(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
(21)【出願番号】P 2021570609
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001542
(87)【国際公開番号】W WO2021144971
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹也
(72)【発明者】
【氏名】横井 勇太
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207339(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/058475(WO,A1)
【文献】特開2008-298436(JP,A)
【文献】特開2008-216140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極を含む複数の電極を有する部品を用いる実装装置を含む実装システムに用いられる検査装置であって、
画像処理する際に用いる前記第1電極に対する第1閾値と、前記第2電極に対する第2閾値とを含む閾値情報を記憶する記憶部と、
前記部品を撮像した撮像画像の前記第1電極の領域に対し前記第1閾値を適用し、前記第2電極の領域に対し前記第2閾値を適用して画像判定する制御部と
、を備え
、
前記制御部は、前記第1電極の中央領域を画像判定する領域とし、前記第1電極の前記中央領域よりも前記第1電極の端に位置する領域を画像判定しない領域とし、前記第1電極の前記中央領域に対して第1閾値を適用するか、前記第2電極の中央領域を画像判定する領域とし、前記第2電極の前記中央領域よりも前記第2電極の端に位置する領域を画像判定しない領域とし、前記第2電極の前記中央領域に対して第2閾値を適用するか、のいずれか1以上で前記画像判定する、検査装置。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第2電極に対して異なる形状を有する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記部品に複数形成されている前記第1電極のグループに対して前記第1閾値を適用するか、前記部品に複数形成されている前記第2電極のグループに対して前記第2閾値を適用するか、のいずれか1以上で前記画像判定する、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、はんだ転写前及び/又ははんだ転写後の前記第1電極に前記第1閾値を適用するか、はんだ転写前及び/又ははんだ転写後の前記第2電極に前記第2閾値を適用するか、のいずれか1以上で前記画像判定する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記画像判定により、前記第1電極及び第2電極へのはんだの転写状態を検査する、請求項
4に記載の検査装置。
【請求項6】
第1電極及び第2電極を含む複数の電極を有する部品を用いる実装装置を含む実装システムに用いられ、画像処理する際に用いる前記第1電極に対する第1閾値と前記第2電極に対する第2閾値とを含む閾値情報を記憶する記憶部を備えた検査装置が実行する検査方法であって、
前記部品を撮像した撮像画像の前記第1電極の領域に対して前記第1閾値を適用し、前記第2電極の領域に対し前記第2閾値を適用して画像判定するステップ
、を含
み、
前記画像判定するステップは、前記第1電極の中央領域を画像判定する領域とし、前記第1電極の前記中央領域よりも前記第1電極の端に位置する領域を画像判定しない領域とし、前記第1電極の前記中央領域に対して第1閾値を適用するか、前記第2電極の中央領域を画像判定する領域とし、前記第2電極の前記中央領域よりも前記第2電極の端に位置する領域を画像判定しない領域とし、前記第2電極の前記中央領域に対して第2閾値を適用するか、のいずれか1以上で前記画像判定する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、検査装置及び検査方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、実装装置としては、例えば、部品を異なる撮影条件により複数回撮像させて部品データを作成し、この部品データを用いて部品を認識するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この実装装置では、オペレータの作業負担を軽減し、精度よく部品データを作成することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/003267号