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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】調節T細胞培養用組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240123BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240123BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/55
C07K14/435
C12N5/0783
C12N1/00 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022529596
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2020016382
(87)【国際公開番号】W WO2021101273
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0149779
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0033229
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521126254
【氏名又は名称】ジーアイ・セル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GI CELL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】チャン ミョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン チュンピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム チェハ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヘリ
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-521409(JP,A)
【文献】PARK, J. C. et al.,GI101, a novel triple-targeting bispecific CD80-IgG4-IL2variant fusion protein, elicits synergistic anti-tumor effects in preclinical models.,Annals of Oncology,2019年10月,Vol.30, Suppl 5,P1223(v500),doi: 10.1093/annonc/mdz253.049
【文献】INGLAM, Wendy et al.,Human CD80/IL2 lentivirus transduced acute myeloid leukaemia cells enhance cytolytic activity in vitro in spite of an increase in regulatory CD4+ T cells in a subset of cultures.,Cancer Immunol. Immunother.,2009年03月13日,Vol.58, No.10,p.1679-1690,doi: 10.1007/s00262-009-0679-6
【文献】YU, Ning et al.,CD4+CD25+CD127low/- T Cells: A More Specific Treg Population in Human Peripheral Blood.,Inflammation,2012年12月,Vol.35, No.6,p.1773-1780,doi: 10.1007/s10753-012-9496-8
【文献】Anthony Tang and Fiona Harding,The challenges and molecular approaches surrounding interleukin-2-based therapeutics in cancer.,Cytokine: X,2018年12月10日,Vol.1, Article No.10001,p.1-9,doi: 10.1016/j.cytox.2018.100001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 5/0783
C12N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-2タンパク質の変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体を有効成分として含む分離された調節T細胞増殖用組成物であって、
前記融合タンパク質二量体は、下記構造式(I)又は(II):
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
を含み、式中、
N’は、融合タンパク質のN末端であり、
C’は、融合タンパク質のC末端であり、
Xは、CD80タンパク質又はその断片であり、
Yは、IL-2タンパク質の変異体であり、
前記リンカー(1)及びリンカー(2)は、ペプチドリンカーであり、
n及びmはそれぞれ独立に、0又は1であり、
前記IL-2タンパク質変異体が、配列番号10のアミノ酸配列においてR38A及びF42Aの置換を含み、
前記CD80タンパク質断片が、CD80の細胞外ドメインを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記CD80は、配列番号11のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の分離された調節T細胞増殖用組成物。
【請求項3】
前記融合タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の分離された調節T細胞増殖用組成物。
【請求項4】
前記調節T細胞は、CD4+CD25+CD127-細胞である、請求項1に記載の分離された調節T細胞増殖用組成物。
【請求項5】
IL-2タンパク質の変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体を含む分離された調節T細胞増殖用培地であって、
前記融合タンパク質二量体は、下記構造式(I)又は(II):
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
を含み、式中、
N’は、融合タンパク質のN末端であり、
C’は、融合タンパク質のC末端であり、
Xは、CD80タンパク質又はその断片であり、
Yは、IL-2タンパク質の変異体であり、
前記リンカー(1)及びリンカー(2)は、ペプチドリンカーであり、
n及びmはそれぞれ独立に、0又は1であり、
前記IL-2タンパク質変異体が、配列番号10のアミノ酸配列においてR38A及びF42Aの置換を含み、
前記CD80タンパク質断片が、CD80の細胞外ドメインを含む、前記培地。
【請求項6】
CD4+ T細胞培養用培地をさらに含む、請求項5に記載の分離された調節T細胞増殖用培地。
【請求項7】
前記CD4+ T細胞培養用培地は、アミノ酸(amino acids)、糖類(sugars)、無機塩(inorganic salts)及びビタミンを含む、請求項6に記載の分離された調節T細胞増殖用培地。
【請求項8】
IL-2タンパク質の変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体が含まれた培地で分離された調節T細胞を培養する段階を含む分離された調節T細胞培養方法であって、
前記融合タンパク質二量体は、下記構造式(I)又は(II):
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
を含み、式中、
N’は、融合タンパク質のN末端であり、
C’は、融合タンパク質のC末端であり、
Xは、CD80タンパク質又はその断片であり、
Yは、IL-2タンパク質の変異体であり、
前記リンカー(1)及びリンカー(2)は、ペプチドリンカーであり、
n及びmはそれぞれ独立に、0又は1であり、
前記IL-2タンパク質変異体が、配列番号10のアミノ酸配列においてR38A及びF42Aの置換を含み、
前記CD80タンパク質断片が、CD80の細胞外ドメインを含む、前記培養方法。
【請求項9】
前記分離された調節T細胞がCD4+CD25+CD127- T細胞である、請求項8に記載の分離された調節T細胞培養方法。
【請求項10】
1日~20日培養する、請求項8に記載の分離された調節T細胞培養方法。
【請求項11】
前記CD4+CD25+CD127- T細胞は、CD4+ T細胞を培養する段階;又はCD25+ T細胞を培養する段階によって得られたものである、請求項に記載の分離された調節T細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞培養のための培養用組成物及びこれを用いた調節T細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞は、細胞媒介免疫において中心的な役割を担う。T細胞は、T細胞受容体(TCR)のようなT細胞の表面に存在する受容体により、B細胞をはじめとする他のリンパ球と区別され得る。また、T細胞は、ヘルパーT細胞(TH細胞)、細胞毒性T細胞(TC細胞、又はCTL)、中央メモリT細胞(TCM細胞)及びエフェクターメモリT細胞(TEM細胞)が含まれるメモリT細胞(TM細胞)、ナチュラルキラー(Natural killer)T細胞(NKT細胞)、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)、及び調節T細胞(Treg細胞)のように種々のT細胞を含む。
【0003】
このうち、調節T細胞(Treg)は、他の細胞の免疫応答を抑制する作用を有するT細胞である。例えば、Treg細胞は、免疫反応中にT細胞媒介免疫を抑制し、胸腺の陰性選別過程で脱出した自己反応性T細胞を抑制する役割を担う。Treg細胞は、自然調節T細胞(natural regulatory T cells,nTreg)及び誘導調節T細胞(induced regulatory T cells,iTreg)に大別できる。CD4+CD25+FoxP3+調節T細胞と知られた自然調節T細胞は胸腺で生成される。誘導調節T細胞は、天然発生Treg細胞と多数の属性を共有するが、CD4+CD25-FoxP3- T細胞からCD4+CD25+FoxP3+調節T細胞に転換される特徴が、代表的な差異点として知られている。
【0004】
このように、各種の自己免疫体系の異常によって発生する疾病と関連して、調節T細胞の重要性に対する研究が活発に行われている。1970年代の初めにGershonによって抑制T細胞という概念が導入されて初めて提示された以来(R K Gershon and K Kondo,Immunology,1970,18:723-37)、免疫学の多数の分野で調節T細胞の生物学的特性及び機能を究明するための研究がなされてきた。特に、1995年にSakaguchiによってCD25が自然発生CD4+調節T細胞の重要な表現型マーカーとして働き得ることが提示されて以来(S Sakaguchi et,al.,J Immunol,1995,155:1151-1164)、自己抗原(self-antigen)に対する末梢寛容(peripheral tolerance)の誘導において調節T細胞が有する役割及び重要性に関する研究が重点的に行われた。
【0005】
