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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】注入ノズルおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
E04G23/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023142036
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503032795
【氏名又は名称】株式会社ホリ・コン
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 宏一郎
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第6557907(JP,B1)
【文献】特許第6557908(JP,B1)
【文献】特開2022-169147(JP,A)
【文献】特開2011-26798(JP,A)
【文献】特開2011-94392(JP,A)
【文献】特許第3759157(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G23/02
B05C5/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入器本体に装着して用いられ、壁体に穿孔した下穴に対しその開口部を封止しながら接着剤を注入する注入ノズルであって、
先端部にノズル口を有すると共に内部に前記ノズル口に連通する注入流路を有するノズル部と、
前記ノズル部をスライド自在に支持すると共に、前記開口部を封止する開口封止部と、
内部に、前記ノズル部のスライドを許容すると共に前記注入流路と前記注入器本体とを連通する接着剤流路を有するノズルボディと、
前記ノズルボディを覆うと共に、相互に分解可能に組付けられる前記ノズル部側の前ケーシング部および前記注入器本体側の後ケーシング部から成るケーシング部と、を備え、
前記ノズルボディは、樹脂材料で形成されると共に、前記注入器本体に直接接合される本体接合部を有していることを特徴とする注入ノズル。
【請求項2】
前記開口封止部は、前記開口部を封止する封止部本体と、前記封止部本体の基端側に連なり前記ノズルボディの先端側が嵌合する受容嵌合部とを有し、
前記前ケーシング部は、前方から前記受容嵌合部に係合する前ケーシング本体と、前記前ケーシング本体の基端側に連なる第1ねじ部とを有し、
前記後ケーシング部は、前記本体接合部を除く前記ノズルボディの基端側を受容する後ケーシング本体と、前記後ケーシング本体の先端側に連なると共に前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部とを有し、
前記第1ねじ部に前記第2ねじ部を螺合することで、前記受容嵌合部は前記前ケーシング部を介して後方に引き付けられ、前記ノズルボディは前記後ケーシング部を介して前方に押圧されることを特徴とする請求項1に記載の注入ノズル。
【請求項3】
前記ノズルボディは、ボディ本体と、前記本体接合部と、前記ボディ本体と前記本体接合部との間に介設され前記後ケーシング本体の貫通部分であるケーシング貫通部とを有し、
前記後ケーシング本体は、前記ケーシング貫通部と相補的形状を為す貫通孔部を有し、
前記ケーシング貫通部は、前記ボディ本体の直径を長径とし前記本体接合部の直径を短径とする断面楕円形に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の注入ノズル。
【請求項4】
注入器本体に装着して用いられ、壁体に穿孔した下穴に対しその開口部を封止しながら接着剤を注入する注入ノズルであって、
前記下穴の奥部に臨む第1ノズル口を有すると共に、内部に前記第1ノズル口に連通する第1注入流路を有する第1ノズル部と、
前記下穴の前記開口部近傍に臨む第2ノズル口を有すると共に、前記第1ノズル部との間に前記第2ノズル口に連通する第2注入流路を有する第2ノズル部と、
前記第2ノズル部が固着されると共に前記開口部を封止する開口封止部と、
第1ノズル部をスライド自在に支持すると共に、内部に前記第1注入流路および前記第2注入流路と前記注入器本体とを連通する接着剤流路を有するノズルボディと、
前記ノズルボディを覆うと共に、相互に分解可能に組付けられる前記第1ノズル部側の前ケーシング部および前記注入器本体側の後ケーシング部から成るケーシング部と、を備え、
前記ノズルボディは、樹脂材料で形成されると共に、前記注入器本体に直接接合される本体接合部を有していることを特徴とする注入ノズル。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の注入ノズルの使用方法であって、
前記下穴に接着剤を注入する実注入作業と、接着剤の硬化作用に起因して実施され、接着剤の詰替え作業を含む下準備作業と、が交互に複数回繰り返されて1日の作業が構成される注入作業の作業形態に対し、
