(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】画像内の共役の存在を識別するためのシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240123BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
(21)【出願番号】P 2022554576
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 US2021021488
(87)【国際公開番号】W WO2021183499
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-09
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501226778
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems Inc.
【住所又は居所原語表記】1700 Leider Lane, Buffalo Grove, IL 60089, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンスフォード ヘンダルゴ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/035426(WO,A1)
【文献】特開2016-057318(JP,A)
【文献】特開2012-223264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のプロセッサと、1つまたは複数のストレージデバイスと、を含む、画像内の共役の存在を識別するためのシステムであって、前記システムは、
撮像されるサンプルに関連するスペクトルデータを取得し、
前記取得されたスペクトルデータに対して分散係数を最適化し、
前記最適化された分散係数を使用して補正位相関数を計算し、
結果画像を提供するために信号に負の補正位相関数を適用し、
前記結果画像が、原画像に関して低下した信号強度を有しているか、または増加した信号強度を有しているかを決定し、
前記結果画像が増加した信号強度を有していることが決定された場合、参照アームシフトを計算し、
共役画像を視野外に移動させるために、前記計算された参照アームシフトに基づいて前記システムの参照アームの位置を調整する、
ように構成されているシステム。
【請求項2】
前記低下した信号強度は、非共役信号を示し、
前記増加した信号強度は、共役信号を示す、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記スペクトルデータは、前記サンプルの全体画像、前記サンプルの複数のAスキャン、複数のAスキャンからのデータ、および複数のAスキャンからのデータの一部を含む画像のサブ領域のうちの1つを含む、
請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記結果画像は、高速フーリエ変換の適用後に生成された画像である、
請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、前記参照アームの位置を手動または自動で調整するようにさらに構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、以下の式:
φ
c(k)=c
1(k-k
0)
2+c
2(k-k
0)
3
を使用して、前記補正位相関数φ
c(k)を計算するようにさらに構成されており、
c
1は、第1の補正係数であり、
c
2は、第2の補正係数であり、
kは、ソース波数であり、
k
0は、ソースの中心波数である、
請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、前記参照アームに正立画像が見えてかつ共役画像は隠れる位置に参照反射器を移動させるフィードバックを前記参照アームに提供することによって前記参照アームの位置を調整するように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、光干渉トモグラフィ(OCT)撮像システムを含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、顕微鏡をさらに含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
1つまたは複数のプロセッサと、1つまたは複数のストレージデバイスと、を含むシステムにおいて、画像内の共役の存在を識別するための方法であって、前記方法は、
撮像されるサンプルに関連するスペクトルデータを取得するステップと、
前記取得されたスペクトルデータに対して分散係数を最適化するステップと、
前記最適化された分散係数を使用して補正位相関数を計算するステップと、
結果画像を提供するために信号に負の補正位相関数を適用するステップと、
前記結果画像が、原画像に関して低下した信号強度を有しているか、または増加した信号強度を有しているかを決定するステップと、
前記結果画像が増加した信号強度を有していることが決定された場合、参照アームシフトを計算するステップと、
共役画像を視野外に移動させるために、前記計算された参照アームシフトに基づいて前記システムの参照アームの位置を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記低下した信号強度は、非共役信号を示し、
前記増加した信号強度は、共役信号を示す、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記スペクトルデータを取得するステップは、前記サンプルの全体画像、前記サンプルの複数のAスキャン、複数のAスキャンからのデータ、および複数のAスキャンからのデータの一部を含む画像のサブ領域のうちの1つを取得するステップを含む、
請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記複数のAスキャンは、前記原画像全体よりも小さいものを含む、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記結果画像を、フーリエ変換の適用によって取得するステップをさらに含む、
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記調整するステップは、前記参照アームの位置を手動および自動のうちの1つで調整するステップをさらに含む、
