(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光学的整合性を有する透明導電薄膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20240123BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240123BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240123BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240123BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01B5/14 A
G06F3/041 490
G06F3/041 495
G06F3/041 660
G06F3/041 640
G06F3/044 120
H01B13/00 503B
G09F9/30 330
G09F9/30 349Z
(21)【出願番号】P 2022506038
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2020112487
(87)【国際公開番号】W WO2021018315
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】522037676
【氏名又は名称】ジアンス・ナノメィダ・オプトエレクトロニクス・テクノロジー・カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU NANOMEIDA OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】リウ,テンジャオ
(72)【発明者】
【氏名】スゥー,ヤンピン
(72)【発明者】
【氏名】リィー,シィン
(72)【発明者】
【氏名】フゥー,ユァン
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-094033(JP,A)
【文献】米国特許第09969893(US,B2)
【文献】特開2006-070300(JP,A)
【文献】特開2015-040316(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005204(WO,A1)
【文献】特開2015-008132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
G06F 3/041
G06F 3/044
H01B 13/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的整合性を有する透明導電薄膜であって、基板、光学的整合性を有する導電層及び保護層を備え、
前記基板は、剛性基板及び/又は可撓性基板を含み、
前記光学的整合性を有する導電層は、導電領域を備え、前記導電領域は金属ナノワイヤA及びナノ粒子Bを含み、前記金属ナノワイヤAが導電領域に互いに積層又は架橋される網を形成し、前記ナノ粒子Bが前記導電領域に均一に分布し、前記ナノ粒子Bが前記金属ナノワイヤAの導電率に与える影響は50%より小さく、前記光学的整合性を有する導電層は、前記導電領域に金属ナノワイヤAをエッチングして得た非導電領域を備え、前記非導電領域は前記ナノ粒子Bを含み、前記ナノ粒子Bが前記非導電領域に均一に分布し、前記非導電領域のナノ粒子B同士が連続した導電通路を形成せず、前記ナノ粒子Bの気化温度が前記金属ナノワイヤAの気化温度より高く、前記金属ナノワイヤAの腐食速度が前記ナノ粒子Bの腐食速度より大きく、前記ナノ粒子Bの屈折率が前記金属ナノワイヤAの屈折率
との違いを補償し、
前記保護層は、前記光学的整合性を有する導電層の薄膜の表面に位置し、表面抵抗値が変化せず、前記保護層はキレート作用を有するデンドリマーを含み、前記デンドリマーは金属イオンを捕獲してキレート錯体を形成することにより金属イオンのマイグレーションを抑制する役割を有し、前記保護層は該保護層に分散しているナノ粒子Bを更に含み、前記ナノ粒子Bは導電領域の色度を低減する役割を有する、ことを特徴とする光学的整合性を有する透明導電薄膜。
【請求項2】
前記光学的整合性を有する透明導電薄膜は、前記導電領域に均一に分布する前記ナノ粒子Bの一部を媒介物として金属ナノワイヤAが溶接されている、ことを特徴とする請求項1に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜。
【請求項3】
前記剛性基板は、ガラス、PMMA有機ガラス、PCポリカーボネート又はアクリル樹脂のうちの1つを含み、前記可撓性基板は、ポリエステル、ポリエチレン、シクロアルケンポリマー、無色ポリイミド、ポリプロピレン又はポリエチレンのうちの1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜。
【請求項4】
前記保護層の成分は、キレート作用を有するデンドリマーを含み、前記デンドリマーは、樹枝状ポリアミドアミン、カルボキシル基変性樹枝状ポリアミドアミン及びヒドロキシ基変性樹枝状ポリアミドアミンのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜。
【請求項5】
前記光学的整合性を有する透明導電薄膜は、更に機能層を備え、前記機能層は、透過率向上層、反射低減層、アンチグレア層、光学的適合層、電気的適合層及び硬化層のうちの1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜。
【請求項6】
前記透過率向上層の成分は、フッ素含有ポリマーを含み、前記透過率向上層は、前記基板と前記導電層との間、前記基板の裏面又は前記保護層の上方に位置し、
前記反射低減層の成分は、フッ素含有ポリマー又はパーフルオロポリマーを含み、前記反射低減層は、前記基板と前記導電層との間、前記基板の裏面又は前記保護層の上方に位置し、
前記アンチグレア層の成分は、フッ素系化合物、シロキサン系化合物、酸化物をドープしたナノ材料又は透明有機高分子のうちの1つ又は複数を含み、前記アンチグレア層は、前記基板の裏面に位置し、
前記光学的適合層は、スパッタリング、蒸着又は塗布方式で形成された、金属層又はセラミック層であり、前記光学的適合層の成分は、金属、合金、酸化物ナノ材料及びそれらの組み合わせを含み、前記光学的適合層は、前記導電層と前記基板との間に位置し、
前記電気的適合層は、面状導電層又は静電層であり、前記面状導電層又は前記静電層は、PEDOT:PSS、透明導電金属酸化物、グラフェン、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックのうちの1つ又は複数を含み、前記電気的適合層は、前記保護層の上方又は下方に位置する、ことを特徴とする請求項
5に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜。
【請求項7】
前記ナノ粒子Bの形態は、球状、コアシェル、棒、ヘテロ接合又はそれらの任意の組み合わせを含み、前記ナノ粒子Bの材質は、金属、合金、酸化物、半導体、導体、絶縁体又はそれらの任意の組み合わせを含み、前記ナノ粒子Bの寸法は、200nm以下であり、前記金属ナノワイヤAの構造は、コアシェルナノワイヤ、中空ナノワイヤ及び中実ナノワイヤのうちの1つ又は複数を含み、前記金属ナノワイヤAは、直径が5~200nmであり、長さと直径の比が100以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜の製造方法であって、
基板に導電性インクを塗布して導電領域を形成し、前記導電性インクがナノ粒子B及び金属ナノワイヤAを含むステップS1と、
ステップS1において形成された導電領域をエッチングして前記金属ナノワイヤAを気化又は腐食するが、前記ナノ粒子Bをエッチング箇所に残して非導電領域を形成するステップS2と、
ステップS1において形成された導電領域とステップS2において形成された非導電領域とにより光学的整合性を有する導電層を構成し、導電層上にデンドリマー含有の保護層組成液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成するステップS3と、又はそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記導電性インク組成は、0.01~0.5%の金属ナノ粒子B、0.01~5%の塗膜形成剤、0.002~1%のレベリング剤、0.05~5%の金属ナノワイヤA、及び70~99%の導電性インク溶媒を含む、ことを特徴とする請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記保護層組成液の成分は、0.001%~0.05%のデンドリマー、0.07%~8%のモノマー、0.05%~1.5%の開始剤、0.1%~5%のプレポリマーを含み、前記モノマーは、HEA、TPGDA、HPA、DAA、TMPTA、TMPTMA、EO-TMPTA、エポキシプロピレンエステル、EO-CHA、DPGDA、IBOA、PGDA、PDDA、TEGDA、HDDA及びBDDAのうちの1つ又は複数を含み、前記開始剤は、α-ヒドロキシケトン系開始剤、アシルホスフィン酸化物及びケトン系開始剤のうちの1つ又は複数を含み、前記プレポリマーは、脂肪族ウレタンアクリレートプレポリマー、芳香族ウレタンアクリレートプレポリマー、ポリウレタンメタクリレート、フタル酸ジアリルプレポリマー、エポキシアクリレート及びエポキシメタクリレートのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項
