(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ワイパー
(51)【国際特許分類】
B21D 7/025 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
B21D7/025 B
(21)【出願番号】P 2019212147
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】奥田 将成
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167470(JP,A)
【文献】特開2004-009125(JP,A)
【文献】特開2003-136147(JP,A)
【文献】特開平08-192229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを曲げ型の形状に応じて曲げ加工するパイプベンダー用のワイパーであって、
前記パイプの表面が摺動する摺動面を含むガイド部材と、
前記ガイド部材を保持するベース部材と、
を備え、
前記ベース部材は、
前記ガイド部材を保持する固定面を有する主平板部と、
前記主平板部と各々連続し、前記ガイド部材が前記固定面に保持される方向とは垂直な方向で前記ガイド部材を挟み込む第1側板部及び第2側板部とを有し、
前記第1側板部又は前記第2側板部の少なくとも一方は、前記パイプの摺動方向とは逆方向に向かって面し、前記ガイド部材の一部が当接する当接面を有する、ワイパー。
【請求項2】
前記ガイド部材の少なくとも1つは、前記パイプの摺動方向に沿った前記ベース部材の延伸方向で、前記曲げ型に近接する側の先端に保持される、請求項1
に記載のワイパー。
【請求項3】
パイプを曲げ型の形状に応じて曲げ加工するパイプベンダー用のワイパーであって、
前記パイプの表面が摺動する摺動面を含むガイド部材と、
前記ガイド部材を保持するベース部材と、
を備え、
前記ベース部材は、前記パイプの摺動方向とは逆方向に向かって面し、前記ガイド部材の一部が当接する当接面を有し、
前記ガイド部材は、前記パイプの摺動方向に沿って複数あり、
前記ガイド部材の1つは、前記パイプの摺動方向に沿った前記ベース部材の延伸方向で、前記曲げ型に近接する側の先端に保持され、
前記ベース部材は、複数の前記ガイド部材のうち第1ガイド部材と第2ガイド部材との間にある領域に開口部を有する、
ワイパー。
【請求項4】
前記ガイド部材の材質は、前記ベース部材の材質よりも高温耐性に優れる、請求項1~
3のいずれか1項に記載のワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パイプベンダー用のワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管等のパイプを所望の形状に曲げる装置として、パイプベンダーが存在する。特許文献1は、パイプベンダーにおいて、曲げ工程時にパイプの曲げ内側にしわが発生することを抑えるためのワイパーに関連する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているワイパーには、パイプPと接触する部分として、パイプPの円形断面に対応した直線溝が形成されている。曲げ加工時のパイプPの姿勢に対する当該直線溝の位置は、曲げ加工精度に影響し得る。ここで、特許文献1に開示されているワイパーでは、ベース部材に対して着脱可能で、直線溝を有するガイド部材が設けられている。しかし、当該ガイド部材は、パイプの摺動方向に沿った方向でベース部材に対してボルト止めされているので、パイプから受ける摩擦力に起因して、ベース部材に対してガイド部材の位置がずれるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、ベース部材に対するガイド部材の位置ずれを抑えるのに有利なパイプベンダー用のワイパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るワイパーは、パイプを曲げ型の形状に応じて曲げ加工するパイプベンダー用のワイパーであって、パイプの表面が摺動する摺動面を含むガイド部材と、ガイド部材を保持するベース部材と、を備え、ベース部材は、ガイド部材を保持する固定面を有する主平板部と、主平板部と各々連続し、ガイド部材が固定面に保持される方向とは垂直な方向でガイド部材を挟み込む第1側板部及び第2側板部とを有し、第1側板部又は第2側板部の少なくとも一方は、パイプの摺動方向とは逆方向に向かって面し、ガイド部材の一部が当接する当接面を有する。
【0007】
