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特許7425474卵白加工食品の製造方法及び卵白加工食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】卵白加工食品の製造方法及び卵白加工食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20240124BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20240124BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20240124BHJP
【FI】
A23L15/00 B
A23L29/269
A23L29/238
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020057988
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021153509
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-04-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399069037
【氏名又は名称】三州食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 利文
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-073525(JP,A)
【文献】特開2006-217884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.0重量%~3.5重量%の卵白(固形分換算)、調合液の粘度が0.05~1.5Pa・sとなる量のキサンタンガムとグァーガムからなる増粘剤、調合液のpHが6.5~9.0となる量のpH調整剤、0.1~0.5重量%の食塩及び水を混合して調合液を得た後、容器に充填後密閉し、中心温度85℃以上かつ1分以上の加熱処理を行い、
(1)粘度:1.5~4.0Pa・s
(2)かたさ:100~500N/m
であって、かつ加熱しても凝固せず半熟状であることを特徴とする卵白加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記調合液は、2.5重量%~3.0重量%の卵白(固形分換算)、調合液の粘度が0.1~0.5Pa・sとなる量の増粘剤、調合液のpHが7.5~8.5となる量のpH調整剤、0.2~0.4重量%の食塩及び水を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の卵白加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵白加工食品の製造方法及び卵白加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
親子丼やカツ丼等の卵とじに使用される卵は、見た目や食感の観点から卵白の部分が加熱後であっても半熟状であることが好まれる。このような状態の卵白は、加熱条件を調整することで得ることは可能であるが、総菜や弁当等のように調理加熱され、さらにチルドの状態で流通販売され、レンジで再加熱される商品の場合には、加熱の際に卵白が熱凝固してしまうために、この半熟状の卵白の自然な調理感、食感が損なわれてしまうという問題があった。
【0003】
かかる問題に対し、加熱しても卵白が固く凝固することなく、トロっとした半熟状態を維持する技術として、卵白固形分11部である液卵白100部に対し、清水10~200部及び脂肪酸を含有することを特徴とする卵白組成物がある(特許文献1)。また、寒天とゲル化材、着色料及び増粘剤を含むゲル状塊体の疑似卵白を含む卵含有組成物(特許文献2)及びアルギン酸カルシウムを含む卵白様ゲルを含有する丼用冷凍卵とじの製造方法(特許文献3)が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1にかかる技術は、加熱しても卵白が凝固しない半熟状の卵白は得られるものの、脂肪酸を使用するために、苦味が発生し、風味に影響がでてしまったり、食感が本来の半熟状の卵白のようになめらかではなかったりするという問題があった。また、特許文献2又は特許文献3にかかる技術は、加熱しても凝固しない卵白様のゲルは得られるものの、卵白を全く使用しない疑似卵白であるため、本来の半熟状の卵白の風味を得ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-217884号公報
