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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】燃料電池用加湿器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240124BHJP
   H01M 8/04119 20160101ALI20240124BHJP
   H01M 8/04291 20160101ALI20240124BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04119
H01M8/04291
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022565464
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043473
(87)【国際公開番号】W WO2022114147
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2020195803
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 克宏
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-146320(JP,A)
【文献】特開2004-006389(JP,A)
【文献】特開2006-156099(JP,A)
【文献】特開2007-163035(JP,A)
【文献】特開2008-282555(JP,A)
【文献】独国実用新案第202016100670(DE,U1)
【文献】特開2009-199741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水空気に含まれる水分を乾燥空気に与えて加湿空気を生成する加湿ユニットを備えた燃料電池用加湿器であって、
前記加湿ユニットは、
一方の面の中央領域に乾燥ガス流路が形成される板状の第1セパレータと、
前記乾燥ガス流路に対向する面の中央領域に含水ガス流路が形成される板状の第2セパレータと、
前記乾燥ガス流路と前記含水ガス流路との間に配置され、前記乾燥ガス流路を流れる前記乾燥空気に対し前記含水ガス流路を流れるガスに含まれる水分を与えて前記加湿空気を生成する加湿膜と、
前記加湿膜の表裏に積層した状態で設けられ、前記加湿膜を補強する2つの保護膜と、
前記加湿膜と前記保護膜とを積層した状態で、前記加湿膜の第1外縁部に沿って設けられ、前記乾燥ガス流路と前記含水ガス流路との間をシールするシール材と、を備え、
少なくとも一方の前記保護膜の第2外縁部を前記加湿膜の前記第1外縁部よりも短くすることにより、前記第1外縁部と前記第2外縁部との間における前記加湿膜に前記シール材に密着する密着領域が形成されている燃料電池用加湿器。
【請求項2】
少なくとも一方の前記保護膜に対向するように前記加湿膜と反対側に補強部材が設けられ、
前記補強部材は、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間で、前記加湿膜及び前記保護膜と共に前記シール材に挟持される請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項3】
前記補強部材は、前記第2セパレータと前記加湿膜との間の前記保護膜と接触して設けられている請求項2に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項4】
前記加湿膜は、少なくともいずれか一方の面に前記密着領域を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項5】
前記加湿膜は、前記第1セパレータと対向する面に前記密着領域を有する請求項4に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項6】
前記加湿膜と前記保護膜とは、互いに平行な部分を複数有し、複数の前記平行な部分における前記密着領域の幅はいずれも等しい請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項7】
少なくとも前記加湿膜の前記第1外縁部の角部が円弧状に形成され、前記角部での前記密着領域の幅を複数の前記平行な部分における前記密着領域の幅に等しくすることにより、前記加湿膜の全周に亘って前記密着領域の幅が等しい請求項6に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項8】
