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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】警戒エリア設定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G08G1/09 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023195190
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2023-11-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513087677
【氏名又は名称】PCIソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤戸 寛明
(72)【発明者】
【氏名】島山 求
(72)【発明者】
【氏名】古賀 淳也
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-181557(JP,A)
【文献】特許第7298063(JP,B1)
【文献】国際公開第2011/013586(WO,A1)
【文献】特開2021-114169(JP,A)
【文献】国際公開第2023/136039(WO,A1)
【文献】特開2014-235485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定高さの位置から道路を含む風景を撮影した撮影画像に基づいて、前記道路の一部の領域を警戒エリアとして設定する警戒エリア設定装置であって、
前記撮影画像中において前記道路を認識する道路認識部と、
前記撮影画像中において、前記撮影画像の左下端点、右下端点及び前記道路の外形に基づいて決まる複数の点を包含する凸包外形線を抽出する凸包抽出部と、
前記撮影画像中において、前記撮影画像の下辺上に左側端点及び右側端点を定め、前記左側端点及び右側端点を結んだ直線からなる前記警戒エリアの基底を設定する警戒エリア基底設定部と、
前記撮影画像中において、前記基底から前記撮像画像の奥行き方向に直線状に延伸して前記撮影画像内に消失点を有する仮想の道路である仮想直線道路を設定し、前記仮想直線道路の前記消失点と、前記左側端点と前記消失点とを結ぶ線分上に位置する左側制御点と、前記右側端点と前記消失点とを結ぶ線分上に位置する右側制御点と、を生成する制御点生成部と、
前記左側端点、前記左側制御点、前記消失点及び前記凸包外形線の前記撮影画像中の最も上にある頂点である頂上点に基づいて生成されるパラメトリック曲線である左パラメトリック曲線を生成し、前記右側端点、前記右側制御点、前記消失点及び前記頂上点に基づいて生成されるパラメトリック曲線である右パラメトリック曲線を生成するパラメトリック曲線生成部と、
を有し、
前記基底、前記左パラメトリック曲線及び前記右パラメトリック曲線に基づいて前記警戒エリアを設定することを特徴とする警戒エリア設定装置。
【請求項2】
前記撮影画像中において、前記頂上点を通る前記下辺に平行な線と前記下辺との間に、前記下辺と平行に延伸する直線を、前記下辺に近い方から第1ライン、第2ラインと2本生成する水平ライン生成部を有し、
前記制御点生成部は、
前記撮影画像中において、前記左側端点及び前記右側端点の中点を通り且つ前記警戒エリアの基底に垂直な直線と前記第2ラインとの交点を前記消失点として設定し、
前記左側端点及び前記消失点を結ぶ辺と前記第1ラインとの交点を前記左側制御点として設定し、
前記右側端点及び前記消失点を結ぶ辺と前記第1ラインとの交点を前記右側制御点として設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の警戒エリア設定装置。
【請求項3】
前記パラメトリック曲線生成部は、
前記撮影画像中において、前記左側端点を始点とし、前記左側制御点を第1制御点とし、前記消失点を第2制御点としかつ前記頂上点を終点とするパラメトリック曲線を生成することにより前記第1ラインの上側において前記第1ラインの下側よりも曲率が大きい前記左パラメトリック曲線を生成し、
前記撮影画像中において、前記右側端点を始点とし、前記右側制御点を第1制御点とし、前記消失点を第2制御点としかつ前記頂上点を終点とするパラメトリック曲線を生成することにより前記第1ラインの上側において前記第1ラインの下側よりも曲率が大きい前記右パラメトリック曲線を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の警戒エリア設定装置。
【請求項4】
前記左パラメトリック曲線及び前記右パラメトリック曲線の各々は、前記第1ラインの下側に位置し且つ前記始点、前記第1制御点及び前記第2制御点の位置に応じて形状が直線に近い変化をする直線的形状セグメントと、前記第1ラインの上側に位置し且つ前記第1制御点、前記第2制御点及び前記終点の位置に応じて曲率が変化する曲線的形状セグメントと、から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の警戒エリア設定装置。
【請求項5】
前記水平ライン生成部は、前記撮影画像中における前記第1ライン及び前記第2ラインの位置を変化させることにより、前記左パラメトリック曲線及び前記右パラメトリック曲線の各々における前記直線的形状セグメント及び前記曲線的形状セグメントの割合を調整させることを特徴とする請求項4に記載の警戒エリア設定装置。
【請求項6】
前記警戒エリア基底設定部は、前記撮影画像を撮影する撮影手段の道路面からの高さ及び画角に基づいて、前記基底を設定することを特徴とする請求項2に記載の警戒エリア設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警戒エリア設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事や事故対応に伴う道路上での作業において、作業を安全に行うため、道路に警戒エリアを設定し、警戒エリアに進入する車両を検知して警報を鳴らすシステムが運用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-90362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のようなシステムでは、警戒エリアの設定を作業者が手作業で行っている。例えば、道路作業の対象である道路区間を映した画面上で作業者が範囲を指定することにより、警戒エリアが設定される。このため、交通事故の場合等、時間的な余裕がない場合にも手作業で警戒エリアを設定する必要があり、速やかに作業を行うことができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、道路を撮影した画像に基づいて警戒エリアを速やかに設定することが可能な警戒エリア設定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る警戒エリア設定装置は、所定高さの位置から道路を含む風景を撮影した撮影画像に基づいて、前記道路の一部の領域を警戒エリアとして設定する警戒エリア設定装置であって、前記撮影画像中において前記道路を認識する道路認識部と、前記撮影画像中において、前記撮影画像の左下端点、右下端点及び前記道路の外形に基づいて決まる複数の点を包含する凸包外形線を抽出する凸包抽出部と、前記撮影画像中において、前記撮影画像の下辺上に左側端点及び右側端点を定め、前記左側端点及び右側端点を結んだ直線からなる前記警戒エリアの基底を設定する警戒エリア基底設定部と、前記撮影画像中において、前記基底から前記撮像画像の奥行き方向に直線状に延伸して前記撮影画像内に消失点を有する仮想の道路である仮想直線道路を設定し、前記仮想直線道路の消失点と、前記左側端点と前記消失点とを結ぶ線分上に位置する左側制御点と、前記右側端点と前記消失点とを結ぶ線分上に位置する右側制御点と、を生成する制御点生成部と、前記左側端点、前記左側制御点、前記消失点及び前記凸包外形線の前記撮影画像中の最も上にある頂点である頂上点に基づいて生成されるパラメトリック曲線である左パラメトリック曲線を生成し、前記右側端点、前記右側制御点、前記消失点及び前記頂上点に基づいて生成されるパラメトリック曲線である右パラメトリック曲線を生成するパラメトリック曲線生成部と、を有し、前記基底、前記左パラメトリック曲線及び前記右パラメトリック曲線に基づいて前記警戒エリアを設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る警戒エリア設定装置によれば、道路を撮影した画像に基づいて警戒エリアを速やかに設