(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】空気放出による粘着テープからのダイの取り外し
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
H01L21/68 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022067658
(22)【出願日】2022-04-15
【審査請求日】2022-06-22
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエムピーティー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ンガイ・タト・マン
(72)【発明者】
【氏名】イウ・ミン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・チ
(72)【発明者】
【氏名】チ・ユン・リー
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-037169(JP,A)
【文献】特開2010-114441(JP,A)
【文献】特開2020-188240(JP,A)
【文献】特開2015-179813(JP,A)
【文献】特開平02-230754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープからダイを取る方法であって、
ピックアームのコレットを前記ダイの上に距離を置いて配置するステップであって、前記ダイは前記粘着テープの第1の表面上に搭載されている、ステップと、
前記粘着テープに風を吹きつけて前記コレットのダイ保持表面に向かって前記ダイを変位させるために、前記第1の表面とは反対の前記粘着
テープの第2の表面上へ空気の流れを生成するステップ
であって、前記粘着テープの前記第2の表面は、テープ保持吸込み表面を含むイジェクタキャップによって維持位置に維持され、前記風を吹きつけることは、前記イジェクタキャップからの前記空気の流れを生成して前記粘着テープを前記維持位置から離して前記コレットの前記ダイ保持表面に向かって推進させることを含む、ステップと、
前記粘着テープが前記ダイから分離する間、前記コレットの前記ダイ保持表面上に前記ダイを維持するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ダイからの前記粘着テープの前記分離は、前記テープ保持吸込み表面を通る気流を逆にすることによって前記イジェクタキャップからの吸込み力を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配置するステップは、前記ダイの上の比較的固定された位置に前記ピックアームを配置して前記ピックアームの前記コレットと前記ダイとの間の空間的ギャップを維持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ダイの上に前記コレットを配置する前に、前記ダイおよび前記粘着テープを上げて剥離力を印加し、前記ダイの外縁からの前記粘着テープの層間剥離を開始することによって、事前剥離を実行するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記事前剥離は、前記粘着テープを前記イジェクタキャップ上で前記維持位置に維持しながら前記ダイを繰り返し上げ下げして前記ダイの外縁から前記粘着テープを層間剥離することをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記事前剥離は、前記テープ保持吸込み表面を通して吹きつけ力および吸込み力を交互に印加することによって前記粘着テープを繰り返し上げ下げして前記ダイの外縁から前記粘着テープを層間剥離することをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイは、前記イジェクタキャップに組み込まれたイジェクタプレートによって解除可能に支持され、前記イジェクタプレートは、前記ダイを前記テープ保持吸込み表面から離して上げるために前記テープ保持吸込み表面に対して移動可能である、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記ダイの上に前記コレットを配置する前に、前記イジェクタプレートを用いて前記ダイを上げ、前記ダイの外縁からの前記粘着テープの層間剥離を開始することによって、事前剥離を実行するステップをさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記ダイは、前記イジェクタキャップの前記テープ保持吸込み表面に対して前記イジェクタプレートを交互に上昇および下降させることによって前記イジェクタプレートによって繰り返し上げ下げされる、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記事前剥離は、前記イジェクタプレートが前記粘着テープに接して付勢している間、前記テープ保持吸込み表面を通して吹きつけ力および吸込み力を交互に生成して前記ダイを上げることを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記イジェクタプレートは、前記ダイの前記外縁に隣接する最も外側のイジェクタプレート、および前記ダイの中心に隣接する少なくとも1つの最も内側のイジェクタプレートを含み、前記方法は、事前剥離後、前記最も外側の高いイジェクタプレートを順次下げて前記粘着テープと前記ダイとの間に剥離力を印加し、前記ダイの外縁から前記ダイの前記中心に向かって前記粘着テープを漸次層間剥離することによって剥離を実行するステップをさらに含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記剥離は、前記最も内側のイジェクタプレートを除くすべての前記最も外側のイジェクタプレートを順次下げて前記ダイの外縁から前記少なくとも1つの最も内側のイジェクタプレートに向かって前記粘着テープを漸次層間剥離することを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
事前剥離の間または後に前記ダイを画像化して前記ダイからの前記粘着テープの層間剥離の範囲を検出するステップを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項14】
前記画像化は、前記剥離力の印加後の前記ダイの画像化された屈曲の程度を通して前記層間剥離の範囲を検出する、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記画像化は、事前剥離力の印加の後に前記ダイの側面を捕える撮像デバイスで前記層間剥離の範囲を検出する、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記ダイの前記画像化から層間剥離の成功が検出されるまで前記事前剥離のステップを繰り返すことを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
前記ダイの上に配置される前記コレットなしで前記事前剥離を実行するステップを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項18】
粘着テープからダイを取るための装置であって、
前記ダイの上に距離を置いて配置されるように構成されたダイ保持表面を有するピックアームのコレットであって、前記ダイは前記粘着テープの第1の表面上に搭載されている、ピックアームのコレットと、
前記第1の表面とは反対の前記粘着
テープの第2の表面上へ空気の流れを生成し、前記粘着テープに風を吹きつけて前記コレットの前記ダイ保持表面に向かって前記ダイを変位させ、前記粘着テープが前記ダイから分離する間、前記コレットの前記ダイ保持表面上に前記ダイを維持するように構成された気流生成器と、
テープ保持吸込み表面を含むイジェクタキャップであって、前記粘着テープの前記第2の表面は、前記イジェクタキャップによって維持位置に維持され、前記気流生成器は、前記イジェクタキャップからの前記空気の流れを生成して前記粘着テープを前記維持位置から離して前記コレットの前記ダイ保持表面に向かって推進させるようにさらに動作可能である、イジェクタキャップと、
を含む、装置。
【請求項19】
請求項1に記載の方法を実行するように構成された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープからダイを取る方法、およびこの方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品の製造には、製造プロセス中、高い品質および信頼性が要求される。特に、プロセスの正確性および一貫性が半導体アセンブリおよびパッケージング装置にとって重要である。1つの製造プロセスは、通常その粘着剤に付着した複数のダイを固定する粘着テープからダイを取り外すことを伴う。通常、いわゆる無針イジェクタツールは、イジェクタキャップの頂面上に配置された孔を介して吸込みを生むことができるイジェクタキャップを有する。粘着ダイシングテープ上に取り付けられた単一化された薄いダイが吸込みによってイジェクタキャップ上に押さえられ、ピックアームからのコレットがダイを適所に保持する。無針イジェクトツールは、ダイの下で支持表面を形成する複数の可動プレートを含む。これらのプレートは通常、中央プレートの両側に配置された複数対の可動プレートによって形成されている。これらのプレートは、粘着テープからダイを層間剥離するのに役立つことができる、異なる高さまで移動可能である。層間剥離が起こるとコレットはダイを適所に保持する。しかしながら、粘着テープからダイを取り外すとき、ダイに引き起こされる意図しない損傷のような、いくつかの問題に遭遇することがある。
