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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/02 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
B23K31/02 310B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020068306
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021164928
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】592141488
【氏名又は名称】アスリートFA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】大井 康
(72)【発明者】
【氏名】仙道 彩
(72)【発明者】
【氏名】松川 晃
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-068331(JP,A)
【文献】特開2003-142506(JP,A)
【文献】特開2003-260586(JP,A)
【文献】特開2004-119866(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077982(WO,A1)
【文献】特開平10-178268(JP,A)
【文献】特開2011-119436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材と接合対象部材との間に所定の形状に成形された接合材を介在させ、加熱・加圧して被接合部材に接合対象部材を接合する接合装置であって、
前記接合材を前記被接合部材の上面に供給し加圧する接合材接合ヘッドと、
前記被接合部材に接合された前記接合材の上面に前記接合対象部材を供給し加熱・加圧する接合対象部材接合ヘッドと、
前記接合材の前記被接合部材への接合、及び前記接合対象部材の前記被接合部材への接合を行う接合加工室と、
を有し、
前記接合加工室は、対向する側壁部から水平方向に不活性ガスを噴出する側部噴出し孔、及び前記接合加工室の天井板部から垂直方向下方に前記不活性ガスを噴出する上部噴出し孔を有しており、
前記接合加工室は、低酸素濃度に常時制御されている、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接合装置において、
前記接合加工室には、前記接合材接合ヘッド又は前記接合対象部材接合ヘッドが水平方向及び垂直方向に移動することが可能な開口部が設けられており、
前記接合加工室の上部には、前記開口部の一部を閉鎖することが可能なシャッタープレートがさらに配設されている、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項3】
請求項2に記載の接合装置において、
前記シャッタープレートは、前記接合材接合ヘッド又は前記接合対象部材接合ヘッドが垂直方向に出入可能な孔部を有し、
前記開口部のうち、前記孔部と交差する範囲以外の領域を閉鎖することが可能である、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の接合装置において、
前記接合材接合ヘッド、前記接合対象部材接合ヘッド及び前記シャッタープレートから構成される接合ユニットを1ユニットとしたとき、
前記被接合部材に接合すべき複数の前記接合対象部材のそれぞれに対応する前記接合ユニットが所定の間隔を有して配列され、
前記接合加工室は、複数の前記接合ユニットの配置位置全部に亘って延長されており、
前記接合加工室は、対向する前記側壁部から水平方向に前記不活性ガスを噴出する前記側部噴出し孔と、前記天井板部から垂直方向下方に前記不活性ガスを噴出する前記上部噴出し孔と、を有している、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接合装置において、
接合時に、前記被接合部材と前記接合対象部材とを前記接合材を介して接合させる接合領域の酸素濃度が100ppm以下に制御されている、
ことを特徴とする接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ系接合材によって基板及び電子部品などの被接合部材を接合する際に、被接合部材の接合面が酸化されていると、酸化膜の影響によって接合部にボイドの発生や、接合時に破壊・分散された酸化膜が接合部に混在することがある。これらによって、接合強度及び接合部が変質するなどの接合品質が得られなくなることがある。
【0003】
上記のような課題を解決するために、低酸素濃度環境下において被接合部材である基板に半導体チップを接合する接合装置がある。このような接合装置は、接合材である線はんだの表面酸化膜を大気圧プラズマ処理装置によって除去した後、低酸素濃度に制御されたチャンバーの内部で被接合部材を接合するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、接合材としてはんだを用いて被接合部分を加熱・加圧接合する際に、加圧部の周囲を取り囲むように配置したガス噴射部から不活性ガスを噴射し、加圧部周囲の空間を低酸素濃度に制御し接合する接合装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-99524号公報
