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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】糸を引き出しかつ巻き取るための装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/032 20060101AFI20240123BHJP
   B65H 59/36 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B65H63/032 B
B65H59/36
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022118968
(22)【出願日】2022-07-26
(65)【公開番号】P2023018670
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】10 2021 003 876.2
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルク-アンドレ へルンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アブデラティ ハミド
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19916607(DE,A1)
【文献】特表2008-500460(JP,A)
【文献】特表2013-519799(JP,A)
【文献】特開2003-104626(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02527502(EP,A1)
【文献】特開2000-226156(JP,A)
【文献】特開2002-160869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 63/032
B65H 59/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡糸プロセスにおいて糸を引き出しかつ巻き取るための装置であって、駆動されるゴデットケーシング(6.1)を有する少なくとも2つのゴデット(6)を収容するためのゴデットキャリヤ(5)と、駆動可能な巻取りスピンドル(14)に沿って分配されて配置された複数の巻取りステーション(1.1~1.5)を収容するための機械フレーム(3)と、各巻取りステーション(1.1~1.5)における糸ガイド(17)を有する糸敷設装置(4)と、を有しており、前記巻取りステーション(1.1~1.5)間で前記糸を分配するために、前記糸ガイド(17)を位置決め位置と運転位置との間でそれぞれ案内することができる、装置において、
回転可能に組み付けられた糸テンショニングローラ(8)が、前記ゴデット(6)の前記ゴデットケーシング(6.1)間の糸走路に配置されており、前記糸(2)の集合糸張力を捕捉するための測定装置(32)を有していることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記測定装置(32)は、前記糸テンショニングローラ(8)の駆動モータ(37)により形成されており、駆動トルクを特定するための少なくとも1つのモータパラメータが連続的に捕捉される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記測定装置(32)は、少なくとも1つのひずみゲージ(DMSセンサ)(34)により形成されており、該ひずみゲージ(34)は前記糸テンショニングローラ(8)の軸(31)上に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記測定装置(32)が監視ユニット(35)に接続されており、これにより、瞬間的な糸張力を特定するための信号評価を連続的に実施することができる、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記監視ユニット(35)が機械制御ユニット(38)に接続されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記ゴデットケーシング(6.1)の周囲に前記糸を位置決めするために、前記糸テンショニングローラ(8)を位置決め位置と運転位置との間で案内することができる、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記糸テンショニングローラ(8)を、前記ゴデット(6)の前記ゴデットケーシング(6.1)の1つの接線に交差する運動経路に沿って、前記ゴデットキャリヤ(5)上のスライドガイド路(9)によって案内することができる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記糸テンショニングローラ(8)は、前記位置決め位置において前記糸(2)と接触することなく保持され、前記運転位置において前記糸(2)と接触して保持されている、請求項6記載の装置。
