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特許7425432メッシュ構造体およびその製造方法、アンテナ反射鏡、電磁シールド材、導波管
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  • 特許-メッシュ構造体およびその製造方法、アンテナ反射鏡、電磁シールド材、導波管 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】メッシュ構造体およびその製造方法、アンテナ反射鏡、電磁シールド材、導波管
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/12 20060101AFI20240124BHJP
   H01Q 15/20 20060101ALI20240124BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20240124BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240124BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240124BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20240124BHJP
   H01Q 1/28 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
D04B21/12
H01Q15/20
H01P3/12
H05K9/00 W
B32B15/01 Z
D06M11/83
H01Q1/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019012534
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020117844
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】512308340
【氏名又は名称】株式会社テクノソルバ
(73)【特許権者】
【識別番号】596127576
【氏名又は名称】光洋マテリカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598011259
【氏名又は名称】太陽金網株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 悟
(72)【発明者】
【氏名】西 顕太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 和行
(72)【発明者】
【氏名】森 正俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 大介
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 正章
(72)【発明者】
【氏名】川村 壱藏
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-226931(JP,A)
【文献】特開平10-259550(JP,A)
【文献】特開2002-076759(JP,A)
【文献】特開平07-066622(JP,A)
【文献】登録実用新案第3050934(JP,U)
【文献】特開昭63-286561(JP,A)
【文献】国際公開第2009/011796(WO,A1)
【文献】特開昭60-059034(JP,A)
【文献】特開2014-218751(JP,A)
【文献】特開平03-059138(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017595(WO,A1)
【文献】特開2011-179162(JP,A)
【文献】特開昭62-055723(JP,A)
【文献】特開2006-073789(JP,A)
【文献】特開2008-145176(JP,A)
【文献】国際公開第2005/052987(WO,A1)
【文献】特開2006-124900(JP,A)
【文献】高強度と高導電性を両立させた銅合金ワイヤーを開発,日本,2013年10月24日,https://www.ngk.co.jp/news/20131024_7647html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
D06M10/00-11/84
16/00
19/00-23/18
H01P3/00-3/20
H01Q1/00-1/10
1/27-1/52
15/00-19/32
H05K9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム銅繊維の素線をトリコット編みした編物であり、前記ジルコニウム銅繊維は、銅にジルコニウムを0.25at%~5.0at%添加した合金を伸線加工した繊維であり、
前記ジルコニウム銅繊維は、導電率が15%IACS~95%IACS、機械的強度が450MPa~2000MPa、熱膨張係数が1.8×10 -5 /℃であることを特徴とするメッシュ構造体。
【請求項2】
前記ジルコニウム銅繊維の素線の表面にメッキ層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のメッシュ構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメッシュ構造体を含むことを特徴とするアンテナ反射鏡。
【請求項4】
請求項1または2に記載のメッシュ構造体を含むことを特徴とする電磁シールド材。
