(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ガラスクロス、プリプレグ、及び、プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20240124BHJP
D03D 15/267 20210101ALI20240124BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240124BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H05K1/03 610T
D03D15/267
D03D1/00 A
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
(21)【出願番号】P 2023560211
(86)(22)【出願日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2023020430
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022092909
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川西 弘之
(72)【発明者】
【氏名】南 和明
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佑一郎
(72)【発明者】
【氏名】池尻 広隆
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/251103(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038240(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/168921(WO,A1)
【文献】特開2019-019431(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024870(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
D03D 15/267
D03D 1/00
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数本のガラスフィラメントが集束されてなる経糸と緯糸とから構成されるガラスクロスであって、
前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、それぞれ独立に、0.5μm以上4.5μm以下の範囲にあり、
前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ft、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyが、それぞれ独立に、150本以上3000本以下の範囲にあり、
前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ独立に、1.0本/25mm以上50.0本/25mm以下の範囲にあり、
前記経糸の平均糸幅Bt、及び、前記緯糸の平均糸幅Byが、それぞれ独立に、550μm以上10000μm以下の範囲にあり、
前記Dt、Ft、Wt及びBtから次式(1)により求められる、経糸開繊効率係数Ptが、0.600以上1.500以下の範囲にあり、前記Dy、Fy、Wy及びByから次式(2)により求められる、緯糸開繊効率係数Pyが、0.600以上1.500以下の範囲にあり、
前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dtに対する前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ftの比(Ft/Dt)であるRt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyに対する前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyの比(Fy/Dy)であるRyが、それぞれ独立に、68.6以上555.5以下の範囲にあり、
前記Pt及びPyが、次式(3)を満たし、厚さが10.0μm未満であることを特徴とする、ガラスクロス。
Pt={(Bt/(Dt×Ft))×Bt/(25000/Wt)}
1/2×{(Dt×Ft)/(25000/Wt)} ・・・(1)
Py={(By/(Dy×Fy))×By/(25000/Wy)}
1/2×{(Dy×Fy)/(25000/Wy)} ・・・(2)
0.770 ≦ (Pt×Py)
1/2 ≦ 1.200 ・・・(3)
【請求項2】
請求項1記載のガラスクロスにおいて、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、それぞれ独立に、2.0μm以上3.8μm以下の範囲にあり、前記Pt及びPyが、次式(4)を満たすことを特徴とする、ガラスクロス。
0.890 ≦ (Pt×Py)
1/2 ≦ 0.970・・・(4)
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガラスクロスを含むことを特徴とする、プリプレグ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のガラスクロスを含むことを特徴とする、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスクロス、プリプレグ、及び、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板における絶縁材料として、ガラスクロスにエポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等の樹脂を含浸させたプリプレグが用いられている。前記ガラスクロスは、複数本のガラスフィラメントが集束されてなる経糸と緯糸とから構成されている。
【0003】
電子機器の小型化、薄型化のために、前記プリント配線板及び前記プリプレグも薄型化が求められている。このため厚さの低減されたガラスクロスが求められている。厚さの低減されたガラスクロスとして、繊維径の小さいガラスフィラメントを少数集束してなる、経糸及び緯糸を用い、経糸織密度及び緯糸織密度を高め、かつ、強い開繊処理を行って、経糸幅及び緯糸幅を増加させたガラスクロスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、データ通信の高速化、高周波化に伴い、前記プリント配線板において、信号品質を低下させるスキューと呼ばれる歪による信号劣化がより顕著になることが知られており、信号伝送時の信号品質の劣化抑制(遅延時間差の低減)が求められている。また、薄型化したプリント配線板の需要の拡大に伴い、ガラスクロスの供給速度の向上が求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のガラスクロスでは、フィラメント本数の少なさや、強い開繊処理等に起因して、経糸間又は緯糸間に存在する空隙、特に緯糸を構成するガラスフィラメント間の空隙、経糸又は緯糸の糸幅のばらつきが生じており、プリント配線板中にガラスクロスが存在しない部分が生じるという問題がある。また、前記プリント配線板中にガラスクロスが存在しない部分が生じると、十分な遅延時間差の低減を実現することができないという不都合がある。