(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】止血弁付Y型コネクタ。
(51)【国際特許分類】
A61M 39/06 20060101AFI20240124BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61M39/06 100
A61M25/09 530
A61M39/06 110
(21)【出願番号】P 2019204962
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 貴生
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05941499(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264105(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0259200(US,A1)
【文献】特開2005-261759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/06
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤ又はカテーテル等の線状に形成された導入部材が挿通する通路部を長手方向に有する主管部及び前記主管部から側方方向に延びた側管部を有する本体部と、
前記本体部に挿通される前記導入部材が挿通可能な挿通部を有するとともに、血液の流出を防止する止血弁と、
前記止血弁の前記挿通部を広げ、前記導入部材を通過しやすくする押子と、
前記押子を手動で押圧する押圧部と、手動で操作する操作部と、を有するレバー部材と、
を備え、
前記レバー部材は、一方側端部が前記押子の側方又は側方下方にて回動自在に設けられたヒンジ部を備えており、前記操作部は、前記押子の上方を介して反対側に配置されており、前記本体部を握った場合に指で操作可能な位置に設けられており、かつ
前記主管部の中心軸に対して回転可能に形成されていることを特徴とする止血弁付Y型コネクタ。
【請求項2】
前記レバー部材は、前記押圧部と前記操作部との間で屈曲して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の止血弁付Y型コネクタ。
【請求項3】
前記レバー部材は、前記本体部から着脱可能に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の止血弁付Y型コネクタ。
【請求項4】
前記押圧部は、曲面で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の止血弁付Y型コネクタ。
【請求項5】
前記レバー部材には、前記押子を押圧した後に初期位置に復帰することを補助する復帰用部材を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の止血弁付Y型コネクタ。
【請求項6】
前記レバー部材は、前記押子を開放するように前記操作部を前記ヒンジ部側に持ってくることができるように、前記押子の前記導入部材を挿通する導入部材挿通孔の側方に配置されており、前記レバー部材と前記導入部材とが干渉しないように作製されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の止血弁付Y型コネクタ。
【請求項7】
前記レバー部材は、前記導入部材を内部に挿通可能な挿通溝が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の止血弁付Y型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血弁付Y型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガイドワイヤやカテーテルを挿入したり又は引いたりする操作を容易にするために、止血弁付Y型コネクタが使用されている。止血弁付Y型コネクタとしては、カテーテルを通す筒状のメインブランチから、液剤注入用である筒状のサブブランチが分岐したYコネクタにおいて、メインブランチの内部に、筒状で長手方向の圧縮により孔の径が縮小し、当該孔に通されたカテーテルを固定する固定弁を設けるとともに、カテーテルの通過を包み込み状態で許容し、血液の流出を防止可能な第1止血弁及び第2止血弁を設け、更に、メインブランチの基端側に、長手方向に移動可能な筒状のオープナーを設けるとともに、第1止血弁のみを、オープナーの移動範囲内に配置したものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、かかる止血弁付Y型コネクタは、第1止血弁にカテーテルを通すときに中央部がカテーテル挿入方向へ押し出されるように撓ませて挿入されることになる。このような構造を採用すると、止血弁に挿入されたカテーテルを挿入したり又は引いたりする際の抵抗が大きくなりやすいという問題点があった。また、固定弁は、長手方向への圧縮により孔の径を縮小させてカテーテルを固定する構造であることから、固定するための中心部の縮小する比率が小さく、固定できるカテーテルやガイドワイヤの太さに制限があった。また、固定弁を固定させるスクリューを回す際に比較的強い力が必要である上、カテーテルの固定力の微妙な調整が難しいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、止血弁にカテーテルやガイドワイヤ等の導入部材を挿入する際に、止血弁の導入部材の挿通部を広げる操作をレバー部材で行えるようにして、ガイドワイヤやカテーテルの太さに応じて挿入したり又は引いたりする際の操作性の向上を図ることができる止血弁付Y型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかる止血弁付Y型コネクタは、
