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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240124BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240124BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240124BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/08 302
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020016904
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021122773
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154634
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 みさ子
(72)【発明者】
【氏名】岡 力矢
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162478(JP,A)
【文献】特開2018-161631(JP,A)
【文献】特開2018-028116(JP,A)
【文献】特開2010-155245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極を有するアノード室と陰極を有するカソード室とを少なくとも有する2室型又は3室型の電気分解部と、
前記アノード室及び前記カソード室のうち、少なくとも一方である原水供給室に対して原水を供給する原水供給部と、
前記電気分解部によって生成された電解水を排出する電解水排出部と、
電解質が供給される電解質供給室に対して電解質が溶解した電解質水溶液を供給する供給経路と、前記電解質供給室から排出される電解質水溶液が通る戻り経路と、前記供給経路に対して電解質水溶液を供給すると共に該戻り経路からの電解質水溶液が戻る循環タンクとを有する循環ラインと、
前記循環ラインに対して電解質水溶液を供給する電解質供給部と、
前記循環タンクから電解質水溶液を排出する電解質排出ラインと
を備え、
前記電解質排出ラインは、
前記循環タンクの接続位置から略水平方向に伸びた水平配管の後段側で少なくとも2以上に分岐して第1の配管及び第2の配管を構成し、前記第1の配管は、前記接続位置と同じ又は上側において中和配管に接続し、前記第2の配管は、前記接続位置より下側において前記中和配管に接続される
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記循環タンクは、
オーバーフローにより電解質水溶液を排出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記電解水生成装置は、前記原水及び前記電解質水溶液、前記電気分解部に供給されてから、前記電気分解部によって生成された電解水を排出する前記電解水排出部又は前記電解質排出ラインから排出されるまでの間、外部と接触しない密閉系である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記第1の配管は、
前記中和配管との接続部分における下側の接続端部が、前記循環タンクとの接続部分における下側の接続端部よりも下方に位置している
ことを特徴とする請求項3に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記循環タンクには、
洗浄用の洗浄原水が供給される洗浄配管が接続されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記電解質供給部は、
前記供給経路に対して前記電解質水溶液を供給する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記循環タンクは、
サイフォン現象を利用して前記循環タンク内の電解質水溶液を排出する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記水平配管は、
前記循環タンク側から下側に延びる吸上配管が延設されており、
前記第1の配管に開閉バルブが設けられている
ことを特徴とする請求項7のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項9】
前記電解質供給部は、
前記循環タンクに対して前記電解質水溶液を供給する
ことを特徴とする請求項8に記載の電解水生成装置。
【請求項10】