前記各下準備作業の作業時に、前記注入ノズルにおける前記ノズルボディを使い捨て部品として新品と交換すると共に、前記ノズル部の外部および内部を清掃し、
前記1日の作業の終了時に、前記注入ノズルにおける前記ノズルボディ、前記ノズル部および前記開口封止部を使い捨て部品として新品と交換することを特徴とする注入ノズルの使用方法。
【請求項6】
請求項4に記載の注入ノズルの使用方法であって、
前記下穴に接着剤を注入する実注入作業と、接着剤の硬化作用に起因して実施され、接着剤の詰替え作業を含む下準備作業と、が交互に複数回繰り返されて1日の作業が構成される注入作業の作業形態に対し、
前記各下準備作業の作業時に、前記注入ノズルにおける前記ノズルボディを使い捨て部品として新品と交換すると共に、前記第1ノズル部の外部および内部を清掃し、
前記1日の作業の終了時に、前記注入ノズルにおける前記ノズルボディ、前記第1ノズル部および前記第2ノズル部が固着された前記開口封止部を使い捨て部品として新品と交換することを特徴とする注入ノズルの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤(エポキシ樹脂接着剤)を用いた外壁や内壁等の壁体の補修において使用される、注入ノズルおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の注入ノズルとして、内部に注入流路を有するノズル部と、内部に注入流路に連通する接着剤流路を有するノズルボディと、を一体に形成したピンニング工法用の注入ノズルが知られている(特許文献1参照)。
この注入ノズルは、注入器本体に装着して用いられ、壁体を所定の深さまで穿孔した下穴に、その開口部を封止しながら接着剤を注入する注入ノズルであって、下穴に挿入され、内部にノズル口に連通する注入流路を有するノズル部と、ノズル部の基部に装着され、開口部を封止する開口封止部と、ノズル部を支持すると共に、内部に注入流路と注入器本体とを連通する接着剤流路を有するノズルボディと、ノズルボディを覆うケーシング部と、を備えている。
ノズル部およびノズルボディは、樹脂により一体に形成されており、ノズル部には、下穴の深さに対応させてカット位置を指標するカットラインが形成されている。また、開口封止部およびケーシング部は、ノズル部およびノズルボディに対し分解可能に構成されている。
このように構成した注入ノズルでは、下穴の深さに合わせてノズル部をカットし、下穴の最深部から接着剤の注入を実施する。また、注入器本体への接着剤の詰替えや注入ノズルの洗浄等の下準備作業において、注入ノズルを分解し使い捨てユニットであるノズル部およびノズルボディを、一体として部品交換(使い捨て)するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6557907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ピンニング工法等に用いられる2液性のエポキシ樹脂接着剤は、硬化時間が2時間程度となっている。このため、この硬化時間を考慮してほぼ定期的に注入ノズルおよび注入器本体の洗浄が行われ、且つ注入器本体へのエポキシ樹脂接着剤の詰替えが行われる。
具体的には、接着剤の硬化が始まる(注入器本体のポンピングが重くなる)1時間を目安として、特に夏季は45分を目安として、洗浄作業を実施するようにしている。すなわち、1日の作業が終了したときは元より、作業中であっても、定期的に注入ノズルおよび注入器本体の洗浄および接着剤の詰替え作業が行われる。
従来の注入ノズル等の洗浄作業は、注入ノズルの分解、洗浄、組立を含むと共に、溶剤の処理を含む一連の作業であり、作業が煩雑で時間を要するものとなっている。同様に、詰替え作業は、所定の重量比率となるように主剤および硬化剤を計量すると共に、ムラが生じないようにこれを十分に混合するものであり、作業が煩雑で時間を要するものとなっている。
したがって、一連の注入作業は、事実上、実注入作業の他に洗浄・詰替え等の下準備作業を含み、実注入作業の作業時間と下準備作業の作業時間とが、ほぼ4:6となって、下準備作業が工期に大きな影響を及ぼすものとなっていた。また、エポキシ樹脂接着剤は発癌性等の毒性が問題となっており、作業者への影響が危惧されている。
これらの点を踏まえると、上記従来の注入ノズルでは、ノズル部およびノズルボディは使い捨てる構造であるため、下準備作業において洗浄作業を省略することができる。しかし一方で、下準備作業ごとにノズル部を下穴に合わせてカットする必要があり、新たな作業が発生していた。また、注入ノズルを分解するときに、ノズル部に付着している接着剤が開口封止部に付着しないように接着剤を拭き取る必要があり、使い捨て部品に拭取り作業を必要とする矛盾が生じていた。
【0005】
