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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】吸引潅注装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61M1/00 140
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165489
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2020193122の分割
【原出願日】2016-04-28
(65)【公開番号】P2022191414
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】62/290,882
(32)【優先日】2016-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516234199
【氏名又は名称】エンテラス メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENTELLUS MEDICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】フォースバーグ,アンドリュー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ドロントル,ジョン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン,アンソニー ジェイ.
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-327774(JP,A)
【文献】特表2012-528702(JP,A)
【文献】特開2000-237201(JP,A)
【文献】国際公開第2001/030416(WO,A1)
【文献】米国特許第03109426(US,A)
【文献】特開平05-212046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0072958(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0018732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の内腔または体腔から流体を潅注または吸引するための潅注吸引装置(100)であって、
潅注ルーメン(124)を規定する潅注管(104)と、
前記潅注管(104)上にスライド可能に取り付けられた吸引管(106)であって、前記潅注管(104)の外壁と当該吸引管(106)の内壁とが協働して吸引チャネル(150)を規定する、吸引管と、
前記潅注管(104)の近位部分に固定され、前記吸引チャネル(150)の近位端と流体連通する吸引チャンバ(160)を規定し、吸引ポート(122)および潅注ポート(120)を含み、前記吸引ポート(122)が前記吸引チャンバ(160)と流体連通し、前記潅注ポート(120)が潅注ルーメン(124)と流体連通し、前記吸引ポート(122)が吸引源に接続可能に構成されたハンドル(102)と、
前記吸引管(106)に固定され、かつ前記ハンドル(102)内にスライド可能に取り付けられたスライド部材(108)と、
を備え、
前記スライド部材(108)を前記ハンドル(102)に沿って遠位側に前進させることにより、前記潅注管(104)の長さに沿って前記吸引管(106)が前進することを特徴とする装置(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100)であって、
前記吸引管が、前記潅注管上に同軸に取り付けられていることを特徴とする装置(100)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の装置(100)であって、
前記潅注管(104)の少なくとも一部と同軸の補強管(132)をさらに備えていることを特徴とする装置(100)。
【請求項4】
請求項3に記載の装置(100)であって、
前記潅注管(104)の遠位部分(130)が前記補強管(132)の遠位端から遠位方向へ延び、前記潅注管(104)の前記遠位部分(130)が展性であることを特徴とする装置(100)。
【請求項5】
請求項3に記載の装置(100)であって、
前記潅注管(104)は、前記補強管(132)内に配置されて、前記補強管(132)の内壁に当接することを特徴とする装置(100)。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1つに記載の装置(100)であって、
前記補強管(132)の外壁と前記吸引管(106)の内壁との間に、
前記吸引チャネル(150)が、0.645平方ミリメートル~約81.3平方ミリメートルの環状断面積を有することを特徴とする装置(100)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の装置(100)であって、
前記潅注管(104)の遠位部分(130)が、前記潅注ルーメン(124)と流体連通する複数の噴霧ポートを規定することを特徴とする装置(100)。
【請求項8】
請求項7に記載の装置(100)であって、
前記複数の噴霧ポートのうちの少なくとも幾つかが、涙滴形状を有することを特徴とする装置(100)。
【請求項9】
請求項7に記載の装置(100)であって、
前記複数の噴霧ポートの第1のサブセットが、前記潅注管(104)の周りの第1のバンドに周方向に配置され、前記複数の噴霧ポートの第2のサブセットが、前記潅注管(104)の周りの第2のバンドに周方向に配置され、
前記第2のバンドが、前記潅注管(104)上で前記第1のバンドより近位側にあることを特徴とする装置(100)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の装置(100)であって、
前記潅注管(104)の遠位端に非外傷性先端部をさらに備え、前記非外傷性先端部が、前記潅注管の遠位端に固定された球状部材、または、前記潅注管の遠位端に固定された円錐形部材を含むことを特徴とする装置(100)。
【請求項11】
請求項1に記載の装置(100)であって、
前記装置(100)は、前記ハンドル(102)に対する前記スライド部材(108)の遠位側への前進に抵抗するように構成された前方停止部(156)を含むことを特徴とする装置(100)。
【請求項12】
請求項11に記載の装置(100)であって、