前記中和配管では、前記第1の配管との第1の接続点から、前記第2の配管との第2の接続点に向かって原水が流れる請求項1~9のいずれかに記載の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば酸性電解水又はアルカリ性電解水、若しくはその両方を生成する電解水生成装置や、微細気泡を含む電解水である気泡電解水を製造する気泡電解水生成装置に対して好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、電解水生成装置としては、電極を有するカソード室及びアノード室を薄い膜状の隔膜で隔てることにより、隔膜を介して電解質を行き来させる構成が一般的である(例えば特許文献1参照)。このような電解水生成装置のうち、循環タンクを設けて電解質水溶液を繰返し使用する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-168762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる構成の電解水生成装置では、繰返し使用された電解質水溶液が濃縮されていくため、貯留されている循環タンクにおいてガスが発生しやすく、該発生したガスが溜め込まれやすいという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、循環タンクにおいてガスを溜め込みにくくできる電解水生成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明の電解水生成装置は、
陽極を有するアノード室と陰極を有するカソード室とを少なくとも有する2室型又は3室型の電気分解部と、
前記アノード室及び前記カソード室のうち、少なくとも一方である原水供給室に対して原水を供給する原水供給部と、
前記電気分解部によって生成された電解水を排出する電解水排出部と、
電解質が供給される電解質供給室に対して電解質が溶解した電解質水溶液を供給する供給経路と、前記電解質供給室から排出される電解質水溶液が通る戻り経路と、前記供給経路に対して電解質水溶液を供給すると共に該戻り経路からの電解質水溶液が戻る循環タンクとを有する循環ラインと、
前記循環ラインに対して電解質水溶液を供給する電解質供給部と、
前記循環タンクから電解質水溶液を排出する電解質排出ラインと
を備え、
前記電解質排出ラインは、
前記循環タンクの接続位置から略水平方向に伸びた水平配管の後段側で少なくとも2以上に分岐して第1の配管及び第2の配管を構成し、前記第1の配管は、前記接続位置と同じ又は上側において前記中和配管に接続し、前記第2の配管は、前記接続位置より下側において前記中和配管に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、循環タンクにおいてガスを溜め込みにくくできる電解水生成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態における電解水生成装置の構成を示す略線図である。
図2】循環タンクと配管との位置関係の説明に供する略線図である。
図3】循環タンク並びに水平配管及び下側配管の構成を示す略線図である。
図4】第2の実施の形態における電解水生成装置の構成を示す略線図である。
図5】第2の実施の形態における循環タンクにおける電解質水溶液の排出の説明に供する略線図である。
図6】第3の実施の形態における循環タンクにおける電解質水溶液の排出の説明に供する略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0010】
<第1の実施の形態>
図1において10は、全体として本発明の電解水生成装置を示している。電解水生成装置10は、3室型の電気分解部12によって電気分解を行い、電解水を生成する。電解水生成装置10では、電気分解部12で使用された電解質水溶液が循環タンク13に戻って再利用されると共に、新しい電解質水溶液が電解質供給部14から供給されるようにさなれている。
【0011】
なお図示しないが、電解水生成装置10は、図示しないMPU(Micro Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成される制御部20(図示せず)が電解水生成装置10の全体を統括的に制御するようになされている。
【0012】
原水供給部11は、制御部20による開閉機構41の開閉制御により、電解水を生成するときに原水を電気分解部12に供給する。また、接続された水道水などの水圧が高すぎる場合には、減圧バルブなどの減圧機構を構成しても良い。
【0013】
原水としては、水道水や工業用水、純水、精製水など種々のものを使用できる。また、原水供給部11の一部として各種フィルターを設置することにより、不純物などの不要成分を除去した水を使用しても良い。
【0014】