前記保護膜の前記第2外縁部の角部が円弧状に形成されている請求項7に記載の燃料電池用加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水空気に含まれる水分を乾燥空気に与えて加湿空気を生成する加湿ユニットを備えた燃料電池用加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池が利用されており、燃料電池にはカソード側に供給されるカソードガスを加湿するために加湿器が設けられている。このような加湿器には、ガスを案内するセパレータと水を透過する膜とを交互に配置した加湿ユニットが備えられているものがある。このような加湿器として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、燃料電池用加湿器が記載されている。この燃料電池加湿器は、加湿部材として機能する加湿膜と、燃料電池の空気極に向かう空気が通過する空気供給通路に連通する加湿往路と、燃料電池の空気極から吐出された発電後のオフガスを通過させる空気オフガス通路に連通する加湿復路とが設けられている。加湿往路及び加湿復路は、上述したセパレータに相当する板部材に設けられ、加湿膜を介して互いに対面するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-187839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のような加湿往路及び加湿復路が加湿膜を介して互いに対面するように配置される構造にあっては、非常に薄い加湿膜が利用される。このような薄い加湿膜は、例えば製造工程においてハンドリングされる際に損傷を受け易い。このため、加湿膜の強度を高める上で、改良の余地がある。
【0006】
そこで、加湿膜が破損し難い燃料電池用加湿器が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池用加湿器の特徴構成は、含水空気に含まれる水分を乾燥空気に与えて加湿空気を生成する加湿ユニットを備えた燃料電池用加湿器であって、前記加湿ユニットは、一方の面の中央領域に乾燥ガス流路が形成される板状の第1セパレータと、前記乾燥ガス流路に対向する面の中央領域に含水ガス流路が形成される板状の第2セパレータと、前記乾燥ガス流路と前記含水ガス流路との間に配置され、前記乾燥ガス流路を流れる前記乾燥空気に対し前記含水ガス流路を流れるガスに含まれる水分を与えて前記加湿空気を生成する加湿膜と、前記加湿膜の表裏に積層した状態で設けられ、前記加湿膜を補強する2つの保護膜と、前記加湿膜と前記保護膜とを積層した状態で、前記加湿膜の第1外縁部に沿って設けられ、前記乾燥ガス流路と前記含水ガス流路との間をシールするシール材と、を備え、少なくとも一方の前記保護膜の第2外縁部を前記加湿膜の前記第1外縁部よりも短くすることにより、前記第1外縁部と前記第2外縁部との間における前記加湿膜に前記シール材に密着する密着領域が形成されている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、保護膜により加湿膜を保護すると共に加湿膜の機械的強度を補うことができ、製造工程における破損のリスクを低減できる。また、密着領域における加湿膜とシール材との密着性を高め、保護膜を介した乾燥ガス流路と含水ガス流路との間のリークを防止することが可能となる。
【0009】
また、少なくとも一方の前記保護膜に対向するように前記加湿膜と反対側に補強部材が設けられ、前記補強部材は、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間で、前記加湿膜及び前記保護膜と共に前記シール材に挟持されると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、補強部材により乾燥ガス流路を流通する乾燥空気の圧力が加湿膜、保護膜に作用しても、加湿膜、保護膜が撓み難くなって変形を抑制することが可能になる。
【0011】
また、前記補強部材は、前記第2セパレータと前記加湿膜との間の前記保護膜と接触して設けられていると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、加湿膜、保護膜がより撓み難くなって、更に効果的に変形を抑制することが可能になる。
【0013】