【文献】特開2012-165678号公報
【文献】特開2016-101114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、加熱しても卵白が半熟状態を維持することができ、卵白の風味が強く、かつ本来の半熟状の卵白に近い滑らかな食感を有する卵白加工食品を得ることができる卵白加工食品の製造方法及び卵白加工食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかる卵白加工食品の製造方法は、卵白、増粘剤、pH調整剤、食塩及び水を混合して調合液を得た後、容器に充填後密閉し、中心温度85℃以上かつ1分以上の加熱処理を行うことを特徴とする。
【0009】
かかる方法によって得られた卵白加工食品は、オーブンによる加熱やレンジ加熱等、複数回強く加熱しても凝固せず、半熟状態を保ったまま、本来の半熟状の卵白風味の強いものとすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる卵白加工食品の製造方法において、前記調合液は、2.0重量%~3.5重量%の卵白(固形分換算)、調合液の粘度が0.05~1.5Pa・sとなる量の増粘剤、調合液のpHが6.5~9.0となる量のpH調整剤、0.1~0.5重量%の食塩及び水を混合したものであることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
さらに、本発明にかかる卵白加工食品の製造方法において、前記調合液は、2.5重量%~3.0重量%の卵白(固形分換算)、調合液の粘度が0.1~0.5Pa・sとなる量の増粘剤、調合液のpHが7.5~8.5となる量のpH調整剤、0.2~0.4重量%の食塩及び水を混合したものであることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
また、本発明にかかる卵白加工食品は、卵白、増粘剤、pH調整剤、食塩及び水を含み、下記(1)~(2)の条件を満たし、加熱しても凝固せず半熟状であることを特徴とする卵白加工食品。
(1)粘度:1.5~4.0Pa・s
(2)かたさ:100~500N/m
【0013】
さらに、本発明にかかる卵白加工食品は、2.0重量%~3.5重量%(固形分換算)の卵白、0.1重量%~0.5重量%の食塩を含むことを特徴とするものであってもよい。
【0014】
さらに、本発明にかかる卵白加工食品は、2.5重量%~3.0重量%(固形分換算)の卵白、0.2重量%~0.4重量%の食塩を含むことを特徴とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態にかかる卵白加工食品を作製する作製方法を示すフローチャートである。
図2】実施例1にかかる卵白加工食品を作製する作製方法で作製された卵白加工食品の測定結果及び官能評価の結果を表す図である。
図3】実施例2にかかる卵白加工食品を作製する作製方法で作製された卵白加工食品の測定結果及び官能評価の結果を表す図である。
図4】実施例3にかかる卵白加工食品を作製する作製方法で作製された卵白加工食品の測定結果及び官能評価の結果を表す図である。
図5】実施例4にかかる卵白加工食品を作製する作製方法で作製された卵白加工食品の測定結果及び官能評価の結果を表す図である。
図6】従来例の卵白加工食品を作製する作製方法で作製された卵白加工食品の測定結果及び官能評価の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる卵白加工食品の製造方法及び卵白加工食品を実施するための形態について詳細に説明する。一般的に卵白の風味は、卵白に含まれる含硫アミノ酸を加熱した際に発生する硫化水素によるものである。硫化水素は強い加熱を行うことでより多く発生し、卵白風味も強くなるが通常の卵は強い加熱を与えると凝固してしまい見栄えや食感が損なわれてしまう。そのため、半熟状を保つためには、加熱を強くすることができず硫化水素の発生が少ないため、卵白風味もあまり感じられなかった。また、加熱を強くすることができないので、微生物が多く残存して保存性がよくないという課題があった。本発明は、卵白、増粘剤、pH調整剤、食塩の配合割合を調整することで、加熱を強くしても半熟状態を確保し、かつ卵白の風味及び食感を維持することができ、保存性がよい卵白加工食品の製造方法及び卵白加工食品を提供するものである。
【0017】
本発明にかかる卵白加工食品は、卵白、増粘剤、pH調整剤、食塩及び水を所定の割合で配合して混合、撹拌した後、溶解して得られる調合液が使用される。
【0018】
