(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】TK防草植込式緑化工法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A01G13/00 301A
(21)【出願番号】P 2023187430
(22)【出願日】2023-11-01
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002199
【氏名又は名称】株式会社丹勝
(72)【発明者】
【氏名】丹野 勝治
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150583(JP,A)
【文献】特開2017-131170(JP,A)
【文献】特開2017-12034(JP,A)
【文献】特開2016-146793(JP,A)
【文献】特開2001-45881(JP,A)
【文献】登録実用新案第3136399(JP,U)
【文献】実開昭61-97443(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G13/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面にポリシート、ラッセルネット、乾燥枯草の3層を積層した防草シートを敷設し、所望草木を植込み、ゴムシート、乾燥枯草の2層を積層した雑草抑止シートで所望草木外周を覆い、防草と緑化を図ることを特徴とする緑化工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面や道路の中央分離帯・ガードレール周り等の景観緑化を図るための雑草防除と、目的とする導入草木(蔦花等背丈20~30センチ程度)のみの緑化を可能とするシートを兼ね備えた植生緑化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面や道路の分離帯・ガードレールに生える雑草は、高い草丈や不規則なほふく・徒長により、保護緑化としての景観上悪影響を及ぼすほか、見通しを悪化させ交通安全に支障をきたすため、毎年膨大な経費を掛けて除草作業が行われてきた。
そこで近年は、特許文献1の無機質粒子および無機質粒子を含有する合成樹脂より選ばれる表面層、改質アスファルト層および、基材層の少なくとも3層を積層した防草シートやこの3層に加え改質アスファルト層および、合成樹脂、ゴム、無機質粒子および無機質粒子を含有する合成樹脂より選ばれる裏面層との少なくとも5層を積層した防草シートを除草すべき箇所に敷設固定して雑草が生育しないようにする試みがなされている。
【0003】
また特許文献2は、コーティング紙、ポリシート、不織布を熱接着にて3層を積層し、一定の間隔で直径十数ミリの植穴を防草シートに形成、上部面に格子状のラッセルネットを付着させ良質土、種子、肥料、保護材、安定剤に水を加え泥んこ状に混合した肥沃土を数ミリの厚さでコーティングさせ、防草と緑化を兼ね備えた工法に植生緑化を行う試みがなされている。
【0004】
しかし、特許文献1での防草シートによる雑草防除は、雑草が生育しない反面、むきだしの防草シート一色だけが広がり地域景観の悪化が問題となりつつある。さらに、防草シートが常に太陽の紫外線を受け続けるため、シートの劣化が早く、耐久性が問題となる。
特許文献2は、防草シートの植穴が各植物の幹径に合わせたものではなく、一定円の画一化された規格のため雑草が生育する隙間が生まれること、立木の生育経過による防草シート根元部分の棄損が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-272348号公報
【文献】特開2017-131170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決すべく破損や腐蝕がしにくく防草・対候性効果に優れながらも、所望草木のみ生育可能な軽量で施工が容易に行なえる植生機能を兼ね備えた防草シートの提供をすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、設置箇所の雑草防除を図り、所望草木のみを繁茂させることが可能なシートを形成するために、下から順に根や水も通さぬ黒色ポリシート、風雨でのシート飛散を防ぐ黒色ラッセルネットを重ねて熱接着にて1枚のシートを形成する。
さらに、接着剤を用いて約2~3mm程度に切断した乾燥枯草を上面全体に固着させ、3層を積層した防草シートを形成する。
所望草木の形状に合わせて防草シートを開孔した箇所に、粘性改良土を一定量注入し根付や生育を促す土壌を成型、所望草木を植え込みする。
開孔部分と所望草木の隙間から雑草発生を防ぐため、厚さ0.5~2ミリ程度、ゴムシート中央に所望草木の形状に合わせて切り込みを入れ、約2~3mm程度に切断した乾燥枯草をゴムシートの上に接着剤にて固着させ、雑草抑止シートを形成する。この場合のゴムシートの方寸は所望草木の幹径に合わせて調整する。
防草シートの上面に雑草抑止シートを施し、金目串で固定する。
防草シート同士は、遮光性を確保するため10~20cm重ねて金目串を用いて固定する。
【0008】
当該防草シートを施工箇所に隙間無く敷設、施工表面は常にアゼレーションをおこしており、金目串を用いてしっかりと打設固定する。防草シート同士は遮光性を考慮して10~20cm重ねて金目串を用いて固定する。円柱形構造物や所望草木と接する部分の防草シートはその形状に沿って開孔する。開口部には粘性改良土を施工面と防草シートの隙間に満遍なく注入する。防草シート開孔部は雑草抑止シートで塞ぎ、隙間からの雑草生育を抑制させ、所望草木のみを生育させることが可能な防草シートによる緑化工法。