また、前記加湿膜は、少なくともいずれか一方の面に前記密着領域を有すると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、加湿膜の密着領域が設けられる面において、保護膜を介した乾燥ガス流路と含水ガス流路との間のリークを防止することが可能となる。
【0015】
また、前記加湿膜は、前記第1セパレータと対向する面に前記密着領域を有すると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、加湿膜の密着領域が設けられる面において、保護膜を介した乾燥ガス流路と含水ガス流路との間のリークを防止することが可能となる。また、加湿膜の第1セパレータと対向する面に密着領域を設けると、乾燥ガス流路を流通する乾燥空気(高圧)と含水ガス流路を流通する含水空気(低圧)との間に圧力差があっても、加湿膜が撓んで変形し難い。
【0017】
また、前記加湿膜と前記保護膜とは、互いに平行な部分を複数有し、複数の前記平行な部分における前記密着領域の幅はいずれも等しいと好適である。
【0018】
このような構成とすれば、複数の平行な部分において保護膜の外縁部と加湿膜の外縁部との幅をいずれも等しくできるので、外部環境の変化により加湿膜が膨張収縮したとしても、保護膜はそれに追従することができ、保護膜の剥離を防止できる。また、シール材が均等に加湿膜や保護膜と密着するので、加湿膜や保護膜がしわになりにくい。
【0019】
また、少なくとも前記加湿膜の前記外縁部の角部が円弧状に形成され、前記角部での前記密着領域の幅を複数の前記平行な部分における前記密着領域の幅に等しくすることにより、前記加湿膜の全周に亘って前記密着領域の幅が等しいと好適である。
【0020】
このような構成とすれば、全周に亘って保護膜の外縁部と加湿膜の外縁部との幅を一定にできるので、外部環境の変化により加湿膜が膨張収縮したとしても、保護膜はそれに追従することができ、保護膜の剥離を防止できる。また、シール材が全周に亘って均等に加湿膜や保護膜と密着するので、加湿膜や保護膜がしわになりにくい。
【0021】
また、前記保護膜の前記第2外縁部の角部が円弧状に形成されていると好適である。
【0022】
このような構成とすれば、全周に亘って保護膜の外縁部と加湿膜の外縁部との幅を一定にできるので、外部環境の変化により加湿膜が膨張収縮したとしても、保護膜はそれに追従することができ、保護膜の剥離を防止できる。また、シール材が全周に亘って均等に加湿膜や保護膜と密着するので、加湿膜や保護膜がしわになりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】は、燃料電池用加湿器の斜視図である。
図2】は、燃料電池用加湿器に連通される流路を示す図である。
図3】は、第1実施形態に係る加湿ユニットの部分側方断面図である。
図4】は、加湿膜に設けられた保護膜の平面視である。
図5】は、加湿膜に設けられた保護膜の別例である。
図6】は、第2実施形態に係る加湿ユニットの部分側方断面図である。
図7】は、変形例に係る加湿ユニットの部分側方断面図である。
図8】は、変形例に係る加湿ユニットの部分側方断面図である。
図9】は、変形例に係る加湿ユニットの部分側方断面図である。
図10】は、変形例に係る加湿ユニットの部分側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る燃料電池用加湿器(以下「加湿器」)は、加湿膜を保護すると共に補強するように構成されている。以下、本実施形態の加湿器1について説明する。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る加湿器1の斜視図である。図2は、加湿器1に連通される流路を示す図である。図3は、加湿ユニット10の一部の側方断面図である。加湿器1は、第1プレート2と、第2プレート3と、加湿ユニット10とを有して構成される。加湿ユニット10は、第1プレート2と第2プレート3との間に挟まれる状態で設けられる。詳細は後述するが、加湿ユニット10は、含水空気に含まれる水分を乾燥空気に与えて加湿空気を生成する。加湿ユニット10は、図3に示されるように、第1セパレータ11、第2セパレータ12、加湿膜13、保護膜14が積層された状態で構成され、加湿ユニット10は第1プレート2と第2プレート3との間で、第2セパレータ12、保護膜14、加湿膜13、保護膜14、及び第1セパレータ11をこの順で積層し、積層方向に加圧した状態で設けられる。なお、加湿ユニット10は、図3で示される状態のものを複数積層して構成される。
【0026】
