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特許7425078医療器具を患者体内に導入するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】医療器具を患者体内に導入するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/958 20130101AFI20240123BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20240123BHJP
【FI】
A61F2/958
A61M25/10 540
A61M25/10 550
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021548507
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2019052955
(87)【国際公開番号】W WO2020091914
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】16/176,481
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321011893
【氏名又は名称】アンコール バルーン インク
【氏名又は名称原語表記】ANCHOR BALLON,INC.
【住所又は居所原語表記】7462 Oak Shore Drive, Portage, Michigan 49024 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】弁理士法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシャル グプタ
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】井上 哲男
【審判官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161415(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194550(WO,A1)
【文献】特表2015-528352(JP,A)
【文献】特開2018-19836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
A61M 25/00
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の管腔内の目的部位に向けて、送出部材に沿って治療器具を送出するシステムであって、ロック可能なバルーンカテーテルと、
その遠位部において治療器具を保持し、当該治療器具を前記送出部材に沿って患者体内の目的部位に配置できるよう当該治療器具と操作可能に接続された治療器具送出カテーテルとを有しており、
前記バルーンカテーテルは、
近位部、遠位部、当該近位部及び遠位部の間の内壁に設けられたRXポートを有するカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフト内に設けられ、前記近位部から前記遠位部まで伸長する膨張用ルーメンと、
前記カテーテルシャフト内に設けられ、前記RXポートから前記遠位部まで伸長し、送出部材を収容可能な送出部材ルーメンと、
近位端、遠位端を有し、前記カテーテルシャフトの遠位部外周に固定され、前記近位端が前記RXポートから所定距離離れて配置され、膨張することにより血管壁に対して固定され得るバルーンと、
前記バルーンカテーテルの管壁のうち前記バルーンに当接する部分から構成されるロック部と、
前記バルーンと前記カテーテルシャフトとの間に介設され、前記カテーテルシャフトをアンロック状態とロック状態との間で遷移させるロック機構であって、
前記送出部材ルーメンの直径が、その内部で送出部材を滑動可能にする大きさである時はアンロック状態とし、バルーンの膨張により前記カテーテルシャフトの管壁のロック部が管内側に押し出されて前記送出部材ルーメンを押圧し、前記送出部材ルーメンのうち前記ロック部に押圧される略全部分の直径が、前記送出部材ルーメンが送出部材に接触してその内部での送出部材の移動を妨げる程に減少した時にはロック状態とするロック機構と、
を有しており、
前記バルーンが膨張し前記管腔内に係留した状態において、前記治療器具が、前記送出部材に沿って、管腔内のRXポート近傍の目的部位に向けて送出されるシステム。
【請求項2】
前記送出部材は、ガイドワイヤであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記治療器具は、ステントであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記カテーテルシャフトは、その内壁の圧搾を促進するための可撓性部材を前記バルーン内に有していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記可撓性部材は、繊維編組物からなることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際特許出願は、2018年10月31日付の米国特許出願第16/176,481号に基づくものである。
【0002】
本発明は、医療器具に関し、特に、人(又は動物)体内の内部経路、例えば、脈管構造(血管等)や胆管、腎管、尿管などの治療に用いる低侵襲医療器具に関するものである。
【0003】
