(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】再生常温アスファルト混合物及び再生常温アスファルト混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 19/10 20060101AFI20240123BHJP
E01C 7/20 20060101ALI20240123BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20240123BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20240123BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20240123BHJP
【FI】
E01C19/10 A
E01C7/20
C08L95/00
C08K3/40
C08K3/00
(21)【出願番号】P 2022122684
(22)【出願日】2022-08-01
【審査請求日】2022-08-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】000194516
【氏名又は名称】世紀東急工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】茅ノ間 恵美
(72)【発明者】
【氏名】源藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】村井 宏美
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026704(JP,A)
【文献】特開2005-082407(JP,A)
【文献】特開2014-047458(JP,A)
【文献】特開平11-236232(JP,A)
【文献】特開2005-089203(JP,A)
【文献】特開2000-334412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/10
E01C 7/20
C08L 95/00
C08K 3/40
C08K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト再生骨材と、
前記アスファルト再生骨材以外のリサイクル材料と、
専用結合材と、を含有し、
前記アスファルト再生骨材の含有量は、前記アスファルト再生骨材及び前記リサイクル材料の合計重量に対して、85重量%以上95重量%以下であ
り、
前記リサイクル材料は、ガラス発泡材料であり、前記ガラス発泡材料の含有量は、前記アスファルト再生骨材及び前記リサイクル材料の合計重量に対して、5重量%以上15重量%以下であり、
前記ガラス発泡材料は、粒径が4mm未満である第1のガラス発泡材料と前記第1のガラス発泡材料よりも粒径の大きな第2のガラス発泡材料とからなり、前記第1のガラス発泡材料の含有割合は、第1のガラス発泡材料及び第2のガラス発泡材料の合計重量に対して、65重量%以上80重量%以下であることを特徴とする再生常温アスファルト混合物。
【請求項2】
前記第2のガラス発泡材料の粒径は、4mm以上15mm未満であることを特徴とする請求項
1に記載の再生常温アスファルト混合物。
【請求項3】
アスファルト再生骨材と、
前記アスファルト再生骨材以外のリサイクル材料と、
専用結合材と、を含有し、
前記アスファルト再生骨材の含有量は、前記アスファルト再生骨材及び前記リサイクル材料の合計重量に対して、85重量%以上95重量%以下であり、
前記リサイクル材料は、コンクリート再生骨材であり、前記コンクリート再生骨材の含有量は、前記アスファルト再生骨材及び前記リサイクル材料の合計重量に対して、5重量%以上15重量%以下であ
り、舗装における表層、或いは、基層において用いられることを特徴とす
る再生常温アスファルト混合物。
【請求項4】
前記専用結合材は、再生植物油であることを特徴とする請求項1ないし請求項
3のいずれかに記載の再生常温アスファルト混合物。
【請求項5】
リサイクル材料が、第1のガラス発泡材料と前記第1のガラス発泡材料よりも粒径の大きな第2のガラス発泡材料とからなる場合に、
アスファルト再生骨材と前記第2のガラス発泡材料とを混合する工程と、
前記アスファルト再生骨材と前記リサイクル材料との混合材に専用結合材を混合する工程と、
前記混合材とバインダとに前記第1のガラス発泡材料を混ぜ合わせる工程と、
