(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】2液型塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20240123BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240123BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/61
C09D5/00 D
(21)【出願番号】P 2021546522
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020027161
(87)【国際公開番号】W WO2021053942
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019168497
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 充博
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】篠田 尚志
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012096(JP,A)
【文献】特開2000-034438(JP,A)
【文献】特開2018-069185(JP,A)
【文献】特開2009-221408(JP,A)
【文献】特開2009-073925(JP,A)
【文献】特開平6-145565(JP,A)
【文献】特開2019-167392(JP,A)
【文献】特開2020-192516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量5000~25000のエポキシ樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、平均粒子径0.01~5.0μmの硫酸バリウム(C)及び細孔径0.50nm以下のゼオライト(D)を含有し、
前記エポキシ樹脂(A)及び前記ポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、前記エポキシ樹脂(A)の含有量が60~90質量%、前記ポリイソシアネート化合物(B)の含有量が10~40質量%、前記硫酸バリウム(C)の含有量が1~100質量%、前記ゼオライト(D)の含有量が10~40質量%である、2液型塗料組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が、脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂及び脂肪酸アミン変性エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の2液型塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート化合物(B)が、芳香族ポリイソシアネート化合物である、請求項1又は2に記載の2液型塗料組成物。
【請求項4】
被塗物に、下塗塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成する工程、及び
前記下塗塗膜に上塗塗料組成物を塗装して上塗塗膜を形成する工程を有し、
前記下塗塗料組成物が請求項1~3のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物を用いて塗装された、建設機械又は産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型塗料組成物に関する。また、本発明は、当該2液型塗料組成物を用いた、複層塗膜形成方法、建設機械又は産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械又は産業機械の塗装において、所望の要求性能に応じて、様々な塗料組成物が使用されている。
【0003】
近年の建機、産機メーカーからの塗料に対する要望として、下塗及び上塗塗装仕様におけるウエットオンウエット塗装の仕上り外観及び防食性の向上がある。
【0004】
特許文献1には、特に鉄部の防錆作用に優れた一液型下塗り塗料組成物として、エポキシ樹脂及び/又は変性エポキシ樹脂を樹脂成分とする塗料組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂ワニスを樹脂成分とする主剤とポリアミドアミン系硬化剤とから構成されるエポキシ樹脂系下塗り塗料と、変性アクリルポリオール樹脂ワニスを樹脂成分とする主剤とイソシアネート樹脂ワニス硬化剤とから構成されるウレタン樹脂系上塗り塗料と、を備えたことを特徴とする超重防食塗料が開示されている。
【0006】
特許文献3には、防食性及び耐候性の両方が優れた複層塗膜形成方法として、ウエットオンウエット仕様の下塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる複層塗膜において、下塗り塗膜と上塗り塗膜の表面張力の差を限定した方法が開示され、本方法において、樹脂成分として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びイソシアネート化合物を含有する下塗り塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2008-106177号公報
【文献】日本国特開2009-46564号公報
【文献】日本国特許第5221822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1又は2に記載された下塗り塗料組成物は、上塗塗料とのウエットオンウエット適性が不十分であるため、下塗及び上塗塗装仕様の仕上り外観が不十分であった。
【0009】
