IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-情報処理装置及び情報処理方法 図1
  • 特許-情報処理装置及び情報処理方法 図2
  • 特許-情報処理装置及び情報処理方法 図3
  • 特許-情報処理装置及び情報処理方法 図4
  • 特許-情報処理装置及び情報処理方法 図5
  • 特許-情報処理装置及び情報処理方法 図6
  • 特許-情報処理装置及び情報処理方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/067 20060101AFI20240124BHJP
   G06N 3/044 20230101ALI20240124BHJP
【FI】
G06N3/067
G06N3/044 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022534539
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2020026580
(87)【国際公開番号】W WO2022009314
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河口 研一
【審査官】福西 章人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180701(JP,A)
【文献】特開平6-243117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0009548(US,A1)
【文献】KATUMBA, Andrew et al.,A Neuromorphic Silicon Photonics Nonlinear Equalizer For Optical Communications With Intensity Modulation and Direct Detection,Journal of Lightwave Technology,Volume: 37, Issue: 10,2019年02月20日,pp.2232-2239,インターネット:<URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8645644>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高周波信号を第1の電波に変換して放射する入力部と、
受信した第2の電波を第2の高周波信号に変換する出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に設けられ、前記第1の電波に対して非線形応答を行うことで前記第1の電波を変調させる複数の半導体素子を有し、前記第1の電波に対する変調によって得られる前記第2の電波を出力するリザバー部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の半導体素子のそれぞれは、1次元半導体または2次元層状半導体である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記1次元半導体はナノワイヤダイオードである、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記リザバー部において、前記複数の半導体素子が疎に配置される箇所と、密に配置される箇所とが混在する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記入力部または前記出力部は、1または複数のボウタイアンテナを有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記第2の高周波信号を直流信号に変換し、変換した直流信号に重み付けを行う、請求項1乃至5の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
教師データに基づいて、前記直流信号に対する重み付けの大きさを調整する学習部を有し、重み付けされた前記直流信号は、前記入力部において前記第1の高周波信号に足しこまれる、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
入力部が、第1の高周波信号を第1の電波に変換して放射し、
前記第1の電波に対して非線形応答を行うことで前記第1の電波を変調させる複数の半導体素子を有するリザバー部が、前記第1の電波に対する変調によって得られる第2の電波を出力し、
出力部が、受信した前記第2の電波を第2の高周波信号に変換する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AI(Artificial Intelligence)向けのコンピューティングシステムの1つとして、RNN(Recurrent Neural Network)の一種であるリザバーコンピューティングシステムが知られている(たとえば、特許文献1)。リザバーコンピューティングシステムには、リザバーと呼ばれる非線形要素からなるネットワーク型デバイスが含まれる。
【0003】