8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記保護層組成液の成分は、更に0.003%~0.3%の錯化剤、0.005%~0.4%の安定剤及び0.003%~0.5%の酸化防止剤のうちの1つ又は複数を含み、
前記錯化剤は金属イオンを錯化し、前記錯化剤は、アミノカルボキシ錯化剤、8-オキシキノリン、ジチゾン、2,2’-ジピリジル(bipy)、フェナントロリン(C
12H
8N
2)、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸アンモニウム及び無機錯化剤ポリリン酸塩のうちの1つ又は複数を含み、前記安定剤は、BASF紫外線吸収剤C81、Chimassorb 944、Tinuvin 770DF、Tinuvin 900、Tinuvin 123、Tinuvin 326、Tinuvin 234、Tinuvin 765、Tinuvin 791FB、Tinuvin 384-2、Tinuvin 144、UV70及びUV90のうちの1つ又は複数を含み、前記酸化防止剤は、SONGNOX 4150、Irganox 1098、Irganox 1076、Irganox 1010及びIrganox 168のうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項
10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップS1は、更に第1の最適化処理を含み、前記第1の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用され、前記第1の最適化処理がコロナ処理及びプラズマ処理を含み、前記ステップS2は、更に第2の最適化処理を含み、前記第2の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用され、前記ステップS3は、第2の最適化処理を含み、前記第2の最適化処理が該ステップのすべての段階に適用され、前記第2の最適化処理が、赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理及び光子焼結処理を含む、ことを特徴とする請求項
8に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の光学的整合性を有する透明導電薄膜の応用であって、
前記応用は、剛性又は可撓性タッチパネル、剛性又は可撓性ディスプレイ、携帯電話アンテナ回路、赤外線光学イメージング素子、光電センサ、電磁波シールド、スマートウィンドウ、スマートタブレット及び/又は太陽電池の面での応用である、ことを特徴とする光学的整合性を有する透明導電薄膜の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年07月29日に出願した中国特許出願第201910689170.8号に基づく優先権を主張し、この出願のすべての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
[発明の分野]
本発明は、透明導電薄膜の技術分野に関し、具体的に光学的整合性を有する透明導電薄膜に関する。電子業界、例えば、剛性又は可撓性タッチパネル、剛性又は可撓性ディスプレイ、携帯電話アンテナ回路、赤外線光学イメージング素子、光電センサ、電磁波シールド、スマートウィンドウ、スマートタブレット、太陽電池などに適用できる。
【背景技術】
【0002】
透明導電薄膜とは、導電性を有するだけでなく、可視光範囲内に高い光透過率も有する薄膜を指し、剛性又は可撓性タッチパネル、剛性又は可撓性ディスプレイ、携帯電話アンテナ回路、赤外線光学イメージング素子、光電センサ、電磁波シールド、スマートウィンドウ、スマートタブレット、太陽電池などに利用可能性が高い。
【0003】
酸化インジウムスズ(ITO)は現在よく使用されている材料であり、そのバンドギャップが大きく、紫外線のみを吸収し、可視光を吸収しないため、「透明」と称される。ITO薄膜はマグネトロンスパッタリングプロセスを用いて製造されてなり、優れた化学安定性、熱安定性を有するが、加工プロセスが複雑で、コストが高く、シート抵抗が高く、屈曲変形しにくく、壊れやすく裂けやすいなどの欠点を有する。
【0004】
近年、様々なタッチ製品の登場に伴い、可撓性は徐々にタッチ電子業界の発展動向となり、透明導電薄膜は表示及びタッチに必要な重要な材料である。従来の剛性タッチ製品が使用するITO薄膜はそのITO層が壊れやすく裂けやすく、柔軟性が乏しく、可撓性パネルを製造できず、ITOの可撓性タッチの面での応用が制限され、従って、早急に高いたわみ性を有する透明導電薄膜を見つけて、可撓性タッチ電子業界のニーズを満足しなければならない。
【0005】
金属ナノワイヤ透明導電薄膜は、その光電性能が優れ、たわみ性が高く、強度が高く、価格が低く、製造プロセスが簡単であるなどの利点を有するため、ITOのまれな代替材料となり、その中で、銀ナノワイヤ透明導電薄膜は特に目立っている。ところが、金属ナノワイヤ透明導電薄膜がタッチ分野に使用されることは依然として、後処理エッチング跡が明らかで、光安定性が低く、金属材料が腐食されやすく、耐用年数が短く、金属イオンがマイグレーションするなどの問題があり、これらはいずれも業界内に早急な解決の待たれる難題である。特に、2019年の折り畳み可能なタッチパネルの登場に伴い、可撓性を有する透明導電薄膜のエッチング跡、耐用年数、屈曲性は、折り畳み携帯電話を大規模に普及する主要な制約要素となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光学的整合性を有する透明導電薄膜を提供し、金属ナノワイヤ導電薄膜の後処理エッチング跡が明らかで、光安定性が低く、金属材料が腐食されやすく、金属イオンがマイグレーションするという問題を解決し、様々なバックエンドアプリケーションニーズを満足することを目的とする。本発明は、方法が簡単で、実行しやすく、得られた薄膜が優れた光電性能及び優れた光安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光学的整合性を有する透明導電薄膜を提供し、少なくとも基板、光学的整合性を有する導電層及び保護層、又はそれらの任意の組み合わせを備え、
前記基板は、剛性及び/又は可撓性基板を含み、
前記光学的整合性を有する導電層は、少なくとも導電領域を備え、前記導電領域は、金属ナノワイヤAとナノ粒子Bとからなる導電領域を備え、金属ナノワイヤAが該導電領域に互いに積層又は架橋される網を形成するとともに、ナノ粒子Bが導電領域に均一に分布し、金属ナノワイヤAの導電性へのナノ粒子Bの影響が50%より小さく、前記光学的整合性を有する導電層は導電領域に金属ナノワイヤAをエッチングして得た非導電領域を備え、前記非導電領域はナノ粒子Bを含み、ナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布しているが、該非導電領域にナノ粒子B同士が連続した導電通路を形成せず、
前記保護層は、光学的整合性を有する導電層の薄膜の表面に位置し、前記保護層はキレート作用を有するデンドリマー(Dendrimer)を含む。
【0008】
好ましくは、前記保護層は、キレート作用を有するデンドリマーを含み、金属イオンを捕獲してキレート錯体を形成することにより金属イオンのマイグレーションを抑制することができる。選択肢として、前記保護層は該保護層に均一に分散しているナノ粒子Bを含み、前記ナノ粒子Bは前記金属ナノワイヤAの屈折率に適合可能である。
好ましくは、前記剛性基板は、ガラス、PMMA有機ガラス、PCポリカーボネート又はアクリル樹脂のうちの1つを含み、前記可撓性基板は、ポリエステル、ポリエチレン、シクロアルケンポリマー、無色ポリイミド、ポリプロピレン又はポリエチレンのうちの1つを含む。
【0009】
好ましくは、前記光学的整合性を有する透明導電薄膜は機能層を備えてもよく、前記機能層は、透過率向上層、反射低減層、アンチグレア層、光学的適合層、電気的適合層、硬化層のうちの1つ又はそれらの組み合わせを含む。
【0010】
好ましくは、前記ナノ粒子Bはその気化温度が金属ナノワイヤAより高く、前記金属ナノワイヤAはその腐食速度がナノ粒子Bの腐食速度より大きく、前記ナノ粒子Bは金属ナノワイヤAの屈折率に適合する。導電領域及び非導電領域の光学的透過率、反射率、ヘーズ(曇り度)、色度などのパラメータの違いを2%より小さくし、光学的整合性を形成する。好ましくは、前記ナノ粒子Bの形態は、球状、コアシェル、棒、ヘテロ接合又はそれらの任意の組み合わせを含み、前記ナノ粒子Bの材質は、金属、合金、酸化物、半導体、導体、絶縁体又はそれらの任意の組み合わせを含み、前記ナノ粒子Bの寸法は、200nm以下であり、より好ましくは20nm以下且つ5nm以上であり、前記ナノ粒子Bは導電膜の色度を調整する役割を有する。
