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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/50 20060101AFI20240123BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08G77/50
C08G77/38
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022512463
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2019104158
(87)【国際公開番号】W WO2021042262
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リー、ポン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、シャオツォン
(72)【発明者】
【氏名】マー、ホンチュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シューホア
(72)【発明者】
【氏名】ウー、イェーチュン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ホイ
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-504876(JP,A)
【文献】特表2009-521574(JP,A)
【文献】特開平09-020866(JP,A)
【文献】特開2001-072891(JP,A)
【文献】特表2014-509682(JP,A)
【文献】特開平09-012709(JP,A)
【文献】特開2001-151889(JP,A)
【文献】特開2006-124713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法であって、以下の
(i)1分子当たり少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンをカルボン酸のアルカリ塩で処理する工程、
(ii)前記アルカリ塩を前記オルガノポリシロキサンから除去する工程、及び
(iii)白金ベースの触媒の存在下で、前記工程(ii)で得られた前記オルガノポリシロキサンをアルケニル基含有アルコキシシランと反応させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(i)における前記オルガノポリシロキサンが以下の一般式:
HSiO(R SiO)SiR Hで表され、
式中、各Rが1~12個の炭素原子を有する同一の又は異なる炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を含まず、「n」が0~100の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(i)における前記アルカリ塩が酢酸のナトリウム塩、又はプロピオン酸のナトリウム塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(iii)における前記アルコキシシランが以下の一般式:
SiR (OR(3-a)で表され、
式中、Rが2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、Rが1~12個の炭素原子を有する炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を含まず、Rが1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、「a」が0、1、又は2である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(iii)における前記白金ベースの触媒が、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、又は塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、若しくはアセチレンアルコールとの錯体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(iii)における前記白金ベースの触媒が、前記触媒中の白金金属が前記オルガノポリシロキサン及び前記アルコキシシランの総質量に対して質量単位で1~1,000ppmの範囲となる量で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(iii)において前記オルガノポリシロキサンを前記アルケニル基含有アルコキシシラン及び4~20個の炭素原子を有するオレフィンと同時に反応させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記オレフィンが、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、又は1-デセンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の
(iv)前記工程(iii)で得られた前記オルガノポリシロキサンを白金ベースの触媒の存在下で、6~20個の炭素原子を有するオレフィンと反応させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記オレフィンが、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、又は1-デセンから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(iii)が30℃~150℃の温度で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(iv)が30℃~150℃の温度で行なわれる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1分子当たり少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシシリルアルキル基は、無機充填剤に対する反応性の改善、及び他のオルガノポリシロキサンと無機充填剤との間の適合性の改善を含む様々な目的のためにオルガノポリシロキサンに導入される。アルコキシシリルアルキル基含有オルガノポリシロキサンは概ね知られている(特許文献1~3を参照)。そのようなオルガノポリシロキサンは、白金ベースの触媒の存在下における1分子当たり複数個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンとアルケニル基含有アルコキシシランとのヒドロシリル化反応によって得られる。概して、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンは重合触媒として使用される微量の酸触媒残渣を含有し、酸性の触媒残渣は、ケイ素原子結合アルコキシ基の加水分解を促進する。製造プロセスにおいて、苛酷な反応条件下、例えば、100~150℃の高いプロセス温度の条件下、及び水を完全に除去することができない条件下では、アルコキシシリルアルキル基を全く加水分解することなく、アルコキシシリルアルキル基含有オルガノポリシロキサンを得ることは困難である。