従来、リザバーをCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)デバイスにより実現する手法があった。一方、カーボンナノチューブのランダムネットワークを利用してリザバーを実現することが提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、従来、ニューラルネットワークにおいて各ニューロン間の信号の授受を電波によって行う技術があった(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-180701号公報
【文献】特開平6-243117号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Hirofumi Tanaka et al., “A molecular neuromorphic network device consisting of single-walled carbon nanotubes complexed with polyoxometalate”, Nature Communications volume 9, Article number: 2693, 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リザバーコンピューティングシステムでは、装置の集積性を向上させることで、リザバーのランダムネットワークの大規模化が容易になるなど、性能を向上させることができる。しかし、リザバーをCMOSデバイスにより実現する場合、部品点数の増加や配線の複雑化により集積性の向上が妨げられる。また、リザバーをカーボンナノチューブにより実現する従来の手法は、カーボンナノチューブを導電性の配線として機能させるために、カーボンナノチューブ同士を電気的に接続させることになり、集積性を向上させることが困難であり、多端子入力化やランダムネットワークの大規模化が難しい。
【0008】
1つの側面では、本発明は、装置の集積性を向上可能な、リザバー部を含む情報処理装置及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施態様では、第1の高周波信号を第1の電波に変換して放射する入力部と、受信した第2の電波を第2の高周波信号に変換する出力部と、前記入力部と前記出力部との間に設けられ、前記第1の電波に対して非線形応答を行うことで前記第1の電波を変調させる複数の半導体素子を有し、前記第1の電波に対する変調によって得られる前記第2の電波を出力するリザバー部と、を有する情報処理装置が提供される。
【0010】
また、1つの実施態様では情報処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面では、本発明は、リザバー部を含む情報処理装置の集積性を向上できる。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態の情報処理装置の一例を示す図である。
図2】第2の実施の形態の情報処理装置の一例を示す図である。
図3】送信アンテナ部、リザバー部及び受信アンテナ部の一例を示す図である。
図4】リザバー部に配置される半導体素子に粗密が生じている例を示す図である。
図5】ナノワイヤダイオードを用いたリザバー部の一例を示す図である。
図6】重み付け部と学習部の一例を示す図である。
図7】第2の実施の形態の情報処理装置の演算処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の情報処理装置の一例を示す図である。
【0014】
第1の実施の形態の情報処理装置10は、リザバーコンピュータとして機能するものであり、入力部11、リザバー部12、出力部13を有する。
入力部11は、高周波信号を電波に変換して放射する。高周波信号は、たとえば、マイクロ波やテラヘルツ波の信号である。入力部11は、電波に変換する高周波信号の数に応じて、1または複数のアンテナを有し、アンテナにより高周波信号を電波に変換する。なお、高周波信号は、たとえば、入力信号の値に応じた振幅となっている。入力信号は、演算対象の問題に応じた信号であり、たとえば、1または0の値であってもよいし、サイン波などの信号であってもよい。
【0015】
リザバー部12は、入力部11と出力部13との間に設けられ、入力部11が放射した電波を変調させた電波を出力する。リザバー部12は、入力部11が放射した電波に対して非線形応答を行うことでその電波を変調させる複数の半導体素子を有する。
【0016】
非線形応答を行う複数の半導体素子のそれぞれは、たとえば、1次元半導体または2次元層状半導体である。
1次元半導体として、ナノワイヤ(たとえば、InAs(インジウム砒素)半導体ナノワイヤ)を用いることができる。また、InAs半導体ナノワイヤよりも強い非線形性を示すp-GaAs(ガリウム砒素)/n-InAsなどのpnヘテロナノワイヤ(ナノワイヤダイオードとも呼ばれる)を、1次元半導体として用いてもよい。また、1次元半導体として、カーボンナノチューブを用いることもできる。
【0017】
2次元層状半導体として、たとえば、グラフェンナノリボンなどがある。
図1には、複数の1次元半導体(1次元半導体12a,12bなど)をリザバー部12の複数の半導体素子として用いた例が示されている。
【0018】