図2に示されるように、加湿器1は、乾燥ガス供給口21、加湿ガス排出口22、含水ガス供給口31、含水ガス排出口32が設けられる。本実施形態では、加湿ユニット10は平面視が四角形状で構成され、乾燥ガス供給口21と加湿ガス排出口22とが四角形状の対角線に沿って互いに対向するように設けられ、含水ガス供給口31と含水ガス排出口32とが四角形状の対角線に沿って互いに対向するように設けられる。
【0027】
本実施形態では、加湿器1は、コンプレッサ41で加圧された空気(「乾燥空気」の一例)がバルブ42を介して乾燥ガス供給口21に供給される。乾燥ガス供給口21に供給された乾燥空気は、後述する乾燥ガス流路11Cを流通する間に加湿され、加湿空気として加湿ガス排出口22から排出される。加湿ガス排出口22から排出された加湿空気はカソードガス供給路43Bに導入され、燃料電池43に供給される。燃料電池43は、水素ガスを含む燃料ガスと、酸素ガスを含む空気(上記「乾燥空気」が相当)とが供給され、発電が行われる。燃料電池43は、この発電により、多くの水が水蒸気の状態で含まれる含水ガス(「含水空気」の一例)を排出する。この含水ガスは、カソードオフガス排出路43Aを介して含水ガス供給口31に供給される。含水ガス供給口31に供給された含水ガスは、後述する含水ガス流路12Cを流通する際に、乾燥ガス流路11Cを流通する乾燥空気を加湿し、含水ガス排出口32から排出される。
【0028】
図3に示されるように、第1セパレータ11は、一方の面の中央領域に乾燥ガス流路11Cが形成される。第1セパレータ11は板状に形成され、一方の面とは、この板状の第1セパレータ11が有する面における表面11A及び裏面11Bのうち、表面11Aが相当する。このため、一方の面の中央領域とは、平面視において、第1セパレータ11を外周部と中央部とに分けた場合における中央部の領域が相当する。したがって、第1セパレータ11は、平面視において、表面11Aの中央領域に乾燥ガス流路11Cが形成される。なお、第1セパレータ11は、平面視において、表面11Aの外周部には後述するシール材15が設けられる。このため、理解を容易にするために、本実施形態では、平面視において、表面11Aのシール材15が設けられる領域を外周部とし、乾燥ガス流路11Cが形成される領域を中央部として説明する。図3にあっては、第1セパレータ11が1つのみ記載されているが、加湿ユニット10には、第1セパレータ11が複数備えられ、夫々の乾燥ガス流路11Cは、図2に示されるように、乾燥ガス供給路51及び供給口71を介して乾燥ガス供給口21と連通するように構成される。これにより、上述したように乾燥ガス流路11Cにコンプレッサ41からの乾燥空気を導入することが可能となる。なお、第1セパレータ11において、表面11Aに加えて、裏面11Bの中央領域に乾燥ガス流路11C又は含水ガス流路12Cが形成されていても良い。
【0029】
第2セパレータ12は、一方の面の中央領域に含水ガス流路12Cが形成される。第2セパレータ12は板状に形成され、一方の面とは、この板状の第2セパレータ12が有する面における表面12A及び裏面12Bのうち、表面12Aが相当する。このため、一方の面の中央領域とは、平面視において、第2セパレータ12を外周部と中央部とに分けた場合における中央部の領域が相当する。したがって、第2セパレータ12は、平面視において、表面12Aの中央領域に含水ガス流路12Cが形成される。なお、第2セパレータ12にあっても、平面視において、表面12Aの外周部には後述するシール材15が設けられる。このため、理解を容易にするために、本実施形態では、平面視において、表面12Aのシール材15が設けられる領域を外周部とし、含水ガス流路12Cが形成される領域を中央部として説明する。図3にあっては、第2セパレータ12が1つのみ記載されているが、加湿ユニット10には、第2セパレータ12も複数備えられ、夫々の含水ガス流路12Cは、図2に示されるように、含水ガス供給路61及び供給口81を介して含水ガス供給口31と連通するように構成される。これにより、燃料電池43からの含水ガスを導入することが可能となる。なお、第2セパレータ12において、表面12Aに加えて、裏面12Bの中央領域に含水ガス流路12C又は乾燥ガス流路11Cが形成されていても良い。
【0030】
図3に示されるように、加湿膜13は、積層方向で乾燥ガス流路11Cと含水ガス流路12Cとの間に配置される。乾燥ガス流路11Cと含水ガス流路12Cとの間とは、上述した第1セパレータ11の中央領域と第2セパレータ12の中央領域との間である。したがって、加湿膜13は第1セパレータ11の中央領域と第2セパレータ12の中央領域との間に配置される。すなわち、乾燥ガス流路11Cと含水ガス流路12Cとは加湿膜13を挟んで対向している。加湿膜13も、加湿ユニット10にあっては複数設けられる。
