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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】錠剤カセット
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240124BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20240124BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20240124BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61J3/00 310Z
B26D3/00 601Z
B26D1/02 Z
B26D7/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023028492
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2019122825の分割
【原出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2023063328
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】小池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】見谷 光弘
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/032418(WO,A1)
【文献】実開平02-130645(JP,U)
【文献】米国特許第04179806(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B26D 3/00
B26D 1/02
B26D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の錠剤を収容するカセット本体と、
前記カセット本体の内部に設けられたロータと
を備え、
前記カセット本体は、
錠剤が排出される錠剤出口と、
前記ロータに向かって突出するように設けられた外刃と
を有し、
前記ロータは、第1回転軸を中心にして回転可能なロータ本体を備え、
前記ロータ本体は、前記ロータ本体の外周面に設けられ、錠剤を収納して錠剤を前記錠剤出口に案内するための案内溝を有しており、
前記ロータ本体の前記案内溝は、前記カセット本体の内側面と対向する溝底を備え、
前記案内溝の前記溝底は、前記外刃と対向する軸方向の位置から軸方向の少なくとも一方側に向かって径方向の内側に延びるように構成されており、
前記外刃は、前記錠剤出口より前記ロータ本体の回転方向上流側で前記ロータ本体の前記案内溝に突出して、錠剤を分割するように構成されている、錠剤カセット。
【請求項2】
前記ロータは、前記ロータ本体に取り付けられ、前記外刃とともに錠剤を分割する内刃を備える、請求項1に記載の錠剤カセット。
【請求項3】
錠剤を収容するケースの内部に配置されるロータであって、
第1回転軸を中心にして回転可能なロータ本体を備え、
前記ロータ本体は、前記ロータ本体の外周面に設けられ、錠剤を収納して錠剤を前記ケースに設けられた錠剤出口に案内するための案内溝を有しており、
前記ロータ本体の前記案内溝は、前記ケースの内側面と対向する溝底を備え、
前記案内溝の前記溝底は、前記ロータ本体に向けて突出するように前記ケースに設けられた外刃と対向する軸方向の位置から軸方向の少なくとも一方側に向かって径方向の内側に延びるように構成されており、
前記錠剤出口より前記ロータ本体の回転方向上流側で、前記外刃が前記ロータ本体の前記案内溝に突出して、錠剤を分割するように構成されている、ロータ。
【請求項4】
前記ロータは、前記ロータ本体に取り付けられ、前記外刃とともに錠剤を分割する内刃を備える、請求項3に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老人や子供の患者のために錠剤を半錠に分割して排出することができる錠剤カセットが提案されている。特許文献1の錠剤カセットは、錠剤を錠剤出口に案内する案内溝を有するロータと、外刃を有する錠剤分割機構とを備える。