(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】画像検査装置、学習済みモデル生成装置、画像検査システム、画像検査用プログラム、学習済みモデル生成用プログラム、および学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240124BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240124BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2020051679
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】富木 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中田 安彦
(72)【発明者】
【氏名】石毛 浩和
(72)【発明者】
【氏名】甘利 治雄
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/102706(WO,A1)
【文献】特開2019-139642(JP,A)
【文献】Sergio Cebollada et al.,Hierarchical Localization in Topological Models Under Varying Illumination Using Holistic Visual Descriptors,IEEE Access,米国,2019年,Vol.7,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8688396
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06N 20/00
G06V 10/00 - 20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリアからなる建物内で撮影された検査対象の画像データを受け付ける検査データ受付部と、
前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデルと、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデルであって、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデルとを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力し、当該出力されたエリアに対応した第2の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影された場所および方位を出力する撮影状態特定部と、
前記検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれるか否かを判定する検出対象判定部と、
を備え
、
前記記憶部は、所定の検出対象物が含まれる画像データが撮影され得るエリア、場所、方位の組み合わせである検出対象判定用データをさらに記憶し、
前記検出対象判定部は、前記撮影状態特定部において出力されたエリア、場所、方位の組み合わせが前記検出対象判定用データに含まれる場合に、当該出力されたエリア、場所、方位の組み合わせにかかる検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれると判定する、
画像検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像検査装置において、
前記第1の学習済みモデルは、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影されたエリアを示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含み、
前記第2の学習済みモデルは、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影された場所および方位を示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含む、
画像検査装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の画像検査装置において、
前記検出対象判定部において所定の検出対象物が含まれると判定された検査対象の画像データを削除する画像データ削除部をさらに備える、
画像検査装置。
【請求項4】
複数のエリアからなる建物内で360度カメラによって撮影された360度撮像データから複数の倍率および複数の画角で切り出した複数の画像データに、撮影されたエリア、場所、方位をラベリングした複数の学習用画像データを生成する学習用画像データ生成部と、
前記画像データを入力として当該画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデルを生成する第1の学習済みモデル生成部と、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデルであって、前記画像データを入力として当該画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部と、
検査対象の画像データを受け付ける検査データ受付部と、
前記第1の学習済みモデル生成部によって生成された前記第1の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力し、当該出力されたエリアに対応して前記第2の学習済みモデル生成部によって生成された第2の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影された場所および方位を出力する撮影状態特定部と、
前記検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれるか否かを判定する検出対象判定部と、
所定の検出対象物が含まれる画像データが撮影され得るエリア、場所、方位の組み合わせである検出対象判定用データを記憶した記憶部と、
を備え
、
前記検出対象判定部は、前記撮影状態特定部において出力されたエリア、場所、方位の組み合わせが前記検出対象判定用データに含まれる場合に、当該出力されたエリア、場所、方位の組み合わせにかかる検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれると判定する、
画像検査システム。
【請求項5】
請求項
4に記載の画像検査システムにおいて、
前記検出対象判定部において所定の検出対象物が含まれると判定された検査対象の画像データを削除する画像データ削除部をさらに備える、
画像検査システム。
【請求項6】
コンピュータを、
複数のエリアからなる建物内で撮影された検査対象の画像データを受け付ける検査データ受付部と、
前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデルと、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデルであって、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデルとを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力し、当該出力されたエリアに対応した第2の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影された場所および方位を出力する撮影状態特定部と
、
