(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20240124BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20240124BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240124BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C09K3/18 103
C09K3/18 104
C08L71/00 Z
C08L83/04
C08F293/00
(21)【出願番号】P 2022027459
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2021030453
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 祥太
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/160626(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/077155(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/050361(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/045209(WO,A1)
【文献】ZHANG Cheng, et al.,Importance of Thermally Induced Aggregation on 19F Magnetic Resonance Imaging of Perfluoropolyether-Based Comb-Shaped Poly(2-oxazoline)s,Biomacromolecules,2019年,vol. 20, no. 1,p. 365-374,https://doi.org/10.1021/acs.biomac.8b01549
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/00- 71/14
C08L 83/00- 83/16
C09K 3/00- 3/32
C08F 293/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フルオロポリエーテル基含有ポリマー、及び(B)シロキサンポリマーを含む表面処理剤であって、
前記フルオロポリエーテル基含有ポリマーは、下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-であり;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-であり;
Rf
1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
R
4は、各出現においてそれぞれ独立して、R
4a又はR
4bであり;
R
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式:
【化2】
[式中:
R
31は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基であり;
R
32は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
33は、各出現において、それぞれ独立して、架橋性基であり;
Y
1は、単結合、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-OC(=O)-、-NHC(=O)-、-O-、-N(R
c)-、芳香環、置換基を有する芳香環又はカルバゾリレンであり;
R
cは、C
1-6アルキル基であり、
Y
2は、単結合又は主鎖の原子数が1~16のリンカーである。]
で表される基であり;
前記架橋性基は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、環状エーテル基、水酸基、チオール基、アミノ基、アジド基、含窒素複素環基、イソシアネート基、ハロゲン原子、リン酸含有基、又はシランカップリング基を含む基、あるいはこれらの前駆体基であり;
R
4
n中、R
4aの数は1以上であり;
R
4bは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式:
-CHR
4c-CR
4dR
4e-
[式中:
R
4c及びR
4dは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基であり、
R
4eは、-Y
3-R
4fであり、
Y
3は、前記Y
1と同意義であり、
R
4fは、-リンカー-R
4g、又は-R
4gであり、
前記リンカーは、
(a)-(CH
2-CH
2-O)
s1-(s1は、1~10の整数である。)、
(b)-(CHR
4h)
s2-O-(s2は、1~40の整数であり、R
4hは、水素又はメチル基である。)、
(c)-(CH
2)
s3-O-(CH
2)
s4-(s3は、1~10の整数であり、s4は、0~10の整数である。)、
(d)-(CH
2-CH
2-O)
s1-CO-NH-CH
2-CH
2-O-(s1は、上記と同意義である。)、
(e)-(CH
2)
s5-(s5は1~6の整数である。)、又は
(f)-(CH
2)
s6-O-CONH-(CH
2)
s7-(s6は1~8の整数であり、s7は1~6の整数である。)、又は
(g)-O-(但し、Y
3は-O-ではない)
であり、
R
4gは、
(i)アルキル基、
(ii)下記から選択されるフッ素で置換されたアルキル基を含有する鎖状基、
【化3】
(iii)下記から選択される環状部を含有する基、
【化4】
(iv)水素(但し、水酸基を形成する場合を除く)、
(v)下記から選択されるイミダゾリウム塩を含有する基、又は
【化5】
(vi)下記式で表されるケイ素を含有する基
【化6】
(式中、式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基である。)
である。]
で表される基であり;
nは2~100の整数であり;
X
aは、それぞれ独立して、下記式:
-(Q)
e-(CFZ)
f-(CH
2)
g-
[式中、
Qは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NH-、-C(O)-、-C(=NH)-、および-C(O)NR
q2-(式中、R
q2は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。)であり、
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または炭素数1~6のフルオロアルキル基であり、
e
は、0または1であり、fおよびgは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、e、fおよびgの和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基であり、ただし、X
aは、酸素原子が連続する構造-O-O-を含ま
ず、Rf
1
-R
F
-O
q
-および-Rf
2
p
-R
F
-O
q
-は、酸素原子が連続する構造-O-O-を含まない;
X
bは、それぞれ独立して、下記式:
-CO-R
b3-CR
b1R
b2-
[式中:
R
b1およびR
b2は、それぞれ独立して、水素原子、C
1-3アルキル基、フェニル基または-CNであり、
R
b3は、単結合または置換されていてもよいC
1-6アルキレン基である。]
で表される基であり;
R
aは、それぞれ独立して、アルキル、フェニル、-SR
a1、-OR
a2、-NR
a3
2、
【化7】
であり;
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
a5及びR
a6は、それぞれ独立して、アルキル基又はフェニル基であり;
R
a7は、水素又はハロゲン原子である。]
で表される共重合体であり、
前記シロキサンポリマーの数平均分子量は、800~8,000であり、
前記シロキサンポリマーの含有量は、前記フルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して1~300質量部である、
表面処理剤。
【請求項2】
R
Fは、それぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
R
Faは、フッ素原子である、請求項2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
R
Fは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)又は(f5):
-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R
6-R
7)
g- (f3)
[式中、R
6は、OCF
2又はOC
2F
4であり;
R
7は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10及びOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項5】
R
4は、R
4aである、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項6】
前記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニル基、アリル
基、置換されていてもよいアクリロイル基、シンナモイル基、2,4-ヘキサジエノイル
基、ビニルエーテル基、水酸基、オキセタニル基、イソシアネート基、カテコール基、チ
オール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有
基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラ
ゾリル基、ハロゲン原子、又はシランカップリング基、あるいはこれらの前駆体基であ
る、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項7】
前記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項8】
nは、2~50の整数である、請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項9】
前記シロキサンポリマーは、下記式:
【化8】
[式中:
R
21は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
23は、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
24は、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
25及びR
26は、それぞれ独立して、水素原子又は-R
27-R
28であり、
R
27は、単結合、酸素原子又は-(R
51)
q5-(R
52)
q6-(R
53)
q7-
[式中:
R
51及びR
53は、それぞれ独立して、-(CH
2)
r1-またはo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、
r1は、1~20の整数であり、
R
52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-CONR
54-、-O-CONR
54-、-NR
54-および-(CH
2)
r2-からなる群から選択される基であり、
R
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C
1-6アルキル基、または炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
r2は、1~20の整数であり、
q5は、0または1であり、
q6は、0
または1であり、
q7は、0または1であり、
ただし、q5、q6及びq7の少なくとも1つは1である。]
で表される基であり、
R
28は、水素原子、-OH、-CO-CH=CH
2、-CO-C(CH
3)=CH
2、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ビニル基、アルコキシ基、又はチオール基であり、
ただし、R
25及びR
26は、酸素原子が連続する構造-O-O-を含ま
ず、R
25
およびR
26
は、フェニレン基が連続する構造を含まない、
pは、任意の整数である。]
で表されるシロキサンポリマーである、請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項10】
R
25及びR
26は、C
1-6アルキル基である、請求項9に記載の表面処理剤。
【請求項11】
R
25は、C
1-6アルキル基であり、
R
26は、-R
27-R
28である、
請求項9に記載の表面処理剤。
【請求項12】
R
25及びR
26は、-R
27-R
28である、
請求項9に記載の表面処理剤。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の表面処理剤;及び
マトリックスを形成する組成物
を含み、
前記マトリックスを形成する組成物は、多官能アクリレートもしくはメタクリレート、多官能ウレタンアクリレートもしくはメタクリレート、多官能エポキシアクリレートもしくはメタクリレート、又は多官能エポキシである化合物を含有する組成物であり、
前記フルオロポリエーテル基含有ポリマー及び前記シロキサンポリマーの含有量は、マトリックス形成組成物の固形分に対して、0.1~10質量%であり、
前記シロキサンポリマーの含有量は、マトリックス形成組成物の固形分に対して、0.02~1.5質量%である、
硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の表面処理剤により形成された膜。
【請求項15】
請求項13に記載の硬化性組成物により形成された膜。
【請求項16】
基材と、該基材の表面に請求項1~12のいずれか1項に記載の表面処理剤により形成された層とを含む物品。
【請求項17】
基材と、該基材の表面に請求項13に記載の硬化性組成物により形成された層とを含む物品。
【請求項18】
上記物品が光学部材である、請求項16又は17に記載の物品。
【請求項19】
LiDARカバー部材である、請求項16又は17に記載の物品。
【請求項20】
センサー部材である、請求項16又は17に記載の物品。
【請求項21】
インストルメントパネルカバー部材である、請求項16又は17に記載の物品。
【請求項22】
自動車内装部材である、請求項16又は17に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリエーテル基含有ポリマー、及びシロキサンポリマーを含む表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の含フッ素化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。特許文献1には、摩擦耐久性に優れた表面処理層を与えることができる含フッ素ポリマー及び含ケイ素ポリマーを含む組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の組成物は、基材に撥水撥油性などの機能を与え得るが、次第に高まる表面滑り性に対する要求に応えるには十分でない場合がある。
【0005】
本開示は、基材に、撥水撥油性に加え、高い表面滑り性を与え、かつ、優れた溶剤への溶解性を有する含フッ素ポリマー及び含ケイ素ポリマーを含む表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] (A)フルオロポリエーテル基含有ポリマー、及び(B)シロキサンポリマーを含む組成物であって、
前記フルオロポリエーテル基含有ポリマーは、下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-であり;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-であり;
Rf
1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
R
4は、各出現においてそれぞれ独立して、R
4a又はR
4bであり;
R
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、架橋性基を有する2価の有機基であり;
R
4bは、各出現においてそれぞれ独立して、架橋性基を有しない2価の有機基であり;
前記架橋性基は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、環状エーテル基、水酸基、チオール基、アミノ基、アジド基、含窒素複素環基、イソシアネート基、ハロゲン原子、リン酸含有基、又はシランカップリング基を含む基、あるいはこれらの前駆体基であり;
nは1~100の整数であり;
X
aは、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
X
bは、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
aは、それぞれ独立して、アルキル、フェニル、-SR
a1、-OR
a2、-NR
a3
2、
【化2】
であり;
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
a5及びR
a6は、それぞれ独立して、アルキル基又はフェニル基であり;
R
a7は、水素又はハロゲン原子である。]
で表される共重合体であり、
前記シロキサンポリマーの数平均分子量は、350超10,000未満である、組成物。
[2] R
Fは、それぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[1]に記載の組成物。
[3] R
Faは、フッ素原子である、上記[2]に記載の組成物。
[4] R
Fは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)又は(f5):
-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R
6-R
7)
g- (f3)
[式中、R
6は、OCF
2又はOC
2F
4であり;
R
7は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10及びOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5] R
4は、R
4aである、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6] R
4aは、下記式:
【化3】
[式中:
R
31は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基であり;
R
32は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
33は、各出現においてそれぞれ独立して、架橋性基であり;
Y
1は、単結合、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-OC(=O)-、-NHC(=O)-、-O-、-N(R
c)-、芳香環、置換基を有する芳香環又はカルバゾリレンであり;
R
cは、有機基であり、
Y
2は、単結合又は主鎖の原子数が1~16であるリンカーである。]
で表される基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7] 前記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニル基、アリル基、置換されていてもよいアクリロイル基、シンナモイル基、2,4-ヘキサジエノイル基、ビニルエーテル基、水酸基、オキセタニル基、イソシアネート基、カテコール基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾリル基、ハロゲン原子、又はシランカップリング基、あるいはこれらの前駆体基である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8] 前記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の組成物。
[9] nは、2~50の整数である、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の組成物。
[10] 前記シロキサンポリマーは、下記式:
【化4】
[式中:
R
21は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
23は、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
24は、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
25は、水素原子又は1価の有機基であり、
R
26は、水素原子又は1価の有機基であり、
pは、任意の整数である。]
で表されるシロキサンポリマーである、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の組成物。
[11] R
25及びR
26は、C
1-6アルキル基である、上記[10]に記載の組成物。
[12] R
25はC
1-6アルキル基であり
R
26は、-R
27-R
28であり、
R
27は、2価の有機基、酸素原子又は単結合であり、
R
28は、水素原子、-OH、-CO-CH=CH
2、-CO-C(CH
3)=CH
2、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ビニル基、アルコキシ基、又はチオール基である、
上記[10]に記載の組成物。
[13] R
25及びR
26は、-R
27-R
28であり、
R
27は、2価の有機基、酸素原子又は単結合であり、
R
28は、水素原子、-OH、-CO-CH=CH
2、-CO-C(CH
3)=CH
2、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ビニル基、アルコキシ基、又はチオール基である、
上記[10]に記載の組成物。
[14] 前記シロキサンポリマーの数平均分子量は、800~8,000である、上記[1]~[13]のいずれか1項に記載の組成物。
[15] 前記シロキサンポリマーの含有量は、前記フルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して1~300質量部である、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載の組成物。
[16] 上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の組成物を含む表面処理剤。
[17] 上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の組成物、上記[16]に記載の表面処理剤;及び
マトリックスを形成する組成物
を含む、硬化性組成物。
[18] 前記マトリックスを形成する組成物は、アクリル樹脂、又はエポキシ樹脂である、上記[17]に記載の硬化性組成物。
[19] 上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の組成物、上記[16]に記載の表面処理剤、及び/又は上記[17]又は[18]に記載の硬化性組成物により形成された膜。
[20] 基材と、該基材の表面に上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の組成物、上記[16]に記載の表面処理剤、及び/又は上記[17]又は[18]に記載の硬化性組成物により形成された層とを含む物品。
[21] 上記物品が光学部材である、上記[20]に記載の物品。
[22] LiDARカバー部材である、上記[20]に記載の物品。
[23] センサー部材である、上記[20]に記載の物品。
[24] インストルメントパネルカバー部材である、上記[20]に記載の物品。
[25] 自動車内装部材である、上記[20]に記載の物品。
【発明の効果】
【0007】
本開示の表面処理剤は、基剤に撥水撥油性に加え、高い表面滑り性を与え、かつ、優れた溶剤への溶解性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に記載が無い限り、炭化水素基またはその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、特に限定されないが、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
[組成物]
以下、本開示の組成物について説明する。
【0012】
本開示の組成物は、(A)フルオロポリエーテル基含有ポリマー、及び(B)シロキサンポリマーを含む。
【0013】
[(A)フルオロポリエーテル基含有ポリマー]
上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーは、下記式(1)又は(2):
【化5】
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-であり;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-であり;
Rf
1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
R
4は、各出現においてそれぞれ独立して、R
4a又はR
4bであり;
R
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、架橋性基を有する2価の有機基であり;
R
4bは、各出現においてそれぞれ独立して、架橋性基を有しない2価の有機基であり;
上記架橋性基は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、環状エーテル基、水酸基、チオール基、アミノ基、アジド基、含窒素複素環基、イソシアネート基、ハロゲン原子、リン酸含有基、又はシランカップリング基を含む基、あるいはこれらの前駆体基であり;
nは1~100の整数であり;
X
aは、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
X
bは、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
aは、それぞれ独立して、アルキル、フェニル、-SR
a1、-OR
a2、-NR
a3
2、
【化6】
であり;
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
a5及びR
a6は、それぞれ独立して、アルキル基又はフェニル基であり;
R
a7は、水素又はハロゲン原子である。]
で表される共重合体である。
【0014】
上記式(1)において、RF1は、Rf1-RF-Oq-である。
【0015】
上記式(2)において、RF2は、-Rf2
p-RF-Oq-である。
【0016】
上記式において、Rf1は、それぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0017】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖のC1-3アルキル基である。
【0018】
上記Rf1は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCF2H-C1-15ペルフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16ペルフルオロアルキル基である。