この錠剤カセットでは、案内溝に収納された錠剤は、ロータが回転することで錠剤出口に向かって移動する途中に外刃によって分割されて錠剤出口から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4527810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、錠剤を丁度半分となるように分割するために、錠剤カセットに収容される錠剤の種類に応じて外刃の上下方向の位置を調整する必要がある。この外刃の上下方向の位置調整は、錠剤分割機構を錠剤カセットから取り外して行う必要があるため、薬剤師のような作業者の負担が多くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、刃の位置調整に関する作業者の負担を軽減できる錠剤カセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る錠剤カセットは、多数の錠剤を収容するカセット本体と、前記カセット本体の内部に設けられたロータとを備え、前記ロータは、第1回転軸を中心にして回転可能なロータ本体と、前記ロータ本体に取り付けられた内刃とを備え、前記カセット本体は、錠剤が排出される錠剤出口を有し、前記ロータ本体は、前記ロータ本体の外周面に設けられ、錠剤を収納して錠剤を前記錠剤出口に案内するための案内溝を有しており、前記内刃は前記錠剤出口より前記ロータ本体の回転方向上流側で前記ロータ本体の前記案内溝に突出して、錠剤を分割するように構成されている。
【0007】
この構成によれば、内刃が錠剤が収納された案内溝に突出することで、案内溝に収納された錠剤に内刃が接触して、錠剤が分割される。これにより、ロータに取り付けられた内刃によって錠剤が分割されるので、錠剤を半分に分割するために他の部品を調整する必要がなく、作業者の負担を軽減できる。一般的に、ロータは、錠剤の種類ごとに設計される専用部品であるので、錠剤カセットにロータを取り付けた後に内刃の取り付け位置などを調整する必要がなく、ロータを錠剤カセットから取り外す必要がない。
【0008】
前記内刃は、前記ロータ本体の前記案内溝に退避可能であってもよい。
【0009】
前記内刃は、前記第1回転軸に対してずれた位置に設けられた第2回転軸を中心にして回転可能であってもよく、前記内刃は、前記第2回転軸を中心にして回転し、前記錠剤出口より前記ロータ本体の回転方向上流側で前記ロータ本体の前記案内溝に突出して、錠剤を分割するように構成されていてもよい。
【0010】
前記ロータ本体は、軸方向に延びる係合部を備えてもよく、前記内刃は、前記ロータ本体の前記係合部と係合可能に構成された被係合部を備えてもよく、前記内刃は、前記被係合部が前記ロータ本体の前記係合部に係合した状態で、前記ロータ本体が前記第1回転軸を中心にして回転することにより、前記第2回転軸を中心にして回転してもよい。
【0011】
この構成によれば、第2回転軸を中心にして内刃を回転させるための機構を別途設ける必要がなく、錠剤カセットの構成を簡素にできる。
【0012】
前記ロータ本体に機械的に接続され、前記ロータ本体に駆動力を伝達するための伝達機構を備えてもよく、前記内刃は、環状の本体部と、前記本体部の径方向内側の端部から軸方向に延びる筒状部とを有してもよく、前記伝達機構は、前記第1回転軸と同軸に設けられ、前記ロータ本体に係合して前記ロータ本体を回転させる回転シャフトと、前記第2回転軸と同軸に設けられ、前記内刃の前記筒状部が摺接可能に嵌合した偏心部とを有してもよい。
【0013】
この構成によれば、内刃の筒状部が伝達機構の偏心部に取り付けられているので、内刃と伝達機構の偏心部とが線接触状態である場合と比較して、内刃と伝達機構の偏心部との間の接触面積を大きくできる。その結果、伝達機構の偏心部が、回転する内刃との接触により破損することを抑制できる。
【0014】
前記カセット本体は、前記ロータに向かって突出するように設けられ、前記内刃とともに錠剤を分割するように構成された外刃を有してもよい。
【0015】
径方向の内側又は外側の一方側から刃が錠剤に接触すると、錠剤に一方側から亀裂が入り、錠剤がユーザの意図しない割れ方で割れる恐れがある。この構成によれば、錠剤は、径方向の内側から内刃が接触するとともに、径方向の外側から外刃が接触することで分割される。このため、径方向の内側又は外側の一方側から刃が錠剤に接触する場合と比較して、錠剤がユーザの意図しない割れ方で分割されることを抑制できる。
【0016】
