(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/333 20060101AFI20240124BHJP
B41M 5/40 20060101ALI20240124BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20240124BHJP
B41M 5/41 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/40 220
B41M5/42 211
B41M5/41 200
(21)【出願番号】P 2020180614
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真也
(72)【発明者】
【氏名】梅本 卓史
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172284(JP,A)
【文献】特開2006-281473(JP,A)
【文献】特開2008-068502(JP,A)
【文献】特開2015-036232(JP,A)
【文献】特開2010-111112(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面にロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体であって、
前記呈色剤として4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタンを含有し、 さらに縮合リン酸化合物を0.3g/m
2以上含有する層を支持体と感熱記録層との間、及び/又は支持体の他方の面に有
し、前記支持体が中性紙である
感熱記録体。
【請求項2】
前記縮合リン酸化合物が、平均重合度が3~30の範囲である、酸、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記縮合リン酸化合物を含有する層がさらに多価カルボン酸化合物を含有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記多価カルボン酸化合物が、二価カルボン酸、三価カルボン酸、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項3に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記縮合リン酸化合物と多価カルボン酸化合物との合計の含有量が3g/m
2以下である、請求項3又は4に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料と顕色剤との発色反応を利用した感熱記録体は、比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで且つその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種プリンター等の記録媒体としてのみならず、幅広い分野において使用されている。
【0003】
その利用分野の拡大と記録機器の多様化や高性能化に伴い、記録媒体の使用環境も過酷になりつつあり、記録画像の画質や感度、画像保存性だけでなく、白紙保存性を同時に満足すること、即ち記録前の白紙の状態で保存した後も記録媒体が劣化することなく初期の性能を発揮することが求められている。
【0004】
従来、感熱記録体の支持体として一般に上質紙が使用されている。酸性抄紙では、ロジン系のサイズ剤及びクレー、タルク等の填料を内添し抄造する。このロジン系のサイズ剤の定着剤として硫酸バンドを用いるのが一般的であるが、紙中に残存する硫酸根により、紙面のpHが酸性サイドとなり、感熱記録体を構成する発色性物質が紙の表面において酸性イオンと反応を起こし、長期保存期間中に地肌かぶりを起こし易くなる問題がある。そのため、地肌かぶり防止、抄造コストの低減等を目的に、炭酸カルシウム等のアルカリ填料を含有した中性紙が感熱記録体の支持体として使われることがある。
【0005】
一方、顕色剤としてスルホニルウレア化合物を含有する感熱記録体は、記録画像の保存安定性に優れることが知られている(特許文献1、2)。詳しくは、記録部の長期保存性が良好であって、同時に記録画像の耐湿性、耐熱性等の耐環境性、更に耐油性、耐可塑剤性に優れ、画像記録紙、ファクシミリ用紙、キャッシュディスペンサー用紙、乗車券、定期券、POSラベル等のラベル、プリペイドカード等のカード、通行券等に有用な感熱記録体である。
【0006】
しかしながら、スルホニルウレア化合物を顕色剤として使用する場合、中性紙を感熱記録体の支持体として用いると、感熱記録体を保存している間に、例えば1年と経ずして、記録前であれば発色能が低下したり、記録後であれば退色を起こして印字がかすれたり、不鮮明になったり、場合によっては殆ど見えなくなったりする。特に、記録前に発色能が低下してしまうと、感熱記録体の印字濃度が低下して判読し難くなり、感熱記録体としての本来の機能を失ってしまう。発色能が低下する理由は明らかでないが、スルホニルウレア化合物が中性紙に含まれるアルカリ填料と塩を形成し、形態変化を起こすことにより顕色剤としての性能が低下するためと推測される。
【0007】