ガイドワイヤ又はカテーテル等の線状に形成された導入部材が挿通する通路部を長手方向に有する主管部及び前記主管部から側方方向に延びた側管部を有する本体部と、
前記本体部に挿通される前記導入部材が挿通可能な挿通部を有するとともに、血液の流出を防止する止血弁と、
前記止血弁の前記挿通部を広げ、導入部材を通過しやすくする押子と、
前記押子を手動で押圧する押圧部と、手動で操作する操作部と、を有するレバー部材と、
を備え、
前記レバー部材は、一方側端部が前記押子の側方又は側方下方にて回動自在に設けられたヒンジ部を備えており、前記操作部は、前記押子の上方を介して反対側に配置されており、前記本体部を握った場合に指で操作可能な位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
止血弁にカテーテルやガイドワイヤ等の導入部材を挿入する際に、止血弁の導入部材の挿通部を広げる操作をテコの原理で押子を押圧可能なレバー部材で行えるようにしたことにより、押子を直接指で押圧する場合と比較して弱い力で操作することができ、かつ微妙な押子の押圧距離を操作することができる。そのため、導入部材を挿入する際に、血流の逆流を最小限にして導入部材を挿入することができる。
【0009】
また、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタにおいて、
前記レバー部材は、前記押圧部と前記操作部との間で屈曲して形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
かかる構成を採用することによって、レバー部材の操作部を指で操作しやすい位置に配置することができ、使い勝手のよい止血弁付Y型コネクタを提供することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタにおいて、
前記レバー部材は、本体部から着脱可能に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
レバー部材を本体部に対して着脱可能に形成することによって、押圧部を直接操作したい場合や、レバー部材が邪魔になる場合に取り外して使用することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタにおいて、
前記レバー部材は、主管部の中心軸に対して回転可能に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
かかる構成を採用することによって、使用者が使い勝手に応じて、レバー部材の位置を変更して操作することができる。また、スクリューキャップを回す場合にレバー部材の位置が移動することがないので、レバー部材を保持した状態でスクリューキャップを回転させることができる。
【0015】
さらに、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタにおいて、
前記押圧部は、曲面で形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
かかる構成を採用することによって、押圧部を常に押子の上面に接触させ、かつ押圧方向に近い方向に力を押子に与えることができる。
【0017】
さらに、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタにおいて、
前記レバー部材には、押子を押圧した後に初期位置に復帰することを補助する復帰用部材を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0018】
復帰用部材を設けることによって、止血弁の弾性力が弱い場合であっても迅速にレバー部材を初期位置に復帰させることができ、止血弁の機敏な開閉が可能になる。
【0019】
さらに、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタにおいて、前記レバー部材は、前記押子を開放するように前記操作部を前記ヒンジ部の側に持ってくることができるように、前記押子の前記導入部材を挿通する導入部材挿通孔の側方に配置されており、前記レバー部材と前記導入部材とが干渉しないように作製されていることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
かかる構成を採用することによって、押子による操作を行わない場合や、押子を直接操作したい場合に、レバー部材が邪魔にならない位置に配置することができる。
【0021】
さらに、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタにおいて、前記レバー部材は、前記導入部材を内部に挿通可能な挿通溝が形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