【文献】特開2002-324823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の接合装置は、線はんだを基板上に供給するはんだ供給部、供給された線はんだを所定の形状に成型する成形部及び基板に半導体チップを接合する加熱・加圧部を有している。はんだ供給部、成形部及び加熱・加圧部は、内部全体が低酸素濃度のチャンバー内において接合作業を行う。線はんだは、大気圧プラズマ処理によって表面酸化膜を除去している。しかし、チャンバー内は、大気よりも低酸素濃度であればよいとしていることから、基板及び溶融したはんだの表面が酸化することを十分に排除することが困難であり、接合部にボイドが発生すること、接合時に破壊・分散された酸化膜が接合部に混在すること、があり、接合品質が得られない虞がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の接合装置は、被接合部材を接合するときにのみ加工部の周囲に不活性ガスを噴射し、加工部の周囲を低酸素濃度に制御している。しかし、不活性ガスの噴射口が接合部に対して外側に向いていることから、接合部に酸化膜が形成されないレベルの低酸素濃度にならないことが考えられる。また、給材される被接合部材の表面及びはんだの表面は、接合時までは大気の酸素濃度であることから酸化膜が形成され、接合部にボイドが発生すること、接合時に破壊・分散された酸化膜が接合部に混在することが考えられ、接合品質が得られない虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、接合材、被接合部材及び接合対象部材に酸化膜ができることを抑制し、接合部にボイドが発生すること、接合時に酸化膜が破壊分散されることに起因する接合強度の低下、温度サイクル・温度ショック及び湿気などによる劣化を抑え、安定した接合品質を得ることが可能な接合装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の接合装置は、被接合部材と接合対象部材との間に所定の形状に成形された接合材を介在させ、加熱・加圧して被接合部材に接合対象部材を接合する接合装置であって、前記接合材を前記被接合部材の上面に供給し加圧する接合材接合ヘッドと、前記被接合部材に接合された前記接合材の上面に前記接合対象部材を供給し加熱・加圧する接合対象部材接合ヘッドと、前記接合材の前記被接合部材への接合、及び前記接合対象部材の前記被接合部材への接合を行う接合加工室とを有し、前記接合加工室は、対向する側壁部から水平方向に不活性ガスを噴出する側部噴出し孔、及び前記接合加工室の天井板部から垂直方向下方に前記不活性ガスを噴出する上部噴出し孔を有しており、前記接合加工室は、低酸素濃度に常時制御されている、ことを特徴とする、
【0010】
[2]本発明の接合装置においては、前記接合加工室には、前記接合材接合ヘッド又は前記接合対象部材接合ヘッドが水平方向及び垂直方向に移動することが可能な開口部が設けられており、前記接合加工室の上部には、前記開口部の一部を閉鎖することが可能なシャッタープレートがさらに配設されていることが好ましい。
【0011】
[3]本発明の接合装置においては、前記シャッタープレートは、前記接合材接合ヘッド又は前記接合対象部材接合ヘッドが垂直方向に出入可能な孔部を有し、前記開口部のうち、前記孔部と交差する範囲以外の領域を閉鎖することが可能であることが好ましい。
【0012】
[4]本発明の接合装置においては、前記接合材接合ヘッド、前記接合対象部材接合ヘッド及び前記シャッタープレートから構成される接合ユニットを1ユニットとしたとき、前記被接合部材に接合すべき複数の前記接合対象部材のそれぞれに対応する前記接合ユニットが所定の間隔を有して配列され、前記接合加工室は、複数の前記接合ユニットの配置位置全部に亘って延長されており、前記接合加工室は、対向する前記側壁部から水平方向に前記不活性ガスを噴出する前記側部噴出し孔と、前記天井板部から垂直方向下方に前記不活性ガスを噴出する前記上部噴出し孔と、を有していることが好ましい。
【0013】
[5]本発明の接合装置においては、接合時に、前記接合領域の酸素濃度が100ppm以下に制御されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接合装置は、被接合部材に接合対象部材を接合する際に、接合領域に向かって水平方向及び垂直方向下方に不活性ガスを噴射し、接合領域内を低酸素濃度環境にした状態に維持する。このようにすることによって、フラックス等の酸化防止剤や還元剤などを使用しなくても、被接合部材、接合対象部材及び接合材の表面に酸化膜が形成されることを防ぎ、ボイドの発生、接合時に破壊・分散された酸化膜が接合部に混在することに起因する接合強度、温度サイクル・温度ショック及び湿気などによる劣化を抑え、安定した接合品質を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】接合装置1を使用して製造するワーク10の構成の1例を示す図である。