前記検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれるか否かを判定する検出対象判定部として機能させ、
前記第1の学習済みモデルは、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影されたエリアを示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって生成されており、
前記第2の学習済みモデルは、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影された場所および方位を示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって生成されて
おり、
前記記憶部は、所定の検出対象物が含まれる画像データが撮影され得るエリア、場所、方位の組み合わせである検出対象判定用データをさらに記憶し、
前記検出対象判定部は、前記撮影状態特定部において出力されたエリア、場所、方位の組み合わせが前記検出対象判定用データに含まれる場合に、当該出力されたエリア、場所、方位の組み合わせにかかる検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれると判定する、
画像検査用プログラム。
【請求項7】
請求項
6に記載の画像検査用プログラムにおいて、
前記検出対象判定部において所定の検出対象物が含まれると判定された検査対象の画像データを削除する画像データ削除部をさらに備える、
画像検査用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置、学習済みモデル生成装置、画像検査システム、画像検査用プログラム、学習済みモデル生成用プログラム、および学習済みモデルに関し、例えば、学習済みモデルに基づいて所定の検出対象物が画像データに含まれるか否かについて検査する画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路やトンネルなどを撮影した画像データについて、その正確な撮影地点が不明であっても、画像データから検査対象物の地理位置情報を特定する手法が記載されている。この手法では、地理位置を特定しようとする画像データ(対象画像)と地理位置情報が分かっている多数の画像データ(照合用画像)とを照合して類似度が高い場合に、照合用画像の地理位置情報を対象画像の位置情報としている。対象画像に写る検査対象物の位置を短時間でかつ精度よく特定するために、検査対象物の属性情報を絞り込み条件として、照合用画像を絞り込んでいる。
【0003】
特許文献2には、観測対象空間における位置、方位、撮影画像を関連付けた基準データに含まれる画像と、観測対象が撮影した画像とを照合することにより観測対象の位置および方位をより正確に特定することが記載されている。照合した結果、両者が一致または類似すると判定した画像に関連付けられた位置および方位を観測対象の位置および方位として特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-102672号公報
【文献】特開2018-185182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の手法では、いずれも、識別対象の画像と照合用の画像との間で、特徴量マッチングを行うことによって類似度を判定している。特徴量マッチングは、識別対象の画像から特徴量を抽出し、照合用の画像から特徴量を抽出し、これらの抽出した特徴量の一致度合いから類似度を判定する処理である。
【0006】
特徴量マッチングによる手法では、識別対象の画像と照合用の画像とにおいて、同じ対象物の特徴量でも、大きさや解像度の不一致がある場合には、異なる特徴量であると判定されてしまう可能性がある。これを回避するために、大きさや解像度の異なる複数の照合用の画像を用いてマッチングを行うことも考えられる。
【0007】
しかしながら、1つの識別対象について大きさや解像度の異なる複数の画像を照合用の画像として用意した場合は、それだけマッチングに時間を要してしまう。このように、特徴量マッチングを行うことによって類似度を判定する場合に、判定精度とマッチング時間とはトレードオフの関係にあるといえる。
【0008】
さらに、特徴量マッチングでは、何を対象として特徴量として抽出するかがマッチングの精度に影響する。画像として変化がないようなロゴやマークなどを対象として特徴量を抽出する場合は、精度良くよく判定できるが、動きのあるものや経時的に変化があるものを対象として特徴量を抽出するのには用いられにくい。
【0009】
このように、経時的に変化がある風景を撮影した撮影画像に基づいてその撮影場所等を素早く特定することは容易なことではなかった。経時的に変化がある風景を撮影した撮影画像の場合、屋外であれば、GPSにより位置特定したその撮影場所の情報を撮影画像の属性情報として持たせれば、撮影画像に基づいてその撮影場所等を素早く特定することも考えられる。しかしながら、屋内(建物内)では、GPSによる位置特定は困難である。
【0010】
本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、GPSなどにより位置特定が困難な建物内でも、簡易な構成にもかかわらず、撮影画像に基づいてその撮影場所等を素早く特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な実施の形態に係る画像検査装置は、複数のエリアからなる建物内で撮影された検査対象の画像データを受け付ける検査データ受付部と、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデルと、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデルであって、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデルとを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記第1の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力し、当該出力されたエリアに対応した第2の学習済みモデルに基づいて、前記検査データ受付部によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影された場所および方位を出力する撮影状態特定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る画像検査装置によれば、GPSなどにより位置特定が困難な建物内でも、簡易な構成にもかかわらず、撮影画像に基づいてその撮影場所等を素早く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態1に係る画像検査システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る学習済みモデル生成装置2の機能ブロック構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る学習済みモデル生成装置2のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】360度撮像データから複数の倍率および複数の画角の画像データを切り出すことを説明する図である。
【
図7】第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nのアルゴリズムの一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る画像検査装置3の機能ブロック構成を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る画像検査装置3のハードウェア構成を示す図である。
