(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20240124BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240124BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240124BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240124BHJP
C01B 3/40 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 212
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/10 301F
F01N3/10 A
B01J35/10 301G
C01B3/40
(21)【出願番号】P 2021001947
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正興
(72)【発明者】
【氏名】畑中 美穂
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175008(JP,A)
【文献】特開2012-040550(JP,A)
【文献】特開平11-226404(JP,A)
【文献】特開2017-217646(JP,A)
【文献】特開2018-171615(JP,A)
【文献】特開2001-000862(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044453(WO,A1)
【文献】特開2003-251201(JP,A)
【文献】特開2021-053604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73
B01D 53/86 - 53/90
B01D 53/94 - 53/96
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04 - 3/38
F01N 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末を含む第一集合体粒子と、
ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末を含む第二集合体粒子と、
活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなるマトリックスと、
を備えており、
前記第一の活性成分と前記第二の活性成分とが離れて存在しており、
前記第一の活性成分と前記第二金属酸化物粉末とが離れて存在しており、
前記第二の活性成分と前記第一金属酸化物粉末とが離れて存在しており、
前記マトリックス中に前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子とが包含されており、
前記第一集合体粒子の体積平均粒子径と前記第二集合体粒子の体積平均粒子径とがそれぞれ50~600μmの範囲内であり、かつ、
前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03ml/g以上であり、
前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03ml/g以上であり、
前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積と前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積との総和が0.05ml/g以上であ
り、
排ガス浄化用触媒、VOC類浄化用触媒、改質触媒、空気清浄機用触媒からなる群から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記第二の活性成分がパラジウムであり、前記第二金属酸化物粉末がセリア-ジルコニア固溶体粉末であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記第二集合体粒子がアルミナ粉末を更に含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記第一集合体粒子における細孔直径において、1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03~0.4ml/gであることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記第二集合体粒子における細孔直径において、1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.06~0.4ml/gであることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒に関し、より詳しくは、異なった活性成分が担持された複数の金属酸化物担体を備えており、複数の触媒性能を発揮する触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車等に搭載される排ガス浄化触媒として、排気ガス中に含まれる有害ガス(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))等の有害成分を浄化するために、三元触媒や酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒等が開発されている。そして、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性の高まりから、異なる二つ以上の触媒性能をともに発揮できる高度に優れた触媒性能を有する排ガス浄化用触媒が求められている。
【0003】
このような排ガス浄化用触媒として、特開2016-175008号公報(特許文献1)には、第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末からなる第一集合体粒子と、ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末からなる第二集合体粒子と、活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなるマトリックスと、を備えており、前記マトリックス中に前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子とが包含されており、かつ、前記第一集合体粒子の体積平均粒子径と前記第二集合体粒子の体積平均粒子径とがそれぞれ50~600μmの範囲内である触媒が開示されている。この触媒においては、一方の活性成分又はそれが担持されている一方の金属酸化物粉末が他方の活性成分の触媒性能を阻害するような場合でも、活性成分同士や一方の金属酸化物粉末と他方の活性成分が適度な距離を隔てて存在しているため、他方の活性成分の触媒性能が阻害されることなく、異なる触媒性能がともに発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の触媒においては、異なる触媒性能が、高温時や定常時には十分に発揮されるものの、低温時や反応初期では必ずしも十分に発揮されていなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低温時や反応初期においても、異なる触媒性能がともに十分に発揮される触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末を含む第一集合体粒子と、ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末を含む第二集合体粒子と、活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなるマトリックスと、を備えており、前記マトリックス中に前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子とが包含されており、前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子の体積平均粒子径をそれぞれ特定の範囲内とし、かつ、前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積の総和を特定の範囲内とすることによって、低温時や反応初期においても、異なる触媒性能がともに十分に発揮される触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の触媒は、第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末を含む第一集合体粒子と、ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末を含む第二集合体粒子と、活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなるマトリックスと、を備えており、前記第一の活性成分と前記第二の活性成分とが離れて存在しており、前記第一の活性成分と前記第二金属酸化物粉末とが離れて存在しており、前記第二の活性成分と前記第一金属酸化物粉末とが離れて存在しており、前記マトリックス中に前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子とが包含されており、前記第一集合体粒子の体積平均粒子径と前記第二集合体粒子の体積平均粒子径とがそれぞれ50~600μmの範囲内であり、かつ、前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03ml/g以上であり、前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03ml/g以上であり、前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積と前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積との総和が0.05ml/g以上であり、排ガス浄化用触媒、VOC類浄化用触媒、改質触媒、空気清浄機用触媒からなる群から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の触媒においては、前記第二の活性成分がパラジウムであり、前記第二金属酸化物粉末がセリア-ジルコニア固溶体粉末であることが好ましく、また、前記第二集合体粒子がアルミナ粉末を更に含むものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の触媒においては、前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03~0.4ml/gであることが好ましく、また、前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.06~0.4ml/gであることが好ましい。
【0011】
なお、本発明の触媒において、低温時や反応初期にも、異なる触媒性能がともに十分に発揮される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の触媒においては、第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末を含む第一集合体粒子と、ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末を含む第二集合体粒子とが、活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなるマトリックス中に包含されており、かつ、前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子の体積平均粒子径がそれぞれ特定の範囲内にあるため、前記第一の活性成分と前記第二の活性成分、前記第一の活性成分と前記第二金属酸化物粉末、及び、前記第二の活性成分と前記第一金属酸化物粉末とが適度な距離を隔てて存在しており、前記第一の活性成分と前記第二の活性成分の異なる触媒性能が阻害されることなく、ともに十分に発揮される。
【0012】
そして、本発明の触媒においては、前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積の総和が特定の範囲内にあるため、前記第一集合体粒子中及び前記第二集合体粒子中のガスの拡散性が優れており、前記第一集合体粒子中の前記第一の活性成分及び前記第二集合体粒子中の前記第二の活性成分とガスとの接触効率が高くなり、低温時や反応初期においても、前記第一の活性成分と前記第二の活性成分の異なる触媒性能がともに十分に発揮されると推察される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温時や反応初期においても、異なる触媒性能がともに十分に発揮される触媒を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で得られたRh/アルミナ-セリア-ジルコニアペレット(第一集合体粒子)の累積細孔分布を示すグラフである。
【
図2】実施例1で得られたPd/セリア-ジルコニアペレット(第二集合体粒子)の累積細孔分布を示すグラフである。
【
図3】比較例3で得られたRh/アルミナ-セリア-ジルコニア圧粉ペレット(第一集合体粒子)の累積細孔分布を示すグラフである。
【
図4】比較例3で得られたPd/セリア-ジルコニア圧粉ペレット(第二集合体粒子)の累積細孔分布を示すグラフである。
【
図5】実施例1及び比較例1~3で得られたペレット触媒の累積細孔分布を示すグラフである。
【
図6】実施例1及び比較例1~3で得られたペレット触媒のCO、C
3H
6及びNOxの50%浄化温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
本発明の触媒は、第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末を含む第一集合体粒子と、ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末を含む第二集合体粒子と、活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなるマトリックスと、を備えるものであり、前記マトリックス中に前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子とが包含されており、前記第一集合体粒子の体積平均粒子径と前記第二集合体粒子の体積平均粒子径とがそれぞれ50~600μmの範囲内であり、かつ、前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積と前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積との総和が0.05ml/g以上である。
【0017】
(第一集合体粒子)
前記第一集合体粒子は、第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末を含んでいることが必要である。このような第一集合体粒子において、前記第一金属酸化物粉末としては、特に制限はなく、本発明の触媒の用途において通常用いることが可能な金属酸化物であればよい。
【0018】
本発明に用いられる第一金属酸化物粉末において、金属酸化物を構成する金属としては、例えば、卑金属元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、Mg、Al、K、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Rb、Sr、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Cs、Ba、Ta、W等)、メタロイド元素(Si、Ge、As、Sb等)が挙げられ、中でも、Ce、Zr、Al、Ti、Si、Mg、Y、La、Ndが好ましい。これらの金属は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよく、2種以上の金属を併用する場合には、2種以上の金属酸化物として使用してもよいし、セリア-ジルコニア複合酸化物やセピオライト、ゼオライトのように2種以上の金属を含む複合酸化物として使用してもよい。また、このような金属の酸化物からなる第一金属酸化物粉末は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0019】
このような金属を含む金属酸化物のうち、ロジウム(Rh)を高活性な状態でかつ高分散で担持することができるとともに、担持したRhの酸化をより十分に防止できるという観点から、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、セリウム酸化物(CeO2)、イットリウム酸化物(Y2O3)、希土類酸化物、アルミニウム酸化物(Al2O3)、マグネシウム酸化物(MgO)、並びにこれらのうちの少なくとも1種を含む複合酸化物及び固溶体が好ましく、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、希土類酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、並びにこれらのうちの2種以上の複合酸化物及び固溶体がより好ましく、また、ロジウム(Rh)の耐熱性が維持されるという観点から、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、希土類酸化物、アルミニウム酸化物及びマグネシウム酸化物のうちの少なくとも1種を含む複合酸化物が好ましく、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、希土類酸化物、アルミニウム酸化物及びマグネシウム酸化物のうちの2種以上の複合酸化物がより好ましい。