本発明は、さらに、バルーン血管形成術などのための、経皮的冠動脈介入の導入システムに関するものである。
【0004】
本発明は、また、ガイドワイヤ等に生体内で固定可能なバルーンカテーテルを用いてステントなどの治療器具を血管内に送出するための医療器具に関するものである。
【0005】
全体概念として、本発明は、ステントなどの治療器具を患者の内部経路(血管その他の管状の人体組織)に送出するためのシステム及び方法において、ガイドワイヤなどを血管内に着実に固定しつつ、治療器具を病変部位に送出する際に必要となる器具の交換回数を減らしめるものである。
【0006】
さらに、本発明のシステムは、バルーンカテーテルが血管内に挿入されたガイドワイヤ等に生体内で固定可能な固定機構を有することにより、固定されたバルーンカテーテルが、他の部材(デリバリーカテーテルなど)のガイドワイヤ等に沿った治療部位への送出を容易にせしめるものである。
【0007】
本発明は、また、治療部位近傍にガイドワイヤを安定的に固定する機構を備えたバルーンカテーテルを用いた血管内送出システムにおいて、血管内のガイドワイヤ遠端の動きを最小限に抑え、生体内でのガイドワイヤの安定性を向上させることにより、他の血管内部材をガイドワイヤに沿って送出しやすくせしめるものである。
【0008】
本発明は、また、他の血管内部材(ステントなど)の病変部位への送出を補助する外部レール(又はバディシステム)を補強的に備えた、捻れ耐性を有する血管内送出システムに関するものである。
【0009】
さらに、本発明は、血管内送出システムの利用方法に関するものである。まず、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを血管内の病変部位に送出し、バルーンを膨張させることで、血管を拡張し病変部位を途絶(disrupt)せしめる。その後、バルーンを収縮し、病変部位の脇に退避させ、再びバルーンを膨張させてバルーンカテーテルをガイドワイヤに固定する。続いて、バルーンカテーテルがガイドワイヤに固定され、ガイドワイヤが血管内に安定的に固定された状態で、他の血管内部材を病変部位に送出する。
【背景技術】
【0010】
虚血性心疾患は、典型的には、血管内の堆積物(ここでは「病変部位」という)が原因となって、血管を狭められ、弱らされ、あるいは塞がれて、血流に影響を生じるものである。虚血性心疾患には、心臓に繋がる血管が関連する冠動脈疾患(CAD)、心臓・脳に繋がる血管は関連しない末梢動脈疾患(PAD)などがある。
【0011】
虚血性心疾患の血管内治療は、大腿動脈等の血管を通じてカテーテルを経皮導入し、血管内病変部位にアクセスするものであり、切開処置に比べて患者の負担は低い。
【0012】
冠動脈疾患(慢性・急性虚血性心疾患など)及び末梢動脈疾患(下肢虚血、跛行など)の患者に対する血管再生術として、経皮的冠動脈形成術(PTCA)及び経皮的血管形成術(PTA)が広く適用されている。
【0013】
しかしながら、これら従来の経皮治療は、再閉塞や再狭窄の可能性があるため、適用に限度がある。その原因は、平滑筋の増殖による血管の治療部位の閉塞、アテローム性動脈硬化の進行、あるいは治療部位のネガティブ・リモデリングによる症状の再発などがあり得る。再閉塞や再狭窄により、追加処置のための再介入が必要となり得る。
【0014】
血管形成術に対する様々な付加的技術によって、再狭窄を抑止する試みが行われている。様々なアテローム切除術のほか、ベアメタルステント、ナイチノールステントの使用などである。その後、再狭窄の治療・防止のために、薬剤溶出性ステント(DES)が使用されるようになった。DESは、血管形成術やベアメタルステントとの比較で、冠動脈再狭窄の発生を顕著に減少させることが示された。
【0015】
末梢動脈では、ナイチノールステントの使用がバルーン血管形成術単独適用よりも優れていることが分かり、慢性下肢虚血、特に大腿膝窩動脈が関与する疾病パターンの治療において、標準的な経皮治療法とされるようになった。
【0016】
血管閉塞疾患の治療にはステントが利用されてきた。例えば、米国特許第5135536号や米国特許第5314444号には、管路内で膨張可能な小径のワイヤチューブが開示されている。血管内の特定の位置において、バルーンカテーテルを用いてステントを膨張させて、その部分の血管を支持する。このような従来のステントは、血管疾患による収縮に抵抗するため、半径方向の強度を高めたものが多かった。
【0017】
経皮的血管形成術におけるステント送出では、まず、ガイドワイヤを経皮的に血管内の病変部位に到達させる。続いて、ガイドワイヤに沿って、血管形成バルーンカテーテルを病変部位に到達させる。血管形成バルーンカテーテルは、オーバーザワイヤー(OTW)型又はラピッドエクスチェンジ(RX)型で送出される。病変部位において、バルーンの膨張により血管流路が拡張される。
【0018】
その後、ガイドワイヤを残したまま、血管形成バルーンカテーテルを血管内から除去し、ガイドワイヤに沿ってステント送出バルーンカテーテルを病変部位に到達させる。
【0019】
従来手法の欠点は、安全性に限界があることと、ステント送出バルーンカテーテルを病変部位に到達させることの難しさである。後者は、血管形成術の施術後であっても、ガイドワイヤが必ずしも十分に安定的な状態とならないためである。例えば、ガイドワイヤの非固定先端は、血管内で自由に動いてしまう。このため、ステント送出バルーンカテーテルを血管内で導入中に、ガイドワイヤ先端が後退してしまうこともある。これは、血管が歪曲したり、びまん性であったり、石灰化しているときに起こり得る。不安定なガイドワイヤの非固定先端に対してステント送出バルーンカテーテルを導入するのは、血管乖離などを含む血管障害を引き起こすリスクを伴う。そこで、ステント送出バルーンカテーテルを除去し、血管形成バルーンカテーテルを再導入して、追加の血管形成術を施術する必要が生じることが多い。これは、患者のリスクを増やし、施術効率を下げ、コストを上げることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】米国特許第5135536号