【0003】
先行技術と比較して粘着テープからダイを取るための改善された方法を提供することが有益であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、先行技術の問題の少なくともいくつかを克服する方法および装置を提供しようと努めることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、粘着テープからダイを取る方法が提供され、この方法は、ピックアームのコレットをダイの上に距離を置いて配置するステップであって、ダイは粘着テープの第1の表面上に搭載されている、ステップと、粘着テープに風を吹きつけてコレットのダイ保持表面に向かってダイを変位させるために、第1の表面とは反対の粘着表面の第2の表面上へ空気の流れを生成するステップと、粘着テープがダイから分離する間、コレットのダイ保持表面上にダイを維持するステップと、を含む。
【0006】
既存の配置での問題は、ピックアームのコレットとイジェクタキャップまたは他の支持具上のダイとの間の接触が、層間剥離プロセス中、ダイに対する損傷を引き起こす可能性があるということであるということを、第1の態様は認識している。したがって、粘着テープからダイを層間剥離して取るためであり得る方法が提供される。この方法は、ピックアームのコレットまたは収容表面をダイの上にまたはこれから離れて距離を置いて位置決めまたは配置するステップを含むことができる。ダイは、粘着テープの第1の表面上に搭載、接着または貼付することができる。この方法は、粘着テープの第2の表面上へ空気の流れを生成または生じさせるステップを含むことができる。粘着テープの第2の表面は第1の表面と反対にあるか、または対向することができる。空気の流れの生成は、粘着テープに風を吹きつけてコレットの保持表面に向かってダイを変位させるためであり得る。この方法は、粘着テープがダイから分離する間、コレットの保持表面上にダイを維持または保持するステップを含むことができる。このように、コレットをダイから離して配置することができるが、ダイをコレットの保持表面上へ推進させてダイから粘着テープを分離または層間剥離することができる。これによりダイにかかる力が大きく減少し、損傷を防止するのに役立つ。
【0007】
粘着テープの第2の表面は、テープ保持吸込み表面を有するイジェクタキャップによって所定の位置に維持または保持することができる。風を吹きつけることは、イジェクタキャップからの空気の流れを生成して、粘着テープを維持位置から離してそしてコレットの保持表面に向かって吹き飛ばすまたは推進させることを含むことができる。したがって、イジェクタキャップを用いて粘着テープをコレットに向かって変位させることができる。
【0008】
ダイからの粘着テープの分離は、テープ保持吸込み表面を通る気流を逆にすることによってイジェクタキャップからの吸込み力を生成することをさらに含むことができる。これにより粘着テープ上に力が印加されて、コレットのダイ保持表面によって保持されているダイから粘着テープを層間剥離する。
【0009】
配置することは、ダイの上の比較的固定された位置にピックアームを配置してピックアームのコレットとダイとの間の空間的ギャップを維持することを含むことができる。ここでも、これにより、さもなければコレットとイジェクタキャップとの間でダイを圧迫し、ダイに対する損傷を引き起こす可能性のある力がダイ上へ印加されることが防止される。
【0010】
この方法は、ダイの上にコレットを配置する前に、ダイおよび粘着テープを上げて剥離力を印加し、ダイと粘着テープとの間の層間剥離、特にダイの外縁からの粘着テープの層間剥離を促進または開始することによって、事前剥離を実行するステップを含むことができる。これにより、事前剥離が行われる間、ピックアームを他の動作に用いることが可能になる。
【0011】
事前剥離は、粘着テープをイジェクタキャップ上で維持位置に維持しながらダイを繰り返し上げ下げしてダイの外縁から粘着テープを層間剥離することを含むことができる。
【0012】
事前剥離は、テープ保持吸込み表面を通して吹きつけ力および吸込み力を交互に印加することによって粘着テープを繰り返し上げ下げしてダイの外縁から粘着テープを層間剥離することも含むことができる。したがって、粘着テープの縁部を剥離しながらダイの残りを適所に保持して層間剥離を容易にすることができる。
