(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関用クランクシャフト
(51)【国際特許分類】
F16C 3/10 20060101AFI20240123BHJP
F01B 17/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F16C3/10
F01B17/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003438
(22)【出願日】2023-01-13
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ムンテ マーク イルム
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-151218(JP,U)
【文献】特開2021-134788(JP,A)
【文献】特開平10-078025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/10
F01B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのクランクウェブ及びクランクピンを有するクランクスローを複数備える大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関のためのクランクシャフトであって、前記クランクウェブは各々孔を有し、前記複数のクランクスローはメインジャーナルピンによって互いに結合されており、前記メインジャーナルピンは、直径Dcを有するメインジャーナルピン中央部と直径Dsを有する二つの円柱形メインジャーナルピン端部とを有すると共に、関連する前記クランクウェブの孔に挿入され、前記クランクシャフトは、
前記メインジャーナルピン中央部とメインジャーナルピン端部との間の移行領域における応力集中を低減するために、前記メインジャーナルピンにフィレットを有し、
前記メインジャーナルピンにおける前記フィレットの少なくとも幾つかは、前記メインジャーナルピンのみに設けられており、
前記メインジャーナルピン端部の直径Dsが前記メインジャーナルピン中央部の直径Dcよりも太く、前記フィレットは、前記メインジャーナルピン端部の端面であって前記メインジャーナルピン中央部に面する端面に形成されており、
前記メインジャーナルピン端部に前記フィレットを囲む環状のリップが設けられ、前記環状のリップと前記クランクウェブは前記フィレットの上方で面一であり、
前記環状のリップの高さH
lは、前記
メインジャーナルピン中央部の直径の0.5~5%であり、最も好ましくは約1.5%である、
クランクシャフト。
【請求項2】
前記フィレットを環状フィレットとしたことを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項3】
前記フィレットは、前記メインジャーナルピンの全周に亘って延在していることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項4】
前記フィレットは、断面で見て、それぞれが曲率半径を有する複数の円形部分を有する表面を有し、
前記複数の円形部分の角度和は、全円の少なくとも120度であり、好ましくは少なくとも150度、最も好ましくは少なくとも180度である、請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項5】
前記フィレットの表面は、断面で見て、複数の線形部分を有することを特徴とする請求項4に記載のクランクシャフト。
【請求項6】
比Ds/Dcが1.1~2の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項7】
断面で見た前記フィレットの高さHfは、前記
メインジャーナルピン中央部の直径の1~10%であり、より好ましくは2~5%、最も好ましくは3%程度である、請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項8】