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の装置では、例えば部品データを実装装置が作成することはできるが、検査装置において、例えば、第1電極及び第2電極を含む複数の電極を有する部品に対して、より適正に画像判定を実行することは、まだ十分ではなかった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、より適正に画像判定を実行することができる検査装置及び検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する検査装置及び検査方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の検査装置は、
第1電極及び第2電極を含む複数の電極を有する部品を用いる実装装置を含む実装システムに用いられる検査装置であって、
画像処理する際に用いる前記第1電極に対する第1閾値と、前記第2電極に対する第2閾値とを含む閾値情報を記憶する記憶部と、
前記部品を撮像した撮像画像の前記第1電極の領域に対し前記第1閾値を適用し、前記第2電極の領域に対し前記第2閾値を適用して画像判定する制御部と、
を備えたものである。
【0008】
この検査装置では、画像処理する際に用いる第1電極に対する第1閾値と、第2電極に対する第2閾値とを含む閾値情報を記憶しておき、部品を撮像した撮像画像の第1電極の領域に対して第1閾値を適用し、第2電極の領域に対して第2閾値を適用して画像判定する。この検査装置では、異なる電極ごとに画像判定用の閾値を設定しているため、例えば電極に対して統一した閾値を設定し、画像判定に用いるものに比して誤判定をより低減することができる。このため、この検査装置では、より適正に画像判定を実行することができる。ここで、部品は、第1電極や第2電極を有するが、電極は複数あるものとすればよく、第3電極を有するものとしこれに第3閾値を設けたり、第4電極を有するものとしこれに第4閾値を設けてもよい。また、第2電極は、第1電極とは異なる電極とすればよく、異種で配置位置が違うものとしてもよいし、同種で配置位置や配置方向が違うものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実装システム10及び実装装置13の一例を示す概略説明図。
【
図2】実装ヘッド32に採取される部品Paの一例の説明図。
【
図3】記憶部27に記憶された部品情報28の一例の説明図。
【
図4】実装処理ルーチンの一例を表すフローチャート。
【
図5】転写検査処理ルーチンの一例を表すフローチャート。
【
図8】別の部品情報28B及び撮像画像50Bの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、実装システム10及び実装装置13の一例を示す概略説明図である。
図2は、実装ヘッド32に採取される部品Paの一例の説明図である。
図3は、記憶部27に記憶された部品情報28の一例の説明図である。実装システム10は、例えば、部品Pを基板Sに実装する処理に関する実装処理を実行するシステムである。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、
図1に示した通りとする。
【0011】
実装システム10は、例えば、実装対象物としての基板Sに部品Pを実装処理する実装装置13が基板Sの搬送方向に配列された生産ラインとして構成されている。ここでは、実装対象物を基板Sとして説明するが、部品Pを実装するものであれば特に限定されず、3次元形状の基材としてもよい。この実装システム10は、
図1に示すように、印刷装置11と、印刷検査装置12と、実装装置13と、実装検査装置14と、管理PC18とを含んで構成されている。印刷装置11は、基板Sにはんだペーストなどを印刷する装置である。印刷検査装置12は、印刷されたはんだの状態を検査する装置である。実装装置13は、基板Sに部品Pを実装処理する装置である。実装検査装置14は、実装装置13で実装された部品Pの状態を検査する装置である。
【0012】
実装装置13は、
図1に示すように、基板処理部21と、部品供給部22と、パーツカメラ23と、制御装置25と、実装部30とを備えている。この実装装置13は、部品Pを基板Sに配置する実装処理を実行する機能のほか、部品Pや基板Sを検査する検査処理を実行する機能も備えている。基板処理部21は、基板Sの搬入、搬送、実装位置での固定、搬出を行うユニットである。基板処理部21は、
図1の前後に間隔を開けて設けられ左右方向に架け渡された1対のコンベアベルトを有している。基板Sはこのコンベアベルトにより搬送される。
【0013】