【文献】米国特許第5314444号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
血管石灰化に関連する疾患、特に糖尿病、慢性腎疾患などの患者数増大により、血管内治療の需要は激増している。このような患者数では、現状の治療が非効率ないし無用である可能性がある。そこで、ステントなどの治療器具を血管内に導入するための改良された血管内治療技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで、本発明は、患者体内の管状の内部経路、例えば、血管、胆管、尿管などを通じて、治療器具(ステント等)を導入する方法であって、治療器具を血管内の病変部位に送出する際に、ガイドワイヤ等の送出部材を血管内に着実に固定しつつ、必要となる器具の交換回数を減らすことが可能な方法を提供するものである。
【0023】
本発明は、また、バルーンカテーテルをガイドワイヤ等の送出部材に着脱可能に固定することで、血管内でガイドワイヤを安定化し、治療器具導入用カテーテル等の他の部材を、ガイドワイヤに沿って目的部位に向けて送出するのを容易にするロック機構を提供するものである。
【0024】
本発明は、さらに、ステント等の治療器具を目的部位に送出する際に、ガイドワイヤの遠位端の血管ルーメン内での動きを制御し、血管内の目的(病変)部位近傍における安定性を確保することができる血管内送出システムを提供するものである。
【0025】
本発明は、さらに、備えたロック可能なバルーンカテーテルを用いた血管内送出システムであって、そのロック機能により、血管内の目的部位付近でガイドワイヤを安定的に係留させて、ガイドワイヤに沿った他の血管内部材の退去を容易にし、以って血管内のガイドワイヤ遠位部における器具の交換回数を減らすことが可能な血管内送出システムを提供するものである。
【0026】
本発明は、また、この血管内のガイドワイヤに自在にロック可能なバルーンカテーテルの使用方法として、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを血管内の病変部位に送出し、バルーンを膨張させて血管を拡張することにより病変部位(管腔内の石灰化プラークなど)を途絶せしめた後、バルーンを収縮させて病変部位近傍に退避させてから、バルーンを再度膨張させてガイドワイヤにロックする方法を提供するものである。これに続いて、バルーンカテーテルをガイドワイヤにロックしたままの状態で血管内に安定留置させつつ、他の血管内部材を病変部位に送出することができる。
【0027】
本発明は、さらに、バルーンがロック状態、アンロック状態のいずれであっても、血管内部材をガイドワイヤに沿って送出するにあたり、カテーテルの軸に対して、支持部材及び/又はレール機構によって補強が施されている、捻れ耐性を有する血管内送出システムを提供するものである。
【0028】
本発明は、さらに、ステントをガイドワイヤに沿って患者血管(又は胆管、尿管)内の病変部位に送出する血管内送出システムを提供するものである。このシステムは、近位部及び遠位部を有するカテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフト内に設けられ、前記近位部から前記遠位部まで伸長する膨張用ルーメンと、前記カテーテルシャフト内に設けられ、RXポートからバルーンカテーテルの遠位端まで伸長するガイドワイヤルーメンとからなる。
【0029】
バルーンは、カテーテルシャフトの遠位部に付設される。バルーンの近位端は、RXポートからの距離がおよそ5mm~30mmである。この構成より、バルーンを膨張させたまま、血管内のRXポート付近にある病変部位までガイドワイヤに沿ってステントを送出する動作が安定化される。
【0030】
バルーン内には、カテーテルシャフトのロック部が設けられ、このロック部は、バルーンの近位端から遠位端の間に伸長する。ロック部は、バルーン内で、アンロック動作モード(ガイドワイヤルーメンがガイドワイヤに対し滑動可能となるような直径を有する状態)とロック動作モードとの間を遷移する。ロック動作モードでは、ロック部はバルーン内で収縮し、ガイドワイヤルーメンの直径を縮小させる。これにより、ガイドワイヤルーメンの内壁がガイドワイヤと密接し、ガイドワイヤをガイドワイヤルーメン内に包囲して係留(anchor)させる。
【0031】
このロック部は、ガイドワイヤをガイドワイヤルーメン内壁に圧接させやすくするため、繊維編組物のような可撓性材料を有していてもよい。繊維編組物には、ポリマーコートされた金属組成物を用いると、バルーン内のロック部を遮水することができる。
【0032】
バルーンカテーテルは、カテーテルシャフトに沿って配置された複数の放射線不透過性マーカーをさらに有していてもよい。この放射線不透過性マーカーはRXポートの近傍に配置してもよい。
【0033】
本発明のシステムの他の特徴として、バルーンシャフト上のガイドワイヤに沿った血管内送出システムを患者の血管内の病変部位に安全に提供する方法を提供するものである。その方法は、血管内でガイドワイヤにロック可能なバルーンカテーテルを製造することを含む。
【0034】