調節T細胞は、免疫抑制性サイトカインとして知られたIL-10、TGF-β、IL-35などを分泌できることが知られている(H Nishikawa et,al.,Int.J.Cancer,2010,127:759-767)。免疫抑制性サイトカインを分泌する調節T細胞は、IL-10などを分泌し、自己免疫疾患の原因となる抗原特異的T細胞を免疫寛容性抗原提示細胞で誘導することによって、免疫学的に耐性を誘導できることを証明する研究が行われている(S.Karumuthil-Melethil et,al.,Diabetes,2015,64:1341-1357)。
【0006】
このように、調節T細胞の自己免疫疾患を治療する用途は多く知られているが、それを効果的に使用するために増幅させ得る具体的な方法はまだ足りない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明者らは、調節T細胞を効果的に培養する方法について研究した結果、IL-2タンパク質とCD80タンパク質を単一の分子中に含む新規な融合タンパク質二量体が調節T細胞を効果的に増殖させることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のために、IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体を有効成分として含む調節T細胞培養用組成物又は培地を提供する。
【0009】
また、IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体を用いた調節T細胞培養方法を提供する。
【0010】
また、IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体が含まれた培地で培養された調節T細胞を有効成分として含む薬学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の培養組成物を用いると、T細胞を効果的に増殖させるだけでなく、特に、調節T細胞を効果的を増殖させることができる。特に、従来のIL-2を用いた培養法に比べて、調節T細胞の生存率が顕著に増加することを確認した。のみならず、収得された調節T細胞においてFoxp3+発現量が増加することを確認した。したがって、このような増殖方法は、調節T細胞を用いた細胞治療剤分野に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1Aは、本発明で使用された融合タンパク質二量体の模式図である。
図1Bは、収得した融合タンパク質二量体(GI-101)をSDS-PAGEで確認したものである。
図1Cは、吸光度による融合タンパク質二量体(GI-101)の含有量を示すものである。
図1Dは、収得した融合タンパク質二量体(GI-101)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析したものである。
図2Aは、収得したhCD80-Fc融合タンパク質二量体をSDS-PAGEで確認したものである。
図2Bは、収得したhCD80-Fc融合タンパク質二量体をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析したものである。
図3Aは、収得したFc-IL2v2融合タンパク質二量体をSDS-PAGEで確認したものである。
図3Bは、収得したFc-IL2v2融合タンパク質二量体をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析したものである。
図3Cは、収得したFc-IL2wt融合タンパク質二量体をSDS-PAGEで確認したものである。
図3Dは、収得したFc-IL2wt融合タンパク質二量体をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析したものである。
図4Aは、収得したhCD80-Fc-IL2wt融合タンパク質二量体をSDS-PAGEで確認したものである。
図4Bは、収得したhCD80-Fc-IL2wt融合タンパク質二量体をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析したものである。
図5は、融合タンパク質二量体を用いてTreg細胞を培養する方法に関する模式図である。
図6は、含RPMI1640培地組成物で培養された調節T細胞の数を示すものである。
図7は、含RPMI1640培地組成物で培養された調節T細胞の生存率を示すものである。
図8は、含TexMACS培地組成物で培養された調節T細胞の数を示すものである。
図9は、含TexMACS培地組成物で培養された調節T細胞の生存率を示すものである。
図1は、含RPMI1640培地組成物を用いて培養した調節T細胞のIL-10分泌能を示すものである。
図11は、含TexMACS培地組成物を用いて培養した調節T細胞のIL-10分泌能を示すものである。
図12A及び図12Bは、最適化工程において含RPMI1640培地組成物で培養時に増殖された調節T細胞の数を示すものである。
図13A及び図13Bは、最適化工程において含RPMI1640培地組成物で培養時に調節T細胞の生存率を示すものである。
図14A及び図14Bは、最適化工程において含TexMACS培地組成物で培養時に調節T細胞の数を示すものである。
図15A及び図15Bは、最適化工程において含TexMACS培地組成物で培養時に調節T細胞の生存率を示すものである。
図16A図16Cは、最適化工程において含RPMI1640培地組成物で培養された細胞の特性をFACSで分析した結果を示すものである。
図17A図17Cは、最適化工程において含RPMI1640培地組成物で培養時にFoxp3が発現した調節T細胞の数を示すものである。
図18A図18Cは、最適化工程において含TexMACS培地組成物で培養された細胞の特性をFACSで分析した結果を示すものである。
図19A図19Cは、最適化工程において含TexMACS培地組成物で培養時にFoxp3が発現した調節T細胞の数を示すものである。
図20は、最適化工程において含RPMI1640培地組成物で培養された調節T細胞のIL-10分泌能を示すものである。
図21は、最適化工程において含TexMACS培地組成物で培養された調節T細胞のIL-10分泌能を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
調節T細胞増殖用組成物及び培地
本発明の一側面として、IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体を有効成分として含む調節T細胞増殖用組成物を提供する。また、前記融合タンパク質二量体を有効成分として含む調節T細胞増殖用培地を提供する。
【0014】
前記調節T細胞増殖用培地は、T細胞培養用培地に、前記IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体が添加された培地であってよい。このとき、前記T細胞培養用培地は、アミノ酸(amino acids)、糖類(sugars)、無機塩(inorganic salts)及びビタミンからなる群から選ばれるいずれか一つを含むことができる。好ましくは、前記T細胞培養用培地は、アミノ酸、糖類、無機塩及びビタミンを全て含むものであってよい。また、前記培地はさらに、FBS(Fetal Bovine Serum)、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)、タンパク質、炭水化物、メルカプトエタノール、成長因子をさらに含むことができる。また、前記調節T細胞培養用培地は、レチノイン酸(retinoic acid)をさらに含むことができる。一具体例としては、前記調節T細胞増殖用培地は、下記の表3又は表4の基本成分を含むことができる。
【0015】
本明細書で使われた用語“細胞培養用培地”は、細胞を培養するために用いられた培地を意味し、具体的に調節T細胞、より具体的にCD4+CD25+CD127-細胞を培養するための培地を意味する。試験管内で(in vitro)細胞成長及び生存のために細胞が必要とする成分を含有するか、或いは細胞成長及び生存を助ける成分を含有する。具体的に、前記成分は、ビタミン、必須又は非必須アミノ酸、及び微量元素であってよい。前記培地は、細胞、好ましくは真核細胞、より好ましくは調節T細胞、さらに好ましくはCD4+CD25+CD127- T細胞又はCD4+CD25+Foxp3+ T細胞の培養に用いられる培地であってよい。
【0016】
本発明に係る前記細胞培養培地は、アミノ酸成分、ビタミン成分、無機塩成分、その他成分及び精製水から構成され、
a)前記アミノ酸成分は、グリシン、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-トレオニン、L-セリン、L-システイン、L-メチオニン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-リシン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-プロリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、オルニチン、シトルリン、ホモセリン、トリヨードチロシン、チロキシン及びジオキソフェニルアラニンからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つのアミノ酸又はその組合せであり、好ましくは、グリシン、L-アラニン、L-アルギニン、L-システイン、L-グルタミン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-メチオニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン及びL-バリンからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つのアミノ酸又はその組合せであり、
b)前記ビタミン成分は、ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、葉酸、ナイアシンアミド、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ビタミンB12、塩化コリン、i-イノシトール及びアスコルビン酸からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つのビタミン又はその組合せであり、好ましくは、i-イノシトール、チアミン塩酸塩、ナイアシンアミド及び ピリドキシン塩酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上のビタミン又はその組合せであり、
c)前記無機塩成分は、塩化カルシウム(CaCl)(無水)、硫酸銅五水和物(CuSO-5H2)、硫酸第二鉄七水和物(FeSO-7HO)、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(MgSO)(無水)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(NaHPO-HO)、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO-7HO)、硝酸第2鉄九水和物(Fe(NO・9HO)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの無機塩又はその組合せであり、好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)(無水)及びリン酸二水素ナトリウム一水和物(NaHPO-HO)からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの無機塩又はその組合せであり、
