0184】
別の例として、コベチック材料は、コベチック材料で形成された構成部材が高温用途(例えば、電子機器用ヒートシンク、工業用熱交換器など)で使用可能になるような並外れた熱伝導度を呈することが多い。
【0185】
なおも別の例として、コベチック材料は、並外れた耐食性を呈することが多い。より詳細には、上記の技法を用いて作製されたコベチック積層体は、最上層(例えば、構成要素と環境の界面)においてさえ、並外れて高い耐食性を呈する。この特性は、コベチック材料を用いて作製された構成要素が過酷な環境にさらされるとき、特に関心が持たれるものである。
【0186】
なおさらなる例として、コベチック材料は、表面平滑性を調節することができる。より詳細には、上記の技法を用いて作製されたコベチック積層体は、並外れて高い表面平滑性を呈する。この表面平滑性は、コベチック材料が熱シールドとして働くとき、例えば、表面での摩擦(例えば、流体が高速で表面を流れていくときに生じる摩擦)がその表面で望ましくない発熱をもたらす用途で要求される可能性があるようなとき、特に関心が持たれるものである。本開示の技法を使用することにより、コベチック材料の特定組成物に、及び/またはコベチック材料を堆積させる本開示の特定技法を使用することにより、水力学的に滑らかな表面を得ることができ、その結果、航空及び/または宇宙用ビークルに使用可能になる。
【0187】
ある特定の実施形態において、1組の特性が、他の特性より支配的になる場合がある。例えば、宇宙用ビークル(例えば、衛星)の表面は、ある範囲の電磁放射線を実質的に反射しない(例えば、可視光を実質的に反射しない)ものであることが要求される可能性があり、一方でそれと同時に、宇宙用ビークルの表面は、熱的に絶縁性(例えば、熱的に非伝導性である)ことが要求される可能性がある。上記の調節技法は、特定の所望の特性(例えば、非反射性)が、他の特性を犠牲にしてでも実質的に非反射性の表面を生成するようにプラズマ溶射トーチの調節を支配するような状況に対処する。
【0188】
図29に関連して表示及び説明されるとおりの特性は、例示にすぎない。さらなる特性及び/または特性の組み合わせが、様々な用途で要求されるまたは望ましい可能性があり、こうしたさらなる特性は、投入物の調節及びプラズマ溶射トーチの制御に基づいて、得られる材料で呈される。厳密に、上記のさらなる特性の例として、そのような特性及び/または特性の組み合わせは、強度対重量比、及び/または比重、及び/または機械的靭性、及び/または剪断強度、及び/または曲げ強度などを含むまたはそれらに関連する可能性がある。
【0189】
上記明細書において、本開示は、その具体的な実施形態を参照して記載されてきたものの、本開示の広義の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修飾及び変更を行うことが可能であることは明白であるだろう。例えば、上記のプロセス流れは、特定順序のプロセス行為を参照して記載されている。しかしながら、記載されるプロセス行為のうち多くのものの順序は、本開示の範囲または実践に影響を及ぼすことなく変更可能である。明細書及び図面は、限定の意味においてではなく、例示の意味において受け取られるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A1
図18A2
図18B
図18C
図18D
図19
図20A1
図20A2
図20B
図21A
図21B-1】
図21B-2】
図21C
図22A
図22B-1】
図22B-2】
図23A
図23B
図23C
図23D
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図27A
図27B1
図27B2
図27C
図28-1】
図28-2】
図29