また、前記従来のガラスクロスでは、織密度の高さに起因して、十分な生産性を実現することができないという不都合がある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる不都合を解消して、プリント配線板の遅延時間差を低減して、信号品質の劣化を抑制することができ、高い生産性を実現することができるガラスクロスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明のガラスクロスは、それぞれ複数本のガラスフィラメントが集束されてなる経糸と緯糸とから構成されるガラスクロスであって、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、それぞれ独立に、0.5μm以上4.5μm以下の範囲にあり、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ft、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyが、それぞれ独立に、150本以上3000本以下の範囲にあり、前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ独立に、1.0本/25mm以上50.0本/25mm以下の範囲にあり、前記経糸の平均糸幅Bt、及び、前記緯糸の平均糸幅Byが、それぞれ独立に、550μm以上10000μm以下の範囲にあり、前記Dt、Ft、Wt及びBtから次式(1)により求められる、経糸開繊効率係数Ptが、0.600以上1.500以下の範囲にあり、前記Dy、Fy、Wy及びByから次式(2)により求められる、緯糸開繊効率係数Pyが、0.600以上1.500以下の範囲にあり、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dtに対する前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ftの比(Ft/Dt)であるRt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyに対する前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyの比(Fy/Dy)であるRyが、それぞれ独立に、68.6以上555.5以下の範囲にあり、前記Pt及びPyが、次式(3)を満たし、厚さが10.0μm未満であることを特徴とする。
Pt={(Bt/(Dt×Ft))×Bt/(25000/Wt)}1/2×{(Dt×Ft)/(25000/Wt)} ・・・(1)
Py={(By/(Dy×Fy))×By/(25000/Wy)}1/2×{(Dy×Fy)/(25000/Wy)} ・・・(2)
0.770≦(Pt×Py)1/2≦1.200 ・・・(3)
【0009】
本発明のガラスクロスによれば、前記構成を備えることにより、プリント配線板の遅延時間差を低減して、信号品質の劣化を抑制することができ、高い生産性を実現することができる。
【0010】
また、本発明のガラスクロスは、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、それぞれ独立に、2.0μm以上3.8μm以下の範囲にあり、前記Pt及びPyが、次式(4)を満たすことが好ましい。
0.890≦(Pt×Py)1/2≦0.970 ・・・(4)
【0011】
また、本発明は、本発明のガラスクロスを含むプリプレグ、及び、本発明のガラスクロスを含むプリント配線板にもある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0013】
本実施形態のガラスクロスは、それぞれ複数本のガラスフィラメントが集束されてなる経糸と緯糸とから構成されるガラスクロスであって、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、それぞれ独立に、0.5μm以上4.5μm以下の範囲にあり、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ft、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyが、それぞれ独立に、150本以上3000本以下の範囲にあり、前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ独立に、1.0本/25mm以上50.0本/25mm以下の範囲にあり、前記経糸の平均糸幅Bt、及び、前記緯糸の平均糸幅Byが、それぞれ独立に、550μm以上10000μm以下の範囲にあり、前記Dt、Ft、Wt及びBtから次式(1)により求められる、経糸開繊効率係数Ptが、0.600以上1.500以下の範囲にあり、前記Dy、Fy、Wy及びByから次式(2)により求められる、緯糸開繊効率係数Pyが、0.600以上1.500以下の範囲にあり、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dtに対する前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ftの比(Ft/Dt)であるRt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyに対する前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyの比(Fy/Dy)であるRyが、それぞれ独立に、68.6以上555.5以下の範囲にあり、前記Pt及びPyが、次式(3)を満たし、厚さが10.0μm未満であることを特徴とする。
Pt={(Bt/(Dt×Ft))×Bt/(25000/Wt)}1/2×{(Dt×Ft)/(25000/Wt)} ・・・(1)
Py={(By/(Dy×Fy))×By/(25000/Wy)}1/2×{(Dy×Fy)/(25000/Wy)} ・・・(2)
0.770≦(Pt×Py)1/2≦1.200 ・・・(3)
【0014】
本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、又は、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、0.5μm未満では、連続的な安定生産が難しい。一方、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt又は前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、それぞれ独立に、4.5μm超では、ガラスクロスを十分に薄型化することができない。
【0015】
前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、又は、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyは、それぞれ独立に、好ましくは、2.0~3.8μmの範囲であり、より好ましくは、2.5~3.7μmの範囲であり、さらに好ましくは、2.6~3.6μmの範囲である。
【0016】
また、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyに対する前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dtの比Dt/Dyは、例えば、0.90以上1.10以下の範囲であり、好ましくは0.95以上1.05以下の範囲であり、より好ましくは、0.97以上1.03以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.98以上1.02以下の範囲であり、特に好ましくは、0.99以上1.01以下の範囲であり、最も好ましくは、1.00である。