上記の問題を解決するため、合成サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを使用し、且つ該合成サイズ剤のpH8.0下における固形分濃度0.02%液のゼータ電位が+20mV以下である中性紙を支持体として用いること(特許文献3)、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを使用した中性紙上に、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩を含有する感熱記録層を設けること(特許文献4)等が提案されているが、必ずしも満足すべき結果が得られていないのが現状である。
【0008】
また、中性紙上に、ポリカルボン酸を含有する下塗り層、顕色剤としてスルホニルウレア化合物を含有する感熱記録層を設けることも報告されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-147357号公報
【文献】特開平5-221144号公報
【文献】特開平7-205545号公報
【文献】特開平8-197846号公報
【文献】特開2014-172284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、支持体として中性紙を使用し且つ顕色剤としてスルホニルウレア化合物を使用した場合であっても、白紙保存性に優れた感熱記録体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、縮合リン酸化合物を0.3g/m2以上含有する層を支持体と感熱記録層との間、及び/又は支持体の他方の面に設けることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を解決するに至った。すなわち、本発明は、下記の感熱記録体に係る。
【0012】
項1.支持体の一方の面にロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体であって、
前記呈色剤として4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタンを含有し、
さらに縮合リン酸化合物を0.3g/m2以上含有する層を支持体と感熱記録層との間、及び/又は支持体の他方の面に有する
感熱記録体。
項2.前記縮合リン酸化合物が、平均重合度が3~30の範囲である、酸、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩である、項1に記載の感熱記録体。
項3.前記縮合リン酸化合物を含有する層がさらに多価カルボン酸化合物を含有する、項1又は2に記載の感熱記録体。
項4.前記多価カルボン酸化合物が、二価カルボン酸、三価カルボン酸、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物である、項3に記載の感熱記録体。
項5.前記縮合リン酸化合物と多価カルボン酸化合物との合計の含有量が3g/m2以下である、項3又は4に記載の感熱記録体。
項6.前記支持体が中性紙である、項1~5のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感熱記録体は、支持体として中性紙を使用し且つ顕色剤としてスルホニルウレア化合物を使用した場合であっても、記録前の白紙(未印字)の状態での発色能の低下が小さく、白紙保存性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中において、「含む、含有する」なる表現については、「含む」、「実質のみからなる」、及び「のみからなる」旨の概念を含む。
【0015】
また、本発明では「平均粒子径」は、レーザー回析法によって測定される体積基準のメジアン径をいう。より簡単には、電子顕微鏡を使用し、粒子画像(SEM画像)から粒子径をそれぞれ測定し、10個の平均値で示しても構わない。
【0016】
本発明は、支持体の一方の面にロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体であって、
前記呈色剤として4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタンを含有し、
さらに縮合リン酸化合物を0.3g/m2以上含有する層を支持体と感熱記録層との間、及び/又は支持体の他方の面に有する
ことを特徴とする。
【0017】
[支持体]
本発明における支持体は、種類、形状、寸法等に格別の限定はなく、例えば、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等の中から適宜選択して使用することができる。本発明では、一般に支持体として用いられる酸性紙による劣化を防ぎ、地肌かぶりを抑える観点から支持体として中性紙を用いることが望ましい。中性紙の種類、製法については特に限定されないが、パルプ繊維と、一般に填料として例えば炭酸カルシウム、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)、無水アルケニルコハク酸(ASA)等、並びに定着剤としてポリアミド、アクリルアマイド、カチオン澱粉等を含むパルプスラリーを抄紙して得ることができる。かかる中性紙としては、熱水抽出pH(JIS P 8133に基づく)が6.0~11程度の範囲が好ましく、6.5~10の範囲がより好ましく、7.5~10の範囲が更に好ましい。中性紙のpHを6.0以上とすることにより白紙保存における地肌かぶりを効果的に抑制できる。一方、pHを11以下とすることにより、白紙保存後の発色能低下を効果的に抑制できる。また、パルプスラリー自体の凝集を抑制することができる。さらに、pHが6.0より小さくならない範囲で、必要に応じて硫酸バンドを使用して、pH調節することができ、抄紙性を向上することもできる。ここで、本発明における酸性紙としては、pH2以上、pH6を超えない範囲であり、好ましくはpH2~5.7程度の範囲である。