【請求項5】
請求項1または2に記載のメッシュ構造体を含む中空体であることを特徴とする導波管。
【請求項6】
請求項1に記載のメッシュ構造体の製造方法であって、
ジルコニウム銅繊維の素線と、水溶性繊維の素線とを含み、前記ジルコニウム銅繊維の素線と前記水溶性繊維の素線とでトリコット編みした第1の編物を形成する工程と、
前記第1の編物を水中に浸漬して、前記水溶性繊維の素線を溶解し、前記ジルコニウム銅繊維の素線を含む第2の編物を形成する工程と、を有し、
前記ジルコニウム銅繊維は、導電率が15%IACS~95%IACS、機械的強度が450MPa~2000MPa、熱膨張係数が1.8×10 -5 /℃であることを特徴とするメッシュ構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ構造体およびその製造方法、メッシュ構造体を含むアンテナ反射鏡、電磁シールド材および導波管に関する。
【背景技術】
【0002】
技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)「きく8号」の大型展開アンテナ(LDR)では、アンテナ反射鏡に金属製のメッシュ構造体が使用されている。このメッシュ構造体は、モリブデン繊維に金メッキした素線(金メッキモリブデン繊維の素線)を、トリコット編み(ダブルアトラス編み)で編み込んだものである。このメッシュ構造体は、S帯の電波を反射する(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Kasuhisa Kamegai、Masato Tsuboi、“Measurements of an Antenna Surface for a Millimeter-Wave Space Radio Telescope.II.Metal Mesh Surface for Large Deployable Reflector”、Publ.Astron.Soc.Japan 65,21,2013 February 25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金メッキモリブデン繊維は、レアメタルであるモリブデンを含むため、資源の確保が難しくなることが懸念される。そのため、導電性、弾性率、機械的強度、熱膨張率において、金メッキモリブデン繊維と同等の性能を有する材料を用いたメッシュ構造体が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、資源の確保が容易であり、金メッキモリブデン繊維と同等の性能を有する材料を含むメッシュ構造体およびその製造方法、メッシュ構造体を含むアンテナ反射鏡、電磁シールド材および導波管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、メッシュ構造体であって、ジルコニウム銅繊維の素線をトリコット編みした編物であり、前記ジルコニウム銅繊維は、銅にジルコニウムを0.25at%~5.0at%添加した合金を伸線加工した繊維であり、前記ジルコニウム銅繊維は、導電率が15%IACS~95%IACS、機械的強度が450MPa~2000MPa、熱膨張係数が1.8×10 -5 /℃である。
【0007】
この発明に係るメッシュ構造体によれば、ジルコニウム銅繊維およびステンレス鋼繊維が、導電性、弾性率、機械的強度および熱膨張率において、金メッキモリブデン繊維と同等の性能を有するため、レアメタルであるモリブデンを用いることなく、所望の性能を有するアンテナ反射鏡面等が得られる。また、この発明に係るメッシュ構造体によれば、ジルコニウム銅繊維およびステンレス鋼繊維を含む編物または織物であるため、金メッキモリブデン繊維からなるメッシュ構造体よりも安価に製造できる。
【0008】
また、本発明は、本発明のメッシュ構造体の製造方法であって、ジルコニウム銅繊維の素線と、水溶性繊維の素線とを含み、前記ジルコニウム銅繊維の素線と前記水溶性繊維の素線とでトリコット編みした第1の編物を形成する工程と、前記第1の編物を水中に浸漬して、前記水溶性繊維の素線を溶解し、前記ジルコニウム銅繊維の素線を含む第2の編物を形成する工程と、を有し、前記ジルコニウム銅繊維は、導電率が15%IACS~95%IACS、機械的強度が450MPa~2000MPa、熱膨張係数が1.8×10 -5 /℃である。
【0009】
この発明に係るメッシュ構造体の製造方法によれば、第1の編物または第1の織物を形成する際に、水溶性繊維の素線により、素線同士の間に生じる摩擦を低減し、素線同士の接触によって、素線が折れることを防止できる。また、第1の編物または第1の織物の形状を保ったまま、水溶性繊維の素線を容易に除去できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るメッシュ構造体によれば、資源の確保が容易であり、導電性、弾性率、機械的強度、熱膨張率において、金メッキモリブデン繊維と同等の性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るメッシュ構造体の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るアンテナ反射鏡の概略構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る電磁シールド材の概略構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る導波管の概略構成を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る導波管の概略構成を示し、図5のA-A線に沿う断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る導波管の概略構成を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る導波管の概略構成を示し、図6のB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[メッシュ構造体]