【請求項9】
前記ゴデットケーシング(6.1)の周囲に前記糸を位置決めするために、前記糸テンショニングローラ(8)を位置決め位置と運転位置との間で案内することができ、前記糸テンショニングローラ(8)が、自由に回転可能な形式で保持されているか、または前記駆動モータと一緒にスライドキャリヤ(10)上に保持されている、請求項記載の装置。
【請求項10】
前記糸テンショニングローラ(8)を、前記ゴデット(6)の前記ゴデットケーシング(6.1)の1つの接線に交差する運動経路に沿って、前記ゴデットキャリヤ(5)上のスライドガイド路(9)によって案内することができ、前記スライドキャリヤ(10)を、前記スライドガイド路(9)内で制御可能なリニアドライブ(11)によって案内することができる、請求項9記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の溶融紡糸プロセスにおいて糸を引き出しかつ巻き取るための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融紡糸プロセスでは、糸群の形態で生成された糸が、引き出され、配向され、次いで平行に巻き取られて、プロセスの最後にパッケージを形成する。このために、製造プロセスに依存して、複数のゴデットと、ゴデットの下流側に配置されて1つの機械フレームに一緒に配置された複数の巻取りステーションとを有する引出し兼巻取り装置が使用される。このような装置の低い構造高さおよびコンパクトさにより、オペレータにとって、特にプロセスの開始時に、単純に手動の操作を実施することが可能である。しかし、現代のシステムは、オペレータにとって操作性を容易にするために、基本的に補助装置を備えている。たとえば、糸群の糸を巻取りステーション間で分配し、プロセスの開始時に糸を糸通しすることができるようにするために、運動可能なサクションインジェクタによって最初のうちに糸を案内することが通常であり、これにより糸を糸ガイドによって取り上げ、巻取りステーション間で分配することができる。
【0003】
このような一般的な装置は、たとえば、独国特許出願公開第102017004866号明細書から知られている。これに関して、巻取りステーションは、駆動される巻取りスピンドルに沿って分配されるように、機械フレームに配置されている。糸群の引き出しために複数のゴデットが配置されているゴデットキャリヤは、機械フレームの上面に支持されている。ゴデットと巻取りステーションとの間の領域には、複数の運動可能な糸ガイドを有する糸敷設装置が設けられている。糸ガイドは、巻取りステーション間での糸の分配のために、位置決め位置と運転位置との間のガイドレール内でそれぞれ案内されることができる。このために、糸ガイドは、オペレータによって変位させられるガイドレールに固定されている。
【0004】
しかし基本的には、このような装置における糸敷設装置も知られており、この場合、位置決め位置と運転位置との間のガイドレール内における糸ガイドの案内をアクチュエータによって制御することができるので、オペレータの作業はさらに軽減されている。このような一般的な装置は、たとえば、国際公開第2016/180679号から明らかである。これに関して、プロセスの開始時のオペレータの作業は、ゴデットのゴデットケーシング上への単純な巻掛けによって、巻取りステーション間での分配の前に、糸群を位置決めすることに限定される。
【0005】
しかし、糸の位置決め中に補助手段の使用が増大すると、サクションインジェクタによって糸を連続的に受け取り、それぞれの操作のために十分である糸における糸張力を形成するというオペレータの専門知識が失われる。したがって、一方では、糸張力が過度に高い場合には糸破断を、他方では、糸における糸張力が過度に低い場合の糸のたるみを回避することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、オペレータの作業を補助装置によって確実に低減することができるように、糸を引き出しかつ巻き取るための一般的な装置を開発することである。
【0007】