かかるレバー部材は、導入部材を超えてレバー部材を移動させることができないので、レバー部材を常に指で操作しやすい位置に置くことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる止血弁付Y型コネクタによれば、止血弁にカテーテルやガイドワイヤ等の導入部材を挿入する際に、止血弁の導入部材の挿通部を広げる操作をレバー部材で行えるようにして、ガイドワイヤやカテーテルの太さに応じて挿入したり又は引いたりする際の操作性の向上を図ることができる止血弁付Y型コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100の正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100の分解斜視図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100の止血弁60を示す斜視図であり、
図5Cは、止血弁60の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100のレバー部材85の位置を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100のレバー部材85が押子80を押圧する状態を示す側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100のレバー部材85に設けられた復帰用部材85gを示す側面図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100のレバー部材85の応用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明にかかる止血弁付Y型コネクタ100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、説明の便宜のため、特許請求の範囲及び明細書において、「基端側」及び「先端側」とは、止血弁付Y型コネクタ100に対して、
図1に示すように、上方側(手元側)を「基端側」といい、下方側(遠位端側)を「先端側」という。
【0026】
第1実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100は、
図1~
図3に示すように、主として主管部11及び側管部12とを有する本体部10と、本体部10の基端側に取り付けられる固定部材30と、クローザー40と、プッシャー50と、止血弁60と、スクリューキャップ70と、押子80と、レバー部材85を備えている。
【0027】
本体部10は、
図1又は
図3に示すように、基端側から先端側まで長手方向に延びた主管部11とこの主管部11の中位から側方方向へ延びた側管部12とを有する。主管部11は、
図3に示すように、ガイドワイヤ又はカテーテル等の細長い線状の導入部材20が挿通される長手方向に貫通した通路部11aを有しており、基端側は、固定部材30と、クローザー40及びプッシャー50の一部とが収納可能なように直径が長く拡開された拡開通路部11bが形成されている。側管部12は、薬液や造影剤等を注入するための部分であり、端部に薬剤注入器等が接続可能となるようにネジ溝12aが螺刻されている。
【0028】
固定部材30は、比較的長い時間、導入部材20を強く固定するために使用されるものであり、導入部材20を周囲から押し付けることによって固定することができる。固定部材30は、エラストマー、ゴム、シリコン等で作製され、
図4に示すように、基端側から先端側まで導入部材20が挿通される貫通孔31が形成された筒状に形成されている。
【0029】
クローザー40は、前述した固定部材30を締め付けるための部材であり、
図3又は
図4に示すように、内側へ可倒可能な複数の爪41が円筒形の基部42から上方に延設されている。爪41は、固定部材30の周囲に少なくとも一部が密着するように形成されており、爪41を内側へ可倒させて、固定部材30の貫通孔31を狭く締め付けることで導入部材20を固定することができる。
【0030】
プッシャー50は、クローザー40を締め付けて固定部材30を介して導入部材20を締め付ける機能と、止血弁60を支持する機能とを有する。プッシャー50は、中心に基端側から先端側へ貫通する貫通孔55が形成される。この貫通孔55は、底面側が上方側(基端側)に行くほど内径が狭くなるように形成されており、プッシャー50を先端側へ移動させることにより、貫通孔55の内面が固定部材30の先端又は/及びクローザー40の爪41を中心側に押圧し、固定部材30の先端又は/及びクローザー40の爪41を導入部材20側(中心方向)へ移動させて導入部材20を締め付けるようにして固定することができる。
【0031】
止血弁60は、導入部材20を挿入又は抜き取りするために固定部材30の固定を開放した際に、血液が逆流することを防止するためと、導入部材20を短期間固定して、随時、導入部材20を出し入れする場合に導入部材の締め付けを調整して導入部材20の出し入れをしやすくするための部材である。止血弁60は、
図5Aに示すように、全体が薄い円盤状に形成されており、導入部材20が挿入される部位の基端側の面には、中心から徐々に厚くなるように凹状に形成された止血弁凹部61が形成されている。止血弁凹部61は、
図5Cに示すように、少なくとも止血弁60の最も薄い部分βが止血弁60の最も厚い部分αの厚さの1/2以下の厚さとなるように円錐状又は球面状に形成される。より好ましくは1/3以下の厚さとなるように設けることが好ましい。これにより、中心から周囲方向にいくに従って止血弁60の弁が厚くなるように形成されるため、細いガイドワイヤのように剛性が低く挿入力が弱い場合には、中心の薄い部分から挿入させることができ、カテーテルのように剛性が比較的高く挿入力が強い場合には、ある程度厚みがある場所でも問題なく挿入させることができ、挿入させる部材の太さによって通過性を確保させつつ、止血性能を向上させることができる。止血弁60は、