【0018】
本発明に使用されるパルプ繊維の種類、製法等については特に限定されず、例えばKP、SP、AP法等によって得られる針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の化学パルプやSCPの他に各種高歩留りパルプ、或いは古紙パルプ等が挙げられる。
【0019】
なお、パルプスラリーには、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を紙の用途に応じて適宜添加することもできる。また、サイズプレスにおいて澱粉等を添付することもできる。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ヤンキードライヤー抄紙機等を適宜使用できる。
【0020】
支持体の厚みは特に制限されず、通常、20~200μm程度である。また、支持体の密度は特に制限されず、0.60~0.95g/cm3程度が好ましい。
【0021】
[縮合リン酸化合物を含有する層]
本発明では、縮合リン酸化合物を0.3g/m2以上含有する層を支持体と感熱記録層との間、及び/又は支持体の他方の面に有する。これにより、支持体として中性紙を使用し、顕色剤としてスルホニルウレア化合物を使用した場合であっても、優れた白紙保存性を発揮し、白紙の状態で長期保存後に印字しても発色濃度を十分に判読できるレベルに保つことができる。縮合リン酸化合物を含有する層は、例えば、感熱記録層が存在する支持体面、感熱記録層が存在する面と逆側の支持体面、下塗り層と感熱記録層との間などに形成される。さらには、下塗り層に縮合リン酸化合物を含有させることで、下塗り層を縮合リン酸化合物を含有する層とすることもできる。
【0022】
縮合リン酸化合物としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、アデノシン三リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも特にトリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸等、平均重合度が3~30のものが好ましく、重合度が一般に10~23程度と言われている市販のメタリン酸化合物が最も優れる。これらの縮合リン酸化合物は、酸、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩のいずれかの形態であることが好ましい。縮合リン酸化合物は、2種類以上組合せて用いることもできる。
【0023】
縮合リン酸化合物を含有する層における縮合リン酸化合物の含有量は、0.3g/m2以上であり、好ましくは0.7g/m2以上、より好ましくは1.0g/m2以上である。塗布量を0.3g/m2以上とすることで、白紙保存性を向上させることができる。また、縮合リン酸化合物の含有量は、好ましくは2.0g/m2以下である。
【0024】
縮合リン酸化合物を含有する層中の縮合リン酸化合物の含有量は、感熱記録層中の4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタン100質量部に対して、白紙保存性を向上させる観点から30質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましい。一方、耐地肌かぶり性を向上させる観点からは、450質量部以下が好ましく、320質量部以下がより好ましい。
【0025】
縮合リン酸化合物には一般的に潮解性が見られ、表面のべた付きが問題となる場合がある。例えば、支持体の他方の面に縮合リン酸化合物を含有する層を有する感熱記録体をロール状に巻き取って保管する間に、べた付いた縮合リン酸化合物が感熱記録体の表面に転移し、感熱プリンターで印字する際に印字障害を引き起こす可能性が考えられる。このような問題を予防するために、縮合リン酸化合物を含有する層は、多価カルボン酸化合物をさらに含有していてもよい。縮合リン酸化合物と多価カルボン酸化合物とを併用することで、白紙保存性を向上させることができ、さらにべた付きを抑えることもできる。
【0026】
多価カルボン酸化合物としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、イタコン酸、シトラコン酸、アジピン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、テトラクロルフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸、ポリアクリル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸等が挙げられる。これらの多価カルボン酸化合物はアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩の形態であっても構わない。これら中でも特にリンゴ酸、クエン酸、コハク酸等に代表される二価カルボン酸、三価カルボン酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩が好適に使用される。多価カルボン酸化合物は、2種類以上組合せて用いることもできる。