部品供給部22は、リールを備えた複数のフィーダやトレイユニットを有し、実装装置13の前側に着脱可能に取り付けられている。各リールには、テープが巻き付けられ、テープの表面には、複数の部品Pがテープの長手方向に沿って保持されている。このテープは、リールから後方に向かって巻きほどかれ、部品が露出した状態で、吸着ノズル33で吸着される採取位置にフィーダ部により送り出される。トレイユニットは、部品Pを複数配列して載置するトレイを有し、所定の採取位置へこのトレイを出し入れする。
【0014】
パーツカメラ23は、画像を撮像する撮像部であり、実装ヘッド32に採取され保持された1以上の部品Pを撮像するユニットである。このパーツカメラ23は、部品供給部22と基板処理部21との間に配置されている。このパーツカメラ23の撮像範囲は、パーツカメラ23の上方である。パーツカメラ23は、部品Pを保持した実装ヘッド32がパーツカメラ23の上方を通過する際、その画像を撮像し、撮像画像データを制御装置25へ出力する。
【0015】
実装部30は、部品Pを部品供給部22から採取し、基板処理部21に固定された基板Sへ配置するユニットである。実装部30は、ヘッド移動部31と、実装ヘッド32と、吸着ノズル33と、マークカメラ34と、転写部35とを備えている。ヘッド移動部31は、ガイドレールに導かれてXY方向へ移動するスライダと、スライダを駆動するモータとを備えている。実装ヘッド32は、スライダに取り外し可能に装着されており、ヘッド移動部31によりXY方向へ移動する。実装ヘッド32は、その下面側に1以上の吸着ノズル33(例えば、16個や8個、4個など)が取り外し可能に装着されており、複数の部品Pを1度に採取可能である。吸着ノズル33は、負圧を利用して部品を採取する採取部材である。なお、採取部材は、部品Pを把持するメカニカルチャックとしてもよい。マークカメラ34は、実装ヘッド32(又はスライダ)の下面側に配設されている。マークカメラ34は、例えば、基板Sや部品Pなどを上方から撮像可能な撮像装置である。マークカメラ34は、実装ヘッド32の移動に伴ってXY方向へ移動する。このマークカメラ34は、下方が撮像領域であり、基板Sに付された基板Sの位置把握に用いられる基準マークなどを撮像し、その画像を制御装置25へ出力する。
【0016】
ここで、実装ヘッド32が採取する部品Pについて説明する。実装ヘッド32は、はんだが印刷された基板Sの電極上に部品Pを配置するほか、はんだが転写された複数の電極Eを有する部品Paを基板S上へ配置する。
図2に示すように、部品Paは、円形の電極Ea1~Ea8と、矩形の電極Eb1~Eb4と、矩形の電極Ec1~Ec4とを備えている。ここでは、電極Ea1~Ea8を電極Eaと総称し、電極Eb1~Eb4を電極Ebと総称し、電極Ec1~Ec4を電極Ecと総称し、電極Ea~Ecを電極Eと総称し、部品Paや部品Pbなどを部品Pと総称する。この部品Paは、転写部35において各電極Eにはんだが転写されたのち、基板Sへ配置される。
【0017】
転写部35は、複数の電極を有する部品Paの電極にはんだを転写するユニットである。この転写部35は、はんだペーストを収容する皿状のテーブルと、テーブルに対し相対移動するスキージと、はんだペーストをテーブル上へ供給するはんだ供給部とを有する。スキージは、テーブルとの相対移動に伴い、テーブル上のはんだペーストを押し広げて膜上に形成する部材である。なお、転写部35は、移動可能なテーブルと固定されたスキージとを備えてもよいし、固定されたテーブルと移動可能なスキージとを備えてもよい。実装ヘッド32は、部品Paを採取し、転写部35のテーブル上のはんだへ下降して電極Eを接触させることで部品Paの各電極Eにはんだペーストを転写させる。
【0018】
制御装置25は、
図1に示すように、CPU26を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種データを記憶する記憶部27などを備えている。制御装置25は、実装装置13の装置全体を制御する機能のほか、部品Pや電極Eの有無やその形状が許容範囲内であるかなどの異常検査や、電極Eへのはんだの転写が適正であるかなどの転写検査を実行する機能を有している。制御装置25は、基板処理部21や、部品供給部22、パーツカメラ23、実装部30へ制御信号を出力し、実装部30や部品供給部22、パーツカメラ23、実装部30からの信号を入力する。記憶部27には、部品Pに関する部品情報28や、部品Pを基板Sへ実装する実装順や部品Pの配置位置、部品Pを採取可能な吸着ノズル33の種別などを含む実装条件情報などが記憶されている。部品情報28は、