【0020】
また、前記第一金属酸化物粉末においては、担体の熱安定性やRhの触媒活性の向上の観点から、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属の酸化物;これらの金属の酸化物の混合物;これらの金属の酸化物の固溶体;これらの金属の複合酸化物が挙げられる。また、このような添加剤は、前記第一金属酸化物粉末に用いられる金属酸化物と複合酸化物や固溶体を形成していることが好ましい。
【0021】
前記第一金属酸化物粉末の形状としては、粉末状であること以外、特に制限はないが、耐熱性が高く、高比表面積であるものが好ましい。このような第一金属酸化物粉末の粒径としては特に制限はないが、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。
【0022】
本発明に用いられる第一活性粉末は、このような第一金属酸化物粉末に第一の活性成分としてのロジウム(Rh)が担持されたものである。前記第一金属酸化物粉末にRhを担持することによって、例えば、本発明の触媒を排ガス浄化触媒に用いる場合、酸化雰囲気下においてもRhの状態は高活性なメタル状態に保たれ易く、十分な触媒活性を示す触媒が得られる。このような第一活性粉末は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記第一活性粉末において、Rhの担持量としては特に制限はないが、前記第一金属酸化物粉末100質量部に対して、0.03~1.0質量部が好ましく、0.05~0.3質量部がより好ましい。Rhの担持量が前記下限未満になると、十分な触媒活性が得られず、NOxやHC等の有害成分の排出を抑制できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒のコストが高くなる傾向にある。
【0024】
Rhの担持方法としては特に制限はなく、公知の方法を採用することができ、例えば、Rhの塩を含有する水溶液を前記第一金属酸化物粉末に含浸させた後に乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられる第一集合体粒子は、このような第一活性粉末を含むものである。前記第一活性粉末の含有量としては、本発明の効果が十分に得られる限り特に制限はないが、前記第一集合体粒子全体(100質量%)に対して、30質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0026】
また、前記第一集合体粒子においては、粒子の構造安定性を向上させるという観点から、アルミナ粉末が更に含まれていてもよい。このようなアルミナ粉末の粒径としては特に制限はないが、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。また、前記アルミナ粉末の含有量としては、本発明の効果を損なうことなく、第一集合体粒子の構造安定性が向上するという観点から、前記第一集合体粒子全体(100質量%)に対して、0~70質量%が好ましく、0~20質量%がより好ましい。
【0027】
このような第一集合体粒子の形態としては特に制限はないが、前記第一活性粉末の凝集体や前記第一活性粉末と前記アルミナ粉末との凝集体であることが好ましい。このような凝集体は、前記第一活性粉末のみの凝集体や前記第一活性粉末と前記アルミナ粉末のみの凝集体であってもよいが、凝集体が崩壊しにくくなるという観点から、前記第一活性粉末や前記アルミナ粉末がバインダを介して凝集したものが好ましい。このようなバインダとしては、前記第一活性粉末及び前記アルミナ粉末を強固に結合できるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミナゾルバインダが挙げられる。また、前記バインダの含有量としては、本発明の効果を損なうことなく、凝集体の崩壊を十分に抑制できるという観点から、前記凝集体全体(100質量%)に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0028】
(第二集合体粒子)
前記第二集合体粒子は、ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末を含んでいることが必要である。このような第二集合体粒子において、前記第二金属酸化物粉末としては、特に制限はなく、本発明の触媒の用途において通常用いることが可能な金属酸化物であればよい。
【0029】
本発明に用いられる第二金属酸化物粉末において、金属酸化物を構成する金属としては、例えば、卑金属元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、Mg、Al、K、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Rb、Sr、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Cs、Ba、Ta、W等)、メタロイド元素(Si、Ge、As、Sb等)が挙げられ、中でも、Ce、Zr、Al、Ti、Si、Mg、Y、La、Nd、Prが好ましい。これらの金属は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよく、2種以上の金属を併用する場合には、2種以上の金属酸化物として使用してもよいし、セリア-ジルコニア複合酸化物やセピオライト、ゼオライトのように2種以上の金属を含む複合酸化物として使用してもよい。また、このような金属の酸化物からなる第二金属酸化物粉末は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0030】
このような金属を含む金属酸化物のうち、第二の活性成分を高活性な状態で担持することができるという観点から、アルミニウム酸化物(Al2O3)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、チタニウム酸化物(TiO2)、ケイ素酸化物(SiO2)、セリウム酸化物(CeO2)、これらのうちの少なくとも1種を含む複合酸化物及び固溶体、ゼオライトが好ましく、また、酸素貯蔵能を有するという観点から、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)等の金属の酸化物が好ましく、より高い酸素貯蔵放出性能を有するという観点から、セリウム酸化物(CeO2)、プラセオジム酸化物(Pr2O3)、ランタン酸化物(La2O3)がより好ましく、セリウム酸化物が特に好ましい。また、特性の異なる助触媒を併用して触媒性能を改善するという観点から、鉄含有複合酸化物も好ましい。
【0031】
また、前記第二金属酸化物粉末においては、前記酸素貯蔵能を有する金属酸化物と他の金属酸化物とを複合化して多孔質の金属酸化物粉末を形成することによって、酸素貯蔵能とともに耐熱性に優れた金属酸化物粉末を得ることができる。このような他の金属酸化物としては、例えば、チタニア、ジルコニア、ランタナ、ネオジア、プラセオジア、シリカ、及びこれらの2種以上の複合酸化物等といった公知の多孔質の金属酸化物が挙げられる。このような酸素貯蔵能を有する金属酸化物粉末として、具体的には、セリア-ジルコニア複合酸化物粉末、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粉末、シリカ-セリア-ジルコニア複合酸化物粉末、シリカ-セリア複合酸化物粉末、セリア-ジルコニア-ランタナ複合酸化物粉末、セリア-ジルコニア-ネオジア複合酸化物粉末、セリア-ジルコニア-プラセオジア複合酸化物粉末が挙げられ、中でも、ジルコニアによるセリアの構造安定化に基づいて、より高度な酸素貯蔵能が得られるという観点から、セリア-ジルコニア複合酸化物粉末、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粉末、セリア-ジルコニア-プラセオジア-ランタナ複合酸化物粉末が好ましく、セリア-ジルコニア固溶体粉末がより好ましい。
【0032】
前記第二金属酸化物粉末の形状としては、粉末状であること以外、特に制限はないが、耐熱性が高く、高比表面積であるものが好ましい。このような第二金属酸化物粉末の粒径としては特に制限はないが、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。
【0033】
