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特許7425285剛性特性計測方法および剛性特性計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】剛性特性計測方法および剛性特性計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/307 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
G01N3/307
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019191702
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021067515
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】515185924
【氏名又は名称】株式会社プロギア
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三枝 宏
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-030505(JP,A)
【文献】特開2004-033626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/307
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測面を上方に向けて被衝突体を保持し、衝突体を前記被計測面に向けて鉛直方向に落下させ、前記衝突体に取り付けられた加速度センサの検出値に基づいて前記被衝突体の剛性特性を算出する剛性特性計測方法であって、
前記被衝突体はゴルフクラブヘッドであり、
前記剛性特性は、前記ゴルフクラブヘッドのCT値であり、
前記衝突体が前記被計測面に衝突した後、前記衝突体を前記被計測面より上方に保持し、前記衝突体が前記被計測面に再度衝突するのを防止するばねを設け、
前記被計測面上の計測箇所を自動的に変更する毎に、前記計測箇所への前記衝突体への衝突速度が略一定となるように前記衝突体の落下距離を自動的に調整する落下距離変更工程を含み、
前記落下距離変更工程では、前記加速度センサで得られる加速度信号を積分して前記衝突速度を算出し、前記衝突速度が所定範囲となるように前記衝突体の落下距離を調整し、
更に前記落下距離変更工程による前記衝突体の落下距離の自動的な調整は、前記衝突体の落下開始位置と前記被衝突体の前記被計測面との上下方向に沿った距離を調整可能とした落下距離調整機構を用いて、前記衝突体の落下時の荷重が前記ばねに対して加わった荷重負荷時に前記衝突体と前記被計測面が接触し、かつ前記衝突体の落下時の荷重が前記ばねに加わらない無荷重時に前記衝突体と前記被計測面が接触しない範囲となるようになされ、
水平面内の直交する2軸に沿って所定距離ずつ前記衝突体と前記被衝突体との相対位置を自動的に変更することにより前記被計測面上の前記計測箇所を自動的に変更する計測箇所調整工程と、
前記計測箇所に前記衝突体を落下させ、前記落下時の前記加速度センサの検出値に基づいて各計測箇所における前記剛性特性を算出する剛性特性算出工程と、を更に含む、
ことを特徴とする剛性特性計測方法。
【請求項2】
前記衝突体の落下方向と前記計測箇所の法線方向とが略一致するように前記被衝突体の保持角度を調整する衝突角度調整工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項1記載の剛性特性計測方法。
【請求項3】
各計測箇所に対応して算出された前記剛性特性に基づいて、前記水平面内に設定された計測範囲における前記剛性特性の分布を作成する特性分布作成工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項記載の剛性特性計測方法。
【請求項4】
前記特性分布作成工程で作成された前記計測範囲における前記剛性特性の分布に基づいて、前記剛性特性の特徴点を抽出する特徴点抽出工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項記載の剛性特性計測方法。
【請求項5】
被衝突体の剛性特性を計測する剛性特性計測装置であって、
前記被衝突体はゴルフクラブヘッドであり、
前記剛性特性は、前記ゴルフクラブヘッドのCT値であり、
被計測面を上方に向けて前記被衝突体を保持する保持機構と、
衝突体を前記被衝突体に向けて鉛直方向に落下させる落下機構と、
前記衝突体に取り付けられた加速度センサと、
前記加速度センサの検出値に基づいて前記被衝突体の剛性特性を算出する特性算出部と、
前記被計測面上の計測箇所を自動的に変更する毎に、前記計測箇所への前記衝突体への衝突速度が略一定となるように前記衝突体の落下距離を自動的に調整する落下距離変更部と、
前記衝突体が前記被計測面に衝突した後、前記衝突体を前記被計測面より上方に保持し、前記衝突体が前記被計測面に再度衝突するのを防止するばねとを備え、
前記落下距離変更部は、前記加速度センサで得られる加速度信号を積分して前記衝突速度を算出し、前記衝突速度が所定範囲となるように前記衝突体の落下距離を調整し、
更に前記落下距離変更部による前記衝突体の落下距離の自動的な調整は、前記衝突体の落下開始位置と前記被衝突体の前記被計測面との上下方向に沿った距離を調整可能とした落下距離調整機構を用いて、前記衝突体の落下時の荷重が前記ばねに対して加わった荷重負荷時に前記衝突体と前記被計測面が接触し、かつ前記衝突体の落下時の荷重が前記ばねに加わらない無荷重時に前記衝突体と前記被計測面が接触しない範囲となるようになされ
水平面内の直交する2軸に沿って所定距離ずつ前記衝突体と前記被衝突体との相対位置を自動的に変更することにより前記被計測面上の前記計測箇所を自動的に変更する計測箇所調整部と、
前記計測箇所に前記衝突体を落下させ、前記落下時の前記加速度センサの検出値に基づいて各計測箇所における前記剛性特性を算出する剛性特性算出部と、を更に含む、
ことを特徴とする剛性特性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被衝突体の剛性特性を計測する剛性特性計測方法および剛性特性計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフクラブヘッド等の打撃具に関して、その反発性能に影響を与える指標として、CT値や反発係数などの剛性特性を計測する技術が知られている。
特に競技用のゴルフクラブにおいては、USGA(全米ゴルフ協会)が定めたペンデュラム試験によって計測されるCT値が剛性特性の評価基準値として用いられている。ペンデュラム試験の手順等は、下記非特許文献1に詳細に記載されている。
下記特許文献1は、上記ペンデュラム試験を実施するための装置であり、ヘッドとシャフトが一体となった状態のゴルフクラブを固定して、金属性の球体を振り子によりフェース面に衝突させる。球体には加速度センサが取り付けられており、その検出値から剛性特性を示すパラメータを算出する。
【0003】
また、下記特許文献2は、ゴルフクラブヘッド(被衝突体)の剛性特性を計測する剛性特性計測装置であって、フェース面を上方に向けてゴルフクラブヘッドを保持するヘッド固定用治具と、衝突ロッド(衝突体)をゴルフクラブヘッドに向けて鉛直方向に落下させるリニアブッシュと、加速度センサが取り付けられた衝突ロッドと、加速度センサの検出値に基づいてゴルフクラブヘッドの剛性特性、例えばCT値を算出するコンピュータとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6837094号明細書