前記メインジャーナルピン端部の直径Dsは、前記メインジャーナルピン中央部の直径Dcよりも少なくとも10%であり、好ましくは25%、最も好ましくは50%大きい、請求項1に記載のクランクシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのクランクウェブ及びクランクピンを有するクランクスローを複数備える大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関のためのクランクシャフトに関する。前記クランクウェブは各々孔を有し、前記複数のクランクスローはメインジャーナルピンによって互いに結合されており、前記メインジャーナルピンは、直径Dcを有するメインジャーナルピン中央部と直径Dsを有する二つの円柱形メインジャーナルピン端部とを有すると共に、関連する前記クランクウェブの孔に挿入される。
【0002】
前記クランクシャフトは、前記メインジャーナルピン中央部と前記メインジャーナルピン端部との間の移行領域における応力集中を低減するために、前記メインジャーナルピンにフィレットを有する。
【0003】
前記メインジャーナルピンにおける前記フィレットの少なくとも幾つかは、前記メインジャーナルピンのみに設けられている。
【発明の背景】
【0004】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関は、タンカーやコンテナ船などの大型外航船や発電所の原動機として使用されることが多い。
【0005】
前述の形式のクランクシャフトはよく知られており、例えばUS1,136,524Aに記載されている。大型2ストローク内燃機関用のクランクシャフトは、その大きさのために半組立式である。すなわち、複数の小さな部品をまず製造し、後でそれらを組み立てて製造する。添付図面において、
図1は半組立式クランクシャフト20の一例を示し、
図2は半組立式クランクシャフト20の要部を示している。半組立式クランクシャフト20は、機関の複数のシリンダの各々にそれぞれ対応する複数のシリンダ部を有する。
図1を参照すると、しばしばクランクスロー3と呼ばれるクランクシャフトシリンダ部3は、2枚のクランクウェブ5と、1本のクランクピン4から構成されている。クランクウェブ5はクランクピン4の端部のいずれかに取り付けられている。
図2を参照すると、各クランクウェブ5は孔6を有する。この孔にはメインジャーナルピン1の端部1aが挿入され、それによって複数のクランクスロー3が結合される。
【0006】
半組立式クランクシャフト20を組み立てるとき、メインジャーナルピン1は、クランクウェブ5の穴6に挿入され、焼き嵌めの手法を用いてそれぞれのクランクスロー3のクランクウェブ5と接合される。すなわちジャーナルピンは、クランクウェブ5の穴6の直径よりも大きなサイズを有している。組み立てられた後、大型旋盤でクランクシャフト全体を機械加工し、最終的にメインジャーナルとクランクピンジャーナルを作成し、全てのジャーナルの共線性を確保する。
【0007】
図1、
図2及び
図3を参照すると、メインジャーナルピン1は、メインジャーナルピン中央部1bとメインジャーナルピン端部1aとを有し、その直径は、メインジャーナルピン中央部の直径Dcよりメインジャーナルピン端部1aの縮径部Dsの方が太い。クランクシャフト20の最終加工時に、メインジャーナルピン中央部1bとメインジャーナルピン端部1aとの間の移行領域における応力集中を低減するために、メインジャーナルピン1上にフィレット11を形成することが既知の手法である。これらのフィレット11をメインジャーナルピンフィレット11と呼ぶ。同時に、クランクウェブ5においても、クランクウェブ5とメインジャーナルピン端部1aとの焼き嵌め部の周囲孔6において、メインジャーナルピン1からクランクウェブ5への完全に滑らかな移行を確保するために、フィレット12が加工される。それゆえ、メインジャーナルピンフィレット11とクランクウェブ5上に機械加工されたフィレット12とからなるフィレット13が、メインジャーナルピン1とクランクウェブ5の穴6との間の移行部に設けられる。焼き嵌め接続は、クランクウェブ5の孔6の軸方向長からフィレット12の深さを差し引いた長さLに一致する長さを有する。
【0008】
機関の高出力化と小型化は、半組立式クランクスローが伝達しうるトルクと、それが耐えられうる動的負荷によって制限される。トルク容量は、焼き嵌め接続長L、オーバーサイズ/直径干渉、シャフトとハブの直径などの単純な幾何学的尺度によって決まり、応力は、メインジャーナルピン1bの中央部分の直径Dc(