を備えることを特徴とする再生常温アスファルト混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、再生常温アスファルト混合物及び再生常温アスファルト混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な常温アスファルト混合物は、骨材(例えば、砕石や砂等)、フィラー(例えば、炭酸カルシウム等)及びカットバックアスファルトを混合したものであり、常温で舗設可能なアスファルト混合物である。カットバックアスファルトは、カットバック剤(例えば、鉱物油等)とアスファルトを液状に混合したバインダである。
【0003】
常温アスファルト混合物は、現場での加熱や混合が不要であり、その取り扱いが容易であるため、一般的に舗装路面の破損箇所や小規模工事の路面補修材料として使用される。また、袋詰め製品は持ち運びが容易であり、3~6か月程度の保存も可能である。
【0004】
近年、環境負荷削減の観点から、アスファルト混合物の再利用、つまり、リサイクル材料であるアスファルト再生骨材の利用が求められている。このアスファルト再生骨材は、アスファルト舗装の路面切削、或いは、剥ぎ取りにより発生するアスファルト塊が粉砕されたものである。
【0005】
このアスファルト再生骨材は、現在、再生加熱アスファルト混合物の粗骨材や再生路盤材として利用されている。当該アスファルト再生骨材を利用した常温アスファルト混合物については、例えば以下の特許文献1に示すような再生常温アスファルト混合物を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に示す再生常温アスファルト混合物におけるアスファルト再生骨材の含有量は、新規骨材、アスファルト再生骨材及び溶融スラグの合計重量に対して50重量%以上70重量%以下である。そのため、当該再生常温アスファルト混合物におけるリサイクル材料の使用率をさらに高める余地がある。
【0008】
そこで、元々当該再生常温アスファルト混合物に含まれるリサイクル材料であるアスファルト再生骨材の含有量を増やすことがまず考えられる。但し、アスファルト再生骨材を利用するためには、アスファルト再生骨材を一度加熱する必要がある。
【0009】
つまり、アスファルト再生骨材を加熱アスファルト混合物の粗骨材に使用し、加熱アスファルト混合物を製造する場合、アスファルト再生骨材は、新規骨材と同様に一定温度で加熱される。そして加熱されると、アスファルト再生骨材に付着しているアスファルトモルタルが溶けることで、新規骨材と一体化する。
【0010】
このため、アスファルト再生骨材を一度加熱してから、再生常温アスファルト混合物の粗骨材に使用しようとした場合、上述したように製造時にアスファルト再生骨材が一度加熱されるが、その後使用までの間にアスファルト再生骨材は冷却されることになるため、使用時には固化してしまう。そのため作業性が著しく低下することになる。
【0011】
そのため、例えば上記特許文献1に開示されている再生常温アスファルト混合物の場合は、アスファルト再生骨材の使用量を制限するとともに、製造時に加熱せず常温製造とすることによって使用時の固化を防止していた。但し、これでは、リサイクル材料の使用は進まない。
【0012】
そこで本発明においては、耐久性確保のためにアスファルト再生骨材の配合比率を増やしても加熱製造後に常温使用する際の作業性を確保しつつ、リサイクル材料の使用割合を増やすことで環境への配慮を行うとともに、さらに強度アップ、保存性の向上を図ることが可能な再生常温アスファルト混合物及び再生常温アスファルト混合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物は、アスファルト再生骨材と、アスファルト再生骨材以外のリサイクル材料と、専用結合材と、を含有し、アスファルト再生骨材の含有量は、アスファルト再生骨材及びリサイクル材料の合計重量に対して、85重量%以上95重量%以下であり、リサイクル材料は、ガラス発泡材料であり、ガラス発泡材料の含有量は、アスファルト再生骨材及びリサイクル材料の合計重量に対して、5重量%以上15重量%以下であり、ガラス発泡材料は、粒径が4mm未満である第1のガラス発泡材料と第1のガラス発泡材料よりも粒径の大きな第2のガラス発泡材料とからなり、第1のガラス発泡材料の含有割合は、第1のガラス発泡材料及び第2のガラス発泡材料の合計重量に対して、65重量%以上80重量%以下であることを特徴とする。
【0017】