本発明に用いられる第二活性粉末は、このような第二金属酸化物粉末にロジウム(Rh)以外の第二の活性成分が担持されたものである。ここで、「活性成分」とは、触媒性能を発現又は向上させるために作用する成分であり、例えば、本発明の触媒を排ガス浄化触媒に用いる場合には排ガス浄化に関与する成分(排ガスを浄化するために作用する成分)をいう。このような第二活性粉末は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記第二の活性成分としては、ロジウム(Rh)以外の活性成分であれば特に制限はないが、例えば、Pt、Pd、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Fe、Nb、Mo、W等が挙げられる。これらの活性成分は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このような活性成分のうち、炭化水素(HC)をより効率的に酸化したり、NOxをより効率よく還元して、排ガスを浄化できるという観点から、Pt、Pd、Ir、Au、Ag、Cuがより好ましく、Pt、Pdが更に好ましく、Pdが特に好ましい。さらに、助触媒作用の観点から、Feも好ましい。
【0035】
前記第二活性粉末において、第二の活性成分の担持量としては特に制限はないが、前記第二金属酸化物粉末100質量部に対して、0.1~5.0質量部が好ましく、0.3~2.0質量部がより好ましい。第二の活性成分の担持量が前記下限未満になると、十分な触媒活性が得られず、NOxやHC等の有害成分の排出を抑制できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒のコストが高くなるとともに触媒の活性が低下する傾向にある。
【0036】
第二の活性成分の担持方法としては特に制限はなく、公知の方法を採用することができ、例えば、第二の活性成分である金属の塩を含有する水溶液を前記第二金属酸化物粉末に含浸させた後に乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる第二集合体粒子は、このような第二活性粉末を含むものである。前記第二活性粉末の含有量としては、本発明の効果が十分に得られる限り特に制限はないが、前記第二集合体粒子全体(100質量%)に対して、30質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましい。
【0038】
また、前記第二集合体粒子においては、粒子の構造安定性を向上させるという観点から、アルミナ粉末が更に含まれていてもよい。このようなアルミナ粉末の粒径としては特に制限はないが、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。また、前記アルミナ粉末の含有量としては、本発明の効果を損なうことなく、第二集合体粒子の構造安定性が向上するという観点から、前記第二集合体粒子全体(100質量%)に対して、0~70質量%が好ましく、0~55質量%がより好ましい。
【0039】
このような第二集合体粒子の形態としては特に制限はないが、前記第二活性粉末の凝集体や前記第二活性粉末と前記アルミナ粉末との凝集体であることが好ましい。このような凝集体は、前記第二活性粉末のみの凝集体や前記第二活性粉末と前記アルミナ粉末のみの凝集体であってもよいが、凝集体が崩壊しにくくなるという観点から、前記第二活性粉末や前記アルミナ粉末がバインダを介して凝集したものが好ましい。このようなバインダとしては、前記第二活性粉末及び前記アルミナ粉末を強固に結合できるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミナゾルバインダが挙げられる。また、前記バインダの含有量としては、本発明の効果を損なうことなく、凝集体の崩壊を十分に抑制できるという観点から、前記凝集体全体(100質量%)に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0040】
(マトリックス)
前記マトリックスは、活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなることが必要である。このようなマトリックスにおいて、前記第三金属酸化物粉末としては、活性成分を含有しない金属酸化物粉末であること以外、特に制限はなく、公知の金属酸化物を用いることができる。ここで、「活性成分」とは、触媒性能を発現又は向上させるために作用する成分であり、例えば、本発明の触媒を排ガス浄化触媒に用いる場合には排ガス浄化に関与する成分(排ガスを浄化するために作用する成分)をいう。また、「含有しない」とは、不純物程度の混入は許容されうることを意味し、例えば、本発明の触媒を製造する過程において第一金属酸化物粉末に担持されたロジウム(Rh)や第二金属酸化物粉末に担持された第二の活性成分がマトリックスに移行したようなものは許容される。
【0041】
本発明に用いられる第三金属酸化物粉末において、金属酸化物を構成する金属としては、例えば、卑金属元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、Mg、Al、K、Ti、Sr、Zr、Ba等)、メタロイド元素(Si、Ge、As、Sb等)が挙げられ、中でも、Ce、Zr、Al、Ti、Si、Mgが好ましい。これらの金属は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよく、2種以上の金属を併用する場合には、2種以上の金属酸化物として使用してもよいし、セリア-ジルコニア複合酸化物やセピオライト、ゼオライトのように2種以上の金属を含む複合酸化物として使用してもよい。また、このような金属の酸化物からなる第三金属酸化物粉末は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0042】
このような金属を含む金属酸化物のうち、耐熱性の観点から、アルミニウム酸化物(Al2O3)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、イットリウム酸化物(Y2O3)、希土類酸化物が好ましく、第一の活性成分としてのロジウム(Rh)の触媒活性が向上するという観点から、アルミニウム酸化物(Al2O3)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、チタニウム酸化物(TiO2)、ランタン酸化物(La2O3)、ネオジム酸化物(Nd2O3)、プラセオジム酸化物(Pr2O3)、イットリウム酸化物(Y2O3)が好ましい。これらの金属酸化物を構成する金属は、Rhとの活性酸素授受が起こり難く、また固相反応も起こりづらいため、Rhの酸化状態に変化を及ぼす影響が無い又は小さく、Rhの活性をより向上させることができ、Rhのメタル状態を維持することが可能となる。また、高比表面積及び高耐熱性の観点から、活性アルミナ、ジルコニアが好ましく、触媒コート層の剥離防止及び耐熱性の観点から、アルミニウム酸化物(Al2O3)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、及びこれらの金属酸化物にLa、Nd、Pr、Y等が固溶した複合酸化物が好ましい。
【0043】
(触媒)
本発明の触媒は、前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子と前記マトリックスとを備えるものであり、前記マトリックス中に前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子とが包含されていることが必要である。ここで、「第一集合体粒子と第二集合体粒子とが包含されている」とは、前記第一集合体粒子及び前記第二集合体粒子が前記マトリックスの内部に含まれ、好ましくは分散していることを意味する。このような第一集合体粒子と第二集合体粒子とが包含されている形態としては、海に島が浮かんでいるダルメシアン模様のような形態、すなわち、例えば、本発明の触媒の断面を観察したときに、前記マトリックス(海)中に前記第一集合体粒子(島)及び前記第二集合体粒子(島)がダルメシアン模様のように浮かんでいるような形態であることが好ましい。さらに、本発明の触媒においては、触媒全体で効果を発現する観点から、前記第一集合体粒子及び前記第二集合体粒子は前記マトリックス中に均一に分散していることが好ましい。
【0044】
本発明の触媒においては、前記第一集合体粒子の体積平均粒子径と前記第二集合体粒子の体積平均粒子径とがそれぞれ50~600μmの範囲内であることが必要である。前記第一集合体粒子の体積平均粒子径及び前記第二集合体粒子の体積平均粒子径が前記下限未満になると、ロジウム(Rh)と第二の活性成分とが接触しやすいため、これらの触媒性能が阻害され、異なる触媒性能が十分に発揮されず、他方、前記上限を超えると、ロジウム(Rh)に対する前記第二集合体粒子よる助触媒としての相互作用が十分に得られず、異なる触媒性能が十分に発揮されない。また、ロジウム(Rh)と第二の活性成分との接触防止及び前記助触媒としての相互作用の観点から、前記第一集合体粒子の体積平均粒子径及び前記第二集合体粒子の体積平均粒子径としては、それぞれ50~400μmの範囲内であることが好ましく、それぞれ50~200μmの範囲内であることがより好ましい。なお、本発明において、「体積平均粒子径」とは、水に粒子を分散させて調製した懸濁液を用いて、前記粒子の体積基準の粒度分布を光散乱法により測定し、得られた粒度分布(体積基準)において累積頻度が50%となる粒子径(D50)である。