図2参照)とメインジャーナルピン1のフィレット11半径によって支配される。これらのパラメータを増加させる最も簡単な方法は焼き嵌め接続長さLとメインジャーナルピンフィレット半径の増大であるが、どちらもシリンダ距離の増大とそれによる機関全体の重量増加につながる。機関の設計目標が、性能向上と(重量による)コストダウンであることを考えると、焼き嵌め接続長、メインジャーナルピンフィレット半径、シリンダ距離の既存の関連性は不利である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、メインジャーナルピン中央部とメインジャーナルピン端部との間の移行領域にフィレットを有する、冒頭に述べた種類のクランクシャフトであって、伝達可能なトルクとそれに耐えられる動的負荷に関する上記の課題を少なくとも大幅に軽減することができる、クランクシャフトを提供することである。
【0010】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や発明の詳細な説明、図面から明らかになるだろう。
【0011】
第1の捉え方によれば、2つのクランクウェブ及びクランクピンを有するクランクスローを複数備える大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関のためのクランクシャフトが提供される。このクランクシャフトにおいて、前記クランクウェブは各々孔を有し、前記複数のクランクスローはメインジャーナルピンによって互いに結合されており、前記メインジャーナルピンは、直径Dcを有するメインジャーナルピン中央部と直径Dsを有する二つの円柱形メインジャーナルピン端部とを有すると共に、関連する前記クランクウェブの孔に挿入される。
前記クランクシャフトは、前記メインジャーナルピン中央部と前記メインジャーナルピン端部との間の移行領域における応力集中を低減するために、前記メインジャーナルピンにフィレットを有する。
前記メインジャーナルピンにおける前記フィレットの少なくとも幾つかは、前記メインジャーナルピンのみに設けられている。そして前記クランクシャフトは、前記メインジャーナルピン端部の直径Dsが前記メインジャーナルピン中央部の直径Dcよりも太く、前記フィレットは、前記メインジャーナルピン端部の端面であって前記メインジャーナルピン中央部に面する端面に形成されていることを特徴とする。
【0012】
提案のようにメインジャーナルピンのみにフィレットを設けることにより、焼き嵌め接続長Lとその結果得られるトルク容量は、もはやメインジャーナルピンフィレットの半径に関連しない。これにより、シリンダ距離及び機関全長を増加させることなく、疲労に対するメインジャーナルピンフィレットの安全性を高め、トルク容量に妥協のない(あるいは改善された)クランクスロー設計が可能となる。また、クランクウェブの加工が不要なため、焼き嵌め接続長をメインジャーナルピンフィレット半径から独立させることができる。
【0013】
最適な効果を得るために、前記メインジャーナルピンのみに作られたフィレットは、環状のフィレットとして作られることが好ましい。さらに、これらのフィレットは、メインジャーナルピンの全周に亘って延在していることが好ましい。
【0014】
メインジャーナルピンフィレットの形状は、メインジャーナルピンの上部で完全なフィレットであるように、下部では切り詰められたフィレットであるように、形状を変えることができる。なぜなら、クランクピンに最も近いフィレットの半分で負荷が最も高くなるからである。従って、メインジャーナルピンにおけるフィレットの形状は、非対称に作成されることができる。なぜなら、本発明によるクランクシャフトのメインジャーナルピンにおけるフィレットは、クランクシャフトが組み立てられる前に作成される可能性があるからである。
【0015】
フィレットは、実際には、メインジャーナルピン中央部とメインジャーナルピン端部との間の移行領域における応力集中を低減する任意の適切な形状を有することができる。本発明の好ましい実施形態では、前記フィレットは、断面で見て、それぞれが曲率半径を有する複数の円形部分を有する表面を有する。前記複数の円形部分の角度和は、全円の少なくとも120度、好ましくは少なくとも150度、最も好ましくは少なくとも180度であることが好ましい。
【0016】
断面で見た前記フィレットの表面は、さらに、複数の線形部分を有してもよい。
【0017】
前記フィレットの実際の設計は、円形部分及び線形部分の選択に依存し、前記フィレットの高さを定義する。
【0018】
メインジャーナルピン端部の強度が、クランクウェブの孔の軸方向長に対応する長さの効果的な焼き嵌め接続を提供するのに十分であることを保証するために、メインジャーナルピン端部は、フィレットを囲む環状のリップを備えることが好ましい。当該リップは適切な高さを有する。
【0019】