以下、図1を参照して、本実施形態のメッシュ構造体について説明する。
図1は、本実施形態のメッシュ構造体の概略構成を示す平面図である。
本実施形態のメッシュ構造体1は、図1に示すように、素線10を含む編物である。言い換えれば、本実施形態のメッシュ構造体1は、素線10を用いてメッシュ状(網目状)に編成した編物である。
【0013】
図1には、メッシュ構造体1が、素線10をトリコット編みした編物である場合を例示する。本実施形態のメッシュ構造体1は、素線10をトリコット編みした編物に限定されない。本実施形態のメッシュ構造体1は、素線10をニット編みした編物、素線10をメリヤス編みした編物、素線10をダブルアトラス編みした編物、素線10をシングルサテン編みした編物等であってもよい。
【0014】
メッシュ構造体1が編物である場合、編み幅の大きさは特に限定されず、メッシュ構造体1の用途等に応じて適宜調整される。例えば、メッシュ構造体1を、アンテナ反射鏡面として用いる場合、編物の編み幅の大きさは、アンテナ反射鏡面によって送信および受信する電波の波長に応じて調整される。
【0015】
また、本実施形態のメッシュ構造体1は、素線10を含む織物であってもよい。言い換えれば、本実施形態のメッシュ構造体1は、素線10を経糸および緯糸として用い、その経糸および緯糸を交互に交差させて密に織り上げた平織の織物であってもよく、経糸または緯糸のいずれかを織物の表面に長く浮かせて織り上げる繻子織の織物であってもよく、経糸と緯糸を3本以上、上下に組合せて連続させ織物の表面に斜めの線を浮き出させる綾織の織物であってもよい。
【0016】
素線10は、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線である。素線10は、ジルコニウム銅繊維の単繊維またはステンレス鋼繊維の単繊維であってもよく、ジルコニウム銅繊維の単繊維またはステンレス鋼繊維の単繊維を2本以上束ねた繊維の束であってもよい。
【0017】
ジルコニウム銅繊維は、銅にジルコニウムを0.25at%(アトミック・パーセント)~5.0at%添加した合金を伸線加工した繊維である。ジルコニウム銅繊維は、導電性が高く、弾性率が高く、機械的強度が高く、熱膨張率が低く、導電率は15%IACS~95%IACSであり、機械的強度は450MPa~2000MPaであり、熱膨張係数は1.8×10-5/℃程度のジルコニウム銅繊維が好ましく用いられる。
ステンレス鋼繊維は、ステンレス鋼を伸線加工した繊維である。ステンレス鋼繊維は、機械的強度が高く、公知のステンレス鋼繊維を用いることができる。
【0018】
素線10の直径は、特に限定されず、メッシュ構造体1の用途等に応じて適宜調整される。
【0019】
ジルコニウム銅繊維の素線の表面またはステンレス鋼繊維の素線の表面には、メッキ層が設けられていてもよい。メッキ層は、ジルコニウム銅繊維の素線の表面およびステンレス鋼繊維の素線の表面を平滑にする。これにより、素線10を編んで編物とした場合に、素線10同士の間に生じる摩擦を低減し、素線10同士の接触によって、素線10が折れることを防止できる。
メッキ層としては、金メッキ層、ニッケルメッキ層が挙げられる。
【0020】
メッキ層の厚さは、ジルコニウム銅繊維の素線の表面またはステンレス鋼繊維の素線の表面を平滑にすることができれば、特に限定されない。
【0021】
メッキ層の形成方法としては、電解メッキ法または無電解メッキ法が用いられる。
【0022】
本実施形態のメッシュ構造体1は、ジルコニウム銅繊維またはステンレス鋼繊維を含む編物または織物であるため、任意の形状をなすことができる柔軟性を有する。
【0023】
本実施形態のメッシュ構造体1によれば、ジルコニウム銅繊維またはステンレス鋼繊維が、導電性、弾性率、機械的強度および熱膨張率において、金メッキモリブデン繊維と同等の性能を有するため、レアメタルであるモリブデンを用いることなく、所望の性能を有するアンテナ反射鏡面等が得られる。また、本実施形態のメッシュ構造体1は、ジルコニウム銅繊維またはステンレス鋼繊維を含む編物または織物であるため、金メッキモリブデン繊維からなるメッシュ構造体よりも安価に製造できる。
【0024】
[メッシュ構造体の製造方法]
本実施形態のメッシュ構造体の製造方法は、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線と、水溶性繊維の素線とを含む第1の編物または第1の織物を形成する工程(以下、「第1の工程」と言う。)と、第1の編物または第1の織物を水中に浸漬して、水溶性繊維の素線を溶解し、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線を含む第2の編物または第2の織物を形成する工程(以下、「第2の工程」と言う。)と、を有する。
【0025】
ここで、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線を「第1の素線」、水溶性繊維の素線を「第2の素線」という場合がある。
【0026】
第1の工程では、第1の素線と第2の素線を合わせてメッシュ状に形成し、第1の編物または第1の織物を形成する。具体的には、第1の素線と第2の素線を束ねて素線の束とし、その素線の束をメッシュ状に形成し、第1の編物または第1の織物を形成する。
【0027】