このロック可能なバルーンカテーテルは、近位部、遠位部、当該近位部及び遠位部の間に延伸する第1ルーメン、及びRXポートから伸長する第2ルーメンを有する。
【0035】
バルーンは、カテーテルシャフトの遠位部に付設される。バルーンの近位端は、RXポートからの距離がおよそ5mm~30mmである。この構成より、管腔内でバルーンを膨張させたまま、管腔内のRXポート付近にある病変部位まで送出部材(ガイドワイヤ)に沿って治療器具(ステント)を送出する動作が安定化される。
【0036】
カテーテルシャフトは、バルーン内で、アンロック動作モード(第2ルーメンが送出部材(ガイドワイヤ)に対し滑動可能となるような直径を有する状態)とロック動作モード(バルーン内の押圧に応じたカテーテルシャフトの収縮により、第2ルーメンが送出部材(ガイドワイヤ)に接触しその動きをロックするような直径を有する状態)との間を遷移する。
【0037】
本発明は、また、
ロック可能なバルーンカテーテルをガイドワイヤに沿って血管内の病変部位に送出し、
ロック可能なバルーンカテーテルの前記バルーンを膨張させることにより、血管を拡張し、病変部位を途絶させ、
バルーンを収縮させ、
収縮したバルーンを血管内の病変部位から退避させ、
バルーンを再び膨張させることにより、バルーンカテーテルをガイドワイヤにロックする方法を提供するものである。
【0038】
バルーンの膨張により、バルーン内の第2ルーメンの内壁が圧搾によりガイドワイヤを保持し、バルーンカテーテルがガイドワイヤにロックされることになる。
【0039】
引き続き、この方法を用いて、追加のカテーテル(ステントカテーテルなど)を送出することができる。ロック可能なバルーンカテーテルをガイドワイヤにロックし、ガイドワイヤが血管内に安定に係留した状態で、ガイドワイヤに沿って病変部位に送出が可能である。
【0040】
本発明のシステム及び方法によれば、治療器具を血管内の病変部位に送出する際に、ガイドワイヤ等の送出部材を血管内に着実に固定しつつ、必要となる器具の交換回数を減らすことが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のシステム及び方法の特徴及び効果について、以下の添付図面を参照した詳細な説明により、当業者が理解し得る程度に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明のバルーンカテーテルの一実施形態を示す図である。
図2図1に示すバルーンカテーテルにおいて用いる血管内送出用具として、治療器具送出カテーテル、シース、ガイドワイヤの例を示す図である。
図3A図1に示すバルーンカテーテルの遠位部のアンロック状態における概観図である。
図3B図1に示すバルーンカテーテルの遠位部のロック状態における概観図である。
図3C図1に示すバルーンカテーテルの遠位部のロック状態における断面概観図である。
図4A】ロック部に可撓性部材を有する形態のバルーンカテーテルの遠位部のアンロック状態における概観図である。
図4B】ロック部に可撓性部材を有する形態のバルーンカテーテルの遠位部のロック状態における概観図である。
図4C】バルーンとRXポートの間に埋設されたワイヤ状の捻れ耐性機構を示す概観図である。
図4D】バルーンとRXポートの間に埋設された他の捻れ耐性機構を示す概観図である。
図5A】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5B】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5C】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5D】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5E】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5F】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5G】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5H】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5I】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5J】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5K】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
図5L】ロック可能なバルーンカテーテルを用いて、血管内の目的部位に治療器具を導入する操作の各ステップを例示する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1~4D及び5A~5Lは、患者体内の管腔構造(血管、胆管、尿管など)内に治療器具を導入するシステムを説明する図である。以下では、血管内での応用例について説明するが、本発明のシステム及び方法は、他の患者体内経路における治療にも適用可能である。
【0044】
本システムは、血管内においてガイドワイヤ等の送出部材にロック可能なバルーンカテーテルを有するものである。ロック可能なバルーンカテーテルをガイドワイヤにロックすると、ガイドワイヤが血管内に安定的に固定された状態で、ガイドワイヤに沿って、ステント等の他の治療器具を血管内の目的部位に送出することができる。
【0045】