【0045】
また、本発明の触媒においては、前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積と前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積との総和が0.05ml/g以上であることが必要である。前記第一集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)と前記第二集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)との総和が前記下限未満になると、前記第一集合体粒子中及び前記第二集合体粒子中のガスの拡散性が低下するため、前記第一集合体粒子中のロジウム(Rh)や前記第二集合体粒子中の第二の活性成分とガスとの接触効率が低下し、低温時や反応初期において、Rhと前記第二の活性成分の異なる触媒性能が十分に発揮されない。また、前記第一集合体粒子中及び前記第二集合体粒子中のガスの拡散性が向上し、ロジウム(Rh)や前記第二の活性成分とガスとの接触効率が向上することによって、低温時や反応初期においてもRhと前記第二の活性成分の異なる触媒性能が十分に発揮されるという観点から、前記第一集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)と前記第二集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)との総和としては、0.06ml/g以上が好ましく、0.08ml/g以上がより好ましい。なお、前記第一集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)と前記第二集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)との総和の上限としては、スラリー中や触媒中での安定性、機械的強度の観点から、0.3ml/g以下が好ましく、0.2ml/g以下がより好ましい。また、本発明において、「集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積」(以下、「集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)」ともいう)とは、水銀ポロシメータを用いて測定される集合体粒子の細孔分布において、細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の細孔容積を積算したものである。
【0046】
さらに、本発明の触媒においては、前記第一集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03~0.4ml/gであることが好ましく、0.05~0.3ml/gであることがより好ましい。第一集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)が前記下限未満になると、前記第一集合体粒子中のガスの拡散性が低下するため、前記第一集合体粒子中のロジウム(Rh)とガスとの接触効率が低下し、低温時や反応初期において、Rhの触媒性能が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記第一集合体粒子の強度が低下するため、前記第一集合体粒子がスラリー中で微細化したり、触媒コート層から剥離したりしやすくなり、触媒を安定に保持できない傾向にある。
【0047】
また、本発明の触媒においては、前記第二集合体粒子における細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03~0.4ml/gであることが好ましく、0.06~0.3ml/gであることがより好ましい。第二集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)が前記下限未満になると、前記第二集合体粒子中のガスの拡散性が低下するため、前記第二集合体粒子中の第二の活性成分とガスとの接触効率が低下し、低温時や反応初期において、前記第二の活性成分の触媒性能が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記第二集合体粒子の強度が低下するため、前記第二集合体粒子がスラリー中で微細化したり、触媒コート層から剥離したりしやすくなり、触媒を安定に保持できない傾向にある。
【0048】
さらに、本発明の触媒においては、前記マトリックスにおける細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積が0.03~0.5ml/gであることが好ましく、0.05~0.4ml/gであることがより好ましい。マトリックスの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)が前記下限未満になると、前記マトリックス中のガスの拡散性が低下するため、触媒性能が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記マトリックスの強度が低下し、前記第一集合体粒子及び前記第二集合体粒子を安定に保持できず、前記第一集合体粒子及び前記第二集合体粒子が触媒コート層から剥離しやすくなる傾向にある。
【0049】
本発明の触媒において、前記第一集合体粒子の含有量としては、触媒全量(100質量%)に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。前記第一集合体粒子の含有量が前記下限未満になると、触媒性能や耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、集合体粒子同士が接触しやすくなる傾向にある。また、前記第二集合体粒子の含有量としては、触媒全量(100質量%)に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。前記第二集合体粒子の含有量が前記下限未満になると、Rhに対する助触媒としての効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、集合体粒子同士が接触しやすくなる傾向にある。
【0050】
また、本発明の触媒において、前記マトリックスの含有量としては、触媒全量(100質量%)に対して、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。前記マトリックスの含有量が前記下限未満になると、集合体粒子同士が接触しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒性能や耐熱性が低下する傾向にある。
【0051】
本発明の触媒において、前記第一金属酸化物粉末と前記第二金属酸化物粉末と前記第三金属酸化物粉末の組合せとしては特に制限はないが、例えば、ジルコニア粉末とセリア-ジルコニア複合酸化物粉末とアルミナ粉末との組合せ、ジルコニア粉末とセリア-ジルコニア複合酸化物粉末とジルコニア粉末との組合せ、ジルコニア粉末とアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粉末とジルコニア粉末との組合せ、ジルコニア粉末と鉄含有複合酸化物粉末とジルコニア-アルミナ複合酸化物粉末との組合せ、及び、これらにLaや希土類元素を添加した粉末の組合せが挙げられる。これらの組合せのうち、耐熱性、構造安定性及び触媒活性の観点から、ジルコニア粉末とセリア-ジルコニア複合酸化物粉末とアルミナ粉末との組合せ、ジルコニア粉末とセリア-ジルコニア複合酸化物粉末とジルコニア粉末との組合せが好ましく、ジルコニア粉末とセリア-ジルコニア複合酸化物粉末とアルミナ粉末との組合せがより好ましい。
【0052】
また、本発明の触媒において、「前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子と前記マトリックスとを備えて」とは、前記触媒が「前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子と前記マトリックス」のみから構成されるもの、或いは、主として「前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子と前記マトリックス」からなり、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含み構成されるものであることを意味する。このような他の成分としては、この種の触媒として用いられる他の金属酸化物や添加剤等が挙げられる。後者の場合、触媒における「前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子と前記マトリックス」の含有量としては、触媒全量(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。「前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子と前記マトリックス」の含有量が前記下限未満になると、本発明の効果が十分に得られない傾向にある。