図5Bに示すように、さらに、中心から放射方向に複数のスリット62が形成されている。好ましくは、基端側から途中まで切り込みを入れた上側スリット62aと、下端側から途中まで切り込みを入れた下側スリット62bがねじれの位置となるように配置するとよい。この切り込みによって中心に導入部材20が挿通可能な挿通部65が設けられる。なお、スリット62の数は特に限定するものではない。こうして作製された止血弁60は、プッシャー50の上段凹状部51bに配置される。
【0032】
止血弁60は、詳細は後述する押子80によって押されることによって挿通部65が広がり、導入部材20の抜き差しの摩擦力が弱くなり、又は摩擦力をなくして導入部材20を挿通しやすくすることができる。止血弁60は、押子80によって導入部材20への押圧力又は摩擦力を変更することができるように作製されていれば、その構成は特に限定するものではない。
【0033】
スクリューキャップ70は、固定部材30と、クローザー40と、プッシャー50と、止血弁60を本体部10に収納するための蓋部材としての機能を有するとともに、プッシャー50の位置を本体の長手方向(上下方向)に対して調整する機能を有する。スクリューキャップ70は、本体部10の基端側の外周に形成されたネジ山と係合可能なネジ山が内周に形成された筒状の部材であり、回転させることにより、プッシャー50を押し下げたり、引き上げたりすることができる。このスクリューキャップ70を締め付けることで、プッシャー50を押し下げ、上述したように貫通孔55の内面が固定部材30の先端又は/及びクローザー40の爪41を中心側に押圧して導入部材20を締め付けて固定することができる。
【0034】
押子80は、
図3に示すように、基端側に円盤部81を有し、この円盤部81からスクリューキャップ70内に延設された延設部82を有している。押子80の中心には、導入部材20を挿通可能な導入部材挿通孔86が設けられている。この押子80は、スクリューキャップ70に対して長手方向に移動可能に設けられており、押子80を押すと、延設部82の先端は、止血弁60を押圧して止血弁60の挿通部65を広くすることができる。すなわち、止血弁60の挿通部65を開くことにより、導入部材20を挿入しやすくしたり、固定されている導入部材20を開放して、挿入したり、引き出したりしやすくすることができる。この押子80は、延設部82の外周にスクリューキャップ70に形成された係合片72と係合可能な係合凹部84を有しており、押子80がスクリューキャップ70から完全に外れることが防止されている。
【0035】
レバー部材85は、一方側端部がスクリューキャップ70に対して、上下方向(
図2の矢印Aの方向)に対して回動可能に形成されたヒンジ部85aを有しており、その根元部分近傍には、
図6に示すように、押子80の上面を押圧する押圧部85bが設けられている。他方側は、
図2に示すように、手動でレバー部材85を操作することができる操作部85cが設けられている。レバー部材85は、他方側端部(操作部85c)が押子80の上方(基端側)を超えて、ヒンジ部85aの反対側であって止血弁付Y型コネクタ100を持った場合に指で操作可能な位置となるように、屈曲して形成されている。従って、レバー部材85を指で本体部10に近づけるように操作することで、押子80を押して止血弁60の挿通部65を開くことができ、離すことで止血弁60の弾性力によってレバー部材85は復帰することになる。このようにレバー部材85を設けることによって、てこの原理によって、押子80の押圧を弱い力で行うことができ、かつ押子80の微妙な距離の挿入を可能にすることができる。そのため、止血弁60の挿通部65の微妙な開き具合を操作することができる。なお、操作部85cは、押子80を完全に押圧した場合に、本体部10と平行若しくは、スクリューキャップ70又は本体部10に当接するように作製するとよい。ヒンジ部85aは、スクリューキャップ70に直接設けても構わないが、
図4に示すように、別途、スクリューキャップ70に取り付けることが可能なリング部85d等の中間部材を介して設けても良い。本実施形態においては、
図3に示すように、リング部85dの外周にヒンジ部85aを設けて、固定リング85eで上方からリング部85dがスクリューキャップ70に回転自在となるように固定している。従って、レバー部材85は、主管部11の中心軸Cに対して回転可能となる。このように回転可能に設けることによって、使用者の使い勝手のよい位置にレバー部材85を回転させることができる。また、スクリューキャップ70を回した場合にレバー部材85の位置が移動することないので、レバー部材85を保持した状態でスクリューキャップ70を回転させることができる。また、レバー部材85のヒンジ部85aは、リング部85dに形成された円筒状の凹部と、レバー部材85に設けられた円筒状の凸部を嵌合して形成されている。このヒンジ部85aの下方には、
図2に示すように、取外し用溝85fが形成されていて、レバー部材85のヒンジ部85aを下方に強く押すことによって、リング部85dの凹部とレバー部材85の凸部との嵌合が外れてレバー部材85をリング部85dから外すことができる。逆に下方からはめ込むことにより、レバー部材85を取り付けることができる。このようにレバー部材85は、着脱自在に設けられている。このように、レバー部材85を本体部10に対して着脱自在に設けることによって、レバー部材85が不要な場合には、取り外して使用することができる。また、押圧部85bは、