本システムは、特に、血管蛇行、びまん性、石灰化関連した治療や、冠血管疾患(CAD等)を含む虚血性心疾患、末梢動脈疾患(PAD等)に関連した治療に適している。
【0046】
図1において、血管内送出システム1は、、バルーンカテーテル10を有する。バルーンカテーテル10のシャフト12は、近位部14から遠位部16にわたって延伸している。遠位部16には、バルーン18が取り付けられている。シャフト12のうち、バルーン18の内部に位置する部分をロック部17と称する。
【0047】
シャフト12の近位部14は、治療者の操作を容易にするためのハンドル20を備えているのが好ましい。
【0048】
近位部14の近位端23には、バルーン膨張ポート22が設けられている。図3A~3Cに示すように、バルーン膨張ポート22は、シャフト12内に設けられた膨張ルーメン24を介してバルーン18の内部19に連通している。
【0049】
ハンドル20及びバルーン膨張ポート22は、従来のバルーンカテーテルで用いられる部材でよいため、ここでは説明を省略する。バルーンカテーテル10の近位部14と同様、ハンドル20及びバルーン膨張ポート22は、ポリエチレン及び/又はポリテレフタレートなどの材料で形成することができる。
【0050】
バルーンカテーテル10は、冠血管又は末梢血管の治療に適した長さ及び直径を有するのが好ましい。その長さは、60~180cm、その直径は、1.0~60mmである。
【0051】
バルーン18は、(図3A,4A,4C,5B,5D,5E,5H~5Lに示す)収縮状態と、(図1,2,3B,3C,4B,4D,5C,5F,5Gに示す)膨張状態とを取る。図1に示すバルーン18は、血管内で膨張した状態である。バルーン18は、ポリスチレンのような非規格材料、ポリテレフタレートのような半規格材料、ナイロンのような規格材料からなる。
【0052】
バルーン18は、治療内容及び治療対象の管腔(血管)への導入に適した寸法を有するものを使用する。例えば、バルーン長さは1~20cmとする。直径は、冠血管などの小径の管腔に適用する場合は、膨張状態で1.0~6.0mmである。また、末梢血管などの大径の管腔に適用する場合は、4~10mmである。胸部や腹部の大動脈の治療に用いるカテーテルの場合は、直径1~6cmのものを使うこともある。
【0053】
バルーン18は、シャフト12のロック部17に熱ボンド、接着剤などで接着されているのが好ましい。
【0054】
バルーン膨張システム25の制御により、膨張ポート22を通じて流体(空気)を流入させることにより、バルーン18が加圧されて膨張する。
【0055】
バルーン膨張システム25は、膨張ポート22と気密に接続しており、バルーン18に対する膨張用流体(食塩水、ヨード造影剤、空気など)27の流出入を操作できるようになっている。
【0056】
図1に示すバルーン膨張システム25は、手動システムあるいは自動システムのいずれであってもよい。自動システムの場合、バルーン膨張システム25は、電気系統、気流制御系統、制御ソフトウェア、その他関連インタフェースを備えることになる。制御ソフトウェアの制御により、電気系統が(膨張ポート22と気密に接続している)電磁圧力制御弁を駆動して、気流によって本バルーンシステムの加圧・減圧サイクルを制御する。
【0057】
膨張ルーメン24の遠位端は、バルーン18の内部に配置されたバルーン膨張ポート26となっており、バルーンの近位端33の近傍にあるのが好まし。膨張ルーメン24は、シャフト12内部をバルーン膨張ポート22とバルーン18との間にわたり、バルーン18の加圧・減圧のための流体(空気)の供給路となる。
【0058】
加圧状態で、バルーン18は収縮状態を取る(図1,2,3B,3C,4B,4D,5C,5F,5Gに示す)。減圧状態で、バルーン18は膨張状態を取る(図3A,4A,4C,5B,5D,5E,5H,5I,5Lに示す)。
【0059】
本システムは、ガイドワイヤのような送出部材31を利用する。ガイドワイヤ31は、治療前に、血管内の病変部位に導入される。その後、ガイドワイヤ31に沿って、血管内の病変部位に本システムを配置し、予備的拡張や他の治療を行う。
【0060】
バルーンカテーテル10は、ガイドワイヤルーメン28を有する。ガイドワイヤルーメン28は、シャフト12の内部をRXポート30からテーパ先端32の間にわたり延伸している。ガイドワイヤ31は、ガイドワイヤルーメン28内を、テーパ先端32を超えて延伸している。
【0061】
ガイドワイヤルーメン28は、ガイドワイヤ31を通過させることができる寸法となっている。例えば、患者の脈管構造又は組織内において、ガイドワイヤ31に沿って遠位部16を転置することを容易にするに足る寸法とすることが考えられる。
【0062】
図3Cに示すように、ガイドワイヤルーメン28は、シャフト12の中心軸に沿って配置されていてもよいが、あるいは、中心軸とずれた配置であってもよい。ガイドワイヤルーメン28は、バルーン膨張システム25の動作に応じて施術者が圧搾操作可能であるのが好ましい。つまり、下記に説明するように、バルーン18の膨張によりガイドワイヤ31をロックするということである。
【0063】
シャフト12は、ガイドワイヤルーメン28の圧搾がしやすいよう、可撓性部材からなるのが好ましい。その全長において、又はバルーン18内のロック部17など少なくとも一部において、可撓性部材からなるのが好ましい。
【0064】
本システム1では、ロック可能なカテーテル10がロック機構を有する。このロック機構は、バルーン膨張システム25、膨張ルーメン24、バルーン18及びシャフト12のロック部17を含んでおり、これら部材の協働によりロック動作モードとアンロック動作モードとの間で遷移可能なロック機構が実現される。
【0065】