【文献】国際公開第2019/030973号
【非特許文献】
【0005】
【文献】「Technical Description of the Pendulum Test(Revised Version)」,The Royal and Ancient Golf Club of St Andrews and United States Golf Association,2003年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、ヘッドとシャフトが一体となったクラブ形状での試験を前提としており、シャフト部を保持して試験を実施する必要がある。このため、ヘッドの製造工程において品質管理のために計測を行う場合などは、シャフトを取り付ける工程が必要になり、煩雑であるという課題がある。
また、シャフトは円柱形状であるため、周方向に回転し易く、試験中に衝突体との衝突角度を一定に保つように設定するのが難しい。また、シャフトの材質やクランプ位置、クランプ強さなどから来るシャフトの固有振動の影響を受け、剛性特性が変化する可能性がある。
さらに、特許文献1のように振り子を使った衝突方法では、ヘッド形状(FP値の違いなど)の特性上、最下点で安定して打撃することは難しく、このずれにより打点位置や衝突角が変動する可能性があり、調整も難しい。
また、上記特許文献2は、簡易かつ一定の精度でゴルフクラブヘッドの剛性特性を計測することができるものの、フェース面のバルジやロールの影響で計測箇所ごとに衝突距離が変化する可能性があり、剛性特性の計測精度が低下する可能性があるという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、被衝突体の剛性特性を簡易かつより高精度に計測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる剛性特性計測方法は、被計測面を上方に向けて被衝突体を保持し、衝突体を前記被計測面に向けて鉛直方向に落下させ、前記衝突体に取り付けられた加速度センサの検出値に基づいて前記被衝突体の剛性特性を算出する剛性特性計測方法であって、前記被計測面上の計測箇所を変更する毎に、前記計測箇所への前記衝突体への衝突速度が略一定となるように前記衝突体の落下距離を調整する落下距離変更工程を含む、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかる剛性特性計測方法は、前記落下距離変更工程では、前記加速度センサで得られる加速度信号を積分して前記衝突速度を算出し、前記衝突速度が所定範囲となるように前記衝突体の落下距離を調整する、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかる剛性特性計測方法は、前記落下距離変更工程では、落下前の前記衝突体と前記計測箇所との離間距離を測定し、前記離間距離が一定となるように前記衝突体の落下距離を調整する、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかる剛性特性計測方法は、前記衝突体の落下方向と前記計測箇所の法線方向とが略一致するように前記被衝突体の保持角度を調整する衝突角度調整工程を更に含む、ことを特徴とする。
請求項5の発明にかかる剛性特性計測方法は、前記衝突体と前記被衝突体との相対位置を変更することにより前記被計測面上の前記計測箇所を変更する計測箇所調整工程と、前記計測箇所に前記衝突体を落下させ、前記落下時の前記加速度センサの検出値に基づいて各計測箇所における前記剛性特性を算出する剛性特性算出工程と、を更に含み、前記計測箇所調整工程では、水平面内の直交する2軸に沿って所定距離ずつ前記衝突体と前記被衝突体との相対位置を変更する、ことを特徴とする。
請求項6の発明にかかる剛性特性計測方法は、各計測箇所に対応して算出された前記剛性特性に基づいて、前記水平面内に設定された計測範囲における前記剛性特性の分布を作成する特性分布作成工程を更に含む、ことを特徴とする。
請求項7の発明にかかる剛性特性計測方法は、前記特性分布作成工程で作成された前記計測範囲における前記剛性特性の分布に基づいて、前記剛性特性の特徴点を抽出する特徴点抽出工程を更に含む、ことを特徴とする。
請求項8の発明にかかる剛性特性計測方法は、前記被衝突体はゴルフクラブヘッドであり、前記剛性特性は、前記ゴルフクラブヘッドのCT値である、ことを特徴とする。
請求項9の発明にかかる剛性特性計測装置は、被衝突体の剛性特性を計測する剛性特性計測装置であって、被計測面を上方に向けて前記被衝突体を保持する保持機構と、衝突体を前記被衝突体に向けて鉛直方向に落下させる落下機構と、前記衝突体に取り付けられた加速度センサと、前記加速度センサの検出値に基づいて前記被衝突体の剛性特性を算出する特性算出部と、前記被計測面上の計測箇所を変更する毎に、前記計測箇所への前記衝突体への衝突速度が略一定となるように前記衝突体の落下距離を調整する落下距離変更部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1および請求項9の発明によれば、被計測面上の計測箇所を変更する毎に計測箇所への衝突体への衝突速度が略一定となるように衝突体の落下距離を調整するので、被計測面が曲率を有する場合でも各計測箇所での衝突速度を略一定とすることができ、剛性特性が速度依存性を有する場合などに計測精度を向上させる上で有利となる。また、請求項1の発明によれば、衝突体を被衝突体に向けて鉛直方向に落下させるので、衝突体の衝突位置や衝突角度を一定に保つことが容易となり、剛性特性の計測精度を向上させる上で有利となる。
請求項2の発明によれば、剛性特性の計測に用いる加速度センサを用いて衝突速度を算出して落下距離を調整するので、落下距離変更工程の実施にかかるコストを低減する上で有利となる。
請求項3の発明によれば、衝突体と計測箇所との離間距離を測定して落下距離を調整するので、迅速に落下距離を調整し、効率的に計測を行う上で有利となる。
請求項4の発明によれば、衝突体の落下方向と計測箇所の法線方向とが略一致するように被衝突体の保持角度を調整するので、剛性特性の計測精度をより向上させる上で有利となる。
請求項5の発明によれば、水平面内の直交する2軸に沿って衝突体と被衝突体との相対位置を変更させながら剛性特性の計測を行うので、被衝突体の剛性特性を連続的に計測する上で有利となる。
請求項6の発明によれば、複数の計測箇所に対応して算出された剛性特性に基づいて、水平面内に設定された計測範囲における剛性特性の分布を作成するので、被衝突体全体の剛性特性を把握する上で有利となる。
請求項7の発明によれば、剛性特性の分布に基づいて剛性特性の特徴点を抽出するので、被衝突体の剛性特性の評価を行う上で有利となる。
請求項8の発明によれば、ゴルフクラブヘッドの評価指標として重要なCT値を容易かつ高精度に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる剛性特性計測装置10の構成を示す説明図である。
図2】ゴルフクラブヘッド30の構成を示す図である。
図3】ヘッド固定用治具12にゴルフクラブヘッド30をセットした状態を示す図である。
図4】衝突ロッド24の構成を示す図である。
図5】衝突ロッド24の衝突時の挙動を示す説明図である。
図6】コンピュータ50の構成を示すブロック図である。
図7】剛性特性計測装置10による計測手順を示すフローチャートである。
図8】衝突ロッド24の速度Vの時系列データを示すグラフである。
図9】衝突速度を変更して複数回計測したCT値の一例を示すグラフである。
図10図9を変換したグラフである。