電気分解部12は、陰極24を有するカソード室21と、陽極25を有するアノード室22と、カソード室21及びアノード室22との中間に位置し隔膜26及び27によって隔てられた中間室23とを有する3室型の電解槽である。電解水生成装置10は、原水及び電解質水溶液が供給されてから電解水及び電解質水溶液が排出されるまでの全経路において圧力が開放されない密閉系であり、制御部20によってカソード室21、アノード室22、中間室23の圧力バランスが適正に調整されている。
【0015】
循環タンク13は、電解質水溶液を貯留するタンクである。電解質水溶液が含有する電解質としては特に制限されず、水に溶解して電解質としての特性を示す既知の化合物を適宜使用することができる。便宜上、電解質として塩化ナトリウムを使用した場合について説明するが、これに限られない。
【0016】
電解水生成装置10では、通常時において制御部20の制御によってポンプ47が駆動され、循環タンク13を供給元として電解質水溶液が必要量だけ電気分解部12へ供給される。電解質供給部14は、循環タンク13よりも容量の大きいタンクを有しており、未使用の電解質水溶液が貯留されている。
【0017】
すなわち、電気分解部12は、制御部20によって開閉機構41の開閉が制御され、原水供給部11から配管42及び43を介してカソード室21及びアノード室22に原水が供給されると、電気分解を行い、配管44を介してアルカリ性電解水をアルカリ性電解水排出口17へ供給する一方、配管45を介して酸性電解水を酸性電解水排出口18へ供給する。この結果、アルカリ性電解水排出口17からはアルカリ性電解水が、酸性電解水排出口18からは酸性電解水が供給される。なお、アルカリ性電解水又は酸性電解水の一方を使用しない場合には、アルカリ性電解水排出口17又は酸性電解水排出口18が廃棄用の配管に接続され、廃棄されてもよい。
【0018】
このとき、循環タンク13から配管48を介して中間室23に供給された電解質水溶液中の電解質が隔膜26及び27を介してカソード室21及びアノード室22に供給され、電解質の一部が消費されると共に、配管46を介して循環タンク13へと戻される。すなわち、電解質水溶液は、循環タンク13、配管48、中間室23、配管46からなる循環ラインを繰返し循環する。圧力調整弁50は、循環ラインにおける圧力を所定の範囲内になるように調整する。
【0019】
循環タンク13の上部には、電解質水溶液を排出するための水平配管52を含む電解質排出ラインが設置されており、電解質排出ラインを介してオーバーフローした電解質水溶液が排出される。なお電解質排出ラインの詳細について後述する。
【0020】
電解質供給部14は、循環タンク13と中間室23とを繋ぐ配管48に対して配管51が接続されており、配管48を介して中間室23に電解質水溶液を供給する。ポンプ49は、配管51に設けられており、循環タンク13から電解質水溶液が供給されるときに使用されるポンプ47とは別に設けられている。
【0021】
制御部20(図示せず)は、ポンプ47及びポンプ49を駆動し、その圧力比率によって循環タンク13及び電解質供給部14から供給される電解質水溶液の割合を調整しながら、電気分解部12に対して電解質水溶液を供給させる。
【0022】
このとき、中間室23の電解質水溶液は押し出され、配管46を介して循環タンク13に戻る。ここで、電解質供給部14から供給された未使用の電解質水溶液の分だけ、循環ラインにおける電解質水溶液の全体の容量が増大するため、循環タンク13における電解質水溶液の一部はオーバーフローにより配管52から排出される。
【0023】
このとき、排出されるのは既に循環タンク13又は配管46内(すなわち中間室23より後段側)に充填されていた電解質水溶液となり、未使用の電解質水溶液が混合することなく循環済の電解質水溶液が確実に排出される。また、循環タンク13には水位センサ54が設置されており、循環タンク13内の電解質水溶液の水位が適正に保たれているか否かが常に監視されている。
【0024】
なお制御部20は、電気分解部12の稼動時間に応じて定期的にポンプ47及びポンプ49を切替えることにより、定期的に未使用の電解質水溶液を中間室23に投入してもよい。
【0025】
次に、電解質排出ラインについて説明する。
【0026】
電解質排出ラインは、中和槽29に対し、循環タンク13から使用済みの電解質水溶液を排出する経路であり、水平配管52と、下側配管52Aと、中和配管57とを有している。
【0027】
中和配管57は、原水供給部11に繋がる配管42から分岐して延びる配管であり、開閉バルブ56が設置されている。開閉バルブ56が開状態にされると、原水供給部11から中和配管57へ原水(以下、これを中和原水と呼ぶ)が供給され、中和槽29に中和原水が注ぎ込まれる。また開閉バルブ56は、該開閉バルブ56を開状態とすることにより、全体の系の圧力を低下させる圧抜き弁としての作用も有している。
【0028】
図2(A)に示すように、中和配管57は、循環タンク13から一定の距離だけ離隔して配置されている。中和配管57は、循環タンク13から略水平に延びる水平配管52と、水平配管52から下側に分岐して該水平配管52より下側に位置する下側配管52Aが接続されている。