【0027】
縮合リン酸化合物を含有する層において、縮合リン酸化合物と多価カルボン酸化合物とを併用する場合、その比率は特に限定されるものではなく、縮合リン酸化合物の含有量が前記の範囲であればよい。また、縮合リン酸化合物を含有する層において、縮合リン酸化合物と多価カルボン酸化合物との合計の含有量は、好ましくは3g/m2以下、より好ましくは2g/m2以下である。合計の含有量を3g/m2以下とすることで、地肌かぶりを抑制することができる。また、縮合リン酸化合物と多価カルボン酸化合物との合計の含有量は、好ましくは0.5g/m2以上である。
【0028】
支持体や下塗り層に縮合リン酸化合物や多価カルボン酸化合物を塗布する際は、必要に応じて各種公知の染料や顔料、バインダー、消泡剤や塗れ剤等の界面活性剤、滑剤、増粘剤、pH調整剤等の助剤を添加してもよいが、本発明の所望とする効果を阻害しないためには添加率を固形分で70質量%未満とすることが好ましい。このように、縮合リン酸化合物を含有する層には、少なくとも縮合リン酸化合物を、必要により多価カルボン酸化合物と共に、これらの合計量が30質量%以上となるように組成物として含むことが好ましい。縮合リン酸化合物や多価カルボン酸化合物を塗布する方法としては、ハケ塗り、スプレー塗布、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等の各種塗布装置によって行われ、乾燥は上記の塗布装置に組み合わせた従来の方法で行われる。
【0029】
[下塗り層]
本発明では、必要に応じて、支持体と感熱記録層との間に、下塗り層を設けることもできる。これにより記録感度を高めることもできる。下塗り層を縮合リン酸化合物を含有する層とする場合、下塗り層には縮合リン酸化合物、必要により多価カルボン酸化合物が含まれる。縮合リン酸化合物及び多価カルボン酸化合物の含有量は、前記の範囲であればよい。
【0030】
下塗り層は、顔料として吸油量が70ml/100g以上、特に80~150ml/100g程度の吸油性顔料及び/又は有機中空粒子及び/又は熱膨張性粒子を含有していることが好ましい。ここで、上記吸油量はJIS K 5101の方法に従い、求められる値である。
【0031】
上記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の一次粒子の平均粒子径は0.01~5μm程度、特に0.02~3μm程度であるのが好ましい。吸油性顔料の含有割合は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形量中2~95質量%程度が好ましく、5~90質量%程度がより好ましい。
【0032】
有機中空粒子としては、従来公知のもの、例えば、膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる中空率が50~99%程度の粒子が例示できる。ここで中空率は(d/D)×100で求められる値である。該式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dは有機中空粒子の外径を示す。有機中空粒子の平均粒子径は0.5~10μm程度が好ましく、1~3μm程度がより好ましい。上記有機中空粒子の含有割合は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形量中2~90質量%程度が好ましく、5~70質量%程度がより好ましい。
【0033】
なお、上記吸油性無機顔料を有機中空粒子と併用する場合、吸油性無機顔料と有機中空粒子とは上記の含有割合の範囲で使用し、且つ吸油性無機顔料と有機中空粒子の合計量を下塗り層の全固形量中、好ましくは5~90質量%程度、より好ましくは10~80質量%程度となるように調節すればよい。
【0034】
下塗り層は、一般に水を分散媒体とし、顔料、バインダー、必要により縮合リン酸化合物、多価カルボン酸化合物、各種助剤等を混合することにより調製された下塗り層用塗液を支持体上に、乾燥質量で好ましくは3~20g/m2程度、より好ましくは5~12g/m2程度となるように塗布及び乾燥して形成される。
【0035】
下塗り層中のバインダーとしては、例えば澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体塩、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩、エチレン-アクリル酸共重合体塩、スチレン-アクリル酸共重合体塩、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ウレタン樹脂系ラテックス、アクリル樹脂系ラテックス、スチレン-ブタジエン樹脂系ラテックス等が挙げられる。これらの中でも、澱粉-酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン樹脂系ラテックス等が、塗膜強度を向上する観点から好ましい。バインダーの含有割合は広い範囲から選択できるが、一般には下塗り層の全固形量中5~30質量%程度が好ましく、10~20質量%程度がより好ましい。
【0036】