卵白は、特に指定はなく、卵を割卵して卵黄から分離した状態のもの、これを加熱等によって殺菌したもの、凍結後解凍したもの、粉末卵白又は濃縮卵白等種々のものを使用することができる。卵白は、調合液に対して、固形分換算で2.0~3.5重量%、好ましくは2.5~3.0重量%含まれる。なお、固形分換算は、生卵の状態とした場合に、卵を割卵して卵黄から分離した状態の重量に対して、11%として計算した。
【0019】
増粘剤は、特に限定するものではないが、キサンタンガム又はグァーガム、あるいはこれらを2種併用してもよい。増粘剤の添加量は調合液の粘度が0.05~1.5Pa・s、好ましくは0.1~0.5Pa・sとなるように調整するとよい。添加量が少なすぎると離水が多く、添加量が多すぎると、食感が悪くなったり気泡が十分に抜けなくなり、加熱時の変色や変性の原因になるためである。なお、調合液の粘度は、以下のようにして測定した。5℃に調温した試料を300mlのトールビーカーに300ml入れ、「BL-II型粘度計(株式会社東機産業)を使用し、粘度0.5Pa・s未満はローターNo.60、60rpm、粘度0.5Pa・s以上はローターNo.4、30rpmで測定した。
【0020】
pH調整剤は、特に限定されるものではないが、クエン酸又は炭酸ナトリウム等を使用するとよい。調合液のpH値が低いと凝固物が発生したり、固くなって食感が悪くなったりする。逆に、pHが高すぎると、半透明状となり、食感も悪くなる。そのため、pH値を適切な範囲に調整することは重要である。pH値の目安としては、調合液のpH値が6.5~9.0となるように、好ましくは7.0~8.5となるようにpH調整剤の量を調整して混合する。概ね、添加されるpH調整剤の量は、1.0重量%クエン酸水溶液の場合、4.5重量%未満である。10重量%炭酸ナトリウム水溶液の場合は、0.2重量%未満である。
【0021】
食塩は、卵白と水の混合物のたんぱく質の凝集を抑えて食感をよくするために添加されるものである。食塩の添加量は、調合液に対して0.1~0.5重量%、好ましくは0.2~0.4重量%である。添加量が少なすぎるとたんぱく質の凝集が発生し、添加量が多すぎると塩味が強くなり、卵白の風味が損なわれることになる。
【0022】
使用される水は、食品に使用可能な水であればよい。
【0023】
以下、上述した原材料を使用して卵白加工食品を製造する方法について、以下に説明する。本発明にかかる卵白加工食品を製造する方法は、主として、図1に示すように、調合液作製工程S1、充填工程S2、加熱処理工程S3及び冷却工程S4を含む。
【0024】
調合液作製工程S1では、まず、タンク等に、卵白を調合液に対して固形分換算で2.0~3.5重量%、調合液の粘度が0.05~1.5Pa・sとなる添加量の増粘剤、調合液のpHが6.5~9.0となるpH調整剤、原料の食塩を調合液の0.1~0.5重量%、残りを水として投入し、混合、撹拌及び溶解して調合液を得る。
【0025】
得られた調合液は、耐熱性のある容器に充填(充填工程S2)し、密閉した後、加熱処理を行う(加熱処理工程S3)。加熱処理方法は、特に限定されないが、温水、蒸気等による加熱が挙げられる。加熱条件は、卵白加工食品の中心温度が85℃以上かつ1分相当以上の熱履歴となるように設定する。加熱温度が高く、処理時間が長くなればなるほど、殺菌効果は高くなり、加熱によって卵白の好ましい風味が強くなる。
【0026】
冷却工程では、加熱処理を行ったものを冷水中で冷却し、卵白加工食品を得た。以上のようにして最終的に作製された卵白加工食品は、粘度が1.5~4.0Pa・sで、かたさが100~500N/mの特性を有し、加熱しても半熟状態を維持することができ、卵白風味が強く本来の半熟状の卵白に近い食感のものとすることができる。
【0027】
(実施例1)
・卵白配合量による比較
調合液の卵白の配合割合を固形分換算で、それぞれ2.0重量%(実施例1-1)、2.5重量%(実施例1-2)、3.0重量%(実施例1-3)及び3.5重量%(実施例1-4)混合し、それぞれ増粘剤としてキサンタンガムとグァーガムの混合製剤を0.3重量%、食塩0.2重量%混合し、残りを水及びpHが8.05~8.08の範囲となるようにpH調整剤として1.0重量%クエン酸を混合して調合液を得た。比較例として、それぞれ、調合液の卵白の配合割合を固形分換算で、1.5重量%(比較例1-1)、4.0重量%(比較例1-2)混合し、それぞれ増粘剤としてキサンタンガムとグァーガムの混合製剤を0.3重量%、食塩0.2重量%混合し、残りを水、及びpHがそれぞれ7.92、8.08となるようにpH調整剤として1.0重量%クエン酸を混合して調合液を得た。こうして得られたそれぞれの調合液1kgを耐熱袋に充填した後、密閉し、恒温水槽にて90℃で30分の加熱処理を行った。その後、冷水中で冷却し、卵白加工食品を得た。得られた卵白加工食品について、かたさ及び粘度を測定するとともに官能評価(風味、状態)を行った。測定結果を図2に示す。なお、卵白加工食品の粘度は、20℃に調温した試料を300mlのトールビーカーに300ml入れ、「BL-II型粘度計 株式会社東機産業)」を使用し、ローターNo.4、30rpmで測定した。また、かたさは、20℃に調温した試料を直径40mmの円筒状容器に高さ15mmまで充填し、「FUDOH レオメーターRTC(株式会社レオテック)」を使用し、25mm円錐プランジャー、30cm/minで測定した。