【0019】
上記C1-16ペルフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6ペルフルオロアルキル基、特にC1-3ペルフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6ペルフルオロアルキル基、特に直鎖のC1-3ペルフルオロアルキル基、具体的には-CF3、-CF2CF3、または-CF2CF2CF3である。
【0020】
上記式において、Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0021】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0022】
上記Rf2は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6ペルフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3ペルフルオロアルキレン基である。
【0023】
上記C1-6ペルフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3ペルフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3ペルフルオロアルキル基、具体的には-CF2-、-CF2CF2-、または-CF2CF2CF2-である。
【0024】
上記式において、pは、0または1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0025】
上記式において、qは、それぞれ独立して、0または1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0026】
上記式(1)および(2)において、RFは、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0027】
RFは、好ましくは、式:
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3RFa
6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
[式中:
RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上である。a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である。
【0028】
RFaは、好ましくは、水素原子またはフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。
【0029】
a、b、c、d、eおよびfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0030】
a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下または30以下であってもよい。
【0031】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。例えば、上記繰り返し単位は、-(OC6F12)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC5F10)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-および-(OCF2CF(C2F5))-のいずれであってもよい。-(OC3F6)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-および-(OCF2CF(CF3))-のいずれであってもよい。-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-および-(OCF(CF3))-のいずれであってもよい。
【0032】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩擦耐久性等を向上させることができる。
【0033】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0034】
一の態様において、RFは、それぞれ独立して、下記式(f1)~(f5)のいずれかで表される基である。
-(OC3F6)d-(OC2F4)e- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。];
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R6-R7)g- (f3)
[式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり、
R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0035】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。上記式(f1)は、好ましくは、-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-または-(OCF(CF3)CF2)d-(OCF(CF3))e-で表される基であり、より好ましくは、-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-で表される基である。
【0036】
上記式(f2)において、eおよびfは、それぞれ独立して、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCF2CF2CF2CF2)c-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-(OCF2)f-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基であってもよい。
【0037】
上記式(f3)において、R6は、好ましくは、OC2F4である。上記(f3)において、R7は、好ましくは、OC2F4、OC3F6およびOC4F8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC3F6およびOC4F8から選択される基である。OC2F4、OC3F6およびOC4F8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC4F8-、-OC3F6OC2F4-、-OC3F6OC3F6-、-OC3F6OC4F8-、-OC4F8OC4F8-、-OC4F8OC3F6-、-OC4F8OC2F4-、-OC2F4OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC2F4OC4F8-、-OC2F4OC3F6OC2F4-、-OC2F4OC3F6OC3F6-、-OC2F4OC4F8OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC3F6-、-OC3F6OC3F6OC2F4-、および-OC4F8OC2F4OC2F4-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC2F4-OC3F6)g-または-(OC2F4-OC4F8)g-である。
【0038】
上記式(f4)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0039】
上記式(f5)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0040】
一の態様において、上記RFは、上記式(f1)で表される基である。
【0041】
一の態様において、上記RFは、上記式(f2)で表される基である。
【0042】
一の態様において、上記RFは、上記式(f3)で表される基である。
【0043】
一の態様において、上記RFは、上記式(f4)で表される基である。
【0044】
一の態様において、上記RFは、上記式(f5)で表される基である。
【0045】
上記RFにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩擦耐久性および耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性および摩擦耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0046】
一の態様において、上記e/f比は、好ましくは0.2~0.95であり、より好ましくは0.2~0.9である。
【0047】
一の態様において、耐熱性の観点から、上記e/f比は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0~2.0である。
【0048】
上記フルオロポリエーテル基含有化合物において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1およびRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0049】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0050】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0051】
上記式において、R4は、各出現においてそれぞれ独立して、R4aまたはR4bである。
【0052】
上記R4aは、各出現においてそれぞれ独立して、架橋性基を有する2価の有機基である。
【0053】
上記架橋性基とは、所定の条件下で反応を起こし、架橋構造を形成することが可能な基を意味する。
【0054】
上記架橋性基は、好ましくは、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、環状エーテル基、水酸基、チオール基、アミノ基、アジド基、含窒素複素環基、イソシアネート基、ハロゲン原子、リン酸含有基、又はシランカップリング基を含む基、あるいはこれらの前駆体基を含む基である。
【0055】
上記架橋性基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニル基、アリル基、置換されていてもよいアクリロイル基、シンナモイル基、2,4-ヘキサジエノイル基、ビニルエーテル(ビニルオキシ)基、水酸基、オキセタニル基、イソシアネート基、カテコール基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾリル基、ハロゲン原子、又はシランカップリング基、あるいはこれらの前駆体基が挙げられる。
【0056】
上記脂環式エポキシ基は、好ましくは下記式:
【化7】
(式中、nは、1~5の整数である。)
で表される基である。
【0057】
上記脂環式エポキシ基は、より好ましくは
【化8】
である。
【0058】
上記置換されていてもよいアクリロイル基とは、CH2=CX1-C(O)-で表される基である。
【0059】
上記X1は、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素により置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基、例えばメチル基である。
【0060】
上記置換されていてもよいアクリロイル基は、好ましくは、アクリロイル基又はメタクリロイル基である。以下、アクリロイル基及びメタクリロイル基を合わせて、「(メタ)アクリロイル基」とも言う。
【0061】
上記リン酸含有基は、リン酸基を含有している基であれば特に限定されず、例えばC1-6アルキレン-OP(O)(OH)(OR)(式中、Rは水素原子又はC1-3アルキルである。)であり得る。
【0062】
一の態様において、上記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、シンナモイル基、2,4-ヘキサジエノイル基、又はビニルエーテル(ビニルオキシ)基であり得る。
【0063】
好ましい態様において、上記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基又はCH2=CX1’-C(O)-(式中、X1’は、水素原子、塩素原子、フッ素原子又はフッ素により置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す)であり、好ましくはエポキシ基、グリシジル基、又は(メタ)アクリロイル基であり得る。
【0064】
別の好ましい態様において、上記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、又は(メタ)アクリロイル基、好ましくはエポキシ基、グリシジル基、又は脂環式エポキシ基、より好ましくはエポキシ基又はグリシジル基であり得る。
【0065】
好ましい態様において、R
4aは、下記式:
【化9】
[式中:
R
31は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基であり;
R
32は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
33は、各出現において、それぞれ独立して、架橋性基であり;
Y
1は、単結合、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-OC(=O)-、-NHC(=O)-、-O-、-N(R
c)-、芳香環、置換基を有する芳香環又はカルバゾリレンであり;
R
cは、有機基であり、
Y
2は、単結合又は主鎖の原子数が1~16のリンカーである。]
で表される基である
【0066】