下塗り層用塗液中に含有される助剤としては、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、ヒドラジド化合物、グリオキザール、硼酸、ジアルデヒド澱粉、グリオキシル酸塩、メチロール尿素、エポキシ化合物等の耐水化剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料等が挙げられる。
【0037】
[感熱記録層]
本発明における感熱記録層は、ロイコ染料及び呈色剤を含有している。ロイコ染料としては、各種公知のものが使用でき、具体例としては、例えば3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(N-エチル-N-p-トリル)アミノ-7-N-メチルアニリノフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-p-(p-ジメチルアミノアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-p-(p-クロロアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、また2種以上を併用することもできる。
【0038】
ロイコ染料の含有割合は、特に限定されず、感熱記録層の全固形量中3~50質量%程度が好ましく、5~40質量%程度がより好ましい。
【0039】
本発明では、呈色剤として4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタンを使用する。また、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、その他の呈色剤も使用でき、具体例としては、例えば4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、2,2’-ビス〔4-(4-ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、N,N’-ジ-m-クロロフェニルチオ尿素、4-〔2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4-{3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5-〔p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛、1,5-(3-オキサペンチレン)-ビス(3-(3’-(p-トルエンスルホニル)ウレイド)ベンゾエート、1-(4-ブトキシカルボニルフェニル)-3-トシルウレア、N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-フェニルウレア等が挙げられる。
【0040】
呈色剤の含有割合は、使用するロイコ染料及び呈色剤の種類に応じて適宜選択すればよいが、感熱記録層の全固形量中10~70質量%程度が好ましく、12~50質量%程度がより好ましい。
【0041】
感熱記録層には、保存性改良剤を含有させることができる。これにより、記録部の保存安定性を高めることができる。かかる保存性改良剤の具体例としては、例えば2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、ビス(4-エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられる。
【0042】
保存性改良剤の含有割合は、保存性改良のために有効な量とすればよく、特に限定されないが、通常は、感熱記録層の全固形量中1~30質量%程度が好ましく、5~20質量%程度がより好ましい。
【0043】
また、感熱記録層には、増感剤を含有させることもできる。これにより、記録感度を高めることができる。増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジベンジル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2-ナフチルベンジルエーテル、m-ターフェニル、p-ベンジルビフェニル、p-トリルビフェニルエーテル、ジ(p-メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-クロロフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、1-(4-メトキシフェノキシ)-2-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4-ジ(フェニルチオ)ブタン、p-アセトトルイジド、p-アセトフェネチジド、N-アセトアセチル-p-トルイジン、ジ(β-ビフェニルエトキシ)ベンゼン、シュウ酸ジ-p-クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル等が例示される。
【0044】
増感剤の含有割合は、増感のために有効な量とすればよく、特に限定されないが、通常は、感熱記録層の全固形量中2~50質量%程度が好ましく、5~40質量%程度がより好ましい。
【0045】
感熱記録層には、バインダーを含有させることもできる。バインダーとしては、特に限定するものではなく、下塗り層に使用できるものの中から適宜選択することができ、例えば、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン樹脂系ラテックス等が挙げられる。バインダーの含有割合としては、感熱記録層の全固形量中2~30質量%程度が好ましい。