上記のワイパーでは、ガイド部材の少なくとも1つは、パイプの摺動方向に沿ったベース部材の延伸方向で、曲げ型に近接する側の先端に保持されてもよい。また、パイプを曲げ型の形状に応じて曲げ加工するパイプベンダー用のワイパーであって、パイプの表面が摺動する摺動面を含むガイド部材と、ガイド部材を保持するベース部材と、を備え、ベース部材は、パイプの摺動方向とは逆方向に向かって面し、ガイド部材の一部が当接する当接面を有し、ガイド部材は、パイプの摺動方向に沿って複数あり、ガイド部材の1つは、パイプの摺動方向に沿ったベース部材の延伸方向で、曲げ型に近接する側の先端に保持され、ベース部材は、複数のガイド部材のうち第1ガイド部材と第2ガイド部材との間にある領域に開口部を有する。また、ガイド部材の材質は、ベース部材の材質よりも高温耐性に優れるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ベース部材に対するガイド部材の位置ずれを抑えるのに有利なパイプベンダー用のワイパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るワイパーを備えるパイプベンダーの主要部の平面図である。
【
図3】一実施形態に係るワイパーの表面側からみた分解図である。
【
図4】一実施形態に係るワイパーの裏面側から見た分解図である。
【
図5】一実施形態に係るワイパーに含まれるベース部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については図示を省略する。
【0011】
(パイプベンダー)
図1は、一実施形態に係るワイパー10を備えるパイプベンダー1の主要部の概略構成を示す平面図である。パイプベンダー1は、ワークであるパイプPを曲げる装置である。パイプPは、例えば、各種規格に準じた一般的な鋼管である。
図1(a)は、パイプPが曲げられる前のパイプベンダー1の状態を示している。一方、
図1(b)は、パイプPが曲げられた後のパイプベンダー1の状態を示している。以下の各図では、一例として、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な水平面内において、曲げ加工前のパイプPを曲げ型12側へ搬送する搬送方向Fに並行となるX軸を取り、X軸に垂直な方向にY軸を取る。
【0012】
パイプベンダー1は、パイプPの曲げ加工に要する主要部として、曲げ型12と、締め型13と、圧力型15と、ワイパー10とを備える。
【0013】
曲げ型12は、パイプPの曲げられる部分が押し付けられた状態で回転することで、パイプPを曲げる型である。曲げ型12は、円柱又は円板状の外形を有し、中心軸Oを中心に回転可能である。曲げ型12の外周には、パイプPの外周面を当接させる周溝12aが形成されている。周溝12aの断面形状は、パイプPの円形断面に対応した略半円形である。周溝12aの曲率半径は、パイプPの所望の曲げ形状に対応している。また、曲げ型12は、外周の一部に、直線状に延出されたクランプ部12bを有する。つまり、クランプ部12bでの周溝12aは、例外的に直線状である。
図1(a)に示される曲げ型12の位置が初期回転位置である。初期回転位置では、クランプ部12bは搬送方向Fに沿って延出している。なお、本実施形態における曲げ型12は、円柱又は円板状の外形を有するものとしているが、これに代えて、角が曲げられた四角柱又は四角板のような他の外形を有していてもよい。
【0014】
締め型13は、パイプPの曲げられる部分よりも先端側の部分を曲げ型12に押し付けて曲げ型12とともに回転する型である。なお、締め型は、クランプ型とも呼ばれる。締め型13は、曲げ型12と一体に回転可能な不図示のクランプ台上に設置される。つまり、締め型13は、中心軸O周りのクランプ台の回転駆動に伴って回転する。締め型13は、曲げ型12のクランプ部12bとの対向面に、パイプPの円形断面に対応する略半円形断面の押圧溝13aを有する。締め型13は、曲げ型12に対して近づいたり離れたりすることが可能である。曲げ型12の周溝12aと締め型13の押圧溝13aとの間にパイプPが存在するときに締め型13が移動してパイプPを加圧することで、パイプPを曲げ型12と締め型13とで挟み込ませることができる。
図1(a)に示される締め型13の位置が初期位置である。
【0015】
圧力型15は、締め型13の上流側に設置され、パイプPの曲げ外側と接触し、曲げ加工によるパイプPからの反力を受け止める型である。圧力型15は、パイプPとの接触面に、パイプPの円形断面に対応する略半円形断面の直線溝15aを有する。圧力型15は、パイプPに対して近づいたり離れたりすることが可能である。また、圧力型15は、パイプPの移動に追従して、搬送方向Fに受動的に移動可能である。