【0053】
本発明の触媒が主として「前記第一集合体粒子と前記第二集合体粒子と前記マトリックス」からなる場合における他の成分としては、このような触媒に通常用いることが可能な金属酸化物であれば特に制限はなく、例えば、触媒の熱安定性や触媒活性の観点から、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属の酸化物、これらの金属の酸化物の混合物、これらの金属の酸化物の固溶体、これらの金属の複合酸化物が挙げられる。
【0054】
本発明の触媒を製造するための方法としては、具体的には、第一の活性成分としてのロジウムが第一金属酸化物粉末に担持されてなる第一活性粉末を含む第一集合体粒子(又はその原料)を準備する工程(第一集合体粒子準備工程)と、ロジウム以外の第二の活性成分が第二金属酸化物粉末に担持されてなる第二活性粉末を含む第二集合体粒子(又はその原料)を準備する工程(第二集合体粒子準備工程)と、活性成分を含有しない第三金属酸化物粉末からなるマトリックス(又はその原料)を準備する工程(マトリックス準備工程)と、前記準備した第一集合体粒子(又はその原料)と前記準備した第二集合体粒子(又はその原料)と前記準備したマトリックス(又はその原料)とを攪拌器等により混合せしめることにより前記本発明の触媒を得る工程(触媒作製工程)と、を含む方法が挙げられる。このような第一集合体粒子を準備する方法、第二集合体粒子を準備する方法、マトリックスを準備する方法、及び触媒を作製する方法としては特に制限はなく、公知の方法を適宜採用することができる。
【0055】
前記第一集合体粒子準備工程及び前記第二集合体粒子準備工程においては、得られる第一集合体粒子の体積平均粒子径及び第二集合体粒子の体積平均粒子径がそれぞれ所定の範囲内となるように調整することが好ましい。このような調整方法としては、例えば、前記活性粉末を(好ましくは、バインダ等を介して)凝集させ、得られた凝集体を粉砕して粒度調整する方法や、前記活性粉末を含むスラリーに高分子凝集剤を添加し、攪拌機でスラリーを攪拌することにより粒度調整する方法等が挙げられる。
【0056】
また、前記第一集合体粒子準備工程及び前記第二集合体粒子準備工程においては、得られる第一集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)及び第二集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)が所定の範囲内となるように調整することが好ましい。このような調整方法においては、前記第一活性粉末又は前記第二活性粉末を圧粉成型せずに、前記第一集合体粒子又は前記第二集合体粒子を形成する必要がある。集合体粒子準備工程において圧粉成型すると、集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)が小さくなり、集合体粒子中のガスの拡散性が低下するため、前記第一集合体粒子中のロジウム(Rh)や前記第二集合体粒子中の第二の活性成分とガスとの接触効率が低下し、低温時や反応初期において、Rhの触媒性能や前記第二の活性成分の触媒性能が十分に発揮されない。
【0057】
また、触媒作製工程においては、(1)前記準備した第一集合体粒子(又はその原料)と前記準備した第二集合体粒子(又はその原料)と前記準備したマトリックス(又はその原料)とを含むスラリーを蒸発乾固させ、得られた乾固物を乾燥、焼成した後、必要に応じて粉砕処理を施して粒度調整する方法、(2)前記準備した第一集合体粒子(又はその原料)と前記準備した第二集合体粒子(又はその原料)と前記準備したマトリックス(又はその原料)とをそれぞれ個別のスラリーとして準備し、高分子凝集剤でこれらのスラリーを凝集させる方法、等が挙げられる。このように、前記触媒作製工程においては、前記第一集合体粒子(又はその原料)と前記第二集合体粒子(又はその原料)と前記マトリックス(又はその原料)とを圧粉成型せずに、これらの凝集体を形成する必要がある。触媒作製工程において圧粉成型すると、前記第一集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)と前記第二集合体粒子の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)との総和が小さくなり、前記第一集合体粒子中及び前記第二集合体粒子中のガスの拡散性が低下するため、前記第一集合体粒子中のロジウム(Rh)や前記第二集合体粒子中の第二の活性成分とガスとの接触効率が低下し、低温時や反応初期において、Rhと前記第二の活性成分の異なる触媒性能が十分に発揮されない。
【0058】
本発明の触媒の形態としては特に制限はなく、例えば、ペレット形状のペレット触媒、ハニカム形状のモノリス触媒等に成形してもよいが、粉末状のものを反応容器等の所望の箇所にそのまま配置してもよい。このような形態の触媒を製造する方法としては特に制限はなく、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、触媒をペレット状に成形してペレット形状の触媒を得る方法や、触媒を触媒基材にコートすることにより、触媒基材にコート(固定)した形態の触媒を得る方法等を適宜採用することができる。また、このような触媒基材としては特に制限はないが、例えば、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、ハニカムモノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好ましい。さらに、触媒基材の材質も特に制限はないが、例えば、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好ましい。
【0059】
このような本発明の触媒の用途としては特に制限はなく、例えば、排ガス浄化触媒、VOC類浄化触媒、改質触媒、空気清浄機用触媒等として有効に用いることができる。また、本発明の触媒の具体的な使用方法も特に制限はなく、例えば、排ガス浄化触媒として用いる場合には、処理対象となる有害成分を含む気体と触媒とをバッチ式又は連続的に接触させることによって、有害成分の浄化を達成することができる。処理対象となる有害成分としては、排ガス中のNOx、CO、HC、SOx等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した各金属酸化物粉末の調製方法を以下に示す。
【0061】
(調製例1)
<Rh/アルミナ-セリア-ジルコニア粉末(Rh/ACZ粉末)の調製>
先ず、第一金属酸化物粉末としてアルミナ-セリア-ジルコニア粉末(ACZ粉末、Al2O3:CeO2:ZrO2:(La2O3+Nd2O3+Y2O3)の質量比=30:20:44:6)850gを蒸留水850mlに分散させた後、第一の活性成分としてロジウム(Rh)を金属換算で0.85g含む硝酸ロジウム水溶液700mlを添加して十分に攪拌し、前記ACZ粉末に硝酸ロジウム水溶液を含浸させた。その後、このスラリーを150~200℃の温度にセットしたホットスターラー上で蒸発乾固させ、得られた乾固物を、大気中、150℃で5時間乾燥させ、さらに、大気中、200℃で5時間加熱した。得られた固形分を、大気中、500℃で3時間焼成して、Rhが担持されたアルミナ-セリア-ジルコニア粗粉末(Rh/ACZ粗粉末)を得た。なお、得られたRh/ACZ粉末におけるRh担持量は0.1質量%であった。
【0062】
次に、得られたRh/ACZ粗粉末を、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32μm以下、体積平均粒子径D50=9.2μmのRh/ACZ粉末を得た。
【0063】
(調製例2)
<Pd/セリア-ジルコニア粉末(Pd/CZ粉末)の調製>
先ず、第二金属酸化物粉末としてセリア-ジルコニア固溶体粉末(CZ粉末、CeO2:ZrO2:(La2O3+Pr2O3)の質量比=60:30:10)297gを蒸留水約400mlに分散させた後、第二の活性成分としてパラジウム(Pd)を金属換算で3g含む硝酸パラジウム水溶液50mlを添加して十分に攪拌し、前記CZ粉末に硝酸パラジウム水溶液を含浸させた。その後、このスラリーを180~300℃の温度にセットしたホットスターラー上で蒸発乾固させ、得られた乾固物を、大気中、110℃で数時間乾燥させた。得られた固形分を、大気中、500℃で1時間焼成して、Pdが担持されたセリア-ジルコニア固溶体粗粉末(Pd/CZ粗粉末)を得た。なお、得られたPd/CZ粉末におけるRh担持量は1質量%であった。
