(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ハンギング式高設栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20240124BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20240124BHJP
【FI】
A01G9/02 103S
A01G22/05 A
(21)【出願番号】P 2019125552
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592123705
【氏名又は名称】有限会社ティアンドティナーサリー
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】手塚 博志
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-034337(JP,A)
【文献】特開2010-148376(JP,A)
【文献】特開2001-078583(JP,A)
【文献】特開平10-052345(JP,A)
【文献】特開2004-187615(JP,A)
【文献】特開2009-033980(JP,A)
【文献】特開2005-000008(JP,A)
【文献】特開2005-013047(JP,A)
【文献】特開平09-103351(JP,A)
【文献】特開2010-227008(JP,A)
【文献】特開2002-281832(JP,A)
【文献】特開2019-037201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A01G 22/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウス内に吊り下げ配置した栽培槽ユニットにより栽培作物の高設栽培を行うハンギング式高設栽培システムであって、
前記栽培槽ユニットは、
パイプで正面視三角枠形状に組み込み一列に間隔をおいて配列されて吊り下げ具、
パイプからなる長尺の頂部横架材をもって各頂部を吊ることにより前記栽培槽ユニット全体を簡易に安定させることができるとともに、
前記吊り下げ式とした栽培槽ユニットにおける後記プラスチックバッグ部を作業者の作業のし易い高さに配置して頂部横架材の端部から見て当該頂部横架材の長さ方向に沿って直列配置に吊り下げられる複数の吊り下げ用の躯体と、
前記一列で直列配置の複数の躯体における各底部両内隅部に、長さ方向に横架する一対のパイプからなる長尺の横架材と、
前記各躯体と一対の横架材の下部に、排水樋にするため長さ方向に取り付けたプラスチックシート部と、
前記各躯体の各底部上と前記一対の横架材上に、長さ方向に配置する栽培槽としてのプラスチックバッグ部と、
を有し、
前記頂部横架材、及び一対の横架材を、各々躯体の頂部内隅部、底部両内隅部に長さ方向に配置する短尺の補助管を介して、前記各短尺の補助管に連結配置することで、栽培槽ユニットの組み立てを容易とし、頂部横架材や一対の横架材の安定支持を可能とするように構成したとともに、
前記ハウス内に配置した潅水手段により、前記プラスチックバッグ部の上方からこのプラスチックバッグ部内の栽培作物に給水するか又は養液を与え、下方に排水するように構成したことを特徴とし、
ハウス内の前記栽培槽ユニットを簡略な単列構成でもって、短時間で構築でき、コスト安価な栽培槽ユニットとして、
ハウスの床面又は地面領域の支柱を不要とした構成であることから、ハウス内において支柱に妨害されることなく作業器具や車椅子等を床面上で自由に移動させることができ、観光客を対象とする観光農園事業や障害者雇用にも大いに貢献し得るハンギング式高設栽培システム。
【請求項2】
ハウス内に複数列にわたって吊り下げ配置した各栽培槽ユニットにより栽培作物の高設栽培を行うハンギング式高設栽培システムであって、
前記各栽培槽ユニットは、
パイプで正面視三角枠形状に組み込み一列に間隔をおいて配列されて吊り下げ具、
パイプからなる長尺の頂部横架材をもって各頂部を吊ることにより前記栽培槽ユニット全体を簡易に安定させることができるとともに、
前記吊り下げ式とした栽培槽ユニットにおける後記プラスチックバッグ部を作業者の作業のし易い高さに配置して頂部横架材の端部から見て当該頂部横架材の長さ方向に沿って直列配置に吊り下げられる複数の吊り下げ用の躯体と、
前記複数列で直列配置の複数の躯体における各底部両内隅部に、長さ方向に横架する一対のパイプからなる長尺の横架材と、
前記各躯体と一対の横架材の下部に、排水樋にするため長さ方向に取り付けたプラスチックシート部と、
前記各躯体の各底部上と前記一対の横架材上に、長さ方向に配置する栽培槽としてのプラスチックバッグ部と、
を有し、
前記頂部横架材、及び一対の横架材を、各々躯体の頂部内隅部、底部両内隅部に長さ方向に配置する短尺の補助管を介して、前記各短尺の補助管に連結配置することで、栽培槽ユニットの組み立てを容易とし、頂部横架材や一対の横架材の安定支持を可能とするように構成したとともに、
前記ハウス内に配置した潅水手段により、前記複数列のプラスチックバッグ部の上方からこれら各プラスチックバッグ部内の栽培作物に給水するか又は養液を与え、下方に排水するように構成したことを特徴とし、
ハウス内の前記栽培槽ユニットを簡略な複列構成でもって、短時間で構築でき、コスト安価な栽培槽ユニットとして、