【0003】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:米国特許出願公開第2007/0290202(A1)号
【0004】
特許文献2:米国特許出願公開第2007/0293624(A1)号
【0005】
特許文献3:米国特許第8,119,758(B2)号
【発明の概要】
【0006】
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、アルコキシシリルアルキル基を全く加水分解することのない、1分子当たり1つのケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法を提供することである。
【0007】
課題を解決するための手段
本発明は、1分子当たり少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法であり、方法は以下の
(i)1分子当たり少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンをカルボン酸のアルカリ塩で処理する工程、
(ii)アルカリ塩をオルガノポリシロキサンから除去する工程、及び
(iii)白金ベースの触媒の存在下で、工程(ii)で得られたオルガノポリシロキサンをアルケニル基含有アルコキシシランと反応させる工程を含む。
【0008】
様々な実施形態において、工程(i)のオルガノポリシロキサンは以下の一般式:
HSiO(R SiO)SiR
で表され、式中、各Rは1~12個の炭素原子を有する同一の又は異なる炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を含まず、「n」は0~100の整数である。
【0009】
様々な実施形態において、工程(i)のアルカリ塩は、酢酸のナトリウム塩又はプロピオン酸のナトリウム塩から選択される。
【0010】
様々な実施形態において、工程(iii)のアルコキシシランは以下の一般式:
SiR (OR(3-a)
で表され、式中、Rは2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、Rは1~12個の炭素原子を有する炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を含まず、Rは1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、「a」は、0、1、又は2である。
【0011】
様々な実施形態において、工程(iii)の白金ベースの触媒は、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、又は塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、若しくはアセチレンアルコールとの錯体から選択される。
【0012】
様々な実施形態において、工程(iii)の白金ベースの触媒は、触媒中の白金金属が、オルガノポリシロキサン及びアルコキシシランの総質量に対して質量単位で約1~約1,000ppmの範囲となる量で添加される。
【0013】
様々な実施形態において、工程(iii)においてオルガノポリシロキサンを、アルケニル基含有アルコキシシラン及び4~20個の炭素原子を有するオレフィンと同時に反応させる。
【0014】
様々な実施形態において、オレフィンは、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、又は1-デセンから選択される。
【0015】
様々な実施形態において、工程(iii)は約30℃~約150℃の温度で行なわれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法に従って、ケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを、アルコキシシリルアルキル基を全く加水分解することなく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of」」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0018】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様を説明するために、本明細書で依拠されたあらゆるマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0019】
本発明の様々な実施形態の記載で依拠された任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、その中に整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていない場合であっても、記述し、想定すると理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、そして各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。
【0020】
<オルガノポリシロキサンの製造方法>
【0021】
本発明によるオルガノポリシロキサンの製造方法を下に説明する。
【0022】
工程(i)におけるオルガノポリシロキサンは原料であり、1分子当たり少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子、好ましくは1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有する。オルガノポリシロキサンの分子構造は限定されるものではなく、必要に応じて直鎖、環状、及び部分分岐した直鎖であってもよい。オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の結合位置に限定はなく、ケイ素原子結合水素原子は、例えば、分子鎖上の末端位置で結合してもよく、及び/又は分子鎖上の側鎖位置で結合してもよい。オルガノポリシロキサン中の水素原子以外のケイ素結合基は、脂肪族不飽和結合を含まない1~12個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である。一価の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又は同様のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、又は同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、又は同様のアラルキル基;及び3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、又は同様のハロゲン化アルキル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。