【0017】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ft、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyが、それぞれ独立に、150本未満であると、フィラメント間の間隙の発生を十分に抑制することができない場合がある。一方、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ft、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyが、それぞれ独立に、3000本超では、ガラスクロスを十分に薄型化することができない。
【0018】
前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ft、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyは、それぞれ独立に、好ましくは、415本以上990本以下の範囲である。
【0019】
また、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyに対する前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ftの比Ft/Fyは、例えば、0.90以上1.10以下の範囲であり、好ましくは、0.95以上1.05以下の範囲であり、より好ましくは、0.97以上1.03以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.98以上1.02以下の範囲であり、特に好ましくは、0.99以上1.01以下の範囲であり、最も好ましくは、1.00である。
【0020】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ独立に、1.0本/25mm未満であると、経糸間又は緯糸間の空隙の発生を十分に抑制できない場合がある。一方、前記経糸の織密度Wt及び緯糸の織密度Wyが、それぞれ独立に、50.0本/25mm超では、ガラスクロスの生産性を十分に高めることができない。
【0021】
前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyは、それぞれ独立に、好ましくは、2.0本/25mm以上40.0本/25mm以下の範囲であり、より好ましくは、3.0本/25mm以上33.0本/25mm以下の範囲であり、さらに好ましくは、3.8本/25mm以上29.0本/25mm以下の範囲である。
【0022】
また、前記緯糸の織密度Wyに対する前記経糸の織密度Wtの比Wt/Wyは、例えば、0.90以上1.10以下の範囲であり、好ましくは、0.95以上1.05以下の範囲であり、より好ましくは、0.97以上1.03以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.98以上1.02以下の範囲であり、特に好ましくは、0.99以上1.01以下の範囲であり、最も好ましくは、1.00である。
【0023】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸の平均糸幅Bt及び前記緯糸の平均糸幅Byが、それぞれ独立に、550μm未満であると、経糸間又は緯糸間の空隙の発生を十分に抑制できない場合がある。一方、前記経糸の平均糸幅Bt及び前記緯糸の平均糸幅Byが、それぞれ独立に、10000μm超であると、フィラメント間の空隙の発生を十分に抑制できない場合がある。
【0024】
前記経糸の平均糸幅Bt及び前記緯糸の平均糸幅Byは、それぞれ独立に、好ましくは、1000μm以上5500μm以下の範囲であり、より好ましくは、1200μm以上3450μm以下の範囲である。
【0025】
また、前記緯糸の平均糸幅Byに対する前記経糸の平均糸幅Btの比Bt/Byは、例えば、0.80以上1.20以下の範囲であり、好ましくは、0.85以上1.15以下の範囲であり、より好ましくは、0.90以上1.10以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.93以上1.07以下の範囲であり、特に好ましくは、0.95以上1.05以下の範囲であり、殊に好ましくは、0.96以上1.04以下の範囲であり、最も好ましくは、0,97以上1.03以下の範囲である。
【0026】
経糸の糸幅の変動係数(経糸の糸幅の標準偏差/経糸の平均糸幅Bt)、及び、緯糸の糸幅の変動係数(緯糸の糸幅の標準偏差/緯糸の平均糸幅By)は、それぞれ独立に、例えば、0.20以下であり、好ましくは、0.15以下であり、より好ましくは、0.10以下であり、さらに好ましくは、0.05以下である。また、前記経糸の糸幅の変動係数及び緯糸の糸幅の変動係数の下限値としては、0.01を挙げることができる。また、前記経糸の糸幅の変動係数と、前記緯糸の糸幅の変動係数との平均値は、例えば、0.20以下であり、好ましくは、0.15以下であり、より好ましくは、0.10以下であり、さらに好ましくは、0.05以下である。
【0027】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸開繊効率係数Ptが、0.600未満又は1.500超では、プリント配線板の遅延時間差を低減することが困難になる。前記経糸開繊効率係数Ptは、前記Dt、Ft、Wt及びBtから前記式(1)により求められる。
【0028】
前記経糸開繊効率係数Ptは、好ましくは、0.770以上1.200以下の範囲であり、より好ましくは、0.800以上1.100以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.890以上1.000以下の範囲であり、特に好ましくは、0.925以上0.970以下の範囲である。
【0029】
ここで、前記式(1)において、「Bt/(Dt×Ft)」部分は、前記経糸を構成するフィラメントにおいて、該フィラメント間の空隙、又は、該フィラメント同士の重なりの発生度合いを反映している。「Bt/(Dt×Ft)」が1.000を超えて大きい程、前記フィラメント間に空隙が生じ、この空隙に起因して、プリント配線板の遅延時間差の低減が困難になる傾向にある。一方、「Bt/(Dt×Ft)」が1.000未満で小さい程、前記フィラメント同士の重なりが発生し、この重なりに起因して、プリント配線板の遅延時間差の低減が困難になる傾向にある。
【0030】
また、前記式(1)において、「Bt/(25000/Wt)」部分は、前記経糸間の空隙、又は、前記経糸同士の重なりの発生度合いを反映している。「Bt/(25000/Wt)」が1.000を超えて大きい程、前記経糸の端部同士における重なりが発生し、この重なりに起因して、プリント配線板の遅延時間差の低減が困難になる傾向にある。一方、「Bt/(25000/Wt)」が1.000未満で小さい程、前記経糸間に空隙が生じ、この空隙に起因して、プリント配線板の遅延時間差の低減が困難になる傾向にある。
【0031】
また、前記式(1)において、「(Dt×Ft)/(25000/Wt)」部分は、前述のとおり、「Bt/(Dt×Ft)」部分及び「Bt/(25000/Wt)」がいずれも1.000に近いことが好ましいところ、「Bt/(Dt×Ft)」部分及び「Bt/(25000/Wt)」がいずれも1.000に近い場合に、前記式(1)の値を1.000に近づける機能を果たしている。したがって、前記式(1)は、前述の傾向を反映し、前記経糸を構成するフィラメント間の空隙若しくは重なり、又は、前記経糸間の空隙若しくは重なりに起因するプリント配線板の遅延時間差の低減可能性を示している。