ハウスの床面又は地面領域の支柱を不要とした構成であることから、ハウス内において支柱に妨害されることなく作業器具や車椅子等を床面上で自由に移動させることができ、観光客を対象とする観光農園事業や障害者雇用にも大いに貢献し得るハンギング式高設栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンギング式高設栽培システムに関し、詳しくは、システム設備が簡略で安価に構築できるとともに、ハウスの床面又は地面領域に支柱等が不要であるために作業者の栽培作業に使用する台車や車椅子等の利用を円滑にし、作業性向上を図ることができ、更には観光農園事業においても高齢者や障害者などの介護が必要な事態にも適切な対応ができるハンギング式高設栽培システムに関するするものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、イチゴ等々の栽培作物を高設栽培する場合、地面から支柱などで基台を作り、鉄製の樋又は発泡スチロール等でベッドを作り、そのベッド内に培地(ロックウール・モス類)を設定充填する構成が一般的である。
【0003】
このため、従来にあっては、設備が複雑、かつ、高額になり、更に足元が狭くなって栽培作業に使用する台車、障害者の車椅子利用や、観光農園事業に支障が生じていた。
【0004】
特許文献1には、栽培槽を一方向に連ねて地面より高位置に架設する高設栽培装置の架台が、ハウス内の地面に直接設置されずに、その地面に所定間隔で平行に敷設された複数本のレールと直交する方向に栽培槽を連ねるように配置されて、レール上を移動可能な台車に設置搭載される構成の高設栽培装置が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の高設栽培装置の場合、栽培槽はハウス内の地面に直接設置されてはいないものの、ハウス内の地面にはレールが敷設され、このレール上を移動可能な台車により栽培槽を支持する構成としたものである。
このため、レールや台車を必要とし、装置設備が複雑、かつ、高額になってしまうと推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑み開発されたものであり、システム設備が簡略で安価に構築できるとともに、ハウスの床面又は地面領域に支柱等が不要であるために作業者の栽培作業の作業性向上を図ることができ、更には観光農園事業にも大いに貢献し得るハンギング式高設栽培システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハウス内に吊り下げ配置した栽培槽ユニットにより栽培作物の高設栽培を行うハンギング式高設栽培システムであって、前記栽培槽ユニットは、パイプで正面視三角枠形状に組み込み一列に間隔をおいて配列されて吊り下げ具、前記吊り下げ式とした栽培槽ユニットにおける後記プラスチックバッグ部を作業者の作業のし易い高さに配置して頂部横架材の端部から見て当該頂部横架材の長さ方向に沿って直列配置に吊り下げられる複数の吊り下げ用の躯体と、前記一列で直列配置の複数の躯体における各底部両内隅部に長さ方向に横架する一対の横架材と、前記各躯体と一対の横架材の下部に排水樋にするため長さ方向に取り付けるプラスチックシート部と、前記各躯体の各底部上、前記一対の横架材上に長さ方向に配置する栽培槽としてのプラスチックバッグ部と、を有し、ハウス内に配置した潅水手段により、前記プラスチックバッグ部の上方からこのプラスチックバッグ部内の栽培作物に給水するか又は養液を与え、排水するように構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ハウス内の前記栽培槽ユニットを単列構成として、システム設備が簡略で安価に構築できるとともに、ハウスの床面又は地面領域に支柱等が不要であるため、ハウス内において支柱に妨害されることなく作業器具や車椅子等を床面上で自由に移動させることができ、観光客を対象とする観光農園事業や障害者雇用にも大いに貢献し得るものとなり、また、栽培槽ユニットを作業者の目線の位置に合わせる(栽培槽ユニットにおけるプラスチックバッグ部を作業者の作業のし易い高さに配置できる)ことで、作業者の栽培作業の作業性向上を図ることができるハンギング式高設栽培システムを実現し提供することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、ハウス内の前記栽培槽ユニットを複数構成として、システム設備が簡略で安価に構築できるとともに、ハウスの床面又は地面領域に支柱等が不要であるために、請求項1記載の発明と同様に、ハウス内において支柱に妨害されることなく作業器具や車椅子等を床面上で自由に移動させることができ、観光客を対象とする観光農園事業や障害者雇用にも大いに貢献し得るものとなり、また、栽培槽ユニットを作業者の目線の位置に合わせる(栽培槽ユニットにおけるプラスチックバッグ部を作業者の作業のし易い高さに配置できる)ことで、作業者の栽培作業の作業性向上を図ることができるハンギング式高設栽培システムを実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の実施例に係るハンギング式高設栽培システムにおける栽培槽ユニットの概略斜視図である。
【
図2】
図2は本実施例に係るハンギング式高設栽培システムにおける栽培槽ユニットを構成する三角枠形状に
組み込んだ躯体、補助管を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は本実施例に係るハンギング式高設栽培システムにおける単列の栽培槽ユニットの実体的構成態様を示す説明図である。
【
図4】