【0016】
ワイパー10は、曲げ型12の上流側の近傍に設置され、パイプPを挟んで圧力型15と対向し、曲げ加工時にパイプPの曲げ内側の表面に摺接することで、パイプPの内側にしわが形成されるのを抑える部材である。なお、ワイパーは、しわ抑えとも呼ばれる。本実施形態に係るワイパー10の詳細については、以下で説明する。
【0017】
また、パイプベンダー1には、不図示であるが、搬送方向Fの曲げ型12のさらに下流側に、パイプPを加熱する加熱ユニットが設置されていてもよい。加熱ユニットは、例えば、高周波誘導加熱方式又はバーナー加熱方式を採用し、曲げ加工に先立って、パイプPの曲げ加工部分を加熱する。加熱時には、後述するパイプ搬送装置によって、パイプPの曲げ加工部分が加熱ユニットに位置するようにパイプPが繰り出される。一方、加熱後には、パイプ搬送装置によって、パイプPの曲げ加工部分が、曲げ型12の近傍まで引き戻される。パイプPを加熱することでパイプPの変形抵抗が減少するので、パイプPに大きな曲げ歪を与えることができる。この結果、曲げ半径の小さい曲げ加工が可能になる。このような加熱ユニットによるパイプPの加熱は、パイプPの仕様及び曲げ加工の仕様に応じて必要であれば行われる。なお、加熱ユニットにより加熱されたパイプPに曲げ加工を行うことを熱間曲げと呼ぶこともある。
【0018】
さらに、パイプベンダー1は、不図示であるが、ワイパー10や圧力型15よりも上流側に、パイプPを搬送方向Fに沿って搬送させるパイプ搬送装置を備える。
【0019】
(ワイパー)
図2は、一実施形態に係るワイパー10の斜視図である。
図3は、パイプPと接触する側であるワイパー10の表面側からみた分解図である。
図4は、ワイパー10の裏面側から見た分解図である。
図5は、ワイパー10に含まれるベース部材20の斜視図である。
【0020】
ワイパー10は、ベース部材20と、2つのガイド部材、すなわち、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40とを備える。
【0021】
ベース部材20は、ワイパー10の本体を形成する。ベース部材20は、概略的には、パイプPの搬送方向Fに沿ったX方向を長手方向とする平板部材に、パイプPの表面の一部を収容するような溝加工を加えた形状を有する。具体的には、ベース部材20は、主平板部21と、主平板部21のX方向の一方の側部と連続する第1側板部22と、主平板部21のX方向の他方の側部と連続する第2側板部23とを有する。主平板部21は、おおよそXZ平面と平行である。第1側板部22及び第2側板部23は、それぞれ、おおよそXY平面と平行である。この場合、ワイパー10がパイプPに接触しているときには、パイプPの表面の一部が、主平板部21、第1側板部22及び第2側板部23の3つの部位に囲まれた空間に収容される。そして、曲げ加工時には、ワイパー10は、主平板部21に対して垂直なY方向に沿ってパイプPからの反力を受けることになる。
【0022】
また、ベース部材20は、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を保持する部位を有する。この保持部位の形状の説明に先立ち、まず、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40の形状について説明する。
【0023】
第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40は、それぞれ、パイプPの表面が摺動する摺動面を含み、ベース部材20に対して着脱自在である。
【0024】
第1ガイド部材30は、曲げ加工時にパイプPの下流側の表面に接触するガイド部材である。第1ガイド部材30は、パイプPの円形断面に対応する略半円形断面の第1直線溝31を有する。第1ガイド部材30では、第1直線溝31の表面が、パイプPの表面が摺動する摺動面となる。以下、第1直線溝31の延伸方向とは、X方向に沿っている方向であるものとする。
【0025】
第1ガイド部材30の第1直線溝31の反対側には、ベース部材20に連結される第1連結面32が形成されている。第1連結面32には、ベース部材20に第1ガイド部材30を取り付けるための第1ネジ50を係合させる複数の第1ネジ溝32aが形成されている。なお、本実施形態では、第1ネジ溝32aは、一例として4つある。
【0026】
第1ガイド部材30は、
図1に示すように、ワイパー10の部位のうち最も曲げ型12に近接する位置にある。そこで、第1ガイド部材30のX方向に沿った一端には、曲げ型12における周溝12aの曲率半径に合わせて、先端に向かうにつれて鋭利な形状となる曲面部33が形成されている。第1ガイド部材30では、このような曲面部33が存在することから、第1連結面32の一部も、曲面部33の形状に合わせた形状となる。