図3に示すように、部品Pa、Pbなどの各部品の部位の形状やサイズを含む領域情報と、画像処理においてその領域を検出するのに用いられる閾値を含む閾値情報29とが部品Pの部位に対応づけられている。部品Pの部位は、本体や、電極E、基準マークなどを含む。本体の閾値は、実装ヘッド32に部品Pが採取されているか否かを判定する際に用いられるものであり、撮像画像から経験的に求められた輝度値に設定されている。電極Eの閾値は、はんだ転写後の電極Eにはんだが形成されているか否かを判定する際に用いられるものであり、例えば、はんだ転写前後の撮像画像から経験的に求められた輝度値に設定されている。制御装置25は、例えば、部品情報28を部品Paの基準とし、部品Paの本体や電極Eの形状が許容範囲内であるか否かの検査や、電極E上にはんだが適正に転写されているか否かの検査を行う。
【0019】
管理PC18は、実装システム10の各装置の情報を管理するコンピュータである。管理PC18は、制御部と、記憶部と、ディスプレイと、入力装置とを備えている。制御部は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。記憶部には、実装システム10の生産を管理する情報のほか、部品Pを基板Sへ実装する実装順や部品Pの配置位置、部品Pを採取可能な採取部材の種別などを含む各実装装置13に対応する実装条件情報などが記憶されている。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態の実装システム10の動作、まず、実装装置13での実装処理について説明する。まず実装装置13が部品Pを基板Sへ実装する処理について説明する。
図4は、実装装置13の制御装置25のCPU26により実行される実装処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、実装装置13の記憶部27に記憶され、作業者による開始指示により実行される。このルーチンを開始すると、CPU26は、今回生産する基板Sの実装条件情報を読み出して取得し(S100)、基板処理部21によって基板Sを実装位置まで搬送させ、固定処理させる(S110)。次に、CPU26は、採取する対象の部品を実装条件情報に基づいて設定し(S120)、採取対象の部品に対応する部品情報28を読み出して取得する(S130)。次に、CPU26は、採取対象の部品Pを収容したフィーダから部品Pを実装ヘッド32に採取させ、パーツカメラ23の上方へ移動させ、実装部30が採取した状態の部品Pをパーツカメラ23に撮像処理させる(S140)。
【0021】
次に、CPU26は、実装部30が採取した部品Pにはんだを転写する部品Paが含まれているか否かを判定し(S150)、はんだを転写する部品Paが含まれていないときには、実装ヘッド32に採取されている部品Pに異常を検出したか否かを判定する(S160)。この判定は、部品情報28に含まれる各部品の情報に基づいて、部品Pの本体や電極Eなどの形状が適正な範囲に入っているかや、本来存在する部品Pの部位(例えば電極Eや基準マークなど)があるか、その部位の位置や形状が適正範囲内にあるかなどに基づいて行われる。部品Pに異常が検出されると、CPU26は、該当する部品Pを所定の廃棄場所に廃棄する(S170)。
【0022】
S170のあと、またはS160で部品Pに異常がないときには、CPU26は、撮像画像に基づいて採取されている部品Pの角度や位置のずれを補正し、部品Pを基板Sへ配置させる(S190)。そして、CPU26は、現在、実装位置に固定されている基板Sの実装処理が完了したか否かを判定し(S200)、実装処理が完了していないときには、S120以降の処理を実行する。即ち、CPU26は、次に採取、配置する部品Pを設定し、この部品Pを実装部30に採取させ、部品Pの異常を検出しつつ、部品Pのずれを補正し、部品Pを基板Sへ配置する処理を繰り返し実行する。
【0023】
一方、S200で、現在、実装位置に固定されている基板Sの実装処理が完了したときには、CPU26は、実装完了した基板Sを基板処理部21により排出させ(S210)、実装条件情報に設定されているすべての基板Sの生産が完了したか否かを判定する(S220)。すべての基板Sの生産が完了していないときには、CPU26は、S110以降の処理を実行する。即ち、CPU26は、次の基板Sを搬送固定し、部品Pを基板Sへ配置する処理を繰り返す。一方、S220ですべての基板Sの生産が完了したときには、CPU26は、このルーチンを終了する。
【0024】
一方、S150で、実装部30が採取した部品Pにはんだを転写する部品Paが含まれているときには、CPU26は、部品Paなどにはんだを転写し、転写したはんだが適正であるかを検査する転写検査処理を実行し(S180)、S190以降の処理を実行する。
図5は、制御装置25のCPU26が実行する転写検査処理ルーチンの一例を表すフローチャートである。このルーチンを開始すると、CPU26は、部品Paに含まれる検査対象の電極Eを部品情報28に基づいて設定し(S300)、検査対象の電極の情報を取得し(S310)、電極Eに異常を検出したか否かを判定する(S320)。この判定は、上述したS160と同様に電極Eの有無、位置、形状などが許容範囲内にあるかを判定する処理を行う。電極Eに異常が検出されないときには、CPU26は、部品Paに含まれるすべての電極Eに対してこの検査を行ったか否かを判定し(S330)、すべての電極Eに対して検査処理を行っていないときには、S300以降の処理を実行する。即ち、CPU26は、次の検査対象の電極Eを設定し、部品情報28に基づいて電極の有無、位置、形状などが許容範囲内にあるかを判定する。
