(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】シリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材
(51)【国際特許分類】
B32B 25/00 20060101AFI20240124BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20240124BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20240124BHJP
F16J 15/3284 20160101ALI20240124BHJP
【FI】
B32B25/00
C08J7/043 CEQ
F16J15/18 A
F16J15/3284
(21)【出願番号】P 2019180652
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】597096161
【氏名又は名称】株式会社朝日ラバー
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 宏祥
(72)【発明者】
【氏名】高見 裕子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-280911(JP,A)
【文献】特開2012-092263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0171480(US,A1)
【文献】特開昭54-043891(JP,A)
【文献】特開昭55-062960(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02450184(EP,A1)
【文献】国際公開第2011/001756(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/065739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 1/00-5/10,9/00-201/10
F16J 15/16-15/32,15/324-15/3296,15/46-15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれる少なくとも何れかのゴム成分と、フィラーと、加硫剤と、加硫助剤とを含有してなるゴム部品、及び
前記ゴム部品を覆っており、
シリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有するアミノ変性シリコーンオイル、若しくはシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有しシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端に水酸基又は保護された水酸基を有しているアミノ変性シリコーンオイルであるアミノ変性シリコーン化合物を含有してなり及び/又は前記ゴム部品の表面分子に反応してなる界面改質層を有している
もので、前記界面改質層を介在するシリコーンゴム上塗りコーティング層を担持していない前駆状態のものであることを特徴とするシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項2】
固体微粒子と、それを分散している付加型シリコーンゴム及び/又は縮合型シリコーンゴムと、その硬化触媒とを含有してなる前記シリコーンゴム上塗りコーティング層を被覆するためのものであることを特徴とする
請求項1に記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項3】
前記アミノ変性シリコーン化合物が、
前記アミノ置換基を、アミノ基、アミノプロピル基、及び/又はN-(β-アミノエチル)イミノプロピル基とするものであって、モノアミノ置換又はポリアミノ置換されているものであることを特徴とする請求項1~2の何れかに記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項4】
前記フィラーが、シリカ、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、クレー及び/又は炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項5】
前記加硫剤が、メルカプトベンゾイミダゾール類及び/又はトリアジンジチオール類であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項6】
前記加硫助剤が、有機酸亜鉛塩であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項7】
前記ゴム部品が、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び天然又は合成のハイドロタルサイトから選ばれる受酸剤と、アルコキシシラン化合物と、有機樹脂、シリコーンオイル又はパラフィンオイルから選ばれる軟化剤との少なくとも何れかを含有してなることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項8】
前記界面改質層の上に、直接、又はプライマー層を介して、前記コーティング層が付されるものであることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項9】
医療用であることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材。
【請求項10】
ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれる少なくとも何れかのゴム成分と、フィラーと、加硫剤と、加硫助剤とを含有しているゴム部品に、
シリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有するアミノ変性シリコーンオイル、若しくはシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有しシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端に水酸基又は保護された水酸基を有しているアミノ変性シリコーンオイルであるアミノ変性シリコーン化合物を含有している界面改質層形成用組成物を付して界面改質層を形成することを特徴とする
前記界面改質層を介在するシリコーンゴム上塗りコーティング層を担持していない前駆状態のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露出表面にシリコーンオイルを付すことなく優れた摺動性を発現するゴム材を形成するために用いられるシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材、及びそれを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液を吸入してから押し出して患者へ注射するシリンジや、薬液を予め封入しておき用時に押し出して患者に注射し又は輸液に注入するプレフィルドシリンジや、採血用注射器は、それらシリンジ筒部内又は注射器筒部内に、プランジャの先端に設けられたガスケットが、挿入されている。これらガスケットには、薬液や血液を吸入排出する際にシリンジ筒部や注射器筒部との間で液漏れしないように、隙間を生じることなく液密閉性を保ちつつ安定して摺動することが、求められている。
【0003】
このようなガスケットをはじめとする摺動性のゴム部品には、摩擦を低減して摺動性を向上させるため、従来、シリコーンオイルが塗布されていた。例えば、特許文献1には、樹脂製バレルと、このバレル内に摺動自在に挿入されたガスケットと、このガスケットに取り付けられたプランジャと、前記バレルの内周面に動粘度が500~100,000cStであるシリコーンオイルが面積1cm2あたりの塗布量が5~50μgで塗布されてなるシリコーン膜と、を有するシリンジが、開示されている。
【0004】
近年、高機能化したタンパク製剤や有効成分の凝集を制御した製剤などの薬剤が開発され製造販売されている。ガスケットにシリコーンオイルが塗布されたシリンジやプレフィルドシリンジでそれら薬剤を患者に注射する際、タンパクなどの有効成分が、シリコーンオイルの液滴を核として凝集してしまい、薬効が低下したり失活したり血栓を誘発してしまう恐れがあった。また、採血した血液試料にシリコーンオイルがコンタミネーションしてしまう恐れがあった。さらに、人体への不純異物の影響を限りなく少なくするという観点や、採血試料の検査項目の増大や検出感度の向上に伴い不純異物のコンタミネーションによって測定結果の信頼性に影響を及ぼす恐れを限りなく排除するという観点から、シリコーンオイルの塗布が忌避されつつある。
【0005】
そのため、最近では、シリコーンオイルレスのシリンジや注射器が求められている。例えば、特許文献2には、薬液を充填したシリンダ内を封止するとともに、前記シリンダ内で摺動可能に配されるもので、弾性を有するガスケット本体と、このガスケット本体の表面を覆うフッ素樹脂からなるラミネート層とを有するプレフィルド注射器用ガスケットが開示されている。このようなフッ素樹脂例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は高価であるばかりか、折角ラミネート加工されたラミネート層が、摺動の際に、摩擦によって皺が寄る結果、ガスケットとシリンジ筒や注射器筒との間で、液漏れを生じる恐れがある。
【0006】