【0027】
第1ガイド部材30は、それぞれ、第1連結面32に連続し、第1直線溝31の延伸方向に沿った第1側部35と第2側部36とを有する。第1側部35と第2側部36とは、第1直線溝31を挟んで対向している。第1ガイド部材30がベース部材20に取り付けられたとき、第1側部35は、ベース部材20の第1側板部22の内面に対向し、第2側部36は、ベース部材20の第2側板部23の内面に対向する。
【0028】
また、第1ガイド部材30は、第1側部35の表面から突出する第1突出部37を有する。第1突出部37は、第1直線溝31の延伸方向と交差する第1付勢面37aを有する。同様に、第1ガイド部材30は、第2側部36の表面から突出する第2突出部38を有する。第2突出部38は、第1直線溝31の延伸方向と交差する第2付勢面38aを有する。ここで、第1付勢面37a及び第2付勢面38aは、それぞれ、第1直線溝31の延伸方向であるX方向に対して垂直なYX平面に平行な面であってもよい。
【0029】
一方、第2ガイド部材40は、曲げ加工時にパイプPの上流側の表面に接触するガイド部材である。第2ガイド部材40は、パイプPの円形断面に対応する略半円形断面の第2直線溝41を有する。第2ガイド部材40では、第2直線溝41の表面が、パイプPの表面が摺動する摺動面となる。以下、第2直線溝41の延伸方向とは、X方向に沿っている方向であるものとする。
【0030】
第2ガイド部材40の第2直線溝41の反対側には、ベース部材20に連結される第2連結面42が形成されている。第2連結面42には、ベース部材20に第2ガイド部材40を取り付けるための第2ネジ60を係合させる複数の第2ネジ溝42aが形成されている。なお、本実施形態では、第2ネジ溝42aは、一例として4つある。
【0031】
第2ガイド部材40は、第1ガイド部材30とは異なり、曲げ型12に近接する部材ではないので、第1ガイド部材30における曲面部33のような部分を含む必要はない。そのため、第2ガイド部材40は、第2連結面42に連続し、第2直線溝41の延伸方向とは垂直な2つの正面部を有する。これらの正面部のうち、第2直線溝41の延伸方向の下流側、換言すれば、第1ガイド部材30に対向する側のものが、第1正面部43である。
【0032】
また、第2ガイド部材40は、それぞれ、第2連結面42に連続し、第2直線溝41の延伸方向に沿った第1側部45と第2側部46とを有する。第1側部45と第2側部46とは、第2直線溝41を挟んで対向している。第2ガイド部材40がベース部材20に取り付けられたとき、第1側部45は、ベース部材20の第1側板部22の内面に対向し、第2側部46は、ベース部材20の第2側板部23の内面に対向する。
【0033】
ここで、ベース部材20の説明に戻る。ベース部材20の主平板部21は、第1ガイド部材30の第1連結面32と接触する第1固定面21aを有する(
図5参照)。第1固定面21aの一部も、曲面部33の形状に合わせた形状となるので、主平板部21の延伸方向の先端部21dも、第1ガイド部材30が取り付けられたときに、表面が曲面部33と滑らかに連続する曲面を有する。第1固定面21aには、第1連結面32に形成されている複数の第1ネジ溝32aの位置に合わせて、複数の第1ネジ穴21eが形成されている。
【0034】
同様に、主平板部21は、第2ガイド部材40の第2連結面42と接触する第2固定面21bを有する(
図5参照)。第2固定面21bには、第2連結面42に形成されている複数の第2ネジ溝42aの位置に合わせて、複数の第2ネジ穴21fが形成されている。
【0035】
本実施形態では、第1固定面21aと第2固定面21bとは、X方向に沿った主平板部21の延伸方向で離間している。そして、主平板部21は、この第1固定面21aと第2固定面21bとの間に、ワイパー10の表面側と裏面側とで貫通する開口部21cを有する。
【0036】
また、主平板部21は、ワイパー10をパイプベンダー1の不図示の固定部に設置するための複数の取付穴21gを有する。なお、本実施形態では、取付穴21gは、一例として4つある。
【0037】
ベース部材20の第1側板部22と第2側板部23との間隔は、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40の大きさとの関係で設定される。第1ガイド部材30が取り付けられる主平板部21の第1固定面21aの近傍では、第1側板部22と第2側板部23との間隔は、第1ガイド部材30における第1側部35と第2側部36との間の距離よりも若干大きめに設定される。一方、第2ガイド部材40が取り付けられる主平板部21の第2固定面21bの近傍では、第1側板部22と第2側板部23との間隔は、第2ガイド部材40における第1側部45と第2側部46との間の距離よりも若干大きめに設定される。