本発明の別の目的は、糸を引き出しかつ巻き取るための一般的な装置を提供することであり、この装置の糸敷設装置が、自動化された操作性を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によれば、回転可能に組み付けられた糸テンショニングローラが、ゴデットのゴデットケーシング間の糸走路に配置されており、糸の集合糸張力を捕捉するための測定装置を有することによって達成される。
【0009】
本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載の特徴および特徴の組合せによって規定される。
【0010】
本発明は、溶融紡糸プロセスにおける糸群の位置決めの間に、サクションインジェクタによって形成される糸張力が糸群全体に作用するという認識に基づいている。これに関して、個別の糸における顕著な糸張力は、サクションインジェクタによる糸群の連続的な受取りおよび排出に関連しない。これに関して、本発明は、位置決めプロセスの比較的早い時点で糸群の糸張力を監視するために、糸によって部分的に巻掛けられる糸テンショニングローラを利用する。このことは、有利には、糸テンショニングローラ上でゴデットのゴデットケーシング間を走行する糸において、糸テンショニングローラの周囲における糸群の必要とされる巻掛けを得るために、静止状態で保持されるゴデットを利用することを伴う。このために、糸テンショニングローラは、糸の集合糸張力を捕捉するための測定装置を有している。
【0011】
本発明の別の重要な利点は、糸群の位置決め中だけではなく、糸群の巻取り中のプロセスにおいても、集団糸張力を連続的に監視することが可能であることにある。特に、巻取りステーションにおいてパッケージ交換が行われる段階で、糸張力の不規則さを確認することができる。したがって、測定装置の信号プロファイルから個別の糸破断を検出する可能性さえ生じる。
【0012】
測定装置は、有利には、糸テンショニングローラの駆動モータによって形成することができ、駆動トルクを特定するための少なくとも1つのモータパラメータが連続的に捕捉される。
【0013】
しかし代替形として、少なくとも1つのひずみゲージ(DMSセンサ)を測定装置として使用する可能性もある。ひずみゲージは、糸テンショニングローラの軸上に配置されている。したがって、糸群によって糸テンショニングローラに作用する荷重を直接に捕捉することが可能である。
【0014】
糸群の集合糸張力の連続的な監視を可能にするために、さらに、測定装置が監視ユニットに接続されていることが規定されており、これにより、瞬間的な糸張力を特定するための信号評価を連続的に実施することができる。したがって、糸群の糸張力の第1の実際値/目標値の比較は、監視ユニットにおいて既に実行されており、これにより、予め規定された目標値を上回った場合または下回った場合に、直接に、対応する制御信号を生成することができる。
【0015】
このために、監視ユニットは、好適には、機械制御ユニットに直接接続されている。機械制御ユニットは、対応する補正、たとえばサクションインジェクタにおける圧縮空気設定を実施するために使用することができる。
【0016】
ゴデットの領域における糸の位置決めのために、糸テンショニングローラを、ゴデットのゴデットケーシングの1つの共通の接線に交差する運動経路に沿って、ゴデットキャリヤ上のスライドガイド路によって案内することができる、本発明による装置の改良形は、特に有意であることが判った。したがって、糸群を真っ直ぐな糸走路においてゴデットに対して横方向で隣り合って案内することが可能であり、これにより、糸テンショニングローラは、運動経路に沿った案内中に、糸群を自動的に取り上げる。
【0017】
このために、糸テンショニングローラは、位置決め位置において糸に接触することなく保持され、運転位置において糸に接触して保持されている。したがって、ゴデットのゴデットケーシングの周囲における糸群の位置決めは、運動経路に沿った糸テンショニングローラの運動によって保証されている。糸が糸テンショニングローラによって取り上げられ、糸テンショニングローラが運転位置に到達するとすぐに、糸群の糸張力が捕捉され、監視される。
【0018】
糸番手に依存して、かつ糸テンショニングローラによって案内される糸の本数に依存して、糸テンショニングローラは、自由に回転可能な形式で保持されているか、またはスライドキャリヤ上の駆動モータによって駆動可能であるように保持されている。したがって、細い番手の糸の糸張力を、糸テンショニングローラによって確実に捕捉することも可能である。この場合、糸テンショニングローラが既に、位置決め位置におけるモータによって駆動されている可能性がある。
【0019】