提案したような方法でメインジャーナルピンフィレットの半径から焼き嵌め接続長の関連性を取り除くために、メインジャーナルピンの端部部分の直径は、既知のクランクシャフトと比較して太くさせられるべきであり、メインジャーナルピンのメインジャーナルピン中央部の直径よりも太くすることが望ましい。従って、メインジャーナルピンの端部部分の直径は、メインジャーナルピンの中央部の直径より太くすることが好ましく、断面で見て環状フィレットの高さの少なくとも2倍に環状リップの高さの2倍を加えた太さにすることが好ましい。従って、様々な機関サイズに対する推定は、比Ds/Dcが1.1~2の範囲であるべきであることを示す。
【0020】
断面で見た各フィレットの高さは、好ましくはメインジャーナルピン1の中央部の直径の1~10%、最も好ましくは3%程度である。また、環状リップの高さは、好ましくはメインジャーナルピンの中央主部の直径の0,5~5%、最も好ましくは1,5%程度である。
【0021】
このように、メインジャーナルピン端部に、フィレットと環状リップを共に十分な高さで収容できる空間を確保するために、メインジャーナルピンの端部の直径は、メインジャーナルピンの中央部の直径より少なくとも10%、好ましくは25%、最も好ましくは50%大きいことが好ましい。これにより、記載したフィレットを有するメインジャーナルピンを製造することができ、比較的大きな径のフィレットを完全にメインジャーナルピン内に配することができる。加えて、メインジャーナルピンの端部は、環状フィレットを囲む環状リップを備えることができ、これにより、フィレットを作らない場合とほぼ同じ長さの焼き嵌め接続を得ることができる。
【0022】
本発明の最も好ましい実施形態では、断面で見たフィレットの表面は、全円の少なくとも180度に亘る長さを有する。また、焼き嵌め長が、可能な最大の長さを有するため、選択されたウェブの厚さで最大のトルク伝達能力を提供する。
【0023】
疲労強度や降伏強度の高い高規格材料を使用することで、より高いトルク容量とメインジャーナルピンフィレットの安全性を得ることができる。しかし、高スペックな材料はかなり高価であり、全てのクランクシャフトメーカーが容易に入手できるものではありない。提案する設計は、広く入手可能な標準的な材料を使用して同様の利点を提供しる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、本願発明をより詳細に説明する。
【
図1】既知の半組立式クランクシャフトの一例を示す。
【
図2】
図1の半組立式クランクシャフトの要部を示す。
【
図3】
図1の半組立式クランクシャフトの詳細を示す。
【
図4】本発明による実施形態の半組立式クランクシャフトの部分をより詳細に示す
【
図5】本発明による半組立式クランクシャフトのフィレット設計の一例を示す。
【好適な実施形態の詳細説明】
【0025】
図1~3は、本書の冒頭部分で前述した既知の半組立式クランクシャフトの一例を示すものである。
【0026】
図4は、本発明による半組立式クランクシャフトの一実施形態の断面図である。
図4では、
図1~3と同じ参照番号が対応する要素に使用されている。
【0027】
図4の左側には、孔6を有するクランクウェブ5と、メインジャーナルピン中央部1b及び端部1aを有するメインジャーナルピン1の一部が示されている。図示のように、メインジャーナルピン1の端部1aは、クランクウェブ5の孔6に挿入され、通常焼き嵌めによりクランクウェブ5に結合される。すなわちメインジャーナルピン1は、クランクウェブ5の孔6の直径によりも大きなサイズを有している。焼き嵌め接続は、クランクウェブ5の穴6の軸方向延長にほぼ対応する長さLを有している。
【0028】
メインジャーナルピン1は、メインジャーナルピン中央部1bとメインジャーナルピン端部1aとを有し、その直径は、メインジャーナルピン中央部の直径Dcよりメインジャーナルピン端部1aの縮径部Dsの方が太い。メインジャーナルピン中央部1bとメインジャーナルピン端部1aとの間の移行領域における応力集中を低減するために、メインジャーナルピン1上にフィレット11を形成することが一般的である。
【0029】
本発明によれば、フィレット11はメインジャーナルピン1にのみ設けられ、好ましくは機械加工によって、メインジャーナルピン1のメインジャーナルピン端部1aの端面1cに設けられる。端面1cはメインジャーナルピン中央部1bに面している。それによって、焼き嵌め接続長Lは、クランクウェブ5とその中の孔6の選択された寸法のうちで可能な限り長くなり、結果としてクランクシャフト20のトルク容量は、もはやメインジャーナルピンフィレットの半径に関連しないようにすることができる。というのは、クランクウェブ5又はメインジャーナルピン端部1aのいずれのフィレット又は部分も、これらの要素が出会う領域においては機械加工されないからである。ただし、小さな面取り部2は作成されることがあり、これは、焼き嵌め接続の端部で高い収縮圧力を確保するために、メインジャーナルピン中央部に面したメインジャーナルピン端部の端部に作成されることがあるためである。高い収縮圧力は、焼き嵌め接続部における微小な滑りやフレッティングを抑制するため好ましい。シリンダ距離や機関全長を増加させることなく、トルク容量を維持、あるいは増加させることができる。