【0038】
第1側板部22の先端部22a、及び、第2側板部23の先端部23aのそれぞれの形状は、第1ガイド部材30の曲面部33の形状に合わせて曲面を有するものであってもよい。
【0039】
第1側板部22は、第1ガイド部材30がベース部材20に取り付けられたときに、第1ガイド部材30に形成されている第1突出部37を係合させる第1係合部22bを有する。第1係合部22bは、例えば、第1突出部37を第1ガイド部材30の取り付け方向に沿って収容する溝である。第1係合部22bは、パイプPが第1直線溝31で摺動する摺動方向とは逆方向に向かって面する第1当接面22eを有する(
図5参照)。曲げ加工時には、第1突出部37の第1付勢面37aが、第1当接面22eと当接する。
【0040】
同様に、第2側板部23は、第1ガイド部材30がベース部材20に取り付けられたときに、第1ガイド部材30に形成されている第2突出部38を係合させる第2係合部23bを有する。第2係合部23bは、第1係合部22bと同様に、例えば、第2突出部38を第1ガイド部材30の取り付け方向に沿って収容する溝である。第2係合部23bは、パイプPが第1直線溝31で摺動する摺動方向とは逆方向に向かって面する第2当接面23eを有する(
図5参照)。曲げ加工時には、第2突出部38の第2付勢面38aが、第2当接面23eと当接する。
【0041】
ここで、本実施形態では、第1当接面22e及び第2当接面23eが、それぞれ、第1直線溝31の延伸方向とは垂直なYZ平面と平行であるものとしている。しかし、これらの当接面は、パイプPの摺動方向とは逆方向に向かって面してさえすれば、必ずしも、厳密にYZ平面と平行でなくてもよい。
【0042】
第1側板部22は、第2ガイド部材40がベース部材20に取り付けられたときに、第2ガイド部材40の第1正面部43の一部と対向する第3当接面22fを有する(
図5参照)。第3当接面22fは、第1当接面22eと同様に、パイプPが第2直線溝41で摺動する摺動方向とは逆方向に向かって面することになる。
【0043】
同様に、第2側板部23は、第2ガイド部材40がベース部材20に取り付けられたときに、第2ガイド部材40の第1正面部43の一部と対向する第4当接面23fを有する(
図5参照)。第4当接面23fも、第2当接面23eと同様に、パイプPが第2直線溝41で摺動する摺動方向とは逆方向に向かって面することになる。
【0044】
さらに、主平板部21は、第1側板部22の第3当接面22f等と同様に、第2ガイド部材40がベース部材20に取り付けられたときに、第2ガイド部材40の第1正面部43の一部と対向する第5当接面21hを有してもよい(
図5参照)。第5当接面21hも、パイプPが第2直線溝41で摺動する摺動方向とは逆方向に向かって面することになる。
【0045】
また、第1側板部22は、第1ガイド部材30がベース部材20に取り付けられたときに、第1ガイド部材30の第1側部35を締め付けるための第1イモネジ51を係合させる第3ネジ溝22cを有する。第3ネジ溝22cは、貫通溝であり、本実施形態では1つある。
【0046】
さらに、第1側板部22は、第2ガイド部材40がベース部材20に取り付けられたときに、第2ガイド部材40の第1側部45を締め付けるための第2イモネジ61を係合させる第4ネジ溝22dを有する。第4ネジ溝22dは、貫通溝であり、本実施形態では2つある。
【0047】
ベース部材20、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40の材質は、金属、樹脂又はセラミックス等、様々あり得る。本実施形態では、ベース部材20、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40がそれぞれ別体で構成されていることから、それぞれの材質を異ならせることも可能である。
【0048】
次に、ワイパー10の組み立てについて説明する。
【0049】
第1ガイド部材30の取り付けについて、作業者は、まず、第1ガイド部材30の第1連結面32をベース部材20の第1固定面21aに接触させる。この状態で、作業者は、ワイパー10の裏面側から、第1ネジ50を第1ネジ穴21eに貫通させて第1ネジ溝32aに締め付けることで、ベース部材20に第1ガイド部材30を容易に取り付けることができる(
図4参照)。
【0050】