請求項10から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記補正位相関数を計算するステップは、以下の式:
φ
c(k)=c
1(k-k
0)
2+c
2(k-k
0)
3
を使用して、補正位相関数φ
c(k)を計算するステップをさらに含み、
c
1は、第1の補正係数であり、
c
2は、第2の補正係数であり、
kは、ソース波数であり、
k
0は、ソースの中心波数である、
請求項10から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記参照アームの位置を調整するステップは、前記参照アームに正立画像が見えてかつ共役画像は隠れる位置に参照反射器を移動させるフィードバックを前記参照アームに提供するステップをさらに含む、
請求項10から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記スペクトルデータを取得するステップは、光干渉トモグラフィ(OCT)撮像システムを使用してスペクトルデータを取得するステップを含む、
請求項10から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに、請求項10から18までのいずれか1項記載の方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2020年3月10日に「Methods, Systems and Devices for Detecting Presence of Conjugate Images」と題して出願された米国仮特許出願第62/987,377号明細書の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が記載されているものとして本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明概念は、一般に撮像に関し、より詳細には、光干渉トモグラフィ(OCT)撮像システムに関する。
【背景技術】
【0003】
光干渉トモグラフィ(OCT)は、サンプルの深さ方向分解能のプロファイルを取得するために光インターフェログラムのフーリエ変換処理を使用する。この処理は、本質的には、複素共役画像として公知の鏡像に結び付き、所期の画像の正確な視覚化の尤度を低下させたり、場合によっては妨げたりする場合もある。複雑なハードウェアや他の情報源なしでは、共役画像を実像から分離することは非常に困難である。
【0004】
従来から、複雑な共役画像を低減または可及的に除去する方法が開発されてきた。しかしながら、これらの従来の方法は、しばしば、複雑なハードウェア、複数の画像取得、複雑なソフトウェア処理、および/または撮像されるサンプルの物理的組成の事前知識を必要とする。従来の方法は、例えば、米国特許番号8,414,564号および7,336,366号明細書において論じられており、これらの開示は、参照により、その全体が記載されているものとして本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明概念のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のプロセッサと、1つまたは複数のストレージデバイスと、を含む、画像内の共役の存在を識別するためのシステムを提供する。このシステムは、撮像されるサンプルに関連するスペクトルデータを取得するように構成されている。分散係数は、取得されたスペクトルデータに対して最適化される。補正位相関数は、最適化された分散係数を使用して計算される。負の補正位相関数は、結果画像を提供するために信号に適用される。結果画像が、原画像に関して低下した信号強度を有しているか、または増加した信号強度を有しているかが決定される。結果画像が増加した信号強度を有していることが決定された場合、参照アームシフトが計算される。システムの参照アームの位置は、共役画像を視野外に移動させるために、計算された参照アームシフトに基づいて調整される。
【0006】
さらなる実施形態では、低下した信号強度は非共役信号を示すことができ、増加した信号強度は共役信号を示すことができる。
【0007】
さらに、さらなる実施形態では、スペクトルデータは、サンプルの全体画像、サンプルの複数のAスキャン、複数のAスキャンからのデータ、および複数のAスキャンからのデータの一部を含む画像のサブ領域のうちの1つを含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、結果画像は、高速フーリエ変換(FFT)の適用後に生成された画像であってもよい。
【0009】
さらなる実施形態では、システムは、参照アームの位置を手動または自動で調整するようにさらに構成されてもよい。
【0010】
さらに、さらなる実施形態では、システムは、以下の式:
φc(k)=c1(k-k0)2+c2(k-k0)3
を使用して、補正位相関数φc(k)を計算するようにさらに構成されてもよく、ただし、c1は第1の補正係数、c2は第2の補正係数、kはソース波数、およびk0はソースの中心波数である。
【0011】
いくつかの実施形態では、システムは、参照アームに正立画像が見えてかつ共役画像は隠れる位置に参照反射器を移動させるフィードバックを参照アームに提供することにより、参照アームの位置を調整するように構成されてもよい。
【0012】
さらなる実施形態では、システムは、光干渉トモグラフィ(OCT)撮像システムであってもよい。
【0013】
さらに、さらなる実施形態では、システムは、顕微鏡をさらに含むことができる。
【0014】
本発明概念のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のプロセッサと、1つまたは複数のストレージデバイスと、を含むシステムにおいて、画像内の共役の存在を識別するための方法を提供する。この方法は、撮像されるサンプルに関連するスペクトルデータを取得するステップと、取得されたスペクトルデータに対して分散係数を最適化するステップと、最適化された分散係数を使用して補正位相関数を計算するステップと、結果画像を提供するために信号に負の補正位相関数を適用するステップと、結果画像が、原画像に関して低下した信号強度を有しているか、または増加した信号強度を有しているかを決定するステップと、結果画像が増加した信号強度を有していることが決定された場合、参照アームシフトを計算するステップと、共役画像を視野外に移動させるために、計算された参照アームシフトに基づいてシステムの参照アームの位置を調整するステップと、を含む。
【0015】
関連するコンピュータプログラム製品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】フーリエドメイン光干渉トモグラフィ(FD-OCT)システムを示す簡単なブロック図である。