前記前方停止部(156)および前記スライド部材(108)は、前記スライド部材(108)を前記前方停止部(156)の位置まで前進させることにより、前記潅注管(104)の遠位先端部の近位側に隣接して前記吸引管(106)の遠位先端部(186)を配置するように構成されていることを特徴とする装置(100)。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の装置(100)であって、
前記前方停止部(156)および前記スライド部材(108)は、前記前方停止部(156)を越えて遠位側に前記スライド部材(108)を前進させることにより、前記吸引管(106)の遠位先端部(186)を、前記潅注管(104)の遠位先端部を越えて遠位側に押すように構成されていることを特徴とする装置(100)。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1つに記載の装置(100)であって、
前記スライド部材(108)が吸引ベント(154)を規定し、前記吸引ベント(154)が前記吸引チャネル(150)と流体連通することを特徴とする装置(100)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載の装置(100)であって、
前記吸引管(106)は遠位部分および近位部分を含み、
前記吸引管(106)の前記近位部分が前記吸引管(106)の前記遠位部分よりも可撓性が小さいことを特徴とする装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、概して、ヒトなどの哺乳動物の内腔または体腔から流体を潅注または吸引
するための装置および方法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2016年2月3日に出願された米国仮特許出願第62/290,882号
の優先権を主張する。この出願は、その全体が引用により本明細書中に援用される。優先
権は、米国特許法第119条およびその他の適用可能な法律に従って主張されるものであ
る。
【背景技術】
【0003】
近年、副鼻腔の外科医によって、鼻および副鼻腔の疾患の治療が改善されてきている。
例えば、バルーンカテーテルを用いて副鼻腔の排液経路を拡張することは、慢性および急
性鼻副鼻腔炎の治療における新しい標準治療となっている。また、副鼻腔の外科医は、全
身麻酔下で手術室にて患者に手術を施すのではなく、局所麻酔下で診療室にいながらにし
て、より広い範囲の数多くの鼻および副鼻腔の疾患を治療し始めている。
【0004】
これらの副鼻腔治療の変化により、副鼻腔手術ツールの改善に対するニーズが生じてい
る。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)の内腔または体腔から流体を潅注または吸引する
ための物品および方法を含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、本発明は、潅注吸引装置を含み、この潅注吸引装置が、潅注ル
ーメンを規定する潅注管と、潅注管にスライド可能に取り付けられた吸引管であって、潅
注管の外壁および当該吸引管の内壁とが協働して吸引チャネルを規定する、吸引管と、潅
注管の近位部分に固定されたハンドルと、吸引管に固定され、かつハンドル内にスライド
可能に取り付けられたスライド部材とを備える。スライド部材をハンドルに沿って遠位方
向に前進させることにより、潅注管の長さに沿って吸引管が前進する。
【0007】
更なる実施形態では、本発明は、本明細書に記載の潅注吸引装置を使用して患者の体腔
または内腔を吸引または潅注する方法を含む。この方法は、本明細書に記載の実施形態の
実施例の何れかに係る潅注吸引装置を提供するステップと、患者の鼻孔を介して患者の体
腔または内腔内の所望の位置に潅注管を導くステップと、装置の潅注管を介して流体を導
くか、または装置の吸引管を介して流体を吸引するステップとを含むことができる。
【0008】
本発明は、哺乳動物体内の流体の潅注および吸引を可能にするために必要な装置とツー
ルを提供する。本発明の装置は、人間の指によって典型的に加えられる種類の力の下で展
性のある潅注管を含み、これは、本発明の実施者が、痛みの強い解剖学的構造をより良好
にナビゲートするために、高価または複雑な成形ツールを使用することなく、潅注管を容
易に形作ることができることを意味する。また、本発明の装置は、実施者が、片手で体の
所望の位置に潅注噴霧ポートおよび吸引管を配置することを可能にする。すなわち、実施
者は、潅注管および吸引管を一方の手で所望の位置に導くことができ、それによりその他
の外科器具(例えば、内視鏡)を操作するなど、その他の目的のためにユーザの他方の手
を解放することができる。
【0009】
本発明は、実施者が(例えば、副鼻腔および人体の排液経路から)哺乳動物の体内の管
、排液経路またはその他のオリフィスを流体で洗浄し、体内のその位置から流体または小
さな固体粒子を吸引し又は吸い込み、或いは体内のその位置から同時にまたは連続して潅
注および吸引の両方を行うことを可能にする。この概要は、本特許出願の主題の概要を提
供することを意図している。それは、本発明の排他的または包括的な説明を提供すること
を意図するものではない。発明の詳細な説明は、本特許出願に関する更なる情報を提供す
るために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれている訳ではなく、それら図面において、同様の
符号は、異なる図面で類似の構成要素を示すことがある。異なる文字末尾を有する同様の
符号は、同様の構成要素の異なるインスタンスを示すことがある。図面は、本明細書で論
じられる様々な実施形態を例示として概略的に示しているが、それらに限定されるもので
はない。
図1図1は、本発明の潅注吸引装置の一実施例の斜視図を示している。
図2図2は、図1に示す潅注吸引装置の分解図を示している。
図3図3は、本発明の潅注管の斜視図を示している。
図4図4は、図1の線分A-Aに沿った切欠図を示している。
図5図5は、本発明の潅注管の遠位部分の一部の拡大斜視図を示している。
図6図6は、本発明の吸引管、ハンドルの遠位キャップおよびスライド部材の斜 視図を示している。
図7図7は、本発明のスライド部材および吸引管の近位部分の側面切欠図を示し ている。
図8図8は、本発明のハンドルの本体の斜視図を示している。
図9図9は、図8の線分B-Bに沿った本発明のハンドルの本体の側面切欠図を 示している。
図10図10は、本発明のハンドルの側面切欠図を示している。
図11図11は、本発明のハンドルの半径方向プロファイルを示す切欠図である 。
図12図12は、本発明の潅注ラインおよび吸引ラインの斜視図を示している。
図13図13は、本発明のアダプタを示している。