また第2のガラス発泡材料の粒径は、4mm以上15mm未満であることを特徴とする。
【0018】
アスファルト再生骨材と、アスファルト再生骨材以外のリサイクル材料と、専用結合材と、を含有し、アスファルト再生骨材の含有量は、アスファルト再生骨材及びリサイクル材料の合計重量に対して、85重量%以上95重量%以下であり、リサイクル材料は、コンクリート再生骨材であり、コンクリート再生骨材の含有量は、アスファルト再生骨材及びリサイクル材料の合計重量に対して、5重量%以上15重量%以下であり、舗装における表層、或いは、基層において用いられることを特徴とする。
【0019】
専用結合材は、再生植物油であることを特徴とする。
【0020】
さらに本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物の製造方法は、リサイクル材料が、第1のガラス発泡材料と第1のガラス発泡材料よりも粒径の粗い第2のガラス発泡材料とからなる場合に、アスファルト再生骨材と第2のガラス発泡材料とを混合する工程と、アスファルト再生骨材と第2のガラス発泡材料との混合材に専用結合材を混合する工程と、混合材と専用結合材とに第1のガラス発泡材料を混ぜ合わせる工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物であれば、耐久性確保のためにアスファルト再生骨材の配合比率を増やしても加熱製造後に常温使用する際の作業性を確保しつつ、リサイクル材料の使用割合を増やすことで環境への配慮を行うとともに、さらに強度アップ、保存性の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物の製造方法であれば、再生常温アスファルト混合物における骨材粒度を守りつつ、リサイクル材料の使用割合を増やすことで環境への配慮を行うとともに、さらに強度アップ、保存性の向上を図る再生常温アスファルト混合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る再生常温アスファルト混合物の配合の一例を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る再生常温アスファルト混合物の基本となる製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態に係る再生常温アスファルト混合物の製造方法の流れであって、2種類のリサイクル材料を混合する際の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
(基本構成)
本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料の配合について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る再生常温アスファルト混合物の配合の一例を説明するための図である。
【0026】
本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物は、アスファルト再生骨材と、アスファルト再生骨材以外のリサイクル材料と、専用結合材とを含有する。
【0027】
アスファルト再生骨材は、アスファルト舗装の路面切削、或いは、剥ぎ取りにより発生するアスファルト塊が粉砕された再生骨材である。このアスファルト再生骨材は、通常の粗骨材の代わりに用いられるものである(粗骨材置換)。このアスファルト再生骨材の含有量を増加させるほど、環境負荷削減を実現することができる。
【0028】
そして、さらなる環境負荷の削減を図るべく、本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物では、アスファルト再生骨材の配合比率を高めるとともに、アスファルト再生骨材以外のリサイクル材料を含む。リサイクル材料としては、例えば、鉄鋼スラグや貝殻、廃コルク等様々な材料が含まれるが、ここでは、リサイクル材料として、ガラス発泡材料、或いは、コンクリート再生骨材を採用することができる。
【0029】
ガラス発泡材料は、ガラス瓶等の廃ガラスを粉砕、焼成発泡して製造される多孔質軽量発泡材料である。無機鉱物性であることから、熱や薬品に強く、物理的、化学的な安定性を備えた土壌還元型資材である。また製造工程において、比重、吸水率を自由にコントロールすることができる。
【0030】