【
図2】例示的な光干渉トモグラフィ(OCT)網膜(後部)撮像システムを示すブロック図である。
【
図3】例示的なOCT角膜(前部)撮像システムを示すブロック図である。
【
図4】A,Bは、本発明概念の実施形態による正(+f)および負(-f)の周波数にわたる分散によって影響を受ける実信号のフーリエ変換の大きさを示すグラフである。
【
図5】A,Bは、本発明概念のいくつかの実施形態によるFD-OCT撮像システムによって生成された正(正立)画像および共役(逆さ)画像の両方の画像である。
【
図6】画像の下半分のみが示されている場合でも、所期の正立画像の正確な視覚化を妨げる可能性のある共役の重畳を伴ったヒトの角膜のOCT画像を示した図である。
【
図7】本発明概念の様々な実施形態による共役回避のための動作を示すフローチャートである。
【
図8】本発明概念の様々な実施形態による共役回避のための動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明概念の様々な実施形態によるプロセスを実装するために使用されてよい撮像システムと通信するデータ処理システムのブロック図である。
【
図10】顕微鏡を含む本発明概念のいくつかの実施形態によるシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明概念の実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明概念をより完全に説明する。ただし、本発明概念は多くの代替形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0018】
したがって、本発明概念は、様々な修正および代替形態に影響を受けやすいが、その特定の実施形態が例示のために図面に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、開示されたこれらの特定の形態に本発明概念を限定する意図はなく、むしろそれとは逆に、本発明概念は、特許請求の範囲によって定義される発明概念の精神および範囲内に入る全ての修正、等価物、および代替物を網羅するものであることを理解すべきである。図面全体にわたって同種の番号は同種の要素を指している。
【0019】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明概念の限定を意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈による明らかな別段の指示がない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合の用語「包含する」、「包含している」、「含む」および/または「含んでいる」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/またはコンポーネントの存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。その上さらに、ある要素が別の要素に「応じる」または「接続される」と言及される場合、それは他の要素に直接応じるまたは接続されることが可能であり、あるいは介在する要素が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素に「直接応じる」または「直接接続される」と言及される場合、介在する要素は存在しない。本明細書で使用されるように、用語「および/または」(かつ/または)は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」と略記されることがある。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明概念が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用される用語は、本明細書および関連する技術分野の文脈におけるそれらの意味と一致する意味合いを有するものと解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそう定義されない限り、理想化または過度に形式的な意味で解釈されないことが理解されよう。
【0021】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0022】
本明細書では、様々な要素を説明するために第1、第2などの用語を使用する場合があるが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。例えば、第1の要素は第2の要素と称されることが可能であり、また同様に、第2の要素は、本開示の教示から逸脱することなく第1の要素と称されることが可能である。図面のいくつかは、通信の主要な方向を示すために通信パス上に矢印を含むが、通信は、描写された矢印とは反対方向に発生する場合もあることを理解すべきである。
【0023】
本開示の態様は、本開示の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート例図および/またはブロック図を参照して、本明細書で説明される。フローチャート例図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート例図および/またはブロック図におけるブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実装可能であることが理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、マシンを作り出すために、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、または他のプログラミング可能なデータ処理装置のプロセッサに提供されてもよく、それによって、コンピュータまたは他のプログラミング可能な命令実行装置のプロセッサを介して実行される命令は、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実施させるための機構を作成する。本明細書で使用されるように、「プロセッサ」は、1つ以上のプロセッサを指す場合がある。
【0024】