【0031】
このような加湿膜13は、乾燥ガス流路11Cを流れる乾燥空気に対し含水ガス流路12Cを流れるガスに含まれる水分を与えて加湿空気を生成する。乾燥ガス流路11Cを流れる乾燥空気とは、バルブ42、乾燥ガス供給口21及び乾燥ガス供給路51を介してコンプレッサ41から乾燥ガス流路11Cに供給される乾燥ガスである。含水ガス流路12Cを流れるガスとは、カソードオフガス排出路43Aから含水ガス流路12Cの供給される含水ガスである。したがって、加湿膜13は、バルブ42、乾燥ガス供給口21及び乾燥ガス供給路51を介してコンプレッサ41から供給される乾燥ガスに対し、カソードオフガス排出路43A及び含水ガス供給口31を介して燃料電池43から流通する含水ガスに含まれる水分を与えて加湿空気を生成する。なお、乾燥空気に水分を与えて加湿ガス(「加湿空気」の一例)を生成する方法については、公知であるのでここでの説明は省略する。生成された加湿ガスは、加湿空気排出路52及び加湿ガス排出口22を介してカソードガス供給路43Bに導入され、燃料電池43に供給される。
【0032】
保護膜14は、図3に示されるように、加湿膜13と積層した状態で設けられ、加湿膜13を補強する。「加湿膜13と積層した状態で設けられ、」とは、少なくとも加湿膜13の表面に相当する第1面13A及び裏面に相当する第2面13Bのうちの一方に貼り付けられた状態で設けられることを意味する。本実施形態では、保護膜14は、加湿膜13における第1面13A及び第2面13Bの双方(表裏)に夫々設けられる。保護膜14としては、例えば不織布を利用するが、これに限定されず、抄紙、メッシュ、多孔膜等を利用することが可能である。これにより保護膜14が、薄膜(例えば厚さが数μm)である加湿膜13を保護すると共に機械的強度を補強し、例えば製造工程におけるハンドリング性を高め、損傷を防止することが可能となる。
【0033】
また、保護膜14は、少なくとも一方の保護膜14の外縁部(第2外縁部の一例)14Eが加湿膜13の外縁部(第1外縁部の一例)13Eよりも加湿膜13の中央部側に引退した状態で設けられる。保護膜14の外縁部14Eとは、上述した保護膜14の外周部における縁部(外端部)である。加湿膜13の中央部側に引退した状態とは、図4に示されるように、加湿膜13に積層した状態で設けた保護膜14の平面視において、保護膜14の外縁部14Eの周囲に加湿膜13が露出している状態であることを意味する。このとき、保護膜14の外縁部14Eの外周長さは加湿膜13の外縁部13Eの外周長さよりも短くなっている。本実施形態では、加湿膜13のうち当該加湿膜13の外縁部13Eと保護膜14の外縁部14Eとの間において加湿膜13が露出している部分は、密着領域19と称される。また、本実施形態では、上述したように、保護膜14は、加湿膜13における第1面13A及び第2面13Bの双方に設けられるが、加湿膜13における第1面13A及び第2面13Bの双方に設けられる保護膜14のうち、第2面13Bに設けられた保護膜14が加湿膜13の中央部側に引退した状態で設けられる。一方、加湿膜13の第1面13Aに設けられた保護膜14は、保護膜14の外縁部14Eが加湿膜13の外縁部13Eよりも加湿膜13の中央部側に引退しない状態で設けられる。本実施形態では、加湿膜13の第1面13Aに設けられた保護膜14は、外縁部14Eが加湿膜13の外縁部13Eと一致した状態で設けられる。なお、保護膜14は必要に応じて、加湿膜13の外縁部13Eより大きくても良い。
【0034】
シール材15は、加湿膜13と保護膜14とを挟持した状態で、加湿膜13の外縁部13Eに沿って設けられる。具体的には、第1セパレータ11の一方の面(表面11A)の外周部のうち、乾燥ガス流路11Cの乾燥ガス供給路51及び加湿空気排出路52以外の部分と、第2セパレータ12の一方の面(表面12A)の外周部のうち、含水ガス流路12Cの含水ガス供給路61及び含水空気排出路62以外の部分とに亘って設けられる。本実施形態における加湿膜13と保護膜14とを挟持した状態とは、保護膜14と第1セパレータ11、第2セパレータ12との間に夫々シール材15が入り込むことにより、加湿膜13と保護膜14とが第1セパレータ11及び第2セパレータ12の夫々の外周部と離間している状態をいう。また、第1セパレータ11の一方の面の外周部のうち、乾燥ガス流路11Cの供給口71は、乾燥ガス供給路51と連通して、乾燥ガス流路11Cに乾燥ガスが供給されるポートに相当し、排出口72は、加湿空気排出路52と連通して、乾燥ガス流路11Cから加湿空気が排出されるポートに相当する。第2セパレータ12の一方の面の外周部のうち、含水ガス流路12Cの供給口81は、含水ガス供給路61と連通して、含水ガス流路12Cに含水ガスが供給されるポートに相当し、排出口82は、含水空気排出路62と連通して、含水ガス流路12Cから含水空気が排出されるポートに相当する。