また、特許文献3には、ブチルゴムやクロロプレン製のような医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であって、医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層を備え、摺動性被覆層は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものである、摺動性被覆層保有医療用具が、開示されている。
【0007】
一般に、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴムのような基材には、加硫剤として、窒素や硫黄を含有する化合物が配合されているところ、付加型シリコーンは、硬化触媒として白金触媒が用いられるが、ブチルゴムのような基材に付されたとき、窒素や硫黄を含有する化合物が触媒毒として触媒阻害作用を起こし、硬化し難いという問題があった。
【0008】
ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴムは、圧縮永久歪が小さく、医療用など各種の摺動性ゴム材の素材として優れているから、その特性を活かしてゴム部品として用いつつ、白金触媒のような硬化触媒の作用を阻害することなく付加型シリコーンゴムや縮合型シリコーンゴムを付すために用いることができ、露出表面にシリコーンオイルを用いなくともそのシリコーンゴムに固体微粒子を含有させつつ脱離や溶出を引き起こし難く摺動性を向上させるために用いることができる、シリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2010/064667号公報
【文献】特開2014-213092号公報
【文献】国際公開第2011/122574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、圧縮永久歪が少ないブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のゴム成分製ゴム部品のように窒素/硫黄含有化合物のような加硫剤を有していても硬化を阻害されることなくシリコーンゴムを含むコーティング層でそのゴム部品が確りとコーティングするためのシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材であって、コーティング層にシリコーンオイルが表面に露出していないにも拘らず優れた摺動性を示し、コーティング層から微粒子が脱離や溶出し難く、圧縮永久歪などの基本的な物性に影響を与えていないようにコーティング層を設けて摺動性ゴム材を形成するために用いられるシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するためになされた本発明のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれる少なくとも何れかのゴム成分と、フィラーと、加硫剤と、加硫助剤とを含有してなるゴム部品;及び前記ゴム部品を覆っており、シリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有するアミノ変性シリコーンオイル、若しくはシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有しシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端に水酸基又は保護された水酸基を有しているアミノ変性シリコーンオイルであるアミノ変性シリコーン化合物を含有してなり及び/又は前記ゴム部品の表面分子に反応してなる界面改質層;を有しているもので、前記界面改質層を介在するシリコーンゴム上塗りコーティング層を担持していない前駆状態のものである。
【0012】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、固体微粒子と、それを分散している付加型シリコーンゴム及び/又は縮合型シリコーンゴムと、その硬化触媒とを含有してなる前記シリコーンゴム上塗りコーティング層を被覆するためのものである。
【0013】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、例えば、前記アミノ変性シリコーン化合物が、前記アミノ置換基を、アミノ基、アミノプロピル基、及び/又はN-(β-アミノエチル)イミノプロピル基とするものであって、モノアミノ置換又はポリアミノ置換されているものである。
【0014】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、例えば、前記フィラーが、シリカ、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、クレー及び/又は炭酸カルシウムであるというものである。
【0015】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、例えば、前記加硫剤が、メルカプトベンゾイミダゾール類及び/又はトリアジンジチオール類であるというものである。
【0016】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、例えば、前記加硫助剤が有機酸亜鉛塩であるというものである。
【0017】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、例えば、前記ゴム部品が、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び、又は合成のハイドロタルサイトから選ばれる受酸剤と、アルコキシシラン化合物と、有機樹脂、シリコーンオイル又はパラフィンオイルから選ばれる軟化剤との少なくとも何れかを含有してなるというものである。
【0018】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、前記界面改質層の上に、直接、又はプライマー層を介して、前記コーティング層が付されるものであってもよい。
【0019】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、医療用として用いられるものである。
【0020】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材の製造方法は、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれる少なくとも何れかのゴム成分と、フィラーと、加硫剤と、加硫助剤とを含有しているゴム部品に、シリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有するアミノ変性シリコーンオイル、若しくはシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ置換基を有しシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端に水酸基又は保護された水酸基を有しているアミノ変性シリコーンオイルであるアミノ変性シリコーン化合物を含有している界面改質層形成用組成物を付して界面改質層を形成することを特徴とする前記界面改質層を介在するシリコーンゴム上塗りコーティング層を担持していない前駆状態のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、圧縮永久歪が少なく優れた弾性を有するブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のゴム成分製ゴム部品を用いており、そのゴム部品が窒素/硫黄含有化合物や亜鉛化合物のような加硫剤を含有しているにも拘らず、界面改質層が介在することで付加型/縮合型シリコーンゴム含有コーティング層の硬化を阻害されることがない。そのため、このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を用いれば、このコーティング層でゴム部品を確りとコーティングすることができる。界面改質層は、アミノ変性シリコーン化合物が、ゴム部品の表面分子に結合しつつ、ゴム部品中の窒素/硫黄含有化合物等の加硫剤を封じ込めている。さらに、シリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材によれば、アミノ変性シリコーン化合物が、コーティング層の構成成分との優れた相互作用によってコーティング層を強固に硬化させつつ密着させることができるようになる。
【0022】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を用い、シリコーンオイルではなく固体微粒子がコーティング層に含有され及び/又はそこから一部が露出している摺動性ゴム材へと形成すると、優れた摺動性を発現させることができる。しかも、それによって得られた摺動性ゴム材は、その固体微粒子が脱離・溶出し難いので、低発塵性であって医療用に適している。
【0023】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を用いて形成した摺動性ゴム材は、充分な弾性を有するブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のゴム成分製ゴム部品の優れた物性に起因して、高い液密閉性を発現することができる。
【0024】
また、このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、ゴム部品を形成するのに用いられる組成物の流動性及び成形性が優れるため、生産性を低下させることなくフィラーを多量に添加することができる。さらにこのシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、成形性に優れたゴム部品用組成物により成形されることで、生産数に対する欠陥品の割合である不良率が低く、高い生産性を示すことができる。しかも、このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、コーティング層を担持する前の前駆状態でも、貯蔵安定性が高く性状や性能が保持され、コーティング層を形成するまで長期間安定して保存でき、保存後にコーティング層を付しても、確りと被覆できる。