第1の素線は、ジルコニウム銅繊維の単繊維またはステンレス鋼繊維の単繊維であってもよく、ジルコニウム銅繊維の単繊維またはステンレス鋼繊維の単繊維を2本以上束ねた繊維の束であってもよい。
【0028】
第1の素線と第2の素線の束は、第1の素線と第2の素線が撚られて形成されていてもよく、第1の素線と第2の素線が互いにそれぞれの長手方向に沿って接するように形成されていてもよい。
【0029】
第1の工程にて第1の編物を形成する場合、第1の素線と第2の素線の束を用いて、トリコット編み、ニット編み、メリヤス編み、ダブルアトラス編み、シングルサテン編み等により、第1の編物を形成する。
また、メッシュ構造体を、例えば、アンテナ反射鏡として用いる場合、第1の編物の編み幅の大きさを、アンテナ反射鏡によって送信および受信する電波の波長に応じて調整する。
【0030】
第1の工程にて第1の織物を形成する場合、第1の素線と第2の素線の束を用いて、平織、繻子織、綾織等により、第1の織物を形成する。
【0031】
水溶性繊維の素線を構成する樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂、メチロール化ユリア(尿素)樹脂、メチロール化メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されず、公知の水溶性樹脂を用いることができる。
【0032】
水溶性繊維の素線の直径は、特に限定されず、メッシュ構造体の用途等に応じて適宜調整される。
【0033】
第2の工程では、第1の編物または第1の織物を水中に浸漬して、第1の編物または第1の織物を形成する水溶性繊維の素線を溶解し、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線を含む第2の編物または第2の織物を形成する。第1の編物または第1の織物を水中に浸漬すると、第1の編物または第1の織物を形成していた水溶性繊維の素線のみが溶解して消失し、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線が、第1の編物または第1の織物の形状を保持したまま残る。これにより、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線を含む第2の編物または第2の織物が得られる。第2の編物は、第1の編物から水溶性繊維の素線を除去したものである。第2の織物は、第1の織物から水溶性繊維の素線を除去したものである。すなわち、第2の編物または第2の織物は、上述のメッシュ構造体である。
【0034】
水溶性繊維の素線を溶解する際、水の温度は特に限定されないが、水溶性繊維の素線を短時間で溶解することができる温度であることが好ましい。
【0035】
本実施形態のメッシュ構造体の製造方法によれば、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線と、水溶性繊維の素線とを含む第1の編物または第1の織物を形成する第1の工程を有するため、第1の編物または第1の織物を形成する際に、水溶性繊維の素線により、素線同士の間に生じる摩擦を低減し、素線同士の接触によって、素線が折れることを防止できる。また、本実施形態のメッシュ構造体の製造方法によれば、第1の編物または第1の織物を水中に浸漬して、水溶性繊維の素線を溶解し、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線を含む第2の編物または第2の織物を形成する第2の工程を有するため、第1の編物または第1の織物の形状を保ったまま、水溶性繊維の素線を容易に除去して、ジルコニウム銅繊維の素線またはステンレス鋼繊維の素線を含む編物または織物であるメッシュ構造体を得ることができる。
【0036】
[アンテナ反射鏡]
図2は、本実施形態のアンテナ反射鏡の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態のアンテナ反射鏡100は、図2に示すように、上述のメッシュ構造体1を含む。詳細には、本実施形態のアンテナ反射鏡100では、上述のメッシュ構造体1がアンテナ反射鏡面130を構成する。
【0037】
図2に示すように、本実施形態のアンテナ反射鏡100は、アンテナ展開機構110と、アンテナ展開機構110の位相角度を調整するバンド120と、アンテナ反射鏡面130と、を含む。なお、図2では、アンテナ反射鏡面130として、それを構成するメッシュ構造体1のみを示している。
【0038】
アンテナ展開機構110は、リンク機構により収容状態と展開状態との間で変形可能に構成されている。アンテナ展開機構110は、例えば、六角形の頂点となる位置にメッシュ構造体1を取り付けるための支持部材を含む。
【0039】
メッシュ構造体1は、折り畳み可能な柔軟性を有していてもよい。
【0040】
アンテナ反射鏡100は、折り畳まれた状態でロケットのフェアリング内に収容され、宇宙空間において図2に示す展開形状に展開される。展開された状態で、アンテナ展開機構110からメッシュ構造体1に適切な張力が与えられ、メッシュ構造体1が所定の形状に広げられ、アンテナ反射鏡面130を形成する。
【0041】
本実施形態のアンテナ反射鏡100によれば、上述のメッシュ構造体1がアンテナ反射鏡面130を構成するため、メッシュ構造体1を構成するジルコニウム銅繊維またはステンレス鋼繊維が、導電性、弾性率、機械的強度および熱膨張率において、金メッキモリブデン繊維と同等の性能を有するから、所望の通信性能(反射性能)を有するアンテナ反射鏡が得られる。
【0042】
[電磁シールド材]
図3は、本実施形態の電磁シールド材の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態の電磁シールド材200は、図3に示すように、上述のメッシュ構造体1を含む。