これらのコンピュータプログラム命令は、実行されるときに、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、または他の装置に特定の手法で機能するように指示できるコンピュータ可読媒体に格納されてもよく、それによって、これらの命令をコンピュータ可読媒体に格納するときに、実行時にコンピュータに、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実施させる命令を含んでいる製造物品が生成される。また、これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラミング可能な装置、または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させ、コンピュータまたは他のプログラミング可能な装置上で実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実施させるためのプロセスを提供するようなコンピュータ実装プロセスを生成するために、コンピュータ、他のプログラミング可能な命令実行装置、または他のデバイス上にロードされてもよい。
【0025】
本明細書で論じられる多くの例は、サンプル/被検体が眼、具体的には、眼の網膜、角膜、前区、および水晶体であることに言及しているが、本発明概念の実施形態は、このタイプのサンプルに限定されるものではない。本明細書で論じられる実施形態と組み合わせて使用されてもよい任意のタイプのサンプルが、本発明概念の範囲から逸脱することなく使用されてもよい。
【0026】
本発明概念の実施形態は、サンプルを走査するためのOCTの使用に焦点を当てているが、本発明概念の実施形態は、OCTの使用に限定されるものではない。サンプルを走査するために使用される任意の方法およびシステムが、本発明概念の範囲から逸脱することなく使用可能であることは理解されよう。
【0027】
本明細書で使用されるように、「被検体」とは、撮像される人もしくは物、または人もしくは物の一部を指す。本明細書では、被検体である眼に関連して本発明概念の実施形態が論じられているが、本発明概念の実施形態は、この構成に限定されないことが理解されるであろう。被検体は、本発明概念の範囲から逸脱することなく、例えば、獣医学的、屍体研究的、またはヒトの被検体を含む任意の被検体であり得る。
【0028】
上記で論じたように、光干渉トモグラフィ(OCT)は、サンプルの深さ方向分解能のプロファイルを取得するために光干渉波のフーリエ変換処理を使用する。この処理は、本質的には、所期の画像を正確に可視化できる尤度を低下させたり、場合によっては妨げたりすることもある「複素共役画像」として公知の鏡像に結び付く。複雑なハードウェアや他の情報源なしでは、共役画像を実像から分離することは非常に困難である。従来から、このような複雑な共役画像を低減または除去する方法が開発されてきた。しかしながら、これらの従来の方法は、しばしば、複雑なハードウェア、複数の画像取得、複雑なソフトウェア処理、および/または撮像されるサンプルの物理的組成の事前知識を必要とする。したがって、本発明概念の実施形態は、標準的なOCTシステムと互換性があり得る、任意のサンプルに対する複素共役の影響を低減するための方法を提供する。
【0029】
特に、本発明概念の実施形態は、複素共役画像が所与の画像内に存在するか否かを検出し、複素共役画像が存在する場合、参照アームの反射器位置を調整することによって、複素共役を視野外に移動させるための方法を提供する。従来は、画像内に複素共役画像が存在するか否かさえも識別することが非常に困難であった。以下で論じるように、複素共役画像は、異なる分散パラメータを有する原画像の一部を処理することによって検出されることがある。複素共役画像が検出された場合、OCTシステムの参照アームの位置は、複素共役画像は視野外に移動させかつ所期の正立画像は見えるように調整される。本発明概念の実施形態による方法は、既存のOCTシステムを用いて実装されてもよく、したがって、既存のハードウェアに対する修正が必要にならないことがある。以下では、本発明概念の詳細が、
図1~
図10に関連して論じられる。
【0030】
図1を最初に参照して、例示的なフーリエドメインOCT(FD-OCT)撮像システムの簡単なブロック図が論じられる。FD-OCT撮像システムは、サンプルの3次元(3D)画像を生成するために、低コヒーレンス干渉法の原理を使用する。
図1に示されているように、FD-OCTシステムは、一般に、光源100、検出器130(検出)、ビームスプリッタ120、参照アーム110、およびサンプルアーム140を含む。
【0031】
図2および
図3に関連して、本発明概念の実施形態に従って使用されてもよいFD-OCTシステムのより詳細なブロック図が論じられる。
図1~
図3のシステムは例示目的のためにのみ提供され、したがって、本発明概念の実施形態はこれに限定されるべきではないことが理解されよう。
図2は、FD-OCT網膜撮像システムのブロック図である。
図2に示されているように、このシステムは、ビームスプリッタ120によって相互に結合された広帯域ソース100、参照アーム110、およびサンプルアーム140を含む。ビームスプリッタ120は、例えば、光ファイバカプラまたはバルクまたはマイクロオプティックカプラであってよい。ビームスプリッタ120は、約50/50から約90/10の分割比を提供し得る。
図2にさらに示されているように、ビームスプリッタ120はまた、光ファイバによって提供されてもよい検出パス106を介して波長または周波数サンプリング検出モジュール130に結合されている。
【0032】
図2にさらに示されているように、ソース100は、ソースパス105によってビームスプリッタ120に結合されている。ソース100は、例えば、連続波広帯域スーパールミネッセントダイオード、パルス広帯域ソース、またはチューナブルソースであってもよい。参照アーム110は、参照アームパス107を介してビームスプリッタ120に結合されている。同様に、サンプルアーム140は、サンプルアームパス108を介してビームスプリッタ120に結合されている。ソースパス105、参照アームパス107、およびサンプルアームパス108は、全て光ファイバによって、あるいは光ファイバ、自由空間、およびバルクもしくはマイクロ光学素子の組み合わせによって提供されてもよい。
【0033】
図2に示されているように、FD-OCT網膜撮像システムの参照アームは、コリメータアセンブリ180、中性密度フィルタもしくは可変アパーチャを含むことができる可変減衰器181、ミラーアセンブリ182、参照アーム可変パス長調整部183、およびパス長整合位置150、すなわち被検体関心領域に対する参照アームパス長とサンプルアームパス長との間の光路長整合部を含むことができる。さらに示されているように、サンプルアーム140は、二軸スキャナアセンブリ190と、可変焦点191を有する対物レンズと、を含むことができる。
【0034】