【
図10】第1の学習済みモデル305(204)の機能を説明する図である。
【
図11】第2の学習済みモデル306_1~306_n(205_1~205_n)の機能を説明する図である。
【
図12】画像検査システム1の学習済みモデル生成装置2による処理の流れを示すフロー図である。
【
図13】画像データ生成処理の流れをより詳細に説明する図である。
【
図14】画像検査システム1の画像検査装置3による第1の処理の流れを示すフロー図である。
【
図15】画像検査システム1の画像検査装置3による第2の処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0015】
〔1〕代表的な実施の形態に係る画像検査装置(3)は、複数のエリアからなる建物内で撮影された検査対象の画像データを受け付ける検査データ受付部(33)と、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデル(305)と、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデル(306)であって、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデル(306)とを記憶する記憶部(38)と、前記記憶部(38)に記憶された前記第1の学習済みモデル(305)に基づいて、前記検査データ受付部(33)によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力し、当該出力されたエリアに対応した第2の学習済みモデル(306)に基づいて、前記検査データ受付部(33)によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影された場所および方位を出力する撮影状態特定部(34)と、を備える、ことを特徴とする。
【0016】
〔2〕上記〔1〕において、前記第1の学習済みモデル(305)は、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影されたエリアを示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含み、前記第2の学習済みモデル(306)は、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影された場所および方位を示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含んでいてもよい。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕において、前記検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれるか否かを判定する検出対象判定部(35)をさらに備え、前記記憶部(38)は、所定の検出対象物が含まれる画像データが撮影され得るエリア、場所、方位の組み合わせである検出対象判定用データをさらに記憶し、前記検出対象判定部(35)は、前記撮影状態特定部(34)において出力されたエリア、場所、方位の組み合わせが前記検出対象判定用データに含まれる場合に、当該出力されたエリア、場所、方位の組み合わせにかかる検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれると判定してもよい。
【0017】
〔4〕上記〔3〕において、前記検出対象判定部(35)において所定の検出対象物が含まれると判定された検査対象の画像データを削除する画像データ削除部(36)をさらに備えていてもよい。
【0018】
〔5〕代表的な実施の形態に係る学習済みモデル生成装置(2)は、複数のエリアからなる建物内で360度カメラによって撮影された360度撮像データから複数の倍率および複数の画角で切り出した複数の画像データに、撮影されたエリア、場所、方位をラベリングした複数の学習用画像データを生成する学習用画像データ生成部(22A)と、前記画像データを入力として当該画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデル生成部(26A)と、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデル生成部(26B)であって、前記画像データを入力として当該画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデル生成部(26B)と、を備えることを特徴とする。
【0019】
〔6〕代表的な実施の形態に係る画像検査システム(1)は、複数のエリアからなる建物内で360度カメラによって撮影された360度撮像データから複数の倍率および複数の画角で切り出した複数の画像データに、撮影されたエリア、場所、方位をラベリングした複数の学習用画像データを生成する学習用画像データ生成部(22A)と、前記画像データを入力として当該画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデル(204、305)を生成する第1の学習済みモデル生成部(26A)と、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデル(205、306)であって、前記画像データを入力として当該画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデル(205、306)を生成する学習済みモデル生成部(22B)と、検査対象の画像データを受け付ける検査データ受付部(33)と、前記第1の学習済みモデル生成部(26A)によって生成された前記第1の学習済みモデル(305)に基づいて、前記検査データ受付部(33)によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力し、当該出力されたエリアに対応して前記第2の学習済みモデル生成部(26B)によって生成された第2の学習済みモデル(306)に基づいて、前記検査データ受付部(33)によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影された場所および方位を出力する撮影状態特定部(34)と、を備えることを特徴とする。
【0020】
〔7〕上記〔6〕において、前記検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれるか否かを判定する検出対象判定部(35)と、所定の検出対象物が含まれる画像データが撮影され得るエリア、場所、方位の組み合わせである検出対象判定用データをさらに記憶した前記記憶部(38)とをさらに備え、前記検出対象判定部(35)は、前記撮影状態特定部(34)において出力されたエリア、場所、方位の組み合わせが前記検出対象判定用データに含まれる場合に、当該出力されたエリア、場所、方位の組み合わせにかかる検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれると判定してもよい。
【0021】
〔8〕上記〔7〕において、前記検出対象判定部(35)において所定の検出対象物が含まれると判定された検査対象の画像データを削除する画像データ削除部(36)をさらに備えていてもよい。
【0022】