本発明は、部品の使い捨てに付随する無用な作業を廃し、洗浄・詰替えの下準備作業に要する時間を短縮することができる注入ノズルおよびその使用方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の注入ノズルは、注入器本体に装着して用いられ、壁体に穿孔した下穴に対しその開口部を封止しながら接着剤を注入する注入ノズルであって、先端部にノズル口を有すると共に内部にノズル口に連通する注入流路を有するノズル部と、ノズル部をスライド自在に支持すると共に、開口部を封止する開口封止部と、内部に、ノズル部のスライドを許容すると共に注入流路と注入器本体とを連通する接着剤流路を有するノズルボディと、ノズルボディを覆うと共に、相互に分解可能に組付けられるノズル部側の前ケーシング部および注入器本体側の後ケーシング部から成るケーシング部と、を備え、ノズルボディは、樹脂材料で形成されると共に、注入器本体に直接接合される本体接合部を有していることを特徴とする。
【0007】
この種の注入ノズルを使用する一連の作業では、接着剤の硬化時間(2時間程度)を考慮して、定期的に注入器本体への接着剤の詰め替えと、注入器本体および注入ノズルの洗浄が行われる(下準備作業)。洗浄は、部品レベルに分解して行われる。
この構成によれば、ケーシング部を前ケーシング部と後ケーシング部とに分解することで、ノズル部、開口封止部およびノズルボディを容易に分解することができる。したがって、下準備作業において、接着剤流路に接着剤が残っているノズルボディを使い捨て部品として新品と交換するようにすれば、ノズルボディの洗浄作業を省略することができる。一方、ノズル部は、注入流路に残っている接着剤を押出し棒で押し出すと共に、表面に付着している接着剤を拭き取れば、接着剤が被膜的に残るものの、その膜厚が厚くなるまでは機能が損なわれることはない。同様に、開口封止部においても、付着している接着剤を拭き取れば、接着剤が被膜的に残るものの、その膜厚が厚くなるまでは機能が損なわれることはない。よって、ノズル部および開口封止部は、1日の作業を終了した時点で、使い捨て部品として新品と交換するようにすれば、その洗浄作業を省略することができる。
これにより、部品の使い捨てに付随する無用な作業が生ずることがなく、下準備作業に要する時間を極端に短縮することができる。
【0008】
この場合、開口封止部は、開口部を封止する封止部本体と、封止部本体の基端側に連なりノズルボディの先端側が嵌合する受容嵌合部とを有し、前ケーシング部は、前方から受容嵌合部に係合する前ケーシング本体と、前ケーシング本体の基端側に連なる第1ねじ部とを有し、後ケーシング部は、本体接合部を除くノズルボディの基端側を受容する後ケーシング本体と、後ケーシング本体の先端側に連なると共に第1ねじ部に螺合する第2ねじ部とを有し、第1ねじ部に第2ねじ部を螺合することで、受容嵌合部は前ケーシング部を介して後方に引き付けられ、ノズルボディは後ケーシング部を介して前方に押圧されることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、組立ての最終段階で前ケーシング部に後ケーシング部を締め込んでゆくと、開口封止部の受容嵌合部にノズルボディの先端が密接する。これにより、組立ての過程で、接着剤流路と注入流路とを液密に連通させることができる。
【0010】
この場合、ノズルボディは、ボディ本体と、本体接合部と、ボディ本体と本体接合部との間に介設され後ケーシング本体の貫通部分であるケーシング貫通部とを有し、後ケーシング本体は、ケーシング貫通部と相補的形状を為す貫通孔部を有し、ケーシング貫通部は、ボディ本体の直径を長径とし本体接合部の直径を短径とする断面楕円形に形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ケーシング貫通部が断面楕円形に形成されているため、貫通孔部を介して、後ケーシング部によりノズルボディを前方に向かって掛止め・保持することができる。また、後ケーシング本体に工具を掛けて本体接合部を注入器本体に締結するときに、本体接合部(ノズルボディ)が空回りしてしまうのを有効に防止することができる。
【0012】
本発明の他の注入ノズルは、注入器本体に装着して用いられ、壁体に穿孔した下穴に対しその開口部を封止しながら接着剤を注入する注入ノズルであって、下穴の奥部に臨む第1ノズル口を有すると共に、内部に第1ノズル口に連通する第1注入流路を有する第1ノズル部と、下穴の開口部近傍に臨む第2ノズル口を有すると共に、第1ノズル部との間に第2ノズル口に連通する第2注入流路を有する第2ノズル部と、第2ノズル部が固着されると共に開口部を封止する開口封止部と、第1ノズル部をスライド自在に支持すると共に、内部に第1注入流路および第2注入流路と注入器本体とを連通する接着剤流路を有するノズルボディと、ノズルボディを覆うと共に、相互に分解可能に組付けられる第1ノズル部側の前ケーシング部および注入器本体側の後ケーシング部から成るケーシング部と、を備え、ノズルボディは、樹脂材料で形成されると共に、注入器本体に直接接合される本体接合部を有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ケーシング部を前ケーシング部と後ケーシング部とに分解することで、第1ノズル部、第2ノズル部、開口封止部およびノズルボディを容易に分解することができる。したがって、下準備作業において、接着剤流路に接着剤が残っているノズルボディを使い捨て部品として新品と交換するようにすれば、ノズルボディの洗浄作業を省略することができる。一方、第1ノズル部および第2ノズル部は、第1注入流路および第2注入流路に残っている接着剤を押出し棒で押し出すと共に、表面に付着している接着剤を拭き取れば、接着剤が被膜的に残るものの、その膜厚が厚くなるまでは機能が損なわれることはない。同様に、開口封止部においても、付着している接着剤を拭き取れば、接着剤が被膜的に残るものの、その膜厚が厚くなるまでは機能が損なわれることはない。よって、第1ノズル部、第2ノズル部および開口封止部は、1日の作業を終了した時点で、使い捨て部品として新品と交換するようにすれば、その洗浄作業を省略することができる。