本発明の他の態様に係る錠剤カセットは、多数の錠剤を収容するカセット本体と、前記カセット本体の内部に設けられたロータとを備え、前記カセット本体は、錠剤が排出される錠剤出口と、前記ロータに向かって突出するように設けられた外刃とを有し、前記ロータは、第1回転軸を中心にして回転可能なロータ本体を備え、前記ロータ本体は、前記ロータ本体の外周面に設けられ、錠剤を収納して錠剤を前記錠剤出口に案内するための案内溝を有しており、前記ロータ本体の前記案内溝は、前記カセット本体の内側面と対向する溝底を備え、前記案内溝の前記溝底は、前記外刃と対向する軸方向の位置から軸方向の少なくとも一方側に向かって径方向の内側に傾斜して延びるテーパ部を有し、前記外刃は、前記錠剤出口より前記ロータ本体の回転方向上流側で前記ロータ本体の前記案内溝に突出して、錠剤を分割するように構成されている。
【0017】
案内溝の溝底が径方向に対して直交するように延びている場合、外刃が錠剤に接触すると、錠剤が案内溝の溝底に径方向の外側から押しつけられて、錠剤が砕けることがある。この構成によれば、案内溝の溝底が、外刃と対向する軸方向の位置から軸方向の少なくとも一方側に向かって径方向の内側に傾斜して延びるテーパ部を有しているので、外刃が錠剤に接触したときに、分割途中の錠剤の一部が径方向の内側に退避できる。これにより、錠剤が分割途中に砕けることを抑制できるとともに、外刃に係る衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の錠剤カセットによれば、刃の位置調整に関する作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る錠剤カセットを斜め上前方から見た斜視図。
図2】第1実施形態に係る錠剤カセットを斜め下後方から見た斜視図。
図3】第1実施形態に係る錠剤カセットの分解斜視図。
図4】第1実施形態に係る錠剤カセットの上蓋とロータとを取り外した状態の平面図。
図5】第1実施形態に係る錠剤カセットの縦断面図。
図6】第1実施形態に係るロータ及び伝達機構を斜め上方から見た斜視図。
図7】第1実施形態に係るロータ及び伝達機構を斜め上方から見た分解斜視図。
図8】第1実施形態に係るロータを斜め下方から見た分解斜視図。
図9】第1実施形態に係る固定ブロックの斜視図。
図10】第1実施形態に係る固定ブロックの分解斜視図。
図11】第1実施形態に係る錠剤カセットの分割に係る機構を説明するための図。
図12】錠剤を分割している状態での図5のA-A線に沿った断面図。
図13図12のB-B線に沿った断面図。
図14】分割された錠剤の下側半分が錠剤出口から排出される状態での図5のA-A線に沿った断面図。
図15図14のC-C線に沿った断面図。
図16】分割された錠剤の上側半分が錠剤出口から排出される状態での図5のA-A線に沿った断面図。
図17図16のD-D線に沿った断面図。
図18】本発明の第2実施形態に係る錠剤カセットの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(全体構造)
図1は、第1実施形態に係る錠剤カセット1を斜め前方から見た斜視図である。また、図2は、第1実施形態に係る錠剤カセット1を斜め後方から見た斜視図である。
【0022】
図1を参照すると、錠剤カセット1は、錠剤T(図5に示す)を分割して排出するための装置である。本実施形態の錠剤カセット1は、例えば、図示しない薬剤払出装置などに取り付けて使用される。
【0023】
本実施形態の錠剤カセット1は、多数の錠剤を収容するカセット本体10を備える。カセット本体10は、基部11と、基部11に固定されたケース12と、ケース12に回動可能に取り付けられた上蓋13とを備える。錠剤T(図5に示す)は、カセット本体10のケース12に収容されている。
【0024】
図2を参照すると、カセット本体10は、ケース12の内部に収容された錠剤T(図5に示す)を錠剤カセット1の外部へ排出するための錠剤出口14を備える。具体的には、錠剤出口14は、ケース12に形成され、カセット本体10の外部に露出した開口である。
【0025】
図3は、本実施形態に係る錠剤カセット1を斜め前方から見た分解斜視図である。図4は、本実施形態に係る錠剤カセット1の上蓋13及びロータ20を取り外した状態の平面図である。また、図5は、本実施形態に係る錠剤カセット1の縦断面図である。
【0026】
図3を参照すると、本実施形態の錠剤カセット1は、カセット本体10の内部に収容されたロータ20と、ロータ20の径方向外側に配置された固定ブロック30と、ロータ20に駆動源(図示せず)からの駆動力を伝達するための伝達機構40とを備える。
【0027】
本実施形態のカセット本体10の基部11は、平面視で略U字状である。また、基部11には、伝達機構40が固定されている。基部11の上側及び後側は、開口しており、基部11の上側の開口を覆うように、カセット本体10のケース12が基部11の上側に固定されている。
【0028】