【0011】
好ましくは、前記金属ナノワイヤAの構造は、コアシェルナノワイヤ、中空ナノワイヤ及び中実ナノワイヤのうちの1つ又は複数を含み、前記金属ナノワイヤAの直径が5~200nmであり、長さと直径の比が100以上であり、前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることが好ましい。
【0012】
好ましくは、前記保護層の成分はキレート作用を有するデンドリマーを含み、前記デンドリマーは、樹枝状ポリアミドアミン、カルボキシル基変性樹枝状ポリアミドアミン及びヒドロキシ基変性樹枝状ポリアミドアミンのうちの1つ又は複数を含む。
【0013】
好ましくは、前記透過率向上層の成分はフッ素含有ポリマーを含み、前記透過率向上層は基板と導電層との間又は基板の裏面又は保護層の上方に位置する。
前記反射低減層の成分はフッ素含有ポリマー又はパーフルオロポリマーを含み、前記反射低減層は基板と導電層との間又は基板の裏面又は保護層の上方に位置する。
前記アンチグレア層の成分は、フッ素系化合物、シロキサン系化合物、酸化物をドープしたナノ材料又は透明有機高分子のうちの1つ又は複数を含み、前記アンチグレア層は基板の裏面に位置する。
前記光学的適合層は、スパッタリング、蒸着又は塗布方式で形成された金属層又はセラミック層であり、前記光学的適合層の成分は、金属、合金、酸化物ナノ材料及びそれらの組み合わせを含む。光学的適合層は導電層と基板との間に位置する。
前記電気的適合層は面状導電層又は静電層であり、前記面状導電層又は静電層は、PEDOT:PSS、透明導電金属酸化物、グラフェン、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックのうちの1つ又は複数を含み、前記電気的適合層は保護層の上方又は下方に位置する。
【0014】
また、本発明は光学的整合性を有する透明導電薄膜の製造方法を提供し、
基板に導電性インクを塗布して導電領域を形成し、前記導電性インクがナノ粒子B及び金属ナノワイヤAを含むステップS1と、
ステップS1において形成された導電領域にエッチングして金属ナノワイヤAを気化又は腐食するが、ナノ粒子Bをエッチング箇所に残して非導電領域を形成するステップS2と、
ステップS1において形成された導電領域とステップS2において形成された非導電領域とにより光学的整合性を有する導電層を構成し、導電層上にデンドリマー含有の保護層組成液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成するステップS3と、又はそれらの組み合わせを含み、
好ましくは、前記導電性インク組成は、0.01~0.5%の金属ナノ粒子B、0.01%~5%の塗膜形成剤、0.002~1%のレベリング剤、0.05~5%の金属ナノワイヤA、及び70~99%の導電性インク溶媒を含む。
好ましくは、保護層組成液の成分は、0.001%~0.05%のデンドリマー、0.07%~8%のモノマー、0.05%~1.5%の開始剤、及び0.1%~5%のプレポリマーを含み、前記モノマーは、HEA、TPGDA、HPA、DAA、TMPTA、TMPTMA、EO-TMPTA、エポキシプロピレンエステル、EO-CHA、DPGDA、IBOA、PGDA、PDDA、TEGDA、HDDA及びBDDAのうちの1つ又は複数を含み、前記開始剤は、α-ヒドロキシケトン系開始剤、アシルホスフィン酸化物及びケトン系開始剤のうちの1つ又は複数を含み、前記プレポリマーは、脂肪族ウレタンアクリレートプレポリマー、芳香族ウレタンアクリレートプレポリマー、ポリウレタンメタクリレート、フタル酸ジアリルプレポリマー、エポキシアクリレート及びエポキシメタクリレートのうちの1つ又は複数を含む。
【0015】
好ましくは、前記保護層組成液の成分は更に0.03%~5%の酢酸酪酸セルロース及び60%~99%の保護層組成液溶媒を含み、前記保護層組成液中の溶媒は、イソプロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ジアセトンアルコール、アセトン及び酢酸ブチルのうちの1つ又は複数を含む。
【0016】
好ましくは、金属イオンのマイグレーションにより導電領域が故障することを防止するために、前記保護層組成液の成分は更に0.003%~0.3%の錯化剤、0.005%~0.4%の安定剤及び0.003%~0.5%の酸化防止剤のうちの1つ又は複数を含み、
前記錯化剤は金属イオンを錯化し、そのマイグレーションを防止し、前記錯化剤は、アミノカルボキシ錯化剤、8-オキシキノリン、ジチゾン、2,2’-ジピリジル(bipy)、フェナントロリン(C12H8N2)、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸アンモニウム及び無機錯化剤ポリリン酸塩のうちの1つ又は複数を含む。前記安定剤は金属結晶プラズマの共鳴を防止することができ、前記安定剤は、BASF紫外線吸収剤C81、Chimassorb 944、Tinuvin 770DF、Tinuvin 900、Tinuvin 123、Tinuvin 326、Tinuvin 234、Tinuvin 765、Tinuvin 791FB、Tinuvin 384-2、Tinuvin 144、UV70及びUV90のうちの1つ又は複数を含む。前記酸化防止剤は遊離基により導電膜が故障することを防止することができ、前記酸化防止剤は、SONGNOX 4150、Irganox 1098、Irganox 1076、Irganox 1010及びIrganox168のうちの1つ又は複数を含む。
【0017】
好ましくは、前記ステップS1は更に第1の最適化処理を含み、前記第1の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用され、前記第1の最適化処理がコロナ処理又はプラズマ処理を含む。
【0018】
好ましくは、前記ステップS2は更に第2の最適化処理を含み、前記第2の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用され、ステップS3は第2の最適化処理を含み、前記第2の最適化処理が該ステップのすべての段階に適用され、前記第2の最適化処理が赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理又は光子焼結処理を含む。
【0019】
好ましくは、前記方法において、更に機能層を製造することを含み、機能層を基板と導電層との間、又は基板の裏面、又は保護層の上方に置く。
【0020】
また、本発明は、前記光学的整合性を有する透明導電薄膜の応用を提供し、前記応用は、剛性又は可撓性タッチパネル、剛性又は可撓性ディスプレイ、携帯電話アンテナ回路、赤外線光学イメージング素子、光電センサ、電磁波シールド、スマートウィンドウ、スマートタブレット及び/又は太陽電池などの面での応用である。
【0021】
例えば、静電容量方式剛性又は可撓性タッチパネルの応用において、前記光学的整合性を有する透明導電薄膜は導電領域と非導電領域とからなり、構造はX、Yセンシング回路が同一導電面に位置する構造(例えば
図16a参照)、X、Yセンシング回路がそれぞれ異なる導電膜に位置する構造(例えば
図16b参照)、及びX、Yセンシング回路が同一導電膜の上下両面に位置する構造(例えば
図16c)を含むが、それらに限らない。20はエッチング後の導電領域であり、22はエッチング後のナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域であり、21は貼合接着剤である。
図16a、
図16b及び
図16cは静電容量方式剛性又は可撓性タッチパネルの応用において、導電層をエッチングした後、ナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布している構造模式図であり、その比較として、
図17a及び
図17cは静電容量方式剛性又は可撓性タッチパネルの応用において、導電層をエッチングした後、非導電領域に残留物がない模式図である。23は非導電領域であり、エッチング跡が明らかであり、
図17bでは、非導電領域に貼合接着剤21を充填し、24は貼合接着剤が充填されている非導電領域である。菱形エッチングパターンを例とし、
図18は前記X、Yセンシング回路が同一導電面に位置する構造の平面及び側面拡大模式図であり(
図16a及び
図17aは前記構造の更なる説明である)、1は基板であり、27はY方向導電領域であり、Y方向導電領域がエッチングされていない25により互いに接続され、29は非導電領域であり、30は絶縁層であり、26はX方向の導電接続層であり、28はX方向導電領域であり、X方向のジャンパ接続を実現し、このように、Y方向及びX方向それぞれが独立回路を形成し、静電容量方式のタッチ位置特定を実現する。
【0022】
好ましくは、前記エッチングはレーザエッチング、ウェットエッチング又はイエローライトエッチングであり、レーザエッチングの電力、エッチング速度などのパラメータ、又はウェットエッチングの腐食溝の循環流量、腐食溝の温度、洗浄溝のスプレー量、風乾箇所でのエアナイフの周波数及び流量などのパラメータを調整し、又はイエローライトエッチングの露出エネルギー、露出GAP値、露出プラットフォームの温度などのパラメータを調整することにより、エッチング回路の幅を決定し、エッチング回路上の銀ナノワイヤAが気化又は腐食して互いに接続しないナノ粒子Bを残して、非導電領域を形成し、エッチングされていない領域は導電領域として銀ナノワイヤA及びナノ粒子Bを含む。