これにより、部品の使い捨てに付随する無用な作業が生ずることがなく、下準備作業に要する時間を極端に短縮することができる。
【0016】
本発明の注入ノズルの使用方法は、上記した注入ノズルの使用方法であって、下穴に接着剤を注入する実注入作業と、接着剤の硬化時間に起因して実施され、接着剤の詰替え作業を含む下準備作業と、が交互に複数回繰り返されて1日の作業が構成される注入作業の作業形態に対し、各下準備作業の作業時に、注入ノズルにおけるノズルボディを使い捨て部品として新品と交換すると共に、ノズル部の外部および内部を清掃し、1日の作業の終了時に、注入ノズルにおけるノズルボディ、ノズル部および開口封止部を使い捨て部品として新品と交換することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、洗浄作業の一切を省略することができ、部品の使い捨てに付随する無用な作業が生ずることがなく、下準備作業に要する時間を極端に短縮することができる。
【0018】
本発明の他の注入ノズルの使用方法は、上記した注入ノズルの使用方法であって、下穴に接着剤を注入する実注入作業と、接着剤の硬化作用に起因して実施され、接着剤の詰替え作業を含む下準備作業と、が交互に複数回繰り返されて1日の作業が構成される注入作業の作業形態に対し、各下準備作業の作業時に、注入ノズルにおけるノズルボディを使い捨て部品として新品と交換すると共に、第1ノズル部の外部および内部を清掃し、1日の作業の終了時に、注入ノズルにおけるノズルボディ、第1ノズル部および第2ノズル部が固着された開口封止部を使い捨て部品として新品と交換することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、洗浄作業の一切を省略することができ、部品の使い捨てに付随する無用な作業が生ずることがなく、下準備作業に要する時間を極端に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】注入ノズルと外壁との関係を表した断面模式図である。
図2】注入ノズルを含む接着剤注入器の側面図である。
図3】第1実施形態に係る注入ノズルの側面図である。
図4】第1実施形態に係る注入ノズルの分解側面図である。
図5】第1実施形態に係る注入ノズルの拡大断面図(a)、正面図(b)および背面図(c)である。
図6】第2実施形態に係る注入ノズルの部分拡大断面図(a)およびそのA-A線断面図(b)である。
図7】第3実施形態に係る注入ノズルの側面図(a)および裁断側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る注入ノズルおよびその使用方法について説明する。ピンニング工法等における注入ノズルは、これが装着される注入器本体と共に、接着剤を下穴に注入するための接着剤注入器を構成する。ピンニング工法は、「浮き」が生じた建物の外壁や内壁等の壁体の要補修箇所に下穴を穿孔し、この下穴に接着剤注入器を用いて接着剤を注入し、その後、下穴にアンカーピンを装填して、これを補修する(剥落防止)ものである。以下、建物の外壁を例に、これを補修する場合について簡単に説明する。
【0024】
図1は、外壁と接着剤注入器との関係を表した断面模式図である。同図に示すように、外壁1は、コンクリート躯体2と、コンクリート躯体2の表面に塗り付けた下地モルタル3と、下地モルタル3の表面に塗り付けた張付けモルタル4と、張付けモルタル4の表面に張り付けたタイル等の仕上げ材5とで構成されている。
【0025】
本実施形態の外壁1では、コンクリート躯体2と下地モルタル3との界面に第1浮き部6aが、下地モルタル3と張付けモルタル4との界面に第2浮き部6bが、さらに張付けモルタル4と仕上げ材5との界面に第3浮き部6cが生じているものとする。外壁1には、これを補修すべく、仕上げ材5、張付けモルタル4および下地モルタル3を貫通し、且つコンクリート躯体2を所定の深さまで穿孔した下穴8が形成されている。そして、外壁1の補修に際し、この下穴8に開口部8aから接着剤注入器10により接着剤Rが注入され、更にアンカーピンが挿入・装着される。
【0026】
ここで、図1および図2を参照して、接着剤注入器10について簡単に説明する。両図に示すように、接着剤注入器10は、接着剤Rを供給するポンプ形式の注入器本体11と、注入器本体11の先端部に着脱自在に装着された注入ノズル12と、で構成されている。
【0027】