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】警戒エリア設定装置を含む警戒エリア設定システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施例に係る警戒エリア設定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】警戒エリア設定装置における情報処理部のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】警戒エリア設定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
図5A】道路認識処理における表示画面の一例を示す図である。
図5B】凸包抽出処理における表示画面の一例を示す図である。
図6A】形状特徴抽出処理における表示画面の一例を示す図である。
図6B】水平ライン生成処理における表示画面の一例を示す図である。
図6C】警戒エリア基底設定処理における表示画面の一例を示す図である。
図7A】形状制御点の生成処理における表示画面の一例を示す図である。
図7B】パラメトリック曲線の生成処理における表示画面の一例を示す図である。
図8A】カメラ透視変換ビューでのパラメトリック曲線を示す図である。
図8B】鉛直方向から道路面を見た場合のパラメトリック曲線を示す図である。
図9】一連の処理を経て設定された警戒エリアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0010】
図1は、本実施例の警戒エリア設定装置10を含む警戒エリア設定システムの構成を示す図である。
【0011】
警戒エリア設定装置10は、例えば、道路の工事や事故の復旧作業などで一部の道路区間において車線規制を行う際に、道路上での作業エリアを警戒エリアとして設定する装置である。警戒エリア設定装置10が設定した警戒エリアに侵入する車両を検知した場合、警報を鳴らして道路上での作業者に危険を報知することが行われる。危険の報知は、例えば警告信号を作業者の携帯端末に向けて送信し、警告信号を受信した携帯端末が警告音を発することにより行ってもよい。
【0012】
警戒エリア設定装置10は、道路上を走行する車両V1に搭載されている。車両V1は、例えば道路工事中であることを示す標識が荷台に設けられた工事車両である。
【0013】
車両V1の荷台に設けられた標識の上部には、カメラCAが配置されている。カメラCAは、道路面の上方の所定高さの位置から道路面を含む風景を撮影する。警戒エリア設定装置10は、カメラCAが撮影した撮影画像を用いて、画像内で警戒エリアの設定を行う。
【0014】
カメラCAは、有線又は無線によって警戒エリア設定装置10と接続されており、撮影した撮影画像を警戒エリア設定装置10に向けて送信可能に構成されている。
【0015】
図2は、警戒エリア設定装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。警戒エリア設定装置10は、情報処理部11、通信部12、出力部13及び大容量記憶装置14を有する。情報処理部11、通信部12及び出力部13は、システムバスSBを介して協働するように構成されている。
【0016】
情報処理部11は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、及びRAM(Random Access Memory)23を含む処理装置である。本実施例では、CPU21が、ROM22や大容量記憶装置14に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する各種機能が実現される。
【0017】
通信部12は、情報処理部11の指示に従って外部機器とデータの送受信を行う通信装置である。通信部12は、例えば、ネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)から構成されている。本実施例では、通信部12は、カメラCAと接続され、カメラCAから送信された撮影画像を受信する。
【0018】
出力部13は、例えば液晶表示装置等に接続されているインタフェース部である。情報処理部11は、出力部13を介して液晶表示装置等のディスプレイに警戒エリアの設定画面を表示させる。
【0019】