【0023】
更に解釈して、本発明に係る光学的整合性を有する透明導電薄膜は少なくとも下記の部分又はそれらの任意の組み合わせを備え、
a)基板であって、光学的透明性及び/又は曇り度を有する剛性及び/又は可撓性基材であるもの、
b)光学的整合性を有する導電層であって、該光学的整合性を有する導電層は少なくとも金属ナノワイヤAとナノ粒子Bとからなる導電領域を備え、金属ナノワイヤAが該領域に互いに積層又は架橋される網を形成するとともに、ナノ粒子Bが導電領域に均一に分布し、金属ナノワイヤAの導電性へのナノ粒子Bの影響が50%より小さく、又は、光学的整合性を有する導電層は導電領域にエッチングして得た非導電領域を備え、該非導電領域がナノ粒子Bからなり、ナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布しているが、該非導電領域にナノ粒子B同士が連続した導電通路を形成せず、前記ナノ粒子Bはその気化温度が金属ナノワイヤAより高く、前記金属ナノワイヤAはその腐食速度がナノ粒子Bの腐食速度より大きく、前記ナノ粒子Bは金属ナノワイヤAの屈折率に適合可能であり、又は屈折率に近接し、導電領域及び非導電領域の光学的透過率、反射率、曇り度、色度などのパラメータの違いを2%より小さくし、光学的整合性を形成するもの、
c)保護層であって、該保護層は光学的整合性を有する導電層上に位置し、保護層はキレート作用を有するデンドリマー(Dendrimer)を含み、金属イオンを捕獲してキレート錯体を形成することにより金属イオンのマイグレーションを抑制することができ、保護層はナノ粒子Bを含み、ナノ粒子Bは前記金属ナノワイヤAの屈折率に適合可能であり、又は屈折率に近接し、導電領域の色度を低減するもの、並びに、
d)機能層であって、該機能層は透過率向上層、反射低減層、アンチグレア層、光学的適合層、電気的適合層、硬化層のうちの1つ又はそれらの組み合わせである。
前記基板とは、その上に直接に金属ナノワイヤを塗布する材料、又はその上に機能層を塗布してからその後の操作を行う基材を指し、本明細書に記載の基板は剛性又は可撓性である。剛性基板は、ガラス、PMMA有機ガラス、PCポリカーボネート、アクリル樹脂などを含むが、それらに限らない。可撓性基板は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリナフタル酸エステル及びポリカーボネート)、ポリエチレン(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセトアルデヒド、ポリアクリレートなど)、シクロアルケンポリマー(COP)、無色ポリイミド(CPI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などを含むが、それらに限らない。
【0024】
前記光学的整合性を有する導電層は、少なくとも金属ナノワイヤAとナノ粒子Bとからなる導電領域を備え、金属ナノワイヤAが該領域に互いに積層又は架橋される網を形成するとともに、ナノ粒子Bが導電領域に均一に分布し、金属ナノワイヤAの導電性へのナノ粒子Bの影響が50%より小さく、
図13にはエッチング前の光学的整合性を有する導電層を示し、その比較として、
図12にはナノ粒子Bを含有しない導電層のミクロ写真を示す。ナノ粒子Bは金属ナノワイヤAの屈折率に適合可能であり、エッチング後に金属ナノワイヤAとナノ粒子Bとからなる導電領域及び互いに接続しないナノ粒子Bからなる非導電領域は、その光学的透過率、反射率、曇り度、色度などのパラメータの違いを2%より小さくし、光学的整合性を形成する。
【0025】
光学的整合性を有する導電層構造はエッチングして得た非導電領域を備える。ナノ粒子Bはその気化温度が金属ナノワイヤAより高く、金属ナノワイヤAはその腐食速度がナノ粒子Bの腐食速度より大きく、従って、エッチング条件を適切に制御することにより、金属ナノワイヤAがエッチングされ、ナノ粒子Bが残されて非導電領域が形成され、ナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布しているが、該非導電領域にナノ粒子B同士が連続した導電通路を形成しない。例えば、銀ナノワイヤと金ナノ粒子とからなる導電層については、金の気化温度が2807℃であり、銀の気化温度が2212℃であり、金及び銀の気化温度に比較的大きな違いが存在するため、レーザエッチング処理を行うとき、レーザエネルギーを適切に調整することにより銀のみが大量に気化されて金ナノ粒子が残されるようにすることができ、これにより、形成された非導電領域は大量の金ナノ粒子を含有する。そして、一般的に、基板は高分子材料からなるが、導電層は金属材料であり、金属材料及び高分子材料は屈折率及び減光係数などの光学パラメータの違いが大きく、エッチング後に直接に基板材料を露出すると、より大きな反射率の違いが生じてしまい、裸眼でエッチング跡が見える。そして、ナノ粒子Bを導入することにより、エッチングして形成された非導電領域にナノ粒子Bを残させることができ、それにより導電領域の屈折率との違いを補償し、従って、非導電領域及び導電領域の光学的透過率、反射率、曇り度、色度などの違いをなくして、光学的整合性を形成することができる(
図7及び
図14に示される)。
【0026】
ナノ粒子Bの形態は球状、コアシェル、棒、ヘテロ接合又はそれらの任意の組み合わせであり、
図4に示すように、その材質は金属、合金、半導体、導体、金属酸化物又はそれらの組み合わせであり、その寸法は200nm以下であり、最適化されたその寸法は20nm以下である。コアシェルの形態は一般的にナノ材料の減光係数に大きく左右されるので、いくつかの重要な光学薄膜の設計に潜在的な応用価値がある。また、ナノ粒子の寸法効果により、異なる寸法のナノ粒子の色は大きく変化し、例えば、白金、パラジウムのナノ粒子は一般的に10nmの場合に黒色であるが、金のナノ粒子は一般的に10nm程度の場合に紫黒色であり、ナノ粒子Bの添加は光学的整合性を有する導電層の色度の調整にも使用できる。
【0027】
金属ナノワイヤAについて、その構造はコアシェル、中空、線状構造を含み、その直径は200nm以下であり、長さと直径の比は100以上であり、光学的整合性を有する導電層の導電ユニットである。導電層の導電率は、単一金属ナノワイヤAの導電率、導電層における金属ナノワイヤAの密度及び金属ナノワイヤA同士の接続性によって決定される。他の条件が一定である場合、各本の金属ナノワイヤの導電率を制御することにより導電面の導電性能を制御し、同じ単一金属ナノワイヤAの導電率条件において、導電層における金属ナノワイヤAの密度がより小さく、ナノワイヤA同士が導電通路を形成できず、全体の表面抵抗がより高く又は導電せず、単一金属ナノワイヤAの導電率及び金属ナノワイヤAの分布密度が一定であり、金属ナノワイヤA同士の相互接続が悪く、導電面全体の抵抗がより高くひいては絶縁されている。導電層の光学性能は金属ナノワイヤAの直径及び長さと直径の比、金属ナノワイヤAの均一性によって決定される。
図8は金属ナノワイヤの分布密度が低い薄膜表面のマイクログラムであり、金属ナノワイヤAは導電層に分布密度が低く、導電層の表面抵抗は高い。金属ナノワイヤAの直径が小さければ小さいほど、長さと直径の比が大きくなる場合、その光学的透過率が高くなり、曇り度が低くなり、実際の製造過程において、金属ナノワイヤAは導電層に凝集しやすくひいては結合し、導電層の光学的透過率の低減、曇り度及び色度の増加を引き起こしてしまう。銀は電気の良導体であり、その抵抗率が低く、導電性が高く、製造プロセスが簡単であり、金属ナノワイヤAが銀ナノワイヤであることが好ましく、
図15は銀ナノワイヤの走査型電子顕微鏡写真であり、その銀ナノワイヤの直径が25nm程度である。
【0028】
前記保護層については、デンドリマー(Dendrimer)は樹枝状ポリアミドアミン(PAMAM)又はカルボキシル基変性樹枝状ポリアミドアミン(PAMAM)即ちPAMAM-COOH、又はヒドロキシ基変性樹枝状ポリアミドアミン(PAMAM)即ちPAMAM-OHである。デンドリマーPAMAM又は変性PAMAMは大量のキレート基を含有し、導電層における酸化により生成された金属イオンを捕獲してキレート錯体を形成し、金属イオンのマイグレーションを防止することができる。好適な銀ナノワイヤを例として、銀イオンのマイグレーションはメカニズム的に、電解、イオンマイグレーション及び電着の3つのステップと見なされてもよく、銀マイグレーションメカニズムについては、以下のように解釈する。
a)湿った環境において、水分子が外部電界において電解される。
H2O→H++OH- (1)
b)銀が電界及び水酸化物イオンの作用によって解離して銀イオンを生成する。
Ag→Ag+ (2)
c)銀イオンが高電位から低電位へマイグレーションし、OH-銀イオンと高電位・低電位の接続境界で接触する。
Ag++OH-→AgOH↓ (3)
d)AgOHが安定せず、黒色Ag2O沈殿物に分解する。
2AgOH→Ag2O+H2O (4)
保護層におけるデンドリマーPAMAM又は変性PAMAMの内部にアミノ基を含有し、それらの提供する孤立電子対を持つ窒素原子は空軌道を有する銀イオンと強く配位錯化してキレート錯体を形成し、銀イオンのマイグレーションを防止することができ、その反応式(5)は、以下のようになる。