本実施形態の電磁シールド材200は、図3に示すように、例えば、磁気記憶装置300の外周を覆うように用いられる。
【0043】
磁気記憶装置300は、磁気ディスク310と、磁気ディスク310に対して書込みおよび読出しを行うヘッド320と、磁気ディスク310およびヘッド320を収容する筐体330と、を含む。
【0044】
メッシュ構造体1が電磁シールド材200を構成する場合、メッシュ構造体1の編み幅の大きさは、目的とする遮蔽性に応じて調整される。
【0045】
ここでは、電磁シールド材200が筐体330の外周を覆っている場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態の電磁シールド材200は筐体330と一体をなしていてもよい。すなわち、電磁シールド材200が筐体330内に埋設されていてもよく、電磁シールド材200が筐体330の外周面に接着されていてもよい。
【0046】
本実施形態の電磁シールド材200は、例えば、パソコン、携帯電話、ディスプレイ等の電子機器やデバイス等、電磁シールドするために対象機器を限定せずに用いることができる。
【0047】
本実施形態の電磁シールド材200によれば、上述のメッシュ構造体1を含むため、メッシュ構造体1を構成するジルコニウム銅繊維またはステンレス鋼繊維が、導電性、弾性率、機械的強度および熱膨張率において、金メッキモリブデン繊維と同等の性能を有するから、所望の遮蔽性を有する電磁シールド材が得られる。
【0048】
[導波管]
図4は、本実施形態の導波管の概略構成を示す斜視図である。図5は、本実施形態の導波管の概略構成を示し、図4のA-A線に沿う断面図である。
本実施形態の導波管400は、図4および図5に示すように、上述のメッシュ構造体1を含む。
【0049】
本実施形態の導波管400は、長手方向と垂直な断面形状が矩形状の管(中空体)からなる導波部410および導波部410の両端にそれぞれ連接するフランジ420,420を含む導波管本体430と、導波部410内において、内面410aに沿って配置されたメッシュ構造体1と、を含む。
【0050】
導波部410の開口部411はフランジ420に設けられ、導波部410はフランジ420の表面420aにて開口している。
【0051】
導波管本体430は、母材であるエポキシ樹脂等の樹脂と強化材である炭素繊維とを含む炭素繊維強化プラスチックで構成されている。
【0052】
本実施形態の導波管400によれば、CFRP製の導波管本体430の導波部410の内面410aに沿って上述のメッシュ構造体1が配置されているため、導波部410の内面410aに金メッキ等により導電性の被膜を形成することなく、導波部410内において、電磁波を伝送することができる。すなわち、本実施形態の導波管400によれば、従来のような、導波部410の内面410aに金メッキ等により導電性の被膜を形成する工程が不要となるため、製造コストを低減することができる。
【0053】
なお、本実施形態の導波管400では、導波部410の長手方向と垂直な断面形状が矩形状である場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態の導波管400は、導波部410の長手方向と垂直な断面形状が正方形状、円形状、楕円形状等であってもよい。
【0054】
[導波管]
図6は、本実施形態の導波管の概略構成を示す斜視図である。図7は、本実施形態の導波管の概略構成を示し、図6のB-B線に沿う断面図である。
本実施形態の導波管500は、図6および図7に示すように、上述のメッシュ構造体1を含む。
【0055】
本実施形態の導波管500は、長手方向と垂直な断面形状が矩形状の管(中空体)からなる蛇腹ホース状の導波部510および導波部510の両端にそれぞれ連接するフランジ520,520を含む導波管本体530と、導波部510に内張されたメッシュ構造体1と、を含む。
【0056】
導波部510の開口部511はフランジ520に設けられ、導波部510はフランジ520の表面520aにて開口している。
【0057】
導波管本体530は、金属、プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等からなる。
【0058】
本実施形態の導波管500は、蛇腹ホース状の導波部510と導波部510に内張された上述のメッシュ構造体1を有するため、柔軟性(可撓性)を有する。
【0059】
本実施形態の導波管500によれば、蛇腹ホース状の導波部510に上述のメッシュ構造体1が内張されているため、導波部510内にメッシュ構造体1からなる平滑な導波路を形成することができる。その結果、導波部510内を伝送する電磁波の損失を減らすことができる。
【0060】
なお、本実施形態の導波管500では、導波部510の長手方向と垂直な断面形状が矩形状である場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態の導波管500は、導波部510の長手方向と垂直な断面形状が正方形状、円形状、楕円形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 メッシュ構造体
10 素線
100 アンテナ反射鏡
110 アンテナ展開機構
120 バンド
130 アンテナ反射鏡面
200 電磁シールド材
300 磁気記憶装置
310 磁気ディスク
320 ヘッド
330 筐体
400,500 導波管
410,510 導波部
411,511 開口部
420,520 フランジ
430,530 導波管本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7