図11】落下距離変更工程の有無によるCT値の違いを示す説明図である。
図12】ゴルフクラブヘッド30上の計測箇所を模式的に示す説明図である。
図13】カム2702とレバー2140の動きを模式的に示す説明図である。
図14】コンピュータ50の機能的構成を示すブロック図である。
図15】衝突角度調整機構80の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる剛性特性計測装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
剛性特性計測装置は、被衝突体の剛性特性を計測するための装置である。本実施の形態では、被衝突体はゴルフクラブヘッド30であり、剛性特性としてゴルフクラブヘッド30のCT値を計測するものとする。
【0011】
まず、被衝突体であるゴルフクラブヘッド30について説明する。
図2に示すように、ゴルフクラブヘッド30は、フェース面32、クラウン部33、ソール部34と、サイド部35とを備えて中空構造を呈している。
フェース面32はゴルフボールを打撃するフェース面を形成する。
クラウン部33はフェース面32に接続される。
ソール部34はフェース面32およびクラウン部33に接続される。
サイド部35はクラウン部33およびソール部34に接続されフェース面32に対向する。
ゴルフクラブヘッド30は、例えば金属製であり、チタン合金やアルミニウム合金などの高強度の低比重金属が好ましく用いられる。
また、クラウン部33には、フェース面32側でかつヒール36寄りの位置にシャフト39に接続するホーゼル38が設けられている。
また、フェース面32を正面から見てゴルフクラブヘッド30のヒール36と反対側がトウ37である。
なお、一般にフェース面32は平坦面ではなく、曲面(曲率を有する面)となっている。より詳細には、フェース面32の上下方向(縦方向、矢印R)の曲がりをロール、水平方向(横方向、矢印B)の曲がりをバルジと呼ぶ。
また、本実施の形態は、図2に示すような中空構造を有するウッド系ゴルフクラブヘッドを用いて説明するが、これに限らず、例えば中空、中実構造を有するアイアン系ゴルフクラブヘッド、さらにはユーティリティー系のゴルフクラブヘッドに対しても本発明は適用可能である。
【0012】
図1は、実施の形態にかかる剛性特性計測装置10の構成を示す説明図である。
剛性特性計測装置10は、フェース面32(被計測面)を上方に向けてゴルフクラブヘッド30(被衝突体)を保持し、衝突ロッド24(衝突体)をフェース面32に向けて鉛直方向に落下させ、衝突ロッド24に取り付けられた加速度センサ26の検出値に基づいてゴルフクラブヘッド30の剛性特性を算出する。
【0013】
より詳細には、剛性特性計測装置10は、ヘッド固定用治具12、XYステージ14、支柱18、アーム20、リニアブッシュ22、衝突ロッド24、加速度センサ26およびコンピュータ50(図6参照)を備える。
ヘッド固定用治具12は、被計測面を上面に向けて被衝突体を保持する保持機構として機能する。本実施の形態では、ヘッド固定用治具12は直方体状を呈し、上方に配置された衝突ロッド24と面する上面1202、XYステージ14と接する下面(図示なし)、紙面左右方向(X方向)に面する側面1204、紙面奥行方向(Y方向)に面する側面1206を有する。
上面1202には、ゴルフクラブヘッド30が嵌合する嵌合孔1208が形成されている。嵌合孔1208は、ゴルフクラブヘッド30のサイド部35側と同型に形成されており、図3に示すように、フェース面32(被計測面)を上方に向けてゴルフクラブヘッド30を嵌め込み可能となっている。嵌合孔1208に嵌め込まれた状態のゴルフクラブヘッド30は、フェース面32を上面に向けてヘッド固定用治具12により保持される。このとき、フェース面32は略水平となるように(フェース中心の法線が鉛直方向となるように)嵌合孔1208の形状が形成されている。
また、嵌合孔1208に嵌め込まれた状態のゴルフクラブヘッド30は、サイド部35はヘッド固定用治具12(嵌合孔1208)に接するがクラウン部33およびソール部34はヘッド固定用治具12に接していない。これは、直接フェース面32と接するクラウン部33およびソール部34にヘッド固定用治具12が接することで、フェース面32にたわみが生じるのを防止するためである。
なお、異なる型番(形状)のゴルフクラブヘッド30を計測する際は、当該ゴルフクラブヘッド30の形状に合わせて形成されたヘッド固定用治具12と交換する。
ヘッド固定用治具12は、例えばシリコン等の制振素材で形成されている。これは、後述する衝突ロッド24がフェース面32に衝突した際に生じるゴルフクラブヘッド30の振動を減衰させ、加速度センサ26の計測ノイズを軽減するためである。すなわち、保持機構であるヘッド固定用治具12は、被衝突体であるゴルフクラブヘッド30の振動を減衰する制振素材を含んで形成されている。
【0014】
XYステージ14は、X軸方向テーブル1402、X軸方向ステージ1404、Y軸方向テーブル1406、Y軸方向ステージ1408を備える。
Y軸方向テーブル1406には、ヘッド固定用治具12が載置される。また、X軸方向テーブル1402には、Y軸方向ステージ1408が載置される。
X軸方向ステージ1404にはアクチュエータ等の移動機構が内蔵されており、X軸方向テーブル1402をX軸方向ステージ1404上で移動させることが可能である。
同様に、Y軸方向ステージ1408にもアクチュエータ等の移動機構が内蔵されており、Y軸方向テーブル1406をY軸方向ステージ1404上で移動させることが可能である。
本実施の形態では、XYステージ14にコンピュータ50(図6参照)が接続されており、上記移動機構が自動制御されることにより、ヘッド固定用治具12が所定のタイミングで自動的に移動する。
なお、XYステージ14の機構は、上記に限らず従来公知の様々な機構を採用可能である。
【0015】
本実施の形態では、XYステージ14によりヘッド固定用治具12(保持機構)を水平方向(XY方向)に移動可能とし、ゴルフクラブヘッド30(被衝突体)のフェース面32(被計測面)上における衝突ロッド24(衝突体)の落下位置を調整可能としている。
なお、後述するリニアブッシュ22(落下機構)を水平方向(XY方向)に移動可能とすることにより、ゴルフクラブヘッド30(被衝突体)のフェース面32(被計測面)上における衝突ロッド24(衝突体)の落下位置を調整可能としてもよい。
【0016】
台座16は、底板部1602およびレール1604を備える。
底板部1602は、作業台など安定した水平面に配置される。
レール1604は、底板部1602上にY軸方向に沿って配置され、その上にXYステージ14のX軸方向ステージ1404が配置される。X軸方向ステージ1404は、レール1604上を紙面奥行方向(Y軸方向)に移動可能である。
レール1604の紙面奥側(Zステージ18側)の終端部には、図示しない磁石(位置固定機構)が取り付けられている。本実施の形態では、XYステージ14のX軸方向ステージ1404がステンレス等の金属で形成されており、X軸方向ステージ1404がレール1604の紙面奥側の終端部(計測位置)まで移動すると、X軸方向ステージ1404が磁石に吸着されることによりXYステージ14の位置が固定される。
このようなレール1604を用いた台座16を採用することによって、ゴルフクラブヘッド30をヘッド固定用治具12にセットする際に、後述するリニアブッシュ22と上下方向に干渉しない位置にヘッド固定用治具12を移動させることができる。