【0030】
図から解るとおり、フィレット11は、メインジャーナルピン1の全周に亘って設けられる環状のフィレットとされている。
【0031】
本発明の例示的な実施形態では、フィレット11は、
図5に見られるように、断面で見て、曲率半径R1、R2、R3をそれぞれ有する3つの円部分30a、b、c、及び2つの直線部分30d、30eを有する表面30を有している。直線部30eはフィレット11の底部に位置している。ここで、円形部分の角度和は、図示の実施形態では180度以上、より正確には約194度である。
【0032】
図5に示す実施形態では、フィレット11は、円形部分30aにアンダーカット30uを有しており、この部分はメインジャーナルピン1中央部1bにわずかな距離入り込んでいる。このアンダーカット30uは、クランクシャフトが軸方向の異常振動を受けたときに、メインジャーナルピン1に関連して配置されている軸受シェル(図示せず)の端部がフィレット11に当たらないようにするために用いられるが、最も重要なことは、メインジャーナルピンフィレット11の組み立て前に機械加工性を与えていることである。アンダーカットがなければ不可能な軸受面の組み立て後加工により、軸受面の共線性(Collinearity)を確保することができる。
【0033】
フィレット11の実際の設計は、円形部分及び線形部分の選択に依存し、フィレット11の高さHfを定義する。
図5に示された実施形態は例示に過ぎず、他に非常に多くの可能な実施形態が考えられる。実際の設計は、機関サイズや動的負荷など、他の多くの設計基準に依存する。
【0034】
図4及び
図5の両方に示すように、メインジャーナル端部1aは、フィレット11を囲む環状のリップ8を有している。リップ8は、クランクウェブ5内のそれぞれの孔6の軸方向長さに対応する長さLでの高圧焼き嵌めを保証する十分な剛性を確保するために、適切な高さH
lを備えている。
【0035】
提案したような方法でメインジャーナルピンフィレット11の半径から焼き嵌め接続長Lの関連性を取り除くために、メインジャーナルピン1の端部部分の直径Dsは、既知のクランクシャフトと比較して太くさせられるべきであり、メインジャーナルピン1のメインジャーナルピン中央部1bの直径Dcよりも大きくすることが望ましい。従って、メインジャーナルピン1の端部部分1aの直径Dsは、メインジャーナルピン1のメインジャーナルピン中央部1bの直径Dcより太くすることが好ましく、断面で見て環状フィレット11の高さHfの少なくとも2倍に環状リップ8の高さHlの2倍を加えた太さにすることが好ましい。従って、様々な機関サイズに対する推定は、比Ds/Dcが1.1~2の範囲であるべきであることを示す。
【0036】
断面で見た各フィレット11の高さHfは、好ましくはメインジャーナルピン1の中央主部1bの直径の1~10%、より好ましくは2~5%、最も好ましくは3%程度とする。また、環状リップ8の高さHlは、好ましくはメインジャーナルピン1の中央主部1bの直径の0,5~5%、最も好ましくは1,5%程度とするとよい。
【0037】
このように、メインジャーナルピン端部1aに、フィレット11と環状リップ8を共に十分な高さで収容できる空間を確保するために、メインジャーナルピン1の端部1aの直径Dsは、メインジャーナルピン1の中央部1bの直径Dcより少なくとも10%、好ましくは25%、最も好ましくは50%大きいことが好ましい。これにより、記載したフィレット11を有するメインジャーナルピン1を製造することができ、比較的大きな径のフィレット11を完全にメインジャーナルピン1内に配することができる。加えて、メインジャーナルピン1の端部1aは、環状フィレット11を囲む環状リップ8を備えることができ、これにより、フィレット11を作らない場合とほぼ同じ長さLの焼き嵌め接続を得ることができる。
【0038】
本発明の最も好ましい実施形態では、断面で見たフィレット11の表面は、全円の少なくとも180度に亘る長さを有する。また、焼き嵌め長さLが、可能な最大の長さを有するため、選択されたウェブの厚さで最大のトルク伝達能力を提供する。