出力部13は、リザバー部12が出力した電波(変調によって得られた電波)を受信し、受信した電波を高周波信号に変換する。たとえば、出力部13は、出力する高周波信号の信号数に応じて、1または複数のアンテナを有し、アンテナにより、受信した電波を高周波信号に変換する。出力部13は、高周波信号の振幅に基づいた演算結果を出力する。たとえば、出力部13は、複数のアンテナによって得られた複数の高周波信号を直流信号に変換するとともに、各直流信号に対して学習によって得られた重み値による重み付けを行い、それらを足し合わせた値を情報処理装置10の演算結果として出力する。演算結果は、たとえば、演算対象が何かを推論する問題である場合には推論結果、何かを分類する問題である場合には分類結果である。
【0019】
上記のような情報処理装置10を用いることで、ニューロン間の重み値(結合係数とも呼ばれる)を固定値としたニューラルネットワークとして機能するリザバー部12内の信号処理が、空間を伝搬する電波によって行われることになる。つまり、高周波信号が入力部11により電波に変換され、その変換された電波は、リザバー部12の複数の半導体素子による非線形応答を受けて変調され、出力部13により高周波信号に戻される。このような情報処理装置10は、配線によって接続されたリザバーコンピューティングデバイスと等価となるが、リザバー部12に配線が不要となるため、簡単な工程にて集積性を向上できる。このため、ランダムネットワークの大規模化が容易になるなど、リザバーコンピュータの性能向上が期待できる。
【0020】
また、複数の半導体素子のサイズ(たとえば、1次元半導体の長軸方向の長さ)を互いに異ならせてもよいし(製造ばらつきを利用してもよい)、リザバー部12において半導体素子を疎に配置する箇所と密に配置する箇所を設けてもよい。これにより、ランダムネットワークの多様性が高まり、より高性能なリザバーコンピュータが実現できる。
【0021】
また、半導体素子として1次元半導体を用いることで、半導体素子自体のアンテナ効果により、ランダムネットワークの各ノードとなる半導体素子と伝搬電波との間に十分な相互作用が生じることで、ネットワーク状素子を用いた場合と同様な信号演算をリザバー部12の内部で行わせることができる。
【0022】
なお、リザバーコンピューティングではリザバー層の出力信号に対する重み値を調整することで学習が行われる。上記の情報処理装置10においても、リザバー部12が出力する電波から得られる高周波信号を変換した直流信号に対する重み値を調整することで、学習が可能である。学習を実行する構成例については後述する。
【0023】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態の情報処理装置の一例を示す図である。
第2の実施の形態の情報処理装置20は、入力部21、リザバー部22、出力部23、学習部24を有する。
【0024】
入力部21は、高周波電源21a1,21a2,…,21an、乗算器21b1,21b2,…,21bn、送信アンテナ部21cを有する。
高周波電源21a1~21anは、高周波信号を出力する。高周波電源21a1~21anのそれぞれが出力する高周波信号の周波数は同一である。なお、高周波電源21a1~21anは1つであってもよく、1つの高周波電源から乗算器21b1~21bnに共通の高周波信号を供給してもよい。
【0025】
乗算器21b1~21bnのそれぞれは、入力される高周波信号と、入力信号IN1,IN2,…,INnの何れかとの積を出力する。これによって乗算器21b1~21bnが出力するn個の高周波信号の強度(振幅)は、入力信号IN1~INnを反映したものとなる。
【0026】
送信アンテナ部21cは、乗算器21b1~21bnが出力する高周波信号を電波に変換して放射するアンテナを有する。
なお、アンテナは複数あってもよいが、入力信号IN1~INnの数(乗算器21b1~21bnの数)と一致していなくてもよい。たとえば、乗算器21b1~21bnのうちのある1つの乗算器が出力する高周波信号が複数のアンテナに入力されるようにしてもよいし、複数の乗算器が出力する高周波信号が1つのアンテナに入力されるようにしてもよい。アンテナの例については後述する。
【0027】
リザバー部22は、入力部21のアンテナが放射した電波を変調させた電波を出力する。リザバー部22は、入力部21が放射した電波に対して非線形応答を行うことでその電波を変調させる複数の半導体素子を有する。リザバー部22の例については後述する。
【0028】
出力部23は、受信アンテナ部23aと重み付け部23bを有する。
受信アンテナ部23aは、リザバー部22によって変調された電波を受信し、受信した電波を高周波信号に変換する。たとえば、出力部13は、受信した電波を変換する高周波信号の数に応じて、1または複数のアンテナを有し、アンテナにより、受信した電波を高周波信号に変換する。
【0029】
重み付け部23bは、高周波信号を変換した直流の信号に対して重み付けを行い、重み付け後の信号、または重み付け後の複数の信号を足し合わせた信号を、出力信号OUT1,OUT2,…,OUTnとして出力する。
【0030】
なお、出力信号OUT1~OUTnの数は、受信アンテナ部23aのアンテナ数と一致していなくてもよい。また、出力信号OUT1~OUTnの数は、入力信号IN1~INnの数と一致していなくてもよい。たとえば、出力信号OUT1~OUTnの数は、1つであってもよい。
【0031】
学習部24は、教師データを取得し、教師データと出力部23の出力信号OUT1~OUTnとに基づいて、重み付け部23bの重み付けの大きさを調整する。
重み付け部23bと学習部24の例については後述する。
【0032】
図3は、送信アンテナ部、リザバー部及び受信アンテナ部の一例を示す図である。