d)前記その他成分は、D-グルコース(デキストロース)、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチンNa、チミジン、リノール酸、リポ酸、アデノシン、シチジン、グアノシン、ウリジン、2’-デオキシアデノシン、2’-デオキシシチジンHCl、2’-デオキシグアノシンからなる群から選ばれる少なくとも一つのその他成分又はその組合せであり、好ましくは、ピルビン酸ナトリウムでよい。
e)精製水は、上記のアミノ酸、ビタミン、無機塩及びその他成分を溶解させるために使用され、1次以上の蒸留を経て得られる又はフィルターで精製された水であってよい。
また、本発明に係る前記細胞培養培地に成長因子又はサイトカインをさらに含むことができる。前記成長因子としてIGF、bFGF、TGF、HGF、EGF、VEGF又はPDGFなどを単独又は2種以上使用できるが、これに特に制限するものではない。前記サイトカインとしてIL-1、IL-4、IL-6、IFN-γ、IL-10又はIL-17などを単独又は2種以上使用できるが、これに特に制限するものではない。
【0017】
本明細書で使われる用語“T細胞”は、抗原特異的な適応免疫を主管するリンパ球の一つを意味する。T細胞は、まだ抗原に出会っていない未接触T細胞(naive T cell)と、抗原に出会って成熟したT細胞、及び記憶T細胞に分類される。このとき、前記成熟したエフェクターT細胞は、ヘルパーT細胞、細胞毒性T細胞及び自然殺傷T細胞を含む。
【0018】
本明細書で使われる用語“ヘルパーT細胞(helper T cell又はTh cell)”は、他の白血球の分化及び活性化を調節することによって体液性免疫を促進する細胞のことを指す。細胞表面にCD4タンパク質を有することから、CD4+ T細胞ともいう。ヘルパーT細胞は、細部機能によって、さらに、Th1、Th2、Th17、Tregに分類されてよい。Th1細胞は、インターフェロンガンマ(interferon-gamma,IFN-γ)と腫瘍壊死因子ベータ(tumor necrosis factor beta,TNF-β)を分泌することにより、大食細胞の内部でエンドソームとリソソームが融合してエンドリソソームを形成するように誘導する。一方、Th2細胞は、種々のインターロイキン(interleukin,IL)を分泌し、B細胞を形質細胞に分化させる。Th17細胞は、インターロイキン-17(IL-17)を分泌し、好中性白血球を集まらせる。
【0019】
本明細書で使われる用語“調節T細胞(Regulatory T cell,Treg)”は、自然調節T細胞(natural regulatory T cells,nTreg)又は誘導調節T細胞(induced regulatory T cells,iTreg)を含む。本明細書において、調節T細胞は、CD4+CD25+ T細胞、CD4+CD25+CD127low/- T細胞又はCD4+CD25+Foxp3+ T細胞を含む。前記調節T細胞は、免疫反応を抑制することにより、免疫の恒常性を維持し、自己免疫反応などを遮断する。
【0020】
本明細書で使われる用語“細胞毒性T細胞”は、グランザイム(granzyme)やパーフォリン(perforin)のような細胞毒性物質を分泌し、ウイルスに感染された細胞や腫瘍細胞などを殺す細胞である。細胞表面にCD8タンパク質を有することから、CD8T細胞ともいう。ヘルパーT細胞とは逆に、細胞性免疫を媒介してウイルス及び癌細胞を除去する。
【0021】
本明細書で使われる用語“自然殺傷T細胞”は、ヘルパーT細胞及び細胞毒性T細胞に比べて少ない割合で分布するエフェクターT細胞の一つを意味する。自然殺傷T細胞は、細胞表面にT細胞のようなT細胞抗原受容体(T cell receptor,TCR)を有しているが、NK1.1のような自然殺害細胞特異的な分子も有している。自然殺傷T細胞は、ガンマインターフェロン、インターロイキン-4などを分泌して免疫反応を調節する役割を担う。
【0022】
本明細書で使われる用語“記憶T細胞”は、抗原を認知したT細胞が分化及び選別過程を経た後に長期間生存しているが、後で抗原が再度侵入すると素早く活性化されてエフェクターT細胞の機能を果たし得る潜在的能力を有する細胞を意味する。未接触(naive)T細胞が抗原に出会って活性化された状態の細胞、又はエフェクターT細胞が、インターロイキン-7とインターロイキン-15の影響を受けて長期生存可能な記憶T細胞に分化する。
【0023】
このとき、前記IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体は、培養培地内に1nM~2,000nMで含まれてよい。また、前記二量体は、1nM~1、000nM、又は1nM~500nMで含まれてよい。また、前記二量体は、2nM~300nM、5nM~100nM、10nM~80nM、20nM~70nM、又は40nM~50nMで含まれてよい。具体的に、前記融合タンパク質二量体は、培地内に1nM、3.2nM、10nM、50nMで含まれてよい。
【0024】
IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体
【0025】
本明細書で使われる用語“IL-2”又は”インターロイキン-2”は、別に断りのない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含めて任意の脊椎動物供給源から得た任意の野生型IL-2を意味する。前記IL-2は、動物細胞から得られたものであってもよいが、IL-2を生産できる組換え細胞から得られたものも含む。また、前記IL-2は、野生型IL-2又はその変異体であってよい。
【0026】
本明細書ではIL-2或いはその変異体を総称して“IL-2タンパク質”或いは“IL-2ポリペプチド”と表現することもある。IL-2、IL-2タンパク質、IL-2ポリペプチド、及びIL-2変異体は、例えば、IL-2受容体(receptor)に特異的に結合する。この特異的な結合は、当業者に知られた方法で確認できる。
【0027】
前記IL-2の一具体例は、配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を有してよい。また、このとき、前記IL-2は、成熟した形態であってよい。具体的に、前記成熟したIL-2は、信号配列を含まないものであってよく、配列番号10のアミノ酸配列を有するものであってよい。このとき、前記IL-2は、野生型IL-2のN末端又はC-末端の一部が欠失した(truncated)断片を含む概念として用いられてよい。
【0028】
また、前記IL-2の断片は、配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を有するタンパク質のN末端から連続して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個又は25個のアミノ酸が欠失した形態であってよい。また、前記IL-2の断片は、配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を有するタンパク質のC末端から連続して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個又は25個のアミノ酸が欠失した形態であってよい。
【0029】
本明細書で使われる用語“IL-2変異体”は、全長(full-length)IL-2又は上述したIL-2の断片のアミノ酸の一部が置換された形態を意味する。すなわち、IL-2変異体は、野生型IL-2又はその断片と異なるアミノ酸配列を有してよい。ただし、前記IL-2変異体は、野生型IL-2と同等又は類似の活性を有してよい。ここで、“IL-2活性”は、例えば、IL-2受容体に特異的に結合することを意味でき、この特異的結合は、当業者に知られた方法で測定できる。
【0030】
具体的に、前記IL-2変異体は、野生型IL-2のアミノ酸の一部が置換されたものであってよい。アミノ酸置換によるIL-2変異体の一具体例としては、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸のうち少なくとも一つが置換されたものでよい。
【0031】
具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目、61番目又は72番目のアミノ酸の少なくともいずれか一つが他のアミノ酸に置換されたものでよい。のみならず、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列のN末端の一部分が欠失した形態である場合、配列番号10のアミノ酸配列において相補的に対応する位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されてよい。例えば、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列を有する場合に、前記IL-2の変異体は、配列番号35のアミノ酸配列において58番目、62番目、65番目、81番目又は92番目のアミノ酸の少なくともいずれか一つが他のアミノ酸に置換されたものでよい。これらはそれぞれ、配列番号10のアミノ酸配列の38番目、42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸残基にそれぞれ該当する。一具体例によれば、IL-2活性が維持される限り、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、或いは10個のアミノ酸が置換されてよい。さらに他の具体例によれば、1個から5個までのアミノ酸が置換されてよい。
【0032】
一具体例として、前記IL-2変異体は、2箇所のアミノ酸が置換された形態であってよい。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び42番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び45番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目及び45番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。
【0033】
さらに、前記IL-2変異体は、3箇所のアミノ酸が置換された形態であってよい。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目及び45番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目、45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目、45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において45番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。
【0034】
また、前記IL-2変異体は、4箇所のアミノ酸が置換された形態であってよい。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものでよい。
【0035】
さらに、前記IL-2変異体は、5箇所のアミノ酸が置換された形態であってよい。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸が全て他のアミノ酸に置換されたものでよい。
【0036】