ロック動作モードでは、バルーン18の膨張により、バルーンカテーテル10をガイドワイヤ31に固定する。一例として、バルーン18を所定圧力に加圧すると、シャフト12のロック部17がガイドワイヤ31に対して押圧し(図3B,3C,4B,4D参照)、これによりガイドワイヤルーメン28の内壁(RXポート30からバルーン18内に延伸する部分)がガイドワイヤ31を周囲から圧搾する。これにより、ガイドワイヤ31をシャフト12内にロックすることができる。この加圧された状態では、ガイドワイヤルーメン28内壁とガイドワイヤ31とがしっかり密着して、ガイドワイヤ31とシャフト12とが互いにずれることがない。すなわち、治療手順の必要性に応じてバルーン18による加圧をコントロールすることで、ガイドワイヤルーメン28内壁とガイドワイヤ31との密着を保ち、ガイドワイヤ31をバルーンカテーテル10のシャフト12にロックすることが可能となっている。
【0066】
ロック機構のバルーン膨張システム25がバルーンを収縮させると、ガイドワイヤルーメン28の内壁はもともとの状態に戻り、ガイドワイヤとシャフト12の密着状態を解除し、アンロック動作モードへと遷移する。アンロック動作モードでは、ガイドワイヤとシャフト12とは互いに自由な位置を取る。
【0067】
RXポート30は、シャフト12上のバルーン18の近位端33から少し間隔を置いた位置に形成されている。この配置により、図5G~5Jに示すように、バルーンカテーテル10を体腔内にロックした状態に保ちながら、ガイドワイヤ31に沿って治療器具を目的部位に導入することが可能となっている。
【0068】
例えば、従来のRXポートはバルーンから15cm以上離れて配置されるのが典型的であるところ、本システム1では、バルーンの近位端33から1~5mmないし30mmと極めて近い位置にRXポート30を配置することが可能となっている。
【0069】
RXポート30を通じてガイドワイヤ31をシャフト12外に逃がす構造のコンパクトさが奏功し、体腔内でガイドワイヤ31にバルーン18がしっかりロックされた状態を保ちながら、RXポート30及びバルーン18から近い場所に治療器具送出カテーテルを配置することが可能となり、ステント送出に好適な状態を確保できている。すなわち、この治療器具送出カテーテルは、体腔内で安定的に係留されたものである。
【0070】
本発明のバルーンカテーテル10は、放射線撮影により位置決めをしやすくなるよう、1又は2以上の放射線不透過性マーカーを含んでいてもよい。図1に示すように、バルーンカテーテル10は、シャフト12に沿って、放射線不透過性マーカー34,36,38,40,42を含んでいる。放射線不透過性マーカーは、白金、イリジウムなどの従来材料から構成してもよい。放射線不透過性マーカー34,36は、それぞれ、血管内でのバルーン18の位置を視覚化できるよう、バルーン18の遠位端37及び近位端33の近傍に位置決めされている。放射線不透過性マーカー38は、血管内でのRXポート30の位置を視覚化できるよう、RXポート30の近傍に位置決めされている。放射線不透過性マーカー40,42は、シャフトマーカーであり、それぞれ、シャフト12の遠位端32から90cm、100cm程度離れた位置を取る。
【0071】
図1に示すロック可能なバルーンカテーテル10を用いた血管内送出システムの他の構成例を図2に示す。本システムは、治療器具送出用カテーテル、1又は2以上のシース、及び送出部材を有してなる。図2に例示するように、本システム50は、ロック可能なバルーンカテーテル10、シース52、シース54、送出部材(ガイドワイヤ)56、及び治療器具送出用カテーテル60を有している。
【0072】
シース52は、血管内送出操作を行うことが可能な寸法形状を有する。シース52は、ロック可能なバルーンカテーテル10による血管内送出操作を可能にするためのルーメンを構成する。
【0073】
シース54は、血管内送出操作を行うことが可能な寸法形状を有する。シース54は、治療器具送出用カテーテル60による血管内送出操作を可能にするためのルーメンを構成する。シース52及び54は、血管内操作用の従来品を用いることができる。
【0074】
送出部材56は、血管内送出操作を行うことが可能な寸法形状を有するものであり、例えば、図示するようなガイドワイヤを用いる。一例として、血管内操作用のガイドワイヤ従来品を用いることができる。
【0075】
治療器具送出用カテーテル60は、患者の管腔内の目的部位に向けて、ステント等の治療器具を血管内送出することが可能な寸法形状を有する。治療器具送出用カテーテル60は、近位部64及び遠位部66を有するシャフト62を含んでいる。
【0076】
シャフト62の近位部64は、治療者が操作する。操作のため、近位部64にハンドル67を設けている。シャフト62管内に沿って延伸する膨張ルーメン75を通じて、バルーン68の内部にバルーン膨張ポート72が接続されている。
【0077】
シャフト62の遠位部66において、ガイドワイヤルーメン77に沿って、ガイドワイヤポート74が接続されている。
【0078】
ハンドル67及びポート72,74は、治療器具送出用カテーテル60の近位部64と同様、既知の材料、例えば、ポリエチレン及び/又はポリテレフタレートなどの材料で形成することができる。治療器具送出用カテーテル60は、治療目的に応じた好適な寸法形状を有するものとする。
【0079】
治療器具送出用カテーテル60は、ステント等の治療器具70を送出するためのものである。図2に示す例では、治療器具送出用カテーテル60は、シャフト62の遠位部66の所定位置においてバルーン68を備えている。(バルーン膨張ポート72に流体(空気)を導入した結果)バルーン68が膨張することにより、治療器具70が送出(収縮)状態から係留(膨張)状態へと遷移する。