上記式中、R31は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。上記アルキル基は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。R31は、好ましくは水素原子である。
【0067】
上記式中、R32は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素により置換されていてもよいアルキル基を表す。上記アルキル基は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。R32は、好ましくはメチル基又は水素原子であり、より好ましくは水素原子である
【0068】
上記R33は、各出現において、それぞれ独立して、架橋性基である。当該架橋性基は、上記と同意義である。
【0069】
好ましい態様において、R33は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニル基、アリル基、置換されていてもよいアクリロイル基、シンナモイル基、2,4-ヘキサジエノイル基、ビニルエーテル(ビニルオキシ)基、水酸基、オキセタニル基、イソシアネート基、カテコール基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾリル基、ハロゲン原子、又はシランカップリング基、あるいはこれらの前駆体基であり得る。
【0070】
より好ましい態様において、R33は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、シンナモイル基、2,4-ヘキサジエノイル基、又はビニルエーテル(ビニルオキシ)基であり得る。
【0071】
さらに好ましい態様において、上記架橋性基は、エポキシ基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、又は(メタ)アクリロイル基、好ましくはエポキシ基、グリシジル基、又は(メタ)アクリロイル基であり得る。
【0072】
上記式中、Y1は、単結合、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-OC(=O)-、-NHC(=O)-、-O-、-N(Rc)-、フェニレン又はカルバゾリレンである。ここでRcは有機基を表し、好ましくはアルキル基である。上記アルキル基は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。Y1に関するこれらの基は、左側が式中のCに結合し、右側がY2に結合する。
【0073】
一の態様において、Y1は、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-OC(=O)-、-NHC(=O)-、-O-、-N(Rc)-、フェニレン又はカルバゾリレンである。ここでRcは有機基を表し、好ましくはアルキル基である。
【0074】
Y1は、好ましくは-C(=O)O-、-O-、又はカルバゾリレンであり、より好ましくは-C(=O)O-又は-O-であり、さらに好ましくは-C(=O)O-である。
【0075】
上記式中、Y2は、単結合又は主鎖の原子数が1~16、好ましくは2~12、より好ましくは2~10であるリンカーを表す。ここに、上記主鎖とは、Y2中、Y1とR33を最小原子数で結ぶ部分を意味する。
【0076】
当該Y2としては、特に限定されるものではないが、例えば、
-(CH2-CH2-O)p1-(p1は、1~10の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数を表す)、
-(CHRd)p2-O-(p2は、1~40の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~6の整数、さらに好ましくは1~4の整数、さらに好ましくは2~4の整数であり、Rdは、水素、又はメチル基を表す)、
-(CH2)p3-O-(CH2)p4-(p3は、1~10の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数であり、p4は、0~10の整数、好ましくは0~6の整数、より好ましくは0~4の整数であり、一の態様において、1~10の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数を表す)、
-(CH2-CH2-O)p5-CO-NH-CH2-CH2-O-(p5は、1~10の整数を表す)、
-(CH2)p6-(p6は1~6の整数を表す)、
-(CH2)p7-O-CONH-(CH2)p8-(p7は1~8の整数、好ましくは、2又は4を表し、p8は1~6の整数、好ましくは3を表す)、
-(CH2)p9-NHC(=O)O-(CH2)p10-(p9は1~6の整数、好ましくは3を表し、p10は1~8の整数、好ましくは、2又は4を表す)、又は
-O-(但し、Y1は-O-ではない)が挙げられる。
【0077】
好ましいY2としては、-(CH2-CH2-O)p1-(p1は、1~10の整数を表す)、-(CHRd)p2-O-(p2は、1~40の整数であり、Rdは、水素、又はメチル基を表す)、は-(CH2)p3-O-(CH2)p4-(p3は、1~10の整数であり、p4は、1~10の整数を表す)又は-(CH2)p7-O-CONH-(CH2)p8-(p7は1~8の整数、好ましくは、2又は4を表し、p8は1~6の整数、好ましくは3を表す)が挙げられる。なお、これらの基は、左端が分子主鎖側(Y1側)に結合し、右端が置換基群Aより選択される官能基側(R33側)に結合する。
【0078】
R
4aは、さらに好ましくは、下記式:
【化10】
(式中、R
33は、上記と同意義であり、q2は、1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数、さらに好ましくは2~4の整数であり、q3は、1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数、さらに好ましくは1~2の整数である。)
で表される基である。
【0079】
上記R4bは、各出現においてそれぞれ独立して、架橋性基を有しない2価の有機基である。
【0080】
R4bは、好ましくは、-CHR4c-CR4dR4e-である。ここに、R4c及びR4dは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表し、R4e基は、-Y3-R4fである。ここに、Y3は上記Y1と同意義であり、R4fは、架橋性基を有しない有機基であり、後記の基R4gがリンカーを介して、又は直接Y3に結合する基である。即ち、R4fは、-リンカー-R4g、又は-R4gである。
【0081】
当該リンカーは、好ましくは、
(a)-(CH2-CH2-O)s1-(s1は、1~10の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数を表す。)、
(b)-(CHR4h)s2-O-(s2は、1~40の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~6の整数、さらに好ましくは1~4の整数、さらに好ましくは2~4の整数である繰り返し数を表す。R4hは、水素又はメチル基を表す。)、
(c)-(CH2)s3-O-(CH2)s4-(s3は、1~10の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数であり、s4は、0~10の整数、好ましくは0~6の整数、より好ましくは0~4の整数であり、一の態様において、1~10の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数を表す)、
(d)-(CH2-CH2-O)s1-CO-NH-CH2-CH2-O-(s1は、上記と同意義である。)、
(e)-(CH2)s5-(s5は1~6の整数を表す。)、又は
(f)-(CH2)s6-O-CONH-(CH2)s7-(s6は1~8の整数、好ましくは、2又は4を表す。s7は1~6の整数、好ましくは3を表す。)、又は
(g)-O-(但し、Y3は-O-ではない)
である。
【0082】
R4gは、好ましくは以下の基である。
(i)アルキル基
例:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、オクタデシル
【0083】
(ii)フッ素で置換されたアルキル基を含有する鎖状基
例:
【化11】
【0084】
(iii)単環式炭素環、二環式炭素環、三環式炭素環、及び四環式炭素環からなる群より選択される1個以上の環状部を含有する基
例:
【化12】
(iv)水素(ただし、該水素原子は、リンカーの酸素原子とは結合しない)
(v)イミダゾリウム塩を含有する基
例:
【化13】
(vi)ケイ素を含有する基
上記式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。
【0085】
上記アルキル基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~10のアルキル基、及び炭素数3~20のシクロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、R11に関しては炭素数n-ブチル基であり、R12~R17に関してはメチル基である。
【0086】
上記アリール基としては、特に限定されるものではないが、炭素数6~20のアリール基が挙げられる。当該アリール基は、2個又はそれ以上の環を含んでいてもよい。好ましいアリール基は、フェニル基である。
【0087】
上記アルキル基及びアリール基は、所望により、その分子鎖又は環中に、ヘテロ原子、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有していてもよい。
【0088】
さらに、上記アルキル基及びアリール基は、所望により、ハロゲン;1個又はそれ以上のハロゲンにより置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基、5~10員のヘテロアリール基から選択される、1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0089】
上記式中、R18は、2価の有機基を表す。
【0090】
上記R18は、好ましくは、-(CH2)r”-(式中、r”は1以上20以下の整数、好ましくは1以上10以下の整数である)であり、より好ましくは、-(CH2)r”-(式中、r”は1以上10以下の整数である)である。
【0091】
上記式中、n4は、それぞれ独立して、1以上500以下の整数である。当該n4は、好ましくは1以上200以下、より好ましくは10以上200以下である。
【0092】
R4gは、より好ましくは、水素原子(ただし、Oに結合し水酸基を形成するものを除く)、又はフッ素化されていてもよく、かつエチレン鎖又はオキシエチレン鎖を介して結合してもよいアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メトキシエチル基、イソブチル基、又はR4i-CF2-(CF2)s6-(CH2)s7-O-(CH2)2-(R4iはフッ素原子又は水素原子であり、s6は0~6の整数であり、s7は1~6の整数である)であり、さらに好ましくは、3-(ペルフルオロエチル)プロポキシエチル基[示性式:CF3-(CF2)-(CH2)3-O-(CH2)2-]である。
【0093】
上記R4中、構成単位R4aと構成単位R4bは、それぞれがブロックを形成していてもよく、ランダムに結合していてもよい。
【0094】
一の態様において、R4中、構成単位R4aと構成単位R4bは、それぞれがブロックを形成する。
【0095】
一の態様において、R4中、構成単位R4aと構成単位R4bは、ランダムに結合する。
【0096】
一の態様において、R4は、R4aである。即ち、R4は、架橋性基を有する構成単位R4aからなる。
【0097】
好ましい態様において、R4aの数(重合度)は、1~100であり、好ましくは2~70、より好ましくは2~50、さらに好ましくは3~30、さらにより好ましくは3~20、特に好ましくは5~10である。
【0098】
一の態様において、R4は、R4bである。即ち、R4は、架橋性基を有しない構成単位R4bからなる。
【0099】
好ましい態様において、R4bの数(重合度)は、1~100であり、好ましくは2~70、より好ましくは2~50、さらに好ましくは3~30、さらにより好ましくは3~20、特に好ましくは5~10である。
【0100】
上記式において、nは1~100の整数であり、好ましくは2~70の整数、より好ましくは2~50の整数、さらに好ましくは3~30の整数、さらにより好ましくは3~20の整数、特に好ましくは5~10の整数である。
【0101】
上記式(1)及び(2)において、Xaは、それぞれ独立して、2価の有機基である。
【0102】
上記式(1)及び(2)において、Xbは、それぞれ独立して、2価の有機基である。
【0103】
上記式中、-Xa-Xb-は、式(1)及び(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーにおいて、RF1又はRF2と、R4とを連結するリンカーの一部と解される。したがって、XaおよびXbは、式(1)および(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの2価の有機基であってもよい。
【0104】
一の態様において、Xaは、それぞれ独立して、下記式:
-(Q)e-(CFZ)f-(CH2)g-
で表される基である。式中、e、fおよびgは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、e、fおよびgの和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。なお、上記基は、左側がRF1又はRF2に、右側がXbに結合する。
【0105】
上記式中、Qは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NRq-(式中、Rq1は、水素原子または有機基を表す)または2価の極性基である。好ましくは、Qは、酸素原子または2価の極性基である。