このとき、前記置換によって導入される“他のアミノ酸”は、アラニン(alanine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン(Asparagine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、システイン(cysteine)、グルタミン酸(glutamic acid)、グルタミン(glutamine)、ヒスチジン(histidine)、イソロイシン(isoleucine)、ロイシン(leucine)、リジン(lysine)、メチオニン(methionine)、フェニルアラニン(phenyl alanine)、プロリン(proline)、セリン(serine)、トレオニン(threonine)、トリプトファン(tryptophan)、チロシン(tyrosine)及びバリン(valine)からなる群から選ばれるいずれか一つであってよい。ただし、前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、前記配列番号10のアミノ酸配列において38番目はアルギニンに置換できなく、42番目はフェニルアラニンに置換できなく、45番目はチロシンに置換できなく、61番目はグルタミン酸に置換できなく、72番目はロイシンに置換できない。
【0037】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において38番目のアミノ酸であるアルギニンは、アルギニン以外のアミノ酸に置換されてよい。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において38番目のアミノ酸であるアルギニンはアラニンに置換(R38A)されてよい。
【0038】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において42番目のアミノ酸であるフェニルアラニンは、フェニルアラニン以外のアミノ酸に置換されてよい。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において42番目のアミノ酸であるフェニルアラニンは、アラニンに置換(F42A)されてよい。
【0039】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において45番目のアミノ酸であるチロシンは、チロシン以外のアミノ酸に置換されてよい。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において45番目のアミノ酸であるチロシンはアラニンに置換(Y45A)されてよい。
【0040】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において61番目のアミノ酸であるグルタミン酸は、グルタミン酸以外のアミノ酸に置換されてよい。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において61番目のアミノ酸であるグルタミン酸はアルギニンに置換(E61A)されてよい。
【0041】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において72番目のアミノ酸であるロイシンは、ロイシン以外のアミノ酸に置換されてよい。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換の場合、配列番号10のアミノ酸配列において72番目のアミノ酸であるロイシンはグリシンに置換(L72G)されてよい。
【0042】
具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列においてR38A、F42A、Y45A、E61R及びL72Gからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの置換が起きたものでよい。
【0043】
具体的に、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A、E61R及びL72Gからなる群から選ばれる位置において2箇所、3箇所、4箇所又は5箇所の位置でアミノ酸置換が起きてよい。
【0044】
また、前記IL-2変異体は、2箇所のアミノ酸が置換された形態であってよい。具体的に、前記IL-2変異体は、R38A及びF42Aの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A及びY45Aの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A及びE61Rの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A及びY45Aの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A及びE61Rの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、E61R及びL72Gの置換が起きたものでよい。
【0045】
さらに、前記IL-2変異体は、3箇所のアミノ酸が置換された形態であってよい。具体的に、前記IL-2変異体は、R38A、F42A及びY45Aの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A及びE61Rの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、Y45A、E61Rの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、Y45A及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、Y45A及びE61Rの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、Y45A及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、E61R及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、Y45A、E61R及びL72Gの置換が起きたものでよい。
【0046】
また、前記IL-2変異体は、4箇所のアミノ酸が置換された形態であってよい。具体的に、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A及びE61Rの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、E61R及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、Y45A、E61R及びL72Gの置換が起きたものでよい。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、Y45A、E61R及びL72Gの置換が起きたものでよい。
【0047】
さらに、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A、E61R及びL72Gの置換が起きたものでよい。
【0048】
好ましくは、前記IL-2変異体の一具体例は、配列番号10のアミノ酸配列において、下記(a)~(d)の組合せから選ばれるいずれか一つの組合せの置換が起きたものでよい:
(a)R38A/F42A
(b)R38A/F42A/Y45A
(c)R38A/F42A/E61R
(d)R38A/F42A/L72G
【0049】
このとき、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列を有する場合に、配列番号10と相補的に対応する位置にアミノ酸置換を有し得る。また、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列の断片である場合にも、配列番号10と相補的に対応する位置のアミノ酸が置換されてよい。
【0050】
具体的に、前記IL-2の変異体は、配列番号6、22、23又は24のアミノ酸配列を有するものであってよい。
【0051】
また、前記IL-2変異体は、生体内で低い毒性を有することを特徴とするものであってよい。このとき、上記の“生体内で低い毒性”とは、IL-2がIL-2受容体のアルファ鎖(IL-2Rα)と結合して誘発される副作用であってよい。前記IL-2とIL-2Rαとの結合による副作用を改善させる目的で様々なIL-2変異体が開発されており、このようなIL-2変異体は、米国特許第5,229,109号及び大韓民国特許第10-1667096号に開示されたものを使用することができる。特に、本出願で記述されるIL-2の変異体は、IL-2受容体のアルファ鎖(IL-2Rα)と結合力が低いため、生体内毒性が野生型IL-2に比べて低い。
【0052】
本明細書で使われる用語“CD80”は、“B7-1”とも呼ばれ、樹状細胞、活性化されたB細胞、及び単核球に存在する膜タンパク質である。CD80は、T細胞の活性化と生存に必須である共刺激信号を提供する。CD80は、T細胞表面に存在する異なる2つのタンパク質であるCD28及びCTLA-4に対するリガンドとして知られている。CD80は288個のアミノ酸から構成されており、具体的に、配列番号11のアミノ酸配列を有するものであってよい。また、本明細書において“CD80タンパク質”は、全長CD80又はCD80断片を意味する。
【0053】
本明細書で使われる用語“CD80断片”とは、CD80の切断型を意味する。また、前記CD80断片は、CD80の細胞外ドメインであってよい。CD80断片の一具体例としては、CD80の信号配列であるN末端から1番目~34番目のアミノ酸が除外されたものでよい。具体的に、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目~288番目のアミノ酸から構成されたタンパク質であってよい。また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目~242番目のアミノ酸から構成されたタンパク質であってよい。また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目~232番目のアミノ酸から構成されたタンパク質であってよい。また、また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目~139番目のアミノ酸から構成されたタンパク質であってよい。また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の142番目~242番目のアミノ酸から構成されたタンパク質であってよい。前記一実施例として、CD80断片は、配列番号2のアミノ酸配列を有するものであってよい。
【0054】
また、前記IL-2タンパク質及び前記CD80タンパク質は、リンカー或いはキャリア(carrier)によって結合したものでよい。具体的に、前記IL-2又はその変異体及び前記CD80(B7-1)又はその断片は、リンカー或いはキャリアによって結合したものでよい。本明細書において、リンカーとキャリアとが互換して使用されることもある。
【0055】
前記リンカーは、2つのタンパク質を連結させる。リンカーの一具体例としては、1個~50個のアミノ酸、アルブミン又はその断片、又は免疫グロブリンのFcドメインなどを含むことができる。このとき、前記免疫グロブリンのFcドメインは、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含み、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域及び軽鎖定常領域1(CH1)は含まないタンパク質を意味する。前記免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgE、IgD又はIgMであってよく、好ましくはIgG4であってよい。このとき、野生型免疫グロブリンG4のFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有するものであってよい。
【0056】