注入器本体11は、有底円筒状の接着剤貯留部15と、接着剤貯留部15が着脱自在に取り付けられたポンプ部16と、ポンプ部16に保持された略「L」字状の操作レバー17とを備えている。ポンプ部16の基端側には、内部に接着剤Rが貯留された接着剤貯留部15が取り付けられ、先端側には注入ノズル12が装着されている。接着剤貯留部15を手持ちすると共に、手動で操作レバー17を操作する(ポンピング)ことにより、ポンプ部16を介して注入ノズル12から接着剤Rが一定量ずつ吐出される。この場合の接着剤Rには、主に2液タイプのエポキシ樹脂接着剤を用いられる。
【0028】
ところで、エポキシ樹脂接着剤を用いるピンニング工法では、接着剤Rの硬化時間(2時間程度)を考慮して、定期的に注入器本体11への接着剤Rの詰め替えと、注入器本体11および注入ノズル12の洗浄が行われる(下準備作業)。この下準備作業は煩雑で時間を要することから、詰め替え作業の短縮化や洗浄作業の省略化等が模索されてきた。説明は省略したが、上記の注入器本体11では、接着剤貯留部15に対しカートリッジ式で接着剤Rの詰め替えを可能とし、ポンプ部16の主要部を使い捨て部品として都度交換可能としている。そして、本実施形態の注入ノズル12においても、洗浄作業の省略化を図っている。
【0029】
[第1実施形態]
図3ないし図5を参照して、第1実施形態に係る注入ノズル12について説明する。これらの図に示すように、注入ノズル12は、先端部にノズル口22を有すると共に内部に注入流路23を有するノズル部21と、ノズル部21をスライド自在に支持すると共に、下穴8の開口部8aを封止する開口封止部24と、内部に、ノズル部21のスライドを許容すると共に注入流路23に連通する接着剤流路26を有するノズルボディ25と、ノズルボディ25を覆うと共に、相互に分解可能に組付けられるノズル部21側の前ケーシング部28および注入器本体11側の後ケーシング部29から成るケーシング部27と、を備えている。
【0030】
ノズル部21は、下穴8に接着剤Rを注入する部位であり、ステンレスやスチール等の細径の金属パイプにより、注射針様に形成されている。ノズル部21の基端部には、ロート状に拡開した規制部31が形成され、規制部31の部分にはワッシャー様の抜止めリング32が装着されている。ノズル部21の先端部には、斜めにカットしたノズル口22が形成されている。
【0031】
また、ノズル部21の内部には、ノズルボディ25の接着剤流路26に連通する注入流路23が形成されている。そして、ノズル部21は、軸方向において開口封止部24を貫通し且つ開口封止部24に進退自在(スライド自在)に保持されている。また、ノズル部21の基部側は、スライドを許容された状態で、ノズルボディ25の接着剤流路26に臨んでいる。
【0032】
ノズル部21を最大限引き出しておいて、これを下穴8に挿入する。開口封止部24が下穴8の開口部8aに達しこれを封止すると、ノズル部21の先端が下穴8の最奥部に達する。この状態で接着剤Rの注入が開始される。そして、上記の第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cに順に接着剤Rを充填するようにする。
【0033】
開口封止部24は、接着剤Rの注入に際し下穴8の開口部8aを封止する部位であり、フッ素ゴム等の耐薬品性の弾性材料で形成されている。開口封止部24は、開口部8を封止する封止部本体34と、封止部本体34の基端側に連なりノズルボディ25の先端側が嵌合する受容嵌合部35とを有している。封止部本体34は、開口部8aを直接封止するテーパー形状のテーパー部36と、テーパー部36の基端側に連なるストレート部37とを有し、このストレート部37の基端側に、嵌合凹部35aを有する受容嵌合部35が一体に連なっている。
【0034】
受容嵌合部35は、ストレート部37の基端から環状段部38を存して連なっており、この環状段部38には、ストレート部37および受容嵌合部35を覆う前ケーシング部28が掛け止め(係合)されている。すなわち、環状段部38を介して開口封止部24は、後方に向かって前ケーシング部28に掛け止めされている。また、受容嵌合部35の嵌合凹部35aには、ノズルボディ25の先端側が嵌合している。
【0035】
ノズルボディ25は、円柱状のボディ本体41と、ボディ本体41の基端側に連なる本体接合部42と、ボディ本体41と本体接合部42との間に介設したケーシング貫通部43とを有し、樹脂等の使い捨てを意図する材料で一体に形成されている。ノズルボディ25の軸心には、これを軸方向に貫通するように接着剤流路26が形成されている。接着剤流路26はこれに臨むノズル部21の注入流路23に連通している。また、接着剤流路26は、注入器本体11に接続した本体接合部42を介して、注入器本体11の流路と連通する。言うまでもないが、注入流路23と接着剤流路26とは同軸上に形成されると共に、接着剤流路26は注入流路23よりも太径に形成されている。
【0036】
ケーシング貫通部43は、後ケーシング部29の貫通部分であり、後述する後ケーシング部29の貫通孔部55と相補的形状に形成されている。具体的には、ケーシング貫通部43は、ボディ本体41の直径を長径とし本体接合部42の直径を短径とする断面楕円形に形成されている。この断面楕円形は、後ケーシング部29に対するボディ本体41の抜け止め部或いは掛け止め部として機能すると共に、後ケーシング部29を介して本体接合部42を注入器本体11に螺合するときの回り止めとして機能する。