【0032】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記緯糸開繊効率係数Pyが、0.600未満又は1.500超では、プリント配線板の遅延時間差を低減することが困難になる。前記緯糸開繊効率係数Pyは、前記Dy、Fy、Wy及びByから前記式(2)により求められる。
【0033】
前記緯糸開繊効率係数Pyは、好ましくは、0.770以上1.200以下の範囲であり、より好ましくは、0.800以上1.100以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.890以上1.000以下の範囲であり、特に好ましくは、0.925以上0.970以下の範囲である。
【0034】
ここで、前記式(2)は、前記式(1)と同様に、前記緯糸を構成するフィラメント間の空隙若しくは重なり、又は、緯糸間の空隙若しくは重なりに起因するプリント配線板の遅延時間差の低減可能性を示している。
【0035】
また、前記式(3)は、前記式(1)及び前記式(2)の前述の特徴を反映し、ガラスクロス全体における、フィラメント間の空隙若しくは重なり、又は、糸間の空隙若しくは重なりに起因するプリント配線板の遅延時間差の低減可能性を示している。
【0036】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記Rt、及び、Ryが、それぞれ独立に、68.6未満では、プリント配線板の遅延時間差低減及びガラスクロスの薄型化を実現しつつ、ガラスクロスの生産性を高めることが困難になる。
【0037】
一方、前記Rt、及び、Ryが、それぞれ独立に、555.5超では、経糸幅又は緯糸幅を安定させることが困難であり、糸幅のばらつきにより生じる経糸間又は緯糸間の空隙に起因する、プリント配線板の遅延時間差を低減することが困難になる。
【0038】
前記Rtは、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dtに対する前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Ftの比(Ft/Dt)である。また、前記Ryは、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyに対する前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント本数Fyの比(Fy/Dy)である。
【0039】
前記Rt及びRyは、それぞれ独立に、好ましくは、115.5以上277.2以下の範囲である。
【0040】
また、前記Ryに対する、前記Rtの比Rt/Ryは、例えば、0.90以上1.10以下の範囲であり、好ましくは、0.95以上1.05以下の範囲であり、より好ましくは、0.97以上1.03以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.98以上1.02以下の範囲であり、特に好ましくは、0.99以上1.01以下の範囲であり、最も好ましくは、1.00である。
【0041】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記Pt及びPyは、好ましくは、次式(3-1)を満たし、より好ましくは、次式(3-2)を満たし、さらに好ましくは、次式(3-3)を満たす。
0.800 ≦ (Pt×Py)1/2 ≦ 1.100 ・・・(3-1)
0.890 ≦ (Pt×Py)1/2 ≦ 0.970 ・・・(3-2)
0.900 ≦ (Pt×Py)1/2 ≦ 0.952 ・・・(3-3)
【0042】
また、前記Pyに対する前記Ptの比Pt/Pyは、例えば、0.80以上1.20以下の範囲であり、好ましくは、0.85以上1.15以下の範囲であり、より好ましくは、0.90以上1.10以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.93以上1.07以下の範囲であり、特に好ましくは、0.95以上1.05以下の範囲であり、殊に好ましくは、0.96以上1.04以下の範囲であり、最も好ましくは、0,97以上1.03以下の範囲である。
【0043】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸及び緯糸のtex番手(1km当たりの質量グラム数)は、それぞれ独立に、例えば、3.0~50.0tex(g/km)の範囲にあり、より好ましくは、3.5~25.0tex(g/km)の範囲にあり、さらに好ましくは、4.0~18.0tex(g/km)の範囲にある。
【0044】
本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸又は緯糸は、撚りがかけられていてもよい。この場合、前記経糸の撚数又は緯糸の撚数は、それぞれ独立に、例えば、1.00回/25mm以下の範囲であり、好ましくは、0.70回/25mm以下の範囲であり、より好ましくは、0.50回/25mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.40回/25mm以下の範囲であり、特に好ましくは0.20回/25mm以下の範囲であり、殊に好ましくは0.09回/25mm以下の範囲であり、最も好ましくは、0.00回/25mmである。ここで、前記経糸又は緯糸の撚数は、JIS R 3912:2000に準拠して、検撚器を用い、試験片の解撚に必要なターン数および試験片の解撚前の標準張力下での長さから算出して求めることができる。
【0045】
本実施形態のガラスクロスは、前述の構成を備えることにより、厚さが10.0μm未満であり、好ましくは、9.4μm以下、より好ましくは、9.0μm以下、さらに好ましくは、8.5μm以下である。本実施形態のガラスクロスの厚さの下限としては、例えば、2.0μmを挙げることができる。
【0046】
本実施形態のガラスクロスの単位面積当たりの質量は、例えば、5.0~30.0g/m2の範囲にあり、好ましくは、6.0~24.0g/m2の範囲にあり、さらに好ましくは、7.0~21.0g/m2の範囲にあり、特に好ましくは、8.0~16.0g/m2の範囲にある。ここで、ガラスクロスの単位面積当たりの質量は、JIS R 3420:2013に準拠した秤で、200mm×200mmの大きさにカットしたガラスクロスの質量を3点測定し、それぞれを1m2当たりの質量に換算した値の平均値である。
【0047】
本実施形態のガラスクロスにおいて、ガラスクロスの厚さに対する、ガラスクロスの単位面積当たりの質量の比(ガラスクロスの単位面積当たりの質量/ガラスクロスの厚さ)は、例えば、1.20~3.60の範囲にあり、好ましくは、1.25~2.50の範囲にあり、さらに好ましくは、1.30~1.95の範囲にある。
【0048】
また、本実施形態のガラスクロスは、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、それぞれ独立に、2.0μm以上3.8μm以下の範囲にあり、前記Pt及びPyが、次式(4)を満たすことが好ましい。
0.890≦(Pt×Py)1/2≦0.970 ・・・(4)
【0049】
前記経糸又は緯糸のフィラメント径は、該経糸又は該緯糸の断面それぞれ50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:3000倍)で、該経糸又は該緯糸を構成するガラスフィラメントの直径を測定したときの測定値の平均値である。また、前記経糸又は緯糸を構成するガラスフィラメントの本数は、該経糸又は該緯糸の断面それぞれ50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:500倍)で、該経糸又は該緯糸を構成するガラスフィラメントの本数を計測したときの計測値の平均値である。