一方、コンクリート再生骨材は、セメントコンクリート発生材、アスファルトコンクリート発生材、或いは、路盤発生材から製造される再生材料である。当該コンクリート再生骨材は、コンクリート舗装等を撤去した際に発生するコンクリート廃材から鉄筋等の異物を除去し、破砕機によってコンクリート塊の大きさを整えることで再生骨材として用いられる。
【0031】
このようなリサイクル材料を用いることによって、アスファルト再生骨材の使用量を増加させつつ、これまで新規の骨材を使用していた部分を、ガラス発泡材料等のリサイクル材料に置き換えることができることになるので、より環境対策やリサイクル性に優れた再生常温アスファルト混合物を提供することができることになる。
【0032】
また、上述したガラス発泡材料等のリサイクル材料をアスファルト再生骨材と混合することによって、使用時における固化を回避するために加熱製造することができなかったアスファルト再生骨材を用いた再生常温アスファルト混合物を加熱製造することができる。
【0033】
すなわち、製造時に加熱してもリサイクル材料の働きにより再生常温アスファルト混合物が固化することを回避できることから、製造時においても常温であることは求められない。そして製造時に常温ではなく加熱可能とされることによって、これまでの製造プラントをそのまま使用することができるとともに、これまでの製造プラントを使用する場合であっても一般的なアスファルト混合物を製造する時間を外して製造プラントが冷却されることを待つ必要はない。従って製造時のコストや手間を省くことができる。
【0034】
なお、このようにリサイクル材料としてガラス発泡材料やコンクリート再生骨材を用いることができるが、以下における本発明の実施の形態においては、リサイクル材料としてガラス発泡材料を用いた例を挙げて説明する。
【0035】
本発明の実施の形態においてリサイクル材料として混合されるガラス発泡材料は、様々な粒径ものが存在するが、例えば、その粒径が4mm未満のものが使用される。これは再生常温アスファルト混合物の目標粒度を満たしつつ可能な限り多くのアスファルト再生骨材を配合させるためである。
【0036】
但し、再生常温アスファルト混合物に混合されるガラス発泡材料としては、1種類だけでなくても良い。例えば粒径の異なる2種類のガラス発泡材料を用いることができる。2種類のガラス発泡材料を用いる場合、一方の、その粒径が4mm未満であるガラス発泡材料を「第1のガラス発泡材料」としたときに、他方の、第2のガラス発泡材料の粒径は、4mm以上15mm未満であることが望ましい。
【0037】
また混合に当たっては、まずアスファルト再生骨材とより大きな粒径を有する第2のガラス発泡材料とを混合し、この混合により生成される混合材に専用結合材を混合し、さらにその後に、混合材と専用結合材とに第1のガラス発泡材料を混ぜ合わせる工程を経ることが好ましい。
【0038】
これは最初に粒径の細かな第1のガラス発泡材料をアスファルト再生骨材と混合使用とすると、混合の工程で第1のガラス発泡材料が巻き上がり集塵装置によって吸引されることによる損失が生じうるからである。そこでまず粒径の大きな第2のガラス発泡材料をアスファルト再生骨材と混合し、専用結合材も混合した上で最後に粒径の細かな第1のガラス発泡材料を混合する。
【0039】
このように粒径の異なる複数のガラス発泡材料を用いるとともに、上述した順序で再生常温アスファルト混合物を製造することで、所望の配合比率による再生常温アスファルト混合物を得ることができる。
【0040】
専用結合材は、再生常温アスファルト混合物の粘度を下げるために用いられ、常温で液体として用いられるものである。このうち専用結合材としては、例えば、鉱物油、再生鉱物油、或いは、再生植物油等を挙げることができ、より好適には再生植物油が用いられる。本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物では、再生植物油を用いる。
【0041】
なおこの他に、アスファルトも混合される。但し、当該アスファルトについても新規材料ではなく再生材料である。すなわち、本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物ではアスファルト再生骨材に含まれるアスファルト分(劣化した古いアスファルト)を利用し、新しいアスファルトを新規材料として用いるものではない。従って、本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物では構成する全ての材料がリサイクル材料である。
【0042】
(材料含有量)