〔9〕代表的な実施の形態に係る画像検査用プログラムは、コンピュータを、複数のエリアからなる建物内で撮影された検査対象の画像データを受け付ける検査データ受付部(33)と、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデル(305)と、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデル(306)であって、前記検査対象の画像データを入力として当該検査対象の画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデル(306)とを記憶する記憶部(38)と、前記記憶部(38)に記憶された前記第1の学習済みモデル(305)に基づいて、前記検査データ受付部(33)によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影されたエリアを出力し、当該出力されたエリアに対応した第2の学習済みモデル(306)に基づいて、前記検査データ受付部(33)によって受け付けた前記検査対象の画像データが撮影された場所および方位を出力する撮影状態特定部(34)として機能させ、前記第1の学習済みモデル(305)は、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影されたエリアを示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって生成されており、前記第2の学習済みモデル(306)は、前記建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影された場所および方位を示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって生成されていることを特徴とする。
【0023】
〔10〕上記〔9〕において、前記検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれるか否かを判定する検出対象判定部(35)をさらに備え、前記記憶部(38)は、所定の検出対象物が含まれる画像データが撮影され得るエリア、場所、方位の組み合わせである検出対象判定用データをさらに記憶し、前記検出対象判定部(35)は、前記撮影状態特定部(34)において出力されたエリア、場所、方位の組み合わせが前記検出対象判定用データに含まれる場合に、当該出力されたエリア、場所、方位の組み合わせにかかる検査対象の画像データに所定の検出対象物が含まれると判定してもよい。
【0024】
〔11〕上記〔10〕において、前記検出対象判定部(35)において所定の検出対象物が含まれると判定された検査対象の画像データを削除する画像データ削除部(36)をさらに備えていてもよい。
【0025】
〔12〕代表的な実施の形態に係る学習済みモデル生成用プログラムは、コンピュータを、複数のエリアからなる建物内で360度カメラによって撮影された360度撮像データから複数の倍率および複数の画角で切り出した複数の画像データに、撮影されたエリア、場所、方位をラベリングした複数の学習用画像データを生成する学習用画像データ生成部(22A)と、前記画像データを入力として当該画像データが撮影されたエリアを出力するようにコンピュータを機能させるための第1の学習済みモデル生成部(26A)と、前記複数のエリアのそれぞれに対応した複数の第2の学習済みモデル生成部(26B)であって、前記画像データを入力として当該画像データが撮影された前記エリア内の場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデル生成部(26B)として機能させることを特徴とする。
【0026】
〔13〕代表的な実施の形態に係る学習済みモデルは、複数のエリアからなる建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影されたエリアを示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された第1の学習済みパラメータを含み、入力された前記画像データに対して前記第1の学習済みパラメータに基づく演算を行い、前記画像データを入力として当該画像データが撮影されたエリアを出力するよう、コンピュータを機能させる第1の学習済みモデル(204、305)と、前記第1の学習済みモデル(204、305)において出力されたエリアに対応し、前記第1の学習済みモデル(204、305)において当該エリアが出力された画像データを入力として当該画像データが撮影された場所および方位を出力するようにコンピュータを機能させるための第2の学習済みモデル(205、306)であって、前記出力されたエリア内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影された場所および方位を示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データを機械学習することによって調整された第2の学習済みパラメータを含み、入力された前記画像データに対して前記第2の学習済みパラメータに基づく演算を行い、前記場所および方位を出力するよう、前記コンピュータを機能させる第2の学習済みモデル(205、306)とを含むことを特徴とする。
【0027】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0028】
≪実施の形態1≫
図1は、本実施の形態1に係る画像検査システムの構成を示す図である。
【0029】
同図に示される画像検査システム1は、複数のエリアからなる建物内で撮影された画像データを機械学習によって学習して学習済みモデルを生成し、その学習済みモデルを用いて、入力された画像データが撮影されたエリア、場所、方位を特定し、特定されたエリア、場所、方位に基づいて所定の検出対象物が含まれているか否かを検査するためのシステムである。
【0030】
本実施の形態では、一例として、所定のエリア内の設置物である場合について説明する。本明細書において、設置物とは、建物内に固定的に配置され、通常はその配置位置が変わらない構造物をいう。例えば、掛け時計、天井照明、非常灯、防犯カメラ、扉、窓、階段などがあげられ、建物の構造自体をも含む概念である。
【0031】
図1に示すように、画像検査システム1は、ネットワーク4に接続可能に構成され、ネットワーク4を介して複数のクライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・等の外部の情報処理装置と通信が可能となっている。
【0032】
ネットワーク4は、例えばインターネットに代表される広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)である。画像検査システム1は、有線または無線通信によってネットワーク4と接続可能に構成されている。
【0033】
クライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・は、サーバとしての画像検査システム1に対して所定の処理(サービス)を要求するためのクライアント側の情報処理装置である。クライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・は、有線または無線通信によってネットワーク4と接続可能に構成され、ネットワーク4を介して画像検査システム1等の外部の情報処理装置と通信が可能となっている。
【0034】
クライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・としては、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、またはスマートフォン等の各種情報処理装置(コンピュータ)を例示することができる。
【0035】
また、クライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・には、360度カメラなどの撮像装置51が接続され、撮像した360度撮像データを、ネットワーク4を介して画像検査システム1に送信することができる。もちろん、クライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・自体が360度カメラの撮像機能を有していてもよい。