【0025】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を用いれば、充分な弾性を有するゴム成分製ゴム部品上の界面改質層を覆うように、コーティング層を設けることができ、それらの結合強度が強いので、弾性や摺動性に追従でき、剥離したり脱離したりしないようにすることができる。
【0026】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を用いれば、界面改質層がアミノ変性シリコーンオイルのようなアミノ変性シリコーン化合物を含有していても、それを覆うようにコーティング層を形成することによって確実に封じ込めることができるので、このアミノ変性シリコーン化合物を溶出させない。
【0027】
本発明のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を製造する方法によれば、簡便な操作により、簡易に大量かつ歩留まり良く高品質に製造することができる。
【0028】
この方法によれば、安価な原材料で製造できるので、この前駆材を用いて、ガスケットのような医療用の摺動性ゴムを製造するのに有用であるから、医療費の軽減に資することができる。また、界面改質層を設けた段階で長期間保存可能であるので、コーティング層の種類を適宜変えて、多品種の摺動性ゴム材を簡便に製造するのに用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0030】
本発明のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれるゴム成分とフィラーと加硫剤と加硫助剤とを含有してなるゴム部品、そのゴム部品を覆って付されて設けられておりアミノ変性シリコーン化合物を含有している界面改質層を、有している。
【0031】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、それの界面改質層に付されて設けられそれを被覆しており固体微粒子とシリコーンゴムとそれの硬化触媒とを含有しているコーティング層を付して摺動性ゴム材にするための前駆材として、用いることができる。
【0032】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、付加型/縮合型シリコーンゴム含有コーティング層の硬化を阻害する、触媒毒となる加硫剤を含有しているが、アミノ変性シリコーン化合物を含有している界面改質層でゴム部品が被覆されていることにより、悪影響を及ぼさないように加硫剤を封止している。それによって、その界面改質層を被覆しており固体微粒子とシリコーンゴムとそれの硬化触媒とを含有しているコーティング層を上塗りしても、その硬化触媒が加硫剤で悪影響を受けない。シリコーンゴムが十分に硬化して強固で柔軟性があり追従可能なコーティング層を形成するのに、界面改質剤が役立っている。
【0033】
ゴム部品の材質として、イソブチレンとイソプレンとの共重合体ゴムのようなブチルゴム;塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、クロロプレンゴム、塩素化イソブチレンとイソプレンとの共重合体、臭素化イソブチレンとイソプレンとの共重合体、イソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体の臭素付加ポリマーのようなハロゲン化ブチルゴムから選ばれるゴム成分が挙げられる。これらのゴム成分は、圧縮永久歪を小さくする必要がある摺動性ゴム材、とりわけ医療用の摺動性ゴム材の原材料として、用いられるものである。
【0034】
フィラーとしては、粒状又は粉状であり、白色乃至有色の着色剤を兼ねるものであってもよく、例えば、タルク、シリカ、酸化チタン、カーボンブラック、クレー、炭酸カルシウムのような無機フィラーが挙げられる。
【0035】
フィラーとしてタルクは、第十七改正日本薬局方 タルク 純度試験により検出されるカルシウムが0.9%未満のタルクが好ましく、その中でも、カルシウムが0.1%以下のタルクがより好ましい。フィラーとしてのタルク粉末は、天然鉱物として産出されるタルク原石を粉砕して製造されていることから、不純物として、その随伴鉱物が含まれている。この不純物のうち、カルシウムを含む、ドロマイト(CaMg(CO3)2)、やカルサイト(CaCO3)を水に加えると強い塩基性を示すため、含有量が多いと、溶出物試験におけるΔpHの値に影響し、溶出特性に悪影響を及ぼしてしまう恐れがある。好ましいタルクとして、具体的には、GH3(林化成株式会社製の商品名)、MMR(浅田製粉株式会社製の商品名)、GATH40(日本タルク株式会社製の商品名)、ビクトリライトSK-C(株式会社勝光山鉱業所製の商品名)が挙げられる。
【0036】
フィラーとしてシリカは、例えば沈殿法により得られるシリカが挙げられ、平均粒径30μm、例えばレーザ回折式粒度分布測定による平均粒径が15~60μmの大粒径シリカが好ましく、具体的には、ニップシールEL、ニップシールER、ニップシールVN3、ニップシールAQ(東ソー株式会社製の商品名)が挙げられる。
【0037】
フィラーとして酸化チタンは、ルチル型、アナタース型の何れであってもよく、塩素法又は硫酸法により得られる酸化チタンが挙げられ、硫酸法酸化チタンであることが好ましく、具体的には、タイペーク R-630(石原産業株式会社製の商品名)、TR-600(富士チタン工業株式会社の商品名)、JR-405(テイカ株式会社製の商品名)が挙げられる。
【0038】
フィラーとしてカーボンブラックは、オイルファーネス法、アセチレン分解法、サーマル法、コンタクト法等の何れで作製されたものでもよく、粒子径は30~350nmが好ましく、具体的にはアサヒサーマル、旭#15、旭#15HS、旭#35、旭#50、旭#50U、旭#51、旭#55、旭#60U(何れも旭カーボン株式会社製の商品名)、HTC#20、HTC#SL、HTC#S、ニテロン#SH、ニテロン#55S、HTC#100、ニテロン#10S、ニテロン#10K、ニテロン#10、ニテロン#200IN、ニテロン#200L(何れも日鉄カーボン株式会社製の商品名)、SeastTA、SeastSP、SeastS、SeastFY、SeastSVH、SeastV、SeastSO、Seast116、Seast116HM(何れも東海カーボン株式会社製の商品名)が挙げられる。
【0039】
フィラーとしてクレーは、湿式クレー、焼成クレーの何れであってもよく、粒子径は5~100μmが好ましく、具体的にはカタルポ、OAクレー(山陽クレー工業株式会社製の商品名)、Satintone W、Satintone No.5(何れもBASF株式会社製の商品名)、Glomax LL、Glomax LX、PoleStar400、PoleStar200R、Metastar501(何れも株式会社イメリスミネラルズジャパン製の商品名)が挙げられる。
【0040】
フィラーとして炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウムの何れであってもよく、具体的には白艶華CC、白艶華U、白艶華CCR、Vigot10、Vigot15、白艶華O、白艶華DD、Calmos、白艶華AA、白艶華A、Brilliant-1500(何れも白石カルシウム株式会社製の商品名)、MSK-C、カルファイン200、カルファイン200M、カルファイン500、カルファインN-40(何れも丸尾カルシウム製の商品名)、Socal311、Socal312、Socal322、WinnofillSPT、WinnofilS(何れも株式会社イメリスミネラルズジャパン製の商品名)が挙げられる。
【0041】
これらフィラーは、機械的強度の向上や着色を目的とした充填剤であってもよい。これらのフィラーは、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0042】
これらフィラーが、アルコキシシラン化合物で表面処理されていてもよい。このアルコキシシラン化合物は、後述するように、ゴム部品用組成物に更に含有していてもよいアルコキシシラン化合物であるシランカップリング剤が挙げられる。
【0043】
ゴム部品中、フィラーの含有量としては、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10~150質量部であり、より好ましくは20~150質量部である。
【0044】
加硫剤は、窒素や硫黄を含有する化合物が挙げられる。加硫剤は、ゴム成分とフィラーと加硫剤とを含むゴム部品形成用組成物を、加硫硬化させて、ゴム部品を成形するためのものである。
【0045】
加硫剤として窒素/硫黄含有化合物は、例えばトリアジンチオール誘導体や2-メルカプトベンゾイミダゾール誘導体である。具体的には、下記化学式(1)
【化1】
(式(1)中、R
aは、-SH、-OR
1、-SR
2、-NHR
3、又は-NR
4R
5(R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ同一又は異なり、アルキル基、アルケニル基、アリル基、アラルキル基、アルキルアリル基、又はシクロアルキル基を示す。R
4及びR
5は、同一であっても異なっていてもよい。これらR
1~R
5は例えば直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状であって最大で炭素数を20とするものである。))で示されるトリアジンジチオール誘導体;
下記化学式(2)
【化2】
(式(2)中、R
bは水素原子又はメチル基)で示される2-メルカプトベンゾイミダゾール誘導体