同様に、第2ガイド部材40の取り付けについて、作業者は、まず、第2ガイド部材40の第2連結面42をベース部材20の第2固定面21bに接触させる。この状態で、作業者は、ワイパー10の裏面側から、第2ネジ60を第2ネジ穴21fに貫通させて第2ネジ溝42aに締め付けることで、ベース部材20に第2ガイド部材40を容易に取り付けることができる(
図4参照)。
【0051】
また、曲げ加工時のパイプPの姿勢に対する第1直線溝31や第2直線溝41の位置は、曲げ加工精度に影響し得る。そこで、作業者は、第3ネジ溝22cに第1イモネジ51を係合させて第1ガイド部材30の第1側部35を適切な位置で締め付けることで、ベース部材20に対して第1ガイド部材30をより高精度に位置決めしてもよい。同様に、作業者は、第4ネジ溝22dに第2イモネジ61を係合させて第2ガイド部材40の第1側部45を適切な位置で締め付けることで、ベース部材20に対して第2ガイド部材40をより高精度に位置決めしてもよい。第1イモネジ51や第2イモネジ61の使用によれば、第1直線溝31や第2直線溝41の延伸方向の位置決めのみならず、当該延伸方向に対して垂直である延伸方向に相当するZ方向の位置決めも高精度に行うことができる。
【0052】
一方、作業者は、上記とは反対に、各種ネジによる締結を解除することで、ベース部材20から第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を容易に取り外すことができる。
【0053】
次に、パイプベンダー1における基本的な曲げ加工動作について説明する。
【0054】
加工対象であるパイプPの曲げ加工部分は、曲げ型12に対して適切な位置に配置される。そして、曲げ型12及び締め型13は、
図1(a)に示される初期位置においてパイプPを把持する。次に、
図1(b)に示すように、曲げ型12及び締め型13は、パイプPの一部を把持したまま、中心軸O回りに一体的に回転移動する。パイプPは、曲げ型12及び締め型13の回転により、搬送方向Fに引かれつつ、周溝12aに巻き付けられて曲げられる。
【0055】
同時に、パイプPを側方から押圧している圧力型15は、パイプPの軸方向の移動に追従して受動的に移動する。このとき、圧力型15には、サイドブースター16による押圧力と、曲げ加工による反力とが作用している。圧力型15によりパイプPの曲げ外側を押さえることでパイプPの曲げを周溝12aの形状に正確に倣わせることができる。
【0056】
ここで、(曲げ半径)/(パイプPの外径)が1程度となるような曲げ加工では、曲げ加工時に曲げ内側を加熱する熱間曲げが行われることが多く、このとき、ワイパー10を用いたしわ抑え処理が特に有効である。
【0057】
パイプベンダー1は、このような曲げ加工動作と、不図示のパイプ搬送装置によるパイプPの搬送動作とを組み合わせた連続曲げ加工を行うことで、最終的には、蛇行曲げ管等の連続曲げ管を製作することができる。
【0058】
次に、本実施形態に係るワイパー10による効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係るワイパー10は、パイプPを曲げ型12の形状に応じて曲げ加工するパイプベンダー1用のワイパーである。ワイパー10は、パイプPの表面が摺動する摺動面を含むガイド部材と、ガイド部材を保持するベース部材20とを備える。ベース部材20は、パイプPの摺動方向とは逆方向に向かって面し、ガイド部材の一部が当接する当接面を有する。
【0060】
ここで、ガイド部材は、上記例示における第1ガイド部材30、又は、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40の双方に相当する。また、ガイド部材が第1ガイド部材30である場合には、当接面は、上記例示における第1当接面22e又は第2当接面23eに相当する。一方、ガイド部材が第2ガイド部材40である場合には、当接面は、上記例示における第3当接面22f、第4当接面23f又は第5当接面21hに相当する。
【0061】
まず、ワイパー10によれば、実際にパイプPが摺動する第1ガイド部材30又は第2ガイド部材40は、ベース部材20とは別体であるので、ベース部材20に対して着脱可能とすることができる。これにより、例えば、パイプPとの接触部分が摩耗したり欠損したりしても、ワイパー10全体を交換するのではなく、ガイド部材のみを交換すればよいので、廃棄品を減らしたり製造コストを抑えたりするのに有利となる。
【0062】
