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  • 特許-滑り軸受 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】滑り軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20240124BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20240124BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F16C33/10 Z
F16C33/20 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020014909
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121748
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】319012646
【氏名又は名称】株式会社吉武製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】吉武 正人
(72)【発明者】
【氏名】松井 和雄
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3187429(JP,U)
【文献】登録実用新案第3172807(JP,U)
【文献】実開昭54-161849(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26
33/00-33/28
A01G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の中央部材の両側に環状の滑動輪をそれぞれ配置し、これらの滑動輪の軸方向外側に覆い部材をそれぞれ配置した滑り軸受であって、
前記中央部材は、円筒状の外輪と、該外輪の両端の開口部に径方向内側に向けて設けた環状平面部と、該環状平面部の径方向内側に連続し、軸方向内側に延出した後、径方向内側に落ち込み、前記外輪の中心軸を含む平面を断面とした際に略L字状をした段部とを有し、
前記滑動輪は薄肉円筒部と厚肉円筒部とを一体とした合成樹脂材から成る略円筒体であり、前記薄肉円筒部は、前記中央部材の段部の径方向先端部により形成される円孔に挿入する部位を有し、前記厚肉円筒部は、前記中央部材の段部に当接する軸方向の外側部位を厚肉とすると共に、前記薄肉円筒部の内径と同径の内径を有し、前記厚肉円筒部の内外面及び側面の少なくとも一部は円周方向に沿って連続した摺動面であり、
前記覆い部材は、前記滑動輪の前記薄肉円筒部内、前記厚肉円筒部内に挿入する円筒部と、該円筒部の先端を閉塞し、軸棒体を挿入するために設けた孔部を有する底板と、前記円筒部の入口側の軸方向外側に設け、前記滑動輪の前記厚肉円筒部を覆うと共に前記中央部材の前記環状平面部と前記厚肉円筒部とに当接するフランジ部とを有し、
前記覆い部材の底板同士を突き合わせて連結し、前記孔部に前記軸棒体を挿入可能としたことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
前記薄肉円筒部の外径は、前記円孔の直径と略一致し、前記厚肉円筒部の外径は、前記段部の側面の内径と略一致することを特徴とする請求項1に記載の滑り軸受。
【請求項3】
前記厚肉円筒部の軸方向内側及び軸方向外側の角部は、滑らかな曲面とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の滑り軸受。
【請求項4】
前記厚肉円筒部の周囲は略密閉空間としたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の滑り軸受。
【請求項5】
前記中央部材の一部に他部材と連結する固定部を設けたことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の滑り軸受。
【請求項6】
前記厚肉円筒部の周囲にグリス溜まりとなる複数個の凹部を形成したことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に合成樹脂製の滑動輪を備えた滑り軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
滑り軸受は多くの用途で使われているが、高精度、大負荷を必要とするものには、金属製のボールベアリングが使用され、精度等をさほど要求されないものには、金属製のボールの代りに樹脂が使用されていることが多い。
【0003】
樹脂を使用した滑り軸受としては、例えば特許文献1の滑り軸受が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-180896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の滑り軸受は、機構が複雑で精密機械等での使用には適している。しかし、精度はさほど必要ではなくとも、大荷重、振動に耐え得て、屋外においても、長期間使用可能な構造のものが要求されることがある。
【0006】