が挙げられる。
【0046】
加硫剤としてトリアジンジチオール誘導体は、より具体的には、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンや、2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンや、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンが挙げられる。
【0047】
トリアジンジチオール誘導体の含有量としては、ゴム部品中、ゴム成分100質量部に対して、0.5~2.0質量部であると好ましく、0.5~1.5質量部であるとより好ましい。トリアジンジチオール誘導体の含有量が0.5未満であると、必要十分な加硫度を得ることができない。
【0048】
加硫剤として2-メルカプトベンゾイミダゾール誘導体は、より具体的には、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メチルベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0049】
2-メルカプトベンゾイミダゾール誘導体の含有量としては、ゴム部品中、ゴム成分100質量部に対して、0.5~1.5質量部であると好ましい。
【0050】
加硫助剤として亜鉛化合物は、有機酸亜鉛塩が挙げられる。有機酸亜鉛塩として、例えば、炭素数10~24の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩や芳香族カルボン酸が挙げられ、具体的には、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛が挙げられる。有機酸亜鉛塩は、ゴム部品用組成物を加硫する際に、加硫反応が始まるまでの時間や加硫反応の速度を調製し、加硫反応を制御することができる。
【0051】
有機酸亜鉛塩の含有量としては、ゴム部品中、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部未満であり、加硫反応を制御する観点から、好ましくは0.1以上0.5質量部未満、より好ましくは0.2~0.3質量部である。有機酸亜鉛塩の含有量を0.5質量部以上としても、添加量に比例した加硫反応開始時間の延長効果は得られず、さらに亜鉛溶出量も増加するので好ましくない。
【0052】
シリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、ゴム部品が、上記成分の他に必要に応じて添加剤を含有するものであってもよい。添加剤としては、酸化マグネシウムや酸化亜鉛、及び天然又は合成のハイドロタルサイトから選ばれる受酸剤、ステアリン酸などの防着・粘度調整剤、ポリエチレンや脂肪族/芳香族炭化水素等の有機樹脂やシリコーンオイルやパラフィンオイルなどの軟化剤のような加工助剤が挙げられる。受酸剤としては、亜鉛の溶出や塩化物発生を抑制するためにBET(Brunauer-Emmett-Teller)法により求められるBET比表面積が30~165m2/gの酸化マグネシウムが好ましい。その中でもBET比表面積が30~40m2/gの中活性酸化マグネシウムを配合することにより、溶出物や圧縮永久歪を低レベルに抑えたままで、さらに加硫開始時間が長く平衡加硫に到達するまでの時間が短い、生産性の高い加硫反応を得ることができる。
【0053】
ゴム部品用組成物は、アルコキシシラン化合物を更に含んでいてもよい。このようなアルコキシシラン化合物は、例えばシランカップリング剤として作用するものである。このようなアルコキシシラン化合物は、メルカプト基、メルカプト生成官能基、アミノ基、及び/又はアミノ生成官能基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。メルカプト生成官能基やアミノ生成官能基とは、還元や脱ブロック化によってSH基やNH2基を生成する基である。
【0054】
このアルコキシシラン化合物の一例として、アルコキシ基を有しつつさらにメルカプト基及び/又はメルカプト生成官能基を有するものがある。メルカプト生成官能基とは、還元や脱ブロック化によってSH基を生成する基である。例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(TESPT)のように、本来構造中にSH基を有していないものの、加硫の際に4つの硫黄原子が連結している鎖内(-S-S-S-S-)の途中でその一部の結合が切断されることで、-S-SHや-SHを生じるものである。メルカプト生成官能基としては、具体的に、ジスルフィド基(-S-S-)のようなポリスルフィド基(-(S)n-,n=2~4)や、メチル基、トリメチルシリル基のような保護基で保護されたメルカプト基が挙げられる。
【0055】
このアルコキシシラン化合物は、アルコキシ基及びメルカプト基を含有するアルコキシシラン化合物として、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン;アルコキシ基及びメルカプト生成官能基を含有するアルコキシシラン化合物として、例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドのようなポリスルフィド基含有アルコキシシラン化合物、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物のブロック体が挙げられる。なかでも、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのアルコキシシラン化合物は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0056】
このアルコキシシラン化合物の別な一例として、アルコキシ基を有しつつさらにアミノ基及び/又はアミノ生成官能基を有するアルコキシシラン化合物がある。例えば、アミノ基含有アルコキシシラン化合物やそのブロック体が挙げられる。アミノ生成官能基とは、例えば保護されたアミノ基であって、具体的に、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基のようなカルバメート系保護基で保護されたアミノ基;アシル基のようなアミド系保護基で保護されたアミノ基;フタロイル基のようなイミド系保護基で保護されたアミノ基;p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基のようなスルホンアミド系保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。
【0057】
このアルコキシシラン化合物は、アルコキシ基及びアミノ基を含有するアルコキシシラン化合物として、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。なかでも、3-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのアルコキシシラン化合物は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0058】
このようなアルコキシシラン化合物の含有量としては、ゴム部品用組成物の配合中のフィラー質量に対して0.2~2.0質量%、好ましくは0.5~2.0質量%の量が好ましい。
【0059】
これらのアルコキシシラン化合物は、ゴム部品用組成物に配合されることにより、及び/又はフィラーに表面処理されることにより、フィラー表面に結合しており、このアルコキシシラン化合物を介してフィラーとポリマーが結合している。ゴム部品中、このような結合によりハロゲン化ゴムのようなゴム成分により形成されたポリマーの主鎖に、アルコキシシラン化合物を介してフィラーが結合し、三次元的な網目構造を有する。
【0060】
具体的には、フィラーの表面に有する水酸基のような反応性官能基とアルコキシシラン化合物の加水分解性基であるアルコキシ基とが反応して結合しており、さらにそのアルコキシシラン化合物のアミノ基又はアミノ生成官能基若しくはメルカプト基又はジスルフィド基のようなメルカプト生成官能基がハロゲン化ゴムのハロゲン原子と反応し結合しているものである。アルコキシシラン化合物とフィラーとの結合は、フィラー表面においてその複数個所が点在していてもよく、フィラー表面をアルコキシシラン化合物で被覆するように結合していてもよい。
【0061】
このようなフィラーは、ゴム部品中において、アルコキシシラン化合物を介してポリマー鎖に結合している。フィラー表面にアルコキシシラン化合物が結合していることで疎水化されるため、日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法における溶出物試験などでも、過マンガン酸還元性物質が接触液側に抽出されにくくなる。また、これらのフィラーは、その表面にアルコキシシラン化合物が処理されていると好ましく、ハロゲン化ゴムとの界面においてズレを生じないため、圧縮永久歪を大幅に低減させることができる。
【0062】
従って、アルコキシシラン化合物は、フィラーと共に含有されてフィラー表面に化学結合することで、圧縮永久歪を生じる原因の一つであるフィラーとハロゲン化ゴムにより形成されたポリマーとの界面のズレを防ぐことができ、圧縮永久歪を大幅に低減させることができる。また、アルコキシシラン化合物は、ゴム部品用組成物中に共に含有され得る酸化マグネシウムや酸化亜鉛のような金属酸化物が塩化マグネシウムや塩化亜鉛のような金属塩化物となってゴム部品から溶出してしまうのを防ぐことができる。
【0063】