nAg++PAMAM→nAg+/PAMAM (5)
保護層組成液は本分野で汎用されているモノマー、即ちHEA、TPGDA、HPA、DAA、TMPTA、TMPTMA、EO-TMPTA、エポキシプロピレンエステル、EO-CHA、DPGDA、IBOA、PGDA、PDDA、TEGDA、HDDA、BDDA及びそれらの組み合わせを含む。保護層組成液は本分野で汎用されている開始剤、即ちα-ヒドロキシケトン系開始剤(BASFのIRGACURE 184、DAROCUR 1173、IRGACURE 125、IRGACURE 500、IRGACURE 2595など)、アシルホスフィン酸化物(BASF的IRGACURE TPO、IRGACURE TPO-Lなど)及びケトン系開始剤などを含む。
【0029】
他の実施形態では、保護層組成液は本分野で汎用されているプレポリマー、即ち脂肪族ウレタンアクリレートプレポリマー、芳香族ウレタンアクリレートプレポリマー、ポリウレタンメタクリレート、フタル酸ジアリルプレポリマー、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレートなどを含む。
【0030】
保護層組成は他の錯化剤、即ちアミノカルボキシ錯化剤(ニトリロ三酢酸即ちNTA、エチレンジアミン四酢酸即ちEDTAなどを含む)、8-オキシキノリン、ジチゾン、2,2’-ジピリジル(bipy)、フェナントロリン(C12H8N2)、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸アンモニウム及び無機錯化剤ポリリン酸塩などを含む。前記保護層組成は、紫外線を吸収して金属結晶プラズマの共鳴を防止できる安定剤を含み、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物、ヒンダードアミン系化合物、置換アクリロニトリル系化合物などを含む。前記保護層組成は、酸化防止剤を含み、チオジカルボン酸エステル系、ヒドロキシルアミン系化合物、ビスフェノールモノアクリレート系化合物などを含む。
【0031】
保護層は同様にナノ粒子Bを含んでもよく、ナノ粒子Bは導電層における金属ナノワイヤAの屈折率に適合可能であり、保護層におけるナノ粒子Bはエッチング後の非導電領域の屈折率の低減を補い、光学的整合性を有する透明導電薄膜の形成を補助する。ナノ粒子Bは金属、半導体、導体、金属酸化物又はそれらの組み合わせを含み、その形態構造がコアシェル構造、ヘテロ接合構造、合金又はそれらの組み合わせであり、その気化温度が金属ナノワイヤAより高く、腐食速度が金属ナノワイヤAの腐食速度より小さい。
【0032】
光硬化保護層を塗布した後に導電膜の様々な性能を強化することができ、即ち、光透過率の向上が0.5%より大きく、光学的曇り度の低減が0.2%より大きく、導電層の金属ナノワイヤの酸化及び金属イオンのマイグレーションを阻止し、表面抵抗値が変化せず、電気的安定性の向上が5%より大きく、導電層のアンチエイジング(光安定、熱安定、湿度安定)時間を少なくとも240hにし、塗布後の導電面の硬度が1Hより大きく、付着力が5Bより大きく、表面張力が28mN/mより大きい。
【0033】
機能層については、上述のように、基板材料は光学的整合性を有する透明導電薄膜に一定の光学的及び力学的性質を持たせ、機能層を導入することにより透明導電薄膜の特定の性能を強化する。
【0034】
透過率向上層とは、透明導電薄膜の可視光領域における光透過率を向上できる機能層を指し、その作用メカニズムは、透過光、反射光及び他の方向の光を改めて分配させ、入射光の比率をできる限り増加させることである。透過率向上層は、基板と導電層との間又は基板の裏面又は保護層の上方に位置してもよい。
【0035】
反射低減層とは、可視光の透明導電薄膜の表面における反射損失を低減できる機能層を指し、反射低減層は同時に入射増加作用を有し、従って、反射低減層は基板と導電層との間又は基板の裏面又は保護層の上方に位置してもよい。反射低減層の材料は本分野で汎用されている材料、例えばフッ素含有ポリマー(下記の参考文献[1]及び[2]を参照)、パーフルオロポリマー(下記の参考文献[3]を参照)などである。
【0036】
アンチグレア層とは、表面に一定の凹凸構造を形成することにより乱反射を増加させ、有害な反射を減少させる機能層を指し、アンチグレア層の主な機能成分はフッ素系化合物、シロキサン系化合物(下記の参考文献[4]を参照)、酸化物をドープしたナノ材料(下記の参考文献[5]を参照)、透明有機高分子(下記の参考文献[6]を参照)などを含む。いくつかの実施形態では、アンチグレア層は同様に光学的なゴースト除去に役立ち、例えば、本発明の実施例は曇り度12.5~15%のアンチグレア層付きのベースフィルムを基板として用い、銀ナノワイヤを塗布した後に曇り度の増加がわずかであり、総曇り度が13.5~15%のみである。更にエッチング処理を行った後、エッチング領域及び非エッチング領域の曇り度の違いが極めて小さく、同様に部分的なゴースト除去目的を実現することができる。
図10に示すように、17はアンチグレア層付きのベースフィルム導電層をエッチングした後のナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域であり、18はアンチグレア層付きのベースフィルムである。
【0037】
光学的適合層とは、スパッタリング、蒸着、塗布などの方式で形成された、金属層又はセラミック層を指し、基板及び光学的整合性を有する導電層に屈折率補償を形成させ、エッチング後の導電領域及び非導電領域の反射率の差分を減少させ、視覚的コントラストを減少させる。光学的適合層材料は金属、合金、酸化物ナノ材料及びそれらの組み合わせを含む。光学的適合層は一般的に導電層と基板との間に位置し、その構造図は
図3に示される。本発明に記載のナノ粒子Bは同様に独立して光学的適合層5とされてもよく、その構造は
図11に示され、19はナノ粒子光学的適合層である。
【0038】
電気的適合層は面状導電層又は静電層であり、電気的適合層の主な材料は導電高分子(例えばPEDOT:PSS)、透明導電金属酸化物、グラフェン、2次元導電材料、カーボンナノチューブ及びそれらの任意の組み合わせを含む。面状導電層は保護層の上方に位置し、電極を網状導電から全面導電に変換させる。全面的に導電する必要があるいくつかの製品応用において、電気的適合層が必要なもの、例えばPDLC、エレクトロクロミズムなどである。
【0039】
硬化層とは、スクラッチ又は摩耗を防止し、表面硬度を増加できる追加の表面保護層を指す。硬化層の材料は結晶材料、金属酸化物、シリコン、ビニルトリエトキシシラン(VTES)、3-チオールプロピルトリエトキシシラン(MPTES)、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをドープしたエポキシ樹脂など及びそれらの組み合わせである。硬化層は基板の裏面に位置し、且つ同時に導電面と基板との間又は導電層上に位置してもよい。
【0040】
本発明の技術案は、
0.01~0.5%の金属ナノ粒子B、0.01%~5%の高粘度セルロース、0.002~1%のレベリング剤、0.05~5%の金属ナノワイヤA、及び70~99%の導電性インクを含む溶媒を均一に混合して、金属ナノワイヤ導電性インクを形成するステップS1と、
基板に上記導電性インクを塗布して導電層を形成するステップS2と、
導電層をレーザエッチング又はウェットエッチングして金属ナノワイヤAを気化又は腐食するが、ナノ粒子Bをエッチング箇所に残して非導電領域を形成し、ナノ粒子Bの屈折率の補償作用、光学補償作用によって、非導電領域及び導電領域に光学的整合性を有する導電層を構成させるステップS3と、
導電層又は光学的整合性を有する導電層上にデンドリマー含有の保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成するステップS4と、を含み、
前記ステップS2は、選択肢として、コロナ処理及びプラズマ処理を含む第1の最適化処理を含み、該第1の最適化処理が前記ステップS2のいかなる段階に適用され、前記ステップS3及びS4は、選択肢として、赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理を含む第2の最適化処理を含み、前記第2の最適化処理が前記ステップS3及びS4のいかなる段階に適用される。
また、他の実施形態は、全体的に導電性を有する薄膜を提供する。ステップS1においては、基板に金属ナノワイヤ導電性インクを塗布して導電層を形成し、なお、選択肢として、ステップS1はコロナ処理及びプラズマ処理を含む第1の最適化処理を含み、第1の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用され、ステップS2においては、導電層の表面にデンドリマー含有の保護層組成液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成し、なお、選択肢として、ステップS2は赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理を含む第2の最適化処理を含み、前記第2の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用され、ステップS3においては、保護層の表面に緻密な面状導電層を塗布し、均一な複合透明導電薄膜を形成する。前記面状導電層はその誘電率が金属ナノワイヤ導電層の誘電率に適合可能であり、前記面状導電層は高い耐食性を有し、酸、アルカリ、塩化物、H2Sガスなどを含む。