【0050】
また、前記経糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、緯方向の25mmの範囲にある該経糸の本数を数えることにより求めることができる。また、前記緯糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、経方向の25mmの範囲にある該緯糸の本数を数えることにより求めることができる。
【0051】
また、前記経糸又は緯糸の平均糸幅は、ガラスクロスのそれぞれ離間した位置から、100mm×100mmのサンプル3枚を切り出し、各サンプル当たりそれぞれ10本の該経糸又は該緯糸について、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX-6000、倍率:200倍)で測定したときの測定値の平均値である。
【0052】
また、前記ガラスクロスの厚さは、JIS R 3420:2013に準拠して、該ガラスクロス中15点でその厚さをマイクロメーターで測定したときの測定値の平均値である。
【0053】
前記ガラスフィラメントは、所定のガラスバッチ(ガラス原材料)を溶融して繊維化することにより得ることができ、例えば、Eガラス繊維(汎用ガラス繊維)組成、高強度ガラス繊維組成、低誘電率ガラス繊維組成等の組成を備えるものを用いることができる。
【0054】
ここで、前記Eガラス繊維組成は、SiO2を52~56質量%、B2O3を5~10質量%、Al2O3を12~16質量%、CaOとMgOとを合計20~25質量%、Na2OとK2OとLi2Oとを合計0~1質量%含む組成である。
【0055】
また、前記高強度ガラス繊維組成は、SiO2を57~70質量%、Al2O3を18~30質量%、CaOを0~13質量%、MgOを5~15質量%、Na2OとK2OとLi2Oとを合計0~1質量%、TiO2を0~1質量%、B2O3を0~2質量%含む組成である。
【0056】
また、前記低誘電率ガラス繊維組成は、SiO2を48~62質量%、B2O3を17~26質量%、Al2O3を9~18質量%、CaOを0.1~9質量%、MgOを0~6質量%、Na2OとK2OとLi2Oとを合計0.05~0.5質量%、TiO2を0~5質量%、SrOを0~6質量%、F2とCl2とを合計で0~3質量%、P2O5を0~6質量%含む組成である。
【0057】
前記ガラスフィラメントは、汎用性の観点からは前記Eガラス繊維組成であることが好ましく、プリプレグとした際の反りの抑制という観点からは前記高強度ガラス繊維組成であることが好ましい。このとき、前記高強度ガラス繊維組成は、SiO2を64~66質量%、Al2O3を24~26質量%、MgOを9~11質量%含み、SiO2とAl2O3とMgOとを合計で99質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0058】
前記ガラスフィラメントは、150~3000本の範囲の本数で、それ自体公知の方法により集束され、巻き取りチューブに巻きとられ、又は、さらに前記巻き取りチューブからボビンに巻き戻される。集束された前記ガラスフィラメント(ガラスストランド)が前記巻き取りチューブに巻き取られたものをケーキと呼ぶことがある。また、前記ガラスストランドが前記ボビンに巻き付けられたものをガラスヤーンパッケージと呼ぶことがある。
【0059】
ここで、前記ガラスフィラメントは、通常、円形の断面形状を備えるが、楕円形、長円形等の扁平な断面形状を備えてもよい。前記ガラスフィラメントが扁平な断面形状を備える場合、長径/短径の割合は、例えば、1.1~10.0の範囲にある。また、前記ガラスフィラメントが扁平な断面形状を備える場合、そのフィラメント径とは、当該扁平な断面形状と同じ面積を備える円の直径を意味する。なお、前記ガラスフィラメントが円形の断面形状を備える場合には、前記長径/短径の割合は、1.0に相当する。
【0060】
前記ケーキから前記ガラスストランドを引き出し、又は、前記ガラスヤーンパッケージから前記ガラスヤーンを引き出し、必要に応じて、前記ガラスストランド又は前記ガラスヤーンパッケージの撚数を調整し、糸開繊処理を行うことで、本実施形態のガラスクロスに用いる、前記経糸及び緯糸を得ることができる。
【0061】
前記ガラスストランド又は前記ガラスヤーンパッケージの撚数の調整は、前記糸開繊維処理において、前記ガラスストランド又は前記ガラスヤーンパッケージが開繊し易くなるように行われる。前記ガラスストランド又は前記ガラスヤーンパッケージの撚数は、例えば、1.0回/25mm以下に調整され、0.7回/25mm以下に調整されることが好ましく、0.2回/25mm以下に調整されることがより好ましい。前記ガラスストランド又は前記ガラスヤーンパッケージの撚数の調整は、解撚機又は撚線機を用いて行うことができる。
【0062】
前記糸開繊処理としては、水流圧力による開繊、液体を媒体とした超音波等の高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等の糸開繊処理を挙げることができる。
【0063】
本実施形態のガラスクロスは、前記経糸と前記緯糸とを用い、それ自体公知の織機により製織し、開繊処理を行うことにより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができる。
【0064】
前記開繊処理としては、例えば、水流圧力による開繊、液体を媒体とした超音波等の高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等の開繊処理を挙げることができる。これらの開繊処理の中では、水流圧力による開繊処理、又は液体を媒体とした超音波等の高周波の振動による開繊処理を使用することが、前記経糸又は前記緯糸のそれぞれにおいて、前記開繊処理後の糸幅のバラツキが低減されるので好ましい。また、前記開繊処理は、複数の開繊処理方法を併用することにより、該開繊処理に起因する目曲がり等のガラスクロス外観上の欠陥の発生を抑制することができる。
【0065】
本実施形態のガラスクロスは、その表面に、シランカップリング剤を含む処理液を付着させる表面処理がなされてもよい。ここで、表面処理は、例えば、それ自体公知の方法で前記シランカップリング剤を含む処理液を塗布し、乾燥させることで行うことができる。
【0066】
前記シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシランを挙げることができる。本実施形態のガラスクロスにおいて、前記シランカップリング剤は単独で用いてもよく、又は、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
前記アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0068】
前記クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0069】
エポキシシランとしては、β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0070】
前記メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0071】
前記ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0072】
前記(メタ)アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0073】