図4は本実施例に係るハンギング式高設栽培システムにおける複数の栽培槽ユニットの実体的構成態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、システム設備が簡略で安価に構築できるとともに、ハウスの床面又は地面領域に支柱等が不要であるために作業者の栽培作業の作業性向上を図ることができ、更には観光農園事業にも大いに貢献し得るハンギング式高設栽培システムを実現し提供するという目的を、ハウス内に複数列にわたって吊り下げ配置した各栽培槽ユニットにより栽培作物の高設栽培を行うハンギング式高設栽培システムであって、前記各栽培槽ユニットは、各々パイプで正面視三角枠形状に組み込み一列に間隔をおいて配列されて吊り下げ具、前記吊り下げ式とした栽培槽ユニットにおける後記プラスチックバッグ部を作業者の作業のし易い高さに配置して頂部横架材の端部から見て当該頂部横架材の長さ方向に沿って直列配置に吊り下げられる複数の吊り下げ用の躯体と、前記複数列で直列配置の複数の躯体における各底部両内隅部に長さ方向に横架する一対の横架材と、前記各躯体、一対の横架材の下部に排水樋にするため長さ方向に取り付けるプラスチックシート部と、前記各躯体の各底部上、前記一対の横架材上に長さ方向に配置する栽培槽としてのプラスチックバッグ部と、を有し、前記頂部横架材、及び一対の横架材を、各々躯体の頂部内隅部、底部両内隅部に長さ方向に配置する短尺の補助管を介して、前記各短尺の補助管に連結配置することで、栽培槽ユニットの組み立てを容易とし、頂部横架材や一対の横架材の安定支持を可能とするように構成したとともに、前記ハウス内に配置した潅水手段により、前記複数列のプラスチックバッグ部の上方からこれら各プラスチックバッグ部内の栽培作物に給水するか又は養液を与え、下方に排水する構成により実現した。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るハンギング式高設栽培システムについて詳細に説明する。
【0015】
本実施例に係るハンギング式高設栽培システム1は、
図1乃至
図3に示すように、ハウス21内に吊り下げ配置したにより例えばイチゴの苗等々の栽培作物Oの高設栽培を行うものである。
【0016】
前記栽培槽ユニット2は、パイプで正面視三角枠形状に組む込み一列に間隔をおいて配列されてハウス21内の天井部から垂下配置する吊り下げ具22、をパイプからなる長尺の頂部横架材11により各頂部3aを吊ることにより簡易に栽培槽ユニット全体を安定させることができるとともに、地面上の所定の高さ(後述するプラスチックバッグ部5が作業者の作業上作業し易い高さ)で、頂部横架材11の端部から見て当該頂部横架材11の長さ方向に沿って直列配置に吊り下げられる複数の吊り下げ用の躯体3と、前記一列で直列配置の複数の躯体3における各底部両内隅部に、長さ方向に横架する一対のパイプからなる長尺の横架材12、12と、前記各躯体3と一対の横架材12、12の下部に、排水樋にするため長さ方向に取り付けるプラスチックシート部4と、前記各躯体3の各底部上と前記一対の横架材12、12上に、長さ方向に配置する栽培槽としてのプラスチックバッグ部5と、を有し、前記ハウス21内に配置した潅水手段23により、前記プラスチックバッグ部5の上方からこのプラスチックバッグ部5内の栽培作物Oに給水するか又は養液を与え、下方に排水するように構成している。
【0017】
前記頂部横架材11、一対の横架材12、12の各両端部は、
図1及び
図2に示すように、各々躯体3の頂部内隅部、底部両内隅部に長さ方向(栽培槽ユニット2の長さ方向)に添着配置する短尺の補助管13(本実施例では躯体3一個当たり3個)を介して、これら各短尺の補助管13に連結配置されるように構成している。
【0018】
なお、
図3は、本実施例に係るハンギング式高設栽培システム1における単列で栽培作物Oを含む栽培槽ユニット2のハウス21内における実体的構成態様を概略的に示すものである。
【0019】
本実施例に係るハンギング式高設栽培システム1によれば、栽培槽ユニット2を含むシステム構造が上述したように簡略であり、設備コストの低廉化を図ることができること、ハウス21内において、栽培槽ユニット2を吊り下げ式としているので栽培作物Oが作業者の目線近くにあるためその管理や収穫作業がし易いこと、栽培槽ユニット2の上述した構成により、栽培作物Oの栽培密度を上げることができること等の優れた効果を奏するものである。
【0020】
図4は、本実施例に係るハンギング式高設栽培システム1における栽培作物Oを含む栽培槽ユニット2のハウス21内における複数列の実体的構成態様を概略的に示すものである。
【0021】
図4に示す構成の場合も、
図3に示す構成の場合と同様な効果を奏し、更に、ハウス21内における通路の床面においては支柱等が不要であるため、作業器具や車椅子等を床面上で自由に移動させることができ、しかも、観光客を対象とする観光農園事業や障害者雇用にも大いに貢献し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のハンギング式高設栽培システムは、ハウス栽培可能な各種果物類、各種野菜類等のハンギング式高設栽培用として広範に利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 ハンギング式高設栽培システム
2 栽培槽ユニット
3 躯体
3a 頂部
4 プラスチックシート部
5 プラスチックバッグ部
11 頂部横架材
12 横架材
13 補助管
21 ハウス
22 吊り下げ具
23 潅水手段
O 栽培作物