【0106】
上記Qにおける「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NRb)-、および-C(O)NRq2-(これらの式中、Rq2は、水素原子または低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピルであり、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0107】
上記式中、Zは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1~3のペルフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0108】
Xaは、好ましくは、下記式:
-(O)e-(CF2)f-(CH2)g-
[式中、e、fおよびgは、上記と同意義であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である]
で表される基である。なお、これらの基は左端がRF1又はRF2に、右側がXbに結合する。
【0109】
一の態様において、Xaは、
-(O)e1-(CH2)g2-O-[(CH2)g3-O-]g4、
-(O)e1-(CF2)f2-(CH2)g2-O-[(CH2)g3-O-]g4
[式中、
e1は0または1であり、
f2、g2およびg3は、それぞれ独立して、1~10の整数であり、
g4は、0または1である]
で表される基であり得る。これらの基は左端がRF1又はRF2に、右側がXbに結合する。
【0110】
好ましい態様において、Xaは、
-(CH2)g2-O-
[式中、g2は、1~10の整数である。]
で表される基であり得る。これらの基は左端がRF1又はRF2に、右側がXbに結合する。
【0111】
上記式中、Xbは、それぞれ独立して、二価の有機基である。
【0112】
一の態様において、Xbは、下記式:
-CO-Rb3-CRb1Rb2-
[式中:
Rb1およびRb2は、それぞれ独立して、水素原子、C1-3アルキル基、フェニル基または-CNであり、
Rb3は、単結合または置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。]
で表される基であり得る。なお、かかる基は左端がXaに、右端がR4に結合する。
【0113】
上記Rb1およびRb2は、それぞれ独立して、好ましくは、C1-3アルキル基、フェニル基または-CNであり、より好ましくは、C1-3アルキル基または-CNである。C1-3アルキル基は、好ましくはメチル基またはエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0114】
一の態様において、Rb1は、C1-3アルキル基、好ましくはメチル基であり、Rb2は、水素原子または-CNである。
【0115】
上記Rb3における「置換されていてもよいC1-6アルキレン基」における置換基は、好ましくはC1-3アルキル基またはフェニル基であり、好ましくはC1-3アルキル基である。C1-3アルキル基は、好ましくはメチル基またはエチル基であり、より好ましくはメチル基である。該置換基は、1つであってもよく、または2つ以上であってもよい。
【0116】
上記Rb3におけるC1-6アルキレン基は、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC2-3アルキレン基、例えばジメチレン基であり得る。
【0117】
一の態様において、Rb3は、単結合である。
【0118】
別の態様において、Rb3は、置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、好ましくはC1-6アルキレン基である。
【0119】
上記式中、R
aは、アルキル、フェニル、-SR
a1、-OR
a2、-NR
a3
2、
【化14】
である。R
aは、いわゆるRAFT剤の一部であり得る。
【0120】
上記式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Ra5及びRa6は、それぞれ独立して、アルキル基又はフェニル基である。
【0121】
上記Ra1は、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC3-18アルキル基、さらに好ましくはC4-12アルキル基である。
【0122】
上記Ra2は、好ましくはフェニル基又はC1-20アルキル基である。該C1-20アルキル基は、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-3アルキル基である。
【0123】
上記Ra3は、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、さらにより好ましくはC1-3アルキル基である。
【0124】
上記Ra4は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0125】
上記Ra5は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0126】
上記Ra6は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0127】
上記Ra7は、水素又はハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素)である。
【0128】
一の態様において、Raは、-SRa1又は-ORa2である。
【0129】
一の態様において、(A)フルオロポリエーテル基含有ポリマーは、式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーであり得る。
【0130】
一の態様において、(A)フルオロポリエーテル基含有ポリマーは、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーであり得る。
【0131】
上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、2×102~1×105、好ましくは1×103~5×104、より好ましくは3×103~2×104であり得る。かかる範囲の数平均分子量を有することにより、溶剤への溶解性および表面処理層の接触角をより大きくすることができる。当該数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0132】
上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーの多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下、さらにより好ましくは1.5以下であり得る。多分散度を小さくすることにより、より均質な表面処理層を形成することができ、表面処理層の耐久性を向上させることができる。
【0133】
上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーは、例えば、いわゆるRAFT(Reversible addition-fragmentation chain transfer)型のラジカル重合を利用して合成することができる。
【0134】
まず、ペルフルオロポリエーテル基を有するRAFT剤を調製する。例えば、ペルフルオロポリエーテルを有する化合物(A)とRAFT骨格(-SC(=S)-)を有する化合物(B1)または(B2):
【化15】
[式中、R
a、R
F1、R
F2、X
aおよびX
bは、上記と同意義であり;
L
1およびL
2は、それぞれ、脱離部分である。]
を反応させて、ペルフルオロポリエーテル基を有する連鎖移動剤(1a)または(2a):
【化16】
[式中、R
a、R
F1、R
F2、X
aおよびX
bは、上記と同意義である。]
を得ることができる。
【0135】
上記で得られた連鎖移動剤(1a)または(2a)と、不飽和結合を有する単量体とを反応させることにより、上記式(1)または(2)で表される化合物を得ることができる。かかる反応は、いわゆるRAFT重合であり、反応条件は、RAFT重合で一般的に用いられる条件を用いることができる。
【0136】
[(B)シロキサンポリマー]
上記シロキサンポリマーは、下記式:
【化17】
[式中:
R
21は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
23は、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
24は、水素原子、C
1-6アルキル基又はアリール基であり、
R
25は、水素原子又は1価の有機基であり、
R
26は、水素原子又は1価の有機基であり、
pは、任意の整数である。]
で表されるシロキサンポリマーである。
【0137】
上記式中、R21、及びR22は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、又はアリール基である。
【0138】
上記式中、R23、及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、又はアリール基である。
【0139】
R21、R22、R23、及びR24は、同じ基であってもよく、異なる基であってもよい。好ましい態様において、R21、R22、R23、及びR24は、同じ基である。
【0140】
上記C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。また、上記C1-6アルキル基は、環状構造を含んでいてもよい。一の態様において、当該C1-6アルキル基は、直鎖である。別の態様において、当該C1-6アルキル基は、分枝鎖である。別の態様において、当該C1-6アルキル基は、C3-6環状アルキル基である。
【0141】
上記C1-6アルキル基は、好ましくはC1-4アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基又はエチル基、特に好ましくはメチル基である。
【0142】
上記アリール基は、単環であっても、多環であってもよい。
【0143】
上記アリール基は、好ましくはC5-20アリール基、より好ましくはC6-16アリール基、さらに好ましくはC6-12アリール基、さらにより好ましくはC6-10アリール基である。
【0144】
一の態様において、R21、R22、R23、及びR24は、水素原子である。
【0145】
別の態様において、R21、R22、R23、及びR24は、C1-6アルキル基、又はアリール基、好ましくはC1-6アルキル基である。
【0146】
上記R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。
【0147】
上記1価の有機基は、好ましくは、-R27-R28である。
【0148】
上記R27は、上記シロキサンポリマーのシロキサン骨格と、末端官能基であるR28とを連結するリンカーの一部と解される。したがって、R27は、上記シロキサンポリマーが安定に存在し得るものであれば、いずれの2価の有機基であってもよい。
【0149】
上記R27は、2価の有機基、酸素原子又は単結合である。
【0150】
一の態様において、上記2価の有機基は、
-(R51)q5-(R52)q6-(R53)q7-
[式中:
R51及びR53は、それぞれ独立して、-(CH2)r1-またはo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、好ましくは-(CH2)r1-であり、
r1は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
R52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-および-(CH2)r2-からなる群から選択される基であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)または炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
r2は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
q5は、0または1であり、
q6は、0~10の整数、好ましくは0~5の整数、より好ましくは0~3の整数であり、
q7は、0または1であり、
ただし、q5、q6及びq7の少なくとも1つは1である。]
で表される2価の有機基が挙げられる。
【0151】
上記R27は、好ましくは、単結合、酸素結合、式:
-(R51)q5-(R61)q6-(R53)q7-
[式中:
R51及びR53は、それぞれ独立して、-(CH2)r1-またはo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CH2)r1-であり、
r1は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
R61は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、-C(O)O-、-CONR54-、-O-CONR54-、及び-NR54-からなる群から選択される基、好ましくは-O-であり、
q5は、0または1であり、
q6は、0~10の整数、好ましくは0~5の整数、より好ましくは0~3の整数であり、
q7は、0または1であり、
ただし、q5、q6及びq7の少なくとも1つは1である。]
で表される基である。
【0152】
上記R28は、水素原子、-OH、-CO-CH=CH2、-CO-C(CH3)=CH2、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ビニル基、アルコキシ基、又はチオール基である。
【0153】
好ましい態様において、上記R28は、水素原子、-OH、-CO-CH=CH2、又は-CO-C(CH3)=CH2である。