【0041】
また、他の実施形態は光学的整合性を有する光学的適合層付きの透明導電薄膜を提供する。ステップS1においては、スパッタリング、蒸着、塗布などの方式で基板に金属層又はセラミック層を形成し、ステップS2においては、基板に金属ナノワイヤ導電性インクを塗布して導電層を形成し、なお、選択肢として、ステップS2はコロナ処理及びプラズマ処理を含む第1の最適化処理を含み、第1の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用され、ステップS3においては、導電層をレーザエッチング又はウェットエッチングして金属ナノワイヤAを気化又は腐食するが、ナノ粒子Bをエッチング箇所に残して非導電領域を形成し、ナノ粒子Bの屈折率の補償作用、光学補償作用によって、非導電領域及び導電領域に光学的整合性を有する導電層を構成させ、ステップS4においては、導電層又は光学的整合性を有する導電層上にデンドリマー含有の保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。前記ステップS3及びS4は、選択肢として、赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理を含む第2の最適化処理を含み、前記第2の最適化処理が該ステップのいかなる段階に適用される。前記光学的適合層は基板及び光学的整合性を有する導電層に屈折率補償を形成させ、エッチング後の導電領域及び非導電領域の反射率の差分を減少させ、視覚的コントラストを減少させる。
【0042】
金属ナノワイヤ導電性インクについて、ナノ粒子Bは、金属、半導体、導体、金属酸化物又はそれらの組み合わせを含み、その形態構造はコアシェル構造、ヘテロ接合構造、合金又はそれらの組み合わせである。
図4はナノ粒子Bの形態構造模式図であり、6は球状ナノ粒子Bであり、7はコアシェル構造のナノ粒子Bのコアであり、8はコアシェル構造のナノ粒子Bのシェルであり、9は立方状ナノ粒子Bであり、10と11はそれぞれヘテロ接合の2つの構成部分である。赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理などの方式を用い、適切な強度及び処理時間を選択して、ナノ粒子Bを溶融して二次成長させ、媒介物として金属ナノワイヤAを溶接する。ナノ粒子Bは金属ナノワイヤAが互いに積層又は架橋してなる導電領域に均一に分布し、金属ナノワイヤAの導電性へのナノ粒子Bの影響が50%より小さいため、その屈折率は金属ナノワイヤAの屈折率を相殺することができ、これにより、光学的整合性を有する導電層の色度を低減する。ナノ粒子Bは気化温度が金属ナノワイヤAより高く、且つ金属ナノワイヤAはその酸腐食速度がナノ粒子Bの酸腐食速度の10倍より大きく、異なるエッチング方式を用いて光学的整合性を有する導電層塗膜を後処理し、ナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布しているが、それらが連続した導電通路を形成せず、ナノ粒子Bは非導電領域の反射率を補い、導電領域における金属ナノワイヤA及びナノ粒子Bによる反射率に近接し、光学的整合性を有する導電膜のエッチング跡を減少させる。
【0043】
高粘度セルロースは、塗膜形成剤、例えば、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などとされる。レベリング剤は、例えば、ビックケミー社製のBYK-301、BYK-310、BYK-321、BYK-331、BYK-333、BYK-345、BYK-346、BYK-388、ダウコーニング社製のDOW CORNING DC-57、DOW CORNING DC-3、ディスコ社製のTEGO Glide 410、TEGO Glide 450、TEGO Flow 370などである。他の助剤を適当に加えることにより、インクの膜形成性能を調整することができ、他の助剤は、消泡剤、湿潤剤、付着力促進剤、接着剤などを含む。金属ナノワイヤAはその直径が200nm以下であり、長さと直径の比が100以上であり、銀ナノワイヤであることが好ましい。導電性インク溶媒は、水、エチルアルコール及びイソプロパノールのうちの1つ又は複数を含む。
【0044】
第1の最適化処理方式は、コロナ処理及びプラズマ処理などを含み、その目的は塗布基板の表面張力を変化させ、塗布外観の性能を改善することにある。第2の最適化処理方式は、赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理などの方式を含み、その目的は瞬時高電力により金属ナノワイヤA同士を溶接させることにある。
【0045】
保護層組成液について、保護層は、光学的整合性を有する導電薄膜の表面に位置し、保護層はキレート作用を有するデンドリマー(Dendrimer)を含み、金属ナノワイヤAにおける酸化により生成された金属イオンを捕獲してキレート錯体を形成することにより金属イオンのマイグレーションを抑制することができ、デンドリマーは、樹枝状ポリアミドアミン(PAMAM)若しくはカルボキシル基変性樹枝状ポリアミドアミン(PAMAM)、又はヒドロキシ基変性樹枝状ポリアミドアミン(PAMAM)である。保護層はナノ粒子Bを含み、ナノ粒子Bは導電層における金属ナノワイヤAの屈折率に適合可能であり、保護層におけるナノ粒子Bはエッチング後の非導電領域の屈折率を補い、光学的整合性を有する透明導電薄膜の形成を補助する。ナノ粒子Bは、金属、半導体、導体、金属酸化物又はそれらの組み合わせを含み、その形態構造がコアシェル構造、ヘテロ接合構造、合金又はそれらの組み合わせであり、その気化温度が金属ナノワイヤAより高く、腐食速度が金属ナノワイヤAの腐食速度より小さい。
【0046】
保護層組成液は、本分野で汎用されているモノマー、機能性助剤及び開始剤を含む。
【0047】
また、他の実施形態では、保護層組成液は、本分野で汎用されているプレポリマーを含む。
【0048】
保護層組成液は、他の添加剤を含み、他の錯化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含む。
【発明の効果】
【0049】
本発明は光学的整合性を有する透明導電薄膜を提供し、該導電薄膜の利点は、デュアルナノ材料体系を導電層として用い、ナノ材料の異なる実際性能により、導電薄膜がその後の回路化過程においてあるナノ材料を選択的に残すようにすることができるように設計され、これにより、導電層に屈折率、曇り度、反射率などの光学パラメータの適合を実現させることにある。
【0050】
本発明の実施形態はコストが低く、プロセスが簡単で実施されやすく、本発明により得られた光学的整合性を有する導電薄膜は、優れた光電性能を有し、金属ナノワイヤの導電薄膜の後処理エッチング跡が明らかで、光安定性が低く、金属ナノ材料が腐食されやすく、金属イオンがマイグレーションするという問題を解決することができ、異なるバックエンドアプリケーションニーズを満足する。より重要なのは、本発明はデュアルナノ材料体系の導電薄膜構造及び直交エッチング解決手段を画期的に提案し、プリンテッドエレクトロニクス分野においてより多くの光電薄膜構造の設計に広く応用できる。
【0051】
[参考文献]
[1]:Vasilopoulou M,Douvas AM,Palilis LC,Bayiati P,Alexandropoulos D,Stathopoulos NA,et al.,Highly transparent partially fluorinated methacrylate polymers for optical waveguides[J].Microelectronic Engineering 2009,86:1142-1145.
[2]:Teng H,Liu W,Koike Y,Okamoto Y,Alternating copolymerization of bis(hexafluoroisopropyl)fumarate with styrene and vinyl pentafluorobenzoate:Transparent and low refractive index polymers[J].Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry 2011,49:2834-2838.
[3]:Fluorinated Surfaces,Coatings,and Films,Copyright,Foreword[J].2001,787:i-iii.
[4]:南野浩正、福西隆志、小島健敬、上田浩一.アンチグレア型塗料組成物、アンチグレアフィルム及びその製造方法.中国特許出願公開第101246224号明細書(CN101246224A).
[5]:豆帆、朱洪維、車紅衛、竇錦浩.ナノ塗膜材料及びその製造方法.中国特許出願公開第1298906号明細書(CN1298906A).
[6]:坂井彰、山原基裕.アンチグレアフィルム及びその製造方法、偏光部材及び該偏光部材を用いる表示装置、並びに内部拡散フィルム.中国特許出願公開第1414401号明細書(CN1414401A).