図2】接合装置1の1例を示す図であり、図4に示すA-A切断線で切断した断面図である。
図3図2に示すA-A切断線で切断した断面図である。
図4図2に示す線B-Bから下方側を見た平面図である。
図5】電子部品12A~12Dそれぞれに対応する接合ユニットU1~U4を有する接合装置1の構成を示す平面図である。
図6】電子部品12A~12Dの接合方法の主要な工程を示す工程フロー図である。
図7】接合材13を基板11に接合する状況を示す断面図である。
図8】電子部品12Aを基板11に接合する状況を示す断面図である。
図9】CAEシミュレーションによる接合加工室20の酸素濃度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る接合装置1について、図1図9を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図は、実際の形状及び構成を簡略化して表す模式図である。また、以下に説明する実施の形態においては、1例として、被接合部材を基板11、接合対象部材を電子部品12A~12Dとして説明する。
【0017】
(ワーク10の構成)
図1は、接合装置1を使用して製造するワーク10の構成の1例を示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A切断線で切断した断面図である。ワーク10は、基板11と電子部品12A~12Dの間に接合材13を介在させて加熱・加圧することによって接合されたものである。本例においては、接合対象部材として、Au又はCuなどの回路パターンが形成された基板11を例にあげて説明するが、被接合部材としては基板に限らずリードフレーム、金属、ガラス、セラミックなどを材料とする板状部材にも適合可能である。
【0018】
接合対象部材としては、電子部品12A~12Dを例にあげて説明するが、電子部品に限らずチップ状の部材であれば適合可能である。なお、被接合部材及び接合対象部材が非金属の場合には、接合対象面にAu、Cu又は他の金属膜が形成される。電子部品12A~12Dは、それぞれ平面サイズや厚み、材質が異なる場合にも、加熱温度及び加圧力を適宜調整することによって接合することが可能となる。また、図1に示す例においては、電子部品の配置数は4個であるが、4個より少ない数、或いは5個以上にすることにも適合可能である。
【0019】
接合材13は、Au-Sn合金又はAg-Sn合金などの金属ろう、はんだなどの被接合部材及び接合対象部材よりも低融点の加熱溶融可能な材料を用いる。本例においては、接合材13としてAuSn20の金属ろうを使用している。一般に、Au-Sn合金などの金属ろう及びはんだを含めてはんだ系接合材と呼ぶことがある。接合材13は、予め所定の形状に成形されたプリフォーム材、又はリボン材から所定形状に打抜き成形されたものを使用する。
【0020】
(接合装置1の構成)
以下に接合装置1の構成例について図2図5を参照して説明する。なお、図2図5においては、電子部品12Aを接合する場合を代表例として説明する。
【0021】
図2は、接合装置1の1例を示す図であり、図4に示すA-A切断線で切断した断面図である。図3は、図2に示すA-A切断線で切断した断面図、図4は、図2に示す線B-Bから下方側を見た平面図である。なお、図2図5において、接合装置1の長さ方向(基板11の搬送方向)をX軸又はX方向、幅方向をY軸又はY方向、X-Y平面に対して垂直方向をZ軸又は上下方向とする。また、Z軸を回転軸とし、X軸又はY軸に対する角度をθとする。すなわち、θはX軸又はY軸に対する電子部品12Aの姿勢を表す。なお、接合装置1が、電子部品12A~12Dなど複数の電子部品を接合する場合の構成については、図5を参照して後述する。
【0022】
接合装置1は、ベースプレート14上に配置されX方向に延在される筐体15と、筐体15の上方に配置されるシャッタープレート16とを有している。シャッタープレート16の上方には、電子部品12Aの給材及び接合を担う電子部品接合ヘッド17と、接合材13の給材及び接合を担う接合材接合ヘッド18とが併設されている。シャッタープレート16と電子部品接合ヘッド17との間には、上下2視野認識ユニット19が配設されている。なお、図2においては、説明を分かりやすくするために、接合材接合ヘッド18を電子部品接合ヘッド17のY方向に離れた位置に配置しているが、実際には、X方向の離れた位置に配置されている(図4参照)。但し、電子部品接合ヘッド17と接合材接合ヘッド18の相対的な配置位置は、適宜設定可能である。
【0023】
筐体15は、トンネル状にX方向に延在された接合加工室20を備えている。接合加工室20は、X方向の両端の一方の端部が基板11の搬入口であり、他端部が接合後のワーク10の搬出口となっている。接合加工室20は、基板11と電子部品12A~12Dとの接合を行う空間である。接合加工室20の底部23には、X方向に延びる搬送溝21が形成されている。この搬送溝21が基板11及びワーク10の搬送路となる。基板11は、搬送溝21内のX方向の所定位置に搬送され、筐体15及びベースプレート14を貫通する真空吸引孔22によって吸着固定される。真空吸引孔22は、図示しない真空吸引装置に接続される。筐体15の底部23には、下部ヒータ24が埋設されている。下部ヒータ24は、主として基板11の加熱を担う。