図2に示されているサンプルは、角膜195、虹彩/瞳孔194、眼球レンズ193および網膜196を含んでいる眼球である。FD-OCT撮像ウィンドウ170の描写は、網膜196の近傍に示されている。この網膜撮像システムは、眼球の後部構造を撮像するために、被検体眼球の光学系、特に角膜195および眼球レンズ193に加えて対物レンズに依存している。さらに示されているように、被検体内の関心領域170は、被検体内のパス長整合位置197が所期の位置にあるように、焦点位置196および参照アームパス長調整部183の調整を通して選択される。
【0035】
図3を参照して、FD-OCT角膜(前部)撮像システムを示しているブロック図が論じられる。そこに示されているように、
図3のシステムは、
図2のシステムと非常に類似している。しかしながら、対物レンズ可変焦点は含まれる必要はなく、
図3では含まれていない。
図3の前部撮像システムは、前部構造に焦点を合わせるための被検体の光学系に依存することなく、前部構造を直接撮像する。
【0036】
OCT処理では、Aスキャンとも呼ばれる実数値のスペクトルインターフェログラム信号のフーリエ変換を行う必要がある。これにより、鏡映的な正および負の周波数成分を含んで変換された信号が結果として生じる。これらの成分は、
図4Aおよび
図4Bに示されているように、サンプル反射器と参照反射との間の光路長の正または負の変位に対応する。また、OCTシステムは、典型的には、サンプルおよび参照アームに使用される光学系に不整合がある。この光学系の不整合は、撮像されるサンプルのタイプによっても引き起こされることがある。これらの相違は、結果として画像の見かけ上のぼけを生じさせ得る「分散」として公知の影響を引き起こす場合がある。この分散の影響は、取得された干渉計スペクトルに2次および3次の位相項(またはより高次の項)を適用する数値補正を使用することによって補正されてもよい。そうすることは、
図4Bに示されているように、共役信号と比較して正立画像の信号の強化につながる。共役信号は、同じ数値補正の適用によって補正されてもよいが、逆符号の項を用いると、正立信号のぼけにつながる。
【0037】
図4Aは、分散による影響を受けた実信号のフーリエ変換が、正および負の周波数+fおよび-fにわたって鏡映的ぼけのピークをもたらすことを示している。分散の影響に対する補正は、正の周波数ピーク(
図4B内の+f)をより先鋭にさせるが、負の周波数ピーク(
図4B内の複素共役画像-f)は幅が広がり、
図4A内の-fのピークのように低減された高さを有する。代替的に、負の周波数において分散を補正すると、正の周波数信号を幅広にさせる。Bスキャンと称される2次元OCT画像は、複数のAスキャンからなる。OCT画像を視認する場合、典型的には、片側の周波数に対応する信号範囲のみ、すなわち、正または負の周波数のみが視認され、残りのまたは反対の周波数(複素共役信号)は、典型的には視野から切り取られる。
図5Aは、正の画像(正立画像)と、対応する共役画像(逆さ画像)と、を示す。
図5Bは、分散補正後の2つの画像を具体的に示す。特に、
図5Aおよび
図5Bは、分散補正前(
図5A)と分散補正後(
図5B)の正立および共役画像を示しているヒトの角膜のOCT画像の例を示している。これらの画像から明らかなように、正立画像は、分散補正後により先鋭になっているが、共役画像はぼけたままである。典型的には、画像の上半分を単純に切り取ることによって、正立画像のみが表示される、すなわち、
図5Bの下側部分のみが表示される。
【0038】
撮像中は、サンプルまたは参照アーム反射器の移動により、一方の側からの成分が他方にシフトすることが起こり得る。
図6に示されているように、これが発生すると、複素共役信号(上部信号A)からの成分が、所期の正立信号成分(下部信号B)と重なる(Cにおける重畳)ことがあり、したがって、サンプルの不正確な画像が提供されることになる。
図6に示されているように、2つの信号AおよびBが、Cにおいて重なった場合、複素共役が範囲の半分を占めるため、OCTシステムの撮像範囲が制限される場合があり、また視野範囲は共役画像が映らないように制限される。OCTシステムに対する大幅な変更や追加なしで、複素共役信号を正立信号から明確に区別する簡単な手法は存在しない。
【0039】
複素共役アーチファクトを抑制または除去するための従来技術が開発されてきた。しかしながら、これらの方法は、単一の複素共役のない画像を生成するために、複数の画像を取得するとともに、はるかに複雑なハードウェアを必要とする。これらの従来技術は、コストも増加させ、撮像時間の増加を必要とする可能性があり、モーションアーチファクトおよび安定性の問題により、患者の撮像のために使用することがより困難になる場合がある。
【0040】
したがって、本発明概念のいくつかの実施形態は、所与の画像内の複素共役信号の存在を決定し、その存在が所期のOCT画像を不明瞭にする尤度を低減するための方法を提供する。
図7は、本発明概念の様々な実施形態による方法の動作を示すフローチャートである。
図7に示されているように、動作は、ブロック705において、OCT撮像システムを使用して撮像されるサンプルに関連する生のスペクトル干渉データを取得することによって開始される。例えば、撮像システムは、
図2および
図3に示され、上記で論じられている。スペクトルデータが取得されると、それは、順次連続的かまたは並列的に2つの異なる手法で処理されてよい。特に、スペクトルデータは、最適化された分散補正を用いて処理されてもよく(ブロック710)、スペクトルデータは、共役分散補正を用いて処理されてもよい(ブロック715)。分散係数は、最初に参照正立画像について最適化される。共役分散係数は、最適化された係数の逆符号を有する。最適化された分散係数を使用した結果画像と共役分散係数を使用した結果との間でフーリエ変換が行われた後、正または負の周波数成分の一方のみを使用して比較が行われる(ブロック720および725)。共役が存在するか否かが決定される(ブロック730)。特に、逆符号の分散係数(共役)から生じる画像がより強い信号を有する場合(ブロック730)、原画像は共役画像からの成分を含むものとしてマークすることができる(ブロック740)。画像が共役からの成分を含む場合(ブロック730)、参照アームは、視野から共役画像を除去するために共役画像の存在に応じてシフトされてよい(ブロック750)。例えば、参照アームへのフィードバックシステムは、正立画像が見えてかつ共役画像は隠れる位置に参照反射器を移動させることができる。一方、共役が存在しないことが決定された場合(ブロック735)、調整が必要でない場合があるので、参照アームは静止したままでよい(ブロック745)。
図7に示されている手法による方法は、基本的なOCT計装を超える付加的なハードウェアを必要としない場合があり、共役画像を積極的に視野外に維持するためにリアルタイムデータで迅速に動作できることが理解されよう。