【0037】
本体接合部42は、注入器本体11に着脱自在に装着される部位であり、後ケーシング部29から突出している。本体接合部42の内周面には接着剤流路26の一部が形成され、外周面には雄ネジ44が形成されている。この雄ネジ44はテーパーネジで構成されている。このため、注入器本体11と接合した状態で本体接合部42から接着剤Rが漏れ出ることがない。また、注入器本体11から注入ノズル12(本体接合部42)を離脱させたときに、本体接合部42への接着剤Rの付着状況は、本体接合部42の端部のみとなる。
【0038】
ケーシング部27は、主としてノズルボディ25の保護カバーを構成するものであり、ステンレスやスチール等で形成されている。ケーシング部27は、ノズル部21側の前ケーシング部28と、注入器本体11側の後ケーシング部29とを有し、相互に分解可能に組み付けられる前後2分割の構造を有している。前ケーシング部28は、前方から受容嵌合部35に係合する前ケーシング本体51と、前ケーシング本体51の基端側に連なる雌ねじ部(第1ねじ部)52とを有している。
【0039】
一方、後ケーシング部29には、本体接合部42を除くノズルボディ25の基端側を受容する後ケーシング本体53と、後ケーシング本体53の先端側に連なると共に上記の雌ねじ部52に螺合する雄ねじ部(第2ねじ部)54と、ノズルボディ25のケーシング貫通部43が貫通する貫通孔部55とを有している。雌ねじ部52に雄ねじ部54を螺合することで、受容嵌合部35は前ケーシング部28を介して後方に引き付けられ、ノズルボディ25は後ケーシング部29を介して前方に押圧される。これにより、ノズルボディ25の先端と開口封止部24の嵌合凹部35aが密接した状態で、注入流路23と接着剤流路26とが連通する。
【0040】
開口封止部24、ノズル部21およびノズルボディ25を内包した状態で、前ケーシング部28と後ケーシング部29とを相互に螺合すると、注入ノズル12が一体に組み立てられる。一方、この状態から、前ケーシング部28と後ケーシング部29との螺合を解くと、前ケーシング部28と後ケーシング部29とが分離されると共に、開口封止部24、ノズル部21およびノズルボディ25が分解可能となる。
【0041】
ここで、図4および図5を参照しながら、注入ノズル12の使用方法について説明する。上述のように、ピンニング工法では、接着剤Rの硬化時間(2時間程度)を考慮して、定期的に注入器本体11への接着剤Rの詰め替えと、注入器本体11および注入ノズル12の洗浄が行われる(下準備作業)。この下準備作業は、接着剤Rの硬化が始まる1時間(夏季は45分)を目安として実施されると共に、1日の作業が終了したときに実施される。
【0042】
上述のように、本実施形態の注入ノズル12の使用方法では、極力洗浄は行わないようにしている。具体的には、定期的に行う下準備作業においては、先ず前ケーシング部28と後ケーシング部29とを分離すると共に、開口封止部24、ノズル部21およびノズルボディ25が分解状態とする。ここで、ノズルボディ25を使い捨て部品として新品と交換すると共に、ノズル部21の外部および内部を清掃する。
【0043】
分解したノズルボディ29には、接着剤流路26に接着剤Rが残っているものの、接着剤Rが付着している部分は、先端側は抜止めリング32と本体接合部42の端部のみとなる。よって、ノズルボディ29は単純に部品交換で済み、拭取り作業等の付随する何らかの作業を要しない。
【0044】
また、分解したノズル部21は、注入流路23に残っている接着剤Rを押出し棒で押し出すと共に、表面に付着している接着剤Rをウエスで拭き取るようにする。同様に、開口封止部24においても付着している接着剤Rを拭き取るようにする。拭き取った部分の接着剤Rが被膜的に残るものの、その膜厚が厚くなるまでは部品の機能が損なわれることはない。同様に、開口封止部24においても、付着している接着剤Rを拭き取れば、接着剤Rが被膜的に残るものの、その膜厚が厚くなるまでは機能が損なわれることはない。
【0045】
一方、1日の作業を終了したときには、開口封止部24、ノズル部21およびノズルボディ25を分解状態とするが、この場合には、ノズルボディ25のみならず、ノズル部21および開口封止部24も、使い捨て部品として新品と交換するようにする。
このようにすれば、下準備作業において、溶剤の処理を含む一切の洗浄作業が不要となり、下準備作業の作業時間を極端に短縮することができる。また、作業者は接着剤Rに触れることがなく、接着剤Rの持つ毒性の影響を回避することができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る注入ノズル12Aについて説明する。同図に示すように、注入ノズル12Aは、下穴8の奥部に臨む第1ノズル口62を有すると共に、内部に第1ノズル口62に連通する第1注入流路63を有する第1ノズル部61と、下穴8の開口部8a近傍に臨む第2ノズル口65を有すると共に、第1ノズル部61との間に第2ノズル口65に連通する第2注入流路66を有する第2ノズル部64と、第2ノズル部64に装着され、開口部8aを封止する開口封止部67と、を備えている。