【0035】
本実施形態では、シール材15は、加湿膜13と保護膜14とが第1セパレータ11及び第2セパレータ12の夫々と離間している状態で、乾燥ガス供給路51、加湿空気排出路52、含水ガス供給路61、及び含水空気排出路62以外の部分に全周に亘って設けられる。シール材15は、図2においてグレーの着色で示される。図3に示されるように、シール材15の外縁は、第1セパレータ11及び第2セパレータ12の外縁と面一になるように設けられる。図2においては、シール材15の外縁が、第1セパレータ11及び第2セパレータ12の外縁から若干内側に入っているように描かれているが、実際は面一である。このようなシール材15は例えば接着剤を利用することが可能である。
【0036】
また、シール材15は、加湿膜13のうち当該加湿膜13の外縁部13Eと保護膜14の外縁部14Eとの間における加湿膜13が有する密着領域19において、加湿膜13と直接接触するように設けられる。これにより、保護膜14に、当該保護膜14の厚さ方向に沿う空隙がある場合であっても、シール材15と加湿膜13との間における気密性を高め、乾燥ガス流路11Cと含水ガス流路12Cとの間をシールして、乾燥ガス流路11Cから含水ガス流路12Cへの空気(乾燥空気及び加湿空気)のリーク(クロスリーク)のリスクを低減することが可能となる。
【0037】
この加湿膜13が有する密着領域19は、加湿膜13の表面に相当する第1面13A及び裏面に相当する第2面13Bのうちの少なくともいずれか一方の面に設けられる。本実施形態では、保護膜14は加湿膜13の第1面13A及び第2面13Bの双方に設けられているが、密着領域19は第2面13Bにのみ設けられる。通常、乾燥ガス流路11Cを流通する乾燥空気は、コンプレッサ41で加圧されているため、含水ガス流路12Cを流通する含水空気よりも圧力が高い。そのため、乾燥空気の圧力を受ける第2面13Bに密着領域19を設けると、乾燥ガス流路11Cを流通する乾燥空気(高圧)と含水ガス流路12Cを流通する含水空気(低圧)との間に圧力差があっても、加湿膜13が撓んで変形し難いので好適である。もちろん、密着領域19を、第1面13A及び第2面13Bの双方に設けても良いし、第1面13Aにのみ設けても良い。更には、保護膜14が加湿膜13の第1面13A及び第2面13Bの一方にのみ設けられる場合において、加湿膜13の片面のみに配置される保護膜14の外縁部14Eが加湿膜13の外縁部13Eと一致もしくは大きい場合には、密着領域19は保護膜14が設けられる面とは反対側の面に設けても良い。
【0038】
図4は、加湿膜13と、当該加湿膜13の第2面13Bに設けられた、外縁部14Eが加湿膜13の外縁部13Eよりも加湿膜13の中央部側に引退した状態で設けられる保護膜14の平面視である。本実施形態では、加湿膜13と引退した状態で設けられる保護膜14とは、互いに平行な部分を複数(本実施形態では4つ)有するように構成される。図4では、このような平行な部分に、符号Pを付して示される。これにより、複数の当該平行な部分Pにおける加湿膜13の外縁部13Eと保護膜14の外縁部14Eとの平面視における間隔(密着領域19の幅)をいずれも一定にすることが可能となる。平行でない(符号Pが付されていない)部分である加湿膜13と保護膜14の角部には、供給口71、排出口72、供給口81、及び排出口82が形成されている(図2も参照)。シール材15が設けられている加湿膜13の外縁部13Eと保護膜14の外縁部14Eとの平面視における間隔(密着領域19の幅)は全周に亘って一定であるため、外部環境の変化により加湿膜13が膨張収縮したとしても、保護膜14はそれに追従することができ、保護膜14や加湿膜13が損傷(例えば、破損)するのを防止することができる。また、シール材15が全周に亘って均等に加湿膜13や保護膜14と密着するので、加湿膜13や保護膜14がしわになりにくい。
【0039】