【0080】
ここで、治療器具送出用カテーテル60について、ベアメタルステント、薬剤溶出性ステントなどのステント送出のための実施例として説明したが、その他の種類の治療、例えば、医薬送出用カテーテル、バルーンカテーテル、薬剤溶出性バルーンカテーテル、エネルギー送出用カテーテルなどにも応用可能である。医薬の例としては、有糸分裂阻害剤、再製剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、抗血栓剤、瘢痕予防剤、抗細胞増殖剤、降圧剤、抗再狭窄剤、治癒促進剤、ビタミン、タンパク質、ゲノム、成長因子、細胞、肝細胞、ベクター、RNA、DNAなどが含まれる。エネルギー送出用カテーテルは、紫外光、超音速、抵抗熱、ラジオ波(RF)、極低温材料などあらゆる形態のエネルギーを対象とするものである。
【0081】
図3A,3B,3Cは、本発明のロック可能なバルーンカテーテル10の一実施形態における遠位部16の概観図である。図3A,3Bは、それぞれ、バルーンカテーテル10のアンロック状態、ロック状態を示す。図3Cは、バルーンカテーテル10のロック状態における断面概観図である。
【0082】
図3Aにおいて、シャフト12はアンロック状態(アンロック動作モード)である。アンロック状態では、ガイドワイヤルーメン28の直径は、当該ルーメン内でガイドワイヤ31が滑動可能となるような寸法を取る。
【0083】
図3B,3Cにおいて、シャフト12はロック状態へと遷移している。
バルーン18の膨張により、バルーン18内に位置するシャフト12のロック部17が押圧されて、ガイドワイヤルーメン28の直径が減少し、その結果、シャフト12のロック部17にあたる内壁がガイドワイヤ31を包囲して、ガイドワイヤルーメン28内にロックする。例えば、図3B,3Cに示すように、バルーン膨張ルーメン24及びバルーンポート26を介してバルーン18に流体(空気)を導入することにより、バルーン18が膨張し、この膨張によりバルーン18内部空間が圧迫されて、シャフト12のロック部17が圧搾される構成とすることができる。
【0084】
このバルーン膨張システム18の利点は、ガイドワイヤルーメン28をガイドワイヤ31に密接させることができるだけでなく、それと同時に、図3A,3Bに示すように、バルーン18の壁の患者の管腔経路100への密接を増大させ、ガイドワイヤ31を管腔経路内に係留(anchor)することができることにもある。
【0085】
図4A,4Bは、図3A,3B,3Cに示すのと同様に、カテーテル10’の遠位部を概略的に示す図である。このカテーテル10’は、シャフト12’のバルーン18’内におけるロック部17’において可撓性部材44を有しており、これによりロック機構を実現している。このロック可能なカテーテル10’は、図1~2,3A~3Cに示すロック可能なカテーテル10と同様な方法で構成されるものであり、類似の部材にはプライム(「’」)付き符号を付している。可撓性部材44は、シャフト12’に沿ってバルーン18’内のみ(ロック部17’相当部分のみ)にわたり延伸するようにしてもよいし、シャフト12’全長にわたって延伸するようにしてもよい。可撓性部材44は、繊維編組物、例えば、ステンレスの金属繊維編組物からなる。この繊維編組物は、ポリマー等の遮水性材料で被覆されていてもよい。上述の通り、ロック部17’における可撓性部材44は、
バルーン18の膨張及び加圧の動作に乗じて圧搾動作をし、ガイドワイヤルーメンを送出部材56’にロックする構造となっている。
【0086】
他の実施形態としては、図4C,4Dに示すように、バルーンカテーテル10’’は、捻れ耐性機構120を補強的に備えることができる。本システムのうち、RXポート30とバルーン18の間の部分は、膨張したバルーン18がガイドワイヤ上をけん引される際にカテーテルシャフト12に生じる鋭角捻れ、座屈(buckling)、屈曲に対して弱いためである。
【0087】
そのような問題点を原因とする、心臓手術時におけるカテーテルシャフト12の望ましくない逸脱を防止するため、本システム10’’は捻れ耐性機構120を備えている。捻れ耐性機構120は、図4Cに示すように、カテーテルシャフト12内部のRXポート30とバルーン18の間に形成されたニチノール/鋼製ワイヤ状部材122である。あるいは、図4Dに示すように、延伸部126及び中央環状部128からなるよう形成されたニチノール/鋼製ワイヤ状部材124である。これらは、カテーテルシャフト12の内壁に埋設され、又は当該内壁に内部固定若しくは外部固定された補強構造体として形成される。
【0088】
あるいは、捻れ耐性機構120は、ワイヤ状部材122とワイヤ状部材124とを組み合わせて用いるものであってもよい。
【0089】
捻れ耐性機構120は、上記いずれの構造を取るものであれ、カテーテルシャフト12に鋭角捻れ、座屈(buckling)、屈曲が生じるのを防止するため、心臓手術のあらゆる局面にも耐えうる堅牢なシステムが提供される。
【0090】
図4C,4Dでは、捻れ耐性機構120を、図4A,4Bに示す実施形態への応用例として示したが、これに限られず、捻れ耐性機構120は、図1~5Iに示すすべての実施形態への応用例とすることが可能である。
【0091】
本発明の方法は、ロック可能なバルーンカテーテル10及び10’を血管内処置に利用するものである。以下に一例として、図1,2,3A~3Bに示すロック可能なバルーンカテーテル10への応用例を説明する。図4A,4Bに示すロック可能なバルーンカテーテル10’への応用例も同様に説明できる。
【0092】