【0047】
また、注入ノズル12Aは、第1ノズル部61をスライド自在に支持すると共に、内部に第1注入流路63および第2注入流路66と注入器本体11とを連通する接着剤流路26Aを有するノズルボディ25Aと、ノズルボディ25Aを覆うと共に、相互に分解可能に組付けられる第1ノズル部61側の前ケーシング部28Aおよび注入器本体11側の後ケーシング部29Aから成るケーシング部27Aと、を備えている。
【0048】
第1ノズル部61は、上記のノズル部21と同様に、ステンレスやスチール等の細径の金属パイプにより形成されている。この場合も、第1ノズル部61の先端部には、斜めにカットした第1ノズル口62が形成され、内部には第1注入流路63が形成されている。また、第1ノズル部61の基端部には、ロート状に拡開した規制部31が形成されている。そして、第2実施形態の注入ノズル12Aでは、第1ノズル部61が、軸方向においてノズルボディ25Aに進退自在(スライド自在)に保持されている(詳細は後述する)。
【0049】
第2ノズル部64は、第1ノズル部61よりもわずかに太径のステンレスやスチール等の細径の金属パイプにより形成されており、開口封止部24Aを軸方向に貫通した状態でこれに固着されている。第2ノズル部64の先端側は開口封止部24Aがわずかに突出し、その先端にはリング状となる第2ノズル口65が形成されている。そして、第2ノズル部64を同軸上において貫通する第1ノズル部61との間に、円筒状を為す第2ノズル部64の第2注入流路66が構成されている。
【0050】

上述のように、第1注入流路63および第2注入流路66は、ノズルボディ25Aの接着剤流路26Aと連通している。注入器本体11から接着剤流路26Aに流入した接着剤は、第1注入流路63を介して下穴8の奥部から注入され、且つ第2注入流路66を介して下穴8の手前(開口部8a近傍)から注入される。これにより、上記の第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cに接着剤Rが充填される。
【0051】
開口封止部24Aは、第1実施形態の開口封止部24と同様の形態を有し、且つ第1実施形態と同様に、フッ素ゴム等の耐薬品性の弾性材料で形成されている。すなわち、開口封止部24Aは、テーパー部36およびストレート部37から成る封止部本体34と、ノズルボディ25Aの先端側が嵌合する受容嵌合部35とを有している。そして、環状段部38には、ストレート部37および受容嵌合部35を覆う前ケーシング部28Aが掛け止めされている。
【0052】
ノズルボディ25Aは、第1実施形態のノズルボディ25と同様に、ボディ本体41と、本体接合部42と、ケーシング貫通部43とを有し、樹脂等の使い捨てを意図する材料で一体に形成されている。この場合も、ケーシング貫通部43は、ボディ本体41の直径を長径とし本体接合部42の直径を短径とする断面楕円形に形成されている。また、本体接合部42の外周面には雄ネジ44が形成されている。そして、ノズルボディ25Aの軸心には、これを軸方向に貫通するように接着剤流路26Aが形成されている。
【0053】
この場合の接着剤流路26Aは、ボディ本体41の部分に形成した前側流路部26aが断面三角形(正三角形)に形成され、本体接合部42およびケーシング貫通部43の部分に形成した後側流路部26bが断面円形に形成されている(図6(b)参照)。そして、断面三角形の前側流路部26aに、第1ノズル部61(の基端部側)がスライド自在に支持されている。
【0054】
ケーシング部27Aは、第1実施形態のケーシング部27と同様に、相互に分解可能に組み付けられる前ケーシング部28Aと後ケーシング部29Aとから成り、ステンレスやスチール等で形成されている。この場合も、前ケーシング部28Aは、前ケーシング本体51と雌ねじ部52とを有し、後ケーシング部29Aは、後ケーシング本体53と雄ねじ部54と貫通孔部55とを有している。
【0055】
次に、第2実施形態に係る注入ノズル12Aの使用方法について説明する。この場合も、下準備作業においては、先ず前ケーシング部28Aと後ケーシング部29Aとを分離すると共に、一体化した第2ノズル部64および開口封止部24A、第1ノズル部61、ノズルボディ25Aを分解状態とする。そして、ノズルボディ25Aを使い捨て部品として新品と交換すると共に、第1ノズル部61および第2ノズル部64の外部および内部を清掃する。
【0056】
ノズルボディ25Aには、接着剤流路26Aに接着剤Rが残っているものの、接着剤Rが付着している部分は、ほぼ本体接合部42の端部のみとなる。よって、ノズルボディ25Aは単純に部品交換で済み、拭取り作業等の付随する何らかの作業を要しない。また、第1ノズル部61および第2ノズル部64は、第1注入流路63および第2注入流路66に残っている接着剤Rをそれぞれ押出し棒で押し出すと共に、表面に付着している接着剤Rをウエスで拭き取る。開口封止部24Aに付着している接着剤Rは、第2注入流路66と併せて拭き取るようにする。