図14図14は、本発明のアダプタを示している。
図15図15は、本発明の潅注管の遠位部分の斜視図を示している。
図16図16は、本発明の潅注吸引装置の斜視図を示している。
図17図17は、本発明の潅注吸引装置の斜視図を示している。
図18図18は、噴霧チャネルの形態の複数の前向き噴霧ポートを含む潅注管の 遠位部分の一部の拡大斜視図である。
図19図19は、別の実施形態の拡大斜視図を示しており、この実施形態では、 球状部材が完全な球体ではなく、噴霧チャネルの形態の噴霧ポートを規定するために 、その外面の1またはそれ以上の部分が取り除かれ、あるいは除去されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、内腔または体腔(例えば、鼻通路または副鼻腔空間)から流体を吸引および
潅注するために使用される潅注吸引装置に関する。
【0012】
図1は、本発明の潅注吸引装置100の一実施例を示す斜視図である。潅注吸引装置1
00は、ハンドル102、潅注管104、吸引管106およびスライド部材108を含む
。以下にさらに詳細に説明するが、簡単に説明すると、本発明の実施者は、狭い解剖学的
通路に良好にアクセスするように潅注管104を形作ることができ、潅注管104で解剖
学的部位を潅注することができ、吸引管106で解剖学的部位から流体を吸引することが
でき、矢印110の方向と平行な方向にスライド部材108を移動させることにより潅注
管104に沿って吸引管106を誘導することができる。図2は、潅注吸引装置100の
分解図を示している。
【0013】
ハンドル102は、遠位キャップ114(リテーナキャップとも呼ばれる)、本体11
6および近位キャップ118の形態の3つの本体構成要素を含む。潅注管104(図2
はその他の構成要素によって隠れている)は、ハンドル102の本体116を通って延び
、潅注管104の近位部分は、近位キャップ118に固定されている。吸引管106の近
位部分は、スライド部材108の遠位部分に固定され、吸引管106が、ハンドル102
の遠位キャップ114によって規定されるオリフィスを通って延びている。
【0014】
図3は、近位キャップ118に取り付けられた潅注管104の斜視図を示している。近
位キャップ118は、潅注ライン125および吸引ライン126にそれぞれ連結された潅
注ポート120および吸引ポート122を含む(図3に示されていないが、図1および図
2に示されている)。潅注管104は、中空であり、潅注管104の長さに沿って延びる
潅注ルーメンを規定する。潅注管104の近位端は、近位キャップ118に固定されてい
る。潅注ルーメンは、近位キャップ118の潅注ポート120と流体連通している。2つ
のマーカ128は、潅注管104の遠位部分130の外面に配置されている。幾つかの実
施形態では、マーカ128の一方または両方が放射線不透過性である。
【0015】
潅注管104は、本発明の実施者が、手または小さな無動力成形ツールのみで遠位部分
130を形作ることができるように、十分に展性の材料で作られている。潅注管は、解剖
学的構造の所与の部分における装置100の使用を容易にするために、所望の大きさにす
ることができる。例えば、装置100をヒトの鼻腔、副鼻腔または耳管の解剖学的構造に
使用する場合、潅注管104を、内径約0.010インチ(約0.254ミリメートル)
~約0.050インチ(約1.27ミリメートル)および外径約0.020インチ(約0
.508ミリメートル)~約0.080インチ(約2.032ミリメートル)の金属製ハ
イポチューブ(例えば、ステンレス鋼ハイポチューブ)から作ることが好都合であること
がある。更なる実施例では、潅注管104が、内径0.030インチ(約0.762ミリ
メートル)および外径約0.050インチ(約1.27ミリメートル)のSAE304ス
テンレス鋼で作られるものであってもよい。また、所望の程度の展性を付与するために、
潅注管104の遠位部分130または全長をアニールすることもできる。
【0016】
任意選択的には、潅注管104の長さの一部またはすべての剛性を高める補強部材を本
発明に含ませることができる。例えば、図1の線分A-Aに沿った切欠図である図4に最
もよく示されているように、補強管132の形態の補強部材が、潅注管104上に同軸に
配置されている。補強チューブ132の内径は、潅注管104の外径と接触またはほぼ接
触している。図3に最もよく示されるように、補強管132は、近位キャップ118内の
潅注管104の近位端から、潅注管104の遠位端130の位置またはその近傍の補強管
132の遠位端134まで、潅注管104上で同軸に延びている。このようにして、補強
管132は、遠位部分130よりも近位側にある潅注管104の部分に沿って剛性を増大
させる一方で、遠位部分130は、ユーザの手によってより容易に形作られる状態のまま
とされる。装置100は、潅注管104の外側に配置された補強部材132を含むが、そ
の代わりに、またはそれに加えて、補強部材を潅注管の内壁上に配置することができる。
補強管132の近位端は、近位キャップ118への補強管132のより良好な取り付けを
提供するために、テクスチャ加工または穿孔されるものであってもよい。
【0017】
図5は、潅注管104の遠位部分130の一部の拡大斜視図を示している。遠位部分1
30は、合計6つの潅注または噴霧ポート136を含み、そのうちの3つのポート136
が、潅注管104の周りの第1のバンド138上に周方向に配置され、それ以外の3つの
ポートが、潅注管104の周りの第2のバンド140上に周方向に配置されている。噴霧
ポート136の第1のバンド138は、潅注管104の非常に遠位の端部に位置し、噴霧
ポート136の第2のバンド140は、第1の位置よりも僅かに近位側に位置している。
第1のバンド138および第2のバンド140の各々の3つのポート136は、潅注管1
04の外周の周りに(すなわち、120°の間隔で)等距離に配置されているが、第1の
バンド138のポート136は、第2のバンド140の部分からゴーシュ型にオフセット
されている(すなわち、第1のバンド138のポートは、第2のバンド140のポートか
ら約60°オフセットされている)。ポート136は涙滴形状を有し、第1のバンド13
8のポート136の涙滴形状の狭い「先端」が、潅注管104の遠位先端で僅かに切り取
られている。ポート136の涙滴形状は、噴霧を遠位方向に向ける噴霧孔形状を与え、涙
滴形状孔の「尾部」が洗浄流体の流れを前方に偏向させる。なお、図5は、特定の数の涙
滴噴霧ポートを示しているが、本発明はこれに限定されず、本発明の潅注吸引装置は、所
望の形状の任意の数の潅注ポートを含むことができ、それら潅注ポートが、所与の用途に
適した潅注噴霧パターンを提供するように所望パターンで配置されている。
【0018】