このゴム部品を覆って設けられており、アミノ変性シリコーン化合物を含有し及び/又はゴム部品のゴム成分例えばハロゲン化ブチルゴムに少なくとも一部で反応してなる界面改質層は、ゴム部品のブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムのようなゴム成分、とりわけハロゲン化ブチルゴムのハロゲン原子と、アミノ変性シリコーン化合物のアミノ基とが、少なくとも一部で置換反応することにより、強固に結合し、ゴム部品中の加硫剤を封じ込めている。このような界面改質層は、アミノ変性シリコーン化合物の分子が多数並んだ単分子膜であってもよく、アミノ変性シリコーン化合物の多数分子が結合乃至硬化し合った膜であってもよい。
【0064】
このような界面改質層を形成するアミノ変性シリコーン化合物は、有機基としてアミノ置換基を導入したアミノ変性シリコーンオイルが挙げられる。例えば、シリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ基を有するアミノ変性シリコーンオイル、若しくはシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端にアミノ基を有しシリコーン繰返しユニットの何れかに及び/又は末端に水酸基又は保護された水酸基を有しているアミノ変性シリコーンオイルである。このようなアミノ置換基としては、アミノ基、アミノプロピル基、N-(β-アミノエチル)イミノプロピル基が挙げられ、モノアミノ置換であってもよく、ジアミノ置換のようなポリアミノ置換であってもよい。
【0065】
この界面改質層は、アミノ変性シリコーン化合物を含有するエマルジョンからなる界面改質層用組成物に、必要に応じて洗浄したゴム部品を浸漬し、適宜、水洗し乾燥すると、形成される。このときアミノ変性シリコーン化合物は、アミノ置換基や水酸基が、ゴム部品のハロゲン化ブチルゴムのようなゴム成分のハロゲン基と反応すると共に、シリカやタルクのようなフィラーの表面水酸基と反応して、共有結合を形成し、膜状の界面改質層を形成する。この界面改質層によって、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のゴム成分を含有するゴム部品が改質される。そのアミノ変性シリコーン化合物は、ゴム部材に付されるコーティング層との相互作用が強くなって、十分に密着させるためのものであり、そのコーティング層によって優れた摺動性と耐久性とを発現できるようにするためのものである。
【0066】
このようなアミノ変性シリコーンオイルとして、
(CH3)3SiO-[Si(CH3)2-O-]x1-[Si(CH3)(アミノ置換基)-O-]y1-Si(CH3)3 ・・・(3)、
Rc-Si(CH3)2-O-[Si(CH3)2-O-]x2-[Si(CH3)(アミノ置換基)-O-]y2-Si(CH3)2-Rc ・・・(4)、
Rc-Si(CH3)2-O-[Si(CH3)2-O-]x2-[Si(CH3)(アミノ置換基)-O-]y3-[Si(アミノ置換基)2-O-]y4-Si(CH3)2-Rc ・・・(5)、又は
アミノ置換基-Si(CH3)2-O-[Si(CH3)2-O-]x3-Si(CH3)2-アミノ置換基 ・・・(6)
(式(3)~(6)中、x1~x3,及びy1~y4は各繰返しユニット数であって、それらのユニットがランダムユニット、及び/又はブロックユニットであることを示し、官能基当量を100~8000とする。Rcは水酸基、メトキシ基、エトキシ基及びプロピロキシ基)で、表わされ、繰返しユニット総数を5~100とする側鎖又は末端にアミノ基を有する変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0067】
式(3)~式(6)で表されるこのようなアミノ変性シリコーンオイルは、具体的には、
DOWSIL BY16-205(粘度90mm2/s[25℃]、官能基当量3900)、
DOWSIL BY16-213FLUID(粘度60mm2/s[25℃]、官能基当量2700)、
DOWSIL BY16-849FLUID(粘度1200mm2/s[25℃]、官能基当量600)、
DOWSIL BY16-853U(粘度14mm2/s[25℃]、官能基当量450。両末端タイプ)、
DOWSIL BY16-871(粘度4mm2/s[25℃]、官能基当量130。両末端タイプ)、
DOWSIL BY16-872(粘度18100mm2/s[25℃]、官能基当量1800)、
DOWSIL BY16-879B(粘度1500mm2/s[25℃]、官能基当量7500。両末端OHタイプ)、
DOWSIL BY16-892(粘度1400mm2/s[25℃]、官能基当量1900。両末端OHタイプ)、
DOWSIL FZ-3705(粘度250mm2/s[25℃]、官能基当量3800)、
DOWSIL FZ-3710(粘度1000mm2/s[25℃]、官能基当量1750)、
DOWSIL FZ-3760(粘度220mm2/s[25℃]、官能基当量1700)、
DOWSIL FZ-3785(粘度3500mm2/s[25℃]、官能基当量6000)、
DOWSIL SF8417FLUID(粘度1200mm2/s[25℃]、官能基当量1800)
(何れもダウ・東レ株式会社製の商品名)、
KF-857(粘度65mm2/s[25℃]、官能基当量790。両末端メトキシ基タイプ)、
KF-8001(粘度240mm2/s[25℃]、官能基当量1900。両末端メトキシ基タイプ)、
KF-862(粘度650mm2/s[25℃]、官能基当量1900。両末端メトキシ基タイプ)
(何れも信越化学工業株式会社製の商品名)、
TSF4703(粘度1000mPa・s[25℃]、官能基当量1600)、
TSF4704(粘度40000mPa・s[25℃]、官能基当量20000)、
TSF4705(粘度70000mPa・s[25℃]、官能基当量40000)、
TSF4707(粘度10000mPa・s[25℃]、官能基当量7000)、
TSF4708(粘度1000mPa・s[25℃]、官能基当量2800)、
XF42-B1989(粘度900mPa・s[25℃]、官能基当量0.9Nwt%)、
XF42-B8922(粘度70000mPa・s[25℃]、官能基当量0.1Nwt%)
(何れもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の商品名)が挙げられる。
【0068】
このようなアミノ変性シリコーンオイルとして、中でも式(4)又は(5)で示されるものであることが好ましい。
【0069】
アミノ変性シリコーン化合物を含有するエマルジョン中、変性シリコーンオイルの濃度は特に限定されないが、具体的には、例えば、0.0002~0.5質量%、さらには0.01~0.3質量%であることが好ましい。このエマルジョンは、界面活性剤を有していてもよい。界面活性剤として、アルキル硫酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;第4級アンモニウム塩,アルキルアミン酢酸塩などのカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン,アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤等が挙げられる。アミノ変性シリコーン化合物を含有するエマルジョンは、溶剤例えばポリオキシエチレン分岐アルキル(C12-C14)エーテルのようなエーテル類、オクタメチルシクロテトラシロキサンのようなシロキサン類、酢酸のような有機酸類を、含有していてもよい。
【0070】
アミノ変性シリコーン化合物を含有するエマルジョンは、界面活性剤と共存しているエマルジョンであってもよく、市販のものを用いてもよい。濃度20~80質量%程度のシリコーンオイルエマルジョン市販品として入手可能である。例えば、DOWSIL FZ-4658、DOWSIL FZ-4634EX、DOWSIL SM8709SR Emulsion(何れもダウ・東レ株式会社製の商品名)、POLON-14、POLON-MF-14EC、KM-9771、POLON-MF63(何れも信越化学工業株式会社製の商品名)、XS65-C0032、XS65-C0726、XS65-B6413、XS65-B8124(何れもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の商品名)が挙げられる。市販のものを、0.0002~0.5質量%に希釈して用いることができる。
【0071】
この界面改質層は、ゴム部品を被覆することにより、ゴム部品に内在する加硫剤とコーティング層の硬化触媒例えば白金触媒との接触を抑制し、コーティング剤が強固に確りと被覆するのを補助する。
【0072】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、コーティング層で被覆して摺動性ゴム材を形成するのに有用である。
【0073】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を用いれば、コーティング層を付したときに、層内部及び露出表面にシリコーンオイル非含有及び非担持となっていることによって、従来摺動性を発現するために使用されていたシリコーンオイルに由来するコンタミネーションに起因しそれが核となって有効成分を凝集させてしまうのを回避できる。しかも、このとき固体微粒子がコーティング層から脱離したり溶出したりしないので、安全性や信頼性を向上させることができる。そのため、高機能化したタンパク製剤や有効成分の凝集を制御した製剤やコンタミネーションを忌避すべき薬剤を、シリンジに吸入したり、プレフィルドシリンジに封入したりしても、有効成分の凝集や、不純異物の脱離・溶出を抑制して、高品質のまま長期間維持でき、投与の際に薬効を低下させず失活もさせず、しかも血栓のような副作用を誘発させない。
【0074】
この界面改質層を被覆しており、固体微粒子と、それを分散している付加型シリコーンゴム及び/又は縮合型シリコーンゴムと、その硬化触媒とを含有してなるコーティング層は、界面改質層を介して、ゴム部品上に確りと硬化して被覆されている。中でも付加型シリコーンゴムを用いていることが好ましい。
【0075】