さらに、特許文献3に記載された塗膜形成方法で得られた複層塗膜は、防食性が不十分であり、また、ウエットオンウエット性が不十分となって、仕上り外観が低下する場合があった。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、本発明の課題は、仕上り外観及び防食性に優れる複層塗膜が得られる2液型塗料組成物を提供することである。また、本発明の課題は、該塗料組成物により得られる塗膜を有する複層塗膜の形成方法、該塗料組成物を用いた、建設機械又は産業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定分子量範囲のエポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物、特定平均粒子径範囲の硫酸バリウム及び特定細孔径範囲のゼオライトを含有する組成物によれば、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明の2液型塗料組成物(以下、単に「本発明の塗料組成物」と称することがある。)を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記<1>~<5>に関するものである。
<1>重量平均分子量5000~25000のエポキシ樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、平均粒子径0.01~5.0μmの硫酸バリウム(C)及び細孔径0.50nm以下のゼオライト(D)を含有し、
前記エポキシ樹脂(A)及び前記ポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、前記エポキシ樹脂(A)の含有量が60~90質量%、前記ポリイソシアネート化合物(B)の含有量が10~40質量%、前記硫酸バリウム(C)の含有量が1~100質量%、前記ゼオライト(D)の含有量が10~40質量%である、2液型塗料組成物。
<2>前記エポキシ樹脂(A)が、脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂及び脂肪酸アミン変性エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の2液型塗料組成物。
<3>前記ポリイソシアネート化合物(B)が、芳香族ポリイソシアネート化合物である、<1>又は<2>に記載の2液型塗料組成物。
<4>被塗物に、下塗塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成する工程、及び
前記下塗塗膜に上塗塗料組成物を塗装して上塗塗膜を形成する工程を有し、
前記下塗塗料組成物が<1>~<3>のいずれか1つに記載の2液型塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
<5><1>~<3>のいずれか1つに記載の2液型塗料組成物を用いて塗装された、建設機械又は産業機械。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗料組成物は、基体樹脂として、エポキシ樹脂を用いているので、速乾性に優れる。本発明の塗料組成物は、硬化剤として、ポリイソシアネート化合物を用いているので、反応性にも優れている。そのため、本発明の塗料組成物は、ウエットオンウエット適性も優れている。
【0014】
さらに、本発明の塗料組成物は、体質顔料として、特定の小さい平均粒子径範囲の硫酸バリウムを用いているため、得られる複層塗膜の平滑性も向上する。そのため、本発明の塗料組成物によって仕上り外観に優れた複層塗膜を得ることができる。
【0015】
また、本発明の塗料組成物は、吸水材として特定細孔径範囲のゼオライトを用いているため、耐水性や耐食性に優れた複層塗膜を得ることができる。さらにまた、本発明の塗料組成物は、2液型のエポキシ樹脂/ポリイソシアネート化合物硬化系であるため防食性にも優れている。
【0016】
したがって、本発明の塗料組成物によれば、仕上り外観及び防食性に優れる複層塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[2液型塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、重量平均分子量5000~25000のエポキシ樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、平均粒子径0.01~5.0μmの硫酸バリウム(C)及び細孔径0.50nm以下のゼオライト(D)を含有する組成物である。以下、詳細に述べる。
【0018】
<エポキシ樹脂(A)>
エポキシ樹脂(A)は、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られる芳香族系のエポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
芳香族系のエポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,2,2-エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
【0020】
また、芳香族系のエポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールAから誘導されるエポキシ樹脂を好適に使用することができる。
【0021】
また、エポキシ樹脂(A)としては、変性エポキシ樹脂を好適に使用することができる。変性エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、脂肪酸アミン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0022】
上記変性エポキシ樹脂のうち、特に、脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、脂肪酸アミン変性エポキシ樹脂を好適に使用することができる。
【0023】
これらのエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、アラキード9201N、アラキード9203N、アラキード9205、アラキード9208、モデピクス401(以上、荒川化学工業株式会社製、商品名)、EPICLON H-405-40、EPICLON H-304-40、EPICLON H-403-45、EPICLON H-408-40(以上、DIC株式会社製、商品名)、EPOMIK R140、EPOMIK R301、EPOMIK R304、EPOMIK R307、EPOMIK U466BT60、EPOMIK U455CT60、EPOMIK U452CT60、エポキー811、エポキー872、エポキー891、(以上、三井化学株式会社、商品名)等を挙げることができる。
【0024】
エポキシ樹脂(A)は、仕上り外観、硬度及び塗装固形分濃度の観点から、重量平均分子量が5000~25000の範囲内であり、7000~22000の範囲内が好ましく、10000~20000の範囲内がより好ましい。
【0025】
本発明の明細書における重量平均分子量又は数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した重量平均分子量又は数平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/min及び検出器:RIの条件下で重量平均分子量又は数平均分子量を測定することができる。
【0026】
エポキシ樹脂(A)は、付着性の観点から、水酸基価が好ましくは50~300mgKOH/gの範囲内であり、より好ましくは50~250mgKOH/gの範囲内であり、さらに好ましくは50~200mgKOH/gの範囲内である。
【0027】
また、仕上り外観及び防食性の観点から本発明の塗料組成物において、エポキシ樹脂(A)及び後述のポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、エポキシ樹脂(A)の含有量は60~90質量%であり、好ましくは70~90質量%である。
【0028】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
ポリイソシアネート化合物(B)は、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物である。
【0029】
ポリイソシアネート化合物(B)としては、従来からポリウレタン製造に使用されているものを使用することができる。具体的には例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物及びその粗製物、これらのポリイソシアネート化合物の変性物等を挙げることができる。ポリイソシアネート化合物(B)は単独で、或いは2種以上を併用して使用することができる。
【0030】
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等を挙げることができる。
【0031】
上記脂環式ポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-及び/又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0032】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等を挙げることができる。
【0033】
上記芳香族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’-及び/又は4,4’-ビフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等を挙げることができる。
【0034】
また、上記ポリイソシアネート化合物の変性物としては、具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDI)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI、イソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネート化合物の変性物;及びこれらの2種以上の混合物(例えば、変性MDIとウレタン変性TDIの混合物)等を挙げることができる。
【0035】
本発明の塗料組成物の乾燥性や防食性の観点から、上記ポリイソシアネート化合物(B)のうち、芳香族ポリイソシアネート化合物及びその粗製物、芳香族ポリイソシアネート化合物の変性物を好適に使用することができる。
【0036】
上記の芳香族ポリイソシアネート化合物のなかでも特に、MDI、TDI、ウレタン変性MDI、ウレタン変性TDIを好適に使用することができる。
【0037】
このようなポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、タケネートD-165N、タケネートD-102、タケネートD-104(三井化学社製)等を挙げることができる。
【0038】
また、仕上り外観及び防食性の観点から本発明の塗料組成物において、エポキシ樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、ポリイソシアネート化合物(B)の含有量は10~40質量%であり、好ましくは10~30質量%である。
【0039】
<硫酸バリウム(C)>
本発明の塗料組成物は、平均粒子径が0.01~5μm、好ましくは0.05~4μm、さらに好ましくは0.05~3μmの硫酸バリウム(C)を含有する。(以下、平均粒子径0.01~5μmの硫酸バリウム(C)を単に硫酸バリウム(C)と略称する)。
【0040】
なお、本明細書において、平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定により得られる値である。具体的には、例えばUPA-EX250(商品名、日機装株式会社製、動的光散乱法による粒度分布測定装置)を用いて硫酸バリウム(C)の平均粒子径を測定することができる。
【0041】
このような硫酸バリウム(C)の市販品としては、バリファインBF-20(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.03μmの硫酸バリウム)、BARIACE B-30(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.3μmの硫酸バリウム)、SPARWITE(スパーワイト)W-5HB(Sino-Can社製、商品名、硫酸バリウム粉末、平均粒子径:1.6μm)等を挙げることができる。