【0013】
ダイは、イジェクタキャップに組み込まれたイジェクタプレートによって解除可能に支持することができ、イジェクタプレートは、ダイをテープ保持吸込み表面から離して上げるためにテープ保持吸込み表面に対して移動可能とすることができる。
【0014】
事前剥離は、イジェクタプレートを用いてダイを上げることを含むことができ、またはさらに、粘着テープをイジェクタキャップ上で維持位置に維持しながら、イジェクタプレートを用いてダイを繰り返し上げ下げしてダイの外縁から粘着テープを層間剥離することができる。ダイの外縁を越える粘着テープを維持位置に保持しながらイジェクタプレートを用いてダイを繰り返し上げ下げしてダイの外縁から粘着テープを層間剥離することができる。したがって、ダイの外縁を越える粘着テープを適所に保持しながらダイを移動させて層間剥離を容易にすることができる。
【0015】
ダイの上げ下げは、イジェクタキャップに対してまたはこれを基準としてイジェクタプレートを交互に上昇および下降させることを含むことができる。通常、このような上げ下げは、コレットが配置されるであろう場所に向かうおよびここから離れるものになる。
【0016】
事前剥離は、イジェクタプレートが粘着テープに接して付勢されている間、テープ保持吸込み表面を通して吹きつけ力および吸込み力を交互に生成してダイを上げることを含むことができる。
【0017】
事前剥離は、イジェクタプレートが粘着テープに接して付勢されている間、ダイの外縁を越えて延在する粘着テープを繰り返し上げ下げしてダイの外縁から粘着テープを層間剥離することを含むことができる。
【0018】
イジェクタプレートは、ダイの外縁に隣接する最も外側のイジェクタプレート、およびダイの中心に隣接する少なくとも1つの最も内側のイジェクタプレートを含むことができ、この方法は、事前剥離後、最も外側の高いイジェクタプレートを順次下げて粘着テープとダイとの間に剥離力を印加し、ダイの外縁からダイの中心に向かって粘着テープを漸次層間剥離することによって剥離を実行するステップを含むことができる。
【0019】
剥離は、少なくとも1つの最も内側のイジェクタプレートを除くすべての最も外側のイジェクタプレートを順次下げてダイの外縁から少なくとも1つの最も内側のイジェクタプレートに向かって粘着テープを漸次層間剥離することを含むことができる。
【0020】
この方法は、事前剥離中、ダイを画像化してダイからの粘着テープの層間剥離の範囲を検出するステップを含むことができる。ダイの上のピックアームをなくすことにより、このような画像化を支援することができる。
【0021】
画像化は、剥離力の印加の後にまたはこれに起因するダイの画像の屈曲の程度を通して層間剥離の範囲を検出することができる。画像化は、事前剥離力の印加に起因するダイの主要表面の画像の均質性を検出することによって層間剥離の範囲を検出することができる。
【0022】
画像化は、事前剥離力の印加の後にイジェクタキャップとは反対を向いているダイの主要表面の画像の非均質性を検出することによって層間剥離の不成功を検出することができる。
【0023】
画像化は、事前剥離力の印加の後に、またはこれに起因するダイの側面を捕える撮像デバイスで層間剥離の範囲を検出することができる。
【0024】
撮像デバイスは、事前剥離力の印加に起因して側面においてダイが屈曲しているということを検出することによって層間剥離の不成功を検出することができる。
【0025】
この方法は、ダイの画像化から層間剥離の成功が検出されるまで事前剥離を繰り返すステップを含むことができる。
【0026】
この方法は、前の最も外側の高いイジェクタプレートを下げた後に層間剥離の成功が検出されるまで、次の最も外側の高いイジェクタプレートを下げることを遅らせることを含むことができる。
【0027】
この方法は、ダイの上に配置されるコレットなしで事前剥離を実行するステップを含むことができる。
【0028】
この方法は、事前剥離および/または剥離中、他のダイに関する接合および採取動作の少なくとも1つのためにピックアームを用いるステップを含むことができる。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、粘着テープからダイを取るための装置であって、ダイの上に距離を置いて配置されるように構成されたダイ保持表面を有するピックアームのコレットであって、ダイは粘着テープの第1の表面上に搭載されている、ピックアームのコレットと、第1の表面とは反対の粘着表面の第2の表面上へ空気の流れを生成し、粘着テープに風を吹きつけてコレットのダイ保持表面に向かってダイを変位させ、粘着テープがダイから分離する間、コレットのダイ保持表面上にダイを維持するように構成された気流生成器と、を含む、装置が提供される。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による方法を実行するように構成された装置が提供される。