糸テンショニングローラの運動のためのスライドキャリヤの案内は、好適には、制御可能なリニアドライブによって行われる。したがって、糸テンショニングローラによって位置決め運転を開始するためのリニアドライブの作動は、オペレータによって手動で引き起こすこともできるし、またはタイマによって自動化された形式で作動させることもできる。
【0020】
したがって、糸を引き出しかつ巻き取るための本発明による装置は、特に、プロセスの開始時およびプロセス中に糸群の糸張力を連続的に監視するために適している。
【0021】
本発明をさらに説明するために、糸を引き出しかつ巻き取るための本発明に係る装置の1つの例示的な実施形態を、添付の図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】糸を引き出しかつ巻き取るための本発明に係る装置の例示的な実施形態を概略的に示す側面図である。
図2図1に示した例示的な実施形態を概略的に示す正面図である。
図3図1に示した例示的な実施形態の糸テンショニングローラを概略的に示す断面図である。
図4.1】糸敷設装置における1つの運転状況での、図1に示した例示的な実施形態の詳細を概略的に示す側面図である。
図4.2】糸敷設装置における別の運転状況での、図1に示した例示的な実施形態の詳細を概略的に示す側面図である。
図5図4.1に示した例示的な実施形態のゴデットキャリヤを概略的に示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および図2では、複数の糸を引き出しかつ巻き取るための本発明に係る装置の1つの例示的な実施形態が、幾つかの図において概略的に示されている。この例示的な実施形態は、紡糸装置から新たに押し出された糸を引き出し、次いで糸群の各糸を巻き取ってパッケージを形成するために、溶融紡糸プロセスにおいて使用される。これに関して、図1は、例示的な実施形態を側面図で、図2は、例示的な実施形態を正面図で示している。図面のうちの一方が明確に参照されていない場合、以下の説明は両方の図に適用される。
【0024】
この例示的な実施形態では、糸を引き出しかつ巻き取るための本発明に係る装置は、合計で5つの巻取りステーション1.1~1.5を有しており、これらの巻取りステーション1.1~1.5は、機械フレーム3において互いに隣接するように構成されている。巻取りステーション1.1~1.5は、突出するように保持されている巻取りスピンドル14に沿って配置されている。巻取りステーション1.1~1.5のそれぞれにおいて、糸群2のそれぞれの糸が、パッケージ26を形成するために巻き取られ、パッケージ26は、巻取りスピンドル14上で互いに隣接して保持されている。巻取りステーション1.1~1.5の個数および糸群2の糸の本数は、例示的である。基本的に、このような装置は、16個までの巻取りステーションを有していてよい。
【0025】
巻取りステーション1.1~1.5は同一の構成であり、それぞれ綾振りユニット13を有している。各綾振りユニット13は、巻取りステーション1.1~1.5に割り当てられた糸を敷設ストロークの範囲内で往復案内するために、ガイド手段(ここでは詳細に図示せず)を有している。綾振りユニット13は、たとえば可逆的な糸通しされたシャフトのトラバース機構、ベルトトラバース機構またはフライヤトラバース機構によって形成されていてよい。
【0026】
糸群2の糸を並行して巻き取るために、各巻取りステーション1.1~1.5には、駆動される巻取りスピンドル14の周面上の巻管16が割り当てられている。このために、巻管16は、巻取りスピンドル14の周面上に緊締されている。この場合、巻取りスピンドル14は、全ての巻取りステーション1.1~1.5にわたって延びており、これによって、糸は、パッケージ26を形成するために並行して巻取りステーション1.1~1.5に巻き取られる。
【0027】
パッケージ26の表面に糸を置くために、巻取りスピンドル14に対して平行に延び、したがって巻取りステーション1.1~1.5に割り当てられた押圧ローラ12が設けられている。押圧ローラ12は、綾振りユニット13と巻取りスピンドル14との間の領域にあるように構成されている。巻取りスピンドル14は、機械フレーム3に回転可能に保持された巻取りタレット15に突出するように組み付けられている。巻取りタレット15は、第1の巻取りスピンドル14に対して180°だけずらされて配置された第2の巻取りスピンドル14を保持している。巻取りタレット15の回転は、両方の巻取りスピンドル14が交互に巻取り領域および交換領域へ案内されることを可能にし、これにより、糸2を巻取りステーション1.1~1.5に連続的に巻き取って、パッケージ26を形成することができる。巻取りスピンドル14および巻取りタレット15はそれぞれ、駆動装置(ここでは図示せず)に接続されている。
【0028】