【0042】
本発明の塗料組成物における硫酸バリウム(C)の含有量は、仕上り外観の観点から、エポキシ樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、1~100質量%であり、好ましくは5~80質量%であり、さらに好ましくは10~75質量%である。
【0043】
<ゼオライト(D)>
ゼオライトは結晶性アルミノ珪酸塩の総称であり、構成元素は、Al、Si、O、カチオン(陽イオン)で、SiO4とAlO4から形成される四面体構造(Si4+又はAl3+を中心として形成される四面体)を基本構造とする化合物である。それらが複雑に且つ規則正しく繋がることで、直径が数Å~十数Åの小さな分子とほぼ同じ大きさの細孔が1次元、2次元又は3次元に規則的に形成されている。これがゼオライトの特徴である。
【0044】
ゼオライトの細孔内にはカチオンが存在しており、カチオンに基づいてゼオライトの諸機能が発現する。ゼオライトの細孔には、その直径より小さな分子のみが進入でき、大きな分子と篩い分けができることから、ゼオライトの中にはモレキュラーシーブ(分子篩)と呼ばれるものがある。
【0045】
ゼオライトには、含水アルミノケイ酸塩を主成分とした天然ゼオライトと、Na2O・Al2O3・xSiO2・yH2Oを主成分とした合成ゼオライトがある。合成ゼオライトはパ-ムチットとも呼ばれ、炭酸ナトリウム、シリカ、アルミナ又はカオリンを共融する乾式法、又はケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムを合わせてゲルを沈澱させる湿式法によって製造される。
【0046】
天然ゼオライト、合成ゼオライトのいずれもイオン交換能を有し、脱水しても結晶構造が変化せず、脱水した後に分子サイズの細孔が得られ、大きい吸着能を有する。また、水熱合成によりアルミノケイ酸ナトリウムゲルを結晶化し脱水した後に一定サイズの細孔が得られるものは、一般にモレキュラーシーブと呼ばれている。
【0047】
顔料として、硫酸バリウム(C)とゼオライト(D)を併用することにより、本発明の塗料組成物の耐水性を向上させることができる。
【0048】
ゼオライト(D)としては、仕上がり性、防食性の観点から、一般にモレキュラーシーブと呼ばれているものを好適に使用することができる。ゼオライトを粉末状やペレット状に成型したものが市販されており、原料のゼオライトの種類によってモレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X等が市販されている。数字は上記細孔のおおよその直径(オングストローム)を、大文字のアルファベットはゼオライトの種類を表しており、AはLTA型ゼオライト、XはFAU型ゼオライトを表している。
【0049】
上記モレキュラーシーブのうち、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ5Aが好ましく、特にモレキュラーシーブ5Aを好適に使用することができる。
【0050】
モレキュラーシーブ結晶の細孔付近にある金属カチオンの位置と大きさにより、この細孔の有効直径は変化し、例えばモレキュラーシーブ5Aはモレキュラーシーブ4Aのナトリウムイオンをカルシウムイオンで置換したものである。
【0051】
ゼオライト(D)の細孔径(細孔の有効直径)の範囲は仕上り外観の観点から、0.50nm以下の範囲内であり、好ましくは0.10~0.50nmの範囲内であり、さらに好ましくは0.20~0.50nmの範囲内である。
【0052】
なお、ゼオライト(D)の細孔径は、窒素ガス吸着法によって測定できる。
【0053】
本発明の塗料組成物におけるゼオライト(D)の含有量は、仕上り外観の観点から、エポキシ樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、10~40質量%であり、好ましくは15~30質量%であり、さらに好ましくは15~25質量%である。
【0054】
<防錆顔料>
本発明の塗料組成物には、防食性の向上を目的として防錆顔料を含有させることができる。防錆顔料としては、具体的には例えば、酸化亜鉛、亜リン酸塩化合物、リン酸塩化合物、モリブテン酸塩系化合物、ビスマス化合物、金属イオン交換シリカ等を挙げることができる。
【0055】
上記亜リン酸塩化合物としては、EXPERT NP-1000、EXPERT NP-1020C等の亜リン酸カルシウム化合物、EXPERT NP-1100、EXPERT NP-1102等の亜リン酸アルミニウム化合物を挙げることができる(EXPERTシリーズはいずれも東邦顔料社製、商品名)。
【0056】
上記リン酸塩化合物としては、金属化合物で処理されたトリポリリン酸2水素アルミニウム等を挙げることができる。上記金属化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ビスマス、コバルト、スズ、ジルコニウム、チタニウム、ストロンチウム、銅、鉄、リチウム、アルミニウム、ニッケル、及びナトリウムの塩化物、水酸化物、炭酸化物、硫酸物等を挙げることができる。
【0057】
上記金属化合物で処理されたトリポリリン酸2水素アルミニウムの市販品としては、K-WHITE 140、K-WHITE Ca650、K-WHITE 450H、K-WHITE G-105、K-WHITE 105、K-WHITE K-82(いずれもテイカ社製、商品名)等を挙げることができる。
【0058】
上記モリブテン酸塩系化合物の市販品としては、例えば、LFボウセイ M-PSN、LFボウセイ MC-400WR、LFボウセイ PM-300、LFボウセイ PM-308(いずれもキクチカラー社製、商品名)等を挙げることができる。
【0059】
上記ビスマス化合物としては、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス及び有機酸ビスマス等を挙げることができる。
【0060】