また、ワイパー10によれば、ガイド部材の一部が、パイプPの摺動方向とは逆方向に向かって面する、ベース部材20の当接面と当接することになる。第1ガイド部材30について、第1当接面22e及び第2当接面23eは、パイプPの搬送方向Fと同方向であるパイプPの摺動方向に対して逆方向に向かって面している。したがって、パイプPから摩擦力を受けた第1ガイド部材30が摺動方向に沿って移動しようとしても、第1ガイド部材30の一部である第1突出部37の第1付勢面37aが第1当接面22eに接触しているので、移動することができない。これは、第1ガイド部材30の一部である第2突出部38の第2付勢面38aが第2当接面23eに接触していることでも同様である。これにより、ベース部材20に対する第1ガイド部材30の位置ずれを抑えることができる。
【0063】
一方、第2ガイド部材40について、第3当接面22f、第4当接面23f又は第5当接面21hは、パイプPの搬送方向Fと同方向であるパイプPの摺動方向に対して逆方向に向かって面している。したがって、パイプPから摩擦力を受けた第2ガイド部材40が摺動方向に沿って移動しようとしても、第2ガイド部材40の一部である第1正面部43が第3当接面22f等に接触しているので、移動することができない。これにより、ベース部材20に対する第2ガイド部材40の位置ずれを抑えることができる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、ベース部材20に対するガイド部材の位置ずれを抑えるのに有利なパイプベンダー用のワイパー10を提供することができる。
【0065】
また、ワイパー10では、ベース部材20は、パイプPの摺動方向に沿った固定面でガイド部材を保持してもよい。
【0066】
ここで、ガイド部材が第1ガイド部材30である場合には、固定面は、第1固定面21aに相当する。一方、ガイド部材が第2ガイド部材40である場合には、固定面は、第2固定面21bに相当する。
【0067】
このようなワイパー10によれば、比較的広い面である固定面が、パイプPの垂直力を受けることになる。そして、ベース部材20に対するガイド部材の位置決めの基準を固定面とすることができるので、ガイド部材の高精度な位置決めを実現することができる。
【0068】
また、ワイパー10では、ガイド部材の少なくとも1つは、パイプPの摺動方向に沿ったベース部材20の延伸方向で、曲げ型12に近接する側の先端に保持されるものとしてもよい。すなわち、上記例示で言えば、第1ガイド部材30が必須のガイド部材ということになる。
【0069】
ワイパー10がパイプベンダー1に採用されている場合、ワイパー10におけるここでいう先端の領域が、しわ抑えに特に有効となる領域と言える。そこで、ベース部材20に対して少なくとも第1ガイド部材30のみ取り付けたとしても、ある程度のしわ抑え効果が期待できる。なお、第1ガイド部材30のみをガイド部材として採用する場合には、
図3に示す第1ガイド部材30の第1直線溝31の延伸方向の長さLを、図示されている長さよりも長くすることで、パイプPとの接触面積を多くしてもよい。
【0070】
また、ワイパー10では、ガイド部材は、パイプPの摺動方向に沿って複数あってもよい。このとき、ベース部材20は、複数のガイド部材のうち第1ガイド部材30と第2ガイド部材40との間にある領域に開口部21cを有するものとしてもよい。
【0071】
パイプベンダー1において特に熱間曲げを行う場合、パイプPに与えられた熱は、曲げ加工の間、パイプPに保持され続けることが望ましい。これに対して、ベース部材20の上記のような位置に開口部21cを設けると、熱せられたパイプPは、開口部21cの部分ではワイパー10のいずれの部分にも接触しないことになる。そのため、パイプPに保持されている熱がワイパー10に直接的に伝達して外部に放出されることを抑えることができるので、パイプPが冷えることで熱間曲げの作用を低下させることを予め抑えることができる。
【0072】
また、ワイパー10では、ガイド部材の材質は、ベース部材20の材質よりも高温耐性に優れるものとしてもよい。
【0073】
高温耐性に優れた材料は、例えば一般的な鋼材よりも高価である。そのため、パイプベンダー1において特に熱間曲げを行う場合、ワイパー10全体を高温耐性に優れた材料で製作しようとすると、コストがかかる。これに対して、このようなワイパー10によれば、直接的にパイプPと接触するガイド部材の材質のみを高温耐性に優れた材質とすることで、ワイパー10の製作コストを抑えることができる。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 ワイパー
12 曲げ型
20 ベース部材
21a 第1固定面
21b 第2固定面
21c 開口部
21h 第5当接面
22e 第1当接面
22f 第3当接面
23e 第2当接面
23f 第4当接面
30 第1ガイド部材
40 第2ガイド部材
P パイプ