【0024】
筐体15の対向する側壁部28,29には、それぞれ側部ガス流路30,31が設けられており、側部ガス流路30,31は、窒素などの不活性ガスを接合加工室20内に噴出するための複数の側部噴出し孔32を備えている。図3に示すように、側部噴出し孔32は、側壁部28,29のX方向の両端部付近まで設けられており接合加工室20の全体を低酸素濃度環境に維持する。側部噴出し孔32は、接合加工室20のY方向中央部に向かって水平方向に不活性ガスを噴出する。
【0025】
筐体15の天井板部33には、筐体15の内外を連通する開口部34が設けられている。図4に示すように、開口部34は、基板11に接合した電子部品12A~12Dを包含する大きさを有する矩形の貫通孔である。この開口部34は、電子部品12A~12D及び接合材13を基板11の所定位置に接合する際に、電子部品接合ヘッド17及び接合材接合ヘッド18が移動することが可能な大きさを有している。
【0026】
筐体15の天井板部33には、上部ガス流路35,36が設けられている。図4に示すように、上部ガス流路35,36は、基板11の外形に沿うように2か所に延在されている。上部ガス流路35,36は、窒素などの不活性ガスを接合加工室20に噴き出すための複数の上部噴出し孔37を備えている。図2に示すように、上部噴出し孔37は、接合加工室20に垂直方向下方、かつ基板11のX方向両側に不活性ガスを噴射することが可能な位置に配置されている。
【0027】
側部噴出し孔32は、基板11のY方向の両側2方向から不活性ガスを噴出し、上部噴出し孔37は、基板11の上方から不活性ガスを噴射する。つまり、不活性ガスは、基板の4辺を取り囲むように集中的に噴射されることになる。不活性ガスが集中する領域は、接合材13及び電子部品12A~12Dを基板11に接合する場所の周辺領域となることから、この領域を接合領域38とする。接合領域38は、図2において仮想線で囲まれた領域であり、この接合領域38は接合加工室20の他の場所よりも酸素濃度が低い領域となる。詳しくは後述するが、接合装置1を稼働している間は、接合領域38の酸素濃度を100ppm以下に維持できることが確認できている。なお、側部ガス流路30,31及び上部ガス流路35,36は、不活性ガス供給装置(図示は省略)に接続される。
【0028】
接合加工室20には、接合領域38の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ39が配置され、常時又は定期的に接合領域38の酸素濃度を検出する。酸素濃度センサ39は接合領域38の酸素濃度を検出し、酸素濃度が所定の値以下になるように不活性ガスの噴出し量を制御する。
【0029】
シャッタープレート16は、筐体15のY方向外側のベースプレート14上に配設されたX-Yアクチュエータ42に、連結部43を介して取り付けられている。シャッタープレート16は、連結部43から筐体15の上方に水平に延在され、開口部34を覆うように配置される。シャッタープレート16には、天井板部33の開口部34と交差する位置に開口部34より小さい孔部44を備えている。孔部44は、電子部品接合ヘッド17又は接合材接合ヘッド18が出入可能な貫通孔であって、接合対象の電子部品の上部で開口するように、X-Yアクチュエータ42によって平面方向の位置を切り替えることができる。
【0030】
図4に示すように、電子部品12Aの上方において開口部34と孔部44が連通し、電子部品12Aが孔部44内に視認可能な範囲以外の領域、つまり、電子部品12B~12Dの上部の開口部34は、シャッタープレート16によって閉鎖される。図2に示すように、シャッタープレート16と筐体15との間には隙間があるが、隙間があることによる酸素濃度の変化は、CAEシミュレーションで隙間の有無によって変わらないことが確認できている。シャッタープレート16と電子部品接合ヘッド17(又は接合材接合ヘッド18)との間には、上下2視野認識ユニット19が配設されている。
【0031】
上下2視野認識ユニット19は公知の2視野カメラを有している。上下2視野認識ユニット19は、接合材13又は電子部品12Aを基板11に給材する際に、基板11と接合材接合ヘッド18に吸着された接合材13との位置ずれ、基板11と電子部品接合ヘッド17に吸着された電子部品12Aとの位置ずれを認識する。位置ずれの認識基準は、基板11は、例えば、アライメントマークや配線パターンなどであり、接合材13は外形形状とする。一方、電子部品12A~12Dの認識基準は、それぞれのアライメントマーク又は外形形状とすることが可能である。図2図4は、すでに基板11に接合された接合材13と、電子部品接合ヘッド17に吸着されている電子部品12Aの位置ずれを認識する状況を表している。図2において、基板11上に仮想線で示す電子部品12Dは、その配置位置のみを表している。
【0032】
上下2視野認識ユニット19は、位置認識時には認識可能な位置まで移動し、接合時には電子部品接合ヘッド17又は接合材接合ヘッドの動作を妨げない初期位置(退避位置)に移動する。上下2視野認識ユニット19は、図示しないX-Y-Zアクチュエータによって、Y方向に移動させることが可能となっている。