上記金属イオン交換シリカとしては、例えば、カルシウムイオン交換シリカ、マグネシウムイオン交換シリカ等を挙げることができる。これらの金属イオン交換シリカとしてはリン酸変性金属イオン交換シリカを使用することもできる。
【0061】
上記カルシウムイオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって、カルシウムイオンが導入されたシリカ微粒子である。カルシウムイオン交換シリカの市販品としては、SHIELDEX(シールデックス、登録商標)C303、SHIELDEXAC‐3、SHIELDEXC‐5(以上いずれもW.R.Grace&Co.社製)、サイロマスク52(富士シリシア社製)等を挙げることができる。
【0062】
上記マグネシウムイオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって、マグネシウムイオンが導入されたシリカ微粒子である。マグネシウムイオン交換シリカの市販品としては、サイロマスク52M(富士シリシア社製)、ノビノックスACE-110(SNCZ社製・フランス)等を挙げることができる。
【0063】
本発明の塗料組成物において防錆顔料を使用する場合、使用量は、エポキシ樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、1~50質量%、特に10~40質量%であることが、仕上り外観及び防食性の観点からから好ましい。
【0064】
<着色顔料>
本発明の塗料組成物には、所望の色とすることを目的として、着色顔料を使用することができる。着色顔料としては、具体的には、チタン白、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、べんがら、透明べんがら、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、オーカー、ジスアゾ、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等を挙げることができる。
【0065】
本発明の塗料組成物において着色顔料を使用する場合、使用量は、エポキシ樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、20~150質量%、特に40~130質量%であることが、仕上り外観の観点から好ましい。
【0066】
<体質顔料>
本発明の塗料組成物には必要に応じて体質顔料(硫酸バリウム(C)を除く)を含有させることができる。
【0067】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、シリカ、硫酸バリウム(硫酸バリウム(C)を除く)、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、珪藻土、炭酸マグネシウムアルミニウムフレーク、雲母フレーク等を挙げることができる。
【0068】
本発明の塗料組成物において体質顔料を使用する場合、使用量は、エポキシ樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、20~150質量%、特に40~140質量%、さらに特に40~130質量%であることが、耐水性及び防食性の観点から好ましい。
【0069】
<レオロジーコントロール剤>
本発明の塗料組成物には、塗料組成物の流動性を制御して仕上り外観及び塗装作業性の向上させることを目的として、レオロジーコントロール剤を使用することができる。
【0070】
レオロジーコントロール剤としては、具体的には例えば、粘土鉱物(例えば、金属ケイ酸塩、モンモロリロナイト)、アクリル樹脂(例えば、分子中にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマー、オリゴマーからなる構造を含むもの)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アマイド(例えば、高級脂肪酸アマイド、ポリアマイド、オリゴマー等)、ポリカルボン酸(分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有する誘導体を含む)、セルロース(ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースエーテル等種々の誘導体を含む)、及びウレタン(分子中にウレタン構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレア(分子中にウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレタンウレア(分子中にウレタン構造とウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)等を挙げることができる。
【0071】
レオロジーコントロール剤の市販品としては、例えば、ディスパロン6900(楠本化成(株)製)、ディスパロンA603(楠本化成(株)製)、チクゾールW300(共栄社化学(株))等のアマイドワックス;ディスパロン4200(楠本化成(株)製)等のポリエチレンワックス;CAB(セルロース・アセテート・ブチレート、イーストマン・ケミカル・プロダクツ社製)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース、住友精化(株)製)、疎水化HEC(大同化成工業(株)製)、CMC(カルボキシメチルセルロース、第一工業製薬(株)製)等のセルロース系のレオロジーコントロール剤;BYK-410、BYK-411、BYK-420、BYK-425(以上、ビックケミー(株)製)等のウレタンウレア系のレオロジーコントロール剤;フローノンSDR-80(共栄社化学(株))等の硫酸エステル系アニオン系界面活性剤;フローノンSA-345HF(共栄社化学(株))等のポリオレフィン系のレオロジーコントロール剤;フローノンHR-4AF(共栄社化学(株))等の高級脂肪酸アマイド系のレオロジーコントロール剤;等を挙げることができる。
【0072】