【0154】
一の態様において、R25及びR26は、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基である。
【0155】
好ましい態様において、
R25はC1-6アルキル基であり
R26は、-R27-R28であり、
R27は、2価の有機基、酸素原子又は単結合であり、
R28は、水素原子、-OH、-CO-CH=CH2、-CO-C(CH3)=CH2、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ビニル基、アルコキシ基、又はチオール基である。
【0156】
他の好ましい態様において、
R25およびR26は、-R27-R28であり、
R27は、2価の有機基、酸素原子又は単結合であり、
R28は、水素原子、-OH、-CO-CH=CH2、-CO-C(CH3)=CH2、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ビニル基、アルコキシ基、又はチオール基である。
【0157】
上記シロキサンポリマーの数平均分子量は、350超10,000未満、好ましくは800~8,000、より好ましくは900~7,000である。上記シロキサンポリマーの数平均分子量を、上記の範囲とすることにより、本開示の組成物により得られる表面処理層の表面滑り性及び外観が向上する。
【0158】
上記シロキサンポリマーの含有量は、前記フルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して0.1~300質量部、好ましくは1~300質量部、より好ましくは1~250質量部、さらにより好ましくは1~200質量部、特に好ましくは1~150質量部である。
【0159】
[他の成分]
本開示の組成物は、さらに含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、まとめて「含フッ素オイル」と言う)を含有していてもよい。また、本開示の組成物は、溶媒、活性エネルギー線ラジカル硬化開始剤、熱酸発生剤、活性エネルギー線カチオン硬化開始剤等の他の成分を含み得る。
【0160】
上記含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf5-(OC4F8)a’-(OC3F6)b’-(OC2F4)c’-(OCF2)d’-Rf6 ・・・(3)
式中、Rf5は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rf6は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1-16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子又は水素原子を表し、Rf5及びRf6は、より好ましくは、それぞれ独立して、C1-3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’及びd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’及びd’の和は少なくとも1、好ましくは1~300、より好ましくは20~300である。添字a’、b’、c’又はd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-及び(OCF2CF(C2F5))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2CF2CF2)-である。-(OC3F6)-は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-及び(OCF2CF(CF3))-のいずれであってもよく、好ましくは-(OCF2CF2CF2)-である。-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-及び(OCF(CF3))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2)-である。
【0161】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)及び(3b)のいずれかで示される化合物(1種又は2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf5-(OCF2CF2CF2)b”-Rf6 ・・・(3a)
Rf5-(OCF2CF2CF2CF2)a”-(OCF2CF2CF2)b”-(OCF2CF2)c”-(OCF2)d”-Rf6 ・・・(3b)
これら式中、Rf5及びRf6は上記の通りであり;式(3a)において、b”は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a”及びb”は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c”及びd”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a”、b”、c”、d”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0162】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf3-F(式中、Rf3はC5-16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。
【0163】
上記含フッ素オイルは、500~10000の平均分子量を有していてよい。含フッ素オイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0164】
含フッ素オイルは、本開示の組成物に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~5質量%含まれ得る。一の態様において、本開示の組成物は、含フッ素オイルを実質的に含まない。含フッ素オイルを実質的に含まないとは、含フッ素オイルを全く含まない、又は極微量の含フッ素オイルを含んでいてもよいことを意味する。
【0165】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を大きくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、特に真空蒸着法により表面処理層を形成する場合において、より優れた摩耗耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0166】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を小さくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、かかる化合物から得られる表面処理層の透明性の低下を抑制しつつ、高い摩耗耐久性及び高い表面滑り性を有する硬化物を形成できる。
【0167】
含フッ素オイルは、本開示の組成物によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0168】
上記溶媒としては、フッ素含有有機溶媒及びフッ素非含有有機溶媒を用いることができる。
【0169】
上記フッ素含有有機溶媒としては、例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロジメチルシクロヘキサン、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロアルキルエタノール、ペルフルオロベンゼン、ペルフルオロトルエン、ペルフルオロアルキルアミン(フロリナート(商品名)等)、ペルフルオロアルキルエーテル、ペルフルオロブチルテトラヒドロフラン、ポリフルオロ脂肪族炭化水素(アサヒクリンAC6000(商品名))、ハイドロクロロフルオロカーボン(アサヒクリンAK-225(商品名)等)、ハイドロフルオロエーテル(ノベック(商品名)、HFE-7100(商品名)等)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、含フッ素アルコール、ペルフルオロアルキルブロミド、ペルフルオロアルキルヨージド、ペルフルオロポリエーテル(クライトックス(商品名)、デムナム(商品名)、フォンブリン(商品名)等)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン、メタクリル酸2-(ペルフルオロアルキル)エチル、アクリル酸2-(ペルフルオロアルキル)エチル、ペルフルオロアルキルエチレン、フロン134a、及びヘキサフルオロプロペンオリゴマーが挙げられる。
【0170】
また、上記フッ素非含有有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、二硫化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ダイグライム、トリグライム、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、2-ブタノン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、メタノール、及びジアセトンアルコールが挙げられる。
【0171】
上記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0172】
上記溶媒は、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマー、及びシロキサンポリマー、ならびに、存在する場合、下記する含フッ素オイル(C)の合計100質量部に対して、5~100,000質量部、好ましくは5~50,000質量部で含まれる。
【0173】
上記活性エネルギー線ラジカル硬化開始剤としては、例えば、350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、電子線、X線、γ線などが照射されることによって初めてラジカルを発生し、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーの硬化性部位(例えば、炭素-炭素二重結合)の硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルを発生させるものを使用する。
【0174】
上記活性エネルギー線ラジカル硬化開始剤は、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマー中の硬化性部位の種類、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択されるが、一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の硬化性部位(炭素-炭素二重結合)を有する上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーを硬化させる開始剤としては、例えば、以下のものが例示できる。
【0175】
・アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパンー1-オンなど
【0176】
・ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
【0177】
・ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ-プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなど
【0178】
・チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
【0179】
・その他
ベンジル、α-アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3-ケトクマリン、2-エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
【0180】
これらの活性エネルギー線硬化開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0181】
上記活性エネルギー線硬化開始剤は、特に限定されるものではないが、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマー及びシロキサンポリマー、ならびに、存在する場合、含フッ素オイルの合計100質量部に対して、0.01~1,000質量部、好ましくは0.1~500質量部で含まれる。
【0182】
上記熱酸発生剤を用いることにより、熱によりカチオン種を含む化合物の分解反応が起こり、硬化性部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの硬化性部位(例えば、環状エーテル)の硬化(架橋反応)を開始させる。
【0183】
上記熱酸発生剤としては、例えば、下記一般式(a):
(R1
aR2
bR3
cR4
dZ)+m(AXn)-m (a)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計はZの価数に等しい。カチオン(R1
aR2
bR3
cR4
dZ)+mはオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
【0184】
上記一般式(a)の陰イオン(AXn)-mの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4
-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6
-)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6
-)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6