【図面の簡単な説明】
【0052】
図面における同じ番号は同様又は類似のコンポーネントを代表し、理解しやすくするために、図面において多くのコンポーネントは無限に拡大され、図面における具体的な形状は実際のコンポーネントの形状情報に関連せず、識別及び説明しやすくするためのものに過ぎない。無論、当業者は創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到しうる。
【
図1】
図1は本発明に係る全面的に導電できる光学的整合性を有する透明導電薄膜の構造模式図である。
【
図2】
図2は本発明に係る緻密な面状導電層を有する全体的に導電性を有する複合透明導電薄膜の構造模式図である。
【
図3】
図3は本発明に係る光学的適合層を有する光学的整合性を有する透明導電薄膜の構造模式図である。
【
図4】
図4は本発明に係る導電性インク及び保護層組成液に添加したナノ粒子Bの構造模式図である。
【
図5】
図5は本発明に係るナノ粒子Bにより金属ナノワイヤAを溶接していない全面的に導電できる光学的整合性を有する透明導電薄膜の表面の構造模式図である。
【
図6】
図6a及び
図6bは本発明に係るナノ粒子Bを溶接する前後の光学的整合性を有する透明導電薄膜の表面の構造模式図である。
【
図7】
図7は本発明に係るエッチング後にナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布し、金属ナノワイヤA及びナノ粒子Bが導電領域に均一に分布している模式図である。
【
図8】
図8は本発明に係る金属ナノワイヤの分布密度が低い薄膜表面のマイクログラムである。
【
図9】
図9a及び
図9bは本発明に係るスパッタリングによる光学的適合層の光線反射率への影響の模式図である。
【
図10】
図10は本発明に係るアンチグレア層付きのベースフィルムの光線反射率への影響の模式図である。
【
図11】
図11は本発明に係るナノ粒子Bが独立して光学的適合層とされる構造模式図である。
【
図12】
図12は本発明に係る導電性インクがナノ粒子Bを含まずに得られた全面的に導電できる透明導電薄膜の表面のマイクログラムである。
【
図13】
図13は本発明に係る導電性インクがナノ粒子Bを含んで得られた全面的に導電できる透明導電薄膜の表面のマイクログラムである。
【
図14】
図14は本発明に係るエッチング後にナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布し、金属ナノワイヤA及びナノ粒子Bが導電領域に均一に分布している透明導電薄膜の表面のミクロ写真である。
【
図15】
図15は本発明に係る金属ナノワイヤAの好適な銀ナノワイヤのミクロ写真である。
【
図16】
図16a、
図16b及び
図16cは静電容量方式剛性又は可撓性タッチパネルの応用において、導電層をエッチングした後、ナノ粒子Bが非導電領域に均一に分布している構造模式図である。
【
図17】
図17a及び
図17cは静電容量方式剛性又は可撓性タッチパネルの応用において、導電層をエッチングした後、非導電領域に残留物がない模式図であり、
図17bは静電容量方式剛性又は可撓性タッチパネルの応用において、X、Yセンシング回路がそれぞれ異なる導電膜に位置する構造を示す図である。
【
図18】
図18は前記X、Yセンシング回路が同一導電面に位置する構造の平面及び側面拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に本発明の実施例を列挙し、当業者であれば理解されるように、列挙した実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、本発明を具体的に制限するものと見なされるべきではない。
【0054】
[実施例1]
ステップS1においては、0.01%のナノ粒子B、塗膜形成剤としての0.2%の高粘度セルロースHPMC、0.01%のレベリング剤DOW CORNING DC-57、1%の金属ナノワイヤA及び98.78%の溶媒(水、エチルアルコール及びイソプロパノールを含む)を均一に混合して、導電性インクを形成する。ステップS2においては、スリット塗布方式で基板に導電性インクを塗布して導電層を形成する。ステップS3においては、0.02%のデンドリマーポリアミドアミン(PAMAM)、0.5%のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、0.2%の1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、0.1%のフェノキシエチルアクリレート(PHEA)、0.15%の紫外線吸収剤BASF Tinuvin 234、0.09%の酢酸酪酸セルロース(CAB)、0.08%の酸化防止剤Irganox 1098、8%のジアセトンアルコール、83.51%のイソプロパノール、7%のエチルアルコール、0.3%の光開始剤DAROCUR 1173及び0.05%のIRGACURE2595を均一に混合して、保護層組成液体を形成する。ステップS4においては、導電層の表面に保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。最終的に形成された光学的整合性を有する透明導電薄膜は
図1及び
図13に示される。
図1に示すように、光学的整合性を有する透明導電薄膜の構造は、基板1、金属ナノワイヤ導電層2及び保護層3を備える。なお、選択肢として、基板は、透過率向上層、反射低減層、アンチグレア層、硬化層のうちの1層又は複数層を含んでもよく、機能層を含まなくてもよい。
図13は光学的整合性を有する透明導電薄膜の表面のミクロ写真であり、金属ナノワイヤA及びナノ粒子Bは導電層に均一に分布している。
【0055】
[実施例2]
ステップS1においては、0.01%のナノ粒子B、塗膜形成剤としての0.2%の高粘度セルロースCMC、0.01%のレベリング剤DOW CORNING DC-57、1.5%の金属ナノワイヤA及び98.28%の溶媒(水、エチルアルコール及びイソプロパノールを含む)を均一に混合して、導電性インクを形成する。ステップS2においては、スリット塗布方式で基板に導電性インクを塗布して導電層を形成する。ステップS3においては、0.01%のデンドリマーヒドロキシ基変性樹枝状ポリアミドアミン(PAMAM-OH)、0.01%のアミノカルボキシ錯化剤即ちエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.8%のトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、0.2%の1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、0.1%のフェノキシエチルアクリレート(PHEA)、0.15%の紫外線吸収剤BASF Tinuvin 234、0.3%の酢酸酪酸セルロース(CAB)、0.08%の酸化防止剤Irganox 1010、8%のジアセトンアルコール、83%のイソプロパノール、7%のエチルアルコール、0.3%の開始剤DAROCUR 1173及び0.05%のIRGACURE 2595を均一に混合して、保護層組成液体を形成する。ステップS4においては、導電層の表面に保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。最終的に形成された光学的整合性を有する透明導電薄膜は
図1及び
図13に示される。
【0056】
[実施例3]
ステップS1においては、0.5%のナノ粒子B、塗膜形成剤としての0.8%の高粘度セルロースHPMC、0.1%のレベリング剤TEGO Glide 410、1%の金属ナノワイヤA及び97.6%の溶媒(水、エチルアルコール及びイソプロパノールを含む)を均一に混合して、導電性インクを形成する。ステップS2においては、スリット塗布方式で基板に導電性インクを塗布して導電層を形成し、
図5に示すように、金属ナノワイヤA12及びナノ粒子B13は基板の表面に均一に分布して面状導電網を形成する。ステップS3においては、導電層に対して赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理を行い、後処理パラメータ、例えば、周波数、エネルギー、処理時間を調整することにより、導電層におけるナノ粒子Bの一部を溶融して二次成長させ、媒介物として金属ナノワイヤAを溶接し、
図6a及び
図6bに示される。
図6aに示すように、ナノ粒子Bを溶接する前に、金属ナノワイヤA及びナノ粒子Bは導電層に均一に分布し、
図6bに示すように、一定の条件において、ナノ粒子Bは溶融して二次成長することにより、近接又は直接当接する金属ナノワイヤAを溶接する。ステップS4においては、0.005%のデンドリマーポリアミドアミン(PAMAM)、1%のエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(EO-TMPTA)、0.5%のイソボルニルアクリレート(IBOA)、0.2%のフェノキシエチルアクリレート(PHEA)、0.12%の紫外線吸収剤BASF Tinuvin 144、0.09%の酢酸酪酸セルロース(CAB)、0.1%の酸化防止剤SONGNOX 4150、8%のジアセトンアルコール、82.585%のイソプロパノール、7%のエチルアルコール、0.4%の開始剤IRGACURE 184を均一に混合して、保護層組成液体を形成する。ステップS5においては、導電層の表面に保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。最終的に光学的整合性を有する透明導電薄膜を形成する。
【0057】
[実施例4]