【0041】
ここで、本発明概念の実施形態による方法のより詳細な説明を論じる。OCTでは、参照アーム光路のパス長に密接に一致した反射性サンプルターゲットが、以下の形式:
【数1】
を有する相互相関項を有する干渉パターンを検出器で発生させる。ここで、s(k)は、ソース波数kの関数として取得されたスペクトル信号の関心のある干渉項、ρ(k)は、ソーススペクトル密度、γ
R(k)は、参照反射器の反射率、γ
S(k)は、サンプル反射器の反射率、nは、サンプルターゲットの屈折率、Δz
Sは、サンプルと参照反射器との間のパス長差分、φ
d(k)は、分散による位相シフトである。サンプル内に複数の反射器があれば、各反射器から生成された干渉信号にわたって式(1)の和が生じる。
【0042】
位相項φ
dは、OCT画像の軸方向解像度を低減させる分散の広がり効果を担っている。オイラーの式を使用して式(1)を書き直せば次式:
【数2】
となる。実数値の信号をフーリエ変換すれば、式(2)における指数の共役対からわかるように、ゼロ周波数位置の周りで鏡映的な変位を有する信号となる。補正位相関数φ
c(k)は、以下の形式:
φ
c(k)=c
1(k-k
0)
2+c
2(k-k
0)
3 式(3)
を有し得る。ここで、c
1およびc
2は補正係数、k
0はソースの中心波数である。補正係数は、
【数3】
となるように決定してもよいし、反復数値最適化を使用して所与のターゲットサンプルについて経験的に計算することも可能である。式(3)は、補正位相関数の実施形態を示すが、本明細書で論じる実施形態がこれに限定されないことは理解されるであろう。補正位相関数は、明確な係数を有する任意の多項式であり得る。
【0043】
式(2)における分散についての補正に式(3)を適用すると次式:
【数4】
がもたらされる。したがって、
【数5】
であれば、この結果は次式:
【数6】
となる。1つの項(この場合は正の周波数項)で分散位相因子が本質的に除去されるのに対して共役項(負の周波数項)では2倍の分量の分散の影響を受けていることがわかる。典型的には、OCT画像は、フーリエ変換後の正かまたは負の周波数のみが見えるように表示され、それによって、2倍に分散した信号が見えないようになっている。しかしながら、奥行きの深いサンプルや動的な動きのあるサンプルでは、共役画像がゼロ周波数線を挟んで表れたり見えたりする成分を有し、所期のサンプルの視認を妨げたり隠したりする可能性がある。従来は、画像の内容が信号の正立成分に由来するのか、共役成分に由来するのかを区別する術がなかった。
【0044】
共役項を除去するかまたは抑制するために複雑な方法が使用されてもよいが、実際に実施することは困難である。本発明概念のいくつかの実施形態は、共役項が所期の視認可能な周波数から外れたままであることを保証するために、本明細書で論じた方法およびシステムを使用する。特に、式(4)からは、補正位相関数φ
c因子を逆符号で適用すれば、負の周波数項は、もはや分散位相による影響を受けなくなるが、正の周波数項は二重に影響を受けることがわかる。
図4Aおよび
図4Bからは、分散の結果、フーリエ変換後の信号ピークの広がり、ならびに信号強度における低下がわかる。信号に負の補正位相関数φ
cを適用することで、フーリエ変換後の結果画像は、正の周波数の信号であればその信号強度が低下し、共役信号であればその信号強度が増加する。これにより、現在見えている信号が正立画像なのか共役画像なのかを検出する能力が可能になる。共役画像が検出された場合は、参照アームの位置を調整することで、共役画像を視野外に移動させることができる。
【0045】
関心のあるターゲットからの信号が、スペクトル干渉図のFFT後に正の周波数に存在すると仮定すると、φ
cを決定し、共役を検出するためのステップが論じられる。本明細書に示されているように、補正位相関数を決定するための方法は、ブロック800において、Nelder-Meadまたは他の同様の方法などの最適化アルゴリズムの使用により、正の周波数に対する補正位相関数φ
cを決定することによって開始される。メトリクスは、平均もしくはピーク信号対雑音比(SNR)または画像シャープネスなどの画像の品質を測定するために使用されており、係数c
1およびc
2(式(3))は、最適化によって最良品質の画像が見つかるまで調整される。例えば次式:
【数7】
が挙げられる。
【0046】
ここで、FFTは、高速フーリエ変換(FFT)であり、
【数8】
は、フーリエ変換後の結果のドメイン変化を示す。正の周波数(z>0)にわたって、最適な分散補正係数c
1およびc
2は、
【数9】
の大きさに基づく最強の画像品質関数Mを有するOCT画像をもたらす。Mは、任意の適切な画像品質メトリクスであり得る。これらの係数c
1およびc
2が所与のサンプルのために一度決定されると、それらは一般に、サンプルまたは光学媒体が変更されない限り、再計算される必要はない。
【0047】
あらゆる取得画像について、式(4)のようにφ
cを適用することに加えて、-φ
cを使用する別個の並列処理ルーチンが実行される。特に、次式:
【数10】
が挙げられ、ここで、
【数11】
は、φ
cを使用したFFTの結果であり、
【数12】
は、-φ
cを使用したFFTの結果である。-φ
cを使用したものから生成されたマグニチュード画像は、上記で論じた画像品質メトリクスを使用して、φ
cから生成された画像と比較される。-φ
cを使用した場合の画像品質メトリクスが低下するならば、正立画像が存在することを推論することができる。-φ
cを使用した場合の画像品質メトリクスが増加するならば、これは、共役画像が見えていることを示し、正立画像を視野内に戻しかつ共役画像を視野外に移動させるためには参照アームのシフトが必要であることを示している。特に次式:
【数13】
が挙げられ、ここで、Cは、S(z)の画像が有意な共役信号を有するか否かを記述するブーリアン関数である。いくつかの実施形態では、この処理は、計算時間を短縮するために、一部の画像上で、すなわち、所与のフレームからのAスキャンサブセット上で行われてもよい。
【0048】
その上さらに、眼球の前眼部などの奥行きの深いサンプルについては、共役画像の一部が、正立画像の一部とともに見える場合がある。これらの実施形態では、共役信号の存在について画像の特定の部分を分析するために、zにわたる窓範囲が定められてもよい。
【0049】