【0046】
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ロイコ染料、顕色剤、必要により増感剤、保存性改良剤を共に、或いは別々にボールミル、アトランター、サンドミル等の攪拌・粉砕機により、平均粒子径が2μm以下となるように微分散した分散液を用いて、必要によりバインダー、顔料、助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を支持体上に、乾燥質量で好ましくは2~12g/m2程度、より好ましくは2~10g/m2程度となるように塗布及び乾燥して形成される。なお、感熱記録層は必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0047】
感熱記録層用塗液中に含有させることができる顔料、助剤としては、下塗り層用塗液中に使用できるものの中から適宜選択することができ、例えば、軽質(重質)炭酸カルシウム、焼成カオリン等の顔料、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の分散剤、ステアリン酸亜鉛等のワックス類、ヒドラジド化合物、グリオキシル酸塩等の耐水化剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料等が挙げられる。
【0048】
[保護層]
本発明においては、感熱記録層上に必要に応じて保護層を設けてもよい。これにより、可塑剤や油等の薬品に対するバリア性を向上させることができる。保護層は、例えば、顔料とバインダーを主成分として構成される保護層用塗液を感熱記録層上に塗布及び乾燥して形成することができる。特に保護層には、サーマルヘッドに対するスティッキングを防止する目的で、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤を添加することが好ましく、紫外線吸収剤を含むこともできる。また、光沢のある保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。保護層に含有されるバインダーとしては、特に限定するものではなく、下塗り層に使用できるものの中から適宜選択することができる。なお、保護層は、必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗工量は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
[その他の層]
さらに、本発明においては、感熱記録体の付加価値を高めるために、加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録体とすることができる。例えば、感熱記録層とは反対側の裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等を塗布し、粘着加工を施すことにより、粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙などとして使用することができる。また、磁気加工を施すことにより、裏面に磁気記録可能な層を有する感熱記録体とすることもできる。特に、粘着加工や磁気加工を施したものは感熱ラベルや感熱磁気乗車券等の用途に有用である。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット用紙、ノーカーボン用紙、静電記録紙、ゼログラフィ用紙などとしての機能を付与し、両面記録が可能な記録体とすることもできる。もちろん、両面感熱記録体とすることもできる。また、感熱記録体裏面からの油及び可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロール及び耐電防止のためにバック層を設けることもできる。
【0050】
保護層上にシリコンを含有した剥離層を塗布加工し、裏面に粘着剤を塗布加工することにより、剥離紙を必要としないライナーレスラベルとすることも可能である。
【0051】
[感熱記録体]
支持体上に各層を形成する方法については特に限定されず、例えばエアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の適当な塗布方法により、各塗液を塗布及び乾燥する等の方法で形成される。また、各塗液は1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成してもよく、同一の塗液を2層以上に分けて塗布してもよい。さらに、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。また、各層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダー等による平滑化処理を施すこともできる。
【0052】
必要により設ける下塗り層の形成については、下塗り層の表面性を向上して均一な感熱記録層を得る観点からピュアブレードコーティングやロッドブレードコーティングが好ましい。また、感熱記録層及び必要により設ける保護層の形成については、カーテンコーティングで遂次塗布或いは同時多層塗布することにより均一性を向上できる上、生産性の面でも好ましい。
【0053】