【0023】
様々な実施形態において、オルガノシロキサンは以下の一般式で表される直鎖ジオルガノポリシロキサンである:
HSiO(R SiO)SiR
【0024】
式中、Rは同一の又は異なる炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を含まない。Rの炭化水素基の例としては、上記と同じ炭化水素基が挙げられる。
【0025】
式中、「n」は、約1~約200の整数、あるいは約5~約200の整数、あるいは約10~約200の整数、あるいは約10~約150の整数である。この理由は以下の通りであり、すなわち、「n」が前述の範囲の下限以上である場合に、最終のオルガノポリシロキサンが無機充填剤に対する優れた反応性を示し、一方、「n」が前述の範囲の上限以下である場合に、最終のオルガノポリシロキサンが低粘度を有し得るからである。
【0026】
オルガノポリシロキサンの例としては、下に記載するものなどの化合物が挙げられる。
H(CHSiO[(CHSiO]10Si(CH
H(CHSiO[(CHSiO]20Si(CH
H(CHSiO[(CHSiO]40Si(CH
H(CHSiO[(CHSiO]10[(CH)HSiO]Si(CH
H(CHSiO[(CHSiO]20[C(CH)SiO]10Si(CH
(CHSiO[(CH)HSiO]20Si(CH
【0027】
概して、そのようなオルガノポリシロキサンは、重合触媒として使用される酸触媒の存在下でのメチルハイドロジェンシクロシロキサン、ジメチルシクロシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、及びテトラメチルジシロキサンなどのシロキサンオリゴマーの再平衡化反応、及び酸触媒の中和又は除去によって得られる。しかしながら、中和が十分ではないと、オルガノポリシロキサンが微量の酸性の触媒残渣を含有する場合がある。
【0028】
工程(i)において、オルガノポリシロキサンをカルボン酸のアルカリ塩で処理して、オルガノポリシロキサン中の酸性の触媒残渣を中和する。
【0029】
アルカリ塩は限定されないが、好ましくは、酢酸のナトリウム塩、又はプロピオン酸のナトリウム塩から選択される。
【0030】
アルカリ塩の含有量は限定されないが、好ましくは、オルガノポリシロキサンの、質量単位で約100~約1,500ppmの量、あるいは約200~約1,000ppmの量、あるいは500~約800ppmの量である。この理由は以下の通りであり、すなわち、含有量が前述の範囲の下限以上である場合に、酸触媒残渣の中和の完了が容易であり、一方、前述の範囲の上限以下である場合、経済的であり、処理後のオルガノポリシロキサンからのアルカリ塩の除去が容易であるからである。
【0031】
工程(ii)において、処理は撹拌及び回転などの通常の手段によって行なわれる。オルガノポリシロキサン中の酸性の触媒残渣の中和の完了は、非常に低いレベルの酸残渣と酢酸ナトリウムによる中和メカニズムのため、pH測定試験、酸価試験などの現在の試験方法では検出されない場合がある。しかしながら、抽出水のイオン伝導試験、抽出水のイオン交換クロマトグラフィー試験などを利用することができる。概ね、オルガノポリシロキサンと十分な酢酸ナトリウムの間の撹拌又は回転は、中和が十分であることを確実にするために、約40~約70℃で約1~約5時間、好ましくは約50~約70℃で約2~約4時間行われる。
【0032】
次いで、副反応も引き起こし、更には生成物の最終品質に影響を与える反応環境のpH値が高くなりすぎる(>9)という潜在的なリスクから、濾過によってアルカリ塩をオルガノポリシロキサンから除去する。
【0033】
工程(iii)において、オルガノポリシロキサンを、白金ベースの触媒の存在下で、アルケニル基含有アルコキシシラン及び任意による4~20個の炭素原子を有するオレフィンと反応させる。
【0034】
アルコキシシランは、ケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を最終生成物に導入するための原料であり、アルケニル基を有する。アルケニル基は2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、プロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、及びデセニル基が挙げられるが、ヘキセニル基、オクテニル基、及びデセニル基が好ましい。
【0035】
アルコキシシラン中のアルコキシ基は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基である。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基が挙げられる。
【0036】
アルコキシシラン中のアルケニル基及びアルコキシ基以外のケイ素結合基は、1~12個の炭素原子を有して脂肪族不飽和結合を含まない一価の炭化水素基である。一価の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又は同様のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、又は同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、又は同様のアラルキル基;及び3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、又は同様のハロゲン化アルキル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。
【0037】
様々な実施形態において、アルコキシシランは以下の一般式で表される:
SiR (OR(3-a)
【0038】
式中、Rは2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、及びデセニル基が挙げられ、それらの中でアリル基及びヘキセニル基が経済的効率及び反応性の観点から好ましい。
【0039】