コーティング層中、固体微粒子は、シリカ微粒子や、シリコーンゴム、シリコーンレジンなどから選ばれるシリコーン微粒子が挙げられ、とりわけシリコーン微粒子が好ましい。
【0076】
コーティング層は、固体微粒子と、それを分散している付加型シリコーンゴム原料成分及び/又は縮合型シリコーンゴム原料成分と、その硬化触媒と、必要に応じ希釈溶剤例えば脂肪族系溶剤の単数又は複数とを混練することにより含有しているコーティング層用組成物を、界面改質層上に塗布してから、加熱して硬化させたものである。
【0077】
この固体微粒子は、平均粒径、例えばレーザ回折式粒度分布測定による平均粒径を0.0.01~30μm、特に0.1~10μmとすることが好ましい。また、コーティング層は、厚さを5~50μmとすることが好ましい。このとき、このような固体微粒子の平均粒径とコーティング層の厚さとを調整することにより、コーティング層表面に凹凸を形成している。
【0078】
コーティング層表面に凹凸を形成している固体微粒子は、元々、付加型シリコーンゴム原料成分及び/又は縮合型シリコーンゴム原料成分と混練したコーティング層用組成物中で、これら原料成分が固体微粒子表面に付着していることに起因して、コーティング層から突き出ている固体微粒子は、溶出や脱離を引き起こし難く、しかもその凹凸を形成している固体微粒子でシリンジや注射器の筒内壁との接触面積を低減して摺動性を向上しつつ、付加型シリコーンゴムや縮合型シリコーンゴムの弾性により液密閉性を維持している。固体微粒子によって、コーティング層は、動的摺動抵抗値が、4~8N程度に低下している。例えば、1mL用のCOP樹脂外筒のシリンジ筒に、その内径(φ約6.35mm)と同外径のガスケット(φ約6.60~6.75mm)を摺動したときの100mm/分での動的摺動抵抗値を10N以下に抑制することができる。
【0079】
コーティング層の硬度は、デュロA硬度で、30~70°、好ましくは30°(JIS K 6253 デュロA)である。
【0080】
コーティング剤中の付加型シリコーンゴム原料成分としてビニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンの混合物が挙げられその成分比率は0~67重量%であり、縮合型シリコーンゴム原料成分としてシラノール基含有オルガノポリシロキサンとオルガノアルコキシシランの混合物が挙げられその成分比率は0~67重量%であり、固体微粒子の成分比率は最終コーティング層中の濃度として0.1~50重量%であり、必要に応じ添加される希釈溶剤として芳香族、脂肪族、脂環族、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類が挙げられその成分比率は30~99重量%である。
【0081】
ビニル基含有オルガノポリシロキサンの例として、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0082】
ハイドロジェンオルガノポリシロキサンの例として、ハイドロジェン末端ポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリエチルハイドロジェンシロキサン、ハイドロジェン末端ポリフェニル(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルハイドロジェンシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーなどのハイドロジェン含有オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0083】
シラノール基含有オルガノポリシロキサンの例として、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフロロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーなどが挙げられる。
【0084】
オルガノアルコキシシランの例として、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エチルオルソシリケート、プロピルオルソシリケート、アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0085】
ビニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンの付加反応(ヒドロシリル化反応)の触媒として、白金、白金化合物、パラジウム化合物、ロジウム化合物が挙げられ、この中でも特に白金、白金化合物が好ましい。添加量は触媒量で良く、一般的にはビニル基含有オルガノシロキサンに対して白金量換算で1~1000ppmとなるように調整される。
【0086】
シラノール基含有オルガノポリシロキサンとオルガノアルコキシシランの縮合反応の触媒として、カルボン酸金属塩、有機スズ化合物、アルコキシチタン類、有機アルミニウム、有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。
【0087】
コーティング層用組成物は、市販のものであってもよく、例えば
SILASTIC RBL-9200-30 Liquid Silicone Rubber、
SILASTIC RBL-9200-40 Liquid Silicone Rubber、
SILASTIC RBL-9200-50 Liquid Silicone Rubber、
SILASTIC RBL-9200-60 Liquid Silicone Rubber、
SILASTIC RBL-9200-70 Liquid Silicone Rubber、
(何れもダウ・東レ株式会社製の商品名);
KE-1950-30-A/B、
KE-1950-40-A/B、
KE-1950-50-A/B、
KE-1950-60-A/B、
KE-1950-70-A/B、
KEG-2000-30-A/B、
KEG-2000-40-A/B、
KEG-2000-50-A/B、
KEG-2000-60-A/B、
KEG-2000-70-A/B、
KEG-2001-40-A/B、
KEG-2001-50-A/B、
KEG-2001-60-A/B、
KEG-2001-70-A/B、
(何れも信越化学工業株式会社製の商品名);
Silopren LSR 2030、
Silopren LSR 2040、
Silopren LSR 2050、
Silopren LSR 2060、
Silopren LSR 2070、
(何れもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の商品名);
ELASTOSIL LR 3003/30、
ELASTOSIL LR 3003/40、
ELASTOSIL LR 3003/50、
ELASTOSIL LR 3003/60、
ELASTOSIL LR 3003/70、
(何れも旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の商品名)が挙げられる。
【0088】
前述のプライマー層はプライマー処理剤を塗布することで形成される。プライマー処理剤は後述の市販のプライマー処理剤を単独乃至は複数を混合したものであり、必要に応じて触媒、希釈溶剤、変性シリコーン、シランカップリング剤等を混合したものであってもよい。
【0089】
プライマー処理剤として、例えば、プライマーAQ-1、プライマーC、プライマーMT、プライマーT、プライマーD、プライマーA-10、プライマーR-3、プライマーB-20(何れも信越化学工業株式会社製の商品名);プライマーA、プライマーB、プライマーC、プライマーD、プライマーD、SILASTIC DY39-067、SILASTIC DY39-123、DOWSIL Primer-X、DOWSIL Primer―Y(何れもダウ・東レ株式会社製の商品名);ME21、XC9214、XP82-002、XP81-A6361(何れもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の商品名)などが挙げられる。
【0090】
前述の触媒としては、通常使用されるものが適宜選ばれるが、具体例として、カルボン酸金属塩、有機スズ化合物、アルコキシチタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、ロジウム、ロジウム化合物などが挙げられる。
【0091】
前述の希釈溶剤としては、通常使用されるものが適宜選ばれるが、具体例として、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類などが挙げられる。
【0092】
前述の変性シリコーンとしては、PDMS(ポリジメチルシロキサン)のメチル基の一部を有機基や置換基に置換した物が挙げられる。代表的な有機基や置換基としては、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、ポリエーテル基、メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸基、ハイドロジェン基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基、シラノール基、アラルキル基、アルキル基、フェニル基、フロロ基、脂肪酸基、脂肪酸アミド基等であるが、別の置換基でもよい。
【0093】
前述のシランカップリング剤としては、分子内に、有機基と、無機材料へ結合する官能基とを併せ持つ材料が挙げられる。シランカップリング剤は、代表構造として、Xn-Si-(OR)4-n(n=1~3、Xは有機材料と結合する官能基、ORはアルコキシ基)で表される。そのXは、ビニル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、スチリル基等が代表的であるが、別の官能基でもよい。シランカップリング剤としては、モノマーの他、オリゴマーやポリマーでもよく、特殊なものとして、シラザン類(ジシラザンやポリシラザン)等のケイ素化合物も含む。