送信アンテナ部21cは、ボウタイアンテナ21c1,21c2,21c3を有する。ボウタイアンテナ21c1~21c3は、三角形の頂点が対向する一対の電極によって形成される。ボウタイアンテナ21c1~21c3は、基板21d上に形成されている。
【0033】
ボウタイアンテナ21c1~21c3を用いることで、ボウタイアンテナ効果によって、リザバー部22に効率よく高周波信号を変換した電波を照射することができる。
図3に示されているリザバー部22は、非線形応答を行う複数の半導体素子として、複数のInAs半導体ナノワイヤ(たとえば、InAs半導体ナノワイヤ22a,22bなど)を有する。複数のInAs半導体ナノワイヤは、たとえば、Si(シリコン)基板などの基板22c上に結晶成長によって、z方向に伸びるように形成されている。
【0034】
なお、InAs半導体ナノワイヤは基板22c上に規則的に配列されていてもよいが、ランダムに配列されていたほうがランダムネットワークの多様性を促進するために好ましい。
【0035】
また、電波に変換された高周波信号に対して非線形応答を行う半導体素子は、長軸方向の長さによって、高周波信号に対する相互作用の強さが変わってくる。相互作用の強さが強いほど、性能のよいリザバー部22が得られる。
【0036】
特に、長軸方向の長さが高周波信号の実効波長(波長を半導体素子の屈折率で割った値)の1/10以上であれば、半導体素子自体のアンテナ効果が顕著となり、高周波信号に対する相互作用が強くなり、好ましい。
【0037】
InAs半導体ナノワイヤなどの一般的なナノワイヤのワイヤ長は、数μm~100μmである。マイクロ波やテラヘルツ波の高周波信号を想定すると、高周波信号の波長は数百μmから数cmとなる。このため、ナノワイヤが用いられる場合、上記長軸方向の長さは長いほど好ましい。特に、上記のように、長軸方向の長さであるワイヤ長が高周波信号の実効波長の1/10以上であれば、ナノワイヤ自体のアンテナ効果が顕著となる。そのため、たとえば、InAs半導体ナノワイヤのワイヤ長は、高周波信号の周波数として250GHz(波長は1200μm)を最小周波数として用いる場合、InAsの屈折率が3.5であるため、1200/(3.5×10)=34(μm)以上とすればよい。
【0038】
これにより、より少ないInAs半導体ナノワイヤで性能のよいリザバー部22を実現できる。一方で、たとえば、ワイヤ長を3.4μmとした場合、InAs半導体ナノワイヤの密度を、ワイヤ長を34μmとした場合の10倍にすることで、同じ性能を得ることができる。
【0039】
リザバー部22は、基板21dによって送信アンテナ部21cを含む入力部21に対して空間的に分離されているとともに、基板22cによって受信アンテナ部23aを含む出力部23に対して空間的に分離されている。
【0040】
なお、リザバー部22において、上記のような半導体素子が形成される領域が、z方向に複数層形成されていてもよい。たとえば、基板22cにInAs半導体ナノワイヤをz方向に結晶成長させた層を、z方向に複数層設けるようにしてもよい。これによりランダムネットワークの大規模化が可能になる。
【0041】
また、リザバー部22において、半導体素子を疎に配置する箇所と密に配置する箇所とが混在していてもよい。
図4は、リザバー部に配置される半導体素子に粗密が生じている例を示す図である。
【0042】
図4の例では、InAs半導体ナノワイヤ(InAs半導体ナノワイヤ22aなど)が密に配置されるエリアと、疎に配置されるエリアとが混在している例が示されている。
このようにすることで、ランダムネットワークの多様性が高まり、より高性能なリザバーコンピュータが実現できる。
【0043】
また、ナノワイヤとして、InAs半導体ナノワイヤの代わりにInAs半導体ナノワイヤよりも強い非線形性を示すp-GaAs/n-InAsなどのpnヘテロ接合を有するナノワイヤダイオードを用いてもよい。
【0044】
図5は、ナノワイヤダイオードを用いたリザバー部の一例を示す図である。
ナノワイヤダイオードは、p型半導体22d1とn型半導体22d2とが接合された構成となっている。p型半導体22d1は、たとえば、p型GaAsであり、n型半導体22d2は、たとえば、n型InAsである。
【0045】
ナノワイヤダイオードは強い非線形性を示すため、より性能のよいリザバー部22を実現できる。
なお、1次元半導体の例として、カーボンナノチューブを用いてもよい。
【0046】
図3において、受信アンテナ部23aは、ボウタイアンテナ23a1,23a2,23a3を有する。ボウタイアンテナ23a1~23a3は、InAs半導体ナノワイヤが表面に形成される基板22cの裏面に形成されている。
【0047】
ボウタイアンテナ23a1~23a3を用いることで、ボウタイアンテナ効果によって、リザバー部22から効率よく電波に変換された高周波信号を受信できる。
図6は、重み付け部と学習部の一例を示す図である。
【0048】
なお、図6では、説明を簡略化するために、3つのボウタイアンテナ23a1~23a3よって変換された高周波信号から1つの出力信号OUT1を生成する例が示されている。
【0049】
重み付け部23bは、DC(Direct Current)変換部31、重み調整部32、加算器33を有する。
DC変換部31は、受信アンテナ部23aによって電波から変換された高周波信号を直流信号(直流の電圧・電流振幅信号)に変換する。
【0050】