【0028】
調合液の卵白配合量が固形分換算で2.0重量%(実施例1-1)、2.5重量%(実施例1-2)、3.0重量%(実施例1-3)及び3.5重量%(実施例1-4)混合したものは、かたさがそれぞれ145.6N/m、220.0N/m、300.0N/m及び402.3N/mであり、粘度は、それぞれ1.4Pa・s、2.1Pa・s、2.7Pa・s及び3.4Pa・sと、2.0~3.5重量%の範囲において、本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。特に、2.5~3.0重量%の範囲において、より本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。これに対し、調合液の卵白配合量が固定分換算で1.5重量%のものは、かたさが94.0N/mと非常に柔らかく、かつ粘度も0.8Pa・sと低すぎるものとなった。また、調合液の卵白配合量が固定分換算で4.0重量%のものは、かたさが568.7N/mと非常にかたく、粘度も4.4Pa・sと高くなった。
【0029】
(実施例2)
・pH値による比較
調合液の卵白配合量が固定分換算で2.5重量%、それぞれ増粘剤としてキサンタンガムとグァーガムの混合製剤を0.3重量%、食塩を0.2重量%混合し、残りを水及びpH値をそれぞれ6.56(実施例2-1)、7.08(実施例2-2)、7.57(実施例2-3)、8.05(実施例2-4)、8.48(実施例2-5)となるように、1.0重量%クエン酸水溶液をそれぞれ4.3重量%(実施例2-1)、2.0重量%(実施例2-2)、1.4重量%(実施例2-3)、0.7重量%(実施例2-4)及び0.3重量%(実施例2-5)混合し、実施例2-6は、pH値が8.96となるように10重量%炭酸ナトリウム水溶液を0.1重量%混合し、調合液を得た。なお、このときの水の量は、それぞれ72.5重量%(実施例2-1)、74.8重量%(実施例2-2)、75.4重量%(実施例2-3)、76.1重量%(実施例2-4)、76.5重量%(実施例2-5)及び76.7重量%(実施例2-6)であった。比較例として、それぞれ、pHがそれぞれ6.05(比較例2-1)及び9.46(比較例2-2)となるように、比較例2-1では、pH調整剤として1.0重量%クエン酸水溶液を7.7重量%、比較例2-2では、10重量%炭酸ナトリウム水溶液を0.4重量%混合し、調合液を得た。その後、実施例1と同様の方法で卵白加工食品を得た。得られた卵白加工食品について、かたさ及び粘度を測定するとともに官能評価(風味、状態)を行った。測定結果を図3に示す。
【0030】
pH値が、それぞれ6.56(実施例2-1)、7.08(実施例2-2)、7.57(実施例2-3)、8.05(実施例2-4)、8.48(実施例2-5)、8.96(実施例2-6)に調整したものは、かたさがそれぞれ180.3N/m、242.7N/m、270.5N/m、270.5N/m、284.4N/m及び277.4N/m、であり、粘度は、それぞれ1.6Pa・s、1.8Pa・s、1.9Pa・s、1.9Pa・s、1.9Pa・s及び2.0Pa・sと、調合液のpHが6.5~9.0の範囲において、本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。特にpHが7.5~8.5の範囲において、より本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。これに対し、調合液のpH値が6.05のもの(比較例2-1)は、かたさが131.8N/mと非常に柔らかく、かつ粘度も1.0Pa・sと低すぎるものとなった。また、調合液のpH値が9.46のもの(比較例2-2)は、かたさは221.9N/m、粘度は1.8Pa・sであったが、見た目が半透明のような状態となり悪いものとなった。
【0031】
(実施例3)
・増粘剤添加量による比較
調合液の卵白配合量が固定分換算で2.5重量%、それぞれ増粘剤としてキサンタンガムとグァーガムの混合製剤を0.2重量%から0.8重量%まで混合し(実施例3-1~実施例3-6)、食塩0.2重量%混合し、残りを水及びpH値をそれぞれ7.99~8.05の範囲となるようにpH調整剤として1.0重量%クエン酸を混合して調合液を得た。調合液の粘度は、それぞれ0.05Pa・s、0.12Pa・s、0.20Pa・s、0.35Pa・s、0.68Pa・s、1.42Pa・sだった。比較例として、それぞれ増粘剤なし(比較例3-1)、増粘剤0.1重量%(比較例3-2)、0.9重量%(比較例3-3)、1.0重量%(比較例3-4)混合して調合液を得た。それぞれの調合液の粘度は、0.004Pa・s、0.01Pa・s、1.69Pa・s、2.46Pa・sだった。その後、実施例1と同様の方法で卵白加工食品を得た。得られた卵白加工食品について、かたさ及び粘度を測定するとともに官能評価(風味、状態)を行った。測定結果を図4に示す。