また、前記免疫グロブリンのFcドメインは、野生型Fcドメインの他、Fcドメイン変異体であってもよい。また、本明細書で使われる用語“Fcドメイン変異体”は、野生型Fcドメインの糖鎖形態(glycosylation pattern)と異なるか、野生型Fcドメインに比べて増加した糖鎖、野生型Fcドメインに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された(deglycosylated)形態であってよい。また、無糖鎖(aglycosylated)Fcドメインも含まれる。Fcドメイン或いは変異体は、培養条件或いはホストの遺伝子操作によって含有量が調節されたシアル酸(sialic acid)、フコシル化(fucosylation)、糖化(glycosylation)を有するようにしたものでよい。
【0057】
また、化学的方法、酵素的方法、及び微生物を用いる遺伝工学的エンジニアリング方法などのような通常の方法で免疫グロブリンのFcドメインの糖鎖を変形させることができる。また、前記Fcドメイン変異体は、免疫グロブリンはIgG、IgA、IgE、IgD又はIgMのFc領域が混合された形態であってよい。また、前記Fcドメイン変異体は、前記Fcドメインの一部のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された形態であってよい。前記Fcドメイン変異体の一具体例としては、配列番号12のアミノ酸配列を有するものでよい。
【0058】
融合タンパク質は、Fcドメインをリンカー(或いは、キャリア)としてそのN末端とC末端にそれぞれCD80とIL-2タンパク質が連結されるか或いはIL-2とCD80が連結された構造を有してよい(図1A)。FcドメインのN末端或いはC末端とCD-80或いはIL-2との連結は、任意にリンカーペプチドによってなされてよい。
【0059】
具体的に、前記融合タンパク質は、下記構造式(I)又は(II)によってなされたものでよい:
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
このとき、前記構造式(I)及び(II)において、
前記N’は、融合タンパク質のN末端であり、
前記C’は、融合タンパク質のC末端であり、
前記Xは、CD80タンパク質であり、
前記Yは、IL-2タンパク質であり、
前記リンカー(1)及びリンカー(2)は、ペプチドリンカーであり、
前記n及びmはそれぞれ独立に、O又は1である。
【0060】
好ましくは、前記融合タンパク質は、構造式(I)によってなされたものでよい。前記IL-2タンパク質は、上述した通りである。また、前記CD80タンパク質は、上述した通りである。一具体例によれば、IL-2タンパク質は、野生型IL-2と比較して、1個から5個までのアミノ酸が置換されたIL-2変異体であってよい。CD80タンパク質は、野生型CD80のN末端或いはC末端から連続して約34個までのアミノ酸残基が欠失した(truncated)断片であってよい。或いは、CD80タンパク質は、T細胞表面受容体(T cell surface receptors)CTLA-4とCD28に結合する活性を有する細胞外免疫グロブリン様ドメインであってよい。
【0061】
具体的に、前記融合タンパク質は、配列番号9、26、28又は30のアミノ酸配列を有するものであってよい。さらに他の具体例によれば、融合タンパク質は、配列番号9、26、28又は30のアミノ酸配列に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%或いは100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。このとき、同一性は、例えば、パーセント相同性、NCBI(National Center of Biotechnology Information)のBlastN softwareのような相同性比較ソフトウェアによって決定されてよい。
【0062】
前記CD80タンパク質とFcドメインとの間にはペプチドリンカー(1)が含まれてよい。前記ペプチドリンカー(1)は、5~80個の連続したアミノ酸、20~60個の連続したアミノ酸、又は25~50個の連続したアミノ酸、又は30~40個のアミノ酸からなってよい。一具体例として、ペプチドリンカー(1)は、30個のアミノ酸からなってよい。また、ペプチドリンカー(1)は、少なくとも一つのシステインを含むことができる。具体的に、1個、2個又は3個のシステインを含むことができる。また、前記ペプチドリンカー(1)は、免疫グロブリンのヒンジに由来するものでよい。一具体例では、前記ペプチドリンカー(1)が配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであってよい。
【0063】
前記ペプチドリンカー(2)は、1~50個の連続したアミノ酸、又は3~30個の連続したアミノ酸、又は5~15個のアミノ酸からなってよい。一具体例として、前記ペプチドリンカー(2)は、(G4S)n(ここで、nは1~10の整数)であってよい。このとき、(G4S)nにおいて、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってよい。一実施例として、前記ペプチドリンカー(2)が配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであってよい。
【0064】
本発明の他の側面は、前記IL-2タンパク質及び前記CD80タンパク質を含む融合タンパク質が2個結合した二量体を提供する。前記IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質は、上述した通りである。
【0065】
このとき、二量体を構成する融合タンパク質間の結合は、リンカー内に存在するシステインによって二硫化結合によってなされたものでよいが、これに限定されない。二量体を構成する融合タンパク質は、同一のものでもよく、互いに異なる融合タンパク質であってもよい。好ましくは、前記二量体は、ホモ二量体(homodimer)であってよい。前記二量体を構成する融合タンパク質の一実施例は、配列番号9のアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。
【0066】
調節T細胞培養方法
本発明のさらに他の側面としては、IL-2タンパク質又はその変異体及びCD80タンパク質又はその断片を含む融合タンパク質二量体が含まれた培地でCD4+CD25+CD127- T細胞を培養する段階を含む調節T細胞を培養する方法を提供する。
【0067】
このとき、前記CD4+CD25+CD127- T細胞は、血液細胞から得られたものでよい。このとき、CD4+CD25+CD127- T細胞は、PBMC(peripheral blood mononuclear cells)から分離されたものでよい。又は、前記CD4+CD25+CD127- T細胞は、血液細胞でCD4+CD25+CD127- T細胞を特異的に増殖させて得たものでよい。又は、前記CD4+CD25+CD127- T細胞は、PBMCからCD4- T細胞を除去した後、CD4+細胞から得てもよい。また、CD4+ T細胞の分離は、抗CD4抗体を用いて分離されてよく、一実施例では、抗CD4抗体が結合したビーズを用いて分離した。また、CD25+ T細胞の分離は、抗CD25+抗体を用いて分離されてよい。特に、CD4+、CD25+及びCD127-であるT細胞を分離することによって調節T細胞を分離することができる。
【0068】
前記培地は、従来使用されている培地であってよい。好ましくは、CD4+CD25+CD127- T細胞に最適化された培地であってよい。一具体例では、表3及び表4に開示するように、RPMI1640培地又はTexMACS培地にFBS、HEPES、L-グルタミン及び2-メルカプトエタノールを添加した培地であってよい。また、前記培地は、レチノイン酸(Retinoic acid)をさらに含むことができる。また、前記培地は、ペニシリン(Penicillin)及び/又はストレプトマイシン(Streptomycin)をさらに含むことができる。
【0069】
このとき、前記調節CD4+ T細胞を前記培地に、1日~30日、2日~20日培養できる。また、3日~10日培養でき、4日~6日培養できる。
【0070】
一方、前記CD4+CD25+CD127- T細胞は、CD4+ T細胞を培養する段階;又は、CD25+ T細胞を培養する段階によって得られたものでよい。
【0071】
このとき、前記CD4+ T細胞及びCD25+ T細胞はそれぞれ、血液細胞から得られたものでよい。このとき、CD4+ T細胞及びCD25+ T細胞のそれぞれは、PBMC(peripheral blood mononuclear cells)から分離されたものであるか、血液細胞でCD4+ T細胞又はCD25+ T細胞を特異的に増殖させて得たものでよい。又は、PBMCでCD4- T細胞又はCD25- T細胞を除去した後、CD4+ T細胞又はCD25+ T細胞を得ることができる。また、CD4+ T細胞の分離は、抗CD4抗体を用いて分離されてよく、一実施例では、抗CD4抗体が結合したビーズを用いて分離した。また、CD25+ T細胞の分離は、抗CD25+抗体を用いて分離されてよい。特に、CD4+ T細胞又はCD25+ T細胞からCD4+、CD25+及びCD127-であるT細胞を分離することによって調節T細胞を分離することができる。
【0072】
取得された調節T細胞及びその用途
【0073】
本発明のさらに他の側面として、前記培養方法によって得られた調節T細胞を提供する。
【0074】
本発明のさらに他の側面として、上述した方法によって得られた調節T細胞を有効成分として含む調節T細胞媒介性疾患治療用組成物を提供する。
【0075】
このとき、前記培養方法によって得られた調節T細胞は、Foxp3+の発現量が増加したものでよい。本明細書で使われた用語“Foxp3”は、スカルフィン(scurfin)と呼ばれるタンパク質である。前記タンパク質は、調節T細胞の調節機序経路に関与するタンパク質であって、調節T細胞のマーカーとして知られている。好ましくは、前記得られた調節T細胞は、CD4+CD25+CD127-Foxp3+ T細胞であってよい。
【0076】
本明細書で使われた用語“調節T細胞媒介性疾患”は、調節T細胞の異常又は欠乏によって誘導される疾患を意味し、具体的には、炎症性疾患又は自己免疫性疾患であることを特徴とし得る。
【0077】
本発明の一具体例として、前記炎症性疾患は、ループス、シェーグレン症候群、リウマチ性関節炎、線維筋炎、硬皮症、強直性脊椎炎、ベーチェット病、アフタ口内炎、ギランバレー症候群、円形脱毛症、皮膚筋炎、クローン病、大膓炎、結節性多発動脈炎、再発性多発軟骨炎及び自己免疫血小板減少症からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とし得る。また、本発明の一具体例として、前記自己免疫性疾患は、リウマチ性関節炎、全身性硬皮症、膵臓細胞抗体によるインスリン依存性小児期糖尿病、円形脱毛症、乾癬、天疱瘡、喘息、アフタ口内炎、慢性甲状腺炎、一部後天性再生不良性貧血、一次性肝硬変、潰瘍性大膓炎、ベーチェット病、クローン病、シリコウシス、アスベストシス、IgA腎臓疾患、連鎖状球菌感染後糸球体腎炎、シェーグレン症候群、ギランバレー症候群、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性脳脊髓炎、重症筋無力症、グレーブス甲状腺亢進症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、線維組織炎、側頭動脈炎、ウィルソン病、ファンコーニ症候群、多発性骨髄腫及び全身性紅斑性ループスからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とし得る。
【0078】