図6の例では、DC変換部31は、ダイオード31a,31b,31cを有する。ダイオード31aのアノードは、ボウタイアンテナ23a3の一対の電極のうちの一方に接続され、ダイオード31aのカソードは、ボウタイアンテナ23a3の一対の電極のうちの他方に接続されている。ダイオード31bのアノードは、ボウタイアンテナ23a2の一対の電極のうちの一方に接続され、ダイオード31bのカソードは、ボウタイアンテナ23a2の一対の電極のうちの他方に接続されている。ダイオード31cのアノードは、ボウタイアンテナ23a1の一対の電極のうちの一方に接続され、ダイオード31cのカソードは、ボウタイアンテナ23a1の一対の電極のうちの他方に接続されている。ダイオード31a,31b,31cのそれぞれのカソードからDC変換部31の出力である直流信号が得られる。
【0051】
重み調整部32は、DC変換部31の出力である直流信号に対して重み付けを行う。重み付けの大きさは、学習部24によって調整される。
図6において、重み調整部32は、重み付けの大きさを保持するアナログメモリの例として、メモリスタ(抵抗可変メモリ)32a,32b,32cを有する。学習部24によって制御されるメモリスタ32a,32b,32cの抵抗の大きさに応じて、ダイオード31a,31b,31cのカソードから出力される各直流信号が重み付けされる。
【0052】
加算器33は、重み付けされた各直流信号を足し合わせた加算結果を、情報処理装置20の演算結果である出力信号OUT1として出力する。
なお、図6に示すように、たとえば、重み調整部32の出力、または図示しない抵抗を介して一定の割合に減衰させた信号は、入力側のボウタイアンテナ21c1~21c3に接続される信号線を伝搬する高周波信号に足しこまれる。このようなフィードバックループがあると、過去の出力を現在の入力に直接関連付けた形で入力が行われることになるため、たとえば、時系列データの学習において、時間の相関を強く学習させることが可能である。すなわち、そのような時間の相関に対する学習が性能を支配する問題に対しては、このようなフィードバックループを有することで高速な学習が可能となる。なお各フィードバックループは、図示しないスイッチなどによって個々にオンオフ可能である。
【0053】
上記のような重み付け部23bは、たとえば、図3に示したような基板22cにおいてボウタイアンテナ23a1~23a3が形成される面と同一面上に形成できる。
学習部24は、比較回路24aと、重み制御回路24bとを有する。比較回路24aは、入力される教師データと出力信号OUT1とを比較した比較結果(たとえば、誤差)を出力する。
【0054】
重み制御回路24bは比較結果に基づいて、誤差が最小になるように重み付け部23bにおける重み付けの大きさ(たとえば、メモリスタ32a,32b,32cの抵抗の大きさ)を調整する。
【0055】
なお、学習終了後は、学習部24は、図示しないスイッチなどによって重み付け部23bから切り離される。
学習部24は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアであるプロセッサなどを用いて実現されるコンピュータであってもよい。ただし、学習部24は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの特定用途の電子回路を含んでもよい。プロセッサは、RAM(Random Access Memory)などのメモリに記憶されたプログラムを実行して、教師データと出力信号OUT1との比較結果に基づいて、重み付けの大きさを制御する。
【0056】
次に、第2の実施の形態の情報処理装置20による演算処理の流れを説明する。
図7は、第2の実施の形態の情報処理装置の演算処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【0057】
入力部21は、入力信号IN1~INnの入力を受け付ける(ステップS1)。
そして、入力部21は、入力信号IN1~INnを反映させた高周波信号を、送信アンテナ部21cによって電波に変換して放射する(ステップS2)。
【0058】
リザバー部22は、入力部21が放射した電波に対して非線形応答を行うことでその電波を変調させる(ステップS3)。
出力部23は、リザバー部22によって変調された電波を受信アンテナ部23aにより受信し、受信した電波を高周波信号に変換する(ステップS4)。
【0059】
さらに、出力部23は、重み付け部23bによって、高周波信号を変換した直流信号に対して重み付けを行う(ステップS5)。
そして、出力部23は、重み付け後の信号または、重み付け後の複数の信号を足し合わせた信号を、演算結果を示す出力信号OUT1~OUTnとして出力し(ステップS6)、情報処理装置20は演算処理を終える。
【0060】
以上のような、情報処理装置20によれば、第1の実施の形態の情報処理装置10と同様に、リザバー部22に配線が不要となるため、簡単な工程にて集積性を向上できる。このため、ランダムネットワークの大規模化が容易になるなど、リザバーコンピュータの性能向上が期待できる。
【0061】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0062】
10 情報処理装置
11 入力部
12 リザバー部
12a,12b 1次元半導体
13 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7