【0025】
S330ですべての電極Eに異常がないときには、CPU26は、部品Paの電極Eにはんだを転写する転写処理を実行する(S340)。転写処理では、CPU26は、実装ヘッド32に採取された部品Paを転写部35の上方に移動させたのち下降させ、電極Eを転写部35上のはんだペーストに接触させる。次に、CPU26は、適正な転写が行われたかについての検査を実行する(S350~S380)。この検査において、CPU26は、まず、部品情報28に含まれている部品Paの情報に基づいて検査対象の電極Eを設定し(S350)、検査対象の電極Eの閾値を部品情報28から取得し(S360)、転写不良があるか否かを判定する(S370)。
【0026】
図6は、部品Paを撮像した撮像画像50の説明図であり、
図6Aが撮像画像50の説明図、
図6Bが撮像画像50に判定基準となる電極領域Aを重ねた概念図である。なお、ここでは、電極領域Aa~Acを電極領域Aと総称する。
図7は、部品を撮像した撮像写真と輝度値の説明図であり、
図7Aがはんだ転写前の写真、
図7Bがはんだ転写後の写真、
図7Cが各電極のはんだ転写前後の輝度値及びその差分を示す表である。一般的に、はんだ転写後の電極Eの輝度値は、はんだ転写前の輝度値よりも低い値を示す(
図7参照)。部品情報28では、S370の判定で用いる閾値は、例えば、電極E自体を撮像した電極領域Aの輝度値と、電極Eにはんだを転写したあと撮像した電極領域Aの輝度値との間の輝度値に設定されるものとしてもよい。また、円形の電極Eの方が矩形の電極Eに比して全体的に輝度値が低い傾向を示す。更に、同種の電極Eにおいても、その位置などによって、輝度値が異なる値を示すことがある。このため、部品情報28では、同種の電極Eであっても、本体上で位置の異なる各電極Eに対して個別の閾値が設定されている。そして、S370の判定では、CPU26は、該当する電極Eの転写処理後の電極領域Aの平均輝度値が該当する閾値を下回るか否かにより、はんだの転写が良好か否かを判定する。
【0027】
S370で転写不良がないと判定されたときには、CPU26は、すべての電極Eに対して転写不良の検査を実行したか否かを判定し(S380)、すべての電極Eに対して検査を実行していないときには、S350以降の処理を実行する。即ち、検査対象の電極Eを設定し、その電極Eに設定されている閾値を用いて転写不良の判定を実行する。一方、S380ですべての電極Eに対して検査を実行したときには、CPU26は、このルーチンを終了する。一方、S320またはS370で電極Eに異常が検出されたときには、CPU26は、該当する部品Pを所定の廃棄場所に廃棄し(S390)、このルーチンを終了する。そして、CPU26は、S190以降の処理を実行する。このように、CPU26は、はんだを転写する部品Paに対して、各電極Eに設定された閾値を用いて転写不良を判定するのである。
【0028】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の制御装置25が本開示の検査装置に相当し、記憶部27が記憶部に相当し、CPU26が制御部に相当する。また、電極Ea~Ecのいずれか1つが第1電極に相当し、それ以外が第2電極に相当する。また、電極Ea1~Ea8のいずれか1つが第1電極に相当し、それ以外が第2電極に相当し、電極Eb1~Eb4のいずれか1つが第1電極に相当し、それ以外が第2電極に相当し、電極Ec1~Ec4のいずれか1つが第1電極に相当し、それ以外が第2電極に相当するものとしてもよい。なお、本実施形態では、制御装置25の動作を説明することにより本開示の検査方法の一例も明らかにしている。
【0029】
以上説明した本実施形態の制御装置25(検査装置)は、画像処理する際に用いる電極Ea(第1電極)に対する第1閾値と、電極Eb(第2電極)に対する第2閾値とを含む閾値情報29を記憶しておき、部品Paを撮像した撮像画像の第1電極の領域に対して第1閾値を適用し、第2電極の領域に対して第2閾値を適用して画像判定する。この制御装置25では、異なる電極Ea1~8,Eb1~4,Ec1~4ごとに画像判定用の閾値を設定しているため、例えば電極Ea~Ecに対して統一した閾値を設定し、画像判定に用いるものに比して誤判定をより低減することができる。このため、この制御装置25では、より適正に画像判定を実行することができる。また、制御装置25において、第1電極は、第2電極に対して異なる形状を有するものであり、異なる形状ごとに閾値を設けることによって、より適正に画像判定を実行することができる。