なお、このようなレール1604を用いたヘッドセッティング機構を用いる代わりに、XYステージ14のY軸方向のストローク(Y軸方向ステージ1408のストローク)を大きくとるようにしてもよい。特に今回のような自動制御型のXYステージ14の場合は、ゴルフクラブヘッド30をヘッド固定用治具12にセットする際のヘッド供給位置、およびその後の計測位置を予めプログラム上に設定しておけば、コンピュータ50の操作により容易にそれぞれの位置を瞬時に正確に再現することができる。
【0017】
Zステージ18は、アーム20を高さ方向(Z軸方向)に移動させるものであり、支柱1802と図示しない移動機構を備えている。
支柱1802は、底板部1602の端部から上方に向かって垂直方向(Z軸方向)に立設されている。
移動機構は、アクチュエータ等を備え、支柱1802に設けられた溝1804に沿ってアームを高さ方向に移動させる。
本実施の形態では、Zステージ18にコンピュータ50(図6参照)が接続されており、上記移動機構が自動制御されることにより、アーム20が所定のタイミングで自動的に移動する。
なお、Zステージ18の機構は、上記に限らず従来公知の様々な機構を採用可能である。
【0018】
アーム20は、支柱1802から装置前面(XYステージ14等が配置されている側)に向かって水平方向(Y軸方向)に延在している。
Zステージ18によりアーム20が上下方向に移動可能であることによって、アーム20に接続されたリニアブッシュ22も上下方向に移動可能となり、後述する衝突ロッド24(衝突体)の落下開始位置とゴルフクラブヘッド30(被衝突体)のフェース面32(被衝突面)との上下方向(鉛直方向)に沿った距離を調整可能である。すなわち、Zステージ18は、落下距離調整機構として機能する。
【0019】
このように衝突ロッド24の落下開始位置とフェース面32との上下方向に沿った距離を調整可能とするのは、この距離によって衝突ロッド24のフェース面32への衝突速度が変化するためである。本実施の形態で計測するCT値には速度依存性があることが知られている。このため、衝突ロッド24のフェース面32への衝突速度を予め決定し、その衝突速度で計測を行う必要がある。落下距離調整機構を設けることにより、衝突ロッド24のフェース面32への衝突速度を任意に調整することが可能となる。
【0020】
リニアブッシュ22は、アーム20のアーム本体2002の先端に取り付けられ、後述する衝突ロッド24(衝突体)をゴルフクラブヘッド30(被衝突体)に向けて鉛直方向(柱状の衝突ロッド24の長手方向)に落下させる落下機構として機能する。
リニアブッシュ22は、本体部2202および挿通孔2204を備える。挿通孔2204は、本体部2202の上面2206から下面2208(図5参照)を貫通している。本体部2202内の挿通孔2204の内周面にはベアリング機構を構成する鋼球が配置されており、挿通孔2204に挿入された衝突ロッド24を鉛直方向下方に案内する。
リニアブッシュ22を用いることにより、衝突ロッド24の落下方向が規制され、ゴルフクラブヘッド30に対する落下位置を高精度に調整することができる。
なお、リニアブッシュ22として、単純な筒状の摺動体を利用したタイプを用いてもよい。
【0021】
衝突ロッド24(衝突体)は、図4にも示すように、ロッド本体2404、上方ストッパ2406、下方ストッパ2408、レバー2410を備える。
ロッド本体2404は、円柱状の棒状部材であり、ステンレス等の金属によって形成されている。なお、ロッド本体2404は、円柱以外の柱形状(例えば角柱状など)であってもよい。ロッド本体2404の一方の底面2412(使用状態においてゴルフクラブヘッド30(被衝突体)に衝突する側の底面)は、球面形状に形成されている。ロッド本体2404の直径は、リニアブッシュ22の挿通孔2204から落下可能な寸法で形成されている。
【0022】
上方ストッパ2406は、ロッド本体2404の上端部(底面2412と反対側の端部)に取り付けられている。上方ストッパ2406は、リニアブッシュ22の挿通孔2204の内径よりも大きな外径を有しているため、上方ストッパ2406はリニアブッシュ22の挿通孔2204内には移動できない。よって、衝突ロッド24の落下時には上方ストッパ2406がリニアブッシュ22の上面2206に当接した位置より下方には衝突ロッド24は移動できない。すなわち、上方ストッパ2406は、リニアブッシュ22の挿通孔2204内に位置する衝突ロッド24の最下点位置を規制する。
なお、実際の使用時には、図1および図5に示すように上方ストッパ2406とリニアブッシュ22の上面2206との間にばね28を挟むため、上方ストッパ2406と上面2206とが直接接することはない。ばね28は、例えば圧縮コイルばねであり、その内径側に衝突ロッド24のロッド本体2404が挿通される。
詳細は後述するが、ばね28は、衝突ロッド24(衝突体)がフェース面32(被計測面)に衝突した後、衝突ロッド24をフェース面32より上方に保持し、衝突ロッド24がフェース面32に再度衝突するのを防止する再衝突防止機構として機能する。
【0023】
下方ストッパ2408は、ロッド本体2404の底面2412寄りに取り付けられている。
下方ストッパ2408は、可撓性部材で形成され、例えばゴムによって形成されている。
下方ストッパ2408もリニアブッシュ22の挿通孔2204の内径よりも大きな外径を有しているため、下方ストッパ2408はリニアブッシュ22の挿通孔2204内には移動できない。よって、衝突ロッド24を上方に移動させた際には、下方ストッパ2408がリニアブッシュ22の下面2208に接した位置より上方には衝突ロッド24は移動できない。すなわち、下方ストッパ2408は、挿通孔2204内に位置する衝突ロッド24の最上点位置を規制する。
なお、本実施の形態では後述するカム機構27で衝突ロッド24を上方に移動させるが、その際の移動量は、図5Aに示すように下方ストッパ2408がリニアブッシュ22の下面2208に接しない範囲(衝突ロッド24が最上点位置に至らない範囲)に設定している。
また、下方ストッパ2408はロッド本体2404から着脱可能である。衝突ロッド24をリニアブッシュ22から取り外す際は、下方ストッパ2408をロッド本体2404から外した上でロッド本体2404を上方に向かって移動させ、挿通孔2204から引き抜く。そして、衝突ロッド24をリニアブッシュ22に取り付ける際は、下方ストッパ2408を外した状態のロッド本体2404を挿通孔2204内に挿入し、ばね28で規制される位置まで下方に移動させる。その後、ロッド本体2404に下方ストッパ2408を取り付ける。
【0024】
すなわち、上述したようにリニアブッシュ22(落下機構)は衝突ロッド24(衝突体)を鉛直方向に移動可能に保持するが、上方ストッパ2406および下方ストッパ2408は、リニアブッシュ22に挿通(保持)された状態における衝突ロッド24の最上点位置および最下点位置を規制するストッパ機構として機能する。
【0025】
レバー2410は、上方ストッパ2406に取り付けられた棒状の部材であり、カム機構27により衝突ロッド24の位置を上方に移動させる際に用いられる。
カム機構27は、カム2702、モータ2704、シャフト2706を備える。リニアブッシュ22の側面(レバー2410が延びる側)には、水平方向(X軸方向)に延びるステイ2708が取り付けられており、ステイ2708上にモータ2704が載置される。モータ2704の駆動によりシャフト2706が回転し、シャフト2706を中心にカム2702がYZ平面内を回転する。シャフト2706の回転によりカム2702が上方に位置すると、レバー2410を押し上げ、衝突ロッド24全体が上方に移動する。
【0026】
カム2702とレバー2140の動きについて、より詳細に図13に示す。図13では、視認性の観点から、カム2702およびレバー2140以外の構成については図示を省略している。