【0094】
この摺動性ゴム材は、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のゴム成分製ゴム部品が本来有する低圧縮永久歪などの基本的な物性に影響を与えることなく、医療用のシリンジや注射器のガスケットのような高い摺動性と液密閉性とを必要とする各種用途の摺動性材料として、有用である。
【0095】
また、この摺動性ゴム材は、採血用の注射器のガスケットに用いても、シリコーンオイルやフィラー又は固体微粒子の脱離・溶出が惹き起こされないので、採血試料に不純異物のコンタミネーションが起こらず、最近の採血試料の検査項目の増大や検出感度の向上に追従して、測定結果の信頼性に影響を及ぼす恐れがなく、正確で精密な医療検査を行うことができる。
【0096】
この摺動性ゴム材は、日本薬局方に定められた規格、例えば輸液用ゴム栓試験法の規格を満たし、水や薬液のような接触する液体への溶出物が極めて少なく、また、注射用水純度試験に定められているような、塩化物の発生が抑制されているので、医療用のシリンジや注射器のガスケットとして使用することができる。
【0097】
しかも、この摺動性ゴム材は、常温から加熱滅菌温度における歪みの発生を抑制することができる。特に、滅菌処理のような加圧下で加熱や冷却が施される場合において、熱で加硫鎖が切れそれが加硫剤で再度反応するような再加硫反応を生じ難く、加硫鎖が切れ再変化することで内部構造が変化して、回復応力が減少し生じる圧縮永久歪を大幅に低減させることができる。圧縮永久歪を抑制することで、密封度や抵抗値の変化が極僅かであり、優れた液密閉性能を維持することができる。
【0098】
本発明のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、以下のようにして製造される。
【0099】
先ず、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれる少なくとも何れかのゴム成分と、フィラーと、加硫剤と、加硫助剤と、必要に応じて添加剤例えばシランカップリング剤であるアルコキシシラン化合物や受酸剤や着色剤、及び/又は防着・粘度調整剤や軟化剤のような加工助剤を含んだゴム部品形成用組成物を、オープンロールなどで混練する。
【0100】
なお、ゴム部品形成用組成物の調製としては、全ての成分を一度に配合して調製するインテグラルブレンド法であってもよい。また、前処理として先にフィラーとアルコキシシラン化合物とを反応させて表面処理されたフィラーを得た後、その表面処理されたフィラーを残りの各成分に添加して混練することで調製する方法であってもよい。
【0101】
予めフィラーをアルコキシシラン化合物で表面処理する直接処理方法としては、アルコキシシラン化合物であるシランカップリング剤水溶液と粉状のフィラーを撹拌した後、加熱乾燥して反応させる方法が挙げられる。フィラーの表面に有する水酸基などの反応性官能基とアルコキシシラン化合物のアルコキシ基とを反応させて結合することで、フィラー表面にアルコキシシラン化合物を存在させることができる。
【0102】
全ての成分を一度に配合して混練したゴム部品用組成物であっても、予めアルコキシシラン化合物で表面処理されたフィラーを用いたゴム部品用組成物であっても、同様に、加硫して成形されることで、フィラー表面にアルコキシシラン化合物が化学結合し、ハロゲン化ゴムにアルコキシシラン化合物を介してフィラーが結合しているゴム部品を得ることができる。
【0103】
次に、加硫金型例えばプランジャ用穴部を形成するように突起がついた雄型と円錐部が形成されるように加工された雌型のような2枚型加硫金型のキャビティに混練したゴム部品形成用組成物を適量充填し、シート状に、165~190℃で15~20気圧にて7~20分間、好ましくは7~15分間加熱加圧成形する。シート状に多数形成された多数のガスケット形状のシートを、抜きプレスし、抜き型で所望の個々のガスケット形状に個片化する。このガスケット形状の個片を、必要に応じて、洗浄する。洗浄は水洗及び/又は炭酸ナトリウム水溶液のようなアルカリ洗浄及びそれに引き続き硫酸水溶液のような酸洗浄を行う。このガスケットの個片を、必要に応じて、乾燥する。
【0104】
得られたガスケット形状の個片の硬度は、デュロA硬度で、好ましくは下限が40、より好ましくは50で、上限が好ましくは75、より好ましくは70、一層好ましくは65、より一層好ましくは60(JIS K 6253 デュロA)である。
【0105】
液温を20~80℃、好ましくは30~50℃程度の範囲に加温されたアミノ変性シリコーン化合物を含有している界面改質層形成用組成物であるエマルジョンに、このガスケット形状の個片を、具体的には限定されないが、5分間~6時間、好ましくは10分間~1時間程度浸漬して、個片上に組成物を付し、その後好ましくは水洗し、乾燥する。乾燥条件は、特に限定はされないが、120℃以下の温度で乾燥することが好ましく、例えば、水洗後の成形品本体に高圧のエアを吹きつけることによる風乾でも良い。このような表面処理により、ガスケット個片上に界面改質層を形成し、シリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を、得る。
【0106】
このシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、そのまま保存して摺動性ゴムを製造するまで保存していてもよく、直ぐに摺動性ゴムへと誘導してもよい。
【0107】
なお、変性シリコーンと、縮合硬化触媒及び/又は付加硬化触媒と、必要に応じ希釈溶剤例えば脂肪族系溶剤の単数又は複数とを混練することにより含有しているプライマー処理剤を、界面改質層上に付して、プライマー層を形成した、シリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材としてもよい。
【0108】
シリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を用いて、摺動性ゴムは、以下のようにして、作製される。
【0109】
シリコーンレジン微粒子やシリカ微粒子のような固体微粒子と、それを分散している付加型シリコーンゴム原料成分及び/又は縮合型シリコーンゴム原料成分と、白金触媒のようなその硬化触媒とを含有しているコーティング層用組成物を、調製する。このガスケット形状の個片の界面改質層上に、コーティング層用組成物をスプレーガンのような噴霧器で所望の厚さとなるように塗布し、必要に応じ80~200℃で5分~2時間加熱して硬化させて、被覆したコーティング層を形成すると、摺動性ゴム材として医療用のガスケットが得られる。
【0110】
このガスケットのプランジャ用穴にプランジャの先端を押し込み、ガスケットごとプランジャを、シリンジ筒部又は注射器筒部に挿入すると、シリンジや注射器ができあがる。シリンジはプレフィルドシリンジであってもよい。
【0111】
なお、界面改質層上に、直接、コーティング層を形成した例を示したが、変性シリコーンと、縮合硬化触媒及び/又は付加硬化触媒と、必要に応じ希釈溶剤例えば脂肪族系溶剤の単数又は複数とを混練することにより含有しているプライマー処理剤を調製し、界面改質層上に、プライマー処理剤をスプレーガンのような噴霧器で塗布し、室温乃至加熱下で乾燥して硬化触媒含有プライマー層を形成し、その上に、前記同様にコーティング層用組成物を塗布して硬化させてコーティング層を形成し、摺動性ゴムにしてもよい。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を適用するシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材の実施例について、詳細に説明する。先ず、密着強度の評価をシート形状にて実施した。
【0113】
(実施例1)
密着強度の評価用ゴム部品用組成物を調製した。
ポリマー成分として、塩素化ブチルゴム(JSR CHLOROBUTYL 1066:JSR株式会社製の商品名)の100.00質量部、加工助剤として、ステアリン酸(精製ステアリン酸550V:花王株式会社製の商品名)の0.30質量部、ステアリン酸亜鉛(Zn-St(植物性):日東化成工業株式会社の商品名)の0.30質量部、及びパラフィン系オイル(ダイアナプロセスオイルPW-380:出光興産株式会社製の商品名)の5.00質量部、受酸剤として、酸化マグネシウム(キョーワマグ#30:協和化学工業株式会社製の商品名)の2.00質量部、着色剤として、カーボンブラック(旭#35:旭カーボン株式会社製の商品名)の0.30質量部と、硫酸法ルチル型酸化チタン(タイペーク R-630:石原産業株式会社製の商品名)の3.00質量部、フィラーとして、タルク(GH3:林化成株式会社製の商品名)の60.00質量部、及び超高分子量ポリエチレン(ミペロンXM-220:三井化学株式会社製の商品名)の20.00質量部、アルコキシシラン化合物として、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(DOWSIL Z-6062 Silane、ダウ・東レ株式会社製の商品名)の0.60質量部を密閉式加圧ニーダーで撹拌して混合した後、得られた練り混合物に、加硫剤として、6-(ジブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(ZISNET DB:三協化成株式会社製の商品名)の0.70質量部を加えて、オープンロールで撹拌して混合し、ゴム部品用組成物を得た。
【0114】
このゴム部品用組成物を、加硫金型のキャビティに充填される適宜の重量・形状となるように、自動成型機にて適切に切断し、ゴム原材料を予備成形した。予備成形したゴム原材料を、シート成形用金型に仕込み、加硫成形プレス機にて、180℃で10分間、加熱加圧して、加硫し、50×50×2mmのシート状に成形し、ゴムシートを得た。