次に、本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物における、アスファルト再生骨材、ガラス発泡材料、専用結合材の含有量について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る再生常温アスファルト混合物の配合の一例を説明するための図である。
【0043】
図1において、最左欄には実施例と比較例とが1列に並んでおり、行方向に再生アスファルト混合物を構成するアスファルト再生骨材、ガラス発泡材料、及び、再生植物油の割合、試験結果、さらに、作業性についても結果が示されている。
【0044】
最上段に示されるアスファルト再生骨材の欄、ガラス発泡材料及び再生植物油の項目は、本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物が含有する成分を示すものである。
【0045】
なお、ガラス発泡材料については、粒径の異なる2種類のガラス発泡材料の配合比率について示している。ここで用いられているガラス発泡材料は、一方(第1のガラス発泡材料)が粒径4mm未満のものであり、他方(第2のガラス発泡材料)が粒径4mm以上15mm未満のものである。
【0046】
また、実施例1ないし実施例7までの再生常温アスファルト混合物では、混合されるのは第1のガラス発泡材料のみであり、実施例8ないし実施例13までの再生常温アスファルト混合物には第1のガラス発泡材料と第2のガラス発泡材料の2種類のガラス発泡材料が混ぜ合わせられている。
【0047】
そして、
図1に示す比較例、実施例においては、再生常温アスファルト混合物が含有する成分の配合比率はいずれも重量%で示され、さらに、アスファルト再生骨材及びガラス発泡材料の合計が100重量%となるように示されている。従って、再生植物油の配合比率は当該100重量%には含まれていない。
【0048】
次の「密度」及び「安定度」は常温マーシャル安定度試験の結果を示しており、「残留ひずみ」及び「最大応力」の項目は、一軸圧縮試験の結果である。
【0049】
ここで常温マーシャル安定度試験は、一般的なアスファルト混合物の配合設計時に用いられるマーシャル安定度試験の試験条件を一部変更したものである。この常温マーシャル安定度試験では、円筒形の供試体を所定の条件で養生した後、その供試体を二枚の円弧形の載荷板により挟み込んで供試体の直径方向に荷重を加え、密度(g/cm3)、供試体が破壊されるまでの最大荷重(安定度:kN)を常温で測定する。所定の条件としては、例えば、供試体の直径が10.16cmであり、供試体の厚さが6.35cm±1.3cmであり、この供試体を60℃で24h養生後、その供試体に対する試験を20℃で実施した。また、載荷速度は5cm/minである。
【0050】
一方一軸圧縮試験は、一軸圧縮強さ(最大応力)や残留ひずみ率を測定するための試験である。この一軸圧縮試験では、円筒形の供試体を所定の条件で養生した後、その供試体を二枚の載荷板により上下から挟み込んで鉛直方向に荷重を加え、供試体が破壊されたときの最大荷重(N/mm2)、変形量、荷重が1/2まで低下したときの変形量を常温で測定し、残留ひずみ率を算出する。所定の条件としては、例えば、供試体の直径が10.16cmであり、供試体の厚さが6.35cm±1.3cmである。また、載荷速度は1mm/minである。
【0051】
比較例1及び比較例2は、ガラス発泡材料が含まれない、アスファルト再生骨材100重量%の再生常温アスファルト混合物である。また、実施例については実施例1から実施例13まで13の実施例が示されており、これらはアスファルト再生骨材にガラス発泡材料を含む再生常温アスファルト混合物である。
【0052】
ここでまずアスファルト再生骨材とガラス発泡材料との大まかな配合比率を確認するために2種類の配合比率をもって配合試験を実施した。これらは、実施例1ないし実施例4が該当する。当該実施例1ないし実施例4に対する比較対象は比較例1である。
【0053】
次に、確認のために行われた実施例に知見に基づいて、別のアスファルト再生骨材及びガラス発泡材料の配合比率をもって行われた配合試験の実施例が、実施例5ないし実施例13である。比較例2は実施例5ないし実施例13に対する比較対象である。
【0054】
さらに、実施例5ないし実施例13では、後述するように2種類のガラス発泡材料を使用する実施例があるが、このような実施例においては、上述したように、粒径の大きな第2のガラス発泡材料をまずアスファルト再生骨材に混合し、専用結合材も混合した上で、最後により粒径の細かな第1のガラス発泡材料を混合している。