本実施の形態では、カム2702は略半円形状であり、その側面は円弧部Arと直線部Stを有する。カム2702は、シャフト2706を中心として円弧部Ar側がレバー2140に接するように、反時計回りに回転する。シャフト2706は、レバー2140の直下に位置する。
【0027】
図13Aに示すように、カム2702とレバー2140とが離れた状態では、衝突ロッド24は通常位置(衝突ロッド24の自重分縮んだばね28の上に上方ストッパ2406が位置する状態)にある。
図13Bに示すように、カム2702の円弧部Arとレバー2140とが接すると、衝突ロッド24は通常位置(図13Bに点線で示す)から上方に押し上げられていく。
図13Cに示すように、カム2702の円弧部Arの端部がレバー2140から離れると、衝突ロッド24は上方に押し上げられた状態(図13Cに点線で示す)から下方に自由落下する。
このような機構により、衝突ロッド24の上下運動を自動的に実行することができる。
なお、衝突ロッド24を上下させる機構は、上記のようなカム機構に限らず従来公知の様々な機構を採用可能である。
【0028】
衝突ロッド24のサイズとしては、例えばロッド本体2404の直径は12mm以上20mm以下、長さ(上方ストッパ2406と加速度センサ26との境界から底面2412までの長さ)は60mm以上120mm以下、質量(ロッド本体2404、上方ストッパ2406、下方ストッパ2408、レバー2410を含む)は100g以上200g以下、底面2412の曲率半径は30mm以下とするのが好ましく、20mm以上30mm以下とするのがより好ましい。
これは、上述した範囲にペンデュラム試験の手順(非特許文献1参照)に規定される衝突体のサイズが含まれるためである。
【0029】
図1の説明に戻り、加速度センサ26は、衝突ロッド24(衝突体)の底面2412と反対側の面に取り付けられており、衝突ロッド24とフェース面32(被衝突体)とが衝突した際に生じる衝突ロッド24の加速度を計測する。
加速度センサ26は、配線2602によりデジタルオシロスコープを介してコンピュータ50に接続され、その検出値をコンピュータ50に出力する。デジタルオシロスコープでは、加速度センサから出力されたアナログ信号をデジタル値に変換する。なお、加速度センサ26とコンピュータ50とを無線通信により接続してもよい。
【0030】
図6は、コンピュータ50の構成を示すブロック図である。
コンピュータ50は、CPU52と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM54、RAM56、ハードディスク装置58、ディスク装置60、キーボード62、マウス64、ディスプレイ66、プリンタ68、入出力インターフェース70などを有している。
ROM54は制御プログラムなどを格納し、RAM56はワーキングエリアを提供するものである。
【0031】
ハードディスク装置58は、加速度センサ26の検出値に基づいてゴルフクラブヘッド30(被衝突体)の剛性特性(本実施の形態ではCT値)を算出する剛性特性算出プログラムを格納している。
【0032】
ディスク装置60はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード62およびマウス64は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ66はデータを表示出力するものであり、プリンタ68はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ66およびプリンタ68によってデータを出力する。
入出力インターフェース70は、加速度センサ26など外部機器との間でデータの授受を行うものである。
【0033】
図14は、コンピュータ50の機能的構成を示すブロック図である。
上記CPU52は、上記制御プログラムを実行することにより、計測箇所調整部502、落下距離変更部504、落下制御部506、剛性特性算出部508、特性分布作成部510、特徴点抽出部512として機能する。
【0034】
計測箇所調整部502は、衝突ロッド24(衝突体)とゴルフクラブヘッド30(被衝突体)との相対位置を変更することにより、フェース面32(被計測面)上の計測箇所を変更する。
本実施の形態では、計測箇所調整部502は、XYステージ14に対して、X軸方向テーブル1402およびY軸方向テーブル1406の移動を指示する制御信号を出力することにより、衝突ロッド24に対するゴルフクラブヘッド30の位置を変更してフェース面32上の計測箇所を変更する。
【0035】
図12は、ゴルフクラブヘッド30上の計測箇所を模式的に示す説明図である。
本実施の形態では、図12Bに示すように、ゴルフクラブヘッド30のフェース面32に所定広さの計測範囲Mを設定する。さらに、図12Aに示すように、計測範囲Mを複数の微小領域に分割し、各微小領域の中心位置を計測箇所とする。図12の例では、微小領域の大きさを2.5mm四方とし、17×21=357個の計測箇所を設定している。
計測範囲Mは、例えばフェース面32のセンターを基準として、上下(クラウン-ソール)方向および左右(トウ-ヒール)方向がそれぞれ対称となるように設定することが好ましい。図12の例では、計測箇所「9K」の中心をフェース面32のセンターに合わせて計測範囲Mおよび計測箇所を設定している。
また、計測箇所の設定値(微小領域の大きさおよび位置)のパターンを予めいくつか準備しておき、コンピュータ50のハードディスク装置58等にファイルとして保存すると共に、計測対象となるゴルフクラブ(ドライバー、フェアウェー等)に応じて適宜設定値を呼び出すことで計測範囲Mや計測箇所を変更するようにしてもよい。
【0036】
計測時には、計測箇所調整部502は、まず例えば計測箇所1Aが衝突ロッド24の直下になるようにXYステージ14の位置を制御する。計測箇所1Aでの計測が終了すると、計測箇所調整部502は、計測箇所1Bが衝突ロッド24の直下になるようにX軸方向テーブル1402の位置を移動させるよう制御する。以下同様に1行目の計測箇所を全て(1Uまで)計測すると、計測箇所調整部502は、計測箇所2Uが衝突ロッド24の直下になるようにY軸方向テーブル1406の位置を移動させるよう制御する。以下同様に、X軸方向、Y軸方向の移動をくり返すことによって、357個の計測箇所での計測を行う。
すなわち、本実施の形態では、計測箇所調整部502は、水平面内の直交する2軸(X軸、Y軸)に沿って所定距離ずつ衝突ロッド24(衝突体)とゴルフクラブヘッド30(被衝突体)との相対位置を変更する。
【0037】
図14の説明に戻り、落下距離変更部504は、フェース面32(被計測面)上の計測箇所を変更する毎に、計測箇所への衝突ロッド(衝突体)への衝突速度が略一定となるように衝突ロッド24(衝突体)の落下距離を調整する。
上述のように、本実施の形態で計測するCT値には速度依存性があることが知られている。このため、全ての計測箇所において衝突ロッド24の衝突速度は一定であることが望ましい。一方で、ゴルフクラブヘッド30のフェース面32は平坦面ではなく、ヘッド固定用治具12に対するアーム20の位置を固定した場合、例えばフェース面32の中心に位置する計測箇所とフェース面32の端部に位置する計測箇所とで衝突速度が異なってしまう。よって、落下距離変更部504によりZステージ18を制御し、計測箇所ごとにアーム20の位置(高さ)を変更する。
【0038】
落下距離変更部504による落下距離の決定は、例えば以下のいずれかの方法を用いることができる。
<方法1>
計測箇所ごとに実際に衝突ロッド24をフェース面32に衝突させて加速度を計測し、この加速度を積分することにより衝突速度を算出してアーム20の位置を変更する。
例えば、衝突速度が予め定めた計測時衝突速度よりも速い場合(衝突速度を遅くしたい場合)にはアーム20の位置をより高くして落下距離を長くし、遅い場合(衝突速度を速くしたい場合)にはアーム20の位置をより低くして落下距離を短くする。