共役が検出されると、参照アームの位置は、共役画像を視野外に移動させかつ正立画像上の視認は維持されるように調整することができる。閾値などの決定ロジックは、正および負の分散補正画像について計算されたメトリクス間の差分の程度に基づいて、参照アームをシフトさせるべきか否かを決定するために使用することができる。さらに計算は、共役の位置と、適切な調整のために参照アームを移動させる必要のある対応する距離と、を決定するために行うことができる。質量中心計算などの方法は、フレーム内の全体的な信号の位置をもたらし、共役画像を視野外にシフトさせるためにどの程度参照アームを移動させる必要があるかについての推定値を与えることができる。機械学習技術を含む他の方法は、サンプルターゲットの存在、さらにはサンプル内の特定の特徴、例えば、眼球の前眼部における角膜または水晶体を検出するために使用することも可能である。
【0050】
本発明概念のいくつかの実施形態は、画像のどの部分が共役アーチファクトを含むかをより具体的に決定し、処理時間を早めるために、画像の異なるサブ領域またはサブサンプルへのアクセスを提供する。共役画像がサブ領域の各々を占める程度の評価は、参照アームがシフトされなければならないか否かを決定するために行うことができる。いくつかの実施形態では、共役アーチファクトは、関心のある信号と直接重なることがある。これらの実施形態では、元の分散パラメータかまたは共役分散パラメータを適用することによって同様の信号がもたらされる場合がある。この結果は、共役物が重なっていてシフトされる必要があり得る画像の領域に関する情報をもたらすこともできる。いくつかの実施形態では、付加的な分散要素が、共役画像と正立画像との間の差分を増加させるためのより大きな分散効果を誘起するために光学ハードウェアサブシステムに導入されてもよい。
【0051】
参照アームの調整が必要な場合、この調整は、本発明概念の範囲から逸脱することなく、手動または自動で行われてもよいことが理解されよう。換言すれば、本発明概念のいくつかの実施形態は、所期の画像のみが見えるように参照アームの位置を自動的に調整することを含む。
【0052】
共役画像の存在を識別する特定の例が上記で論じられているが、本発明概念の実施形態は、これに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、他の信号プロパティが、共役成分の区別のために使用されてもよい。さらなる実施形態では、画像は、共役の存在を決定するために参照画像と比較されてもよい。
【0053】
図8のフローチャートを参照して、本発明概念のいくつかの実施形態による、画像内の共役の存在を識別するための動作が論じられる。示されているように、これらの動作は、ブロック800において、撮像されるサンプルに関連するスペクトルデータを取得することによって開始される。スペクトルデータは、いくつかの実施形態では、例えば
図1および
図2に示されているシステムなどのOCT撮像システムを使用して取得されてもよい。取得されたスペクトルデータの分散係数は、上記で論じたように最適化されてもよい(ブロック810)。説明したように、係数c1およびc2が、所与のサンプルのために一度決定されると、それらは一般に、サンプルまたは光学媒体が変更されない限り、再計算される必要はない。補正位相関数は、最適化された分散係数を使用して計算される(ブロック820)。例えば、補正位相関数は、上記に示した式(3)を使用して計算されてよい。負の補正位相関数は、結果画像を提供するために信号に適用されてよい(ブロック830)。結果画像が、原画像と比べて低下した信号強度を有しているか、または増加した信号強度を有しているかが決定される(ブロック840)。結果画像が低下した信号強度を有していることが決定された場合(ブロック840)、非共役画像(正立画像)が存在すると結論され、次いで、動作は、参照アームにおける調整が必要ないため終了に進む。
【0054】
一方、結果画像が増加した信号強度を有していることが決定された場合(ブロック840)、「参照アームシフト」が計算される(ブロック850)。本明細書で使用される「参照アームシフト」とは、信号が増加され、したがって、共役画像が存在することが決定された場合に、参照アームがどの程度調整されるべきかを表すことを指す。システムの参照アームの位置は、共役画像を視野外に移動させるために計算された参照アームシフトに基づいて調整される(ブロック860)。この調整は、本発明概念の範囲から逸脱することなく、共役信号の検出に応じて手動かまたは自動であってよい。
【0055】
したがって、低下した信号強度は、非共役信号(正立)を示し、増加した信号強度は、共役信号を示す。したがって、共役信号が存在する場合は、参照アームは、共役信号を視野外に移動させるように調整される。したがって、参照アームに正立画像が見えてかつ共役画像は隠れる位置に参照反射器を移動させるフィードバックが参照アームに提供されてもよい。いくつかの実施形態では、共役信号が存在するか否かを決定するために、画像全体が必要ではない場合があることも理解されるであろう。したがって、いくつかの実施形態では、ブロック840における決定は、画像全体よりも小さいサンプルの複数のAスキャンを使用して行われてもよい。またこの決定は、サンプルの画像全体、サンプルの複数のAスキャン、複数のAスキャンからのデータ、または複数のAスキャンからのデータの一部を含む画像のサブ領域を使用して行われてもよい。
【0056】
上記の本発明概念の実施形態の説明から明らかなように、本明細書で論じられる方法の多くは、コンピューティングデバイスによって提供される処理を必要とする。ここでは
図9を参照して、本発明概念の実施形態に従って構成された撮像システム985と通信するデータ処理システム930の例示的な実施形態が
図9に関連して論じられる。理解されるように、このデータ処理システムは、例えば
図2および
図3の撮像システム985に含まれてもよく、あるいは本発明概念の範囲から逸脱することなく
図2および
図3のシステムと通信する別個のデバイスであってもよい。さらに示されているように、データ処理システム930は、上記で論じた実施形態に従った動作を実施する補正モジュール987と同様に、画像を表示するためのディスプレイ988と通信する。データ処理システム930は、例えばキーボードもしくはキーパッドなどの入力デバイス、ディスプレイ、スピーカーおよび/またはマイクロフォン、ならびにプロセッサ938と通信するメモリ936を含んでいるユーザーインターフェース944を含むことができる。データ処理システム930は、プロセッサ938とも通信するI/Oデータポート946をさらに含むことができる。このI/Oデータポート946は、例えばインターネットプロトコル(IP)接続を使用して、データ処理システム930と別のコンピュータシステムもしくはネットワークとの間で情報を転送するために使用することができる。これらのコンポーネントは、多くの従来のデータ処理システムで使用されるような従来のコンポーネントであってよく、本明細書で説明するように動作するように構成されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態は、