潅注管104の遠位端は、球状部材142の形態の非外傷性先端部を含む。非外傷性先
端部は、医師が装置100で患者の解剖学的構造をナビゲートする間に、組織損傷を防止
または最小化するのを助ける。代替的な実施形態では、球状部材142を含む代わりに、
潅注管104の遠位端を丸くして非外傷性先端部を提供するようにしてもよい。
【0019】
図6は、吸引管106、ハンドル102の遠位キャップ114およびスライド部材10
8の斜視図を示している。吸引管106は、遠位部分144、近位部分146および結合
部分148を含む。遠位部分144は、吸引管106が潅注管104上を辿るときに容易
に変形する可撓性材料、例えば、ポリマー材料、または埋め込まれたメッシュまたはワイ
ヤで補強されたポリマー材料から作製することができる(補強は、近位部分146を形成
するために使用される管の遠位部分からコイルまたはメッシュをレーザカットすることに
より実現することができる)。近位部分146は、吸引管106に所望の量の柱強度また
は曲げ強度を提供する可撓性が小さい材料(例えば、ステンレス鋼管)から作製すること
ができる。結合部分148は、遠位部分144の可撓性材料が近位部分146の可撓性の
小さい材料と重なる吸引管106の部分であってもよい。例えば、結合部分148内に延
在する可撓性の小さい材料は、結合部分148内に延在する可撓性材料とより容易に接着
または結合するように、(例えば、グリットブラストまたはレーザカットによって)テク
スチャ加工されるものであってもよい。例えば、遠位部分144の材料を近位部分146
上または近位部分内に同軸に積層すること、接着材料を使用すること、構成要素材料をリ
フローで接合すること、または近位部分146を遠位部分内に互いに噛み合わせることに
よって、遠位部分144と近位部分146を結合部分148で互いに固定することができ
る。幾つかの実施形態では、遠位部分144の可撓性材料が、近位部分146内に十分に
延び、あるいは近位部分の全長に沿って延びていてもよく、その結果、識別可能な結合部
分148は存在しない。
【0020】
近位部分146は、ハンドル102の遠位キャップ114を通って延び、スライド部材
108の遠位端に固定されている。図7は、スライド部材108および吸引管106の近
位部分146の側面切欠図を示している。スライド部材108は、吸引チャネル150と
流体連通する内部キャビティ152を規定する。吸引チャネル150は、近位部分146
によって規定されているが、吸引管106の遠位部分144および結合部分148を通っ
て延びている。また、スライド部材108は、吸引ベント154およびフィンガポスト1
55を規定し、吸引ベント154は、フィンガポスト155の中央を通り、スライド部材
108の本体の長手方向軸から直角に延びる。吸引ベント154は、キャビティ152お
よび吸引チャンネル150と流体連通している。
【0021】
吸引管106の様々な部分は、解剖学的構造の所与の部分における装置100の使用を
容易にするために、所望のサイズにすることができる。例えば、装置100をヒトの鼻腔
、副鼻腔または耳管の解剖学的構造に使用する場合、(i)遠位部分144の内径を約0
.045インチ(約1.14ミリメートル)~約0.135インチ(約3.43ミリメー
トル)、外径を約0.060インチ(約1.52ミリメートル)~約0.180インチ(
約4.57ミリメートル)とし、(ii)結合部分148の外径を約0.100インチ(
約2.54ミリメートル)~約0.200インチ(約5.08ミリメートル)とし、(i
ii)近位部分の内径を約0.060インチ(約1.52ミリメートル)~約0.180
インチ(約4.57ミリメートル)、外径を0.070インチ(約1.78ミリメートル
)~約0.190インチ(約4.83ミリメートル)とすることが好都合である場合があ
る。更なる実施例では、遠位部分が約0.091インチ(約2.31ミリメートル)の内
径および約0.120インチ(約3.05ミリメートル)の外径を有することができ、結
合部分が約0.150インチ(約3.81ミリメートル)を有することができ、近位部分
が約0.122インチ(約3.10ミリメートル)の内径および約0.134インチ(約
3.40ミリメートル)の外径を有することができる。幾つかの実施形態では、近位部分
146の内径が、遠位部分144の内径よりも大きくても小さくてもよい。また、近位部
分146の外径は、遠位部分144の外径よりも大きくても小さくてもよい。例えば、使
用中に吸引した流体または固体によって近位部分146が詰まる可能性を低減するために
、近位部分146が遠位部分144よりも大きな内径を有することが有効である場合があ
る。別の実施例では、遠位部分144がより容易に内腔内に進むことができるように、近
位部分146が遠位部分144よりも大きな外径を有することが有効である場合がある。
【0022】
また、図7は、前方停止部156および遠位プロング158の側面図を示している。さ
らに詳細に後述するように、遠位プロング158は、スライド部材108の一部分であり
、遠位キャップ114の前方停止部156に抵抗的に係合するように構成されている。
【0023】
図8はハンドル102の本体116の斜視図を示し、図9は側面切欠図を示している。
本体116の近位端は、近位キャップ118の2つの補完的なプロング164(図2また
図3に図示)と係合する2つの戻止め162を含む。プロング164は、2つの戻り止
め162と協働して、本体116と近位キャップ118との間のスナップ嵌めを提供する
。本体116の遠位端は、遠位キャップ114に規定された2つの戻止め168(図2
たは図6に図示)と協働する2つのプロング166を含み、それにより遠位キャップ11
4を本体116に固定する。また、本体116はスロット170も規定し、このスロット
が、本体116の長手方向長さの一部分を通って延びる。以下にさらに説明するように、
スロット170は、スライド部材108が平行移動する規定された軌道を提供する。また
、本体116は、吸引チャンバ160(図9に図示)も規定する。
【0024】
図10は、吸引管106および潅注管104に完全に取り付けられたハンドル102の
側面切欠図を示している。潅注管104の近位端は、近位キャップ118の潅注ポート1
20のルーメン内に固定されている。潅注管104および潅注ポート120は一緒に、潅
注ポート120から噴霧ポート136まで延びる潅注ルーメン124を規定している。吸
引管106の近位端は、スライド部材108のルーメン内に固定されている。スライド部
材108は、フィンガーポスト155がスロット170を通って延びる状態で、ハンドル
102の本体116内に移動可能に拘束されている。スライド部材108は、矢印110
の方向と平行な方向にスロット170に沿って平行移動することができる。
【0025】