また、前記シランカップリング剤を含む処理液は、シランカップリング剤以外に、例えば、界面活性剤、pH調整剤を含んでもよい。
【0074】
前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。本実施形態のガラスクロスにおいて、前記界面活性剤は単独で用いてもよく、又は、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
前記ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0076】
前記カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩を挙げることができる。前記高級アルキルアミン塩としては、酢酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。
【0077】
前記アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩を挙げることができる。
【0078】
前記両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタインなどのベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤を挙げることができる。
【0079】
前記pH調整剤としては、酢酸、ギ酸、プロピオン酸を挙げることができる。
【0080】
本実施形態のガラスクロスが表面処理されて、有機物が付着している場合、該有機物の付着量は、例えば、該有機物の付着したガラスクロス100質量部に対して、0.05~5.00質量部の範囲にある。ここで、前記有機物の付着したガラスクロスの質量に対する該有機物の質量の割合は、JIS R 3420:2013に準拠して、試験片の加熱乾燥前後の質量を測定することによって求めることができる。なお、加熱乾燥により、ガラスクロスの質量が減少する場合には、この減少量を考慮して、前記有機物の付着量を測定する。
【0081】
本実施形態のプリプレグは、前述した本実施形態のガラスクロスを含む。
【0082】
本実施形態のプリプレグは、前述したガラスクロスに、それ自体公知の方法により、樹脂を含浸させ、半硬化させることにより得ることができる。
【0083】
本実施形態のプリプレグにおいて、前述したガラスクロスに含浸される樹脂は、特に限定されない。このような樹脂として、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、変性ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂等を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブチレンテレフタート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリエステル(LCP)、シクロオレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0084】
また、本実施形態のプリント配線板は、前記本実施形態のガラスクロスを含むプリプレグから形成される。
【0085】
本実施形態のガラスクロスはプリント配線板の他、電子機器の筐体、燃料電池のセパレーター等に好適に使用することができる。
【0086】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0087】
〔参考例1〕
本参考例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸との元になるガラスヤーンを得た。前記経糸と前記緯糸とは、それぞれフィラメント径(Dt、Dy)が3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数(Ft、Fy)38本で集束されてなり、0.99tex(g/km)の質量を備えていた。
【0088】
次に、前記経糸と前記緯糸とをレピア織機を用いて製織し、前記経糸の織密度(Wt)を105本/25mm、緯糸の織密度(Wy)を110本/25mmとして、平織ガラスクロスを得た。次に、前記平織ガラスクロスに、脱油処理、表面処理及び開繊処理を施した。
【0089】
前記脱油処理としては、前記平織ガラスクロスを雰囲気温度が350℃~400℃の加熱炉内に60時間配置し、該平織ガラスクロスに付着している紡糸用集束剤と製織用集束剤とを加熱分解する処理を行った。また、前記表面処理としては、前記平織ガラスクロスにメタクリルシランを塗布し、130℃の加熱炉内に連続的に通しながら硬化させる処理を行った。また、前記開繊処理としては、前記平織ガラスクロスの経糸に50Nの張力をかけ、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行った。
【0090】
なお、前記開繊処理以外の工程で前記平織ガラスクロスの経糸にかかる張力は、70~120Nであり、前記開繊処理においては、張力検出器により検出された張力の値を、前記平織ガラスクロスを搬送するガイドローラにフィードバックし、該ガイドローラの位置を変化させることにより張力を調整した。この結果、表2に示すガラスクロスを得た。
【0091】
次に、本参考例で得られたガラスクロスをメチルエチルケトンで希釈したエポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON121N-80N)中に浸漬して、該ガラスクロスに樹脂を含浸させ、幅13μmのスリット間を通過させて余剰の樹脂を除去した後、乾燥機にて、150℃の温度下に1分間保持して、前記エポキシ樹脂を含浸させたガラスクロスを半硬化させてプリプレグを調製した。
【0092】
次に、得られたプリプレグを4枚重ねて200℃、2時間、3MPaの条件で加熱加圧することにより、該プリプレグの硬化物としての評価基板Aを調製した。
【0093】
次に、得られたプリプレグを3枚重ねて、その両側に、銅箔(古河電気工業株式会社製、商品名:FV-WS)を配置して、200℃、2時間、3MPaの条件で加熱加圧して、両面に銅箔が接着された200μmの厚さの銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板Bを調製した。
【0094】
次に、評価基板Bの一方の金属箔(銅箔)を加工して、線幅100~300μm、線長100mm、線間20mmの配線を10本形成した。評価基板Bの前記配線を形成した側の表面上にプリプレグと金属箔(銅箔)とを2次積層することによって、3層板を作製した。なお、配線の線幅は、3層板を作製した後の回路の特性インピーダンスが50Ωとなるように調整した。
【0095】
次に、前記3層板の20GHzでの遅延時間を測定し、得られた遅延時間の最大値と最小値との差を、遅延時間差として算出した。
【0096】
前記遅延時間差が大きいと、差動信号のスキューによる信号品質の劣化が発生しやすく、遅延時間差が小さいと、スキューによる信号品質の劣化が発生しにくい傾向がある。そこで、前記遅延時間差を指標として、スキューによる信号品質を評価することができる。
【0097】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸の元になるガラスヤーンを得た。前記ガラスヤーンは、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数496本で集束されてなり、12.92tex(g/km)の質量を備えていた。
【0098】