図1から
図9のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムを含んでいる顕微鏡に関する。択一的に、顕微鏡は、
図1から
図9のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムの一部であってもよい、または
図1から
図9のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムに接続されていてもよい。
図10は本明細書に記載された方法を実施するように構成されたシステム1000の概略図を示している。システム1000は、顕微鏡1010とコンピュータシステム1020とを含んでいる。顕微鏡1010は、撮像するように構成されており、かつコンピュータシステム1020に接続されている。コンピュータシステム1020は、本明細書に記載された方法の少なくとも一部を実施するように構成されている。コンピュータシステム1020は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム1020と顕微鏡1010は別個の存在物であってもよいが、1つの共通のハウジング内に一体化されていてもよい。コンピュータシステム1020は、顕微鏡1010の中央処理システムの一部であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム1020は、顕微鏡1010のセンサ、アクター、カメラまたは照明ユニット等の、顕微鏡1010の従属部品の一部であってもよい。
【0058】
コンピュータシステム1020は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等の様々な場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム1020は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム1020は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、プロセッサは、例えば、顕微鏡または顕微鏡部品(例えばカメラ)のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路等のあらゆる種類の計算回路を意図していてもよいが、これらに限定されない。コンピュータシステム1020に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム1020は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム1020はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザーがコンピュータシステム1020に情報を入力すること、およびコンピュータシステム1020から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0059】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0060】
一定の実装要件に応じて、本発明概念の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0061】
本発明概念のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0062】
一般的に、本発明概念の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0063】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0064】
したがって、換言すれば、本発明概念の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0065】
したがって、本発明概念の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明概念の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0066】
したがって、本発明概念の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0067】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0068】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0069】
本発明概念の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【0071】
図中のフローチャートおよびブロック図は、本開示の様々な態様によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示すものである。この点に関して、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能な命令を含むコードのモジュール、セグメント、または部分を表すことができる。また、いくつかの代替的な実装では、ブロックに付記された機能は、図中に付記された順序から外れて発生する場合もあることにも留意すべきである。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行されてもよいし、あるいは複数のブロックは、関係する機能性に依存して、時折逆の順序で実行されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャート例示の各ブロック、ならびにブロック図および/またはフローチャート例示における複数のブロックの組み合わせは、指定された機能または行為を実行する特定目的のハードウェアベースのシステム、または特定目的のハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実行可能であることにも留意されたい。
【0072】
本開示の説明は、例示および説明の目的で提示されたが、開示された形態での本開示の網羅または限定を意図するものではない。当業者にとっては、本開示の範囲および精神から逸脱することなく多くの修正および変形は明らかであろう。本明細書における開示の態様は、本開示の原理および実用的な用途を最良に説明するために選択および説明されたものであり、また、他の当業者が、企図された特定の使用に適した様々な修正を伴う開示を理解することができるように選択および説明されたものである。