【0036】
図1に示すように、画像検査システム1は、学習済みモデルに基づいて、入力された画像データの撮影状態(撮影したエリア、場所、方位)を特定し、特定した撮影状態に基づいて画像データが所定の検出対象物(例えば掛け時計)を含むか否かについて検査することができる画像検査装置3と、上記学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成装置2とを備えている。
【0037】
学習済みモデル生成装置2と画像検査装置3とは、例えば、所定のネットワーク(例えば、LAN:Local Area Network)を介して接続されており、互いにデータの送受信が可能となっている。
【0038】
以下、学習済みモデル生成装置2と画像検査装置3とについて、それぞれ詳細に説明する。
【0039】
まず、学習済みモデル生成装置2について説明する。
【0040】
図2は、実施の形態1に係る学習済みモデル生成装置2の機能ブロック構成を示す図である。
【0041】
図3は、実施の形態1に係る学習済みモデル生成装置2のハードウェア構成を示す図である。
【0042】
学習済みモデル生成装置2は、例えば、PCやサーバ等の情報処理装置(コンピュータ)であって、インストールされた学習済みモデル生成用プログラムにしたがって学習用画像データを生成するとともに、生成した学習用画像データを機械学習によって学習して学習済みモデルを生成する装置である。このように、学習済みモデル生成装置2はコンピュータで動作する学習済みモデル生成用プログラムとして実装されてもよい。
【0043】
図2に示すように、学習済みモデル生成装置2は、学習済みモデルを生成するための機能ブロックとして、通信部21、学習用画像データ生成部22A、記憶部27、および学習済みモデル生成部22Bを有している。これらの各機能ブロックは、学習済みモデル生成装置2としての情報処理装置を構成するハードウェア資源が、上記情報処理装置にインストールされたソフトウエア(学習済みモデル生成用プログラム)と協働することによって、実現される。
【0044】
図3に示すように、学習済みモデル生成装置2は、ハードウェア資源として、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F(Interface)装置104、出力装置105、およびバス106を備えている。
【0045】
記憶装置102に記憶されるプログラム1021は、コンピュータを本実施の形態に係る学習済みモデル生成装置2の各機能部として機能させる学習済みモデル生成用プログラムを含み、例えば、記憶装置102に予めインストールされている。
【0046】
また、データ1022は、後述する、360度撮像データ201_1~201_p(pは2以上の整数)、画像データを格納した複数のエリアのフォルダ202_1~202_n(nは2以上の整数)、画像データを格納した複数の場所および方位のフォルダ203_1~203_m(mは2以上の整数)、第1の学習済みモデルである第1の学習済みモデル204、第2の学習済みモデルである第2の学習済みモデル205_1~205_n(nは2以上の整数)等を少なくとも一つを含む。
【0047】
なお、プログラム1021およびデータ1022は、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0048】
以下、学習済みモデル生成装置2の各機能ブロックについて説明する。
【0049】
通信部21は、外部の情報処理装置と通信を行うための機能部である。具体的に、通信部21は、画像検査システム1内の画像検査装置3との間で、上述した所定のネットワーク(例えばLAN)を介してデータの送受信を行う。
【0050】
なお、通信部21は、ネットワーク4に接続されて、ネットワーク4を介して複数のクライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・等の外部の情報処理装置との間でデータの送受信が行えるように構成されていてもよい。
【0051】
学習用画像データ生成部22Aは、学習済みモデルを生成するための各種データを生成するための機能部である。具体的に、学習用画像データ生成部22Aは、建物内で撮影された画像データに、当該画像データが撮影されたエリアを示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データ(教師データ)を生成し、当該画像データが撮影された場所および方位を示す情報をラベリングして生成された複数の学習用画像データ(教師データ)を生成する。本実施の形態の学習済みモデル生成装置2で学習の対象とする建物内で撮影された画像データには、最初の撮影時に撮影したエリアと場所とが付与されているものを用いることができる。学習用画像データ生成部22Aは、画像データに付与されているエリアと場所とを用いてラベリングすることができる。また、学習用画像データ生成部22Aは、撮影された画像データから複数の画角で複数の画像データを切り出すときに、撮影された画像データから切り出す画角から推定される方位を用いてラベリングすることができる。撮影された画像データは、特定の方位を基準として撮影されており、撮影された画像データ内の基準の位置からの画角によれば方位が推定できる。
【0052】
なお、本実施の形態では、画像データが撮影されたときの状態を示す情報としてエリアと場所および方位を例に挙げて説明するが、これに限定されない。
【0053】
図2に示すように、学習用画像データ生成部22Aは、機能ブロックとして、天頂補正部23と、画像データ生成部24と、第1の分類部25Aと、第2の分類部25Bとを有する。
【0054】
天頂補正部23は、360度撮像データ201_1~201_p(pは2以上の整数)の天頂補正を行う機能部である。
【0055】
画像データ生成部24は、360度撮像データ201_1~201_pから複数の倍率および複数の画角で複数の画像データを切り出す機能部である。ここで画角とは、360度のうち水平方向および垂直方向のそれぞれにおいて画像データの占める大きさを表す。
【0056】
第1の分類部25Aは、切り出した複数の画像データをエリアごとに分類する機能部である。画像データをエリアごとに分類することは、画像データにエリアを示す情報をラベリングすることを含む。具体的には、複数のエリアのフォルダ202_1~202_n(nは2以上の整数)に分類して画像データを保存する。画像データは、保存されたフォルダに対応したエリアを示す情報がラベリングされることになる。
【0057】
第2の分類部25Bは、切り出した複数の画像を場所および方位ごとに分類する機能部である。画像データを場所および方位ごとに分類することは、画像データに場所および方位を示す情報をラベリングすることを含む。具体的には、複数の場所および方位のフォルダ203_1~203_m(mは2以上の整数)に分類して画像データを保存する。画像データは、保存されたフォルダに対応した場所および方位を示す情報がラベリングされることになる。複数の場所および方位のフォルダ203_1~203_mは、
図2に示すように、その場所が含まれるエリアのフォルダ202_1~202_nのいずれかに格納されていてもよい。
【0058】
図4は天頂補正を説明するための図である。
図5は360度撮像データから複数の倍率および複数の画角の画像データを切り出すことを説明する図である。
図6は、分類について説明する図である。ここで、
図2から6を参照しながら、学習用画像データ生成部22Aにおける画像データの生成について説明する。
【0059】
360度撮像データは、例えば、180度の撮影が可能な2つのレンズを表裏に備えた撮像装置によって、対象となる建物の中を移動しながら撮影することによって得ることができる。360度撮像データには、撮影したエリアと場所(エリア内の位置)の情報がメタデータとして関連づけられている。