本実施形態のケース12は、錠剤T(図5に示す)を収容する収容部12aと、ロータ20の周方向の一部を径方向外側から覆うように構成された円筒部12bとを備える。ケース12は、収容部12aに収容した錠剤を目視できるように、半透明である。収容部12aは、上方が開口しており、この開口は、上蓋13によって、開閉可能である。本実施形態のカセット本体10のケース12は、基部11の上側の開口を覆うように基部11に固定されている。
【0029】
図4を参照すると、本実施形態のケース12は、円筒部12bの底部に、錠剤出口14が形成された底板12cを有する。底板12cは、錠剤出口14よりもロータ20の回転方向(図中矢印参照)の上流側に設けられた支持片12dを備える。支持片12dは、板ばねからなる。支持片12dは、錠剤Tを下方から支持するように構成されている。
【0030】
図3を参照すると、本実施形態のロータ20は、略円筒状である。図5を併せて参照すると、ロータ20は、カセット本体10のケース12の円筒部12b内に配置される。これにより、ロータ20の周方向の一部は、ケース12の円筒部12bによって、径方向の外側から覆われている。また、ロータ20は、基部11内に収容された伝達機構40と機械的に接続される。ロータ20は、駆動源(図示せず)からの回転駆動力が伝達機構40を介して伝達されることで、第1回転軸C1を中心にして回転する。
【0031】
固定ブロック30は、ロータ20の周方向の一部を径方向の外側から覆うように構成された平面視略円弧状の内側面を有する。固定ブロック30は、ケース12の円筒部12bとともにロータ20を全周にわたって、径方向外側から覆っている。また、固定ブロック30には、カセット本体10を図示しない薬剤払出装置などに取り付けたときに、薬剤払出装置と電気的に接続されて、錠剤カセット1の情報を読み取るためのコネクタ50が設けられている。本実施形態に係る固定ブロック30は、カセット本体10の一部を構成する。
【0032】
(ロータの詳細構造)
図6は、本実施形態のロータ20及び伝達機構40の斜視図である。図7は、本実施形態のロータ20及び伝達機構40の斜め上方から見た分解斜視図である。図8は、本実施形態のロータ20を斜め下方から見た分解斜視図である。
【0033】
図6及び図7を参照すると、本実施形態のロータ20は、略円筒状のロータ本体21と、ロータ20に取り付けられた内刃60とを備える。
【0034】
ロータ本体21は、円筒状の胴部21aと、胴部21aの軸方向の一方側(図6において上側)に取り付けられた略円錐状のキャップ21bと、胴部21aの軸方向の他方側(図6において下側)に取り付けられた円環状の端板21cとを備える。
【0035】
図8に示すように、本実施形態のロータ20は、胴部21aの一方側からキャップ21bが取り付けられ、胴部21aと端板21cとの間に内刃60を配置した状態で、胴部21aの他方側から端板21cが取り付けられることで構成される。言い換えれば、胴部21aと端板21cとの間には、内刃60が配置されている。これにより、胴部21aと、キャップ21bと、端板21cと、内刃60とは、ロータ20の軸方向において、キャップ21b、胴部21a、内刃60、及び端板21cの順番で並んで配置されている。
【0036】
図6に示すように、本実施形態のロータ20は、ロータ本体21の外側面に形成され、ロータ本体21の軸方向に延びた6つ(図6では3つのみ示す)の案内溝22を備える。本実施形態の6つの案内溝22は、ロータ本体21の周方向に等間隔に配置されている。言い換えれば、本実施形態の6つの案内溝22は、ロータ本体21の中心軸を中心にして60度間隔で設けられている。また、案内溝22は、ロータ本体21の胴部21aと端板21cとにまたがって延びている。案内溝22は、錠剤を1つだけ保持可能な幅を有している。案内溝22は、錠剤T(図5に示す)が上下方向(ロータ本体21の軸方向)に並んで収容される。また、本実施形態の案内溝22の溝底22aは、ロータ20の径方向に直交するように延びている。
【0037】
本実施形態のロータ20は、ロータ本体21の外側面に形成され、ロータ20の周方向に延びた上側周溝23を備える。具体的には、上側周溝23は、ロータ本体21の胴部21aの外側面に全周にわたって形成されている。
【0038】
また、本実施形態のロータ20は、ロータ本体21の外側面に形成され、ロータ20の周方向に延びた下側周溝24を備える。下側周溝24は、上側周溝23よりも下側に、ロータ20の全周にわたって設けられている。また、図6に示すように、内刃60は、下側周溝24から案内溝22に突出可能なように設けられている。
【0039】