大容量記憶装置14は、情報処理部11の処理に必要なデータを記憶管理する記憶デバイスである。大容量記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、SSD(solid state drive)、フラッシュメモリ等により構成されており、オペレーティングシステムや、端末用のソフトウェア等の各種プログラムを記憶している。
【0020】
上記各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしてもよく、また、記録媒体に記録されて各種ドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。すなわち、大容量記憶装置14に記憶される各種プログラムは、ネットワークを介して伝送可能であり、また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して譲渡することも可能である。
【0021】
また、大容量記憶装置14に格納されている道路認識モデル24は、後述する道路認識処理において、カメラCAによって撮像された撮像画像中において道路領域を認識可能とするAIモデルである。道路認識モデル24は、画像中の道路認識についての学習が予めなされたAIモデルである。
【0022】
図3は、本実施例の警戒エリア設定装置10における情報処理部11のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。各機能ブロックは、上記の通りCPU21がROM22に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。なお、ここでは、各機能ブロックから他の機能ブロックに出力される情報の流れを実線矢印で示している。
【0023】
道路認識部31は、情報処理部11が通信部12を介して取得したカメラCAの撮影画像に基づいて、画像内での道路領域を認識する処理を行う。道路認識部31は、大容量記憶装置14に格納されている道路認識モデル24(例えば、Intel社のOpenVINO(登録商標))を用いて、カメラCAの撮影画像内における道路領域の認識処理を行う。
【0024】
凸包抽出部32は、カメラCAの撮影画像内において、撮影画像の左下端点、右下端点、及び道路認識部31が認識した道路領域の外形に基づいて決まる複数の点を包含する凸包外形線(以下、単に凸包とも称する)を抽出する処理を行う。凸包抽出部32は、例えばIntel社のOpenCV(登録商標)等の公知の画像処理技術を用いて凸包の抽出処理を実行する。
【0025】
形状特徴抽出部33は、凸包抽出部32が抽出した凸包外形線の画像内における形状特徴を抽出する処理を行う。本実施例では、形状特徴抽出部33は、凸包外形線の画像内における最も上にある頂点である頂上点、及び撮影画像の下底における底辺の位置を、凸包の形状特徴として抽出する。
【0026】
水平レベル分割部34は、画像内において形状特徴抽出部33が抽出した凸包の頂上点と底辺との間を水平方向、すなわち撮影画像の下辺と平行に延伸する方向に複数のラインを生成し、当該複数のラインによって分けられた複数の分割区間を生成する処理を行う。本実施例では、水平レベル分割部34は、画像内の凸包の頂上点と底辺との間に水平方向に延伸するレベル1及びレベル2の2本のラインを生成し、当該2本のラインによって分けられた3つの分割区間を生成する。
【0027】
警戒エリア基底設定部35は、画像内の凸包の底辺の位置に、警戒エリアの基底をなす左側端点及び右側端点を設定する処理を行う。すなわち、左側端点と右側端点とを結ぶ直線部分が、警戒エリアの基底となる。警戒エリア基底設定部35は、例えばカメラCAの道路面からの高さや画角と、カメラ画像の解像度によって定まるパラメータをROM22から読み出し、これに基づいて警戒エリアの基底をなす左側端点及び右側端点(以下、これらをあわせて基底両端点とも称する)を設定する。
【0028】
形状制御点生成部36は、形状特徴抽出部33により抽出された凸包の頂上点、水平レベル分割部34により生成された複数のライン、及び警戒エリア基底設定部35により設定された基底両端点の情報に基づいて、警戒エリアの形状を定めるための複数の形状制御点を生成する。本実施例では、警戒エリアは基底部分及び左右の曲線部分から構成される。このため、形状制御点生成部36は、警戒エリアの左右の曲線形状の各々を定めるための複数の形状制御点を生成する。
【0029】