【0115】
このゴムシートを、0.6重量%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して90分間煮沸した後、1.9重量%の硫酸水溶液に室温で120分間浸漬して、化学洗浄処理を施し、化学洗浄処理ゴムシートを作製した。
【0116】
両末端水酸基でありアミノ変性したジメチルシリコーンオイル(DOWSIL BY16-892:ダウ・東レ株式会社製の商品名)25.0g、界面活性剤(NIKKOL BT-9:日光ケミカルズ株式会社製の商品名)2.7g及び0.5重量%酢酸水溶液72.3gを混合し、ホモミキサーで8000回転/分にて10分間撹拌してエマルジョン溶液を作製した。
【0117】
作製したエマルジョン溶液を用い、アミノ変性したジメチルシリコーンオイルの最終濃度が0.05重量%、及び、炭酸水素ナトリウムの最終濃度が0.01重量%となるように混合した混合物水溶液に、化学洗浄処理ゴムシートを、40℃で45分間浸漬した後、その液から取り出し、さらに水に浸漬させて水洗を3回行った。水洗は各回毎に水を交換して行い、各回の浸漬は1分間行った。そして80℃で60分間加熱処理して、乾燥することによって、化学洗浄処理ゴムシートを覆うように、アミノ変性シリコーン化合物を含有してなる界面改質層を形成した。
【0118】
界面改質層を形成した化学洗浄処理ゴムシート状に、50×20mmのPETフィルムを置き、シートの一部をマスキングする。その上にPMMA製の四角い枠(外径:50×50mm、内径:40×40mm、高さ:2mm)を置き、枠の中に付加硬化型シリコーンゴム(KE-1950-30A/B:信越化学工業社製の商品名、デュロ30°)を流しいれた。その後表面がなだらかになるまで整地を行い、加熱オーブン(DKM300:ヤマト科学社製の商品名)にて140℃、1時間加熱硬化を行った。硬化後枠を取り外し、シリコーンが密着していない部分を切り落とし、マスキング部が上部になるように配置し、幅20mmの短冊状に切り、密着強度評価用ゴムシートを作製した。
【0119】
(密着強度の評価)
得られた密着強度評価用ゴムシートに対し、デジタルフォースゲージ(HF-100:日本計測システム社製の商品名)を用い、引張速度50mm/分、剥離角度180°にて密着強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0120】
(比較例1)
実施例1と同様にして化学洗浄処理ゴムシートを作製し、界面改質層を形成させずに密着強度評価用ゴムシートを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0121】
(比較例2)
ポリエーテル変性オルガノシロキサン(KM-244F:信越化学工業株式会社製の商品名)25.0g、界面活性剤(NIKKOL BT-9:日光ケミカルズ株式会社製の商品名)2.7g及び0.5wt%酢酸水溶液72.3gにて作製したエマルジョン溶液にて、実施例1と同様に界面改質層を形成して密着強度評価用ゴムシートを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0122】
(比較例3)
ジメチルシリコーンオイルのエマルジョン溶液(KM-742T:信越化学工業株式会社製の商品名)にて、実施例1と同様に界面改質層を形成して密着強度評価用ゴムシートを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0123】
【0124】
表1から明らかな通り、実施例1は、比較例1~3に比べ、密着強度が高く、十分にシリコーンゴムが硬化していることが確認できた。それに対し比較例1~3はシリコーンゴムの硬化が阻害されているため、密着強度の低下が見られた。
【0125】
次に医療用のガスケットとしての評価を実施した。
【0126】
(実施例2)
実施例1と同様にゴム部品用組成物を作製し、加硫金型のキャビティに充填される適宜の重量・形状となるように、自動成型機にて適切に切断し、ゴム原材料を予備成形した。予備成形したゴム原材料を、ガスケット形状成形用金型に仕込み、加硫成形プレス機にて、180℃で10分間、加熱加圧して、加硫し、ガスケット形状に成形し、ガスケット用ゴム部品シートを作製した。
【0127】
このようにシート状に多数形成されたガスケット形状を抜きプレスし、抜き型にて適切な形状に個片化し、ガスケット用ゴム部品を成型した。
【0128】
このガスケット用ゴム部品を、0.6重量%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して90分間煮沸した後、1.9重量%の硫酸水溶液に室温で120分間浸漬して、化学洗浄処理を施しその液から取り出した、化学洗浄処理ガスケット用ゴム部品を作製した 。
【0129】
両末端水酸基でありアミノ変性したジメチルシリコーンオイル(DOWSIL BY16-892:ダウ・東レ株式会社製の商品名)25.0g、界面活性剤(NIKKOL BT-9:日光ケミカルズ株式会社製の商品名)2.7g及び0.5wt%酢酸水溶液72.3gを混合し、ホモミキサーで8000回転/分にて10分間撹拌してエマルジョン溶液を作製した。
【0130】
作成したエマルジョン溶液を用い、アミノ変性したジメチルシリコーンオイルの最終濃度が0.05重量%、及び、炭酸水素ナトリウムの最終濃度が0.01重量%となるように混合した混合物水溶液に、化学洗浄処理ガスケット用ゴム部品を、40℃で45分間浸漬した後、その液から取り出し、さらに水に浸漬させて水洗を3回行った。水洗は各回毎に水を交換して行い、各回の浸漬は1分間行った。そして80℃で60分間加熱処理して、乾燥することによって、ゴム部品を覆うように、アミノ変性シリコーン化合物を含有してなる界面改質層を形成した 。
【0131】
界面改質層を形成した化学洗浄処理ガスケット用ゴム部品上に、付加硬化型シリコーンゴム(KE-1950-30A/B:信越化学工業社製の商品名、デュロA硬度30°)と固体微粒子としてシリコーンレジン(X-40-2667A:信越化学工業株式会社製の商品名)を105℃で2時間、続けて170℃2時間加熱硬化して得られた硬化物をボールミルで粉砕し、分級することで得られた平均粒径10μmのシリコーン微粒子の20重量%とキシロール(キシレン 和光特級:富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名)の8:2:90質量比の混合物をスプレーガンで塗膜厚が10μmとなるように塗布し、140℃で60分間加熱処理し、硬化した。それにより、界面改質層上にコーティング層を形成し、所望の医薬用ガスケットを摺動性ゴム材として得た。
【0132】
(摺動抵抗の評価)
得られた摺動性ゴム材を1mL用のCOP樹脂外筒のシリンジ筒(内径φ約6.35mm)のプランジャに取り付け、シリンジのバレルに、摺動性ゴム材を取り付けたプランジャを、バレルのフランジから10mmの位置まで押し込み、シリンジを摺動抵抗測定用冶具に設置した。
【0133】
シリンジを冶具に設置後、プランジャ底部にデジタルフォースゲージ(HF-100:日本計測システム社製の商品名)を設置し、押込速度100mm/分にて30mm押し込み、その際の最大荷重を摺動抵抗として評価を行った。その結果を表2に示す。
【0134】
(耐漏れ性の評価)
JIS T3210に準拠して漏れ性の評価を実施した。得られた摺動性ゴム材を1mL用のCOP樹脂外筒のシリンジ筒(内径φ約6.35mm)に取り付け、シリンジに水0.75mlを吸い入れ、これを固定して水が筒口から出ないようにした後、プランジャに490kPaの圧力を10秒間加えた。その際にはめ合わせ部から水滴が落ちていないことを確認し、漏れ性を評価した。液漏れが発生しなかったものを〇、液漏れが発生したものを×で示した。結果を表2に示す。
【0135】
(不溶性微粒子の評価)
第十七改正日本薬局方 一般試験法6.07注射剤の不溶性微粒子試験法に準拠して不溶性微粒子の評価を実施した。得られた摺動性ゴム材と5mL用のCOP樹脂外筒を微粒子試験用水を用いて清浄した。樹脂外筒に摺動性ゴム材及びプランジャを装着し、微粒子試験用水5mLを吸引後、正常な容器に排出した。この操作を10セット実施し、得られた液を合一した後、2分間放置して気泡を抜き、試験液とした。試験液を、液中パーティクルカウンター(KL-05:リオン株式会社製の商品名)にて、希釈率1、吸引流量:25mL、測定容量:5mLの条件において、粒子径10μm以上及び25μm以上の粒子数を4画分計測し、最初の画分は棄却し、残りの3画分の計測値から試験液の平均粒子数を求め、摺動性ゴム材1個当たりの微粒子数を計算した。その結果を表2に示す。
【0136】
(比較例4)
界面改質層を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様に摺動性ゴム材を得て、同様にして評価した結果を表2に示す。
【0137】
【0138】
表2から明らかな通り、界面改質層を形成した実施例2では、摺動抵抗が小さく、漏れ性が良く、不溶性微粒子が少なく、優れた物性を示していた。一方、界面改質層を形成しなかった比較例4では、硬化阻害によりコーティング層の密着が弱く、摺動性ゴム材をCOP樹脂外筒に取付けた際にコーティング層の剥離が起こり、測定結果を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材は、薬液を吸入してから押し出して患者へ注射するシリンジや、薬液を予め封入しておき用時に押し出して患者に注射し又は輸液に注入するプレフィルドシリンジや、採血用注射器に用いられる、医療用のガスケットをはじめとする摺動性の各種ゴム部品の前駆材として、用いることができる。
【0140】
本発明のシリコーンゴム上塗りコーティング層担持摺動性ゴム材用前駆材を製造する方法は、安価な原材料を用いて、簡便な操作により、高品質の摺動性ゴム材を、簡易に大量かつ歩留まり良く製造する前駆材を得るのに、有用である。