-)等が挙げられる。更に一般式AXn(OH)-で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4
-)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3
-)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3
-)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0185】
上記熱酸発生剤の具体的な商品としては、例えば、AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)等のジアゾニウム塩タイプ;UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、Photoinitiator 2074(ローヌプーラン社製)、WPIシリーズ(和光純薬社製)等のヨードニウム塩タイプ;CYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サトーマー社製)、オプトマーSPシリーズ・オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等のスルホニウム塩タイプ等が挙げられる。
【0186】
これらの熱酸発生剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0187】
上記熱酸発生剤は、特に限定されるものではないが、フルオロポリエーテル基含有ポリマー及びシロキサンポリマー、ならびに、存在する場合、含フッ素オイルの合計100質量部に対して、0.01~1,000質量部、好ましくは0.1~500質量部で含まれる。
【0188】
上記活性エネルギー線カチオン硬化開始剤を用いることにより、光によりカチオン種を含む化合物が励起されて光分解反応が起こり、フルオロポリエーテル基含有ポリマーの硬化性部位(例えば、環状エーテル)の硬化(架橋反応)を開始させる。
【0189】
上記活性エネルギー線カチオン硬化開始剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe-ヘキサフルオロホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が好適である。
【0190】
上記活性エネルギー線カチオン硬化開始剤の具体的な商品としては、例えば、UVI-6950、UVI-6970、UVI-6974、UVI-6990(ユニオンカーバイド社製);アデカオプトマーSP-150、SP-151、SP-170、SP-172(ADEKA社製);Irgacure250(チバ・ジャパン社製);CI-2481、CI-2624、CI-2639、CI-2064(日本曹達社製);CD-1010、CD-1011、CD-1012(サートマー社製);DTS-102、DTS-103、NAT-103、NDS-103、TPS-103、MDS-103、MPI-103、BBI-103(みどり化学社製);PCI-061T、PCl-062T、PCl-020T、PCl-022T(日本化薬社製);CPl-100P、CPT-101A、CPI-200K(サンアプロ社製);サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドST-110L、サンエイドSI-145、サンエイドSI-150、サンエイドSI-160、サンエイドSI-180L(三新化学工業社製);WPAGシリーズ(和光純薬社製)等のジアゾニウム塩タイプ、ヨードニウム塩タイプ、スルホニウム塩タイプが好ましい。__
【0191】
これらの活性エネルギー線カチオン硬化開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0192】
上記活性エネルギー線ラジカル硬化開始剤は、特に限定されるものではないが、フルオロポリエーテル基含有ポリマー及びシロキサンポリマー、ならびに、存在する場合、含フッ素オイルの合計100質量部に対して、0.01~1,000質量部、好ましくは0.1~500質量部で含まれる。
【0193】
[表面処理剤]
本開示の組成物は、表面処理剤として有用である。従って、本開示は、本開示の組成物を含む表面処理剤を提供する。
【0194】
好ましい態様において、本開示の組成物は、表面処理剤である。
【0195】
[硬化性組成物]
本開示は、上記した本開示の組成物、表面処理剤、及び/又はマトリックスを形成する組成物を含む硬化性組成物を提供する。
【0196】
[マトリックスを形成する組成物]
上記マトリックスを形成する組成物とは、少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を有する化合物、例えば、特に限定されるものではないが、単官能及び/又は多官能アクリレート及びメタクリレート(以下、アクリレート及びメタクリレートを合わせて、「(メタ)アクリレート」とも言う)、単官能及び/又は多官能ウレタン(メタ)アクリレート、単官能及び/又は多官能エポキシ(メタ)アクリレートである化合物を含有する組成物を意味する。当該マトリックスを形成する組成物としては、特に限定されるものではないが、一般的にハードコーティング剤又は反射防止剤とされる組成物であり、例えば多官能性(メタ)アクリレートを含むハードコーティング剤又は含フッ素(メタ)アクリレートを含む反射防止剤が挙げられる。当該ハードコーティング剤は、例えば、ビームセット502H、504H、505A-6、550B、575CB、577、1402(商品名)として荒川化学工業株式会社から、EBECRYL40(商品名)としてダイセルサイテックから、HR300系(商品名)として横浜ゴムから市販されている。上記反射防止剤は、例えばオプツールAR-110(商品名)としてダイキン工業株式会社から市販されている。
【0197】
上記マトリックスを形成する組成物として単官能及び/又は多官能エポキシである化合物を含有する組成物も好ましい。例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’-ビス(4-グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,5-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキサン)-1,3-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2-シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ化合物を使用できる。また、前述と重なるが、水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、又はイソシアヌレート環を含有するエポキシ樹脂あるいは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、前記各種エポキシ樹脂の芳香環を水素添加した水添型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を使用できる。
【0198】
一の態様において、上記硬化性組成物は、フルオロポリエーテル基含有ポリマーとシロキサンポリマーを、マトリックス形成組成物の固形分に対して、0.01~20質量%、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~10質量%含有する。
【0199】
本開示の硬化性組成物は、さらに、酸化防止剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、シリカなどの無機微粒子、アルミニウムペースト、タルク、ガラスフリット、金属粉などの充填剤、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェノチアジン(PTZ)などの重合禁止剤などを含んでいてもよい。
【0200】
[物品]
次に、本開示の物品について説明する。
【0201】
本開示は、基材と、該基材の表面に本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物により形成された層(表面処理層)とを含む物品を提供する。この物品は、例えば以下のようにして製造できる。
【0202】
まず、基材を準備する。本開示に使用可能な基材は、例えばガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、モディファイド(透明)ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属(アルミニウム、銅、銀、鉄等の金属単体又は合金等の複合体であってよい)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。
【0203】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、位相差フィルム、有機EL表示モジュール及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0204】
基材の形状は特に限定されない。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0205】
次に、かかる基材の表面に、上記の本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物の膜を形成し、この膜を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物から表面処理層を形成する。
【0206】
本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物の膜形成は、上記の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法を使用できる。
【0207】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、スクリーン印刷及び類似の方法が挙げられる。
【0208】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。当該溶媒としては、上記したフッ素含有有機溶媒及びフッ素非含有有機溶媒を用いることができる。本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5~12のペルフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、ペルフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)、ペルフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)、ペルフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)、ペルフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)などのアルキルペルフルオロアルキルエーテル(ペルフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい))、ハイドロクロロフルオロカーボン(アサヒクリンAK-225(商品名)等)、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテル、グリコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤が好ましく、ペルフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)及び/又はペルフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコールが特に好ましい。
【0209】
次に、膜を後処理する。この後処理は、特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線、例えば、350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、電子線、X線、γ線などを照射することにより行われる。もしくは所定時間加熱することにより行われる。かかる後処理を施すことにより、フルオロポリエーテル基含有ポリマーの硬化性部位、ならびに存在する場合にはマトリックスを形成する組成物の硬化性部位の硬化を開始させ、これらの化合物間、また、これらの化合物と基材間に結合が形成される。
【0210】
上記のようにして、基材の表面に、本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物に由来する表面処理層が形成され、本開示の物品が製造される。これにより得られる表面処理層は、高い表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)と高い摩擦耐久性の双方を有する。また、この表面処理層は、高い摩擦耐久性及び表面滑り性に加えて、使用する組成物、表面処理剤又は硬化性組成物の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0211】
本発明の表面処理組成物から形成される膜の動摩擦係数は、好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.80以下であり、さらに好ましくは0.77以下である。動摩擦係数を低くすることにより、より良好な触感を有する塗膜とすることができる。
【0212】
上記動摩擦係数は、摩擦測定機(「トライボマスターTL201Ts、株式会社トリニティーラボ製)等を用いて、摩擦子として触覚接触子を用い、荷重20gf、走査速度10mm/secにて測定することができる。
【0213】