なお、様々な要因により、同一の落下距離であっても衝突ロッド24の衝突速度は計測毎にごくわずかに異なると考えられる。よって、例えば計測時衝突速度に対して±0.05m/s程度は許容範囲とするのが現実的である。
また、一般的には衝突速度を遅くしたい場合にはアーム20の位置をより低くして落下距離を短くし、衝突速度を速くしたい場合にはアーム20の位置をより高くして落下距離を長くすることが考えられる。しかしながら、本実施の形態で用いる剛性特性計測装置10は、後述するように(図5参照)、衝突ロッド24はばね28を圧縮しながらフェース面32へと衝突する。アーム20の位置を高くして、衝突ロッド24の落下開始点とフェース面32との距離を長くすると、衝突時にばね28が大きく圧縮された状態となり、アーム20の位置変更前と比較して衝突ロッド24の衝突速度が遅くなる。なお、アーム20の位置を高くし過ぎると、衝突ロッド24とフェース面32が接触しなくなる。
また、アーム20の位置をより低くして、衝突ロッド24の落下開始点とフェース面32との距離を短くすると、ばね28の圧縮量が少ない状態(減速前)に衝突ロッド24とフェース面32が衝突することになり、アーム20の位置変更前と比較して衝突ロッド24の衝突速度が速くなる。なお、アーム20の位置を低くし過ぎると、無荷重時にも衝突ロッド24とフェース面32が接触してしまう。
よって、落下距離変更部504は、荷重負荷時に衝突ロッド24とフェース面32が接触し、かつ無荷重時に衝突ロッド24とフェース面32が接触しない範囲でアーム20の位置を調整する。
すなわち方法1は、落下距離変更部504は、加速度センサ26で得られる加速度信号を積分して衝突速度を算出し、衝突速度が所定範囲となるように衝突ロッド24(衝突体)の落下距離を調整する方法である。
【0039】
<方法2>
距離センサにより衝突ロッド24の先端と計測箇所との間の離間距離(落下距離)を測定してアーム20の位置を変更する。
この場合、例えば衝突ロッド24の先端またはリニアブッシュ22の本体部2202の下面2208(図5参照)に光学式等の距離センサを設置する。衝突ロッド24の先端に距離センサを設置した場合には、衝突ロッド24が通常位置にある時に距離センサで測定した距離がそのまま落下距離となる。また、リニアブッシュ22の下面2208に距離センサを設置した場合には、距離センサで測定した距離-リニアブッシュ22の下面2208から通常位置の衝突ロッド24の先端までの距離が落下距離となるが、リニアブッシュ22の下面2208から通常位置の衝突ロッド24の先端までの距離は一定となるので、センサの測定値の差分はそのまま落下距離の差分となる。
落下距離変更部504は、距離センサの測定値が予め定めた離間距離となるようにZステージ18を制御する。
すなわち方法2は、落下距離変更部504は、落下前の衝突ロッド24(衝突体)と計測箇所との離間距離を測定し、離間距離が一定となるように衝突ロッド24(衝突体)の落下距離を調整する。
【0040】
落下制御部506は、ゴルフクラブヘッド30に対する衝突ロッド24の落下状態を制御する。より詳細には、落下制御部506は、カム機構27のモータ2704の駆動状態(回転速度やカム2702の位置)を制御し、所定のタイミングで衝突ロッド24をゴルフクラブヘッド30に向けて落下させる。所定のタイミングとは、例えば計測箇所調整部502によるXYステージ14の位置調整や落下距離変更部504による落下距離の変更(上記方法2を採用する場合)が完了したタイミングである。
【0041】
剛性特性算出部508は、計測箇所に衝突ロッド24(衝突体)を落下させ、落下時の加速度センサ26の検出値に基づいて各計測箇所における剛性特性を算出する。本実施の形態では、剛性特性とはゴルフクラブヘッド30の(より詳細には、フェース面32の各計測箇所における)CT値である。
加速度センサ26で検出される加速度は、所定のサンプリング間隔で検出される時系列の加速度データである。剛性特性算出部508は、加速度データをフィルタ処理してノイズを除去した上で積分し、速度Vの時系列データに変換する。
【0042】
図8は、衝突ロッド24の速度Vの時系列データを示すグラフである。
剛性特性算出部508は、以下のようにゴルフクラブヘッド30の剛性特性を示すCT値を算出する。
速度Vの時系列データにおける最高速度をVmaxとする。
速度VがV1(V1=Vmaxのα%)に達する時間を開始時間tsとする。
速度VがV2(V2=Vmaxのβ%)に達する時間を終了時間teとする。
αを0~99%とし、βを1~100%とし、α<βとする。
CT値はte-tsによって求められる。
なお、一般的にはα%=5%、β%=95%とされる。
【0043】
また、上述したように、CT値には速度依存性がある。よって、複数の衝突速度でCT値の計測を行い、衝突速度とCT値との関係から当該ゴルフクラブヘッド30の代表CT値を算出する場合もある。
図9は、同一のゴルフクラブヘッド30について、衝突速度を変更して(アーム20の位置を変更して)複数回計測したCT値の一例を示すグラフである。
図9において、横軸は衝突速度[m/s]、縦軸はCT値[μs]である。
図9のグラフに示すように、CT値は衝突速度が遅いほど大きく、衝突速度が速いほど小さくなっている。
【0044】
図10は、図9の横軸を-0.329乗した値(V-0.329)に変換したグラフである。
このような変換を行うと、CT値は直線上に並ぶ。この直線とY軸との交点(y切片)を当該ゴルフクラブヘッド30の代表CT値とする。図10の例では、各衝突速度におけるCT値はT=248.6+13.73V-0.329の直線上に並んでおり、代表CT値は248.6となる。
なお、図9および10には衝突速度を変更して10回計測を行った結果を図示しているが、一般的には3回程度の計測(3つの速度水準)でゴルフクラブヘッド30の代表CT値を算出する。
【0045】
図14の説明に戻り、特性分布作成部510は、各計測箇所に対応して算出された剛性特性に基づいて、水平面内に設定された計測範囲Mにおける剛性特性の分布を作成する。
本実施の形態では例えば図12Aに示すように、各計測箇所に対応する微小領域を、各計測箇所におけるCT値の値によって色分けしたコンター図によって剛性特性の分布を可視化するものとした。
図12Aでは、CT値(小数第一位を四捨五入した値)が0から239の領域、240から252の領域、253から264の領域、265以上の領域をそれぞれ色分けして表示している。図12Aの例では、CT値265以上の領域が計測範囲Mの左右に1箇所ずつ存在していることがわかる。また、計測範囲Mの中央部、すなわちフェース面32の中央部で必ずしもCT値が大きい訳ではないことが分かる。
このようにすることで、計測範囲M内における剛性特性の分布を容易に把握することができ、ゴルフクラブヘッド30の性能評価を効率的に行うことができる。
なお、剛性分布の形態については、コンター図に限らず従来公知の様々な形式が採用可能である。
【0046】
特徴点抽出部512は、特性分布作成部510で作成された計測範囲Mにおける剛性特性の分布に基づいて、剛性特性の特徴点を抽出する。
剛性特性の特徴点とは、例えば計測範囲M内で剛性特性値の最大値または最小値を取る点(計測箇所)、極大値または極小値を取る点(計測箇所)である。極大値(または極小値)とは剛性特性値が複数のピークを取る場合にそれぞれのピークの最大値(または最小値)に対応する点である。
一般にCT値はその最大値が問題となるため、最大値または極大値について注目すると、図12Aの例では、計測範囲M内でCT値の最大値を取る点は7Aの275(274.529)である。また、左右に1つずつ存在するCT値265以上の領域の各極大値は、左の領域では7Aの275(274.529)、右の領域では8Oの270(270.233)である。