【0031】
これらおよび他の特徴、態様、および利点は、説明の項、添付の請求項、および添付の図面に関してよりよく理解されるであろう。
【0032】
添付の図面を参照して、単なる例として、本発明の実施形態を次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】一実施形態によるピックアップ装置の主要構成要素を示す。
【
図2A】イジェクタキャップのイジェクタプレートのレイアウトを示す平面図である。
【
図2B】イジェクタキャップのイジェクタプレートの代替のレイアウトを示す平面図である。
【
図4A】光学センサを用いた剥離の不成功の検出を示す。
【
図4B】光学センサを用いた剥離の成功の検出を示す。
【
図8】ピックアップ装置によって実行される例示的なシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面において、同様の部分は同様の参照数字によって示す。
【0035】
実施形態をさらに詳細に議論する前に、まず概観を提供する。いくつかの実施形態は、気流を用いて粘着テープ上のダイをピックアーム上へ推進させ、次いでダイを粘着テープから層間剥離する構成を提供する。ダイをピックアーム上へ運ぶ前、ピックアームなしで事前剥離プロセスが通常行われ、粘着テープが初めにダイの縁部から層間剥離される。この事前剥離プロセスは、粘着テープに対してダイを往復運動させることによって促進することができる。ピックアームがないためにダイの遮るものがない視界を有する光学センサを用いて、事前剥離中、層間剥離の成功を検出することができる。ピックアーム上の真空アパーチャがダイの縁部と揃っていない可能性があるということがあり得るため、このアプローチは、ピックアームの真空漏れ検出を用いる既存の技術より信頼できる。ダイをピックアーム上へ運ぶ前、ピックアームなしで剥離プロセスが通常行われ、粘着テープがダイの縁部からさらにその中心に向かって層間剥離される。この剥離プロセスは通常、粘着テープの層間剥離部分に対してダイを移動させることを伴う。ピックアームが継続してないために遮るものがない視界を有する光学センサを用いて、事前剥離中、層間剥離の成功を検出することができる。ピックアームは、事前剥離および剥離プロセス中、存在している必要がないため、他のどこかに展開することができ、これによりピックアップ装置のスループットが改善される。
【0036】
ピックアップ装置
図1は一実施形態によるピックアップ装置10の主要構成要素を示す。ピックアップ装置10は、イジェクタキャップ40に対するX、YおよびZ軸に沿った移動のために配置されたピックアーム30のコレット20を含む。ピックアーム30には、Z軸に沿ってコレット20に対して作用する(通常ダイ110と接触するその吸込み面70のため)力を検出するように動作する力検出器50が設けられている。コレット20には、空気を吸い込んで吸込み面70に接触してダイを保持するように動作する複数の吸込みアパーチャ60が設けられている。
【0037】
イジェクタキャップ40は複数のイジェクタプレート80を含む。イジェクタプレート80はイジェクタキャップ40の開口内に置かれている。イジェクタプレート80はZ軸に沿って移動可能である。通常、以下でさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの最も内側のプレートまたは中央プレートCを変位させるまで、最も外側の対L1、R1で始まり、次いで次に最も外側の対L2、R2、以下同様に複数のイジェクタプレートが同時に、対で、移動可能である。以下でさらに詳細に説明するように、イジェクタキャップ40のプレナム90内に正または負のいずれかの気圧を生成するように気流デバイス(図示せず)が動作する。複数の半導体ダイ110を担持する粘着テープ100が、イジェクタキャップ40の収容表面の上に収容されている。通常、各半導体ダイ110は50ミクロン以下の厚さを有し、このためダイ110は脆くて非常に損傷を受けやすくなっている。
【0038】
イジェクタプレート
図1はイジェクタプレート80の側面図を示すが、
図2Aはイジェクタプレート80のレイアウトを示す平面図である。
図2Bはイジェクタプレート80’の代替の一実施形態を示し、中央プレートC’が同心にステージ2プレート内に囲まれ、ステージ2プレートが、今度は、ステージ1プレートによって同心に囲まれている。この配置において、
図2Aを参照して説明したのと同様の方法で、ステージ1プレートがまず下げられた後、ステージ2プレートが下げられ、その後中央プレートが下げられる。
【0039】