下側周溝24は、ロータ本体21の胴部21aと端板21cとの間の隙間である。図8に示すように、胴部21aの下面には、胴部21aの下面から端板21cに向けて突出した6つの突起部25が設けられている。胴部21aと端板21cとは、胴部21aの下面に設けられた突起部25によって離間している。これにより、胴部21aと端板21cとの間に下側周溝24が形成されている。
【0040】
本実施形態の6つの突起部25は、ロータ本体21の周方向に等間隔に配置されている。言い換えれば、6つの突起部25は、ロータ本体21の中心軸を中心にして60度間隔で設けられている。また、突起部25は、ロータ本体21の外側面に形成された案内溝22に対して、ロータ本体21の中心軸を中心にして30度ずつずれて配置されている。突起部25は、下側周溝24の幅(ロータ20の軸方向での寸法)が内刃60の厚さよりも大きくなるように構成されている。言い換えれば、突起部25の胴部21aの下面からの突出量は、内刃60の厚さよりも大きい。本実施形態の突起部25は、本発明に係る係合部の一例である。
【0041】
本実施形態の内刃60は、略円環状の本体部61と、本体部61の径方向内側の端部から軸方向に延びる筒状部62とを備える。
【0042】
本実施形態の本体部61は、径方向外側に突出した6つの刃部63を備える。6つの刃部63は、内刃60の周方向に等間隔に設けられている。言い換えれば、6つの刃部63は、内刃60の中心軸を中心にして60度間隔で設けられている。さらに言い換えれば、本実施形態の内刃60の本体部61には、周方向に等間隔に設けられた6つの切り欠きが形成されている。内刃60の本実施形態の刃部63のロータ本体21の回転方向の上流側の側面は、本発明に係る被係合部の一例である。
【0043】
筒状部62は、本体部61の径方向内側の端部から軸方向の一方側(ロータ本体21の胴部21a側)に立ち上がるように形成されている。
【0044】
内刃60は、ロータ本体21の胴部21aと端板21cとの間に配置されることで、ロータ本体21に取り付けられている。また、図8に示すように、内刃60は、ロータ本体21に設けられた突起部25が周方向に隣接する2つの刃部63の間に位置するように、ロータ本体21に取り付けられている。内刃60は、錠剤出口14に対してロータ20の回転方向上流側約45°の位置で、刃部63がロータ20の案内溝22に突出し、後述する外刃35の刃先と最接近するように構成されている。
【0045】
図7を参照すると、伝達機構40は、回転シャフト41と、第1軸受部材42と、偏心部43と、第2軸受部材44と、歯車45とを備える。
【0046】
回転シャフト41の上端は、ロータ本体21の胴部21aに形成された溝(図8に示す)に係合している。回転シャフト41の下端は、駆動源(図示せず)に機械的に接続された歯車45に固定されている。
【0047】
偏心部43は、略円筒状である。偏心部43は、回転シャフト41が回転自在に挿通される穴部43aを有している。偏心部43の外周面は穴部43aの中心軸に対して偏心している。また、図5を併せて参照すると、偏心部43は、カセット本体10の基部11の支持台11aに固定されている。また、偏心部43の外周面には、内刃60の筒状部62が摺接可能なように嵌合している。これにより、内刃60は、ロータ本体21の第1回転軸C1(図5に示す)に対してずれた位置に設けられた第2回転軸C2(図5に示す)を中心にして回転可能なように構成されている。
【0048】
歯車45は、モータのような外部の駆動源(図示せず)で駆動される駆動歯車(図示せず)と噛み合うように構成されている。言い換えれば、本実施形態の歯車45は、従動歯車である。また、図2に示すように、歯車45は、カセット本体10から外部に露出するように設けられている。
【0049】
図5を合わせて参照すると、第1軸受部材42は、偏心部43と回転シャフト41の上部との間に介設されており、第2軸受部材44は、偏心部43と歯車45との間に介設されている。この第1軸受部材42及び第2軸受部材44の支持によって、回転シャフト41は、第1回転軸C1を中心にして回転可能なように構成されている。
【0050】
モータのような外部の駆動源(図示せず)によって、歯車45が駆動されることで、回転シャフト41は第1回転軸C1を中心にして回転する。これにより、回転シャフト41に固定されたロータ本体21が第1回転軸C1を中心にして回転する。
【0051】
(固定ブロックの詳細構造)
図9は、本実施形態の固定ブロック30の斜視図である。図10は、本実施形態の固定ブロック30の分解斜視図である。
【0052】