【0057】
一方、1日の作業を終了したときには、ノズルボディ25Aのみならず、一体化した第2ノズル部64および開口封止部24A、第1ノズル部61も、使い捨て部品として新品と交換するようにする。
このようにすれば、下準備作業において、溶剤の処理を含む一切の洗浄作業が不要となり、下準備作業の作業時間を極端に短縮することができる。また、作業者は接着剤Rに触れることがなく、接着剤Rの持つ毒性の影響を回避することができる。
【0058】
[第3実施形態]
次に、図7を参照して、第3実施形態に係る注入ノズル12Bについて説明する。同図に示すように、注入ノズル12Bは、先端側のノズル部72と、ノズル部72に連なるノズル本体73と、ノズル本体73に連なると共に注入器本体11に接合される本体接合部74とを有し、内部に軸方向に貫通する接着剤R用の供給流路75を形成した原型ノズル71と、原型ノズル71の供給流路75に着脱自在に装着された使い捨てユニット76と、を備えている。
【0059】
原型ノズル71は、スチール製一体型のものであり、これ自体はいわゆる市販の従来工法用のノズルである。原型ノズル71に形成された供給流路75は、ノズル部72側の前半部が細径に形成され、本体接合部74側の後半部が注入器本体11の流路に倣って太径に形成されている。そして、この供給流路75の前半部と後半部との境界部分は段部75aとなっている。
【0060】
使い捨てユニット76は、先端部をノズル部72の先端から突出させ且つ基端部を本体接合部74の基端から突出させる共に、内部に供給流路75に代わる代供給流路77が形成されている。使い捨てユニット76の外形は、これら突出部分を除いて、供給流路75と相補的形状に形成されている(図7(b)参照)。
【0061】
すなわち、使い捨てユニット76は、前半部がノズル部72の先端から突出した部分を除いて供給流路75の前半部と相補的形状に形成され、後半部が本体接合部74の基端から突出した部分を除いて供給流路75の後半部と相補的形状に形成されている。そして、代供給流路77は、前半部と後半部とが同径のストレート形状に形成されている。
【0062】
本体接合部74から突出した使い捨てユニット76の基端部には、注入器本体11の流路に臨むフランジ部78が形成されている。この場合、フランジ部78と原型ノズル71(本体接合部74)の基端との間にはガスケット79が介設され、この状態で、注入ノズル12Bが注入器本体11にネジ接合される。なお、使い捨てユニット76の原型ノズル71への装着は、原型ノズル71の後方から使い捨てユニット76を差し込んでゆき、供給流路75の段部75aに使い捨てユニット76の後半部が突き当たることで完了する。また、使い捨てユニット76の原型ノズル71から離脱は、フランジ部78を把持して原型ノズル71から使い捨てユニット76を引き抜くことで完了する。
【0063】
この場合の注入ノズル12Bの使用方法は、下準備作業時や1日の作業を終了した時に、代供給流路77に接着剤Rが残っている使い捨てユニット76を新品と交換するようにする。その際、原型ノズル71の先端部表面や使い捨てユニット76の先端部表面に付着している接着剤Rは、使い捨てユニット76を引き抜く際にウエスで拭き取るようにする。このようにすれば、洗浄作業の一切を省略することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…外壁、8…下穴、8a…開口部、10…接着剤注入器、11…注入器本体、12,12A,12B…注入ノズル、21…ノズル部、22…ノズル口、23…注入流路、24,24A…開口封止部、25,25A…ノズルボディ、26,26A…接着剤流路、27,27A…ケーシング部、28,28A…前ケーシング部、29,29A…後ケーシング部、34…封止部本体、35…受容嵌合部、38…環状段部、41…ボディ本体、42…本体接合部、43…ケーシング貫通部、51…前ケーシング本体、52…雌ネジ部、53…後ケーシング本体、54…雄ネジ部、55…貫通孔部、61…第1ノズル部、62…第1ノズル口、63…第1注入流路、64…第2ノズル部、65…第2ノズル口、66…第2注入流路、71…原型ノズル、72…ノズル部、73…ノズル本体、74…本体接合部、75…供給流路、76…使い捨てユニット、77…代供給流路、R…接着剤。
【要約】
【課題】部品の使い捨てに付随する無用な作業を廃し、洗浄・詰替えの下準備作業に要する時間を短縮することができる注入ノズル等を提供する。
【解決手段】内部にノズル口22に連通する注入流路23を有するノズル部21と、ノズル部21をスライド自在に支持すると共に、下穴8の開口部8aを封止する開口封止部24と、内部に、注入流路23に連通する接着剤流路26を有するノズルボディ25と、ノズルボディ25を覆うと共に、相互に分解可能に組付けられる前ケーシング部28および後ケーシング部29から成るケーシング部27と、を備え、ノズルボディ25は、使い捨てを意図する材料で形成されると共に、注入器本体11に直接接合される本体接合部42を有している。
【選択図】図5



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7