図3Aから
図3Eは一実施形態によるピックアップ装置の動作を示す。ピックアップ装置によって実行されるシーケンスは
図8を参照してさらに説明する。
【0040】
位置合わせ
ピックアップシーケンスを開始する前に、イジェクタプレート80をすべて、イジェクタキャップ40の頂部テープ保持表面と略同一平面であるスタンバイレベルAに揃える。これにより確実に、イジェクタプレート80がイジェクタキャップ40の表面から突出しないようにする。ステップS10で、ルックダウンアライメント光学センサ120(
図4A参照)を用いて、取るべきダイ110を、ダイ110の中心がイジェクションキャップ40の中心と揃っている場所に配置および位置決めする。ダイ110の角度配向もイジェクタキャップ40の角度配向と揃える。粘着層100からのダイ110の信頼できる剥離を保証するために、イジェクタキャップ内のイジェクタプレート80の外側境界とダイ110の4つの縁部との間に適切なカンチレバーの長さがある必要があるということが理解されるであろう。換言すれば、ダイ110は、イジェクタプレート80によって提供される支持を越えて延在する。
【0041】
事前剥離
位置合わせが達成されたら、ステップS20で真空吸込み力をプレナム90に印加し、ステップS30でイジェクタプレート80を上昇高さHだけ事前剥離レベルBへ上げる。プレナム90内の真空により、イジェクタキャップ40の頂面上の穴およびスロットを通して真空吸込みが提供されてイジェクタキャップ40のその頂面およびイジェクタプレート80に対して粘着テープ100を引っ張って押さえつける。ステップS20およびS30を逆にする、または同時に実行することができるということが理解されるであろう。
【0042】
所与のイジェクタプレートの上昇高さHで、粘着テープ100上のダイ110は、突出しているイジェクタプレート80によってイジェクタキャップ40の頂面から離れて上方へ押されることになる。ダイ110の縁部とイジェクタプレート80の外側境界との間にカンチレバーまたは張り出しがあるため、ダイ110および粘着テープ100は一緒にイジェクタキャップ40の真空吸込みによって引き下げられることになる。ダイ110がその縁部の周囲に層間剥離がなく粘着テープ100に取り付けられたままであれば、ダイ110は粘着テープ100上の真空吸込みのためにその縁部に沿って曲がることになる。ダイ縁部に沿って曲がることにより、ダイ110とその縁部の周囲の粘着テープ100との間に剥離強度を作り出すことになる。ダイ縁部に沿った剥離強度がダイ110と粘着テープ100との間の粘着性を克服するのに十分大きければ、ダイ110の縁部の周囲の領域で始まって、ダイ110は粘着テープ100から層間剥離することになる。したがって、ダイ110はその縁部が開かれることになり、ダイ110と粘着テープ100との間の層間剥離がダイ縁部で始まり、次の最も外側の上げられたイジェクタプレート(この場合、L1、R1)によって画定される境界によって停止するまで内向きに伝播することになる。
【0043】
ステップS40で、ダイ110の周囲のすべての縁部が開けば(粘着テープ100がこれらの縁部のすべてに沿ってダイ110から離れ始めたということを意味する)、事前剥離プロセスは成功と見なされることになる。層間剥離が生じる時間をもたらすことによって事前剥離の成功を保証するために適切な遅延が必要になり得る。
図3Aで見ることができるように、事前剥離プロセス中ならびに後続の層間剥離プロセス中、取るダイ110の上にピックアーム30を配置する必要性はない。
【0044】
ピックアーム30の存在が事前剥離および後続の層間剥離プロセスに要求されないとすれば、これはダイ110の上の光路が遮断されないということを意味する。これにより光学センサ120を用いてダイ110を画像化し、ステップS40で事前剥離プロセスが成功したか否かを調べることが可能になる。
図4Aで見ることができるように、事前剥離プロセスが不成功であるとき、ダイ110の少なくともいくつかの縁部が曲がっており、これは光学センサ120によって検出することができる。屈曲部の存在は、ダイ110を画像化してこれをその隣接するダイの画像と比較することによって、および/またはダイの画像の均質性もしくは事前剥離の前後のダイの画像の相関を検出することによって、光学センサ120によって容易に検出することができる。これらの画像間の違いにより、ダイ110の屈曲部の存在を示すことができる。
図4Aに示すように、事前剥離プロセスが成功していると判定されなければ、
図5および
図6に示すように事前剥離強化プロセスを実行することができる。
図4Bに示すように、事前剥離プロセスが成功していると判定されれば、事前剥離強化プロセスは省略することができる。
【0045】
事前剥離の強化