ハンドル102は、吸引ポート122、スライド部材108のキャビティ152および
吸引管106の吸引チャネル150と流体連通する吸引チャンバ160を規定する。図4
に最もよく示されるように、吸引チャネル150は、吸引管106の内壁172と補強管
132の外壁174との間(または、補強管が利用されていない場合は、吸引管106の
内壁と潅注管104の外壁との間)に規定される環状空間において吸引管106の長さ方
向に延びている。吸引チャネル150は、所望量の吸引を提供するのに必要な大きさの環
状の断面領域、すなわち、吸引管の内壁172と補強管の外壁174(補強管が存在しな
い場合は、潅注管104の外壁)との間に位置する環状空間内の領域を有することができ
る。例えば、吸引チャネル150は、約0.001平方インチ(約0.645平方ミリメ
ートル)~約0.126平方インチ(約81.3平方ミリメートル)の環状断面積を有す
ることができる。更なる実施例では、吸引チャネル150は、約0.013平方インチ(
約8.39平方ミリメートル)~約0.038平方インチ(約24.5平方ミリメートル
)の環状断面積を有することができる。更なる実施例では、吸引チャネル150は、約0
.025平方インチ(約16.1平方ミリメートル)の環状断面積を有することができる
【0026】
図11は、図10の線分C-Cに沿った装置100の半径方向プロファイルの切欠図を
示している。スライド部材108は、ハンドル116との間に比較的小さな間隙を有する
ようにハンドル内に配置され、その結果、スライド部材108とハンドル116の内壁と
の間に締まり嵌めが形成されている。この締まり嵌めは、吸引源が吸引ポート122に適
用されるときの吸引チャンバ160内の低圧環境の望ましくない破壊を防止する。キャビ
ティ152は、スライド部材108の内壁と補強管132の外壁との間に形成されている
。潅注管104は、補強管132内に配置されて、補強管の内壁に当接する。潅注ルーメ
ン124は、潅注管104内に形成されている。
【0027】
図12は、潅注ライン125および吸引ライン126の斜視図を示している。潅注ライ
ン125は、潅注ポート120に固定することができ、吸引ライン126は、吸引ポート
122に固定することができる。潅注ライン125および吸引ライン126は、互いに弱
く接着されており、本発明の実施者は、使用中に一方を他方から剥離させることができる
【0028】
図13は、潅注ライン125または吸引ライン126とともに使用するためのアダプタ
176を示している。アダプタ176は、一方の側に1つのバーブ継手180を、反対側
に2つのバーブ継手182を含む。また、アダプタ176は、雌ルアー型継手184も含
む。バーブ継手180、バーブ継手182およびルアー型継手184の組み合わせは、潅
注ライン125および吸引ライン126と様々な異なる吸引源および流体源を接続する汎
用性をアダプタ176に提供する。図14に示すアダプタ178のような、代替的なアダ
プタ設計も本発明に含まれるものであり、このアダプタは、一方の端部がバーブ182の
継手を有し、反対側の端部がルアー型継手184を有する。
【0029】
潅注吸引装置100の使用中、本発明の実施者は、流体源(例えば、水、生理食塩水、
活性細菌培養物または薬物溶液)を、潅注ポート120において装置100に、または潅
注ライン125の近位端に接続することができる。実施者は、潅注管104の遠位部分1
30を曲げるか又は操作して、潅注管104の遠位先端部を、解剖学的構造の輪郭を通り
抜けて体腔または内腔内の所望の位置に配置する上で、より有利な形状とすることができ
る。実施者は、手でハンドル102を保持している間に、潅注管104の遠位先端部を所
望の位置に導くことができる。所望の位置に配置されると、実施者は、潅注ライン125
(使用される場合)、潅注ポート120および潅注ルーメン124を介して、潅注管10
4の遠位端の噴霧ポート136から流体を導くことができる。このようにして、実施者は
、装置100を使用して、患者の解剖学的構造により所望の位置にアクセスし、潅注する
ことができる。患者は、例えば、ヒトまたはその他の哺乳動物であってもよい。
【0030】
また、実施者は、装置100を使用して、所望の位置またはその近傍で流体(例えば、
血液、唾液、粘液、その他の体液、潅注ルーメン124を通って導かれる流体、またはそ
れらの混合物)を吸引することもできる。これを達成するために、実施者は、吸引源をア
ダプタ176または178のバーブまたはルアー型継手を、吸引ライン126の近位端ま
たは吸引ポート122に接続する。吸引チャネル150、キャビティ152、吸引チャン
バ160および吸引ポート122はすべて流体連通しているため、吸引源を取り付けるこ
とによって、それらの領域の各々を通って延びる真空が生成され、吸引管106の遠位部
分144の遠位先端部186およびスライド部材108の吸引ベント154に吸引力を提
供する。実施者が、吸引ベント154をブロックすると、例えばフィンガーポスト155
に指を置いて吸引ベント154を塞ぐと、遠位先端部186における吸引力が増加する。
遠位先端部186に接近した流体は、吸引力により、装置100を通って吸引チャネル1
50内に、そして吸引ポート122または吸引ライン126の近位端の外に吸引される。
実施者が、例えば吸引ベント154を閉塞しないように指を離すことにより、吸引ベント
154からブロックを取り除くと、遠位先端部186における吸引力は減少することとな
る。
【0031】
また、実施者は、洗浄流体で解剖学的構造物を洗浄し、同時に、解剖学的構造物からの
洗浄流体のすべてまたは一部を吸引することもできる。これは、解剖学的構造が洗浄流体
で「溢れる」のを防ぐのに有用である。洗浄流体の流路(例えば、潅注ルーメン124お
よび/または噴霧ポート136)および吸引廃液の戻り流路(例えば、吸引チャネル15
0)は、装置の吸引速度がその潅注速度の0.1~10倍となるように、すなわち、完全
に係合したときに、装置の吸引速度が装置の潅注速度の0.1~10倍となるように、サ
イズ設定することができる。更なる実施形態では、装置の吸引速度が装置の潅注速度の1
~4倍である。幾つかの実施形態では、装置の吸引速度が潅注速度の2倍である。更なる
実施形態では、装置の吸引速度が潅注速度の2~4倍である。
【0032】
実施者は、ハンドル102の本体116のスロット170に沿ってフィンガポスト15
5を用いて、指でスライド部材108を平行移動させることにより、遠位先端部186の
位置を潅注管104に沿って平行移動または移動させることもできる。
【0033】
図1は、スライド部材108がスロット170内で近位側に完全に引き込まれた状態ま
たは引っ張られた状態にある装置100を示している。図15は、スライド部材108が