【0030】
また、CPU26は、はんだ転写後の電極Eのそれぞれにそれぞれの閾値を適用し、画像判定するため、各電極ごとのこの輝度値変化に合わせた閾値を各々設定することができ、同種且つ複数の電極Eや複数種の電極Eに対して統一した閾値を設定し画像判定に用いるものに比して誤判定をより低減可能であり、より適正に画像判定を実行することができる。はんだ転写の不良を検査する際の閾値は、はんだ転写前の最小値とはんだ転写後の最大値との間の輝度値に設定される。例えば、
図7Cに示すように、全電極Eの平均輝度値を基準として全電極Eの閾値を統一して設定しようとすると、円形電極Eaと矩形電極Eb,Ecとの輝度値の範囲の相違から、閾値は、相対的に狭い輝度範囲から選択されることとなり、誤判定しやすいものとなる。ここでは、個別の電極Eごとに閾値が設定されているため、閾値は、相対的に広い輝度範囲から選択されることとなり、誤判定しにくいものとすることができる。
【0031】
なお、本明細書で開示する検査装置は、上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、個別の電極Eに対してそれぞれに適した閾値が設定されているものとしたが、複数の電極E及び/又は複数種の電極Eに対して閾値が設定されているものとすれば特にこれに限定されず、部品Paに複数形成されている第1電極のグループに対して第1閾値を適用するものとしてもよい。また、第1電極と異なる第2電極のグループに対して第2閾値を適用するものとしてもよい。
図8は、別の部品情報28B及び撮像画像50Bの説明図であり、
図8Aが部品情報28Bの説明図、
図8Bが撮像画像50Bの説明図である。例えば、隣接した領域に配置されているか、撮像条件などに応じて輝度値が近似するような関係がある電極Eをグループにして閾値を設定するものとしてもよい。
図8では、電極Ea1~Ea6が互いに隣接している領域にあり、近似した輝度値を有するため、閾値情報29Bには共通の閾値が設定されている。同様に、閾値情報29Bには、電極Ea7~8、電極Eb1~Eb4、電極Ec1~Ec4に対してそれぞれ共通の閾値が設定されている。この検査装置では、撮像画像が近似する各電極Eのグループに対して閾値を設定するため、個々の電極Eにそれぞれ閾値を設定するものに比して、処理を簡素化すると共により適正に画像判定を実行することができる。なお、閾値情報29において、電極Eは、撮像画像の近似するものがグループ化されればよく、電極Eaや電極Eb、電極Ecなどの1種の全体を1つのグループとしてもよいし、電極Eaや電極Eb、電極Ecなどの1種の一部を1つのグループとしてもよい。また、閾値情報29において、電極Eは、撮像画像の近似するものがグループ化されればよく、電極Eaや電極Eb、電極Ecなどの複数種に亘って1つのグループとしてもよいし、電極Eaや電極Eb、電極Ecなどの複数種の一部を1つのグループとしてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、電極Eの領域全体に対して閾値を適用するものとしたが、特にこれに限定されず、例えば、第1電極の一部領域に対して第1閾値を適用するものとしてもよいし、第1電極と異なる第2電極の一部領域に対して第2閾値を適用するものとしてもよい。
図9は、別の電極領域Ab2の一例の説明図である。
図9に示すように、電極Ebの中央領域を画像判定する領域とし、その中央領域に適した閾値を設定するものとしてもよい。この検査装置では、例えば、電極Eの一部に輝度値が不安定な領域がある場合などにおいて、輝度値が安定的な一部領域を用いて画像判定することによって、より適正に画像判定を実行することができる。
【0034】
上述した実施形態では、CPU26は、はんだ転写後の電極Eの撮像画像に閾値を適用してはんだ転写の不良の有無を判定するものとしたが、特にこれに限定されず、はんだ転写前の電極Eの撮像画像に閾値を適用して画像判定するものとしてもよい。例えば、CPU26は、S160の電極Eの異常検出において、閾値情報29に設定された閾値を用いるものとしてもよい。このとき、閾値は、部品Paの本体の輝度値と電極Eの輝度値との間に設定されているものとしてもよい。この閾値を用いれば、CPU26は、部品Paに電極Eが配設されているか否かや電極Eの形状を判定することができる。同様に、上述した実施形態では、CPU26は、各電極Eに設定された閾値をはんだ転写の判定に用いるものとしたが、電極Eの画像処理の判定に用いるものとすれば特にこれに限定されず、他の判定、例えば、電極Eの有無や形状などの判定に用いるものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、部品Paは、電極Ea~Ecの3種の電極Eを有するものとしたが、特にこれに限定されず、2種の電極Eを有するものとしてもよいし、4種以上の電極Eを有するものとしてもよい。また、部品Paは、円形と矩形との形状の異なる電極Eを有するものとしたが、形状、サイズ及び配設位置のいずれか1以上が異なるものとすれば特にこれに限定されず、形状及び配置位置が異なる電極Eや、形状が同じでサイズ及び配置位置が異なる電極E、形状及びサイズが同じで配置位置が異なる電極Eなどを有するものとしてもよい。このような部品Paにおいても、CPU26は、より適正に画像判定を実行することができる。