次に、ボビンに巻き取られた前記ガラスヤーンを、該ガラスヤーンが備える撚りの方向とは逆方向の撚りをかけながら、該ボビンから引き出し、撚りがない状態として送出し、60℃の水槽中で、周波数100kHz、出力1.2kWの振動子から発生される超音波を作用させて該ガラスヤーンを開繊させた。次に、前記ガラスヤーンの開繊方向と、前記ボビンの長さ方向とが平行になるように、開繊されたガラスヤーン(開繊ガラスヤーン)をボビンに巻き取り、開繊ガラスヤーンパッケージを得た。
【0099】
経糸と緯糸との元になる前記開繊ガラスヤーンの平均糸幅は1700μmであった。ここで、前記開繊ガラスヤーンの平均糸幅は、該開繊ガラスヤーンの糸幅を、10cm毎に30ヶ所、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX-6000)を用いて測定した測定値から算出した。
【0100】
次に、複数の前記開繊ガラスヤーンパッケージから前記開繊ガラスヤーンを経糸又は緯糸として引き出し、レピア織機を用いて、経糸織密度(Wt)を14.0本/25mm、緯糸織密度(Wy)を14.0本/25mmとして、平織ガラスクロスを製織した。次に、前記平織ガラスクロスに、参考例1と全く同一にして、脱油処理、表面処理及び開繊処理を施した。この結果、表1に示すガラスクロスを得た。
【0101】
次に、本実施例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0102】
次に、本実施例のガラスクロスについて、次のようにして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表1に示す。
【0103】
[遅延時間差低減]
参考例1の遅延時間差を基準にして、遅延時間差が50%以下の場合を「A(優)」、50%超90%以下の場合を「B(良)」、90%超の場合を「C(可~同等)」と評価する。
【0104】
[ガラスクロス糸幅安定性]
ガラスクロスのそれぞれ離間した位置から、100mm×100mmのサンプル3枚を切り出し、各サンプル当たりそれぞれ10本の経糸又は緯糸について、糸幅を、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX-6000)を用いて測定する。得られた測定値から、前記経糸及び前記緯糸について、平均値及び標準偏差を算出し、該平均値及び該標準偏差から変動係数(標準偏差/平均値)を算出する。次いで、前記経糸の変動係数と、前記緯糸の変動係数との平均値(平均変動係数)を算出する。前記平均変動係数が、0.10以下である場合を「A」、0.10超である場合を「B」と評価する。
【0105】
[ガラスクロス生産性]
レピア織機を用いて、1000mのガラスクロスを製織する時間(1000m製織時間)を測定し、参考例1の1000m製織時間を基準として、1000m製織時間が30%以下の場合に、「OK」、30%超の場合に、「NG」と評価する。
【0106】
〔実施例2〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数334本で集束されてなり、8.70tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを開繊して得られた、平均糸幅が1081μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を20.8本/25mm、緯糸織密度(Wy)を20.8本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表1に示すガラスクロスを得た。
【0107】
次に、本実施例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0108】
次に、本実施例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
〔実施例3〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径2.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数360本で集束されてなり、4.89tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを開繊して得られた、平均糸幅が925μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を26.0本/25mm、緯糸織密度(Wy)を26.0本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表1に示すガラスクロスを得た。
【0110】
次に、本実施例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0111】
次に、本実施例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例4〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数1500本で集束されてなり、39.08tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを開繊して得られた、平均糸幅が5260μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を4.7本/25mm、緯糸織密度(Wy)を4.7本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表1に示すガラスクロスを得た。
【0113】
次に、本実施例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0114】
次に、本実施例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表1に示す。
【0115】
〔実施例5〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数496本で集束されてなり、12.92tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを、周波数100kHz、出力1.6kWの振動子を使用した以外は実施例1と全く同一にして開繊して得られた、平均糸幅が2230μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を14.0本/25mm、緯糸織密度(Wy)を14.0本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表1に示すガラスクロスを得た。
【0116】
次に、本実施例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0117】
次に、本実施例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表1に示す。
【0118】
〔実施例6〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径4.0μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数550本で集束されてなり、17.69tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを開繊して得られた、平均糸幅が2120μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を11.3本/25mm、緯糸織密度(Wy)を11.3本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表1に示すガラスクロスを得た。