スロット170内で完全に近位側に引っ張られたときの遠位先端部186の相対的位置を
示す潅注管104の遠位部分の斜視図を示している。遠位先端部186(およびそこに与
えられる吸引力)は、潅注ポート136の位置から完全に引き戻されている。マーカ12
8は完全に露出されている。この位置では、潅注ポート136から放出される流体の大部
分が、遠位先端部186で直ちに吸い上げられるのではなく、所望の解剖学的位置に接触
して洗浄するのに比較的長い時間を有する。
【0034】
図16は、スライド部材108の遠位プロング158がハンドル102の遠位キャップ
114上の前方停止部156と接触する位置までスライド部材108がスロット170内
で遠位側に延びている状態または前進している状態にある装置100を示している。この
位置では、遠位先端部186が、潅注ポート136またはその直ぐ近傍の位置まで潅注管
104に沿って遠位側に前進している。このとき、吸引管106の遠位部分144はマー
カ128の上にある。この位置において、遠位先端部186は、指が吸引ベント154上
に保持されたときに潅注ポート136から放出される洗浄流体の大部分を迅速に吸い上げ
て、患者の解剖学的構造内の潅注スポットで望ましくない量の洗浄流体が蓄積する可能性
を低減するために、使用することができる。
【0035】
図16に示す位置に前進すると、スライド部材108の遠位プロング158は、ハンド
ル102の遠位キャップ114の前方停止部156に押し付けられる。実施者がしっかり
と押すと、遠位プロング158を前方停止部156を超えて押して、吸引管106の遠位
先端部186を潅注管104に沿ってさらに遠位側に前進させることができる。図17
、スライド部材108が遠位方向に完全に前進させられ、その結果、スライド部材108
の遠位プロング158が遠位キャップ114の前方停止部156を超えて押されて、吸引
管106の遠位先端部186が潅注管104の球状部材142を遠位側に超えて、または
この球状部材に隣接して配置されているときの装置100を示している。このようにして
、前方停止部156および遠位プロング158は、実施者に触覚的な「力のフィードバッ
ク」を提供し、その結果、実施者は、吸引管106の遠位先端部186が潅注ポート13
6にまたはその近位側に隣接して位置しているか否か、あるいは、潅注管104のすべて
が吸引管106内に収容されるまで吸引管106が前進しているか否かを容易に知ること
ができる。図17に示す完全に前進した位置では、潅注管104の全体が吸引管106内
に収容されている。この位置では、指が吸引ベント154上に保持されて装置100が単
純な吸引装置と同様に使用されるときに、潅注ポート136から放出された洗浄流体の大
部分またはすべてが吸引管106の遠位先端部186によって吸引される。
【0036】
幾つかの実施形態では、本発明の潅注吸引装置は、図5に示す実施形態のポート136
を介して洗浄流体を送るのみで達成されるよりも多くの前向き噴霧パターンを提供する潅
注噴霧チャネルを含む。例えば、図18は、噴霧チャネル1800の形態の複数の前向き
噴霧ポートを含む潅注管1804の遠位部分1830の一部の拡大斜視図を示している。
3つの噴霧チャネル1800が、球状部材1842を貫通して延び、それらが球状部材に
より全体的に規定されている。噴霧チャネル1800は、潅注管1804内に延びる潅注
ルーメンと流体連通している。
【0037】
図19は、別の実施形態の拡大斜視図を示しており、この実施形態では、球状部材19
42が完全な球体ではなく、噴霧チャネル1900の形態の噴霧ポートを規定するために
、その外面の1またはそれ以上の部分が取り除かれたか、あるいは除去されている。図1
8に示す噴霧チャネル1800と同様に、図19に示す噴霧チャネル1900は、洗浄流
体用の流路を形成するが、その流路は、球状部材1942を完全に貫通する代わりに、単
に球状部材1942の外面に沿って通過する。このため、噴霧チャネル1900の一部の
みが球状部材1942によって規定される。噴霧チャネル1900は、洗浄流体のスプレ
ーを潅注管1904の遠位端の側部から吹き出すのに有用である。
【0038】
幾つかの実施形態では、本発明の潅注吸引装置が、i)図5に示すように、潅注管10
4の遠位部分に形成された噴霧ポートと、ii)図18に示すように、非外傷性先端部を
通過する噴霧ポートと、iii)図19に示す球状部材2042の外面に沿って通過する
噴霧チャネル1900のような非外傷性先端部材の外面に沿って通過する噴霧ポートとの
うちの2つまたは3つを含む。本発明の潅注吸引装置は、2またはそれ以上の異なる種類
の噴霧ポートを単一の装置に含むことによって、洗浄流体の所望の噴霧パターンを提供す
ることができる。
【0039】
以下は、本発明の幾つかの非限定的な列挙された実施例である。
【0040】
実施例1:本発明は、潅注吸引装置を含み、この潅注吸引装置が、
潅注ルーメンを規定する潅注管と、
潅注管にスライド可能に取り付けられた吸引管であって、潅注管の外壁および当該吸引
管の内壁とが協働して吸引チャネルを規定する、吸引管と、
潅注管の近位部分に固定されたハンドルと、
吸引管に固定され、かつハンドル内にスライド可能に取り付けられたスライド部材とを
備え、
スライド部材をハンドルに沿って遠位方向に前進させることにより、潅注管の長さに沿
って吸引管が前進する。
【0041】
実施例2:実施例1の発明において、潅注管の遠位部分が、人間の指によって通常生成
される力の下で展性である。
【0042】
実施例3:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、吸引管が、潅注管上に
同軸に取り付けられている。
【0043】
実施例4:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、潅注管が、0.508
ミリメートル~2.032ミリメートルの外径を有する。
【0044】
実施例5:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、潅注管が、0.254
ミリメートル~1.27ミリメートルの内径を有する。
【0045】
実施例6:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、吸引管が、1.14ミ
リメートル~4.57ミリメートルの内径を有する。
【0046】
実施例7:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、吸引管が、1.52ミ
リメートル~5.05ミリメートルの外径を有する。
【0047】
実施例8:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、吸引チャネルが、0.