図9及び図10を参照すると、固定ブロック30は、上側ブロック片31と、中間ブロック片32と、下側ブロック片33と、上側ブロック片31と中間ブロック片32との間に設けられた仕切部材34と、中間ブロック片32と下側ブロック片33との間に設けられた外刃35とを備える。また、図10に示すように、本実施形態の固定ブロック30は、仕切部材34と中間ブロック片32との間に設けられた4つの第1スペーサ36A,36B,36C,36Dと、外刃35と下側ブロック片33との間に設けられた1つの第2スペーサ37とを備える。
【0053】
中間ブロック片32の上側に配置された第1スペーサ36Dは、案内溝22の溝底22a又はケース12の内面に寄りかかって斜めになった錠剤T(図5に示す)を案内溝22の溝底22aに押さえつけることで錠剤Tが立った状態で内刃60と外刃35との間に導く誘導部36aを備える。本実施形態の誘導部36aは、板ばねからなる。
【0054】
本実施形態の仕切部材34は、ブラシ34aを備える。図5を併せて参照すると、仕切部材34は、ブラシ34aがロータ20の上側周溝23に挿入されるように構成されており、ロータ20の案内溝22内の上下に並んだ錠剤の最下位置する錠剤T1と、その上に位置する錠剤T2とを隔離する。言い換えれば、仕切部材34のブラシ34aは、錠剤T2を支持している。ブラシ34aの高さ位置は、仕切部材34と中間ブロック片32との間に配置する第1スペーサ36の数によって調整される。
【0055】
図5を併せて参照すると、本実施形態の外刃35は、内刃60と同じ高さ位置(ロータ20の軸方向における位置)に配置されている。言い換えれば、本実施形態の外刃35は、ロータ20の下側周溝24と同じ高さ位置に配置されている。外刃35の高さ位置は、外刃35と下側ブロック片33との間に配置する第2スペーサ37の数によって調整される。
【0056】
図11は、本実施形態に係る錠剤カセット1の錠剤Tの分割に係る機構を説明するための図である。
【0057】
図11を参照すると、外刃35は錠剤出口14に対してロータ20の回転方向上流側に配置されている。外刃35の刃先は、第1回転軸C1を中心とする約90°の略円弧状に形成され、ロータ20の下側周溝24(図5に示す)に入り込んでいる。外刃35のロータ20の回転方向上流側の端部は、ロータ20から離れる方向にテーパが形成されている。外刃35のロータ20の回転方向下流側の端部は、錠剤出口14の中央に位置している。
【0058】
図11に示すように、内刃60の第2回転軸C2は、ロータ本体21の第1回転軸C1に対してずれた位置に設けられている。これにより、内刃60の刃部63の刃先は、外刃35の刃先に対して、外刃35の周方向の略中央で最も近接するように構成されている。また、図5を併せて参照すると、第1回転軸C1と第2回転軸C2とは、平行に延びる。本実施形態に係る第1回転軸C1は、ロータ本体21に対して偏心していない。言い換えれば、第1回転軸C1は、ロータ本体21の中心軸と一致する。
【0059】
また、図11を参照すると、本実施形態の誘導部36aは、外刃35に対して、ロータ20の回転方向上流側に配置されている。本実施形態の誘導部36aは、案内溝22に収容された錠剤Tを内刃60と外刃35との間に誘導するように構成されている。
【0060】
ロータ本体21の突起部25のいずれか1つは、内刃60の刃部63と係合することで、内刃60に回転力を伝達するように構成されている。
【0061】
(錠剤カセットの動作)
以下、図12から図17を参照して、錠剤を分割する際の錠剤カセット1の動作を説明する。
【0062】
図12は、錠剤が分割される状態での図5のA-A線に沿った断面図である。図13は、図12のB-B線に沿った模式的な断面図である。
【0063】
図12を参照すると、ロータ本体21は、伝達機構40の回転シャフト41の第1回転軸C1まわりの回転に伴って、第1回転軸C1を中心にして回転する。図12に示す状態では、ロータ本体21の突起部25Cと内刃60の刃部63Cとが係合しており、ロータ本体21が第1回転軸C1を中心にして回転することで、ロータ本体21の突起部25Cから内刃60の刃部63Cに回転力が伝達される。内刃60は、伝達機構40の偏心部43に摺接可能なように嵌合しているので、ロータ本体21からの回転力により、第1回転軸C1に対してずれた位置に設けられた第2回転軸C2を中心にして回転する。内刃60の刃部63Aは、内刃60の第2回転軸C2まわりの回転により、錠剤出口14よりロータ本体21の回転方向の上流側で、ロータ20の案内溝22に突出する。また、ロータ本体21の第1回転軸C1まわりの回転により、ロータ20の案内溝22に収容された錠剤Tは、第1回転軸C1を中心にして回転するように移動する。ここで、回転シャフト41は、偏心部43の穴部43aに回転自在に挿通されているので、回転シャフト41が回転しても、偏心部43は、回転しない。