警戒エリア・パラメトリック曲線生成部37は、形状制御点生成部36が生成した複数の形状制御点の情報に基づいて、警戒エリアを画定するパラメトリック曲線を生成する。なお、形状制御点生成部36による形状制御点の生成、及び警戒エリア・パラメトリック曲線生成部37によるパラメトリック曲線の生成についての詳細は、後述する。
【0030】
次に、警戒エリア設定処理における各機能ブロックの動作及びその流れについて詳細に説明する。
【0031】
図4は、本実施例の警戒エリア設定装置10が実行する警戒エリア設定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0032】
情報処理部11は、カメラCAによって撮影された撮影画像を通信部12から取得する。道路認識部31は、情報処理部11が取得した撮影画像の画像中で道路領域を認識する処理を行う(STEP101)。これにより、図5Aに斜線で示すような道路領域が認識される。
【0033】
凸包抽出部32は、道路認識部31によって認識された道路領域の凸包外形線である凸包CHを抽出する(STEP102)。これにより、図5Bに太線で示すような凸包CHが抽出される。
【0034】
形状特徴抽出部33は、凸包抽出部32によって抽出された凸包CHの頂上点及び底辺を含む形状特徴を抽出する(STEP103)。これにより、図6Aに示すような頂上点VT及び底辺CBが抽出される。
【0035】
水平レベル分割部34は、画像内において形状特徴抽出部33が抽出した凸包の頂上点と底辺との間に水平方向に延伸するレベル1のラインL1及びレベル2のラインL2を生成する(STEP104)。これにより、図6Bに示すように、ラインL1及びL2によって区切られた領域が分割区間S1、S2及びS3として生成される。
【0036】
なお、水平レベル分割部34は、ラインL1及びL2によって区切られた分割区間S1~S3のそれぞれの垂直方向の長さ(高さ)が、S1>S2>S3の関係となるように、ラインの生成(すなわち、水平方向における領域分割)を行う。例えば、画像全体の高さを100とすると、分割区間S1は60、分割区間S2は30、分割区間S3は10となるように、ラインL1及びL2が生成され、画像領域の分割が行われる。
【0037】
警戒エリア基底設定部35は、形状特徴抽出部33によって抽出された凸包の底辺の位置に、警戒エリアの基底両端点を設定する(STEP105)。これにより、図6Cに示すような左制御点LP0及び右制御点RP0が、基底両端点として設定される。
【0038】
形状制御点生成部36は、形状特徴抽出部33、水平レベル分割部34及び警戒エリア基底設定部35の処理結果に基づいて、警戒エリアの基底から撮影画像の奥行き方向に直線状に延伸する仮想直線道路の設定、当該仮想道路の消失点の生成、及び警戒エリアの形状を定めるための形状制御点の生成処理を行う。これらの処理について、図7Aを参照して説明する。
【0039】
図7Aは、仮想直線道路の設定、消失点の生成及び形状制御点の生成画面の一例を示す図である。ここでは、レベル1のラインL1、レベル2のラインL2の他、頂上点VTと同じ高さの線をラインLT、凸包CHの底辺と同じ高さの線をラインL0として示している。
【0040】
形状制御点生成部36は、まずラインL1、L2及び基底両端点である左制御点LP0、右制御点RP0に基づいて、基底両端点から撮影画像の奥行き方向に延伸し且つ消失点を有する仮想直線道路を設定する(STEP106)。本実施例では、形状制御点生成部36は、左制御点LP0及び右制御点RP0の中点を通って垂直に伸びる直線(すなわち、LP0-RP0の垂直2等分線)とラインL2との交点を消失点VPとする仮想直線道路を設定する。なお、消失点VPは、撮影画像中において凸包の頂上点VTよりも下側に位置している。
【0041】
次に、形状制御点生成部36は、警戒エリアの形状を定めるための形状制御点の生成処理を行う(STEP107)。まず、形状制御点生成部36は、仮想直線道路の消失点VPを制御点P2として設定する。
【0042】
また、形状制御点生成部36は、左制御点LP0、右制御点RP0及び制御点P2(消失点VP)を結ぶ三角形、すなわち左制御点LP0と右制御点RP0とを結ぶ線分を底辺として制御点P2を頂点とする二等辺三角形を生成する。この二等辺三角形は、画像中の道路が直線道路である場合に、基底両端点の幅が道路の奥行き方向においてどのように変化するかを示している。