【発明の効果】
【0009】
防草シートを用いた緑化工法は、設置箇所の雑草生育を抑制し、所望植物を植穴から生育・繁茂させることが可能となり、除草管理が必要な道路中央分離帯、ガードレール、家庭の庭に加えて、法面等の緑化や地域景観の向上を図ることができる。また、この工法は施工面が人工薄層植栽マットの場合への所望草木植込にも活用でき、屋上緑化などでの施工時の草刈りメンテナンスも不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】防草シートを施工面(地面)に敷設し、開孔した図である。
【
図3】開孔した防草シートに粘性改良土を注入したことを示す図である。
【
図4】防草シートに所望草木を植込むことを示す図である。
【
図5】防草シートに雑草抑止シートを敷設・固定する説明図である。
【
図6】防草シート同士を重ね合わせることを説明する図である。
【
図7】ゴムシートに切り込みを入れたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【実施例】
【0012】
図1は、防草シートの構成を示す説明図である。これを形成するシート類は、いずれも軽量で破損や腐蝕がしにくく光を通しにくい材質で、根や水も通さぬ黒色ポリシート1、風雨でのシート飛散を防ぐ2~4mm目合いのポリエチレン製黒色ラッセルネットシート2を重ね、熱接着により1枚のシートを形成する。さらに接着剤を用いて約2~3mm程度に切断した乾燥枯草3を上面全体に固着させ、3層を積層した防草シート4を形成する。乾燥枯草は、黒色の防草シートを被覆させ、太陽からの紫外線を防ぐことで防草シートの劣化を低減させるとともに、景観を保全するためのものである。
【0013】
図2は、防草シートを施工面(地面)5に敷設し、開孔した図である。施工表面は常にアゼレーションをおこしており、金目串を用いてしっかりと打設固定する。開孔の大きさ・形状は所望草木に合わせて加工する。なお、防草シートを任意に縦横に切り裂いた場合、必ず雑草が繁茂するため防草効果の役目は果たさない。
【0014】
図3は、開孔した防草シートに粘性改良土6を注入したことを示す図である。防草シートと施工面(地面)に隙間ができると雑草が生育する余地を与えてしまうため、施工面と隙間をすべて粘性改良土6で覆う。
【0015】
図4は、防草シートに所望草木7を植込むことを示す図である。防草シートは、黒色シートで形成されており、開孔部以外は太陽光が届かず雑草が生育することがない。なお、開孔部にほふく茎型の植物を植え込みすると、地表の湿気と温度が保たれて早期に発育しランナーしながら成長してシート面上を覆い尽くす。これが太陽光の紫外線による防草シートの劣化・損耗を防止し、対候性を向上させる。
【0016】
図5は、防草シートに雑草抑止シート10を敷設・固定する説明図である。雑草抑止シートについては、
図7、8にて説明する。敷設・固定には金目串を使用する。
【0017】
図6は、防草シート同士を重ね合わせることを説明する図である。防草効果を高めるための十分な遮光性の確保のため、防草シート同士を10~20cm重ね合わせ、金目串を用いて固定する。
【0018】
図7は、雑草抑止シートを構成するゴムシートに切り込みを入れたことを示す図である。厚さ0.5~2ミリ程度、ゴムシート中央に所望草木の形状に合わせて切り込みを入れ、ゴムシート8を形成する。ゴムシートの大きさは所望草木の幹径に合わせ方寸サイズを調整する。
【0019】
図8は、雑草抑止シート10の構成を示す説明図である。ゴムシート8の上面全体に約2~3mm程度に切断した乾燥枯草9を接着剤にて固着させ、雑草抑止シートを形成する。乾燥枯草は、黒色のゴムシートを被覆させ、太陽光の紫外線による劣化を防止し、景観を保全するためのものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この緑化工法は、雑草の生育を抑制して所望草木を繁茂させる防草と植生を兼ね備えたシートであり、軽量で施工が容易な上、破損や腐蝕がしにくく、対候性を備え、除草管理が必要な道路、分離帯、ガードレールや法面等の緑化資材として、また家庭内ガーデンや公園などの景観形成等における自然環境の復元緑化資材として、これから大いに利用される可能性の高いものである。
【符号の説明】
【0021】
1 黒色ポリシート
2 黒色ラッセルネット
3 乾燥枯草
4 防草シート
5 施工面(地面)
6 粘性改良土
7 所望草木
8 ゴムシート
9 乾燥枯草
10 雑草抑止シート
【要約】
【課題】
破損や腐食がしにくく、雑草の防草効果や対候性に優れ、所望植物が長期間生育可能で、防草シートを兼ね備え地域景観の保全形成と交通視界の妨げにならない緑化が可能な防草緑化工法の提供。
【解決手段】
下から、根や水も通さぬ黒色ポリシート、風雨でのシート飛散を防ぐ黒色ラッセルネットを重ねて熱接着にて1枚のシートを形成、接着剤を用いて乾燥枯草を上面全体に固着させ、3層を積層した防草シートを形成。
所望草木の形状に合わせて防草シートを開孔させ、粘性改良土を一定量注入し根付や生育を促す土壌を成型、所望草木の植え込みをする。その上からゴムシート中央に所望草木の形状に合わせて切り込みを入れ、乾燥枯草をゴムシートの上に接着剤にて固着させた雑草抑止シートを施し、金目串で固定する。
防草シート開孔部は雑草抑止シートで塞ぎ、隙間からの雑草生育を抑制させ、所望草木のみを生育させることが可能な防草シートによる緑化工法。
【選択図】
図5