【0047】
つぎに、図7のフローチャートを参照して、剛性特性計測装置10による計測手順について説明する。
図7のフローチャートでは、量産した同一型番のゴルフクラブヘッド30を複数個用意し、それぞれのゴルフクラブヘッド30の剛性特性(例えばCT値)を計測するものとする。また、図7のフローチャートにおいて、落下距離変更部504による落下距離の決定は、上記方法2を用いている。
計測に先立って、剛性特性の計測箇所(フェース面32上における衝突ロッド24の衝突位置)や衝突ロッド24の衝突速度、衝突ロッド24と計測箇所との間の離間距離などの計測パラメータを決定しておく(ステップS70)。
【0048】
つぎに、ゴルフクラブヘッド30をヘッド固定用治具12にセットする(ステップS72)。
より詳細には、まず計測者はレール1604上のXYステージ14を手前方向に移動させる。これは、ゴルフクラブヘッド30をセットする際にリニアブッシュ22等と干渉しない位置にヘッド固定用治具12を移動させるためである。つぎに、ゴルフクラブヘッド30のフェース面32を上方に向けて、サイド部35側を嵌合孔1208に嵌め込む。そして、レール1604上のXYステージ14を奥方向(Zステージ18側)に移動させる。レール1604端部までXYステージ14が移動すると、磁石によりがXYステージ14の位置が固定される。
【0049】
つぎに、計測箇所調整部502は、衝突ロッド24の落下位置に最初の計測箇所(例えば図12Aの1A)が位置するようにXYステージ14に対して制御信号を出力する。これにより、XYステージ14が稼働し、計測箇所が衝突ロッド24の落下位置に位置する(ステップS74、計測箇所調整工程)。
つづいて、落下距離変更部504は、図示しない距離センサによって衝突ロッド24の先端と計測箇所との間の離間距離(落下距離)を測定し、ステップS70で設定した離間距離となるようにアーム20の位置を変更する(ステップS76、落下距離変更工程)。
【0050】
落下制御部506は、カム機構27のモータ2704を駆動し、衝突ロッド24を計測箇所に向けて落下させる。また、落下から衝突までの一連の加速度を加速度センサ26で計測する(ステップS78)。
図5は、計測時における衝突ロッド24の挙動を模式的に示す図である。
なお、視認性の観点から、図5Cおよび図5Dではカム機構27の図示を省略している。
計測時には、図5Aに示すように、カム2702により衝突ロッド24のレバー2140を上方に引き上げる。本実施の形態では、カム2702により衝突ロッド24が引き上げられた状態でも、下方ストッパ2408がリニアブッシュ22の下面2208より下側に位置するようにしている。
なお、計測時には衝突ロッド24のロッド本体2404にばね28が挿通される。ばね28はリニアブッシュ22の上面2206上に位置する。図5Aの状態では、ばね28に力がかかっていないため、ばね28の長さは自然長H0となっている。
図5Bに示すように、カム2702が回転してレバー2140から離れると、衝突ロッド24を鉛直方向に自由落下し、重力加速度によって落下速度が加速する。
その後、上方ストッパ2406がばね28の上端位置まで落下すると、衝突ロッド24の荷重(質量×加速度)がばね28にかかる。この荷重により、ばね28は縮んで自然長H0より短い長さH1となる(図5C参照)。一方、衝突ロッド24にはばね28からの反力がかかり、落下速度は減速する。この減速の過程で、衝突ロッド24がフェース面32に所定の衝突速度で衝突する。
フェース面32と衝突した衝突ロッド24は、反力を受けて上方へと移動する。衝突ロッド24が上方に移動すると、ばね28にかかる荷重がなくなり、ばね28は自然長H0に戻る。衝突ロッド24は、一定距離上方に移動した後、重力により再度下方(フェース面32方向)へと落下する。しかしながら、最初の落下時と比較して落下開始位置が低いため、ばね28にかかる荷重は小さくなり、ばね28を縮ませる程度の荷重には至らない(または図5Cよりも縮み量が小さくなる)。
よって、図5Dに示すように、衝突ロッド24の底面2412はフェース面32よりも上方に保持される。すなわち、ばね28は、衝突ロッド24(衝突体)がフェース面32(被計測面)に衝突した後、衝突ロッド24をフェース面32より上方に保持し、衝突ロッド24がフェース面32に再度衝突するのを防止する再衝突防止機構として機能する。
このような再衝突防止機構を設けているのは、再衝突によって加速度センサ26の検出値のノイズが増大するのを防止するためである。
【0051】
図7の説明に戻り、剛性特性算出部508は、ステップS78で検出された加速度を用いて、ゴルフクラブヘッド30の剛性特性(CT値)を算出する(ステップS80)。
今回計測するゴルフクラブヘッド30に設定された全ての計測箇所での計測が完了するまでは(ステップS82:NO)、ステップS74に戻り、計測箇所を移動して計測および剛性特性の算出を継続する。
全ての計測箇所での計測が完了すると(ステップS82:YES)、特性分布作成部510は、各計測箇所における剛性特性の値をコンター図にプロットし、計測範囲Mにおける剛性特性の分布を作成する(ステップS84、特性分布作成工程)。
また、特徴点抽出部512は、剛性特性の分布に基づいて剛性特性の特徴点(最大値や極大値を取る測定箇所)を特定する(ステップS86、特徴点抽出工程)。
【0052】
複数個用意したゴルフクラブヘッド30の計測を全て終了するまでは(ステップS88:NO)、ヘッド固定用治具12にセットするゴルフクラブヘッド30を交換し(ステップS90)、ステップS74に戻り以降の処理をくり返す。
そして、複数個用意したゴルフクラブヘッド30の計測を全て終了すると(ステップS88:YES)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0053】
図11は、落下距離変更工程の有無によるCT値の違いを示す説明図である。
図11Aは、ゴルフクラブヘッド30のフェース面32の中心位置(計測箇所0)から上下方向に所定距離ずつ離れた点を計測箇所(打点位置)として計測したCT値を示している。また、図11Bは、図11Aの値をプロットしたグラフであり、縦軸がCT値、横軸が計測箇所である。
計測箇所として、フェース面32の中心位置(計測箇所0)、計測箇所0から上方向に10mm離れた点および20mm離れた点、計測箇所0から下方向に10mm離れた点(-10mm)および20mm離れた点(-20mm)を設定した。
【0054】
落下距離変更工程を実施せず、計測箇所0を基準として落下距離を一定とした場合(計測箇所0で衝突速度が0.40m/sとなる落下距離で全ての計測箇所で計測した場合)、他の計測箇所では衝突速度が0.40m/sよりも遅くなり、例えば計測箇所-20では0.33m/sとなった。また、CT値は計測箇所0で一番大きく、計測箇所0からの距離が大きい計測箇所ほど小さくなった。
【0055】
一方、落下距離変更工程を実施して、全ての計測箇所で衝突速度が0.40m/sとなるように落下距離を変更した場合、落下距離一定の場合に比べて全ての計測箇所でCT値が小さくなった。上述のようにCT値は速度依存性があるため、衝突速度一定で計測したCT値の方が信頼性が高いと考えられる。特に、計測箇所0からの距離が大きい計測箇所ほど、フェース面32の曲率の影響で誤差が大きくなるため、落下距離変更工程を実施して計測を行うのが有効である。
【0056】
更に、フェース面32が曲率を有するということは、フェース面32の各点における法線方向も異なることになる。より厳密に剛性特性を計測するには、各計測箇所において衝突ロッド24の衝突角度を一致させる(垂直にする)ことが望ましい。