【0043】
形状制御点生成部36は、二等辺三角形の制御点P2及び左制御点LP0を結ぶ辺とラインL1との交点を左制御点LP1、制御点P2及び右制御点RP0を結ぶ辺とラインL1との交点を右制御点RP1として設定する。また、形状制御点生成部36は、凸包CHの頂上点VTを制御点P3として設定する。
【0044】
警戒エリア・パラメトリック曲線生成部37は、形状制御点生成部36が生成した各制御点の情報に基づいて、警戒エリアを画定するパラメトリック曲線を生成する(STEP108)。
【0045】
図7Bは、パラメトリック曲線の設定画面の一例を示す図である。警戒エリア・パラメトリック曲線生成部37は、左制御点LP0、左制御点LP1、制御点P2及び制御点P3に基づいて、左パラメトリック曲線LPCを生成する。また、警戒エリア・パラメトリック曲線生成部37は、右制御点RP0、右制御点RP1、制御点P2及び制御点P3に基づいて、右パラメトリック曲線RPCを生成する。
【0046】
図8Aは、カメラCAから道路面を見た場合(以下、カメラ透視変換ビューと称する)における、左パラメトリック曲線LPC及び右パラメトリック曲線RPCの形状を示す図である。ここでは、一例として、撮影画像の下底から50mの位置にラインL1、150mの位置にラインL2、300mの位置にラインLTが生成されている場合を示している。
【0047】
右パラメトリック曲線RPCは、セグメントSG1及びセグメントSG2が滑らかに連続的に接続することにより構成されている。セグメントSG1は、撮影画像内においてラインL1よりも下に位置する分割区間S1に対応するセグメントであり、曲率の小さい直線的に変化する形状を有するセグメント(以下、直線的形状セグメントと称する)である。セグメントSG1は、右制御点RP0、RP1及び制御点P2が直線上に配置されていることにより、これらの制御点の位置の変化に応じて、形状が直線的(すなわち、曲率の小さい直線に近い形状で)に変化する。
【0048】
これに対し、セグメントSG2は、撮影画像内においてラインL1よりも上に位置する分割区間S2及びS3に対応するセグメントであり、セグメントSG2よりも曲率の大きい曲線的に変化する形状を有するセグメント(以下、曲線的形状セグメントと称する)である。セグメントSG2は、右制御点RP1、制御点P2及び制御点P3が三角形状に配置されていることにより、これらの制御点の位置の変化に応じて、形状が曲線的に変化する曲線形状を有する。特に制御点P3の位置が変化することによって曲線の形状が大きく変化する。
【0049】
なお、左パラメトリック曲線LPCも、右パラメトリック曲線RPCと同様に、直線的形状セグメント及び曲線的形状セグメントが滑らかに連続することにより構成されている。
【0050】
図8Bは、カメラ透視変換ビューとは異なり、鉛直方向から道路面を見た場合の左パラメトリック曲線LPC及び右パラメトリック曲線RPCの形状を示す図である。
【0051】
分割区間S1は、カメラCAから近い道路手前側の区間である。分割区間S1における道路は、分割区間S2及びS3における道路と比べて短い距離の道路区間であるため、直線的形状の道路として扱うことができる。
【0052】
一方、分割区間S2及びS3は、カメラCAから遠い道路奥側の区間であり、分割区間S1と比べて長い距離の道路区間となる。道路がカーブしている場合、分割区間S2及び分割区間S3における道路は、曲率の大きい曲線的な形状を有する。
【0053】
なお、上記の通り、分割区間S1~S3は、垂直方向の高さがS1>S2>S3の関係(例えば、6:3:1)となるように設定されている。これは、カメラ透視変換ビューでは、遠くのものは近くのものと比べて小さく表示され、垂直方向における距離も実際より短く表示されるためである。
【0054】
上記の通り、図8Bに示すように道路面に垂直な方向から見た場合、カメラCAからの距離が近い分割区間S1における道路区間は、カメラCAからの距離が遠い分割区間S2及びS3における道路区間と比べて短い。これに対し、図8Aに示すようなカメラ透視変換ビューでは、カメラCAからの距離が近い分割区間S1における道路区間は、カメラCAからの距離が遠い分割区間S2及びS3における道路区間と比べて長く表示される。したがって、水平レベル分割部34によるライン及び分割区間の生成は、カメラ透視ビューの画像内での画像の分割であるため、直線的形状セグメントに対応する分割区間S1の割合を大きく、曲線的形状セグメントに対応する分割区間S2及びS3の割合を小さくしている。