ステップS50で、事前剥離プロセスが成功していると判定されなければ、事前剥離の強化が実行される。高い塑性ひずみで繰り返す周期的負荷の下で粘着接合部のクリープ劣化を達成することができる。粘着接合部の劣化は、粘着剤に対する周期的な剪断ひずみの累積的な影響のために比較的短い数の周期内で起こることがあり、この影響は、これが低周波の周期的負荷の下にあると、より顕著である。
【0046】
図5に示すように、1つのアプローチにおいて、プレナム90内の空気の流れにより、イジェクタキャップ40の頂部または上部表面に対して粘着テープ100を引っ張る真空吸込み力が作り出される。真空吸込み力が印加された状態で、スタンバイレベルAと上げられた事前剥離レベルBとの間で距離Hだけイジェクタプレート80を繰り返し上げ下げして粘着テープ100の粘着剤上に高ひずみ周期的負荷を提供する。通常、距離Hは数百ミクロンのオーダーであり、この上げ下げの周波数はおよそ1Hzから100Hzまでの範囲とすることができる。振動振幅(通常およそ300ミクロン)およびイジェクタプレート80を越えて延在するダイ110の張り出している長さ(通常およそ300ミクロン)に応じて、およそ5から10の往復サイクルの間続く振動動作が、粘着剤の粘着性を低減して事前剥離プロセスを成功させるのに十分であるはずである。
【0047】
代替のアプローチにおいて、
図6に示すように、プレナム90内の真空吸込み力を繰り返しオンおよびオフに切り替えて粘着テープ100の粘着剤上に高ひずみ周期的負荷を提供する。再度、プレートをそのスタンバイレベルAから高さHだけ高い事前剥離レベルBへ上げてプレートをこの高い位置Bに保つ。プレナム90の内側の真空吸込みは高いスピードで繰り返しオンおよびオフに切り替えられる。通常、プレナム90は高速切り替えを容易にするために可能な限り小さくすべきである。真空から大気圧までの吸込み流間の切り替え速度はおよそ10Hzから50Hzで行うことができる。プレナム90内の真空吸込みが適用されるとき、プレナム90内の真空レベルは通常およそ-70kPaから-100kPaである。プレナム90内の真空吸込みが解放されるとき、プレナム90内の真空レベルはおよそ0kPaから-10kPaの間である。また、イジェクタプレート80の高さH(通常およそ300ミクロン)およびダイ110の張り出している長さ(これもおよそ300ミクロン)に応じて、およそ5から10の間の真空オンおよびオフサイクルで動作することが、粘着剤の粘着性を低減して、
図6Aに示すように、事前剥離プロセスを成功させるのに十分であるはずである。
【0048】
図7は、事前剥離が成功しているかを判定するための他の技術を示す。この構成において、側部撮像光学センサ130を用いて、ダイ110が曲がっている(
図7Bに示すように(そのため完全には事前剥離されていない))か、または概ね平らであり(
図7Cに示すように)、そのため事前剥離が成功したかを判定する。
【0049】
事前剥離プロセスの開始の成功は重要である。事前剥離プロセスがうまくなされず、ダイ縁部が粘着テープ100から剥がれなければ(すなわちダイ縁部が開かなければ)、後続の層間剥離プロセスが成功する見込みは低い。確実に後続の層間剥離をダイ110と粘着テープ100との間の界面に沿って伝播させ、次の対のプレートを下げる前に粘着テープ100を完全にダイ110の張り出し部分から分離するために、イジェクタプレートについての落下速度は粘着テープ100の界面層間剥離伝播速度より速くすべきではない。界面層間剥離プロセスの継続は、プレートの外側の対に続いて内側の一対のプレート、および/または中央プレートを順次落とすことによって駆動される。
【0050】
剥離
事前剥離が成功していると判定されたら、
図3Bに示すように、剥離がステップS60で始まり、最も外側のイジェクタプレートL1、R1が、イジェクタキャップ40の表面の下方にある下部位置Eまで所定のスピードで下方移動する。したがって、イジェクタプレート80の境界が次の外側プレートの対L2、R2へと内向きに移動するにつれて、ダイ110の有効カンチレバー長さはイジェクタプレートL1、R1の幅だけ増加する。これにより、ダイ110と粘着テープ100との間の層間剥離の伝播を、
図3Bに示すように、ダイ110の内部へとさらに進行させることが可能になる。カンチレバーの長さを拡張すると、ダイ縁部の周りの張り出しは拡大される。上げられたイジェクタプレート(この場合L2、R2、C)を高い位置Bの上方にある高さまで上げることによって、誘発された剥離強度をステップS65で強化することができる。
【0051】