【0064】
次に、得られたPd/CZ粗粉末を、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が25μm以下のPd/CZ粉末を得た。
【0065】
(調製例3)
<アルミナ粉末の調製>
ランタン(La)を4質量%含有する活性アルミナ(La2O3安定化Al2O3)の粗粉末を、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32μm以下のアルミナ粉末を得た。
【0066】
(調製例4)
<Rh/アルミナ-セリア-ジルコニアペレット(Rh/ACZペレット)の調製>
流動層造粒コーティング装置(フロイント産業株式会社製)に、第一活性粉末として調製例1で得られたRh/ACZ粉末(粒径:32μm以下)200gを投入した。流動層内に空気を供給して前記Rh/ACZ粉末を流動させながら、バインダとして羽毛状の針状アルミナ粒子を含むアルミナゾルバインダ水溶液(固形分濃度:5.4質量%、500℃で1時間焼成後の固形分の比表面積:300m2/g)185g(固形分量:10g)を噴霧して、前記Rh/ACZ粉末を造粒した後、大気中、500℃で3時間焼成して、前記Rh/ACZ粉末を含むペレット(Rh/ACZペレット)を得た。なお、このRh/ACZペレットにおける前記Rh/ACZ粉末100質量部に対するバインダ量は5質量部であった。
【0067】
(調製例5)
<Pd/セリア-ジルコニアペレット(Pd/CZペレット)の調製>
流動層造粒コーティング装置(フロイント産業株式会社製)に、第二活性粉末として調製例2で得られたPd/CZ粉末(粒径:25μm以下)100gと、粒子の構造安定化剤として調製例3で得られたアルミナ粉末(粒径:32μm以下)100gとを投入した。流動層内に空気を供給して前記Pd/CZ粉末と前記アルミナ粉末とを流動させながら、バインダとして羽毛状の針状アルミナ粒子(平均長さ:1μm、平均直径:0.01μm)を含むアルミナゾルバインダ水溶液(固形分濃度:5.4質量%、乾燥後の固形分の比表面積:300~500m2/g)200g(固形分量:11g)を噴霧して、前記Pd/CZ粉末と前記アルミナ粉末との混合粉末を造粒した後、大気中、500℃で3時間焼成して、前記Pd/CZ粉末と前記アルミナ粉末とを含むペレット(Pd/CZペレット)を得た。なお、このPd/CZペレットにおける前記Pd/CZ粉末と前記アルミナ粉末との混合粉末100質量部に対するバインダ量は5質量部であった。
【0068】
(実施例1)
<Rh/ACZペレットの整粒>
調製例4で得られたRh/ACZペレットを篩分けして、粒径が32~100μmの範囲内にあるRh/ACZペレットを得た。
【0069】
<Rh/ACZペレットの体積平均粒子径(D50)測定>
整粒した前記Rh/ACZペレット(粒径:32~100μm)0.1g以下を蒸留水200mlに分散させて懸濁液を調製した。この懸濁液における前記Rh/ACZペレットの体積基準の粒度分布を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製「マイクロトラックMT3300EX」)を用いて光散乱法により測定し、得られた粒度分布(体積基準)において累積頻度が50%となる粒子径(体積平均粒子径D50)を求めたところ、D50=74μmであった。
【0070】
また、粒度分布測定後の前記懸濁液に超音波処理(周波数:20kHz、出力:30W)を2分間施した後、上記と同様にして、前記Rh/ACZペレットの体積平均粒子径D50を求めたところ、D50=53μmであった。この結果から、前記Rh/ACZペレットは、超音波処理を施しても微細化されておらず、安定に存在していることが確認された。
【0071】
<Rh/ACZペレットの細孔分布測定>
整粒した前記Rh/ACZペレット(粒径:32~100μm)の細孔分布を、水銀ポロシメータ(カンタクローム社製「POWERMASTER 60GT」)を用いて測定した。その結果を
図1に示す。
図1に示した累積細孔分布に基づいて、前記Rh/ACZペレットの細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積を求めたところ、0.181ml/gであった。
【0072】
<Pd/CZペレットの整粒>
調製例5で得られたPd/CZペレットを篩分けして、粒径が32~100μmの範囲内にあるPd/CZペレットを得た。
【0073】
<Pd/CZペレットの体積平均粒子径(D50)測定>
整粒した前記Pd/CZペレット(粒径:32~100μm)の体積平均粒子径D50を、前記Rh/ACZペレットの場合と同様にして測定したところ、D50=74μmであった。また、前記Rh/ACZペレットの場合と同様に、2分間の超音波処理後の前記Pd/CZペレットの体積平均粒子径D50を測定したところ、D50=61μmであった。この結果から、前記Pd/CZペレットは、超音波処理を施しても微細化されておらず、安定に存在していることが確認された。
【0074】
<Pd/CZペレットの細孔分布測定>
整粒した前記Pd/CZペレット(粒径:32~100μm)の細孔分布を、前記Rh/ACZペレットの場合と同様にして測定した。その結果を
図2に示す。
図2に示した累積細孔分布に基づいて、前記Pd/CZペレットの細孔直径が1~10μmの範囲内にある細孔の全細孔容積を求めたところ、0.091ml/gであった。
【0075】
<触媒調製>
先ず、蒸留水15gに、20質量%のクエン酸水溶液1.5g、50質量%の酢酸水溶液0.3g及びバインダとして羽毛状の針状アルミナ粒子を含むアルミナゾルバインダ水溶液(固形分濃度:6.75質量%、500℃で1時間焼成後の固形分の比表面積:300m2/g)22.2g(固形分量:1.5g)を添加して攪拌した。
【0076】
得られた水溶液に、マトリックスとして調製例3で得られたで得られたアルミナ粉末(粒径:32μm以下)7.5gを添加して攪拌し、さらに、第一集合体粒子として整粒した前記Rh/ACZペレット(粒径:32~100μm、D50=74μm、全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm):0.181ml/g)2.5gと第二集合体粒子として整粒した前記Pd/CZペレット(粒径:32~100μm、D50=74μm、全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm):0.091ml/g)5gとを添加して攪拌した。
【0077】
得られたスラリーを200℃で1時間蒸発乾固させ、得られた乾固物を300℃で1時間乾燥させ、さらに、大気中、500℃で1時間焼成した。得られた焼成物を粉砕し、篩分けにより、粒径が0.5~1mmのペレット触媒を得た。
【0078】
得られたペレット触媒において、前記Rh/ACZペレットの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)と前記Pd/CZペレットの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)との総和を算出したところ、
(0.181ml/g×2.5g+0.091ml/g×5g)/(2.5g+5g)
=0.121ml/g
であった。
【0079】
(比較例1)
<Rh/ACZペレットの粉砕及び整粒>
調製例4で得られたRh/ACZペレットを、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32μm以下のRh/ACZペレットを得た。
【0080】
<Pd/CZペレットの粉砕及び整粒>
調製例5で得られたPd/CZペレットを、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32μm以下のPd/CZペレットを得た。
【0081】
<触媒調製>
第一集合体粒子として整粒した前記Rh/ACZペレット(粒径:32μm以下)2.5gを用い、第二集合体粒子として整粒した前記Pd/CZペレット(粒径:32μm以下)5gを用いた以外は実施例1と同様にして、粒径が0.5~1mmのペレット触媒を得た。
【0082】
(比較例2)
<ペレット触媒の圧粉成型、粉砕及び整粒>
比較例1において、粉砕後の篩分けにより取除いた、粒径が0.5mm以下のペレット触媒を、静水圧プレス装置(日機装株式会社製「CL4-22-60」)を用いて3000kgf/cm2の圧力(成型圧力)で冷間等方圧プレス(CIP)を2分間行い、得られた圧粉成型体を、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が0.5~1mmの圧粉ペレット触媒を得た。
【0083】
(比較例3)
<Rh/ACZペレットの粉砕及び整粒>