そこで、衝突ロッド24(衝突体)の落下方向とフェース面32の計測箇所の法線方向とが略一致するように、ゴルフクラブヘッド30(被衝突体)の保持角度を調整する衝突角度調整機構80を設け、衝突角度調整工程を実行するようにしてもよい。
【0057】
図15は、衝突角度調整機構80の一例を示す説明図である。
衝突角度調整機構80は、ヘッド固定用治具12を握持する握持部82と、平面上(図15の例ではY軸方向テーブル1406)に配置される接地部84と、握持部82を任意の角度に回転させる回転部86とを備える。
握持部82は、十字型に形成されヘッド固定用治具12の底面に接する基部と、基部の先端から垂直方向上側に伸びヘッド固定用治具12の側面1204および1206に接する立設部を備え、ヘッド固定用治具12を握持する。
【0058】
図15Aの状態では、衝突ロッド24の落下方向とフェース面32の略中央にある計測箇所Aの法線方向(計測箇所Aからの矢印で示す)とは一致している。一方、フェース面32の端部にある計測箇所Bの法線方向(計測箇所Bからの矢印で示す)は、衝突ロッド24の落下方向とずれている。
このため、計測箇所Bでの計測を行う際は、図15Bに示すように衝突ロッド24の落下方向と計測箇所Bの法線方向とが一致するように回転部86により握持部82を回転させる。
なお、各計測箇所の法線方向は、例えばゴルフクラブヘッド30の設計データから算出する。
このようにすることで、より高精度に曲面上の各計測箇所の剛性特性を計測することができる。
【0059】
以上説明したように、実施の形態にかかる剛性特性計測装置10は、フェース面32上の計測箇所を変更する毎に計測箇所への衝突ロッド24への衝突速度が略一定となるように衝突ロッド24の落下距離を調整するので、フェース面32が曲率を有する場合でも各計測箇所での衝突速度を略一定とすることができ、剛性特性が速度依存性を有する場合などに計測精度を向上させる上で有利となる。
剛性特性計測装置10において、剛性特性の計測に用いる加速度センサ26を用いて衝突速度を算出して落下距離を調整すれば(上記方法1)、落下距離変更工程の実施にかかるコストを低減する上で有利となる。
請求項3の発明によれば、衝突体と計測箇所との離間距離を測定して落下距離を調整するので、迅速に落下距離を調整し、効率的に計測を行う上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10において、衝突ロッド24の落下方向と計測箇所の法線方向とが略一致するように被衝突体の保持角度を調整するようにすれば、剛性特性の計測精度をより向上させる上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、水平面内の直交する2軸に沿って衝突ロッド24とゴルフクラブヘッド30との相対位置を変更させながら剛性特性の計測を行うので、ゴルフクラブヘッド30の剛性特性を連続的に計測する上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、複数の計測箇所に対応して算出された剛性特性に基づいて、水平面内に設定された計測範囲における剛性特性の分布を作成するので、ゴルフクラブヘッド30全体の剛性特性を把握する上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、剛性特性の分布に基づいて剛性特性の特徴点を抽出するので、ゴルフクラブヘッド30の剛性特性の評価を行う上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、ゴルフクラブヘッド30の評価指標として重要なCT値を容易かつ高精度に計測することができる。
【0060】
また、剛性特性計測装置10は、衝突体である衝突ロッド24を、被衝突体であるゴルフクラブヘッド30に向けて鉛直方向に落下させるので、衝突ロッド24の衝突位置や衝突角度を一定に保つことが容易となり、剛性特性の計測精度を向上させる上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24が柱状であるため、長手方向に沿った移動の経路が規制しやすく、衝突ロッド24の衝突位置や衝突角度を一定に保つことがより容易となり、剛性特性の計測精度をより向上させる上で有利となる。また、衝突ロッド24の底面2412(衝突面)が球面形状に形成されているので、ペンデュラム試験に準拠した計測を行うことができる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24の最上点位置および最下点位置を規制する上方ストッパ2406および下方ストッパ2408(ストッパ機構)が設けられているので、衝突ロッド24の落下距離を一定に保つことができ、フェース面32への衝突速度を一定にする上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24がフェース面32に再衝突するのを防止するばね28(再衝突防止機構)が設けられているので、短時間での繰り返し衝突による計測への影響を軽減する上で有利となる。また、衝突ロッド24がフェース面32より上方に保たれるため、計測対象となるゴルフクラブヘッド30を交換する際の作業効率を向上させることができ、またフェース面32にキズ等がつくのを防止することができる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24の落下開始位置とフェース面32との距離(衝突体の落下距離)を調整する落下距離調整機構(アーム20の位置固定機構2006)が設けられているので、衝突ロッド24の衝突速度を任意の速度に調整することができ、特に速度依存性がある剛性特性を計測する場合の利便性を向上することができる。
また、剛性特性計測装置10は、フェース面32上における衝突ロッド24の落下位置を調整可能なので、フェース面32上の任意の位置における剛性特性を計測することができる。
また、剛性特性計測装置10は、ヘッド固定用治具12が制振素材を含んで形成されているので、加速度センサ26の検出値に過度なノイズが乗るのを防止して、安定した計測を行う上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、シャフトが取り付けられていないゴルフクラブヘッド30のみを被衝突体とすることが可能なので、ゴルフクラブヘッド30の試作工程や製造工程におけるCT値の計測を容易に行うことができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、ゴルフクラブヘッド30の剛性特性としてCT値を算出するものとしたが、例えば反発係数(衝突前後における相対速度の比)など、加速度センサ26の検出値を用いて算出可能な他の剛性特性を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 剛性特性計測装置
12 ヘッド固定用治具
14 XYステージ
16 台座
1802 支柱
20 アーム
22 リニアブッシュ
24 衝突ロッド(衝突体)
2404 ロッド本体
2406 上方ストッパ
2408 下方ストッパ
2410 レバー
2412 底面
26 加速度センサ
27 カム機構
28 ばね(再衝突防止機構)
30 ゴルフクラブヘッド(被衝突体)
32 フェース面(被計測面)
50 コンピュータ(特性算出部)
502 計測箇所調整部
504 落下距離変更部
506 落下制御部
508 剛性特性算出部
510 特性分布作成部
512 特徴点抽出部
80 衝突角度調整機構
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