【0055】
図1に示す実施例1ないし実施例4をみると、実施例1及び実施例2はアスファルト再生骨材の配合比率が95.0重量%であり、ガラス発泡材料は5.0重量%である。一方、実施例3及び実施例4では同様に、92.5重量%と7.5重量%である。そしてこれら4つの実施例においては、いずれも混合されるガラス発泡材料は1種類(第1のガラス発泡材料)のみである。
【0056】
これら実施例1ないし実施例4についての試験結果及び作業性の評価を見てみると、比較例1との比較を行った場合、試験結果については概ねいずれも良い結果が出ているものと評価することができる。
【0057】
これに対して作業性については、実施例3及び実施例4の評価が良い。ここで比較例1における作業性の評価は「×」である。これは常温で使用しようとした場合における再生常温アスファルト混合物の作業性(例えば、袋からの出し易さ、硬さ、敷均し易さ等。また、この他、経済性も含む。)を評価した場合に、固化してしまい非常に作業を行いにくいことを示している。
【0058】
一方、アスファルト再生骨材が95重量%含まれる実施例1及び実施例2の場合は、作業性は「△」である。これは比較例1のように固化してはいないが、やや硬めであり、例えば、ある大きさの塊となった状態にあるものである。これに対して、アスファルト再生骨材が92.5%含有される実施例3及び実施例4の場合には、実施例1や実施例2よりもさらに作業性の評価が良い。そのため
図1では「〇」と示されている。
【0059】
実施例5ないし実施例13は、上述したように、各種評価の良かった実施例3や実施例4を基に、さらにガラス発泡材料の配合比率を高めた実施例である。さらに実施例8以下については、ガラス発泡材料を1種類ではなく、より粒径の大きなガラス発泡材料(第2のガラス発泡材料)も混合した。
【0060】
これら実施例5ないし実施例13の実施例は、アスファルト再生骨材とガラス発泡材料との配合比率によって大きく3つのグループに分かれる。1つ目は実施例5ないし実施例7であり、含有されるガラス発泡材料は1種類のみであり、10重量%である。
【0061】
2つ目のグループは、実施例8ないし実施例10であり、ガラス発泡材料は第1のガラス発泡材料と第2のガラス発泡材料の2種類であり、前者は10重量%、後者は2.5重量%である。従って、ガラス発泡材料の配合比率としては、全体として12.5重量%であり、上述した1つ目のグループよりも配合比率が高い。
【0062】
3つ目のグループは、実施例11ないし実施例13であり、2つ目のグループと同じく2種類のガラス発泡材料が混合される。但し配合比率が異なり、第1のガラス発泡材料は10重量%である一方、第2のガラス発泡材料は5.0重量%となる。そのためガラス発泡材料全体の配合比率はさらに高くなり、15.0重量%である。
【0063】
なお、同じグループにおける実施例の違いは、含有される再生植物油の配合比率の違いである。いずれも「2.5重量%」、「3.0重量%」、「3.5重量%」の異なる配合比率で再生常温アスファルト混合物に混ぜ合わせられる。
【0064】
これら3つのグループを見てみると、2つ目のグループ、すなわち、アスファルト再生骨材が87.5重量%であり、ガラス発泡材料が12.5重量%(第1のガラス発泡材料が10重量、第2のガラス発泡材料が2.5重量%)である場合が最も高い評価を受けている。また、当該配合比率における再生植物油の配合比率による作業性の評価の違いは見られなかった。
【0065】
特に1つ目のグループと比較すると、2つ目のグループはガラス発泡材料を2種類混合するとともに、混合の順序も第2のガラス発泡材料、第1のガラス発泡材料の順である。このように第2のガラス発泡材料を混合するとともにその混合順序も第1のガラス発泡材料よりも前とすることで、細かな粒径を持つ第1のガラス発泡材料が混合の際に集塵装置に吸引されて減少することが避けられ、より所望の配合比率に沿った混合が実施されたものと考えられる。
【0066】
その結果、ガラス発泡材料が常温での再生常温アスファルト混合物の使用に当たって、アスファルト再生骨材が固まることを防止し、より作業性の良い再生常温アスファルト混合物を提供することができたものと考えられる。
【0067】
一方、2つ目のグループと3つ目のグループとを比較すると、3つ目のグループの方がガラス発泡材料の配合比率が高い。その結果、2つ目のグループの方が3つ目のグループよりも密度は高く、安定度は低く、残留ひずみと最大応力については大きな差異はない、という結果になった。