本発明の塗料組成物においてレオロジーコントロール剤を使用する場合、使用量は、エポキシ樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、0.1~20質量%、特に0.5~15質量%、さらに特に0.8~10質量%の範囲内であることが、仕上り外観及び塗装作業性の観点から好ましい。
【0073】
<その他の成分>
本発明の塗料組成物にはさらに必要に応じて、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、消泡剤、硬化剤(ポリイソシアネート化合物(B)を除く)、硬化触媒、防腐剤、凍結防止剤等を含有させることができる。
【0074】
<塗料組成物の塗装>
本発明の塗料組成物は、フリー(遊離)のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)を構成成分とするため、常温で基体樹脂であるエポキシ樹脂(A)との架橋反応が進行する。本発明の塗料組成物は、エポキシ樹脂(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物(B)を含有する硬化剤との2液型塗料であり、通常、塗装直前に主剤と硬化剤とを混合し、有機溶剤等の溶媒を必要に応じて添加して粘度調整することにより好適に使用される。
【0075】
その際、硫酸バリウム(C)、ゼオライト(D)及び必要に応じて使用される成分は、一般に、主剤側に配合しておくことが好ましい。主剤側への配合は、例えばディスパー、ホモジナイザー等の混合装置を用いて行うことができる。
【0076】
本発明の塗料組成物の塗装は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、エアレス塗装、電着塗装、ダイコート等の塗装方法によって行うことができる。得られる塗膜の乾燥膜厚は、通常10μm~150μm、好ましくは30μm~80μmの範囲内が適している。
【0077】
被塗物としては、冷延鋼板、黒皮鋼板、合金化亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板等、及びこれらを素材とするブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械又は産業機械等を挙げることができる。これらは必要に応じて、ショットブラスト、表面調整、表面処理等を施したものであってもよい。
【0078】
本発明の塗料組成物は、仕上り外観及び防食性に優れるので、上記被塗物に塗装するための下塗塗料(プライマー塗料)、特にウエットオンウエット仕様の下塗塗膜及び上塗塗膜からなる複層塗膜における下塗塗膜形成の下塗塗料組成物として、好適に使用することができる。
【0079】
ウエットオンウエット仕様とは、未硬化の下塗塗膜上に上塗塗膜を形成する複層塗装工程の仕様である。
【0080】
[複層塗膜形成方法]
本発明の複層塗膜形成方法は、被塗物に、下塗塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成する工程、及び下塗塗膜に上塗塗料組成物を塗装して上塗塗膜を形成する工程を有する。また、本発明の複層塗膜形成方法においては、下塗塗膜形成の下塗塗料組成物として、本発明の塗料組成物を使用する。
【0081】
本発明の塗料組成物は、ウエットオンウエット適性に優れているので、特に、被塗物上に、本発明の塗料組成物による下塗塗膜(未硬化塗膜)を形成し、該下塗塗膜(未硬化塗膜)上に、上塗塗料組成物による上塗塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥して塗膜を形成する方法、において好適に使用することができる。
【0082】
本発明の複層塗膜形成方法における被塗物は、上述のものを用いることができる。
【0083】
本発明の複層塗膜形成方法における上塗塗料組成物としては、従来公知の塗料組成物を制限なく使用することができる。具体的には例えば、ウレタン樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、シリコン樹脂系塗料、弗素樹脂系塗料、油性系塗料、フタル酸樹脂系塗料等を使用することができる。
【0084】
上記ウエットオンウエットの塗膜形成方法において、本発明の塗料組成物の塗装は、前記の塗装方法によって行うことができる。下塗塗膜の乾燥膜厚は、通常10μm~150μm、好ましくは20μm~60μmの範囲内が適している。
【0085】
下塗塗膜(未硬化塗膜)上への、上塗塗料組成物の塗装は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、エアレス塗装、電着塗装、ダイコート等の塗装方法によって行うことができる。上塗塗膜の乾燥膜厚は、通常、10μm~150μm、好ましくは20μm~60μmの範囲内が適している。
【0086】
次いで、常温~160℃で10~120分間、好ましくは60~120℃で20~90分間乾燥させることにより、複層塗膜を得ることができる。
【0087】
本発明の塗料組成物を塗装して該未硬化塗膜を形成した後、必要に応じて、常温でのセッティング又は予備加熱を行うこともできる。
【実施例】
【0088】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0089】
[下塗塗料組成物(プライマー塗料組成物)の製造]
<実施例1>プライマー塗料組成物No.1の製造
以下の工程1~工程2によって、プライマー塗料組成物No.1を得た。
【0090】
工程1:
EPOMIK U466BT60(注1)40部(固形分)、BLANC FIXE MICRO(注5)60部、TI-SELECT TS-6200(注11)60部、K-WHITE 105(注12)30部、サンライト SL-1500(注13)80部、及びモレキュラーシーブ5A(注19)20部に、酢酸ブチルを適量加え、サンドミルにて分散し、顔料分散ペーストを得た。
【0091】
工程2:
上記にて得た顔料分散ペーストに、EPOMIK U466BT60(注1)40部(固形分)、及びディスパロン A603-20X(注14)1.5部(固形分)を配合し、表面調整剤、消泡剤を加えて撹拌し、酢酸ブチルを加えて、固形分を調整した。さらに後述の冷間圧延鋼板への塗装直前にタケネートD-102(注15)20部(固形分)及び酢酸ブチルを加え固形分60質量%、塗装粘度20秒/25℃(イワタカップで測定)のプライマー塗料組成物No.1を得た。