【0029】
水平配管52は、循環タンク13の上部(上方向から循環タンク13の高さの1/3未満)の部分に接続されており、循環タンク13から略水平に延びて中和配管57に接続されている。すなわち、循環タンク13の水位が水平配管52の下端より上昇した部分が、オーバーフローにより水平配管52へと侵入する。
【0030】
ここで、仮に、中和配管57に接続する配管が1本だった場合について、図3(A)及び(B)を用いて説明する。例えば図3(A)に示すように、水平配管52Xのみが中和配管57に接続されていた場合、中和配管57から循環タンク13へ向けて、中和原水が逆流してしまう可能性がある。
【0031】
一方、例えば図3(B)に示すように、水平配管52Yを一旦下側に曲げてから中和配管57に接続させることにより、中和配管57からの中和原水の流入を防止することが可能である。しかしながら、この場合、水平配管の上側に滞留したガスが流出しづらく、循環タンク13内にガスを溜めてしまう可能性が生じてしまう。このガスにより循環タンク13の内圧が上昇すると、中間室23の圧力が高くなってしまう恐れがある。
【0032】
これに対して、本願発明の電解水生成装置10(図2(A)参照)では、水平配管52から下側に向けて延伸した後、略水平に延びて中和配管57に接続される下側配管52Aを有している。
【0033】
この結果、オーバーフローした電解質水溶液は、水平配管52へと侵入した後、循環タンク13の水位に応じて水平配管52又は下側配管52Aを通って中和配管57へ侵入する。中和配管57の中和原水が水平配管52へ流入した場合であっても、下側配管52Aを介して中和配管57へと戻すことができ、循環タンク13への中和原水の流入を防止できる。
【0034】
また、中和配管57に流れる中和原水のベンチュリ効果により、水平配管52を減圧して適切にガスを中和配管57の内部に流入させることができ、循環タンク13内の圧力が高くなることを未然に防止できる。
【0035】
なお、図2(B)に示すように、循環タンク13から中和配管57に向けて下側に僅かに傾斜させた状態、すなわち中和配管57側における水平配管52の内径の下端が、循環タンク13側における水平配管52の内径の下端よりも低い位置で、略水平に配置されてもよい。この場合、ガス抜け効果を保つため、中和配管57側における水平配管52の内径の上端は、循環タンク13側における水平配管52の内径の下端よりも高い位置に配置される。
【0036】
このように、本発明の電解水生成装置10では、ベンチュリ効果を活用して効率良く循環タンク13の内部のガスを排出することができる。これにより、全体として密閉系であり、循環タンク13における内圧の上昇によって電気分解部12の内部圧力に影響を与えてしまう密閉系の電解水生成装置10において、圧力上昇要因を減少させることができる。
【0037】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。図4及び図5を用いて説明する第2の実施の形態の電解水生成装置110では、電気分解部112が中間室を有さない2室タイプの電解槽である点と、原水供給部111から循環タンク113に対して原水が供給される点と、電解質供給部114から供給される未使用の電解質水溶液が循環タンク113に供給される点が図1に示した第1の実施の形態と相違している。なお、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同一及び対応する箇所に100を付した符号を附し、同一箇所についての説明を省略する。
【0038】
電解水生成装置110の電気分解部112は、陰極124を有するカソード室121と、陽極125を有するアノード室122とを有しており、カソード室121及びアノード室122との中間が隔膜126によって隔てられた2室型の電解槽である。電解水生成装置110は、原水及び電解質水溶液が供給されてから電解水及び電解質水溶液が排出されるまでの全経路において圧力が開放されない密閉系であり、制御部120(図示しない)によってカソード室121、アノード室122の圧力バランスが適正に調整されている。
【0039】
電解水生成装置110は、アノード室122によって生成された酸性電解水を酸性電解水排出口118から供給する酸性電解水専用の生成装置である。原水が原水供給部111からアノード室122に供給される一方、電解質水溶液が循環タンク113からカソード室121に供給される。
【0040】
循環タンク113から配管148を介してカソード室121に供給された電解質水溶液中の電解質は隔膜126を介してアノード室122に供給され、電解質の一部が消費されると共に、配管146を介して循環タンク113へと戻される。すなわち、電解質水溶液は、循環タンク113、配管148、カソード室121、配管146からなる循環ラインを繰返し循環する。
【0041】
循環タンク113には、第1の実施の形態と同様、水平配管152と、下側配管152Aが接続されており、中和槽129に対して使用済みの電解質水溶液及び循環タンク113内のガスが効率良く排出される。