機械フレーム3の端側領域には、ゴデットキャリヤ5が綾振りユニット13の上方に配置されている。ゴデットキャリヤ5は、機械フレーム3上に支持されている。ゴデットキャリヤ5には2つのゴデット6が配置されている。この場合、各ゴデット6は、ゴデットキャリヤ5の正面側に突出しているゴデットケーシング6.1と、ゴデットキャリヤ5の背面側に配置されているゴデット駆動装置6.2とを有している。ゴデット6の上方で、糸収集装置25がゴデットキャリヤ5に配置されている。糸収集装置25は、サクション除去ユニット25.1および糸ギャザラ25.2を有している。
【0029】
さらに、それぞれの糸2のためにそれぞれの処理通路を有している交絡装置7がゴデットキャリヤ5に保持されている。
【0030】
回転可能に組み付けられた糸テンショニングローラ8が、ゴデット6のゴデットケーシング6.1間の糸走路に配置されている。糸テンショニングローラ8は、ゴデットケーシング6.1に対して平行にゴデットキャリヤ5上で突出しており、糸走路内で糸群の糸2によって部分的に巻き掛けられている。糸テンショニングローラ8の周囲における巻掛け角度は、約180°の範囲にある。糸テンショニングローラ8の引き続きの説明のために、図3がさらに参照される。
【0031】
図3には、糸テンショニングローラ8が断面図で概略的に示されている。糸テンショニングローラ8は、ローラケーシング30を有している。ローラケーシング30は、ローラ軸31の端部に固定されている。ローラ軸31は、キャリヤ10内の軸受33を通る支承端部により、回転可能な形式でローラケーシング30に対して突出して組み付けられている。この例示的な実施形態では、キャリヤ10は、スライドガイド路(ここには図示せず)内で運動可能であるように配置されている。
【0032】
糸テンショニングローラ8は、ローラケーシング30の周囲で案内される糸によって発生する引張荷重を捕捉するために、測定装置32を有している。この例示的な実施形態では、測定装置32は、ローラ軸31に固定された少なくとも1つのひずみゲージ(DMSセンサ)34によって形成されている。このためには、ブリッジ回路として知られているものによってローラ軸31上の曲げ荷重を捕捉するために、複数のひずみゲージ(DMSセンサ)34が使用されることが通常である。ひずみゲージ(DMSセンサ)34は、信号線36を介して監視ユニット35に接続されている。
【0033】
したがって、糸テンショニングローラ8は、ゴデットキャリヤ5に自由に回転可能な形式で組み付けられており、糸群の糸2によって駆動される。しかし、基本的には、駆動モータによって糸テンショニングローラ8が駆動される可能性もある。この代替的な実施形態は、図3に破線で図示されている。したがって、ローラ軸31の支承端部は、駆動モータ37に接続されている。この場合、測定装置32は、駆動モータ37自体によって形成されていてよい。したがって、糸テンショニングローラ8を駆動するための駆動トルクを捕捉するために、駆動モータ37の少なくとも1つのモータパラメータを利用することが可能である。このために、駆動モータ37は同様に、信号線を介して監視ユニット35に接続されている。監視ユニット35内では、これらの信号は、ローラケーシング30において案内される糸の糸張力を連続的に監視することができるようにするために使用される。
【0034】
図1および図2に示した運転状況では、糸2は連続的に巻き取られて、巻取りスピンドル14の周囲にパッケージ26を形成する。糸テンショニングローラ8は、糸群に作用する糸引張応力を連続的に監視するために使用される。このために、監視ユニット35が機械制御ユニット38に接続されている。図2に示すように、機械制御ユニット38は、駆動装置(6.2,11および25.4)およびセンサ(ここでは図示せず)、さらにはオペレータパネル23に接続されている。特に、巻取りスピンドル14間でパッケージ交換が行われる運転段階において、ともすれば糸破断にさえにつながり得る過剰な糸引張応力のリスクがある。これに関して、糸テンショニングローラ8による糸張力の監視は、迅速な措置を講じることができるようにするために、特に有利である。したがって、監視ユニット35における糸張力の監視によって糸破断が突き止められた場合に、機械制御ユニット38に、糸収集装置25の作動をもたらす制御コマンドが供給される可能性がある。したがって、糸群2は、糸収集装置25によって切断されて、屑容器へと案内される。
【0035】
しかし、パッケージを形成するための糸の巻取りの間に、過剰に低い巻取り張力になっている状態が発生することもある。糸テンショニングローラ8は、この状況を検出し、対応する機械制御システムを有効にすることができる。
【0036】