本発明の組成物は、薬剤学的に許容される担体及び/又は添加物などを含むことができる。例えば、滅菌水、生理食塩水、寛容の緩衝剤(リン酸、クエン酸、その他有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤、界面活性剤、懸濁剤、等張化剤、又は保存剤などを含むことができる。また、バイオポリマーなどの有機物、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)などの無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸ポリマー又はコポリマー、ポリエチレングリコールポリマー又はコポリマー及びその化学的誘導体、そしてそれらの混合組成物を利用できるが、これに限定されるものではない。前記安定剤としては、例えば、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、亜硫酸ナトリウム、メタ硫酸ナトリウムなどを使用することができる。前記酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及びその塩、L-アスコルビン酸パルミテート、L-アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピル又はエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのキレート剤を使用することができる。前記懸濁剤は、例えば、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどを使用することができる。前記等張化剤としては、例えば、D-マンニトール、ソルビトールなどを使用することができる。前記保存剤としては、例えば、パラオキシベンゾ酸メチル、パラオキシベンゾ酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを使用することができる。
【0079】
収得された調節T細胞を用いた治療方法
【0080】
本発明のさらに他の側面として、前記調節T細胞を調節T細胞媒介性疾患を有する個体に投与する段階を含む調節T細胞媒介性疾患治療方法を提供する。このとき、調節T細胞及び調節T細胞媒介性疾患は、上述した通りである。
【0081】
本発明のさらに他の側面として、調節T細胞媒介性疾患の治療のための前記調節T細胞の用途を提供する。
【実施例
【0082】
以下、本発明を下記実施例を用いてより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0083】
製造例1.hCD80-Fc-IL-2変異体(2M)の製造:GI-101
【0084】
ヒトCD80断片、Fcドメイン及びIL-2変異体を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、CD80断片(配列番号2)、リンカー結合のIgヒンジ(配列番号3)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及び2つのアミノ酸が置換されたIL-2変異体(2M)(R38A、F42A)(配列番号6)をN末端から順に含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号8)を含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチドを合成し、pcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入して配列番号9の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO 8%の濃度である環境で7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を“GI-101”と命名した。
【0085】
精製は、MabSelect SuRe protein A resinが含まれたクロマトグラフィーを用いて精製した。25mM Tris、25mM NaCl、pH7.4の条件で融合タンパク質を結合させた。その後、100mM NaCl、pH3の100mMの酢酸で溶出した。pH9の20%の1M Tris-HClを回収用チューブに入れ、融合タンパク質を回収した。回収された融合タンパク質を16時間PBSバッファーで透析して変えた。
【0086】
その後、TSKgel G3000SWXLカラム(TOSOH Bioscience)を使用し、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)を用いて、時間による280nm波長での吸光度を測定し、高濃度融合タンパク質を確保した。このとき、分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルー(coomassie blue)で染色し、その純度を確認した(図1B)。NanoDropを用いて検出したとき、2.78mg/mlの濃度で融合タンパク質が含まれていることを確認した(図1C)。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、図1Dに示した通りである。
【0087】
製造例2.Fc-IL-2変異体(2M)二量体の製造:Fc-IL-2v2
【0088】
Fcドメイン及びIL-2変異体を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、Igヒンジ(配列番号38)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及び2つのアミノ酸が置換されたIL-2変異体(2M)(R38A、F42A)(配列番号6)を含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号45)をN末端からこの順に含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチド合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入して配列番号44の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO 8%の濃度である環境で7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を“Fc-IL2v2”と命名した。
【0089】
前記精製及び融合タンパク質の回収は、前記製造例1と同じ方法で行った。分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルーで染色してその純度を確認した(図3A)。その結果、前記融合タンパク質は二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、図3Bに示した通りである。
【0090】
製造例3.Fc-IL-2二量体の製造:Fc-IL-2wt
【0091】
Fcドメイン及び野生型IL-2を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、Igヒンジ(配列番号38)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及び野生型IL-2(配列番号10)を含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号43)をN末端からこの順に含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチド合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入して配列番号42の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO 8%の濃度である環境で7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を“Fc-IL2wt”と命名した。
【0092】
前記精製及び融合タンパク質の回収は、前記製造例1と同じ方法で行った。分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルーで染色してその純度を確認した(図3C)。その結果、前記融合タンパク質は二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、図3Dに示した通りである。
【0093】
製造例4.hCD80-Fc-IL-2野生型二量体の製造:hCD80-Fc-IL-2wt
【0094】
ヒトCD80断片、Fcドメイン及びIL-2野生型タンパク質を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、CD80断片(配列番号2)、リンカー結合のIgヒンジ(配列番号3)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及びIL-2野生型(配列番号10)をN末端からこの順に含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号41)を含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチドを合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入して配列番号46の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO 8%の濃度である環境で7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を“hCD80-Fc-IL2wt”と命名した。
【0095】
精製は、MabSelect SuRe protein A resinが含まれたクロマトグラフィーを用いて精製した。25mM Tris、25mM NaCl、pH7.4の条件で融合タンパク質を結合させた。その後、100mM NaCl、pH3の100mMの酢酸で溶出した。pH9の20%の1M Tris-HClを回収用チューブに入れ、融合タンパク質を回収した。回収された融合タンパク質を16時間PBSバッファーで透析して変えた。
【0096】
その後、TSKgel G3000SWXLカラム(TOSOH Bioscience)を使用し、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)を用いて、時間による280nm波長での吸光度を測定し、高濃度融合タンパク質を確保した。このとき、分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルー(coomassie blue)で染色してその純度を確認した(図4A)。その結果、前記融合タンパク質は二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、図4Bに示した通りである。
【0097】
製造例5.hCD80-Fc二量体の製造:hCD80-Fc
【0098】
ヒトCD80断片及びFcドメインを含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、CD80断片(配列番号2)、リンカー結合のIgヒンジ(配列番号3)及びFcドメイン(配列番号4)をN末端からこの順に含む融合タンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号39)を、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチドを合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入して配列番号40の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO 8%の濃度である環境で7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を“hCD80-Fc”と命名した。
【0099】