【0033】
電子部品接合ヘッド17は、ヘッド本体部45の下方側先端に電子部品12Aを吸着するコレット46を有し、ヘッド本体部45には上部ヒータ47が埋設されている。コレット46の端面形状は、電子部品12Aの平面形状と略同じ形状である。コレット46は、ヘッド本体部45に対して着脱可能であり、電子部品12A~12Dのそれぞれの平面形状に対応して用意される。ヘッド本体46の平面方向中心部には、ヘッド本体46及びコレット46を貫通する真空吸引孔48が設けられている。真空吸引孔48は、図示しない真空吸引装置に接続される。
【0034】
図示は省略するが、電子部品接合ヘッド17は、X-Yアクチュエータ、Z軸アクチュエータ及びθアクチュエータによって移動及び回転することが可能となっている。電子部品接合ヘッド17は、X-Yアクチュエータによって接合動作を可能にする位置に移動し、接合動作が可能な位置から退避位置まで移動することが可能となっている。電子部品接合ヘッド17は、Z軸アクチュエータによって電子部品12Aを吸着して降下し、電子部品12Aを加熱することによって接合材13を溶融し、さらに加圧して基板11に接合する。接合後、電子部品接合ヘッド17は上昇して図2に示す位置に復帰する。
【0035】
また、電子部品接合ヘッド17は、X-Yアクチュエータ及びθアクチュエータによって、前述した上下2視野認識ユニット19において認識した接合材13と電子部品12Aとの位置ずれ量に基づき電子部品12Aの位置及び姿勢を補正する。X-Yアクチュエータは電子部品12Aの平面位置を補正し、θアクチュエータは、X軸又はY軸に対する電子部品12Aの角度(姿勢)を補正する。なお、電子部品12Aは、図示しないトランスポート又はロボットアームなどによって、パーツトレイから搬送され、コレット46に吸着された後、接合される。なお、電子部品接合ヘッド17がパーツトレイから電子部品12Aを直接ピックアップする構成にすることが可能である。
【0036】
接合材接合ヘッド18は、ヘッド本体部50の下方側先端に接合材13を吸着するコレット51を有している。なお、接合材電子部品接合ヘッド17と同じように、接合ヘッド18にも上部ヒータ47を埋設することが可能である。コレット51の端面形状は、接合材13の平面形状と略同じ形状を備えている。コレット51は、ヘッド本体部50に対して着脱可能であり、コレット51の平面形状は接合材13の複数種類の形状に対応して用意される。一般に、接合材13の平面形状は、電子部品12A~12Dそれぞれの形状に対応しているため、コレット51の平面形状をコレット46の平面形状と同じにすることが可能である。ヘッド本体50の平面方向中心部には、ヘッド本体50及びコレット51を貫通する真空吸引孔52が設けられている。真空吸引孔52は、図示しない真空吸引装置に接続される。
【0037】
図示は省略するが、接合材接合ヘッド18は、X-Yアクチュエータ、Z軸アクチュエータ及びθアクチュエータによって移動及び回転することが可能となっている。接合材接合ヘッド18は、X-Yアクチュエータによって接合動作を可能にする位置(図2に示す電子部品接合ヘッド17の位置)に移動し、接合動作が可能な位置から退避位置まで移動することが可能となっている。接合材接合ヘッド18は、Z軸アクチュエータによって接合材13を吸着して降下し、接合材13を加熱溶融し、さらに加圧して基板11に接合する。接合後、接合材接合ヘッド18は上昇して図2に示す位置に復帰する。
【0038】
また、接合材接合ヘッド18は、X-Yアクチュエータ及びθアクチュエータによって前述した上下2視野認識ユニット19において認識した接合材13と基板11との位置ずれ量に基づき接合材13の位置及び姿勢を補正する。X-Yアクチュエータは接合材13の平面位置を補正し、θアクチュエータは、X軸又はY軸に対する接合材13の角度(姿勢)を補正する。なお、接合材13は、図示しないトランスポート又はロボットアームなどによって、パーツトレイからピックアップ搬送され、コレット51に吸着された後、接合される。なお、接合材接合ヘッド18がパーツトレイから接合材13を直接ピックアップする構成にすることが可能である。
【0039】
なお、接合装置1は、電子部品接合ヘッド17と接合材接合ヘッド18とを備える構成を代表例として説明したが、接合対象の電子部品12A~12Dと接合材13の平面形状が同じであれば、加熱温度、加圧力を適切に制御することによって、電子部品接合ヘッド17で接合対象の電子部品と接合材13両者の給材及び接合を行うことが可能である。
【0040】
電子部品12A~12Dが全て同一部品である場合、電子部品接合ヘッド17及び接合材接合ヘッド18を接合対象の基板11に対する各電子部品の配置位置に順次移動させながら接合することが可能である。しかし、一般に、電子部品12A~12Dが同一部品であることは稀であり、使用するコレット46,51も電子部品毎の仕様となる。このような場合には、電子部品毎に電子部品接合ヘッド17及び接合材接合ヘッド18を配設することになる。
【0041】