【0119】
次に、本実施例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0120】
次に、本実施例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表1に示す。
【0121】
〔比較例1〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数496本で集束されてなり、12.92tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを、周波数100kHz、出力0.6kWの振動子を使用した以外は実施例1と全く同一にして開繊して得られた、平均糸幅が891μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を28.0本/25mm、緯糸織密度(Wy)を28.0本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表2に示すガラスクロスを得た。
【0122】
次に、本比較例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0123】
次に、本比較例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表2に示す。
【0124】
〔比較例2〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数496本で集束されてなり、12.92tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを、周波数100kHz、出力0.8kWの振動子を使用した以外は実施例1と全く同一にして開繊して得られた、平均糸幅が1158μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を14.0本/25mm、緯糸織密度(Wy)を14.0本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表2に示すガラスクロスを得た。
【0125】
次に、本比較例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0126】
次に、本比較例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表2に示す。
【0127】
〔比較例3〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数2500本で集束されてなり、65.13tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを開繊して得られた、平均糸幅が8760μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を2.8本/25mm、緯糸織密度(Wy)を2.8本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表2に示すガラスクロスを得た。
【0128】
次に、本比較例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0129】
次に、本比較例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表2に示す。
【0130】
〔比較例4〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数160本で集束されてなり、4.17tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを開繊して得られた、平均糸幅が550μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を43.4本/25mm、緯糸織密度(Wy)を43.4本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表2に示すガラスクロスを得た。
【0131】
次に、本比較例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0132】
次に、本比較例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表2に示す。
【0133】
〔比較例5〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して、経糸及び緯糸の元になるガラスヤーンとして、フィラメント径5.0μmのガラスフィラメントが、フィラメント本数689本で集束されてなり、34.63tex(g/km)の質量を備えるガラスヤーンを得た。次に、前記ガラスヤーンを開繊して得られた、平均糸幅が3250μmの開繊ガラスヤーンを用い、経糸織密度(Wt)を7.3本/25mm、緯糸織密度(Wy)を7.3本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、表2に示すガラスクロスを得た。
【0134】
次に、本比較例のガラスクロスを用いた以外は、参考例1と全く同一にして、プリプレグ、該プリプレグの硬化物としての評価基板A、銅箔張積層板(金属張積層板)としての評価基板B、3層板を調製し、該3層板の遅延時間差を算出した。
【0135】
次に、本比較例のガラスクロスについて、実施例1と全く同一にして、遅延時間差低減、ガラスクロス糸幅安定性、ガラスクロス生産性を評価した。結果を表2に示す。
【0136】
【0137】
【0138】
表1から、本発明に係る実施例1~6のガラスクロスによれば、経糸及び緯糸の糸幅が安定しており、プリント配線板の遅延時間差を低減して、信号品質の劣化を抑制することができ、高い生産性を実現することができることが明らかである。
【0139】
一方、表2から、経糸開繊効率係数Pt及び緯糸開繊効率係数Pyが前記式(3)を満たさない、比較例1、2のガラスクロスによれば、遅延時間差低減が参考例1のガラスクロスに対し可~同等であることが明らかである。
【0140】
また、前記Rt及びRyが、555.5超である、比較例3のガラスクロスによれば、遅延時間差低減が参考例1のガラスクロスに対し可~同等であり、かつ、ガラスクロス糸幅安定性に劣ることが明らかである。
【0141】
また、前記Rt及びRyが68.6未満である、比較例4のガラスクロスによれば、ガラスクロス生産性に難があることが明らかである。
【0142】
また、前記経糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt、及び、前記緯糸を構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、4.5μm超である比較例5のガラスクロスによれば、厚さが10.0μm超であることが明らかである。
【要約】
プリント配線板の遅延時間差を低減し、高い生産性を実現できるガラスクロスを提供する。ガラスクロスは、経糸及び緯糸のガラスフィラメント径がそれぞれ0.5~4.5μm、フィラメント本数がそれぞれ150~3000本、織密度がそれぞれ1.0~50.0本/25mm、平均糸幅がそれぞれ550~10000μm、開繊効率係数がそれぞれ0.600~1.500、フィラメント径に対するフィラメント本数の比が、それぞれ68.6~555.5、経糸及び緯糸の開繊効率係数の幾何平均が0.770~1.200、厚さが10.0μm未満である。