精製はMabSelect SuRe protein A resinが含まれたクロマトグラフィーを用いて精製した。25mM Tris、25mM NaCl、pH7.4の条件で融合タンパク質を結合させた。その後、100mM NaCl、pH3の100mMの酢酸で溶出した。pH9の20%の1M Tris-HClを回収用チューブに入れ、融合タンパク質を回収した。回収された融合タンパク質を16時間PBSバッファーで透析して変えた。
【0100】
その後、TSKgel G3000SWXLカラム(TOSOH Bioscience)を使用し、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)を用いて、時間による280nm波長での吸光度を測定し、高濃度融合タンパク質を確保した。このとき、分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルー(coomassie blue)で染色してその純度を確認した(図2A)。その結果、前記融合タンパク質は二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、図2Bに示した通りである。
【0101】
準備例1.調節T細胞培養のための培養用組成物
【0102】
準備例1.1.CD4+細胞培養組成物
【0103】
下記のような組成でCD4+細胞培養用培地を製造した。このとき、基本成分の培地を製造した後、添加成分であるGI-101、GI-101WT、hCD80-Fc、Fc-IL-2v2又はFc-IL-2wtを使用前に添加した。
【0104】
【表1】
【表2】
【0105】
準備例1.2.CD4+CD25+CD127-細胞培養組成物
下記のようなCD4+CD25+CD127-細胞培養用培地を製造した。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
実施例1.IL-2タンパク質及びCD80タンパク質を含む融合タンパク質二量体の調節T細胞増殖程度確認
【0109】
実施例1.1.調節T細胞増殖刺激用ビーズ製造
【0110】
分離されたCD4+細胞において調節T細胞の増殖を刺激するために、MACS GMP ExpAct Treg Kit(Cat#:170-076-119)(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて調節T細胞増殖刺激用ビーズ(bead)を準備した。具体的に、調節T細胞の増殖刺激用ビーズが含まれたMACS GMP ExpAct Treg Kit内試薬を新しいチューブ(tube)に移し、前記チューブをマグネット(magnet)で1分間待機後に上清液を除去してビーズ(bead)を分離した。このとき、MACS GMP ExpAct Treg Kit内試薬は、2×10個の細胞数当たりに1μLを使用した。ビーズ分離後に、添加成分を含まない表1又は表2(基本成分のみ含む)のCD4+細胞培養組成物を0.5mL~1mL追加してビーズを溶いた。
【0111】
実施例1.2.CD4+ T細胞の分離
【0112】
購入したPBMC(Cat#:SER-PBMC-200-F)(Zen-Bio.Inc,NC27709,USA)の細胞数を測定した。その後、300×gで10分間遠心分離した。その後、上澄バッファー液を除去後に、1×10細胞数当たりに80μLのMACsバッファーを追加して細胞ペレットを溶いた。その後、1×10細胞数当たりに20μLのCD4 MicroBeads(Cat#:130-045-101)(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を分注しタッピングして十分に混ぜた。その後、4℃~8℃で15分間反応させた。
【0113】
洗浄のために10mLのMACsバッファーを追加後に300×gで10分間遠心分離した。その後、上清液除去後に、1×10細胞数当たりに500μLのMACsバッファーを追加して細胞ペレット(Cell pellet)を溶いた。その後、LSカラムを準備後に3mLのMACsバッファー(buffer)を流した。前記で準備した細胞懸濁液をLSカラム(Cat#:130-042-401)(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)に通過させた。LSカラムについている細胞(Cell)が十分に洗浄されるように3mLのMACsバッファーを3回流した。その後、LSカラムをマグネットスタンド(Magnet stand)から分離後に3mLのMACsバッファーを入れ、ピストンで圧力をかけてCD4+細胞を回収した。その後、300×gで5分間遠心分離した。その後、上清液除去後に細胞数を測定した。
【0114】
また、実施例1.1で準備したビーズが含まれた調節T細胞培養液を、前記で分離したCD4+ T細胞に接種した。
【0115】
実施例1.3.CD4+ T細胞培養
【0116】
6ウェルプレートに、実施例1.2で準備したCD4+細胞を1×10cells/mLで播種(seeding)し、添加物質としてGI-101(50nM)、GI-101_WT(50nM)、CD80-Fc二量体(50nM)+Fc-IL-2v2二量体(50nM)又はCD80-Fc二量体(50nM)+Fc-IL-2wt二量体(50nM)をそれぞれ含む表1又は表2の細胞培養組成物条件下に、CD4+細胞を培養した。6ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシー(confluency)を示す際に、25Tフラスコに継代培養した。25Tフラスコの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、75Tフラスコに継代培養した。75Tフラスコの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、最終的に細胞を得た。
【0117】
実施例1.4.CD4+CD25+CD127-細胞分離
【0118】
実施例1.3で回収したCD4+細胞を1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。また、上清液を除去し、1:200にFACSバッファーに希釈したFc block(biolegend,cat#422302)1mLを入れて氷に10分間放置した後、50ul CD4-Pacific Blue(BioLegend,cat#317429)、50ul CD25-PE/Cy7(BioLegend,cat#356108)、50ul CD127-PE(BD,cat#557938)を入れて氷に20分間放置した。その後、4mL FACSバッファーをさらに入れ、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。その後、上清液の除去後にFACSバッファーを3mL入れ、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。その後、上清液を除去し、FACSバッファー3mLに細胞を溶いた。最後に、BD FACS Ariaを用いてCD4+CD25+CD127-細胞を分離した。
【0119】
実施例1.5.CD4+CD25+CD127-細胞培養
【0120】
前記実施例1.4で分離されたCD4+CD25+CD127-細胞を3×10cells/mLで48ウェルプレートに播種し、これと同時に、実施例1.1のように、調節T細胞の増殖を刺激するために2×10個の細胞数当たりに1μL MACS GMP ExpAct Treg Kit(Cat#:170-076-119)(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)からビーズ(beads)を分離した。前記分離したビーズを、添加成分を含まない表3又は表4(基本成分のみ含む)の細胞培養組成物(0.5mL~1mL)に溶いた後、実施例1.4で得たCD4+CD25+CD127-細胞を播種したウェルプレートに添加した。その後、添加物質としてGI-101(50nM)、GI-101_WT(50nM)、CD80-Fc(50nM)+Fc-IL-2v2(50nM)又はCD80-Fc(50nM)+Fc-IL-2wt(50nM)をそれぞれ含む表3又は表4の細胞培養組成物条件下にCD4+CD25+CD127-細胞を培養した。
【0121】
培養時に、48ウェルプレート上で細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、24ウェルプレートで継代培養した。24ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、12ウェルプレートで継代培養した。12ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、6ウェルプレートで継代培養した。6ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、25Tフラスコで継代培養した。25Tフラスコの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、75Tフラスコで継代培養した。175Tフラスコで継代培養して細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、最終収得した。
【0122】
その結果、RPMI1640培地を含む調節T細胞培養培地組成物において調節T細胞増殖は表5及び図6、細胞生存率は表6及び図7の通りであった。また、TexMACS培地を含む培養組成物において調節T細胞増殖の結果は表7及び図8、細胞生存率は表8及び図9に示した。
【0123】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0124】
実施例1.6.免疫抑制性サイトカイン分泌能確認:インターロイキン-10
【0125】
前記実施例1.5から得られた調節T細胞のIL-10分泌能を評価するために、細胞数を1×10cells/mLに合わせて培養した後に培養上清液を収得し、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)分析を行った。
【0126】
まず、Human IL-10 ELISA Kit(Invitrogen,Cat# KAC1321)のインキュベーションバッファーを100ulずつマイクロプレート(micro plate)に分注した後、キャリブレーション(calibration)、コントロール(control)又は調節T細胞培養上清液サンプル(sample)をそれぞれ100ulずつ入れて分注した。その後、マイクロプレートを接着フィルム(Adhesive film)で覆い、2時間、室温(18℃~25℃)、700rpmでシェーカー(shaker)でシェークしながら反応させた。その後、ウェル(well)当たりに約150μL洗浄バッファーでマイクロウェルストリップ(microwell strip)を3回洗浄した。
【0127】
洗浄後に、標本希釈剤(Specimen Diluent)を100ulずつ入れた。その後、anti-IL-10-HRPを50ul入れた後、2時間、室温、700rpmでシェークしながら反応させた後、ウェル当たりに約150μL洗浄バッファーで3回洗浄した。洗浄後に、TMBを100ulずつ入れ、15分間室温で反応させた後、100ulストップソリューション(stop solution)を入れて反応を終了した。その後、450nmを使用して各マイクロウェルの蛍光値を測定した。
【0128】
その結果、含RPMI1640培地組成物から培養された細胞のインターロイキン-10分泌能は、図10の通りであり、含TexMACS培地組成物から培養された細胞のインターロイキン-10分泌能は、図11の通りであった。図10及び図11から、GI-101を培養組成物に添加した調節T細胞からインターロイキン-10が高く発現することを確認した。
【0129】
実施例2.最適化培養工程でGI-101による調節T細胞増殖確認
【0130】
実施例2.1.CD4+ T細胞分離