図5は、電子部品12A~12Dそれぞれに対応する接合ユニットU1~U4を有する接合装置1の構成を示す平面図である。接合ユニットU1~U4は、図2図4において説明した電子部品接合ヘッド17、接合材接合ヘッド18、シャッタープレート16及び各接合ユニットに共通の筐体15から構成される。図5は、接合ユニットU1~U4の配置を示す図であり、接合ユニットU1~U4は同じ構成であって、構成の細部は図2図4を参照する。なお、筐体15は、各接合ユニットで共通に使用するものである。電子部品接合ヘッド17、接合材接合ヘッド18、シャッタープレート16及び筐体15とから構成される接合ユニットを1ユニットとしている。なお、電子部品接合ヘッド17及び接合材接合ヘッド18は、図2図4おいて説明しているので図5では図示及び詳しい説明を省略する。
【0042】
接合ユニットU1~U4は、所定の間隔を有して直列に配列されている。筐体15(接合加工室20を含む)は、接合ユニットU1~U4の配置位置に延長されている。筐体15は、図2図4において説明した構成に対してX方向の長さが異なるだけで同じ構成である。筐体15は、長さ方向全体に亘って形成される接合加工室20、側部ガス流路30,31、側部ガス流路30,31に直交する方向に延在される上部ガス流路35,36を有している。側部ガス流路30,31には不活性ガスを水平方向内側に噴射する側部噴出し孔32が設けられ、上部ガス流路35,36には不活性ガスを垂直方向下方側に噴射する上部噴出し孔37が設けられている。側部噴出し孔32は、接合ユニット間の間隔領域にも配設される。但し、接合ユニットU1~U4の配置に配設するようにしてもよい。従って、接合領域38(図2参照)内は、接合加工室20の他の領域よりも低酸素濃度環境にすることができる。
【0043】
筐体15の図示左側端部が基板11の搬入口53であって、基板11を搬入口から接合ユニットU1の所定位置に達するまで搬送溝21内を搬送する。接合ユニットU1は、電子部品12Aを基板11に接合するユニットであって、シャッタープレート16の孔部44が電子部品12Aの位置と一致するまでシャッタープレート16を移動し、接合材13を基板13に接合した後、電子部品12Aを基板11に接合する。接合後、電子部品12Aが接合された基板11を接合ユニットU2の所定位置に搬送する。
【0044】
接合ユニットU2は、電子部品12Bを基板11に接合するユニットであって、シャッタープレート16の孔部44が電子部品12Bの位置と一致するまでシャッタープレート16を移動し、接合材13を基板11に接合した後、電子部品12Bを基板11に接合する。そして、電子部品12A、12Bが接合された基板11を接合ユニットU3の所定位置に搬送し、シャッタープレート16の孔部44が電子部品12Cの位置と一致するまでシャッタープレート16を移動し、接合材13を基板11に接合した後、電子部品12Cを基板11に接合する。接合後、電子部品12A,12B,12Cが接合された基板11を接合ユニットU4の所定位置に搬送する。
【0045】
接合ユニットU4は、電子部品12Dを基板11に接合するユニットであって、シャッタープレート16の孔部44が電子部品12Dの位置と一致するまでシャッタープレート16を移動し、接合材13を基板11に接合した後、電子部品12Dを基板11に接合する。基板11に電子部品12A~12Dが接合されたワーク10は、筐体15の図示右方端部の搬出口54から搬出される。
【0046】
(電子部品12A~12Dの接合方法)
続いて、電子部品12A~12Dの接合方法について図6図8を参照して説明する。ここでは、図5に示す接合装置1を使用し、4個の電子部品12A~12Dを基板11に接合する場合について、図6に示す工程フロー図に従い説明する。
【0047】
図6は、電子部品12A~12Dの接合方法の主要な工程を示す工程フロー図である。なお、接合ユニットU1~U4は、電子部品12A~12D及び接合材13の配置位置が異なるだけで接合ユニットU1と同様な工程で動作することから、図6においては、接合ユニットU1における電子部品12Aを基板11に接合する工程を中心に説明する。
【0048】
接合装置1を稼働している間は、接合加工室20内には側部噴出し孔32及び上部噴出し孔37から不活性ガスが常時噴射されており、少なくとも接合領域38内は酸素濃度が100PPM以下の低酸素濃度環境に維持されている。まず、基板11を接合ユニットU1の所定位置(定位置)に搬送する(ステップS1)。基板11は、筐体15の搬送溝21内の所定位置に吸着保持される。基板11は、下部ヒータ24によって加熱される。続いて、シャッタープレート16を移動し、孔部44を電子部品12Aの接合予定位置に合わせる(ステップS2)。
【0049】
次に、接合材接合ヘッド18が接合材13をピックアップし(ステップS3)、接合材接合ヘッド18を接合部材13が吸着された状態で孔部44の上方に移動する(ステップS4)。シャッタープレート16の移動と、接合材13のピックアップ動作を同じタイミング行うことが可能である。次いで、上下2視野認識ユニット19を初期位置(退避位置)から接合材接合ユニット18とシャッタープレート16との間に移動し(ステップS5)、基板11に対する接合材13の位置ずれを検出する(ステップS6)。そして、上下2視野認識ユニット19による位置ずれ検出値に基づき基板11に対する接合材13の姿勢を含む位置ずれを補正する(ステップS7)。
【0050】