また、特許文献1の滑り軸受は、内部の合成樹脂製の摺動部材が摩耗して、交換する際には、保持部材からの摺動部材を取り外して、分解する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題に応え、低コストで製造が容易でありながら、耐荷重性、耐振動性に富み、滑動輪の交換を構造物に固定したままで実施することができる滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る滑り軸受は、1個の中央部材の両側に環状の滑動輪をそれぞれ配置し、これらの滑動輪の軸方向外側に覆い部材をそれぞれ配置した滑り軸受であって、前記中央部材は、円筒状の外輪と、該外輪の両端の開口部に径方向内側に向けて設けた環状平面部と、該環状平面部の径方向内側に連続し、軸方向内側に延出した後、径方向内側に落ち込み、前記外輪の中心軸を含む平面を断面とした際に略L字状をした段部とを有し、前記滑動輪は薄肉円筒部と厚肉円筒部とを一体とした合成樹脂材から成る略円筒体であり、前記薄肉円筒部は、前記中央部材の段部の径方向先端部により形成される円孔に挿入する部位を有し、前記厚肉円筒部は、前記中央部材の段部に当接する軸方向の外側部位を厚肉とすると共に、前記薄肉円筒部の内径と同径の内径を有し、前記厚肉円筒部の内外面及び側面の少なくとも一部は円周方向に沿って連続した摺動面であり、前記覆い部材は、前記滑動輪の前記薄肉円筒部内、前記厚肉円筒部内に挿入する円筒部と、該円筒部の先端を閉塞し、軸棒体を挿入するために設けた孔部を有する底板と、前記円筒部の入口側の軸方向外側に設け、前記滑動輪の前記厚肉円筒部を覆うと共に前記中央部材の前記環状平面部と前記厚肉円筒部とに当接するフランジ部とを有し、前記覆い部材の底板同士を突き合わせて連結し、前記孔部に前記軸棒体を挿入可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の滑り軸受は、中央部材と、覆い部材と、中央部材と覆い部材との間に介在する2個の滑動輪とを備えた簡素な構造であって、製造が容易であり、大きな荷重及び振動に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の滑り軸受の正面図である。
図2】断面図である。
図3】分解斜視図である。
図4】使用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
実施例に係る滑り軸受はラジアル軸受であり、図1は実施例の正面図、図2は断面図、図3は分解斜視図である。滑り軸受は、1個の環状の中央部材1と、2個の環状の滑動輪2、2’と、2個の環状の覆い部材3、3’とを重ね合わせて成る。中央部材1の両側に滑動輪2、2’が配置され、これらの滑動輪2、2’の外側にそれぞれ覆い部材3、3’が配置されている。
【0012】
中央部材1は、短円筒状の外輪1aを主体とし、この外輪1aの開口部の端縁の更に内側に幅狭の環状平面部1b、1b’が設けられている。環状平面部1b、1b’の内側には、内部に落ち込む断面略L字状の段部1c、1c’が連続しており、段部1c、1c’の先端部には、円孔1d、1d’が形成されている。なお、円孔1d、1d’同士の間は空隙とされているが、この部分は円筒状とし両側に円孔1d、1d’を配置することもできる。また、外輪1aの外側には、この滑り軸受を構造物に固定するための1組の板体状の固定部1e、1fが、略V字状に設けられている。
【0013】
中央部材1は、材質は特に限定されないが金属製や剛性を有する合成樹脂製にすることができる。金属製の場合には、幾つかの部材に分割して加工し、これらを溶接などにより接合してもよい。
【0014】
滑動輪2、2’は合成樹脂から成る略短円筒体である。これらの滑動輪2、2’は、中央部材1の円孔1d、1d’に挿入する部位の薄肉円筒部2aと、この薄肉円筒部2aと連続する厚肉円筒部2bとから成っている。
【0015】
薄肉円筒部2aの外径は、円孔1d、1d’の直径と略一致し、厚肉円筒部2bは外径は、中央部材1の段部1c、1c’の側面の内径と略一致する。そして、薄肉円筒部2aと厚肉円筒部2bとの内径は同径とされている。
【0016】
薄肉円筒部2aの軸方向の長さは、円孔1d、1d’同士の間の距離の1/2よりも短くされ、厚肉円筒部2bの長さは段部1c、1c’の深さとほぼ同程度とされている。また、厚肉円筒部2bの内外面には、複数の凹部2c、2dが形成されていて、後述するグリスの溜部とされている。
【0017】
滑動輪2、2’を形成する合成樹脂としては、耐摩耗性や衝撃特性に優れ、自己潤滑性を有する樹脂、例えばポリアセタ-ル、好ましくはポリオキシメチレン(別名POM又はジュラコン)から成る。なお、この滑動輪2、2’を形成する樹脂には、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維状補強材を配合することができる。
【0018】
覆い部材3、3’は、円筒部3aと、底板3bと、フランジ部3cとから構成されている。円筒部3aは滑動輪2、2’の薄肉円筒部2a、厚肉円筒部2b内に挿入するため部位であり、円筒部3aの外径と厚肉円筒部2bの内径とは、略一致する。そして、円筒部3aの長さは滑動輪2、2’の軸方向の長さよりも稍々長くされている。
【0019】
底板3bは円筒部3aの先端を閉塞するように設けられ、底板3bには他部材である例えば断面四角形の軸棒体を挿入するための四角形の孔部3dが形成されている。また、底板3bの孔部3dの周囲の辺部には、複数個のねじ挿通孔3eが設けられている。なお、孔部3dは断面四角形の軸棒体を挿入するために四角形とされているが、軸棒体を挿入しても空転しなければ、他の適宜の形状であってもよい。