図1および図2の図面から判るように、この例示的な実施形態では、糸テンショニングローラ8は、ゴデットキャリヤ5に運動可能な形式で保持されており、糸敷設装置4と協働する。糸敷設装置4は、プロセスの開始時に糸を巻取りステーション1.1~1.5間で分配するために、巻取りステーション1.1~1.5の上方で複数の運動可能な糸ガイド17を有している。
【0037】
糸敷設装置4の説明のために、さらに図4.1~図4.2が参照される。図4.1および図4.2は、図1に示した例示的な実施形態の側面図の詳細を、糸敷設装置4の種々異なる運転状況で示している。さらに、図4.1に示した運転状況におけるゴデットキャリヤ5の背面側を示す図5が参照される。
【0038】
糸テンショニングローラ8は、ゴデット6のゴデットケーシング6.1に対して平行に、ゴデットキャリヤ5の正面側で突出している。糸テンショニングローラ8は、スライドキャリヤ10に自由に回転可能な形式で保持されている。スライドキャリヤ10は、スライドガイド路9内で案内されている。スライドガイド路9は、ゴデットケーシング6.1に対する接線と交差する運動経路に沿って糸テンショニングローラ8を案内することができるように、ゴデット6間に延びている。
【0039】
図5の図面から判るように、スライドキャリヤ10は、リニアドライブ11に接続されている。リニアドライブ11は、スライドキャリヤ10が糸テンショニングローラ8を位置決め位置と運転位置との間で往復案内するように、機械制御ユニット38によって制御することができる。この場合、リニアドライブ11は、たとえば、スピンドル11.1によってスライドキャリヤ10に接続されたスピンドル駆動装置の形態で図示されている。この場合、糸テンショニングローラ8の位置決め位置および運転位置は、スライドガイド路9の端部領域にそれぞれ設けられている。
【0040】
さらに、ゴデット6のゴデット駆動装置6.2と、糸収集装置25のサクション接続部25.3およびギャザラ駆動装置25.4とは、ゴデットキャリヤ5の背面側に配置されている。糸破断の場合に糸群を纏めてサクション除去ユニット25.1に供給するために、糸ギャザラ25.2をギャザラ駆動装置25.4によって作動させることができる。
【0041】
糸群2を分離して分配するために、糸敷設装置4は、巻取りステーション1.1~1.5ごとに、変向ローラ17の形態の糸ガイドをそれぞれ有している。各糸ガイド17は、ガイドレール18上で運動可能なガイドスライド19によって保持されている。ガイドレール18は、機械フレーム3の上側領域に配置されており、水平方向のガイド部分18.1によって巻取りスピンドル14に沿って延びている。水平方向のガイド部分18.1には、ガイドレール18の湾曲したガイド部分18.2が続いており、湾曲したガイド部分は、巻取りスピンドル14のスピンドル端部を超えて操作端部の方向へ延びている。この湾曲したガイド部分18.2には、ガイドレール18の水平方向のガイド部分18.1に対して約90°だけずらされているようになっている鉛直方向のガイド部分18.3が続いている。ガイドレール18のガイド部分18.3には、第1のストッパ21が形成されている。第2のストッパ21は、ガイドレール18の水平方向のガイド部分18.1の反対側の自由端に設けられている。したがって、ガイドレール18に沿ったガイドスライド19の運動によって、糸ガイド17を、運転位置と位置決め位置との間で往復案内することができる。このために、外側のガイドスライド19のうちの1つがアクチュエータ(ここでは図示せず)に接続されている。使用されるアクチュエータは、たとえば、位置決め位置と運転位置との間での糸ガイド17の移動のために、最初または最後のガイドスライド19を搬送するような、ピストンロッドを有しないシリンダであってよい。同様に、アクチュエータは、ガイドレール18に対して平行に延び、かつ関連するガイドスライド19を運動させる電気的なリニアドライブによって実現されていてもよい。
【0042】
特に図4.2の図面から判るように、ガイドスライド19は、可撓性ベルト20によって接続されている。可撓性ベルト20の長さは、引き出された状態において各ガイドスライド19が巻取りステーション1.1~1.5における関連する糸ガイド17の運転位置を占めるように寸法設定されている。変向ローラの形態で構成された糸ガイド17はそれぞれ、その運転位置において、パッケージの巻取り時の糸の案内中に綾振りユニット13によって形成される綾振り三角形の端部を形成する。したがって、変向ローラ17は、その運転位置において、それぞれの巻取りステーション1.1~1.5への糸入口を形成する。
【0043】