本発明の表面処理組成物から形成される膜の水の静的接触角の範囲は、好ましくは111度以上、より好ましくは112度以上、さらに好ましくは113度以上である。接触角を高くすることにより、より防汚性に優れる塗膜とすることができる。
【0214】
上記接触角は、接触角計(協和界面科学社製、「DropMaster」)等を用いて、着滴量2μLにて測定することができる。
【0215】
本開示はさらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0216】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、フィルム又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0217】
一の態様において、本開示によって得られる表面処理層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、飛散防止フィルム、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。
【0218】
一の態様において、本開示によって得られる表面処理層を有する物品としては、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)カバー部材、センサー部材、インストルメントパネルカバー部材、自動車内装部材等、特に自動車用のこれらの部材が挙げられる。
【0219】
表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、表面処理層の厚さは、0.1~30μm、好ましくは0.5~20μmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性及び防汚性の点から好ましい。
【0220】
以上、本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物を使用して得られる物品について詳述した。なお、本開示の組成物、表面処理剤又は硬化性組成物の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例】
【0221】
以下、本開示について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示し、ペルフルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位((OCF2CF2CF2)、(OCF2CF2)、(OCF2)等)の存在順序は任意である。
【0222】
1.ペルフルオロポリエーテル含有連鎖移動剤の合成
合成例1
連鎖移動剤(A-1)の合成
フラスコに2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.505g、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(東京化成工業株式会社製)0.019g、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)(東京化成工業株式会社製)0.293g、及びCF3CF2CF2(OCF2CF2CF2)nOCF2CF2CH2OH(nの平均値≒25)で表されるペルフルオロポリエーテルを含有するアルコール(ダイキン工業株式会社製)5.0gをとり、アサヒクリンAK-225(AGC株式会社製)13mLを加えて室温で撹拌し、反応を行った。一晩撹拌後、反応液を、飽和重曹水、及び食塩水で洗浄した。有機層を分離して濃縮し、メタノール中に滴下して、黄色油状の目的物(A-1)4.56gを得た。
【0223】
2.エポキシ基を有するPFPEブロックポリマーの合成
合成例2
(1)エポキシ基を有するPFPEブロックポリマー(P-1)の合成
反応容器内に連鎖移動剤(A-1)1.0g、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)(三菱ケミカル株式会社製)0.23g、及びN,N’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(富士フイルム和光純薬株式会社製)12mgを加え、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業株式会社製)2.9mLに溶解した。75℃で17時間加熱し、反応液をヘキサンに滴下してブロックポリマー(P-1)を沈殿させて回収した。NMR測定より4HBAGEの重合度は5と算出された。
【0224】
合成例3
(2)エポキシ基を有するPFPEブロックポリマー(P-2)の合成
合成例2と同様にして、4HBAGEの仕込み量を0.46gに変更することにより、4HBAGEの重合度10のブロックポリマー(P-2)を合成した。
【0225】
3.(メタ)アクリル基を有するPFPEブロックポリマーの合成
合成例4
(1)水酸基を有するPFPEブロックポリマー(P-3)の合成
反応容器内に(A-1)1.3g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(東京化成工業株式会社製)0.18g、及びAIBN15.5mgを加え、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2.1mLに溶解した。70℃で22.5時間加熱し重合させ、ブロックポリマー(P-3)の溶液を得た。NMR測定よりHEAの重合度は5と算出された。
【0226】
合成例5
(2)アクリル基を有するPFPEブロックポリマー(P-4)の合成
(1)の反応溶液に、ポリマー(P-3)中HEAユニットに対して1.1当量のカレンズAOI(昭和電工株式会社製)、及び0.01当量のジブチルスズジラウレート(DBTDL)(東京化成工業株式会社製)を加え、40℃で2時間撹拌した。NMR測定により、水酸基が100%反応していることを確認したのち反応液をメタノールに滴下してアクリル基を有するブロックポリマー(P-4)を沈殿させ、回収した。
【0227】
合成例6
(3)メタクリル基を有するPFPEブロックポリマー(P-5)の合成
カレンズAOIをカレンズMOI(昭和電工社製)に変更したこと以外は、合成例5の(2)と同様にして、メタクリル基を有するブロックポリマー(P-5)を合成した。
【0228】
比較合成例1
4.アクリル基を有するPFPE化合物(P-6)の合成
滴下ロート、コンデンサー、温度計、撹拌装置を装着した1Lの4口フラスコにスミジュール(登録商標)N3300(住化バイエルウレタン株式会社製、NCO基含有率21.8%、36.6g)を、アサヒクリンAK-225(219.4g)に溶解させ、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社製、0.30g)を加え、窒素気流下、40℃で撹拌しながら、平均組成:CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)14CF2CF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルを含有するアルコール(60.0g)をアサヒクリンAK-225(60.0g)に溶解した溶液を滴下し、撹拌した。HEA(19.6g)を滴下し、撹拌した。IRにてNCOの吸収が完全に消失したことを確認した。ジブチルヒドロキシトルエン0.05gを加え、溶剤を完全に除去し、アクリル基を有するPFPE化合物(P-6)を合成した。
【0229】
合成例7
5.エポキシ基を有するPFPEブロックポリマー(P-7)の合成
反応容器内に連鎖移動剤(A-1)1.0g、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)(三菱ケミカル株式会社製)0.20g、n-ブチルアクリレート(東京化成工業株式会社製)0.10g及びN,N’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(富士フイルム和光純薬株式会社製)12mgを加え、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業株式会社製)3.1mLに溶解した。75℃で20時間加熱し、反応液をヘキサンに滴下してブロックポリマー(P-7)を沈殿させて回収した。NMR測定よりブロックポリマー1分子中に4HBAGE単位が4つ、n-ブチルアクリレート単位が3つ導入されていることを確認した。
【0230】
5.塗液調製・塗膜作成
(1)エポキシ系コーティング
マトリックスを形成するエポキシ化合物としてセロキサイド2021P(株式会社ダイセル製)をMIBKに溶解し、その溶液に合成例2、及び3で合成したPFPEブロックポリマー(P-1)、(P-2)および(P-7)をエポキシ化合物固形分に対して、それぞれ固形分濃度換算で1%になるように、さらにシリコーン化合物(S-1)~(S-9)をエポキシ化合物固形分に対して、それぞれ固形分濃度換算で下記表1に示す組み合わせ及び添加量(対マトリックス形成化合物)で添加し、50質量%のエポキシ化合物溶液を調製した(実施例1~9、18~21、比較例4~7)。また、PFPEブロックポリマーを添加せずシリコーン化合物(S-2)のみ添加した溶液(比較例1)、シリコーン化合物を添加せずPFPEブロックポリマー(P-1)又は(P-2)のみ添加した溶液(比較例2及び3)も調製した。さらに熱酸発生剤であるサンエイドSI-60L(三新化学工業株式会社製)をエポキシ化合物固形分に対して、3質量%添加してコーティング剤を得た。PET基板にコーティング剤をバーコーターで塗装し、90℃、2時間の条件で加熱し、硬化被膜を得た。
【0231】
(2)アクリル系コーティング
マトリックスを形成するアクリル化合物を含む組成物としてビームセット575CB(荒川化学工業社製)をMIBKに溶解し、その溶液に合成例5、及び6で合成したPFPEブロックポリマー(P-4)及び(P-5)を、ビームセット575CBの樹脂固形分に対して、それぞれ固形分濃度換算で1%になるように、さらにシリコーン化合物(S-1)、(S-4)及び(S-6)をビームセット575CBの樹脂固形分に対して、それぞれ固形分濃度換算で下記表2に示す組み合わせ及び添加量(対マトリックス形成化合物)で添加し、50質量%のコーティング組成物を得た(実施例10~17、比較例10、11、13、及び14)。また、PFPEブロックポリマーを添加せずシリコーン化合物(S-4)のみ添加したコーティング剤(比較例8)、シリコーン化合物を添加せずPFPEブロックポリマー(P-4)又は(P-5)のみ添加したコーティング剤(比較例9及び12)、およびPFPEブロックポリマーに替えて比較合成例1で合成したアクリル基を有するPFPE化合物(P-6)を添加したコーティング剤(比較例15及び16)も調製した。PET基板に前記のコーティング組成物をバーコーターで塗装し、70℃、10分間の条件で乾燥後、紫外線照射して硬化被膜を得た。紫外線照射はベルトコンベア式の紫外線照射装置を用い、照射量は600mJ/cm2とした。
【0232】
シリコーン化合物
S-1:FM-0411(JNC株式会社製、片末端OHポリジメチルシロキサン、数平均分子量1,000)
S-2:FM-0421(JNC株式会社製、片末端OHポリジメチルシロキサン、数平均分子量5,000)
S-3:FM-0425(JNC株式会社製、片末端OHポリジメチルシロキサン、数平均分子量10,000)
S-4:KF-2012(信越化学工業株式会社製、片末端メタクリレートポリジメチルシロキサン、数平均分子量4,600)
S-5:KF-96-2cs(信越化学工業株式会社製、末端無変性ポリジメチルシロキサン数平均分子量350)
S-6:KF-96-100cs(信越化学工業株式会社製、末端無変性ポリジメチルシロキサン数平均分子量6,000)
S-7:X-22-173DX(信越化学工業株式会社製、片末端エポキシポリジメチルシロキサン、数平均分子量4,600)
S-8:X-22-163B(信越化学工業株式会社製、両末端エポキシポリジメチルシロキサン、数平均分子量3,600)
S-9:DMS-A15(Gelest社製、両末端アミンポリジメチルシロキサン、数平均分子量3,000)
【0233】
【0234】
【0235】
<評価>
上記の実施例及び比較例について、下記の通り、相溶性、塗膜外観、接触角、及び表面滑り性を評価した。結果を下記表3(エポキシ系コーティング)及び表4(アクリル系コーティング)に示す。
【0236】
6.相溶性評価
上記5で調製した塗液について、溶液状態を目視で確認した。評価基準は以下の通りとした。
G:透明かつ均一に溶解した。
NG:濁り又は油滴の分離が認められる。
【0237】
7.塗膜外観
上記5で作製した硬化被膜について目視観察した。評価基準は以下の通りとした。
G:ムラがなく平滑である。
NG:ムラ、ハジキが認められる。
【0238】
8.接触角評価
上記5で作製した硬化被膜について、水の静的接触角を接触角計(協和界面科学社製、「DropMaster」)を用いて、2μLの液量で測定した。塗膜外観NGのものに関しては測定を行わなかった。
【0239】
9.表面滑り性評価
上記5で作製した硬化被膜について摩擦測定機(「トライボマスターTL201Ts、株式会社トリニティーラボ製)を用いて、摩擦子として触覚接触子を用いて、荷重20gf、走査速度10mm/secにて静止摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。塗膜外観NGのものに関しては測定を行わなかった。
【0240】
【0241】
【0242】
以上のように、本発明の範囲に含まれるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(P-1~P-5、P-7)とシロキサンポリマー(S-1、S-2、S-4、S-6~S-9)を含む組成物は、相溶性が高く、塗膜外観が良好で、113度以上の大きな対水接触角と高い滑り性を両立することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本開示の表面処理剤は、種々多様な基材、特に透過性が求められる光学部材の表面に、表面処理層を形成するために好適に利用され得る。