【0036】
上述した実施形態では、制御装置25や実装装置13として本開示の検査装置を説明したが、特にこれに限定されず、検査方法としてもよい。
【0037】
ここで、本開示の検査装置及び検査方法は、以下のように構成してもよい。例えば、本開示の検査装置において、前記第1電極は、前記第2電極に対して異なる形状を有するものとしてもよい。この検査装置では、異なる形状ごとに閾値を設けることによって、より適正に画像判定を実行することができる。電極の形状としては、例えば、矩形、円、楕円などが挙げられる。
【0038】
本開示の検査装置において、前記制御部は、前記部品に複数形成されている前記第1電極のグループに対して前記第1閾値を適用するか、前記部品に複数形成されている前記第2電極のグループに対して前記第2閾値を適用するか、のいずれか1以上で前記画像判定するものとしてもよい。この検査装置は、撮像画像が近似する各電極のグループに対して閾値を設定するため、処理を簡素化すると共により適正に画像判定を実行することができる。ここで、電極は、撮像画像の近似するものがグループ化されればよく、第1電極や第2電極の全体を1つのグループとしてもよいし、第1電極や第2電極の一部を1つのグループとしてもよい。
【0039】
本開示の検査装置において、前記制御部は、前記第1電極の一部領域に対して第1閾値を適用するか、前記第2電極の一部領域に対して第2閾値を適用するか、のいずれか1以上で前記画像判定するものとしてもよい。この検査装置では、例えば、電極の一部に輝度値が不安定な領域がある場合などにおいて、輝度値が安定的な一部領域を用いて画像判定することによって、より適正に画像判定を実行することができる。
【0040】
本開示の検査装置において、前記制御部は、はんだ転写前及び/又ははんだ転写後の前記第1電極に前記第1閾値を適用するか、はんだ転写前及び/又ははんだ転写後の前記第2電極に前記第2閾値を適用するか、のいずれか1以上で前記画像判定するものとしてもよい。この検査装置では、例えば、はんだ転写前後において電極領域の輝度値が変化するが、各電極ごとのこの輝度値変化に合わせた閾値を各々設定することができるため、複数種の電極に対して統一した閾値を設定し画像判定に用いるものに比して誤判定をより低減可能であり、より適正に画像判定を実行することができる。このとき、前記制御部は、前記画像判定により、前記第1電極及び第2電極へのはんだの転写状態を検査するものとしてもよい。
【0041】
本開示の検査方法は、
第1電極及び第2電極を含む複数の電極を有する部品を用いる実装装置を含む実装システムに用いられ、画像処理する際に用いる前記第1電極に対する第1閾値と前記第2電極に対する第2閾値とを含む閾値情報を記憶する記憶部を備えた検査装置が実行する検査方法であって、
前記部品を撮像した撮像画像の前記第1電極の領域に対して前記第1閾値を適用し、前記第2電極の領域に対し前記第2閾値を適用して画像判定するステップ、
を含むものである。
【0042】
この検査方法では、上述した検査装置と同様に、異なる電極ごとに画像判定用の閾値を設定しているため、例えば電極に対して統一した閾値を設定し、画像判定に用いるものに比して誤判定をより低減することができ、より適正に画像判定を実行することができる。なお、この検査方法において、上述した検査装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した検査装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示の検査装置や検査方法は、部品を採取、配置などの処理を行う装置の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 実装システム、11 印刷装置、12 印刷検査装置、13 実装装置、14 実装検査装置、18 管理PC、21 基板処理部、22 部品供給部、23 パーツカメラ、25 制御装置、26 CPU、27 記憶部、28,28B 部品情報、29,29B 閾値情報、30 実装部、31 ヘッド移動部、32 実装ヘッド、33 吸着ノズル、34 マークカメラ、35 転写部、50,50B 撮像画像、A,Ab2 電極領域、E,Ea1~Ea8,Eb1~Eb4,Ec1~Ec4 電極、P,Pa,Pb 部品、S 基板。