【0131】
購入したPBMC(Cat#:SER-PBMC-200-F)(Zen-Bio.Inc,NC27709,USA)の細胞数を測定した。その後、300×gで10分間遠心分離した。その後、上澄バッファー液の除去後に、1×10細胞数当たりに80μLのMACsバッファーを追加して細胞ペレットを溶いた。その後、1×10細胞数当たりに20μLのCD4 MicroBeads(Cat#:130-045-101)(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を分注しタッピングして十分に混ぜ合わせた。その後、4℃~8℃で15分間反応させた。
【0132】
洗浄のために10mLのMACsバッファーを追加後に、300×gで10分間遠心分離した。その後、上清液の除去後に、1×10細胞数当たりに500μLのMACsバッファーを追加して細胞ペレットを溶いた。その後、LSカラムを準備後に、3mLのMACsバッファーを流した。上記で準備した細胞懸濁液をLSカラム(Cat#:130-042-401)(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)に通過させた。LSカラムについている細胞が十分に洗浄されるように3mLのMACsバッファーを3回流した。その後、LSカラムをマグネットスタンド(Magnet stand)から分離後に3mLのMACsバッファーを入れ、ピストンで圧力をかけてCD4+細胞を回収した。その後、300×gで5分間遠心分離した。遠心分離後に上清液を除去し、細胞数を測定した。
【0133】
前記分離されたCD4+細胞において調節T細胞の増殖を刺激するために、添加成分を含まない表1又は表2(基本成分のみ含む)のCD4+細胞培養組成物を0.5mL~1mL追加して、前記実施例1.1のように分離して準備したビーズを溶き、これを、前記PBMCから分離されたCD4+細胞に接種した。
【0134】
実施例2.2.CD4+ T細胞培養
【0135】
6ウェルプレートに、実施例2.1で準備したCD4+細胞を1×10cells/mLで播種(seeding)し、添加物質としてGI-101(3.2nM/50nM)、GI-101_WT(3.2nM/50nM)、CD80-Fc二量体(3.2nM/50nM)+Fc-IL-2v2二量体(3.2nM/50nM)、又はCD80-Fc二量体(3.2nM/50nM)+Fc-IL-2wt二量体(3.2nM/50nM)をそれぞれ含む表1又は表2の細胞培養組成物の条件下にCD4+を培養した。6ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、25Tフラスコで継代培養した。25Tフラスコの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、75Tフラスコで継代培養した。75Tフラスコの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、最終的に細胞を得た。
【0136】
実施例2.3.CD4+CD25+CD127- T細胞分離
【0137】
実施例2.2で回収したCD4+細胞を、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。また、上清液を除去し、1:200にFACSバッファーに希釈したFc block(biolegend,cat#422302)1mLを入れて氷に10分間放置した。その後、50ul CD4-Pacific Blue(BioLegend,cat#317429)、50ul CD25-PE/Cy7(BioLegend,cat#356108)、50ul CD127-PE(BD,cat#557938)を2番サンプルに入れ、氷に20分間放置した。
【0138】
その後、4mL FACSバッファーをさらに入れ、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。その後、上清液を除去し、3mLのFACSバッファーを入れた後、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。その後、上清液を除去し、FACSバッファー3mLに細胞を溶いた。最後に、BD FACS AriaでCD4+CD25+CD127-細胞を分離した。
【0139】
実施例2.4.CD4+CD25+CD127- T細胞培養
【0140】
24ウェルプレートに、実施例2.3で分離された全てのCD4+CD25+CD127-細胞を播種し、これと同時に、実施例2.1のように調節T細胞の増殖を刺激するために、2×10細胞数当たりに1μL MACS GMP ExpAct Treg Kit(Cat#:170-076-119)(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)からビーズ(beads)を分離し、添加成分を含まない表3又は表4(基本成分のみ含む)の細胞培養組成物(0.5mL~1mL)にビーズを溶いた。その後、前記CD4+CD25+CD127-細胞を播種したウェルプレートに添加した。
【0141】
その後、添加物質としてGI-101(3.2nM/50nM)、GI-101_WT(3.2nM/50nM)、CD80-Fc二量体(3.2nM/50nM)+Fc-IL-2v2二量体(3.2nM/50nM)又はCD80-Fc二量体(3.2nM/50nM)+Fc-IL-2wt二量体(3.2nM/50nM)をそれぞれ含む表3又は表4の細胞培養組成物の条件下にCD4+CD25+CD127-細胞を培養した。24ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、12ウェルプレートで継代培養した。12ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、6ウェルプレートで継代培養した。6ウェルプレートの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、25Tフラスコで継代培養した。25Tフラスコの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、75Tフラスコで継代培養した。
【0142】
表3又は表4の添加物質が3.2nM処理されたグループに対しては、75Tフラスコの細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、最終収得した。前記表3又は表4の添加物質が50nM処理されたグループに対しては、175Tフラスコで継代培養して細胞が80%以上のコンフルエンシーを示す際に、最終収得した。
【0143】
その結果、含RPMI1640培地培養組成物において細胞増殖結果は、表9、図12A及び図12B、細胞生存率は、表10、図13A及び図13Bの通りである。また、含TexMACS培地培養組成物において細胞増殖結果は、表11、図14A及び図14B、細胞生存率は、表12、図15A及び図15Bの通りである。
【0144】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0145】
実施例2.5.細胞特性確認
【0146】
実施例2.4で回収したCD4+CD25+CD127-細胞を、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。また、上清液を除去し、1:200にFACSバッファーに希釈したFc block(biolegend,cat#422302)100ulを入れて氷に10分間放置し、さらに、2.5ul CD4-PerCP-Cy5.5(eBioscience,cat#45-0048-42)、2.5ul CD25-APC/Cy7(BD,cat#557753)、2.5ul CD127-Brilliant Violet 785(Biolegend,cat#351330)を入れて氷に20分間放置した。
【0147】
その後、1mL FACSバッファーをさらに入れ、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。Fixation/Permeabilization concentrateとFixation/Permeabilization Diluentを1:3に混合した溶液を準備し、前記遠心分離して得た細胞から上清液を除去して100ulを入れ、氷に30分間放置した。その後、1mL FACSバッファーをさらに入れ、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離を2回反復した。その後、上清液を除去し、100ul FACSバッファーと2.5ul Foxp3-Pacific Blue(Biolegend,cat#320116)を入れ、氷に20分間放置した。その後、1mL FACSバッファーをさらに入れ、1,300rpm、4℃、5分間遠心分離した。その後、上清液を除去し、FACSバッファー200ulに細胞を溶いた。最後に、Cytek Aurora装備で細胞特性を分析した。
【0148】
その結果、含RPMI1640培地組成物から培養された細胞特性に対するFACS分析結果は、図16A図16C通りであり、前記培養条件で確認されたCD4+CD25+Foxp3+発現T細胞数は、表13、図17A図17Cの通りであった。また、含TexMACS培地組成物から培養された細胞特性に対するFACS分析結果は、図18A図18Cの通りであり、前記培養条件で確認されたCD4+CD25+Foxp3+発現T細胞数は、表14及び図19A図19Cの通りであった。
【0149】
【表13】
【表14】
【0150】
実施例2.6.免疫抑制性サイトカイン分泌能確認:インターロイキン-10
【0151】
前記実施例2.4から得られた調節T細胞のIL-10分泌能を評価するために、細胞数を1×10cells/mLに合わせて培養した後、培養上清液を収得してELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)分析を行った。
【0152】
まず、ヒトIL-10 ELISAキット(Invitrogen,Cat# KAC1321)のインキュベーションバッファーを100ulずつマイクロプレート(micro plate)に分注した後、キャリブレーション(calibration)、コントロール(control)又は調節T細胞培養上清液サンプル(sample)をそれぞれ100ulずつ入れて分注した。その後、マイクロプレートを接着フィルム(Adhesive film)で覆い、2時間、室温(18℃~25℃)、700rpmでシェーカー(shaker)でシェークしながら反応させた。その後、ウェル当たりに約150μL洗浄バッファーでマイクロウェルストリップ(microwell strip)を3回洗浄した。
【0153】
洗浄後に、標本希釈剤(Specimen Diluent)を100ulずつ入れた。その後、anti-IL-10-HRPを50ul入れ、2時間、室温、700rpmでシェークしながら反応させた後、ウェル当たりに約150μL洗浄バッファーで3回洗浄した。洗浄後に、TMBを100ulずつ入れ、15分間室温で反応させた後、100ulストップソリューション(stop solution)を入れ、反応を終了した。その後、450nmを使用して各マイクロウェルの蛍光値を測定した。
【0154】
その結果、含RPMI1640培地組成物から培養された細胞のインターロイキン-10分泌能は、図20の通りであり、含TexMACS培地組成物から培養された細胞のインターロイキン-10分泌能は、図21の通りである。図20及び図21から、GI-101を培養組成物に添加した調節T細胞からインターロイキン-10が高く発現することを確認した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20
図21
【配列表】
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