【0060】
学習用画像データ生成部22Aは、360度撮像データが得られ、記憶部27に格納されると天頂補正部23において天頂補正を行う。天頂補正とは、
図4に示すように、画像の上下水平方向がずれている場合に、画像を回転等させることにより上下水平方向を正しくする補正処理である。この機能により、360度撮像データの撮影時に、上下水平方向を調整することなく撮影を行うことができる。
【0061】
図5に示すように、画像データ生成部24は、必要に応じて天頂補正がされた1つの360度撮像データから複数の画像データを切り出す。この切り出しは、撮像位置を中心とした半径の異なる複数の天球上が、切り出し後の画像データですべて埋め尽くされるようにできるだけ多くの画像データを切り出すことが好ましい。切り出した画像データはすぐに
図6に示すように、第1の分類部25Aに渡され、エリアごとに分類され、第2の分類部25Bによって、切り出した複数の画像を場所および方位ごとに分類される。分類する際のフォルダは、
図2に示すように、入れ子状に構成されていてよいし、
図6に示すように、エリア、場所、方位の組み合わせごとのフォルダとしてもよい。
【0062】
本実施の形態では、第1の学習済みモデルである第1の学習済みモデル204と第2の学習済みモデルである第2の学習済みモデル205_1~205_n(nは2以上の整数)とが記憶部27に記憶されている。
【0063】
学習済みモデル生成部22Bは、学習用画像データ生成部22Aによって生成された複数の学習用画像データを機械学習することにより、画像データを入力として当該画像データが撮像されたエリア、場所、方位を出力するように情報処理装置(コンピュータ)を機能させるための第1の学習済みモデルおよび第2の学習済みモデルとしての第1の学習済みモデル204および第2の学習済みモデル205_1~205_nを生成する機能部である。
【0064】
第1の学習済みモデル204および第2の学習済みモデル205_1~205_nは、所定の技法(アルゴリズム)に基づく機械学習によるプログラムである。
【0065】
ここで、所定の技法(アルゴリズム)としては、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)等のニューラルネットワーク、決定木、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン(SVM)、ナイーブベイズ分類器、k近傍法、k平均法、アダブースト、マルコフ連鎖、のうちの少なくとも一つを含む。
【0066】
すなわち、第1の学習済みモデル204は、入力された画像データに対して、所定の学習済みパラメータに基づく演算を行い、当該画像データが撮影されたエリアを出力するように、情報処理装置(コンピュータ)を機能させるためのプログラムである。同様に、第2の学習済みモデル205_1~205_nは、入力された画像データに対して、所定の学習済みパラメータに基づく演算を行い、当該画像データが撮影された場所および方位を出力するように、情報処理装置(コンピュータ)を機能させるためのプログラムである。
【0067】
ここで、学習済みパラメータとは、所定のフォルダ202_1~202_nおよび203_1~203_nに格納された学習用画像データを学習用プログラム(上記所定のアルゴリズムに基づくプログラム)に対する入力として用いることにより、画像データが撮影されたエリアを出力するように機械的に調整されたパラメータである。例えば、ニューラルネットワークの場合、学習済みパラメータは、重み付け係数等の変数である。出力されるエリアには、そのエリアである確率を含むことができる。
【0068】
図7は第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nのアルゴリズムの一例を示す図である。
図7は、ニューラルネットワークの場合の例を示す。第1の学習済みモデル204と第2の学習済みモデル205_1~205_nとはそれぞれ、複数のノードN1~N5・・・からなる入力層と複数のノードM1~M5・・・からなる出力層との間に、複数の層の中間層が存在し、それぞれのノードが隣接する層のノードと任意の重み付けパラメータにより接続された構成のアルゴリズムである。例えば、撮影されたエリアまたは場所および方位をラベリングした画像データをラスタスキャンして、ラスタスキャンした各ブロック(ピクセル)を入力層に入力すると、入力に対応した出力に基づいて重み付けパラメータの値を調整する。すなわち、学習済みモデル生成部22Bは、学習に使用する画像データと正解データ(識別情報:ラベル化されたエリアまたは場所および方位)を用い、入力による結果と正解データとの誤差を誤差逆伝搬法により、上記学習済みパラメータを逐次更新して、学習済みモデルである第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nを生成する。
【0069】
第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nには、上述した学習済みパラメータに加えて、推論プログラムが含まれていてもよい。推論プログラムとは、上記学習済みパラメータを組み込んで、入力された画像データに対して一定の結果を出力するためのプログラムである。
【0070】
学習済みモデル生成部22Bによって生成された第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nは、記憶部27に記憶されるとともに、画像検査装置3の記憶部38に第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nとして登録される。例えば、画像検査装置3が学習済みモデル生成装置2と通信を行うことにより、画像検査装置3が学習済みモデル生成装置2から第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nを取得し、第1の学習済みモデル305または第2の学習済みモデル306_1~306_nとして記憶部38に記憶する。
【0071】
これにより、画像検査装置3は、記憶部38に記憶された第1の学習済みモデル305または第2の学習済みモデル306_1~306_n)を用いて、入力した画像データが撮影されたエリア、場所、位置を識別することが可能となる。
【0072】
なお、学習済みモデル生成装置2における学習用画像データ生成部22Aと学習済みモデル生成部22Bとは、一つのプロセッサによるプログラム処理によって実現してもよいが、それぞれ別個のプロセッサのプログラム処理によって実現してもよい。すなわち、学習済みモデル生成装置2のハードウェア資源の一つである演算装置101として、学習用画像データの生成のためのデータ処理を実行する少なくとも一つのプロセッサと、学習済みモデルの生成のためのデータ処理を実行する少なくとも一つのプロセッサとを別々に設けてもよい。
【0073】
図8は、実施の形態1に係る画像検査装置3の機能ブロック構成を示す図である。
【0074】
図9は、実施の形態1に係る画像検査装置3のハードウェア構成を示す図である。
【0075】
画像検査装置3は、例えば学習済みモデル生成装置2と同様に、PC(パーソナルコンピュータ)やサーバ等の情報処理装置(コンピュータ)であって、インストールされた画像検査用プログラムにしたがって、学習済みモデルを用いて入力された画像データが撮影されたエリア、場所、方位を特定することによって、所定の検出対象物が含まれる画像データを検出する装置である。このように、画像検査装置3はコンピュータで動作する画像検査用プログラムとして実装されてもよい。
【0076】