【0042】
開閉バルブ156は、原水の供給先を配管157及び158に切替えられる三方弁型の切替バルブである。電解水生成装置110の制御部120は、通常稼働時において、配管157側を開状態として配管157に中和原水を供給する一方、配管158側を閉状態とし、配管158に原水(以下、これを洗浄原水と呼ぶ)を供給しない。なお、開閉バルブ156の代わりに、配管157及び配管158にそれぞれ開閉バルブを設置しても良い。
【0043】
この結果、電解水生成装置110は、循環ラインを循環する電解質水溶液を用いて酸性電解水を生成する。
【0044】
これに対して制御部120は、循環電解質水溶液入替え時において、配管157側を開状態として配管157に中和原水を供給すると共に、配管158側を開状態とし、配管158に洗浄原水を供給する。
【0045】
ここで、図5に示すように、水平配管152における循環タンク113側には、水平配管152から下方向に延びる吸上配管152Bが延設されている。吸上配管152Bの下端は、循環タンク113の高さの1/3より下側に位置しており、底に近い状態にある。
【0046】
水平配管152には、下側配管152Aが分岐した後段から配管157までの間に、開閉バルブ159が設置されている。図5(A)に示すように、通常稼働時において、開閉バルブ159は開状態であり、オーバーフローにより、循環タンク113の電解質水溶液が排出される。
【0047】
ここで、未使用の電解質水溶液は、循環タンク113の上側に接続された配管151を介して電解質供給部114から供給される。吸上配管152Bの開口部が循環タンク113の底近傍(例えば底から1~4cm)に位置することにより、循環タンク113の下領域から優先的に排出することが可能となる。
【0048】
また、電解水生成装置110は、循環タンク113内部の電解質水溶液の大部分を入替える循環電解質水溶液入替え機能を有している。この循環電解質水溶液入替え時において、制御部120は、開閉バルブ159を閉状態にすると共に、開閉バルブ156を調整し、配管158を介して循環タンク113内に洗浄原水を供給する。
【0049】
配管158は、配管152よりも断面積が大きく形成されており、循環電解質水溶液入替え時における洗浄原水の供給量は、配管152によって排出可能な水量よりも大きく設定されることが好ましい。制御部120は、水位センサ154を監視し、循環タンク113の水位が所定の排出開始位置(配管152の上端より上)まで上昇したことを確認すると、洗浄原水の供給を停止する。
【0050】
循環タンク113の水位が上昇して配管152の上端を超えると、サイフォン現象による電解質水溶液の排出が開始され、吸上配管152Bの下端まで水位が低下すると、電解質水溶液の排出が終了する。
【0051】
制御部120は、水位センサ154を監視し、所定の排出終了位置(吸上配管152Bの下端)まで水位が低下したことを確認すると、通常稼動に戻り、開閉バルブ159を開状態に切替えると共に、電解質供給部114から未使用の電解質水溶液の供給を開始する。
【0052】
このように、電解水生成装置110は、サイフォン現象を用いて循環タンク113内の電解質水溶液を入替えるようになされている。
【0053】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。図6を用いて説明する第3の実施の形態の電解水生成装置110X(図示せず)では、吸上配管190の構成が図4及び図5に示した第2の実施の形態と相違している。なお、第3の実施の形態においては、第2実施の形態と対応する箇所に同一符号を附し、同一箇所についての説明を省略する。
【0054】
図6(A)に示すように、吸上配管190は、循環タンク113より外側で水平配管152から分岐し、水平配管152とは別の配管として循環タンク113の内部に設置されている。吸上配管190の最上端は、水平配管152の上端よりも高い位置に設置されている。
【0055】
また、水平配管152における下側配管152Aとの分岐の後段に設置された開閉バルブ159に加え、下側配管152Aとの分岐の前段に開閉バルブ159Xが設置されている。
【0056】
従って、図6(A)に示すように、通常稼働時において、循環タンク113において、電解質水溶液は、開閉バルブ159及び159Xの双方が開状態であり、水平配管152からオーバーフローする。このとき、水平配管152は循環タンク113の側面に接続されており、水面近傍の電解質水溶液が優先的に排出される。なお、未使用の電解水溶液が供給される配管146は、供給されたばかりの電解質水溶液ができるだけ排出されないように、水平配管152の接続孔から水平方向に離隔されて(循環タンク113を半分に分断したとき、接続孔の反対側にくるように)配置されることが好ましい。
【0057】
循環電解質水溶液入替え時において、開閉バルブ159及び159Xの双方が閉状態となり、サイフォン現象により循環タンク113内の電解質水溶液が排出される。