本発明では、製品の付加価値をより一層高めるため、多色感熱記録体とすることもできる。一般に多色感熱記録体は、加熱温度の差、又は熱エネルギーの差を利用する試みであり、一般に、支持体上に異なる色調に発色する高温発色層と低温発色層を積層して構成されたものであって、これらを大別すると消色型と加色型の2種類があり、マイクロカプセルを用いた方法及び有機高分子とロイコ染料からなる複合粒子を使用して多色感熱記録体を製造する方法がある。
【実施例】
【0054】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0055】
実施例1
・下塗り層用塗液の調製
プラスチック中空粒子分散液(商品名:ローペイクSN-1055、中空率:55%、平均粒子径:1.0μm、ダウケミカル社製、固形分濃度26.5質量%)75.5部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス、BASF社製)の50%水分散液(平均粒子径:0.6μm)147.2部、スチレン-ブタジエン系ラテックス(商品名:L-1571、旭化成ケミカルズ社製、固形分濃度48質量%)18.4部、酸化澱粉の10%水溶液30部、ヘキサメタリン酸ナトリウム5.3部、クエン酸アンモニウム5.3部、及び水100部からなる組成物を混合して下塗り層用塗液を得た。
【0056】
・A液(ロイコ染料分散液)の調製
3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL-3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤(商品名:ノプコ1407H、サンノプコ社製)の5%エマルジョン10部、及び水90部からなる組成物を、サンドミルによりレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmとなるまで粉砕してA液を得た。
【0057】
・B液(呈色剤分散液)の調製
4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL-3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤(商品名:ノプコ1407H、サンノプコ社製)の5%エマルジョン10部、及び水90部からなる組成物を、サンドミルによりレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmとなるまで粉砕してB液を得た。
【0058】
・C液(増感剤分散液)の調製
ジフェニルスルホン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL-3266、前出)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤(商品名:ノプコ1407H、サンノプコ社製)の5%エマルジョン10部、及び水90部からなる組成物を、サンドミルによりレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmとなるまで粉砕してD液を得た。
【0059】
・感熱記録層用塗液の調製
A液20部、B液32.5部、C液25部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42、平均粒子径1.0μm、昭和電工社製)35部、酸化澱粉の10%溶液150部、完全鹸化型ポリビニルアルコール(商品名:PVA110、クラレ社製)の10%水溶液30部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンZ-8-36、固形分濃度36%、中京油脂社製)22.2部、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンP7、固形分濃度30%、中京油脂社製)6.7部、及び水100部からなる組成物を混合して感熱記録層用塗液を得た。
【0060】
・感熱記録体の作製
支持体として坪量58g/m2の上質紙(熱水抽出pH8.0の中性紙)の一方の面に、下塗り層用塗液を乾燥後の質量が6.6g/m2となるようにブレードコーターを用いたブレード塗布法により塗布及び乾燥して下塗り層を形成し、下塗り層上に感熱記録層用塗液を乾燥後の質量が3.5g/m2となるようにスライドホッパー型カーテン塗布装置を用いたカーテン塗布法により塗布及び乾燥した後、スーパーカレンダー処理を施し、感熱記録体を得た。
【0061】
実施例2
実施例1の下塗り層用塗液の調製において、ヘキサメタリン酸ナトリウム5.3部を13.2部に、クエン酸アンモニウム5.3部を13.2部に変更し、感熱記録体の作製における下塗り層用塗液の乾燥後の塗布量が7.5g/m2になるようにした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0062】
実施例3
実施例1の下塗り層用塗液の調製において、ヘキサメタリン酸ナトリウム5.3部を24.6部に、クエン酸アンモニウム5.3部を24.6部に変更し、感熱記録体の作製における下塗り層用塗液の乾燥後の塗布量が8.8g/m2になるようにした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0063】
実施例4