更に、本実施形態では、図4及び図5に示されるように、平面視における加湿膜13は、少なくとも加湿膜13の外縁部13Eの角部13Rが円弧状に形成される。加湿膜13の外縁部13Eの角部13Rの一部が供給口71、排出口72、供給口81、及び排出口82と重複していない場合、又は、供給口71、排出口72、供給口81、及び排出口82が角部13R以外の箇所(符号Pが付されている箇所)に形成されている場合には、角部13Rに更に容易にシール材15が設けられるので、角部13Rにおいても、加湿膜13の外縁部13Eと保護膜14の外縁部14Eとの間隔(密着領域19の幅)が一定であることが好ましい。すなわち、保護膜14を矩形状に形成し、加湿膜13の角部13Rの円弧の中心Oが保護膜14の頂点と重なるようにするか(図5参照)、加湿膜13の角部13Rの中心Oと保護膜14の角部14Rの中心Oとが一致するように保護膜14の外縁部14Eの角部14Rを円弧状に形成することが好ましい(図4参照)。これにより、平面視において、加湿膜13に積層した状態で設けた保護膜14を見た場合に、加湿膜13が露出している密着領域19の幅(加湿膜13の外縁部13Eと保護膜14の外縁部14Eとの間隔)を、供給口71、排出口72、供給口81、及び排出口82(図4では図示せず)を含め、加湿膜13及び保護膜14の全周に亘って一定にすることが可能となる。
【0040】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る加湿器1について説明する。本実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ構成の箇所には同じ符号を付し、同様の構成に関する説明は省略する。本実施形態に係る加湿器1は、加湿ユニット10の構成が第1実施形態と異なっている。
【0041】
図6に示されるように、本実施形態においては、第2セパレータ12と加湿膜13の第1面13Aの側に設けられた保護膜14との間に補強部材16が設けられている。すなわち、補強部材16は、加湿膜13の第1面13A側に設けられた保護膜14に対向するように、加湿膜13とは反対側に積層されて配置されている。補強部材16と保護膜14とは、接触して配置されている。本実施形態において、補強部材16は、加湿膜13及び対向(隣接)する保護膜14と同じ大きさを有している。一方、加湿膜13の第2面13Bの側に設けられた保護膜14は加湿膜13の中央部側に引退した状態で設けられており、密着領域19が加湿膜13の第2面13Bにのみ設けられている。補強部材16としては、例えば樹脂製のメッシュを利用するが、これに限定されず、抄紙、不織布、多孔膜等を利用することが可能である。なお、本実施形態では、保護膜14と補強部材16とは全面が接触しているが、一部分のみ、例えば中央領域のみ接触するように構成しても良い。
【0042】
シール材15は、加湿膜13と両側の保護膜14と補強部材16とを挟持した状態で、加湿膜13の外縁部13Eに沿って設けられる。本実施形態における加湿膜13と両側の保護膜14と補強部材16とを挟持した状態とは、加湿膜13の第2面13B側の保護膜14と第1セパレータ11との間、及び、補強部材16と第2セパレータ12との間に、夫々シール材15が入り込むことにより、加湿膜13と両側の保護膜14と補強部材16とが第1セパレータ11及び第2セパレータ12の夫々の外周部と離間している状態をいう。
【0043】
上述したように、通常、乾燥ガス流路11Cを流通する乾燥空気は、コンプレッサ41で加圧されているため、含水ガス流路12Cを流通する含水空気よりも圧力が高い。そのため、乾燥ガス流路11Cを流通する乾燥空気と含水ガス流路12Cを流通する含水空気との差圧により、保護膜14を設けていても、加湿膜13が撓んで変形する場合がある。そこで、補強部材16を設けることにより加湿膜13、保護膜14の引張強度が大きくなり、乾燥空気の圧力が作用しても、加湿膜13、保護膜14が撓み難くなって変形を抑制することが可能になる。
【0044】
本実施形態では、補強部材16を第2セパレータ12と加湿膜13の第1面13A側の保護膜14との間に設けたが、第1セパレータ11と加湿膜13の第2面13B側の保護膜14との間に設けても良いし、両方の保護膜14に対向するように2つの補強部材16を夫々設けても良い。また、本実施形態では、補強部材16が、加湿膜13及び対向する保護膜14と同じ大きさである。
【0045】
また、図6とは逆に、加湿膜13の第2面13Bの側に設けられた保護膜14が加湿膜13と同じ大きさで、加湿膜13の第1面13Aの側に設けられた保護膜14が加湿膜13の中央部側に引退した状態で設けられることにより、密着領域19が加湿膜13の第1面13Aにのみ設けられた場合には、第1セパレータ11と加湿膜13の第2面13B側の保護膜14との間に、当該保護膜14と同じ大きさ、すなわち加湿膜13と同じ大きさの補強部材16を設けるように構成しても良い。
【0046】
〔第1実施形態、第2実施形態の変形例〕