図8に示すように、画像検査装置3は、機能ブロックとして、学習済みモデルを用いて入力された画像データについて所定の検出対象物が含まれる画像データを検出するための各種データ処理を行うための機能ブロックとして、通信部31と、検査データ受付部33、撮影状態特定部34、検出対象判定部35、画像データ削除部36、および検査結果データ送信処理部37を含む画像検査部32と、記憶部38とを有している。これらの各機能ブロックは、画像検査装置3としての情報処理装置を構成するハードウェア資源が、上記情報処理装置にインストールされたソフトウエア(画像検査用プログラム)と協働することによって、実現される。
【0077】
図9に示すように、画像検査装置3は、学習済みモデル生成装置2と同様に、ハードウェア資源として、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F(Interface)装置104、出力装置105、およびバス106を備えている。
【0078】
演算装置101は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって構成されている。記憶装置102は、演算装置101に各種のデータ処理を実行させるためのプログラム1023と、演算装置101によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータ1024とを記憶する記憶領域を有し、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD、およびフラッシュメモリ等から構成されている。
【0079】
ここで、プログラム1023は、コンピュータ(プロセッサ)を画像検査装置3に係る各機能部として機能させるための画像検査用プログラムを含み、例えば、記憶装置102に予めインストールされている。
【0080】
また、データ1024は、後述する検査対象画像データ301_1~301_q(qは2以上の整数)、識別結果302_1~302_r(rは2以上の整数)、削除対象判定用データ303、検査結果データ304_1~304_s(sは2以上の整数)、第1の学習済みモデル305、および第2の学習済みモデル306_1~306_n(nは2以上の整数)等を含む。
【0081】
なお、プログラム1023およびデータ1024は、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0082】
入力装置103は、外部から情報の入力を検出する機能部であり、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、またはタッチパネル等から構成されている。I/F装置104は、外部との情報の送受を行う機能部であり、有線または無線によって通信を行うための通信制御回路や入出力ポート、アンテナ等から構成されている。
【0083】
出力装置105は、演算装置101によるデータ処理によって得られた情報等を出力する機能部である。出力装置105としては、SSDやHDD等の外部記憶装置や、LCD(Liquid Crystal Display)および有機EL(Electro Luminescence)等の表示装置を例示することができる。バス106は、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、および出力装置105を相互に接続し、これらの装置間でデータの授受を可能にする機能部である。
【0084】
画像検査装置3は、演算装置101が記憶装置102に記憶されたプログラム10231に従って演算を実行して、記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、出力装置105、およびバス106を制御することにより、
図8に示した画像検査装置3の各機能ブロック(通信部31と、検査データ受付部33、撮影状態特定部34、検出対象判定部35、画像データ削除部36、および検査結果データ送信処理部37を含む画像検査部32と、記憶部38と)が実現される。
【0085】
以下、画像検査装置3の各機能ブロックについて説明する。
【0086】
通信部31は、外部の情報処理装置と通信を行うための機能部である。
【0087】
具体的に、通信部31は、ネットワーク4に接続されて、ネットワーク4を介して複数のクライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・等の外部の情報処理装置との間でデータの送受信を行う。
【0088】
また、通信部31は、画像検査システム1内の学習済みモデル生成装置2との間で、上述した所定のネットワーク(例えばLAN)を介してデータの送受信を行う。
【0089】
検査データ受付部33は、検査対象となる画像データを受け付ける機能部である。ここで検査対象となる画像データを受け付けるとは、検査対象となる画像データを画像検査装置3に外部から入力されることを意味し、検査対象となる画像データを取得することも含む。検査対象となる画像データは、ネットワーク4を介して複数のクライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・から入力することもできるし、画像検査装置3に直接入力することもできる。検査データ受付部33は、受け付けた検査対象となる画像データを検査対象画像データ301_1~301_qとして記憶部38に記憶する。
【0090】
撮影状態特定部34は、記憶部38に記憶された検査対象画像データ301_1~301_qを入力として、学習済みモデル生成装置2によって生成された第1の学習済みモデル305および第2の学習済みモデル306_1~306_n(アルゴリズム)を用いて、検査対象画像データ301_1~301_qが撮影されたエリア、場所、方位の識別を行う機能部である。撮影状態特定部34は、検査対象画像データと識別されたエリア、場所、方位をひもづけて識別結果302_1~302_rとして記憶部38に記憶することができる。
【0091】
具体的に、撮影状態特定部34は、第1の学習済みモデル305により検査対象画像データ301_1~301_qが撮影されたエリアを識別する。さらに第2の学習済みモデル306_1~306_nのうちで識別されたエリアに対応する第2の学習済みモデル306により検査対象画像データ301_1~301_qが撮影された場所と方位を識別する。
【0092】
ここで、記憶部38に記憶されている第1の学習済みモデル305および第2の学習済みモデル306_1~306_nは、学習済みモデル生成装置2によって生成され、記憶部27に記憶された第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nと同じものである。これは例えば、画像検査装置3の撮影状態特定部34が学習済みモデル生成装置2と通信を行うことにより、学習済みモデル生成装置2の記憶部27から第1の学習済みモデル204または第2の学習済みモデル205_1~205_nを取得し、第1の学習済みモデル305または第2の学習済みモデル306_1~306_nとして記憶部38に記憶されたものである。
【0093】
図10は第1の学習済みモデル305(204)の機能を説明する図であり、
図11は第2の学習済みモデル306_1~306_n(205_1~205_n)の機能を説明する図である。
【0094】
図10、11において、左右の矢符によって学習済みモデル生成装置2における機械学習を示し、上下の矢符によって画像検査装置3における識別を示している。
図10、11の左右の矢符で示すように、学習済みモデル生成装置2における機械学習では、ラベリングされた画像データが入力され、パラメータが調整される。一方で、
図10、11の上下の矢符で示すように、画像検査装置3における識別では、検査対象画像データが入力され、(第1の学習済みモデルの場合)その撮像エリアまたは(第2の学習済みモデルの場合)その撮像場所および方位が出力される。
【0095】