実施例1の下塗り層用塗液の調製において、ヘキサメタリン酸ナトリウム5.3部を35.1部に、クエン酸アンモニウム5.3部を35.1部に変更し、感熱記録体の作製における下塗り層用塗液の乾燥後の塗布量が10.0g/m2になるようにした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0064】
実施例5
実施例1の下塗り層用塗液の調製において、ヘキサメタリン酸ナトリウム5.3部を26.4部に、クエン酸アンモニウム5.3部を0部に変更し、感熱記録体の作製における下塗り層用塗液の乾燥後の塗布量が7.5g/m2になるようにした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0065】
実施例6
・有機酸水溶液の調製
ヘキサメタリン酸ナトリウムを13.2部、クエン酸アンモニウムを13.2部、及び水100部を混合し、20.9%の有機酸水溶液を得た。
【0066】
・下塗り層用塗液の調製
実施例1の下塗り用塗液の調製において、ヘキサメタリン酸ナトリウムとクエン酸アンモニウムとを添加しなかった以外は実施例1と同様にして下塗り層用塗液を得た。
【0067】
・感熱記録体の作製
支持体として坪量58g/m2の上質紙(熱水抽出pH8.0の中性紙)の一方の面に、下塗り層用塗液を乾燥後の質量が6.0g/m2となるようにブレードコーターを用いたブレード塗布法により塗布及び乾燥して下塗り層を形成し、下塗り層上に実施例1に記載の感熱記録層用塗液を乾燥後の質量が3.5g/m2となるようにスライドホッパー型カーテン塗布装置を用いたカーテン塗布法により塗布及び乾燥した後、下塗り層が存在する面と逆側の支持体面に、有機酸水溶液を乾燥後の質量が1.5g/m2となるようにバーコーターで塗布及び乾燥して裏面層を形成した後、スーパーカレンダー処理を施し、感熱記録体を得た。
【0068】
実施例7
実施例6の感熱記録体の調製において、有機酸水溶液の乾燥後の塗布量が4.0g/m2になるようにした以外は実施例6と同様にして感熱記録体を得た。
【0069】
実施例8
・感熱記録体の作製
支持体として坪量58g/m2の上質紙(熱水抽出pH8.0の中性紙)の一方の面に、実施例6に記載の有機酸水溶液を乾燥後の質量が1.5g/m2となるようにバーコーターで塗布及び乾燥して下塗り前層を形成した後、下塗り前層上に、実施例6に記載の下塗り層用塗液を乾燥後の質量が6.0g/m2となるようにブレードコーターを用いたブレード塗布法により塗布及び乾燥して下塗り層を形成し、下塗り層上に実施例1に記載の感熱記録層用塗液を乾燥後の質量が3.5g/m2となるようにスライドホッパー型カーテン塗布装置を用いたカーテン塗布法により塗布及び乾燥した後、スーパーカレンダー処理を施し、感熱記録体を得た。
【0070】
実施例9
・感熱記録体の作製
支持体として坪量58g/m2の上質紙(熱水抽出pH8.0の中性紙)の一方の面に、実施例6に記載の下塗り層用塗液を乾燥後の重量が6.0g/m2となるようにブレードコーターを用いたブレード塗布法により塗布及び乾燥して下塗り層を形成し、下塗り層上に、実施例6に記載の有機酸水溶液を乾燥後の重量が1.5g/m2となるようにバーコーターで塗布及び乾燥して感熱記録前層を形成した後、感熱記録前層上に実施例1に記載の感熱記録層用塗液を乾燥後の重量が3.5g/m2となるようにスライドホッパー型カーテン塗布装置を用いたカーテン塗布法により塗布及び乾燥した後、スーパーカレンダー処理を施し、感熱記録体を得た。
【0071】
比較例1
実施例1の下塗り層用塗液の調製において、ヘキサメタリン酸ナトリウム5.3部を3.5部に、クエン酸アンモニウム5.3部を3.5部に変更し、感熱記録体の作製における下塗り層用塗液の乾燥後の塗布量が6.4g/m2になるようにした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0072】
比較例2
実施例6の感熱記録体の作製において、有機酸水溶液の乾燥後の塗布量が0.4g/m2になるようにした以外は、実施例6と同様にして感熱記録体を得た。
【0073】
比較例3
実施例1の下塗り層用塗液の調製において、ヘキサメタリン酸ナトリウム5.3部を0部に、クエン酸アンモニウム5.3部を17.6部に変更し、感熱記録体の作製における下塗り層用塗液の乾燥後の塗布量が7.0g/m2になるようにした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0074】
以上の実施例1~9、及び比較例1~3で作製した感熱記録体を下記の評価に供し、その結果を表1に示す。
【0075】
〔記録濃度〕
感熱記録評価機(商品名:TH-PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー:0.24mJ/dotにて各感熱記録体を記録し、得られた印字部をマクベス濃度計(RD-914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。数値が大きい程、印字の濃度が濃いことを示しており、記録濃度については、実用上、1.10以上が必要である。
【0076】
〔白紙保存性〕
各感熱記録体を、40℃で90%RHの条件下で7日間保管後、記録濃度評価と同様の条件で記録し、得られた印字部をマクベス濃度計で測定した。そして、下記式により、保存率を求めた。保存率が80%以上で使用上問題ない。
保存率(%)=(処理後の記録濃度/処理前の記録濃度)×100
【0077】
〔地肌かぶり評価〕
各感熱記録体を、40℃で90%RHの条件下で7日間保管し、白紙部をマクベス濃度計で測定した。
【0078】