この拡大された部分の層間剥離が完全には起きなければ、ダイ110の縁部の周囲の領域が、粘着テープ100上にイジェクタキャップ40による真空吸込みによって引き起こされる粘着テープ100による引きずり力によって曲げられて引き下ろされることになる。任意選択で、光学センサ120、130は、ダイ110が上述のものと同様の方法でその縁部の周囲で曲がっているかどうかを判定することになる。ダイ110が曲がっていると判定されれば、つまり層間剥離が完全には起こっていなければ、層間剥離の完了が可能になる追加の遅延が与えられる。
【0052】
層間剥離が起こったら、ステップS70で、そして
図3Cに示すように、次の最も外側のプレートの対L2、R2が下方位置Eへと下方移動することになる。再度、層間剥離の成功が起こったかどうかに関して、光学センサ120、130を用いることによって、プレートを下げるたびに評価がなされる。プレートはプログラムされたスピードで下方移動することになる。ステップS80でプレートのいずれかについて層間剥離の成功が起こっていないということが検出されれば、上記のように遅延が行われ、これを剥離強化で
図5および
図6に説明したものと同様の方法においてステップS90で増大させて剥離を支援することができる。
【0053】
ダイ除去
ステップS95でダイの剥離が完了し、
図3Cに示すように、中央プレートCのみがダイを支持しているという評価がなされると、ピックアーム30のコレット20をダイ110の上に配置し、コレット20の下面とダイ110の上面との間にDでエアギャップを残すダイ110の上方の目標レベルまで下方移動させる。エアギャップDの高さはおよそ10ミクロンと100ミクロンとの間のオーダーである。コレット20がダイ110上に載らないため、この時コレット20によってダイ110に作用する望ましくない圧縮力がない。
【0054】
コレット20がダイの上の正しい高さに達した後、次いでステップS100でプレナム90内の気流を逆にして粘着テープ100の下のイジェクタキャップ40の領域にエアブローを提供する。粘着テープ100はダイ110とともに粘着テープ100の盛り上がりによって持ち上げられ、これによりダイ110とコレット20との間のエアギャップDが閉じる。
図3Dに示すように、コレット20は、アパーチャ60を通る真空吸込みによってダイ110を受け取って所定の位置にこれを保持することになる。ステップS110で、コレット20に接触するダイ110の存在はアパーチャ60内の真空の増加によって検出される。これによりエアブローをステップS120でオフに切り替える。
【0055】
コレット20がダイ110を受け取ったら、
図3Eに示すように、プレナム90内の気流をステップS130で逆にして、これにより真空吸込みをプレナム90内に適用させ、したがって粘着テープ100をダイ110からそしてイジェクタキャップ40の表面上へ引っ張る。コレット20はここでダイ110を保持しており、これは粘着テープ100から完全に分離されている。ステップS140で、次のピックアップサイクルの準備のために、最終プレートCを次いでイジェクタキャップ40内に下げる。ダイ110のためのイジェクトシーケンスはここで完了し、ピックアーム30は、ダイ110を要求される場所に置くように移動することができる(ステップS150)。
【0056】
したがって、本明細書に記載の発明の実施形態は、光学的点検フィードバックシステムを加えて層間剥離の不成功を検出し、補修的な行動を実行することによって、ダイのピックアップ成功率を改善するということが分かる。ダイ分離プロセス中にダイ110の上のピックアーム30の存在の必要性を除去することにより、取られるダイ110のすぐ上で不完全な層間剥離を検出する光学的手段を用いることが可能になる。事前剥離プロセスの成功の可能性は、ダイ110と粘着テープ100との間の界面の粘着性を低減するように粘着テープ100上に周期的剪断負荷を加えることによって増加する。一方、ダイ分離プロセス中、ピックアーム30はダイ110の位置に留まる必要がないため、ピックアーム30は他の並列動作を行い、したがってピックアップ装置10のスループットを増やすことが可能になる。ピックアーム30によってダイ110に作用する圧縮力も新たなダイ収容プロセスを採用することによって減少するが、これは粘着テープ100の下から空気を吹きつけて粘着テープ100に膨隆を作り出すものである。
【0057】
本発明をいくつかの実施形態を参照してかなり詳細に説明してきたが、他の実施形態が可能である。したがって、添付の請求項の精神および範囲は、本明細書に含まれている実施形態の説明に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0058】
10 ピックアップ装置
20 コレット
30 ピックアーム
40 イジェクタキャップ
50 力検出器
60 吸込みアパーチャ
70 吸込み面
80 イジェクタプレート
80’ イジェクタプレート
90 プレナム
100 粘着テープ、粘着層
110 ダイ
120 光学センサ
130 光学センサ