【0058】
これにより、電解水生成装置110Xでは、通常稼働時におけるオーバーフローによる電解質水溶液の排出を水面近傍から、循環電解質水溶液入替え時におけるサイフォン現象による電解水溶液の排出を底面近傍からと切替えることが可能となる。
【0059】
<動作及び効果>
以下、上記した実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて課題及び効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。また、各特徴に記載した用語の意味や例示等は、同一の文言にて記載した他の特徴に記載した用語の意味や例示として適用しても良い。
【0060】
以上の構成において、本発明の電解水生成装置(電解水生成装置10)は、
陽極を有するアノード室(アノード室22)と陰極を有するカソード室(カソード室21)とを少なくとも有する2室型又は3室型の電気分解部(電気分解部12)と、
前記アノード室及び前記カソード室のうち、少なくとも一方である原水供給室に対して原水を供給する原水供給部(原水供給部11)と、
前記電気分解部によって生成された電解水を排出する電解水排出部(酸性電解水排出口18)と、
電解質が供給される電解質供給室に対して電解質が溶解した電解質水溶液を供給する供給経路(配管48)と、前記電解質供給室から排出される電解質水溶液が通る戻り経路(配管46)と、前記供給経路に対して電解質水溶液を供給すると共に該戻り経路からの電解質水溶液が戻る循環タンク(循環タンク13)とを有する循環ラインと、
前記循環ラインに対して電解質水溶液を供給する電解質供給部(電解質供給部14)と、
前記循環タンクから電解質水溶液を排出する電解質排出ラインと
を備え、
前記電解質排出ラインは、
前記循環タンクの接続位置から略水平方向に伸びた水平配管(水平配管52の分岐より前段部分)の後段側で少なくとも2以上に分岐して第1の配管及び第2の配管を構成し、前記第1の配管(水平配管52の分岐より後段部分)は、前記接続位置と同じ又は上側において前記中和配管に接続し、前記第2の配管(下側配管52A)は、前記接続位置より下側において前記中和配管(中和配管57)に接続される特徴とする電解水生成装置。
【0061】
これにより、電解水生成装置では、中和配管からの中和原水が循環タンク内に逆流することなく、かつ循環ライン内で発生するガスを循環タンク内に滞留させることなく電解質水溶液及びガスを円滑に排出することができる。
【0062】
前記循環タンクは、
オーバーフローにより電解質水溶液を排出することを特徴とする。
【0063】
これにより、循環タンクは、常に一定の水位を安定的に維持することができる。
【0064】
前記原水及び前記電解質水溶液は、
前記電気分解部に供給されてから前記電解水排出部又は前記電解質排出ラインから排出されるまでの間、外部と接触しない密閉系であることを特徴とする。
【0065】
これにより、圧力が他の箇所にまで伝達される密閉系の電解水生成装置において、循環タンクにガスが溜って全体の圧力調整に影響が生じてしまうことを極力抑制できる。
【0066】
前記水平配管は、
前記中和配管との接続部分における下側の接続端部が、前記循環タンクとの接続部分における下側の接続端部よりも下方に位置していることを特徴とする。
【0067】
これにより、傾斜を利用して電解質水溶液を滞りなく中和配管へと排出することができる。
【0068】
前記循環タンクには、
洗浄用の洗浄原水が供給される洗浄配管が接続されていることを特徴とする。
【0069】
これにより、洗浄原水を使って循環タンク内を洗浄することができる。
【0070】
前記電解質供給部は、
前記供給経路に対して前記電解質水溶液を供給することを特徴とする。
【0071】
これにより、未使用の電解質水溶液の利用率を高め、電解効率を向上させることができる。
【0072】
前記循環タンクは、
サイフォン現象を利用して前記循環タンク内の電解質水溶液を排出することを特徴とする。
【0073】
これにより、簡易な構成で循環タンク内の電解質水溶液の入替えを実行することができる。
【0074】
前記水平配管は、
前記循環タンク側から下側に延びる吸上配管(吸上配管152B)が延設されており、
前記水平配管における前記下側配管と中和配管との間に開閉バルブ(開閉バルブ159)
が設けられていることを特徴とする。
【0075】
これにより、電解質水溶液を排出するためのサイフォン配管を別途設けることなく、水平配管及び下側配管をそのまま利用してサイフォン現象による電解質水溶液の排出が可能となる。
【0076】
前記電解質供給部は、
前記循環タンクに対して前記電解質水溶液を供給することを特徴とする。
【0077】
これにより、電解質水溶液の排出口と未使用の電解質水溶液の供給口とを遠ざけることができ、未使用の電解質水溶液を優先的に排出することができる。
【0078】