調製例4で得られたRh/ACZペレットを、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32μm以下のRh/ACZペレットを得た。
【0084】
<Rh/ACZペレットの圧粉成型、粉砕及び整粒>
整粒した前記Rh/ACZペレット(粒径:32μm以下)を、静水圧プレス装置(日機装株式会社製「CL4-22-60」)を用いて2000kgf/cm2の圧力(成型圧力)で冷間等方圧プレス(CIP)を2分間行い、得られた圧粉成型体を、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32~100μmの範囲内にあるRh/ACZ圧粉ペレットを得た。
【0085】
<Rh/ACZ圧粉ペレットの体積平均粒子径(D50)測定>
整粒した前記Rh/ACZ圧粉ペレット(粒径:32~100μm)の体積平均粒子径D50を、実施例1と同様にして測定したところ、D50=84μmであった。
【0086】
<Rh/ACZ圧粉ペレットの細孔分布測定>
整粒した前記Rh/ACZ圧粉ペレット(粒径:32~100μm)の細孔分布を、実施例1と同様にして測定した。その結果を
図3に示す。
図3に示した累積細孔分布に基づいて、前記Rh/ACZ圧粉ペレットの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)を求めたところ、0.029ml/gであった。
【0087】
<Pd/CZペレットの粉砕及び整粒>
調製例5で得られたPd/CZペレットを、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32μm以下のPd/CZペレットを得た。
【0088】
<Pd/CZペレットの圧粉成型、粉砕及び整粒>
整粒した前記Pd/CZペレット(粒径:32μm以下)を、静水圧プレス装置(日機装株式会社製「CL4-22-60」)を用いて2000kgf/cm2の圧力(成型圧力)で冷間等方圧プレス(CIP)を2分間行い、得られた圧粉成型体を、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、篩分けにより、粒径が32~100μmの範囲内にあるPd/CZ圧粉ペレットを得た。
【0089】
<Pd/CZ圧粉ペレットの体積平均粒子径(D50)測定>
整粒した前記Pd/CZ圧粉ペレット(粒径:32~100μm)の体積平均粒子径D50を、実施例1と同様にして測定したところ、D50=81μmであった。
【0090】
<Pd/CZ圧粉ペレットの細孔分布測定>
整粒した前記Pd/CZ圧粉ペレット(粒径:32~100μm)の細孔分布を、実施例1と同様にして測定した。その結果を
図4に示す。
図4に示した累積細孔分布に基づいて、前記Pd/CZ圧粉ペレットの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)を求めたところ、0.055ml/gであった。
【0091】
<触媒調製>
第一集合体粒子として整粒した前記Rh/ACZ圧粉ペレット(粒径:32~100μm、D50=84μm、全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm):0.029ml/g)2.5gを用い、第二集合体粒子として整粒した前記Pd/CZ圧粉ペレット(粒径:32~100μm、D50=81μm、全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm):0.055ml/g)5gを用いた以外は実施例1と同様にして、粒径が0.5~1mmの圧粉ペレット触媒を得た。
【0092】
得られた圧粉ペレット触媒において、前記Rh/ACZペレットの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)と前記Pd/CZペレットの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)との総和を算出したところ、
(0.029ml/g×2.5g+0.055ml/g×5g)/(2.5g+5g)
=0.046ml/g
であった。
【0093】
〔ペレット触媒の細孔分布測定〕
実施例1及び比較例1~3で得られたペレット触媒の細孔分布を、水銀ポロシメータ(カンタクローム社製「POWERMASTER 60GT」)を用いて測定した。その結果を
図5に示す。
図5に示した累積細孔分布に基づいて、各ペレット触媒について、ペレット触媒全体の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)を求めた。その結果を表1に示す。
【0094】
また、実施例1及び比較例3で得られたペレット触媒について、前記ペレット触媒全体の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)及び前記Rh/ACZペレットと前記Pd/CZペレットとの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)の総和から、マトリックスの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)を求めたところ、実施例1については、
(0.239ml/g×16.5g-0.121ml/g×7.5g)/9.0g
=0.337ml/g
であり、比較例3については、
(0.193ml/g×16.5g-0.046ml/g×7.5g)/9.0g
=0.316ml/g
であった。
【0095】
〔50%浄化温度測定〕
実施例1及び比較例1~3で得られたペレット触媒のCO、C
3H
6及びNOxの50%浄化温度を測定した。すなわち、先ず、ペレット触媒0.3gを常圧固定床流通型反応装置に設置し、温度500℃、ガス流量20L/分の条件で、表2に示すガス組成のリッチモデルガスとリーンモデルガスとを5秒毎に切替えながら5分間流通させて前処理を行った後、前記ペレット触媒を100℃まで冷却した。次に、前処理後の前記ペレット触媒に、表2に示す定常ストイキモデルガス(A/F=14.2相当)を、100℃から500℃まで36℃/分の昇温速度で加熱しながら、20L/分で流通させ、各触媒入ガス温度において触媒入ガス及び触媒出ガス中のCO、C
3H
6及びNOxの濃度を測定してそれらの浄化率を算出し、CO、C
3H
6及びNOxの浄化率が50%となった時点の触媒温度(50%浄化温度)を求めた。その結果を表1及び
図6に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
表1及び
図6に示したように、体積平均粒子径が所定の範囲内にあるRh/ACZペレット及びPd/CZペレットを、圧粉成型を行わずに調製し、これらのペレットを用いて、圧粉成形を行わずに調製したペレット触媒(実施例1)は、前記Rh/ACZペレットと前記Pd/CZペレットとの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)の総和が所定の範囲内にあり、CO、C
3H
6及びNOxの50%浄化温度が低く、低温での浄化活性に優れていることがわかった。
【0099】
一方、体積平均粒子径が所定の範囲よりも小さいRh/ACZペレット及びPd/CZペレットを用いて調製したペレット触媒(比較例1、2)は、体積平均粒子径が所定の範囲内にあるRh/ACZペレット及びPd/CZペレットを用いて調製したペレット触媒(実施例1)に比べて、CO、C3H6及びNOxの50%浄化温度が高く、低温での浄化活性に劣ることがわかった。特に、ペレット触媒の調製時に圧粉成型を行った場合(比較例2)には、実施例1で得られたペレット触媒に比べて、ペレット触媒全体の全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)が極めて小さくなり、CO、C3H6及びNOxの50%浄化温度が著しく高く、低温での浄化活性に非常に劣ることがわかった。
【0100】
また、体積平均粒子径が所定の範囲内にあるRh/ACZペレット及びPd/CZペレットを調製する際に圧粉成型を行った場合(比較例3)には、前記Rh/ACZペレット及び前記Pd/CZペレットの全細孔容積(細孔直径範囲:1~10μm)がいずれも小さく、これらの総和が所定の範囲よりも小さくなり、CO、C3H6及びNOxの50%浄化温度が高く、低温での浄化活性に劣ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本発明によれば、低温時や反応初期においても、異なる触媒性能がともに十分に発揮される触媒を得ることが可能となる。したがって、本発明の触媒は、異なる触媒性能をともに発揮させることが必要な場合に用いられる触媒、例えば、排ガス浄化用触媒、VOC類浄化触媒、改質触媒、空気清浄機用触媒等として有用である。特に、自動車等の内燃機関からの排ガスを浄化する際に、異なる触媒性能を個々に発揮する複数の触媒の代わりに用いて、異なる触媒性能をともに発揮することが可能な触媒等として有用である。