【0092】
<実施例2~14>プライマー塗料組成物No.2~14の製造
配合内容を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様にして、プライマー塗料組成物No.2~14を得た。
【0093】
【0094】
<比較例1~9>プライマー塗料組成物No.15~23の製造
配合内容を表2に示すものとした以外は、実施例1と同様にして、各プライマー塗料組成物No.15~No.23を得た。
【0095】
なお、塗料組成物No.15及び22の工程1においてはEPOMIK U466BT60(注1)をEPICLON 1050(注3)とした。
【0096】
【0097】
なお、表1~2において、(注1)~(注20)の詳細は下記のとおりである。
【0098】
(注1)EPOMIK U466BT60:三井化学株式会社、商品名、脂肪酸アミン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水酸基価108mgKOH/g、重量平均分子量13000
(注2)EPOMIK U452CT60:三井化学株式会社、商品名、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水酸基価156mgKOH/g、重量平均分子量10000
(注3)EPICLON 1050:DIC株式会社、商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量2000、水酸基価106mgKOH/g
(注4)アラキード9205:荒川化学工業株式会社、商品名、重量平均分子量30000、水酸基価215mgKOH/g
【0099】
(注5)BLANC FIXE MICRO:ザハトラーベン株式会社、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径0.7μm、吸油量13ml/100g
(注6)硫酸バリウム HF:深州嘉信化工有限責任公司、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径0.9μm、吸油量14ml/100g
(注7)SPARWITE W-5HB:Sino-Can Micronized Product co.,Ltd、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径1.6μm、吸油量13ml/100g
(注8)BARIFINE BF-20:堺化学工業株式会社、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径0.03μm、吸油量24ml/100g
(注9)硫酸バリウム BA:堺化学工業株式会社、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径8μm、吸油量8ml/100g
(注10)LAKABAR SF:LAKAVISUTH LTD、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径10.4μm、吸油量10ml/100g
【0100】
(注11)TI-SELECT TS-6200:ケマーズ株式会社、商品名、二酸化チタン
(注12)K-WHITE 105:テイカ株式会社製、商品名、トリポリリン酸二水素アルミニウム
(注13)サンライト SL-1500:竹原化学工業株式会社、商品名、炭酸カルシウム
【0101】
(注14)ディスパロン A603-20X:楠本化成株式会社、商品名、脂肪酸アマイドワックス
(注15)タケネートD-102:三井化学株式会社、商品名、ポリイソシアネート化合物、TDI系ウレタンポリマー(ウレタン変性TDI)
(注16)スミジュール N3300:住化コベストロウレタン株式会社、商品名、イソシアヌレート変性HDI(HDIの3量体)
(注17)ミリオネートCA-1A:保土谷化学株式会社、商品名、MDI系ポリイソシアネート
【0102】
(注18)モレキュラーシーブ 3A:ユニオン昭和株式会社、商品名、ナトリウムカルシウムアミノシリケート、細孔径0.25nm
(注19)モレキュラーシーブ 5A:ユニオン昭和株式会社、商品名、ナトリウムカルシウムアミノシリケート、細孔径0.42nm
(注20)モレキュラーシーブ 13X:ユニオン昭和株式会社、商品名、ナトリウムカルシウムアミノシリケート、細孔径1.0nm
【0103】
[上塗塗料組成物の製造]
<製造例No.1>アクリル樹脂溶液の製造
スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)28部、トルエン85部、スチレン41.6部、n-ブチルアクリレート6.9部、イソブチルメタクリレート19部、プラクセルFM-3(注21)15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート17部、アクリル酸0.5部、ジ-tert-ブチルハイドロパーオキサイド8部を窒素ガス下で110℃において反応させて、固形分質量濃度45%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価3.9mgKOH/g、水酸基価94.9mgKOH/g、重量平均分子量11,000であった。
【0104】
(注21)プラクセルFM-3:ダイセル化学工業株式会社製、商品名、2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン変性ビニルモノマー
【0105】
<製造例No.2>上塗塗料組成物No.1の製造
製造例No.1で得たアクリル樹脂溶液80部(固形分)、TI-SELECT TS-6200(注11)12部、ホスターパームエローH-3G(注22)12部、BARIFINE BF-20(注8)15部、Bayferrox4905(注23)12部及びTINUVIN292(注24)1部を配合し、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)で固形分を調整した混合物を、サンドミルにて分散することによって主剤塗料を得た。さらに後述のプライマー塗膜への塗装直前に、スミジュール N3300(注16)20部(固形分)及びKBM-403(注25)0.5部を混合撹拌し、固形分60%の上塗塗料組成物No.1を得た。