【0064】
また、図12に示す状態では、内刃60の刃部63B,63C,63D,63E,63Fは、ロータ本体21の案内溝22に突出していない。言い換えれば、内刃60の刃部63A以外の刃部は、ロータ本体21の案内溝22から退避している。錠剤Tは、案内溝22内に刃部63と仕切部材34のブラシ34aとが位置していないとき、底板12cに接するまで、案内溝22内を落下する。
【0065】
このとき、ロータ20の案内溝22に収容された錠剤Tは、誘導部36a(図11示す)によって案内溝22の溝底22aに押しつけられる。これにより、錠剤Tは、案内溝22の溝底22aに沿って配置される。
【0066】
このとき、図13に示すように、内刃60の刃部63Aが径方向内側から錠剤Tに接触し、外刃35が径方向外側から錠剤Tに接触することで、錠剤Tは、上下に分割される。図13に示す状態では、分割された錠剤Tの上側半分Taは、内刃60及び外刃35に支持されており、分割された錠剤Tの下側半分Tbは、カセット本体10のケース12に支持されている。
【0067】
図14は、分割された錠剤Tの下側半分Tbが錠剤出口14から排出される状態での図5のA-A線に沿った断面図である。図15は、図14のC-C線に沿った模式的な断面図である。
【0068】
次に、図14に示す状態では、ロータ本体21の突起部25Bと内刃60の刃部63Bとが係合しており、ロータ本体21が第1回転軸C1を中心にして回転することで、ロータ本体21の突起部25Bから内刃60の刃部63Bに回転力が伝達される。内刃60は、ロータ本体21からの回転力により、第1回転軸C1に対してずれた位置に設けられた第2回転軸C2を中心にして回転する。ロータ20の第1回転軸C1まわりの回転により、ロータ20の案内溝22に収容された錠剤Tは、第1回転軸C1を中心にして回転するように移動する。
【0069】
このとき、図15に示すように、分割された錠剤Tの下側半分Tbは、カセット本体10の錠剤出口14から、錠剤カセット1の外側へ排出される。一方で、分割された錠剤Tの上側半分Taは、内刃60と外刃35とによって支持されている。この状態で、錠剤カセット1の動作を止めることで、錠剤Tを半錠単位で払い出すことができる。
【0070】
図16は、分割された錠剤Tの上側半分Taが錠剤出口14から排出される状態でのる図5のA-A線に沿った断面図である。図17は、図16のD-D線に沿った断面図である。
【0071】
図16に示す状態では、ロータ本体21の突起部25Bと内刃60の刃部63Bとが係合しており、ロータ本体21が第1回転軸C1を中心にして回転することで、ロータ本体21の突起部25Bから内刃60の刃部63Bに回転力が伝達される。内刃60は、ロータ本体21からの回転力により、第1回転軸C1に対してずれた位置に設けられた第2回転軸C2を中心にして回転する。ロータ20の第1回転軸C1まわりの回転により、ロータ20の案内溝22に収容された錠剤Tは、第1回転軸C1を中心にして回転するように移動する。図16に示す状態では、平面視において、錠剤Tは、外刃35と重複しない位置にある。
【0072】
このとき、図17に示すように、内刃60は、ロータ20の案内溝22に突出していない。また、外刃35は、錠剤出口14の中央に端がある。これにより、分割された錠剤Tの上側半分Taは、錠剤出口14から錠剤カセット1の外側へ排出される。
【0073】
錠剤Tに径方向の内側又は外側の一方側から刃が錠剤に接触すると、錠剤Tに一方側から亀裂が入り、錠剤Tが不本意な割れ方で割れる恐れがある。第1実施形態の構成によれば、錠剤Tは、径方向の内側から内刃60が接触するとともに、径方向の外側から外刃35が接触することで分割される。このため、径方向の内側又は外側の一方側から刃が錠剤Tに接触する場合と比較して、錠剤Tが均等に分割される。
【0074】
第1実施形態の構成によれば、内刃60が、ロータ本体21の第1回転軸C1まわりの回転により、第2回転軸C2を中心にして回転するので、内刃60を第2回転軸C2を中心にして回転させるための機構を別途設ける必要がなく、錠剤カセット1の構成を簡素にできる。
【0075】
第1実施形態の構成によれば、内刃60の筒状部62が伝達機構40の偏心部43に摺接可能なように嵌合しているので、内刃60と伝達機構40の偏心部43とが線接触状態である場合と比較して、内刃60と伝達機構40の偏心部43との間の接触面積を大きくできる。その結果、伝達機構40の偏心部43が、回転する内刃60との接触により破損することを抑制できる。
【0076】