以下の変形例は、第2実施形態の図を用いて説明するが、第1実施形態においても同様に適用することができる。
【0047】
(1)図7に示されるように、第2実施形態の構成において、シール材15で、乾燥ガス流路11Cを形成する第1セパレータ11の角部11F、及び、含水ガス流路12Cを形成する第2セパレータ12の角部12Fを覆う。これにより、角部11F,12Fが引っかかって保護膜14や補強部材16の破れを防止することができる。
【0048】
(2)図8に示されるように、第1セパレータ11の外縁に壁11Dを形成すると共に第2セパレータ12の外縁に壁12Dを形成して、壁11Dと壁12Dとを当接させる。その上で、上記(1)のように角部11F,12Fを覆うようにシール材15を設ける。これにより、シール材15が第1セパレータ11、第2セパレータ12の外側に漏れるのを防ぐことができると共に、角部11F,12Fによる保護膜14や補強部材16の破れを防止することができる。
【0049】
(3)図9に示されるように、第1セパレータ11の外周部、及び、第2セパレータ12の外周部に夫々段差11E,12Eを設けて段差11Eに保護膜14、段差12Eに補強部材16を収容する。これにより、第1セパレータ11、第2セパレータ12に対する加湿膜13、保護膜14、補強部材16の位置決めを容易に行うことができる。
【0050】
(4)図10に示されるように、上記(3)の段差11E,12Eを大きくしてシール材15が流れ込むようにし、流れ込んだシール材15で、乾燥ガス流路11Cを形成する第1セパレータ11の角部11F、及び、含水ガス流路12Cを形成する第2セパレータ12の角部12Fを覆う。更に、第1セパレータ11の外縁に壁11Dを形成すると共に第2セパレータ12の外縁に壁12Dを形成して、壁11Dと壁12Dとを当接させる。これにより、角部11F,12Fによる保護膜14や補強部材16の破れを防止することができると共に、シール材15が第1セパレータ11、第2セパレータ12の外側に漏れるのを防ぐことができる。更に、段差11E,12Eにより、第1セパレータ11、第2セパレータ12に対する加湿膜13、保護膜14、補強部材16の位置決めを容易に行うことができる。
【0051】
〔その他の実施形態〕
上記各実施形態では、加湿膜13と保護膜14とは、互いに平行な部分Pを有するとして説明したが、加湿膜13と保護膜14とは、互いに平行な部分Pを有しないように構成することも可能である。
【0052】
上記各実施形態では、少なくとも加湿膜13の外縁部13Eの角部13Rが円弧状に形成されているとして説明したが加湿膜13の外縁部13Eの角部13Rは円弧状に形成せずに構成することも可能である。係る場合、保護膜14のみ外縁部14Eの角部14Rを円弧状に形成することも可能である。
【0053】
上記各実施形態では、加湿膜13及び保護膜14が四角形状に構成されている場合の例を挙げて説明したが、加湿膜13及び保護膜14は、三角形状でも良いし、五角以上の多角形状で構成しても良い。更には、円形状に構成しても良い。
【0054】
上記各実施形態では、シール材15が設けられた領域の内側である中央領域において、第1セパレータ11の隣接する乾燥ガス流路11C,11Cを区切る区切壁の表面11A、及び、第2セパレータ12の隣接する含水ガス流路12C,12Cを区切る区切壁の表面12Aは保護膜14や補強部材16に当接しているが(図3図6図10参照)、区切壁の表面11A,12Aの少なくとも一方は、保護膜14や補強部材16から離間して間隙を有していても良い。これにより、区切壁の表面11A,12Aと対向する箇所においても、含水ガス流路12Cを流れるガスの水分を、乾燥ガス流路11Cを流れる乾燥空気に与えることができる。
【0055】
上記各実施形態及び変形例に係る構成は、可能な限り組み合わせることができる。
【0056】
本発明は、含水空気に含まれる水分を乾燥空気に与えて加湿空気を生成する加湿ユニットを備えた燃料電池用加湿器に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:加湿器(燃料電池用加湿器)
10:加湿ユニット
11:第1セパレータ
11A:表面(一方の面)
11C:乾燥ガス流路
12:第2セパレータ
12A:表面(一方の面)
12C:含水ガス流路
13:加湿膜
13E:外縁部(第1外縁部)
13R:角部
14:保護膜
14E:外縁部(第2外縁部)
15:シール材
16:補強部材
19:密着領域
71:供給口
72:排出口
81:供給口
82:排出口
P:平行な部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10