式中、Rは1~12個の炭素原子を有する炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を含まない。Rの炭化水素基の例としては、上記のRと同じ炭化水素基が挙げられる。
【0040】
式中、Rは1~3個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられ、それらの中でメチル基が好ましい。
【0041】
式中、「a」は、0、1、又は2、あるいは0である。
【0042】
アルコキシシランの例としては、下に記載するものなどの化合物が挙げられる。
CH=CHSi(OCH
CH=CHSiCH(OCH
CH=CHSi(OC
CH=CHCHSi(OCH
CH=CHCHSi(OC
CH=CHCHSi(OCH(OC
【0043】
アルコキシシランの含有量は限定されないが、アルコキシシランのオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子に対するモル比が約0.1~約1の範囲、あるいは約0.1~約0.5の範囲、あるいは約0.1~約0.3の範囲になるような量が好ましい。この理由は以下の通りであり、すなわち、含有量が前述の範囲の下限以上である場合に、最終のオルガノポリシロキサンが無機充填剤に対する優れた反応性を示し、一方、前述の範囲の上限以下である場合は、それもまた最終用途に負の影響を生じる副生成物の低減が容易であるからである。
【0044】
白金ベースの触媒は、オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとのヒドロシリル化反応を促進する触媒である。様々な実施形態において、白金ベースの触媒は、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、又は塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、若しくはアセチレンアルコールとの錯体から選択される。
【0045】
白金ベースの触媒は、ヒドロシリル化反応を促進するために十分な量で添加される。しかしながら、好ましくは、反応混合物中の白金金属として、質量単位で、約1~約1,000ppmの範囲、あるいは約1~約500ppmの範囲、あるいは約5~約100ppmの範囲である。様々な実施形態において、反応を促進する観点から量は前述の範囲の下限以上であり、最終のオルガノポリシロキサン中の白金ベースの触媒の残存を低減する観点から前述の範囲の上限以下である。
【0046】
工程(iii)において、オルガノポリシロキサンをアルコキシシラン及び4~20個の炭素原子を有するオレフィンと同時に反応させる。
【0047】
オレフィンは4~20個の炭素原子、あるいは6~20個の炭素原子、あるいは6~12個の炭素原子を有する。オレフィンの例としては、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、及び1-デセンが挙げられる。
【0048】
オレフィンの含有量は限定されないが、オレフィンのオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子に対するモル比が約0.5~約1の範囲、あるいは約0.6~約1の範囲、あるいは約0.8~約1の範囲になるような量が好ましい。この理由は以下のとおりであり、すなわち、含有量が前述の範囲の下限以上である場合に、副生成物の低減が容易であり、一方、前述の範囲の上限以下である場合、最終のオルガノポリシロキサンが無機充填剤に対する優れた反応性を示すからである。
【0049】
工程(iii)の条件は特に限定されるものではないが、好ましくは、工程(iii)は約30℃~約150℃の温度、あるいは約50℃~約150℃の温度、あるいは約50℃~約100℃の温度で行なわれる。
【0050】
更に、工程(iii)の後、最終のオルガノポリシロキサン中の白金ベースの触媒の含有量を低減するために、活性炭を反応混合物に添加して、次いで濾過によって最終のオルガノポリシロキサンから除去してもよい。
【0051】
本発明の方法によって得られたオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサン、又はケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサンと6~20個の炭素原子を有するケイ素原子結合アルキル基を有するオルガノポリシロキサンとの混合物である。
【0052】
オルガノポリシロキサンの例としては、下に記載するものなどの化合物が挙げられる。また、下の式中のX及びYはそれぞれ、アルコキシシリルアルキル基及び6~20個の炭素原子を有するアルキル基を示す。
X(CHSiO[(CHSiO]10Si(CH
X(CHSiO[(CHSiO]20Si(CH
X(CHSiO[(CHSiO]40Si(CH
X(CHSiO[(CHSiO]10[(CH)(X)SiO]Si(CH
Y(CHSiO[(CHSiO]10Si(CH
Y(CHSiO[(CHSiO]20Si(CH
Y(CHSiO[(CHSiO]40Si(CH
Y(CHSiO[(CHSiO]10[(CH)(X)SiO]Si(CH
X(CHSiO[(CHSiO]10[(CH)(Y)SiO]Si(CH
Y(CHSiO[(CHSiO]10[(CH)(X)SiO]Si(CH
Y(CHSiO[(CHSiO]10[C(CH)SiO]Si(CH
X(CHSiO[(CHSiO]10[C(CH)SiO]Si(CH
(CHSiO[(CH)(X)SiO]20Si(CH
(CHSiO[(CH)(X)SiO]10[(CH)(Y)SiO]10Si(CH
【実施例
【0053】
ここで、本発明のオルガノポリシロキサンの製造方法を、実施例を用いて詳細に説明する。実施例では、粘度は25℃における値である。
【0054】
<熱伝導性シリコーン組成物の粘度>
新しい熱伝導性シリコーン組成物の粘度を、コーン/プレート粘度計(Brookfieled HADV-II粘度計;Brookfieled Engineering Laboratories,Inc.)を使用して、25℃、1RPMで測定した。
【0055】
<実施例1>
0.26gの酢酸ナトリウム、及び457gの以下の式:
H(CHSiO[(CHSiO]25Si(CH
で表されるオルガノポリシロキサンを容器に入れて、50℃で2時間撹拌した。
【0056】
オルガノポリシロキサン及び酢酸ナトリウムを50℃で2時間撹拌した後、オルガノポリシロキサンを冷却し、濾過して酢酸ナトリウムを除去した。得られた前処理したオルガノポリシロキサンを次のヒドロシリル化工程に使用する。
【0057】