【0068】
元々本発明の実施の形態における再生常温アスファルト混合物は、上述したように100%再生材料を用いて製造されていることからすれば、いずれもリサイクル材料であるアスファルト再生骨材とガラス発泡材料のいずれの配合比率が増えても100%再生材料を使用していることに変わりはない。
【0069】
但し、同じリサイクル材料であってもガラス発泡材料の方がアスファルト再生骨材よりも単価は高くなる。従って、ガラス発泡材料の配合比率が高くなるということは、相対的にアスファルト再生骨材の使用量が減少することにつながり、再生常温アスファルト混合物としての単価は高くなってしまう。
【0070】
また、混合物の固さの観点からしても、3つ目のグループよりも2つ目のグループの方が作業性が良かった。従って、3つ目のグループの作業性は「○」である一方、2つ目のグループの作業性は「◎」という評価になった。
【0071】
次に、本発明の実施の形態における舗装補修用材料の製造方法について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る再生常温アスファルト混合物の基本となる製造方法の流れを示すフローチャートである。また、
図3は、本発明の実施の形態に係る再生常温アスファルト混合物の製造方法の流れであって、2種類のリサイクル材料を混合する際の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0072】
まず、リサイクル材料が1種類のガラス発泡材料である場合を例に挙げて説明する。この場合は、
図2に示す通り、まず、アスファルト再生骨材とガラス発泡材料を混合する(以下、このように混合されて生成された物を、適宜「混合材」と表す。)(ST1)。その後、当該混合材に対して、さらに専用結合材を混合する(ST2)。これで再生常温アスファルト混合物が製造される。
【0073】
一方、ガラス発泡材料を2種類混合して再生常温アスファルト混合物を製造する場合には、第1のガラス発泡材料と第2のガラス発泡材料の混合のタイミングが異なる。すなわち
図3に示すように、まず、アスファルト再生骨材と第2のガラス発泡材料とを混合する(ST11)。なお、以下、このように混合されて生成された物も適宜「混合材」と表す。
【0074】
その後、この混合材に専用結合材を混合する(ST12)。そして、混合材とバインダとが混合された物に対して、さらに第1のガラス発泡材料を混合する(ST13)。このような順序でガラス発泡材料を混合することによって、所望の配合比率を確保し易くなる。
【0075】
以上説明したような、アスファルト再生骨材とリサイクル材料とを混合した再生常温アスファルト混合物であれば、耐久性確保のためにアスファルト再生骨材の配合比率を増やしても加熱製造後に常温使用する際の作業性を確保しつつ、リサイクル材料の使用割合を増やすことで環境への配慮を行うとともに、さらに強度アップ、保存性の向上を図ることができる。
【0076】
また、特に、複数種類のガラス発泡材料を含有させる場合に上述したような製造方法を採用することによって、再生常温アスファルト混合物における配合比率を守りつつ、リサイクル材料の使用割合を増やすことで環境への配慮を行うとともに、さらに強度アップ、保存性の向上を図ることができる再生常温アスファルト混合物を製造することができる。
【0077】
またこれまでの再生常温アスファルト混合物と比べて、製造時は加熱して混合することができるので、一般的なアスファルトと同様のプラントで製造することができるとともに、使用時には常温で使用することができるので、非常に使い勝手が良い。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1・・・アスファルト再生骨材
2・・・ガラス発泡材料
2A・・・第1のガラス発泡材料
2B・・・第2のガラス発泡材料
3・・・再生植物油
【要約】
【課題】耐久性確保のためにアスファルト再生骨材の配合比率を増やしても加熱製造後に常温使用する際の作業性を確保しつつ、リサイクル材料の使用割合を増やすことで環境への配慮を行うとともに、さらに強度アップ、保存性の向上を図ることが可能な再生常温アスファルト混合物及び再生常温アスファルト混合物の製造方法を提供する。
【解決手段】アスファルト再生骨材と、アスファルト再生骨材以外のリサイクル材料と、専用結合材と、を含有し、アスファルト再生骨材の含有量は、アスファルト再生骨材及びリサイクル材料の合計重量に対して、85重量%以上95重量%以下である。
【選択図】
図1