645平方ミリメートル~約81.3平方ミリメートルの環状断面積を有する。
【0048】
実施例9:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、潅注管の遠位部分が、
潅注ルーメンと流体連通する複数の噴霧ポートを規定する。
【0049】
実施例10:実施例9の発明において、噴霧ポートのうちの少なくとも幾つかが、涙滴
形状を有する。
【0050】
実施例11:実施例9または10の発明において、噴霧ポートのうちの少なくとも幾つ
かが、潅注管の遠位端に固定された非外傷性先端部によって少なくとも部分的に規定され
る。
【0051】
実施例12:実施例11の発明において、非外傷性先端部が、潅注管の遠位端に固定さ
れた球状部材を含む。
【0052】
実施例13:実施例11の発明において、非外傷性先端部が、潅注管の遠位端に固定さ
れた円錐形部材を含む。
【0053】
実施例14:実施例11の発明において、非外傷性先端部が、非外傷性先端部を完全に
貫通する噴霧ポート、非外傷性先端部の表面に沿って延びる噴霧ポート、潅注管を通って
延びる噴霧ポートまたはそれらの任意の組合せを規定する。
【0054】
実施例15:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、装置が、ハンドルに
対するスライド部材の遠位方向の前進に抵抗するように構成された前方停止部を含み、ス
ライド部材を前方停止部の位置まで前進させることにより、潅注管の遠位先端部の近位側
に隣接して吸引管の遠位先端部を配置する。
【0055】
実施例16:実施例15の発明において、前方停止部を越えて遠位側にスライド部材を
前進させることにより、吸引管の遠位先端部を、潅注管の遠位先端部を越えて遠位側に押
す。
【0056】
実施例17:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、吸引管が、潅注管上
に同軸に取り付けられている。
【0057】
実施例18:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、スライド部材が吸引
ベントを規定し、吸引ベントが吸引チャンネルと流体連通する。
【0058】
実施例19:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、ハンドルが、ハンド
ルの近位端に固定された近位キャップを含む。
【0059】
実施例20:列挙された上記実施例の何れか一つの発明において、ハンドルが、吸引チ
ャネルの近位端と流体連通する吸引チャンバを規定し、ハンドルが、吸引ポートおよび潅
注ポートを含み、吸引ポートが吸引チャンバと流体連通し、潅注ポートが潅注ルーメンと
流体連通している。
【0060】
実施例21:本発明は、患者の体腔または内腔を洗浄する方法を含み、この方法が、
列挙された上記実施例の何れかに係る潅注吸引装置を提供するステップと、
患者の鼻孔を介して患者の体腔または内腔内の所望の位置に潅注管を導くステップと、
装置の潅注管を介して流体を導くか、または装置の吸引管を介して流体を吸引するステ
ップとを含む。
【0061】
実施例22:実施例21の発明において、潅注管を患者の鼻孔に通す前に潅注ルーメン
の遠位部分を形作るステップをさらに含む。
【0062】
実施例23:実施例21または22の何れか一つの発明において、所望の位置またはそ
の近傍から流体を吸引管で吸引するステップをさらに含む。
【0063】
実施例24:実施例21乃至23の何れか一つの発明において、潅注管を所望の位置に
導く間に、ハンドルを片手で保持するステップをさらに含む。
【0064】
実施例25:実施例21乃至24の何れか一つの発明において、手の指を使用してハン
ドルを掴み、スライド部材をハンドルに沿って遠位側に押すステップをさらに含む。
【0065】
実施例26:実施例25の発明において、潅注管が所望の位置に導かれた後に、指でス
ライド部材をハンドルに沿って遠位側に押すステップをさらに含む。
【0066】
これらの非限定的な実施例の各々は、独立なものとすることができ、またはその他の実
施例の1またはそれ以上との様々な組合せまたは配列で組み合わせることができる。
【0067】
上記発明の詳細な説明は、その一部を形成する添付の図面の参照を含む。図面は、例示
として、本発明を実施することができる特定の実施形態を示している。それらの実施形態
は、本明細書において「実施例」とも呼ばれる。そのような実施例は、図示または記載さ
れたものに加えて、構成要素を含むことができる。しかしながら、本発明者等は、図示ま
たは記載された構成要素のみが提供される実施例も企図している。さらに、本発明者等は
、特定の実施例(またはそれらの1またはそれ以上の態様)に関して、または図示または
記載されたその他の実施例(またはそれらの1またはそれ以上の態様)に関して、図示ま
たは記載されたそれら構成要素の任意の組合せまたは配列(またはそれらの1またはそれ
以上の態様)を使用する実施例も企図している。
【0068】
本明細書と引用により本明細書に援用される文書との間の使用に一貫性がない場合には
、本明細書の使用がコントロールする。
【0069】
本明細書では、「a」または「an」という用語は、「少なくとも1つ」または「1ま
たはそれ以上」のその他の例または使用とは無関係に、特許文書において一般的であるよ
うに、1つまたは複数のものを含むものとして使用される。本明細書において、「または
」という用語は、特に明記しない限り、非排他的なまたはを指しており、「AまたはB」
は、「Bは無いがA」、「Aは無いがB」、「AおよびB」を含むものとする。本明細書
では、用語「including(含む)」および「in which」は、それぞれの
用語「comprising(備える)」および「wherein」の平易な英語の同義
語として使用される。また、以下の特許請求の範囲において、「including(含
む)」および「comprising(備える)」という用語は、制限を有するものでは
なく、すなわち、特許請求の範囲においてそのような用語の後に列挙されたものに加えて
構成要素を含むシステム、装置、物品、組成物、製剤またはプロセスが依然として特許請
求の範囲内に含まれるとみなされる。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1」
、「第2」および「第3」などの用語は単にラベルとして使用され、それらの対象に数値
的な要件を課すことを意図するものではない。なお、本明細書において明示的に開示され
る任意の数値範囲は、明示的に開示された範囲の任意の部分を、そのような部分範囲も明
示的に開示されているかのように含むことを理解されたい。例えば、1~96.7の開示
範囲は、1~80.3の範囲、2~76の範囲、または1~96.7の範囲に含まれるそ
の他の数値範囲も含むものとする。
【0070】
本明細書に記載の方法の実施例は、少なくとも部分的に機械またはコンピュータで実施
することができる。幾つかの実施例は、上述した実施例で説明した方法を実行するように
電子デバイスを構成すべく動作可能な命令でコード化されたコンピュータ可読媒体または
機械可読媒体を含むことができる。そのような方法の実行は、マイクロコード、アセンブ
リ言語コード、高水準言語コードなどのコードを含むことができる。そのようなコードは
、様々な方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コ
ンピュータプログラム製品の一部を形成することができる。さらに、一実施例では、コー
ドは、実行中またはその他の時のように、1またはそれ以上の揮発性、非一時的、または
不揮発性の有形のコンピュータ可読媒体に有形に格納することができる。これらの有形の
コンピュータ可読媒体の例には、ハードディスク、着脱可能な磁気ディスク、着脱可能な
光ディスク(例えば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセッ
ト、メモリカードまたはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリ
ーメモリ(ROM)などが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0071】
上述した説明は例示的なものであり、限定的なものではない。例えば、上記実施例(ま
たはその1またはそれ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用されるものであってもよ
い。上述した説明を検討することにより、例えば当業者は、その他の実施形態を使用する
こともできる。要約書は、技術的開示の性質を迅速に確認できるようにするために提供さ
れている。それは、請求項の範囲または意味を解釈または制限するために使用されること
はないという理解のもとで提出されたものである。また、発明の詳細な説明では、開示を
効率化するために様々な特徴がまとめられている場合がある。これは、請求項に記載され
ていない開示された特徴が何れかの請求項に不可欠であることを意図していると解釈され
るべきではない。むしろ、本発明の主題は、開示された特定の実施形態のすべての特徴よ
りも少ない中にある。したがって、添付の特許請求の範囲は、実施例または実施形態とし
ての発明の詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独立しており、
そのような実施形態は、様々な組合せまたは配列で互いに組み合わされることが企図され
る。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に与えられる均等物の全範囲とともに、特許
請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0072】
本発明の実施形態を示して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことが可能である。このため、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物を除き、限定されるべきではない。
出願当初の特許請求の範囲に記載されていた各請求項の記載は、以下の通りであった。
請求項1:
潅注吸引装置であって、
潅注ルーメンを規定する潅注管と、
前記潅注管上にスライド可能に取り付けられた吸引管であって、前記潅注管の外壁および当該吸引管の内壁とが協働して吸引チャネルを規定する、吸引管と、
前記潅注管の近位部分に固定されたハンドルと、
前記吸引管に固定され、かつ前記ハンドル内にスライド可能に取り付けられたスライド部材とを備え、
前記スライド部材を前記ハンドルに沿って遠位側に前進させることにより、前記潅注管の長さに沿って前記吸引管が前進することを特徴とする装置。
請求項2:
請求項1に記載の装置において、
前記潅注管の遠位部分が、人間の指によって通常生成される力の下で展性であることを特徴とする装置。
請求項3:
請求項1に記載の装置において、
前記吸引管が、前記潅注管上に同軸に取り付けられていることを特徴とする装置。
請求項4:
請求項1に記載の装置において、
前記潅注管が、0.508ミリメートル~2.032ミリメートルの外径を有することを特徴とする装置。
請求項5:
請求項1に記載の装置において、
前記潅注管が、0.254ミリメートル~1.27ミリメートルの内径を有することを特徴とする装置。
請求項6:
請求項1に記載の装置において、
前記吸引管が、1.14ミリメートル~4.57ミリメートルの内径を有することを特徴とする装置。
請求項7:
請求項1に記載の装置において、
前記吸引管が、1.52ミリメートル~5.05ミリメートルの外径を有することを特徴とする装置。
請求項8:
請求項1に記載の装置において、
前記吸引チャネルが、0.645平方ミリメートル~約81.3平方ミリメートルの環状断面積を有することを特徴とする装置。
請求項9:
請求項1に記載の装置において、
前記潅注管の遠位部分が、前記潅注ルーメンと流体連通する複数の噴霧ポートを規定することを特徴とする装置。
請求項10:
請求項9に記載の装置において、
前記噴霧ポートのうちの少なくとも幾つかが、涙滴形状を有することを特徴とする装置。
請求項11:
請求項10に記載の装置において、
前記噴霧ポートのうちの少なくとも幾つかが、前記潅注管の遠位端に固定された非外傷性先端部によって少なくとも部分的に規定されることを特徴とする装置。
請求項12:
請求項11に記載の装置において、
前記非外傷性先端部が、前記潅注管の遠位端に固定された球状部材を含むことを特徴とする装置。
請求項13:
請求項11に記載の装置において、
前記非外傷性先端部が、前記潅注管の遠位端に固定された円錐形部材を含むことを特徴とする装置。
請求項14:
請求項1に記載の装置において、
当該装置が、前記ハンドルに対する前記スライド部材の遠位側への前進に抵抗するように構成された前方停止部を含み、
前記スライド部材を前記前方停止部の位置まで前進させることにより、前記潅注管の遠位先端部の近位側に隣接して前記吸引管の遠位先端部を配置することを特徴とする装置。
請求項15:
請求項14に記載の装置において、
前記前方停止部を越えて遠位側に前記スライド部材を前進させることにより、前記吸引管の遠位先端部を、前記潅注管の遠位先端部を越えて遠位側に押すことを特徴とする装置。
請求項16:
請求項1に記載の装置において、
前記吸引管が、前記潅注管上に同軸に取り付けられていることを特徴とする装置。
請求項17:
請求項1に記載の装置において、
前記スライド部材が吸引ベントを規定し、前記吸引ベントが前記吸引チャンネルと流体連通することを特徴とする装置。
請求項18:
請求項1に記載の装置において、
前記ハンドルが、前記ハンドルの近位端に固定された近位キャップを含むことを特徴とする装置。
請求項19:
請求項1に記載の装置において、
前記ハンドルが、前記吸引チャネルの近位端と流体連通する吸引チャンバを規定し、前記ハンドルが、吸引ポートおよび潅注ポートを含み、前記吸引ポートが前記吸引チャンバと流体連通し、前記潅注ポートが前記潅注ルーメンと流体連通していることを特徴とする装置。
請求項20:
患者の体腔または内腔を洗浄する方法であって、
請求項1に記載の潅注吸引装置を提供するステップと、
患者の鼻孔を介して患者の体腔または内腔内の所望の位置に前記潅注管を導くステップと、
前記装置の潅注管を介して流体を導くか、または前記装置の吸引管を介して流体を吸引するステップとを含むことを特徴とする方法。
請求項21:
請求項20に記載の方法において、
流体が前記装置の吸引管を介して吸引される間に、流体が前記潅注管を通って導かれることを特徴とする方法。
請求項22:
請求項20に記載の方法において、
前記スライド部材が吸引ベントを規定し、前記吸引ベントが前記吸引管と流体連通し、
吸引が、前記吸引ベントを指で覆うことによって行われることを特徴とする方法。
請求項23:
請求項20に記載の方法において、
前記スライド部材を遠位方向に移動させることによって、前記吸引管を前記潅注管に対して前進させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
請求項24:
請求項23に記載の方法において、
前記吸引管を前記潅注管の遠位端のある位置またはそれを超える位置に前進させることを特徴とする方法。
請求項25:
請求項24に記載の方法において、
前記吸引管を前記潅注管の遠位端のある位置またはそれを超える位置に前進させる前に、ユーザに対して触覚フィードバックを提供することを特徴とする方法。
請求項26:
請求項20に記載の方法において、
前記スライド部材を近位方向に移動させることによって、前記潅注管に対して前記吸引管を後退させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
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