【0055】
水平レベル分割部34は、ラインL1及びラインL2の位置を変化させることにより、各制御点の位置を変化させ、直線的形状セグメントの領域及び曲線的形状セグメントの領域の割合を調整することができる。
【0056】
図9は、一連の処理を経て設定された警戒エリアの一例を示す図である。図中に斜線で示すように、基底両端点である左制御点LP0及び右制御点RP0を結ぶ線分と、左パラメトリック曲線LPC及び右パラメトリック曲線RPCと、によって囲まれる領域が警戒エリアWAとして設定される。
【0057】
以上のように、本実施例の警戒エリア設定装置10は、車両V1の荷台等、道路面から所定高さの位置から道路を含む風景を撮影した撮影画像中において、道路領域を認識する道路認識部31と、撮影画像の左下端点、右下端点及び道路の外形に基づいて決まる複数の点を含む道路の凸包を抽出する凸包抽出部32と、凸包の形状的特徴を抽出する形状特徴抽出部33と、撮影画像の下辺に両端点を設定して警戒エリアの基底を設定する警戒エリア基底設定部35と、複数の制御点を生成する形状制御点生成部36と、複数の制御点に基づいて、左右のパラメトリック曲線を生成する警戒エリア・パラメトリック曲線生成部37と、を有する。形状制御点生成部36は、警戒エリアの基底から撮影画像の奥行き方向に直線状に延伸し且つ消失点を有する仮想直線道路を設定し、凸包の頂上点を制御点P3に設定し、左側端点である左制御点LP0と消失点である制御点P2とを結ぶ線分上に位置する左制御点LP1と、右側端点である右制御点RP0と消失点である制御点P2とを結ぶ線分上に位置する右制御点RP1と、を生成する。警戒エリア・パラメトリック曲線生成部37は、左制御点LP0、LP1、制御点P2及び制御点P3に基づいて左パラメトリック曲線LPCを生成し、右制御点RP0、RP1、制御点P2及び制御点P3に基づいて右パラメトリック曲線RPCを生成する。
【0058】
このように、道路面を撮影した撮影画像に対して各機能ブロックが画像処理を行うことにより、手作業での警戒エリアの設定を要することなく、撮影画像に基づいて速やかに警戒エリアの設定を行うことが可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記実施例では、警戒エリア設定装置10が車両V1に搭載されている場合を例として説明した。しかし、警戒エリア設定装置10は、車両V1とは空間的に離間した別の位置に配置されていてもよい。
【0060】
また、上記実施例説明した各機能ブロックの動作は、必ずしも単一の装置によって実現されなくてもよい。例えば、警戒エリアの設定をサーバ装置が行い、車両V1に搭載された装置がその結果をサーバ装置から受信して表示するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 警戒エリア設定装置
11 情報処理部
12 通信部
13 出力部
14 大容量記憶装置
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 道路認識モデル
31 道路認識部
32 凸包抽出部
33 形状特徴抽出部
34 水平レベル分割部
35 警戒エリア基底設定部
36 形状制御点生成部
37 警戒エリア・パラメトリック曲線生成部
【要約】
【課題】道路を撮影した画像に基づいて警戒エリアを速やかに設定することが可能な警戒エリア設定装置を提供する。
【解決手段】撮影画像中の道路を認識する道路認識部と、撮影画像の左下端点、右下端点及び道路の外形に基づいて決まる複数の点を包含する凸包外形線を抽出する凸包抽出部と、撮影画像の下辺上に左側端点及び右側端点を定め、警戒エリアの基底を設定する警戒エリア基底設定部と、基底から奥行き方向に直線状に延伸して消失点を有する仮想直線道路を設定し、左側端点と消失点とを結ぶ線分上に位置する左側制御点と、右側端点と消失点とを結ぶ線分上に位置する右側制御点と、を生成する制御点生成部と、左側端点、左側制御点、消失点及び凸包外形線の頂上点に基づいて左パラメトリック曲線を生成し、右側端点、右側制御点、消失点及び頂上点に基づいて右パラメトリック曲線を生成するパラメトリック曲線生成部と、を有し、基底及び左右パラメトリック曲線に基づいて警戒エリアを設定する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9