検出対象判定部35は、識別結果302_1~302_rの画像データにかかるエリア、場所、方位の組み合わせが削除対象判定用データ303に含まれるエリア、場所、方位の組み合わせと一致するか否かに基づいて、所定の検出対象物が含まれる画像データの検出を行う機能部である。削除対象判定用データ303に含まれるエリア、場所、方位の組み合わせは、所定の検出対象物が含まれる画像データが撮影され得るエリア、場所、方位の組み合わせとしてあらかじめ記憶されている。
【0096】
画像データ削除部36は、所定の検出対象物が含まれる画像データとして検出された画像データを削除する機能部である。画像データ削除部36は、削除されなかった画像データを検査結果データ304_1~304_sとして記憶部38に記憶する。
【0097】
検査結果データ送信処理部37は、必要に応じて検査結果データ304_1~304_sをクライアント端末装置5a、5b、5c、5d・・・に送信することができる。
【0098】
次に、画像検査システム1による処理の流れを説明する。
【0099】
図12は、画像検査システム1の学習済みモデル生成装置2による処理の流れを示すフロー図である。
図13は、画像データ生成処理の流れをより詳細に説明する図である。
【0100】
先ず、
図12に示すように、画像検査システム1において、学習済みモデル生成装置2が360度撮像データを取得する(ステップS101)。360度撮像データは、ネットワーク4を介して取得しても良いし、学習済みモデル生成装置2自体に直接入力する態様で取得してもよい。
【0101】
360度撮像データが取得されると、学習用画像データ生成部22Aは、画像データを生成する(ステップS103)。画像データの生成は、
図13に示すように、天頂補正部23における天頂補正処理(ステップS201)、画像データ生成部24においてズーム倍率の異なる複数の倍率の画像の生成(ステップS203)、複数の画角での画像データの切り出し(ステップS205)を含む。
【0102】
切り出された画像データは、第1の分類部25Aによって、エリアごとに分類され(ステップS105)、第2の分類部25Bによって、場所および方位ごとに分類される(ステップS107)。
【0103】
次いで、分類された画像データは、第1の学習済みモデル生成部26Aにより第1の学習済みモデル204において第1の学習(機械学習)がなされ(ステップS109)、第2の学習済みモデル生成部26Bにより第2の学習済みモデル205_1~205_nにおいて第2の学習(機械学習)がなされる(ステップS111)。
【0104】
以上の処理により、画像検査システム1の学習済みモデル生成装置2において第1の学習済みモデル204および第2の学習済みモデル205_1~205_nが生成される。
【0105】
図14は、画像検査システム1の画像検査装置3による第1の処理の流れを示すフロー図である。第1の処理流れは、検査対象画像データを受け付けてから識別するまでの処理である。
【0106】
図14に示すように、画像検査装置3において、検査データ受付部33は、検査対象画像データを受け付ける(ステップS301)。検査対象画像データを受け付けることは撮影画像を取得することを含むことができる。
【0107】
撮影状態特定部34は、検査対象画像データを第1の学習済みモデル305に入力し(ステップS303)、エリアの出力(ステップS305)がなされるので、出力されたエリアに応じた第2の学習済みモデルに検査対象画像データをさらに入力する(ステップS307)。その結果、第2の学習済みモデルから場所および方位が出力される(ステップS309)。出力された画像データのエリア、場所、方位は画像データとひもづけて識別結果302_1~302_rとして記憶部38に記憶される。
【0108】
図15は、画像検査システム1の画像検査装置3による第2の処理の流れを示すフロー図である。第2の処理流れは、検査対象画像データを識別してから所定の検出対象物が含まれる画像データを削除するまでの処理である。
【0109】
図14に示すように、画像検査装置3において、検出対象判定部35は、識別結果302_1~302_rを取得し(ステップS401)。削除対象判定用データ303に含まれるエリア、場所、方位の組み合わせと照合する(ステップS403)。
【0110】
ステップS403の照合の結果、削除対象判定用データ303に含まれるエリア、場所、方位の組み合わせと一致すると判定された場合(ステップS405:Yes)、画像データ削除部36は、一致と判定された画像データを識別結果302_1~302_rから削除する(ステップS407)。画像データ削除部36は、削除されなかった画像データを検査結果データ304_1~304_sとして記憶部38に記憶することができる。
画像検査装置3は、必要に応じて、記憶部38に記憶された検査結果データ304_1~304_sをクライアント端末装置5a~5d等に出力することができる。
【0111】
以上の実施の形態によれば、GPSなどにより位置特定が困難な建物内でも、簡易な構成にもかかわらず、撮影画像に基づいてその撮影場所等を素早く特定することができる。例えば、原子力発電所における建物内において、撮影されるべきでない設備を所定の検出対象物することができる。この場合、原子力発電所における建物内において撮影された画像データを検出対象の画像データとして、画像検査システム1の画像検査装置3に入力し、検出対象の画像データのエリア、場所、方位(撮影場所等)を識別し、識別したエリア、場所、方位の組み合わせ(撮影場所等)から、撮影されるべきでない設備が検出対象の画像データに含まれるか否かを判定し、撮影されるべきでない設備を含むと判定された画像データを削除することができる。
【0112】
(実施形態の変形例)
以上の実施形態においては、所定の検出対象物が含まれる画像データにもとづいて、画像データの削除を行っていたが、これに限定されず、所定の処理をすることができる。
【0113】
また、画像検査システム1、学習済みモデル生成装置2、画像検査装置3のそれぞれの構成も上記の構成は一例にすぎず、具体的構成はこれに限定されない。
【0114】
さらに、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【0115】
本実施の形態においては、第1の学習済みモデルと第2の学習済みモデルとをそれぞれ別の学習済みモデルとして記載しているが、第1の学習済みモデルの出力に応じて、複数の第2の学習済みモデルのうちの手適切な1つに再度入力をする構成を設けることによって、第1の学習済みモデルと第2の学習済みモデルとを備えた学習済みモデルとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…画像検査システム、2…学習済みモデル生成装置、3…画像検査装置、4…ネットワーク、5a…クライアント端末装置、5b…クライアント端末装置、5c…クライアント端末装置、5d…クライアント端末装置、51…撮像装置、21…通信部、22A…学習用画像データ生成部、22B…学習済みモデル生成部、23…天頂補正部、24…画像データ生成部、25A…第1の分類部、25B…第2の分類部、26A…第1の学習済みモデル生成部、26B…第2の学習済みモデル生成部、27…記憶部、201…360度撮像データ、202…エリアフォルダ、203…場所、方位フォルダ、204…第1の学習済みモデル、205…第2の学習済みモデル、101…演算装置、102…記憶装置、1021…プログラム、1022…データ、103…入力装置、104…I/F装置、105…出力装置、106…バス、1023…プログラム、1024…データ、31…通信部、32…画像検査部、33…検査データ受付部、34…撮影状態特定部、35…検出対象判定部、36…画像データ削除部、37…検査結果データ送信処理部、38…記憶部、301…検査対象画像データ、302…識別結果、303…削除対象判定用データ、304…検査結果データ、305…第1の学習済みモデル、306…第2の学習済みモデル