ステップS1においては、0.5%のナノ粒子B、塗膜形成剤としての0.8%の高粘度セルロースHPMC、0.1%のレベリング剤BYK-345、1%の金属ナノワイヤA及び97.6%の溶媒(水、エチルアルコール及びイソプロパノールを含む)を均一に混合して、導電性インクを形成する。ステップS2においては、スリット塗布方式で基板に導電性インクを塗布して導電層を形成する。ステップS3においては、導電層をレーザエッチングして金属ナノワイヤAを気化又は腐食するが、ナノ粒子Bをエッチング箇所に残して非導電領域を形成する。ステップS4においては、0.04%のデンドリマーヒドロキシ基変性ポリアミドアミン(PAMAM-OH)、0.5%のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、0.2%のイソボルニルアクリレート(IBOA)、0.1%のフタル酸ジエチレングリコールジアクリレート(PDDA)、0.005%の紫外線吸収剤Tinuvin 123、0.5%の酢酸酪酸セルロース(CAB)、0.005%の酸化防止剤Irganox 1076、10%のジアセトンアルコール、83.35%のイソプロパノール、5%のエチルアルコール、0.3%の開始剤IRGACURE 2595を均一に混合して、保護層組成液体を形成する。ステップS5においては、導電層の表面に保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。最終的に光学的整合性を有する透明導電薄膜を形成する。
図7及び
図14に示すように、14はエッチング後のナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域であり、15はエッチング後の導電領域である。エッチング後に、金属ナノワイヤA及びナノ粒子Bが非エッチング領域即ち導電領域に均一に分布し、ナノ粒子Bがエッチング領域、即ち非導電領域に均一に分布し、且つそれらが導電通路を形成せず、導電領域と非導電領域とにより光学的整合性を有する透明導電薄膜が形成される。
【0058】
[実施例5]
ステップS1においては、0.5%のナノ粒子B、塗膜形成剤としての0.8%の高粘度セルロースHPC、0.05%のレベリング剤BYK-345、0.5%の金属ナノワイヤA及び98.15%の溶媒(水、エチルアルコール及びイソプロパノールを含む)を均一に混合して、導電性インクを形成する。ステップS2においては、スパッタリング方式で基板に1層の金属層又はセラミック層をスパッタリングして光学的適合層を形成する。ステップS3においては、スリット塗布方式で基板に導電性インクを塗布して導電層を形成する。ステップS4においては、導電層に対して赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理を行い、後処理パラメータ、例えば、周波数、エネルギー、処理時間を調整することにより、導電層におけるナノ粒子Bの一部を溶融して二次成長させ、媒介物として金属ナノワイヤAを溶接する。ステップS5においては、導電層をレーザエッチングして金属ナノワイヤAを気化又は腐食するが、ナノ粒子Bをエッチング箇所に残して非導電領域を形成する。ステップS6においては、0.008%のデンドリマーポリアミドアミン(PAMAM)、1%のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、0.8%の1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、0.3%のイソボルニルアクリレート(IBOA)、0.3%の紫外線吸収剤BASF Tinuvin 765、2%の酢酸酪酸セルロース(CAB)、0.3%の酸化防止剤Irganox 168、8%のジアセトンアルコール、80.192%のイソプロパノール、7%のエチルアルコール、0.1%の開始剤DAROCUR 1173を均一に混合して、保護層組成液体を形成する。ステップS7においては、導電層の表面に保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。最終的に光学的整合性を有する透明導電薄膜を形成する。
図9a及び
図9bはスパッタリングによる光学的適合層の光線反射率への影響の模式図であり、16は光学的適合層を含む導電膜導電層をエッチングした後のナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域であり、光学的適合層は基板及び光学的整合性を有する導電層に屈折率補償を形成させ、エッチング後の導電領域及び非導電領域の反射率の差分を減少させ、視覚的コントラストを減少させる。
【0059】
[実施例6]
ステップS1においては、0.5%のナノ粒子B、塗膜形成剤としての5%の高粘度セルロースHPMC、1%のレベリング剤BYK-301、0.5%の金属ナノワイヤA及び93%の溶媒(水、エチルアルコール及びイソプロパノールを含む)を均一に混合して、導電性インクを形成する。ステップS2においては、スリット塗布方式で基板に導電性インクを塗布して導電層を形成する。ステップS3においては、0.02%のデンドリマーポリアミドアミン(PAMAM)、0.6%のトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、0.1%の1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、0.2%の紫外線吸収剤BASF Tinuvin 765、0.15%の酢酸酪酸セルロース(CAB)、0.1%の酸化防止剤Irganox 1098、8%のジアセトンアルコール、83.33%のイソプロパノール、7%のエチルアルコール、0.5%の開始剤IRGACURE 184を均一に混合して、保護層組成液体を形成する。ステップS4においては、導電層の表面に保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。ステップS5においては、保護層の表面に緻密な面状導電層を塗布して、全体的に導電性を有する複合透明導電薄膜を形成する。
【0060】
図2に示すように、4は電気的適合層であり、保護層の外に緻密な面状導電層を有する全体的に導電性を有する複合透明導電薄膜の構造模式図である。面状導電層は、その誘電率が金属ナノワイヤ導電層の誘電率に適合可能である。前記面状導電層は、高い耐食性を有し、酸、アルカリ、塩化物、H
2Sガスなどを含む。電磁波シールド、スマートウィンドウ、スマートタブレットなどの面に適用できる。
【0061】
[実施例7]
ステップS1においては、0.5%のナノ粒子B、塗膜形成剤としての5%の高粘度セルロースHPMC、1%のレベリング剤BYK-301、0.5%の金属ナノワイヤA及び93%の溶媒(水、エチルアルコール及びイソプロパノールを含む)を均一に混合して、導電性インクを形成する。ステップS2においては、スリット塗布方式で基板に導電性インクを塗布して導電層を形成する。ステップS3においては、導電層に対して赤外線放射処理、マイクロ波放射処理、キセノンランプパルス処理、光子焼結処理を行い、後処理パラメータ、例えば、周波数、エネルギー、処理時間を調整することにより、導電層におけるナノ粒子Bの一部を溶融して二次成長させ、媒介物として金属ナノワイヤAを溶接する。ステップS4においては、0.04%のデンドリマーヒドロキシ基変性ポリアミドアミン(PAMAM-OH)、1%のトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、0.5%のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、0.3%のフェノキシエチルアクリレート(PHEA)、0.5%の紫外線吸収剤BASF Tinuvin 791FB、0.1%の酢酸酪酸セルロース(CAB)、0.1%の酸化防止剤Irganox 1076、8%のジアセトンアルコール、84.17%のイソプロパノール、5%のエチルアルコール、0.2%の開始剤IRGACURE 184及び0.09%のIRGACURE 2595を均一に混合して、保護層組成液体を形成する。ステップS5においては、導電層の表面に保護液を塗布し、熱硬化又は紫外線硬化後に保護層を形成する。ステップS6においては、保護層の表面に緻密な面状導電層を塗布し、全体的に導電性を有する複合透明導電薄膜を形成する。
図2は、保護層の外に緻密な面状導電層を有する全体的に導電性を有する複合透明導電薄膜の構造模式図である。
【0062】
本発明は、更に他の実施例があってもよく、保護層におけるデンドリマーはカルボキシル基変性PAMAM又はヒドロキシ基変性PAMAMであってもよく、それと同時に、他の錯化剤を添加してもよく、プレポリマーを添加することにより、モノマー、酸化防止剤、紫外線吸収剤の種類及び添加量を変化させ、塗布過程においてコロナ処理、プラズマ処理などの方式で最適化することができる。
【0063】
本発明に係る光学的整合性を有する透明導電薄膜及びその設計方法は、方法が簡単で、条件が温和であり、金属ナノ導電薄膜の後処理エッチング跡が明らかで、金属材料が腐食されやすく、金属イオンがマイグレーションするという問題を解決することができ、導電膜は均一性が高く、安定性が高く、異なるバックエンドアプリケーション要件を満足することができる。
【0064】
最後に説明されるように、以上の実施例は本発明の技術案を説明するためのものであって、本発明の技術案を制限するためのものではない。実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者であれば理解されるように、本発明の技術案に対して行われた修正や等価置換はいずれも、本発明の技術案の趣旨や範囲から逸脱しないものであって、本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 金属ナノワイヤ導電層
3 保護層
4 電気的適合層
5 光学的適合層
6 球状ナノ粒子B
7 コアシェル構造ナノ粒子Bのコア
8 コアシェル構造ナノ粒子Bのシェル
9 立方状ナノ粒子B
10、11 ヘテロ接合の2つの構成部分
12 金属ナノワイヤA
13 ナノ粒子B
14 エッチング後のナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域
15 エッチング後の導電領域
16 光学的適合層を含む導電膜導電層をエッチングした後のナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域
17 アンチグレア層付きのベースフィルム導電層をエッチングした後のナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域
18 アンチグレア層付きのベースフィルム
19 ナノ粒子光学的適合層
20 導電層をエッチングした後の導電領域
21 貼合接着剤
22 ナノ粒子Bが均一に分布している非導電領域
23 残留物なしの非導電領域
24 貼合接着剤が充填されている非導電領域
25 Y方向のエッチングされていない領域
26 X方向の導電接続層
27 Y方向導電領域
28 X方向導電領域
29 非導電領域
30 絶縁層