<他の実施の形態>
なお上述実施形態では、生成した電解水をそのまま排出するようにしたが、本発明はこれに限らず、電気分解部の後段に微細気泡を含有させる微細気泡生成部を設け、電解水に微細気泡を含有させるようにしても良い。微細気泡生成部を設ける構成は、例えば特許文献2(特願2016-229519号)などに記載されている。微細気泡生成部としては特に限定されず、圧力開放方式、高速旋回方式、ベンチュリー方式など公知の手法を用いることができる。もちろん、複数の方式を組み合わせても良い。
【0079】
上述実施形態では、電解質供給部14に電解質水溶液が貯留されているが、電解質供給部において電解質水溶液を調製しても良い。例えば電解質供給部に攪拌機構を有し、水と電解質とを混合することにより電解質水溶液が調製される。
【0080】
上述実施形態では、循環タンク13において電解質水溶液をオーバーフローさせるようにしたが、本発明はこれに限られない。例えば、配管46と循環タンク13との間に分岐路(排出路)を設けて電解質水溶液を排出するようにしても良い。この場合であっても、循環使用した電解質水溶液を優先的に廃棄できるといった上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。循環済の電解質水溶液の排出経路は、中間室23よりも後段(すなわち配管46上又はそれ以降)に設けることにより、未使用の電解質水溶液との混合希釈を確実に避けることができ、好ましい。
【0081】
上述実施形態では、2室型の電気分解部として、酸性電解水を生成したが、本発明はこれに限らず、アルカリ性電解水を生成しても良い。その場合、アノード室122に対して電解質水溶液が供給される。
【0082】
上述実施形態では、水平配管152に開閉バルブ159を設けると共に、循環タンク113内において水平配管152を下側に延設することにより、水平配管152をサイフォン配管として利用するようにした。本発明はこれに限らず、例えば水平配管とは別構成でなるサイフォン配管を循環タンクに設置することも可能である。
【0083】
上述実施形態では、第1の配管である水平配管52の分岐より後段部分が水平に伸びて中和配管57に接続した。本発明はこれに限られず、例えば、水平配管の後段部分が上側に伸びてから折れ曲って中和配管に接続してもよく、また、水平配管が3つに分岐し、水平に伸びて中和配管に接続する第1の配管と、下側に伸びてから折れ曲り中和配管に接続する第2の配管と、上側に伸びてから折れ曲り中和配管に接続する第3の配管とを有していても良い。要は、水平配管が2以上に分岐し、少なくとも1つが循環タンク13との接続位置とほぼ同じ又は接続位置よりも上側において中和配管と接続し(すなわち分岐後の第1の配管の上側の位置が循環タンクと水平配管の接続位置における水平配管の下側よりも常に上方にある)、少なくとも1つが循環タンク13との接続位置よりも下側において中和配管と接続(すなわち分岐後の第2の配管の上側の位置が循環タンクとの接続位置における水平配管の下側のよりも下方にある)すればよい。
【0084】
上述第2の実施形態では、配管158を介して循環タンク113内に洗浄原水を供給することによりサイフォン現象を発生させたが、本発明はこれに限られない。必ずしも配管158は必須ではなく、例えば電解質供給部からの電解質水溶液の供給量を増大させることによりサイフォン現象を発生させても良い。
【0085】
さらに、上述の実施の形態においては、電気分解部としての電気分解部12と、原水供給部としての原水供給部11と、中間室23、配管46及び48、循環タンク13を有する電解質循環ラインと、中和配管57、水平配管52、下側配管52Aからなる電解質排出ラインと、電解質供給部としての電解質供給部14とによって電解水生成装置10を構成したが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成による電気分解部と、原水供給部と、電解質循環ラインと、電解質排出ラインと、電解質供給部とによって本発明の電解水生成装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、例えば酸性電解水及びアルカリ性電解水を生成する電解水生成装置などに使用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10:電解水生成装置,11:原水供給部,12:電気分解部,13:循環タンク,14:電解質供給部,17:アルカリ性電解水排出口,18:酸性電解水排出口,20:制御部,21:カソード室,22:アノード室,23:中間室,24:陰極,25:陽極,26:隔膜,29:中和槽,41:開閉機構,42:配管,44:配管,45:配管,46:配管,47:ポンプ,48:配管,49:ポンプ,50:圧力調整弁,51:配管,52:水平配管,52A:下側配管,52X:水平配管,52Y:水平配管,54:水位センサ,56:開閉バルブ,57:中和配管

図1
図2
図3
図4
図5
図6