第1実施形態の構成によれば、固定ブロック30の誘導部36aに錠剤Tがロータ本体21の案内溝22の溝底22aに押しつけられ、錠剤Tが溝底22aに沿うように配置される。これにより、内刃60及び外刃35が、錠剤Tに対して、斜めに接触して、錠剤Tが斜めに分割されることを抑制できる。
【0077】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、内刃60と外刃35が設けられているが、外刃35は省略することができる。
【0078】
この場合、ロータ本体21に取り付けられた内刃60によって錠剤Tを分割できるので、錠剤Tを半分に分割するために他の部品を調整する必要がなく、作業者の負担を軽減できる。一般的に、ロータ20は、錠剤の種類ごとに設計される専用部品であるので、錠剤カセット1にロータ20を取り付けた後に内刃60の取り付け位置などを調整する必要がなく、ロータ20を錠剤カセット1から取り外す必要がない。
【0079】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る錠剤カセット1は、内刃60を備えていない点と案内溝22の形状を除いて、第1実施形態の錠剤カセット1と同様の構成を有している。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
【0080】
図18は、第2実施形態に係る錠剤カセット1の縦断面図である。
【0081】
図18を参照すると、本実施形態の溝底22aは、外刃35と対向する軸方向の位置から軸方向の一方側(図18において上側)に向かって径方向の内側に傾斜して延びる上側テーパ部22bを備える。また、本実施形態の溝底22aは、外刃35と対向する軸方向の位置から軸方向の他方側(図18において下側)に向かって径方向の内側に傾斜して延びる下側テーパ部22cを備える。本実施形態の上側テーパ部22b及び下側テーパ部22cは、本発明に係るテーパ部の一例である。
【0082】
案内溝22の溝底22aが径方向に対して直交するように延びている場合、固定ブロック30の外刃35が錠剤Tに接触すると、錠剤Tが案内溝22の溝底22aに径方向の外側から押しつけられて、錠剤Tが砕けることがある。
【0083】
この構成によれば、案内溝22の溝底22aが、外刃35と対向する軸方向の位置から軸方向の一方側に向かって径方向の内側に傾斜して延びる上側テーパ部22bを有しているので、外刃35が錠剤Tに接触したときに、分割途中の錠剤Tの一部が径方向の内側に退避できる。これにより、錠剤Tが分割途中に砕けることを抑制できる。
【0084】
同様に、案内溝22の溝底22aが、外刃35と対向する軸方向の位置から軸方向の他方側に向かって径方向の内側に傾斜して延びる下側テーパ部22cを有しているので、外刃35が錠剤Tに接触したときに、分割途中の錠剤Tの一部が径方向の内側に退避できる。これにより、錠剤Tが分割途中に砕けることを抑制できるとともに、外刃35に係る衝撃を緩和することができる。
【0085】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、外刃35のみが設けられているが、第1実施形態のような内刃60を設けてもよく、内刃60と外刃35とで錠剤を分割することもできる。
【0086】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0087】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、固定ブロック30がカセット本体10と別体に設けられていたが、これに限定されず、固定ブロック30とカセット本体10とは一体であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 錠剤カセット
10 カセット本体
11 基部
12 ケース
12a 収容部
12b 円筒部
12c 底板
12d 支持片
13 上蓋
14 錠剤出口
20 ロータ
21 ロータ本体
21a 胴部
21b キャップ
21c 端板
22 案内溝
22a 溝底
22b 上側テーパ部
22c 下側テーパ部
23 上側周溝
24 下側周溝
25 突起部
30 固定ブロック
31 上側ブロック片
32 中間ブロック片
33 下側ブロック片
34 仕切部材
35 外刃
36,36A,36B,36C,36D 第1スペーサ
36a 誘導部
37 第2スペーサ
40 伝達機構
41 回転シャフト
42 第1軸受部材
43 偏心部
44 第2軸受部材
45 歯車
50 コネクタ
60 内刃
61 本体部
62 筒状部
63 刃部
T 錠剤
Ta 上側半分
Tb 下側半分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18