【0032】
増粘剤を0.2重量%~0.8重量%まで混合したもの(実施例3-1~実施例3-6)は、かたさがそれぞれ240.0N/m、270.5N/m、242.7N/m、228.9N/m、270.5N/m及び284.4N/mであり、粘度は、それぞれ1.6Pa・s、1.9Pa・s、2.1Pa・s、2.3Pa・s、3.1Pa・s及び4.0Pa・sと、原料混合後の調合液の粘度が0.05~1.42Pa・sの範囲において、本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。特に0.1~0.5Pa・sの範囲において、より本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。より卵白の風味が強く、本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られた。これに対し、増粘剤なしのもの(比較例3-1)は、かたさが138.7N/mとよかったものの、粘度が0.2Pa・sと低すぎるものとなった。また、増粘剤が0.1重量%のもの(比較例3-2)は、かたさが208.1N/mとよかったものの、粘度が1.2Pa・sと低すぎるものとなった。増粘剤が0.9重量%のもの(比較例3-3)は、かたさが360.7N/mとよかったものの、粘度が4.6Pa・sと高すぎるものとなった。増粘剤が1.0重量%のもの(比較例3-4)は、かたさが367.6N/mとよかったものの、粘度が5.3Pa・sと高すぎるものとなった。
【0033】
(実施例4)
・食塩添加量による比較
調合液の卵白配合量が固定分換算で2.5重量%、それぞれ増粘剤としてキサンタンガムとグァーガムの混合製剤を0.3重量%、食塩の濃度が0.1重量%(実施例4-1)、0.2重量%(実施例4-2)、0.4重量%(実施例4-3)、0.5重量%(実施例4-4)混合し、残りを水及びpH値をそれぞれ8.05~8.07の範囲となるようにpH調整剤として1.0重量%クエン酸を混合して調合液を得た。比較例として、それぞれ食塩なし(比較例4-1)、食塩0.7重量%(比較例4-2)混合して調合液を得た。その後、実施例1と同様の方法で卵白加工食品を得た。得られた卵白加工食品について、かたさ及び粘度を測定するとともに官能評価(風味、状態)を行った。測定結果を図5に示す。
【0034】
食塩を0.1重量%(実施例4-1)、0.2重量%(実施例4-2)、0.4重量%(実施例4-3)、0.5重量%(実施例4-4)混合したものは、かたさがそれぞれ166.5N/m、208.1N/m、201.1N/m、152.6N/mであり、粘度は、それぞれ1.8Pa・s、1.9Pa・s、1.5Pa・s、1.5Pa・s、と、調合液の食塩濃度が0.1~0.5%の範囲において、本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。特に0.2~0.4%の範囲において、より本来の半熟状の卵白に近いなめらかな食感が得られ、卵白の風味も強くなった。これに対し、食塩なしのもの(比較例4-1)は、かたさが111.0N/mとよかったものの、粘度が1.0Pa・sと低すぎるものとなった。また、食塩が0.7重量%のもの(比較例4-2)は、かたさが138.7N/mとよかったものの、粘度が1.2Pa・sと低すぎるものとなった。
【0035】
(従来例)
また、従来の技術である卵白、水、脂肪酸を含有する卵白加工食品(従来例1、2)について測定した。配合割合は、図6の表のとおりである。測定結果を図6に示す。従来例1は、かたさが1734.0N/mと非常にかたく、粘度は測定不可能であった。その結果、ボソボソした食感で脂肪酸の苦味があり、卵白の風味を感じられなかった。従来例2は、かたさが208.0N/m、粘度は1.4Pa・sであり、なめらかな食感であるものの、脂肪酸による苦味が強く卵白の風味は感じられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上述した実施の形態で示すように、卵白が半熟状で自然な調理感を表現するための調理用うわがけ卵白加工食品として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
S1…調合液作製工程、S2…充填工程、S3…加熱処理工程、S4…冷却工程

図1
図2
図3
図4
図5
図6