酢酸ナトリウムで処理した457gのオルガノポリシロキサン、15.7gのヘプテニルトリメトキシシラン及び48.7gの1-オクテンを4ツ口フラスコに入れた。500ml/分のNを10分間混合物にパージした。0.31gの白金担持活性炭(5質量%の白金含有量)を混合物に加えた。混合物を60℃に加熱して撹拌し、次いで加熱を停止した。混合物の温度を100℃に上昇させた。混合物を80℃に冷却して2時間保持した。次いで、更に14gの1-オクテンを混合物に加えて、混合物を1時間保持した。Nを吹き込んでかき混ぜながら混合物を真空下で3時間、150℃に加熱した。混合物を80℃に冷却し、次いで真空を解除した。5.3gの活性炭を混合物に加えた。1時間撹拌した後、濾過によって活性炭を除去した。H-NMR分析の結果から、最終生成物が、26質量%の次式:
17(CHSiO[Si(CHO]25Si(CH12Si(OCHで表されるジメチルポリシロキサン、
2質量%の次式:
(CHO)SiC12(CHSiO[(CHSiO]25Si(CH12Si(OCHで表されるジメチルポリシロキサン、及び
72質量%の次式:
17(CHSiO[Si(CHO]25Si(CH17で表されるジメチルポリシロキサンの混合物であることが認められた。
【0058】
<比較例1>
457gの次式:
H(CHSiO[(CHSiO]25Si(CHHで表される酢酸ナトリウムで処理していないオルガノポリシロキサン、
15.7gのヘプテニルトリメトキシシラン及び48.7gの1-オクテンを4ツ口フラスコに入れた。500ml/分のNを10分間混合物にパージした。0.31gの白金担持活性炭(5質量%の白金含有量)を混合物に加えた。混合物を60℃に加熱して撹拌し、次いで加熱を停止した。混合物の温度を100℃に上昇させた。混合物を80℃に冷却して2時間保持した。次いで、更に14gの1-オクテンを混合物に加えて、混合物を1時間保持した。Nを吹き込んでかき混ぜながら混合物を真空下で3時間、150℃に加熱した。混合物を80℃に冷却し、次いで真空を解除した。3gの活性炭を反応混合物に加えた。1時間撹拌した後、濾過によって活性炭を除去した。1H-NMR分析の結果から、最終生成物が、0~16質量%の次式:
17(CHSiO[Si(CHO]25Si(CH12Si(OCHで表されるジメチルポリシロキサン、
2質量%の次式:
(CHO)SiC12(CHSiO[(CHSiO]25Si(CH12Si(OCHで表されるジメチルポリシロキサン、及び
72質量%の次式:
17(CHSiO[Si(CHO]25Si(CH17で表されるジメチルポリシロキサン、
並びに10~26質量%の次式:
17(CHSiO[Si(CHO]25Si(CH12Si(OCHで表されるジメチルポリシロキサンの加水分解物の混合物であり、
また生じた加水分解生成物は次式:
17(CHSiO[Si(CHO]25Si(CH12Si(OH)(OCH3-aで表され、
式中、aは1、2又は3であることが認められた。
【0059】
<応用例1>
7.01gの実施例1で得られたオルガノポリシロキサン、0.025gのアセチレンブラック(AB-100;Soltex Inc.)、23.24gの数平均粒径0.12μmの酸化亜鉛粉末(Zoco102;Zochem Inc.)を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合した。その後、34.87gの数平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末(DW-4;Fullore International Ltd.(HK))を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合物に加えた。34.87gの数平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末(DW-4;Fullore International Ltd.(HK))を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合物に加えた。混合物を室温に24時間置いた後、コーンプレートを用いて粘度を測定した。粘度を表1に示す。
【0060】
<応用例2>
7.01gの比較例1で得られたオルガノポリシロキサン、0.025gのアセチレンブラック(AB-100;Soltex Inc.)、23.24gの数平均粒径0.12μmの酸化亜鉛粉末(Zoco102;Zochem Inc.)を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合した。その後、34.87gの数平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末(DW-4;Fullore International Ltd.(HK))を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合物に加えた。34.87gの数平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末(DW-4;Fullore International Ltd.(HK))を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合物に加えた。混合物を室温に24時間置いた後、コーンプレートを用いて粘度を測定した。粘度を表1に示す。
【0061】
<応用例3>
7.01gの次式:
(CHSiO[(CHSiO]110Si(OCHで表されるオルガノポリシロキサン、
0.025gのアセチレンブラック(AB-100、Soltex Inc.)、23.24gの数平均粒径0.12μmの酸化亜鉛粉末(Zoco102;Zochem Inc.)を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合した。その後、34.87gの数平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末(DW-4;Fullore International Ltd.(HK))を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合物に加えた。34.87gの数平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末(DW-4;Fullore International Ltd.(HK))を1000rpm/20秒、次いで1500rpm/20秒で混合物に加えた。混合物を室温に24時間置いた後、コーンプレートを用いて粘度を測定した。粘度を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
産業上の利用可能性
本発明によって、本方法で製造されたケイ素原子結合アルコキシシリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを、アルコキシシリルアルキル基を全く加水分解することなく得ることができる。したがって、本方法は、様々なタイプの充填剤の表面改質剤として有用なオルガノポリシロキサンの製造に好適である。