プロセスの開始時に糸群2をゴデット6および巻取りステーション1.1~1.5に位置決めすることができるようにするために、糸2は、サクションインジェクタ24によって合わせて案内される。この場合、サクションインジェクタ24は、自動化された操作手段によって案内されていてよい。この場合、紡糸装置から引き出された糸群は、サクションインジェクタ24を介して糸屑容器へと連続的に供給される。次いで、糸群は、サクションインジェクタ24によって、自由に回転可能なガイドローラ22上に保持される。ガイドローラ22は、糸群2がゴデットケーシング6.1の周面からガイドローラ22に至るまでの糸走行面を形成するように、機械フレーム3の端部側に配置されている。この状況は、図4.1に図示されている。この状況では、糸テンショニングローラ8は、糸走行平面に対して横方向で隣り合う位置決め位置において、糸と接触することなく保持されている。同様に、糸ガイド17は、実質的に、糸群2の糸走行平面に対して横方向で隣り合う、ガイドレール18の鉛直方向のガイド部分18.3に保持されている。次いで、糸敷設装置4は、ゴデットケーシング6.1への糸群の位置決めおよび巻取りステーション1.1~1.5間での糸群の分離および分配のために準備される。
【0044】
手動操作の場合、オペレータは、糸テンショニングローラ8の運動のためのリニアドライブ11を作動させるために、オペレータパネル23によって制御コマンドを実行する。糸テンショニングローラ8は、スライドガイド路9内を運動し、糸群2を自動的に受け取る。糸テンショニングローラ8は、運転位置への到達に至るまで、糸群に糸ループを形成する。糸テンショニングローラ8の運転位置では、糸群2は、ゴデットケーシング6.1の周面上で案内される。加えて、糸2は、プロセス中に、交絡装置7の処理通路内へと自動的に案内される。この状況は、図4.2に図示されている。糸テンショニングローラ8は、運転位置に拘束されて留まる。
【0045】
次いで、糸2を個別の巻取りステーション1.1~1.5間で分配するために、アクチュエータ(ここでは図示せず)が、ガイドスライド19の移動のために作動させられる。この作動は、オペレータの付加的な操作によって、または代替的には、糸テンショニングローラ8のためのリニアドライブの作動後に時間制御された形式で引き起こされる。糸が分離され、かつ各変向ローラ17がそれぞれの糸を取り上げるように、糸ガイドまたは変向ローラ17は、図平面において位置決め位置から、互いにずらされた形式の運転位置へと案内されてよい。ガイドローラ22は、その周面上に、糸収束点を形成するガイド溝を有している。したがって、糸2は、ゴデットケーシング6.1の周囲からガイドローラ22へと一筋に走行している。これにより、互いに対して規定された糸の間隔が、変向ローラ17の領域における糸群において設定される。糸ガイド17が巻取りステーション1.1~1.5におけるそれらの運転位置に到達するや否や、糸群2は、巻取りステーション1.1~1.5における糸2の巻取りを捕えかつ開始することを可能にするために、サクションインジェクタ24によって補助装置(ここでは詳細に図示せず)へと搬送される。この場合、サクションインジェクタ24は、自動化された操作手段によって案内されてよい。これに関して、糸を引き出しかつ巻き取るための本発明に係る装置は、完全に自動的なプロセス制御を実現するために特に適している。
【0046】
位置決めプロセス中に、糸群の糸張力を、糸テンショニングローラ8によって連続的に監視することができる。この場合、糸張力の測定を、糸テンショニングローラの運動段階において既に開始する可能性が存在する。しかし、代替形態として、糸張力は、好ましくは、糸テンショニングローラ8の運転位置において測定および監視される。したがって、有利には、サクションインジェクタ24によって形成される糸張力が、それぞれの位置決め運転のために必要とされるレベルに調節されることが可能である。特に、巻取りステーション1.1~1.5間での糸2の分配中に、より高い糸引張応力を要求する比較的大きなループが形成される。糸2の糸群における瞬間的な糸張力は、糸テンショニングローラ8内の測定装置32によって捕捉され、監視ユニット35へと伝達される。監視ユニット35は、たとえば、実際値/目標値の比較の後に、対応する制御コマンドを機械制御ユニット38に供給することができるように、位置決めプロセスの糸張力プロファイルを目標値として与えることができる。機械制御ユニット38は、たとえば、自動化された形式でサクションインジェクタ24における圧力設定を設定するために使用することができる。したがって、有利には、プロセスの開始時に糸群を巻取りステーションに位置決めするために、オペレータの介入なしに、補助装置が利用されることが可能である。
図1
図2
図3
図4.1】
図4.2】
図5