続いて、上下2視野認識ユニット19を初期位置に退避させ(ステップS8)、接合材接合ヘッド18を降下し、接合材13を加圧することによって接合材13を基板11に接合する(ステップS9)。上下2視野認識ユニット19の退避動作は、位置ずれ検出動作直後に行うこと、或いは、接合材13の位置ずれ補正動作と同じタイミングで行うことが可能である。接合材13と基板11との接合動作については、図7を参照して説明する。
【0051】
図7は、接合材13を基板11に接合する状況を示す断面図である。接合材接合ヘッド18は、シャッタープレート16の孔部44及び筐体15の開口部34を貫通して、接合材13が基板11に当接するまで降下する。
【0052】
本例では、接合材13としてAuSn20合金のプリフォーム材を使用している。AuSn20合金の融点は278℃~300℃であることから、電子部品12A~12Dの接合の際には接合材13の溶融のための加熱温度を400℃にする。なお、下部ヒータ24は、基板11が接合位置に搬送されたときに加熱を開始し、その加熱温度を100℃~200℃とする。接合材13と基板11との接合は、電子部品接合までの間に基板11に対して接合材13の位置がずれない程度の仮接合(仮置き)であり、加熱温度、加圧力及び加圧時間は適宜設定される。基板11は、下部ヒータ24によって加熱されていることから、接合材13は短時間で溶融する。接合材13を基板11に接合した後、接合材接合ヘッド18を初期位置に退避させる(ステップS10)。
【0053】
接合材13を基板11に接合した後、電子部品12Aを基板11に接合する工程に移行する。まず、電子部品接合ヘッド17が電子部品12Aをピックアップし(ステップS11)、電子部品接合ヘッド17を電子部品12Aが吸着された状態で孔部44の上方に移動する(ステップS12)。シャッタープレート16の位置は変えない。次いで、上下2視野認識ユニット19を初期位置(退避位置)から電子部品接合ヘッド17とシャッタープレート16との間に移動し(ステップS13)、基板11に対する電子部品12Aの位置ずれを検出する(ステップS14)。そして上下2視野認識ユニット19による位置ずれ検出値に基づき基板11に対する電子部品12Aの姿勢を含む位置ずれを補正する(ステップS15)。
【0054】
続いて、上下2視野認識ユニット19を初期位置に退避させ(ステップS16)、電子部品接合ヘッド17を降下し、電子部品12Aを加熱・加圧することによって接合材13を介して電子部品12Aを基板11に接合する(ステップS17)。上下2視野認識ユニット19の退避動作は、位置ずれ検出動作直後に行うこと、或いは、電子部品12Aの位置ずれ補正動作と同じタイミングで行うことが可能である。電子部品12Aと基板11との接合については、図8を参照して説明する。
【0055】
図8は、電子部品12Aを基板11に接合する状況を示す断面図である。電子部品接合ヘッド17は、シャッタープレート16の孔部44及び筐体15の開口部34を貫通して、電子部品12Aが接合材13に当接するまで降下する。この際、上部ヒータ47によって電子部品12Aを介して接合材13を溶融可能な温度に加熱し、さらに電子部品12Aを加圧して接合材13を介して基板11に接合する。基板11及び接合材13は、接合工程前から下部ヒータ24によって加熱されていることから、接合材13を短時間で溶融させることができる。
【0056】
電子部品12Aの基板11との接合は本接合であることから、加熱温度、加圧力及び加圧時間は接合品質を確保することが可能な条件に設定される。電子部品12Aを基板11に接合した後、電子部品接合ヘッド17を初期位置に退避させる(ステップS18)。以上説明したステップS1~ステップS18の工程によって、電子部品12Aの基板11への接合工程が終了し、電子部品12Bの基板11への接合工程に移行する。
【0057】
電子部品12B~12Dの基板11への接合は、それぞれ接合ユニットU2~U4において電子部品12Aの接合と同様な工程で実施することから詳しい説明は省略する。
【0058】
電子部品12Bの接合は、電子部品12Aが接合された基板11を接合ユニットU1から接合ユニットU2の所定位置に搬送し吸着した後、電子部品12Aの接合と同様にステップS2~ステップS18の工程を実行する。但し、シャッタープレート16は、孔部44が電子部品12Bの接合予定位置になるように移動される(ステップS2)。接合材接合ヘッド18及び電子部品接合ヘッド17は、この孔部44を貫通して、それぞれ接合材13及び電子部品12Bの接合動作を行う。
【0059】
電子部品12Cの接合は、電子部品12A,12Bが接合された基板11を、接合ユニットU2から接合ユニットU3の所定位置に搬送し吸着した後、電子部品12A、12Bの接合動作と同様にステップS2~ステップS18の工程を実行する。但し、シャッタープレート16は、孔部44が電子部品12Cの接合予定位置となるように移動される(ステップS2)。接合材接合ヘッド18及び電子部品接合ヘッド17は、この孔部44を貫通して、それぞれ接合材13及び電子部品12Cの接合動作を行う。
【0060】
電子部品12Dの接合は、電子部品12A,12B、12Cが接合された基板11を、接合ユニットU3から接合ユニットU4の所定位置に搬送し吸着した後、電子部品12A、2B,12Cの接合動作と同様にステップS2~ステップS18の工程を実行する。但し、シャッタープレート16は、孔部44が電子部品12Dの接合予定位置となるように移動する(ステップS2)。接合材接合ヘッド18及び電子部品接合ヘッド17は、この孔部44を貫通して、それぞれ接合材13及び電子部品12Dの接合動作を行う。電子部品12A~12Dが基板11に接合されたワーク10は、搬出口54から搬出される。