【0020】
また、フランジ部3cは円筒部3aの縁部から円筒部3aの軸芯方向に対して直交する外方向に円環状に突出して設けられている。フランジ部3cは滑動輪2、2’の厚肉円筒部2bを覆うと共に、フランジ部3cの端縁は中央部材1の環状平面部1b、1b’に当接している。
【0021】
覆い部材3、3’の底板3b同士は、結合時にねじ挿通孔3eを介してねじ4により一体に連結可能とされている。なお、図2では、上側の底板3b同士をねじ4により連結することを図示しているが、下側の底板3b同士はねじ4による連結を省略している。
【0022】
これらの覆い部材3、3’は、中央部材1同様に金属製や剛性を有する合成樹脂製とすることができ、金属製の場合にはプレス加工品であってもよい。
【0023】
なお、滑動輪2、2’の厚肉円筒部2bの内側の角部は、中央部材1の段部1c、1c’の角部と当接し、滑動が容易となるように滑らかな曲面とされている。また、滑動輪2、2’の厚肉円筒部2bの外側の角部は、覆い部材3、3’のフランジ部3cと当接する滑らかな曲面とされている。これらに対応して、中央部材1の段部1c、1c’の内表面、覆い部材3、3’のフランジ部3cの内面も曲面とされている。
【0024】
実施例の滑り軸受を組み立てるには、先ず中央部材1の両側から、円孔1d、1d’内に滑動輪2、2’の薄肉円筒部2aを挿入する。このとき、厚肉円筒部2bの厚肉部が段部1c、1c’に当接して位置決めされる。滑動輪2、2’の薄肉円筒部2aの長さは、両側の薄肉円筒部2a同士が接触しない大きさとされている。なお、滑り軸受内に充填するグリスは、この組立過程中に、厚肉円筒部2bの周囲に塗布し、更に好ましくは凹部2c、2d内に充填しておく。
【0025】
次いで、滑動輪2、2’の厚肉円筒部2b、薄肉円筒部2aの内筒内に覆い部材3、3’の円筒部3aを挿入して、フランジ部3cにより、滑動輪2、2’を覆うと共に、フランジ部3cの周縁は環状平面部1b、1b’に当接する。
【0026】
最後に、両側の覆い部材3、3’の底板3b同士を突き合わせて、四角状の孔部3d同士の位置合わせを行い、ねじ挿通孔3eにねじ4を挿通して覆い部材3、3’同士の連結を固定する。この覆い部材3、3’の被着により、厚肉円筒部2bの周囲は略密閉空間となり、グリスが漏出することがなくなる。
【0027】
滑動輪2、2’の摺動面には、グリスなどの潤滑剤を塗布することが好ましく、上述のようにグリスを塗布することで、滑動輪2、2’の摩擦トルクを低減できる。この結果、滑動輪2、2’や周囲の部材の摩耗や変形を防止し、延命することができる。グリスを保持する凹部2c、2dにより、グリスは長期間に渡り、摺動面に安定して供給される。
【0028】
図4はこの滑り軸受の使用状態の説明図である。滑り軸受は、例えば温室の遮光用、断熱用カーテンを上下させる巻取軸である軸棒体Aの回転を支持するために使用され、軸棒体Aには下方に大きな荷重が掛けられている。
【0029】
中央部材1は温室の構造物Bに固定部1e、1fを介して固定され、断面四角形の軸棒体Aが、覆い部材3、3’の四角形の孔部3dに挿通されている。軸棒体Aは図示しない電動機に連結されており、滑り軸受を介して構造物Bに回転自在に支持されている。
【0030】
軸棒体Aが電動機により回転駆動されると、孔部3dを介して覆い部材3、3’が連動して回転する。この場合に、覆い部材3、3’は、中央部材1に対し滑動輪2、2’を介在して回転することになる。滑動輪2、2’は自己潤滑性を有すると共に、グリスを塗布していることもあって、中央部材1に対して円周方向に滑動することにより、覆い部材3、3’の円滑な回転を助長する。特に、本実施例に係る滑り軸受は、2個の滑動輪2、2’を有するので、軸棒体Aによる半径方向の大荷重を十分に支持することができる。
【0031】
滑動輪2、2’を摩耗等により交換しなければならない場合には、構造物Bに取り付けたまま軸棒体Aから、交換する覆い部材3、3’及び滑動輪2、2’の片側を軸方向に移動させて取り外し、新しい覆い部材3、3’及び滑動輪2、2’の片側を軸棒体Aに移動させて取り付けることができる。新しい覆い部材3、3’及び滑動輪2、2’の片側を取り付ける際は、残っている側の覆い部材3、3’及び滑動輪2、2’の片側によって、軸棒体Aに滑り軸受が保持されているので、容易に取り付け作業を完了できる。
【0032】
従来の滑り軸受は、摺動部材を交換する際は軸棒体から滑り軸受を取り外す必要があったのに対して、本実施例の滑り軸受は、軸棒体Aに滑り軸受を取り付けたまま、片側の滑動輪2、2’を交換することが可能である。
【0033】
そして、本発明の滑り軸受は、中央部材1と、覆い部材3、3’と、中央部材1と覆い部材3、3’との間に介在する2個の滑動輪2、2’とを備え、簡素な構造であり、製造が容易であり、大きな荷重及び振動に耐えることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 中央部材
1a 外輪
1b、1b’ 環状平面部
1c、1c’ 段部
1d、1d’ 円孔
1e、1f 固定部
2、2’ 滑動輪
2a 薄肉円筒部
2b 厚肉円筒部
2c、2d 凹部
3、3’ 覆い部材
3a 円筒部
3b 底板
3c フランジ部
3d 孔部
3e ねじ挿通孔
図1
図2
図3
図4