【0106】
(注22)ホスターパームエローH-3G:クラリアント社製、商品名、ハンザエロー系黄色顔料
(注23)Bayferrox 4905:Lanxess株式会社、商品名、赤色顔料
(注24)TINUVIN292:BASF株式会社、商品名、光安定化剤
(注25)KBM-403:信越化学株式会社、商品名、エポキシ基含有シランカップリング剤
【0107】
[複層塗膜形成塗板の作製]
<複層塗膜形成塗板No.1の作製>
下記の工程1~工程3によって、複層塗膜形成塗板No.1を得た。
【0108】
工程1:
冷間圧延鋼板(大きさ0.8×70×150mm、パルボンド#3020)に実施例1で得られたプライマー塗料組成物No.1を用い、乾燥膜厚が40μmになるようにスプレー塗装し、25℃で3分間セッティング(静置)し、プライマー塗膜(下塗塗膜)を得た。
【0109】
工程2:
次いで、10部のカンペ工業用ウレタンシンナー205(関西ペイント社製、2液ウレタン塗料用シンナー)を、100部の上塗塗料組成物No.1に対して配合し配合塗料を得た。得られた配合塗料を、上記プライマー塗膜上に、乾燥膜厚が40μmになるようにスプレー塗装にてウエットオンウエットで塗装して、上塗塗膜を形成し、複層塗膜を得た。
【0110】
工程3:
工程2によって得られた複層塗膜を、25℃で10分間セッティングした後、80℃で30分間加熱乾燥させ、さらに室温(20℃)で72時間乾燥させて複層塗膜形成塗板No.1を得た。
【0111】
<複層塗膜形成塗板No.2~No.14の作製>(実施例用)
プライマー塗料組成物No.1をプライマー塗料組成物No.2~No.14とした以外は、複層塗膜形成塗板No.1と同様にして、複層塗膜形成塗板No.2~No.14を得た。
【0112】
<複層塗膜形成塗板No.15~No.23の作製>(比較例用)
プライマー塗料組成物No.1をプライマー塗料組成物No.15~No.23とした以外は、複層塗膜形成塗板No.1と同様にして、複層塗膜形成塗板No.15~No.23を得た。
【0113】
[塗膜性能試験]
各複層塗膜形成塗板について、後記の試験項目につき塗膜性能試験を行った。試験結果を表1及び表2に示す。
【0114】
<仕上り外観(注26)>
各複層塗膜形成塗板の塗面外観を下記基準に基づき目視で評価した。
【0115】
◎:上塗塗膜とプライマー塗膜の混層がなく平滑性が良好で、かつ60度光沢値が90以上であった。
○:上塗塗膜とプライマー塗膜の混層がなく平滑性が良好で、かつ60度光沢値が75以上90未満であった。
△:上塗塗膜とプライマー塗膜が混層しており、うねり、ツヤビケ及びチリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り外観の低下がやや見られ、60度光沢値が60以上75未満であった。
×:上塗塗膜とプライマー塗膜の混層が著しく、うねり、ツヤビケ、チリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り外観の低下が著しく、60度光沢値が60未満であった。
【0116】
<鉛筆硬度(注27)>
JIS K 5600-5-4に準じて、各複層塗膜形成塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜が破れなかった最も硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とし、下記基準に基づき評価した。
【0117】
◎:鉛筆硬度がH以上であった。
○:鉛筆硬度がF以上H未満であった。
△:鉛筆硬度がHB以上F未満であった。
×:鉛筆硬度がHB未満であった。
【0118】
<付着性(注28)>
JIS K 5600-5-6に準じて、各複層塗膜形成塗板の2mm碁盤目試験を行い、碁盤目の残数を下記基準に基づき評価した。
【0119】
◎:碁盤目の残数が分類1以上であった。
○:碁盤目の残数が分類2以上分類1未満であった。
△:碁盤目の残数が分類3以上分類2未満であった。
×:碁盤目の残数が分類3未満であった。
【0120】
<耐水性(注29)>
各複層塗膜形成塗板について、23℃の温水に10日間浸漬した後の外観を下記基準に基づき評価した。
【0121】
◎:試験前の塗膜に対して、全く外観の変化が認められなかった。
○:試験前の塗膜に対して、わずかにツヤびけ、フクレ又は変色が見られたが、製品とした時に問題の無いレベルであった。
△:試験前の塗膜に対して、若干、ツヤびけ、ワレ、フクレ又は変色が見られ、製品として劣るレベルであった。
×:試験前の塗膜に対して、著しく、ツヤびけ、ワレ、フクレ又は変色が見られた。
【0122】
<防食性(注30)>
各複層塗膜形成塗板に、ナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z-2371に準じて120時間耐塩水噴霧試験を行い、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって下記基準に基づき評価した。
【0123】
◎:錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm未満(片側)であった。
○:錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm以上でかつ3mm未満(片側)であった。
△:錆、フクレの最大幅が、カット部から3mm以上でかつ4mm未満(片側)であった。
×:錆、フクレの最大幅が、カット部から4mm以上(片側)であった。
【0124】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2019年9月17日出願の日本特許出願(特願2019-168497)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の2液型塗料組成物によって、仕上り外観及び防食性に優れる複層塗膜を有する塗装物品を提供することができる。