図7A及び
図7Bに示すように、押子80の押圧位置に関わらず押子80の上面を押圧することができるように、凸状の曲面に形成してもよい。このように曲面に形成することによって、押子80に対して挿入方向に力を加えることができる。なお、レバー部材85には、押子80を押圧した後の復帰を補助するための復帰用部材85gを設けても良い。例えば、復帰用部材85gとしては、
図8Aに示すように、押子80の円盤部81の下面と固定リング85eの上面との間にばね部材や弾性体等を配置したり、
図8Bに示すように、ヒンジ部85aにねじりばねを設けたり、
図8Bの円の中に示したように、レバー部材85とリング部85dとの間に金属、ゴム又は樹脂等の板ばね状の弾性体又は樹脂ヒンジ等を配置する等が挙げられる。このような復帰用部材85gを設けることによって、止血弁60の弾性力が弱い場合であっても迅速にレバー部材85を復帰させることができ、止血弁60の機敏な開閉が可能になる。
【0036】
また、レバー部材85は、
図6に示すように、押子80を開放するようにレバー部材85の操作部85cを押子80に対してヒンジ部85a側に持ってくることができるように、押子80の導入部材20を挿通する導入部材挿通孔86の側方に配置してもよい。このように作製することで、レバー部材85が押子80を開放するように移動した際にも導入部材20と干渉することを防止することができ、押子80による操作を行わない場合や、直接に押子80を操作したい場合に、レバー部材85が邪魔にならないようにすることができる。
【0037】
さらに、本体部10の先端には、任意にローテーター95を設けても良い。ローテーター95は、
図3に示すように、導入部材20が挿通される基端側と先端側が貫通した貫通孔95aと、その周囲に形成された円形溝95bとを有している。この円形溝95bには、ガイディングカテーテルその他のカテーテルを接続することができる。
【0038】
以上のように作製された止血弁付Y型コネクタ100の使用方法の一例を示す。まず、ローテーター95の円形溝95bにガイディングカテーテル(図示しない。)を取り付ける。この状態でガイディングカテーテルを治療部位まで挿入する。その後、固定部材30を開いた状態でガイドワイヤを挿入する。この際に止血弁60は、術者によってレバー部材85を操作して押子80を若干押した状態で止血弁60を血流が逆流しない程度にわずかに開いた状態で挿入するとよい。そしてガイドワイヤが治療部位まで到達した後、カテーテルをガイドワイヤに沿って挿入する。この際も術者によってレバー部材85を操作してガイドワイヤ挿入時と同様に止血弁60の開き具合を調整して挿入するとよい。その後、スクリューキャップ70をねじることでプッシャー50を先端側に押し下げると、クローザー40の爪41が内側へ押圧され、固定部材30の周囲から中心方向へ押圧し、固定部材30の中心が狭くなりカテーテルを確実に固定することができる。この状態から、ガイドワイヤを引き抜く。この際には、止血弁60が閉じているので、血流が逆流する可能性を低減することができる。その後、治療方法に応じて、バルーンカテーテルや、ステント等の治療器具をカテーテルのルーメンを利用して挿入して治療がなされる。治療が終了した後に、カテーテルを引き抜く際には、固定部材30を開放する。これにより血流は止血弁60まで逆流するが、止血弁60で止められ、それ以上逆流することが防止される。そして、カテーテルを引き抜く際にも、レバー部材85を操作して引き抜きやすくしてカテーテルを引き抜き、治療が終了する。
【0039】
本実施形態にかかる止血弁付Y型コネクタ100によれば、導入部材20を挿通させる場合に、止血弁60によって挿通される際の抵抗をレバー部材85で操作することができるので、導入部材20の太さにかかわらず挿入、引き抜きのしやすいものとすることができる。また、その際にレバー部材85で押子80をてこの原理で操作するため、弱い力でかつ微妙な操作を行うことが可能になる。
【0040】
なお、上述した実施形態においては、押子80を開放するようにレバー部材85の操作部85cを押子80に対してヒンジ部85a側に持ってくることができるように、押子80の導入部材20を挿通する導入部材挿通孔86の側方に配置されているように形成したが、
図9に示すように、レバー部材85は、導入部材20を内部に挿通可能な挿通溝87が形成されているものを使用してもよい。このようなレバー部材85を使用することによって、不意にレバー部材85の操作部85cが操作位置から外れることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述した実施の形態で示すように、ガイドワイヤやカテーテルによる手術における補助具として利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…本体部、11…主管部、11a…通路部、11b…拡開通路部、12…側管部、12a…ネジ溝、20…導入部材、30…固定部材、31…貫通孔、40…クローザー、41…爪、42…基部、50…プッシャー、51b…上段凹状部、55…貫通孔、60…止血弁、61…止血弁凹部、62…スリット、62a…上側スリット、62b…下側スリット、65…挿通部、70…スクリューキャップ、72…係合片、80…押子、81…円盤部、82…延設部、84…係合凹部、85…レバー部材、85a…ヒンジ部、85b…押圧部、85c…操作部、85d…リング部、85e…固定リング、85f…取外し用溝、85g…復帰用部材、86…導入部材挿通孔、87…挿通溝、95…ローテーター、95a…貫通孔、95b…円形溝、100…止血弁付Y型コネクタ