図5Aにおいて、送出部材(ステント)を血管内の目的場所に導入する。本例では、送出部材56(ステントとして表示)を血管V内の病変部位Lの位置に配置する。病変部位の位置は、造影剤を用いた撮影など従来の血管治療技術で特定されている。
【0093】
図5Bにおいて、バルーンカテーテル10の遠位端32に位置するガイドワイヤルーメン28の遠位開口82に対し、ガイドワイヤ56の近位端80を挿入することにより、バルーンカテーテル10が送出部材56に充填される。カテーテル10は、その遠位部16が目的部位(病変部位Lなど)に到達するまで、患者血管系V内を進行する。目的部位は、放射線不透過性マーカーを用いた造影法によりあらかじめ決められている。患者血管系V内で位置決めされたカテーテル10の遠位部16は図5Bのように表れる。この送出手順中、カテーテル10のバルーン18は、折り畳み状態となっている。
【0094】
あるいは、図2に示すシース52のような送出用シースをバルーンカテーテル10の遠位部16に重ねて配置し、滑らかな表面を有するロック可能なバルーンカテーテル10を実現し、血管Vの目的部位Lに到達後は、遠位部16を露出するようにしてもよい。図示するように、ガイドワイヤ56は、バルーン18内部のガイドワイヤルーメン28内に配置され、ガイドワイヤRXポート30から外部に出ている。
【0095】
図5C及び図1において、膨張ポート22には、従来の膨張システム25が接続されており、膨張用流体(食塩水、ヨード造影剤など)27は、膨張ルーメン24を介してバルーン18に満たされ、バルーンを膨張させることができるようになっている。膨張状態では、バルーン18の壁84が病変部位Lや血管Vの内膜に接触し、病変部位Lを途絶させる。その後、図5Dに示すように、バルーン18は収縮される。
【0096】
図5Eにおいて、バルーン18は、収縮状態で、ガイドワイヤ56の遠位端86とともに、患者管腔Vの目的部位Lに近いがこれを超えない位置に達している。例えば、ロック可能なバルーンカテーテル10及び送出部材56を血管V内の遠位側に配置することで、RXポート30を目的部位Lから一定距離置いた位置に配置する。
【0097】
図5Fに示すように、膨張ルーメン24及びバルーン膨張ポート26を通じてバルーン18に膨張用流体27を注入することにより、バルーンカテーテル10が送出部材56にロックされる。膨張用流体27の圧注によりバルーン18を膨張させ、この膨張によりバルーン18内部空間が圧迫されて、シャフト12が圧搾され、ガイドルーメン28がその内部の送出部材56と密接し、送出部材56がシャフト12にロックされる。さらに、バルーン18の膨張により、バルーン18の壁84が血管Vの内腔と接することで、バルーン18が血管内に係留され、ロックされる送出部材56の血管V内での安定に寄与する。
【0098】
図5Gに示すように、バルーンカテーテル10が送出部材56にロックされ、バルーンカテーテル10及び送出部材56が体腔内に係留された状態(この際、バルーン18の壁84が血管Vの内腔と接していてもいなくともよい)で、送出部材56を通じて治療器具送出用カテーテル60を導入し、治療器具70を目的部位Lに配備することができる。配備中、治療器具送出用カテーテル60は折りたたまれていてもよい。あるいは、図2に示すシース54のような送出用シースをカテーテル60の遠位部66に重ねて配置し、滑らかな表面を有する治療器具送出用カテーテル60を実現してもよい。血管Vの目的部位に到達後は、シース54を後退させ、遠位部16を露出させる。ロック可能なバルーンカテーテル10と治療器具送出用カテーテル60とは、共通の送出部材56を用いるが、体腔内では、これらは個別に構成している。
【0099】
図5Hに示すように、ロック可能なバルーンカテーテル10を送出部材56からアンロックする。例えば、バルーン18を収縮させ、シャフト12の圧搾を停止することで、ガイドルーメン28のロック部17が膨張しガイドワイヤ56と活動自在の状態となる。
【0100】
図5Iに示すように、送出部材(ガイドワイヤ)56を、ロック可能なバルーンカテーテル10から取り除く。例えば、送出部材56の遠位端86がRXポート30を抜けるまでの間、ロック可能なバルーンカテーテル10をそのままの状態としつつ、送出部材56を引き抜くことができる。あるいは、送出部材56をそのままの状態としつつ、送出部材56の遠位端86がRXポート30を抜けるまでの間、ロック可能なバルーンカテーテル10を引き抜くこともできる。
【0101】
図5Jに示すように、ロック可能なバルーンカテーテル10を目的部位L近傍から除去し、治療器具60のみが血管V内の目的部位Lに残ることになる。ロック可能なバルーンカテーテル10は、血管Vから完全に除去してもよいし、治療器具搬送に用いるために退避させるだけにしておいてもよい。あるいは、バルーンカテーテルを他の血管に移動させてもよい。
【0102】
図5Kに示すように、治療器具(ステント)70が目的部位Lに展開される。例えば、バルーン68を膨張させることで、治療器具70を拡張させて、血管Vの内壁に接触させることができる。
【0103】
続いて、図5Lに示すように、治療器具(ステント)70が移植用である場合、治療器具送出用カテーテル60を取り除き、治療器具70を目的部位Lに移植された状態で残置する。
【0104】
以上、本発明について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更・改良を加えることが可能である。例えば、機能的に同等な部材による代替、部材の配置の転換、工程の順序変更や挿入などがあり得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L