【0061】
以上説明した接合装置1は、4個の電子部品12A~12Dを基板11に接合する例をあげて説明したが、電子部品が4個よりも多い場合もある。そのような場合、接合ユニットを電子部品の数に対応して増加すれば対応することが可能である。なお、接合ユニットU1~U4をそれぞれ一つの電子部品を接合する接合装置とし、接合装置を複数台連結することが可能である。
【0062】
以上説明した接合装置1においては、基板11、接合材13及び電子部品12A~12Dの各接合面の酸化を防ぐために、接合領域38を低酸素濃度(100ppm以下)に維持することが重要である。そこで、CAEシミュレーションによって、接合加工室20内の酸素濃度を解析した。図9にシミュレーション結果を示す。
【0063】
図9は、CAEシミュレーションによる接合加工室20(特に接合領域38)の酸素濃度分布を示す図である。シミュレーションモデルは、接合加工室20のX方向の一部(接合領域38)において、上部噴出し孔37及び側部引き出し孔32から接合領域38に向かって不活性ガスを噴出させる構成とし、接合領域38の上方の一部にシャッタープレート16を配設し、筐体15の天井板部34を除去して連通した空間としている。
【0064】
図9に示すように、接合領域38内は、酸素濃度が100ppm以下になることが分かった。また、本来、天井板部34が存在した空間及びシャッタープレート15の孔部44が想定される空間においても酸素濃度は100ppm以下であった。一方、シャッタープレート16よりも上方の空間55においては、酸素濃度は700ppm以上となった。すなわち、このCAEシミュレーションによれば、側部噴出し孔37から水平方向に接合領域38かって不活性ガスを噴き出し、上部噴出し孔37から垂直方向下方に接合領域38に向かって不活性ガスを噴射することによって、接合領域38は勿論、開口部34に相当する空間及び孔部44の形成領域も酸素濃度を100ppm以下に維持することが可能であることが確認できた。図9に示すように、シャッタープレート16は、酸素濃度が100ppm以下の低酸素濃度領域を広い範囲で確保する機能を有していることが確認できた。
【0065】
以上説明した接合装置1は、被接合部材である基板11と接合対象部材である電子部品12A~12Dとの間に所定の形状に成形された接合材13を介在させ、加熱・加圧して基板11に電子部品12A~12Dを接合する接合装置である。接合装置1は、接合材13を基板11の上面に供給し加圧する接合材接合ヘッド18と、基板11に接合された接合材13の上面に電子部品12A~12Dを供給し加熱・加圧する接合対象部材接合ヘッド17とを有している。接合装置1は、さらに、接合材13の基板11への接合、及び電子部品12A~12Dの基板11への接合を行う接合加工室20を有している。接合加工室20は、対向する側壁部28,29から水平方向に不活性ガスを噴出する側部噴出し孔32、及び接合加工室20の天井板部33から垂直方向下方に不活性ガスを噴出する上部噴出し孔37を有しており、接合加工室20は、低酸素濃度に常時制御されている。
【0066】
このように構成される接合装置1によれば、基板11、接合材13、及び電子部品12A~12Dを搬送・給材する際、及びこれらの部材を接合する際に、接合領域38に向かって水平方向及び垂直方向下方に不活性ガスを噴射することによって、接合加工室20、特に接合領域38を低酸素濃度環境に維持している。このことによって、フラックス等の酸化防止剤や還元剤などを使用しなくても、基板11、電子部品12A~12D及び接合材13の表面に酸化膜が形成されることを防ぎ、接合部にボイドが発生すること、接合時に破壊・分散された酸化膜が接合部に混在することに起因する接合強度、温度サイクル・温度ショック及び湿気などによる劣化を抑え、安定した接合品質を得ることが可能となる。
【0067】
また、接合加工室20には、接合材接合ヘッド18又は接合対象部材接合ヘッドである電子部品接合ヘッド17が水平方向及び垂直方向に移動することが可能な開口部34が設けられており、接合加工室20の上部には、開口部34の一部を閉鎖することが可能なシャッタープレート16が配設されている。
【0068】
接合加工室20には、接合材接合ヘッド18又は電子部品接合ヘッド17が接合加工室20の内外を貫通しつつ移動することが可能な開口部34を有している。開口部34は、接合材接合ヘッド18又は電子部品接合ヘッド17の接合動作を可能にするために必須である。開口部34は接合加工室20を低酸素濃度に維持するためには不利に働く。しかし、シャッタープレート16を設け、開口部34の開口面積を必要最小限に小さくすることにっよって、接合加工室20を適切な酸素濃度に管理することが可能となる。
【0069】
また、接合装置1においては、シャッタープレート16は、接合材接合ヘッド18又は電子部品接合ヘッド17が垂直方向に出入可能な孔部44を有し、開口部34のうち、孔部44と交差する範囲以外の領域を閉鎖することが可能である。
【0070】
シャッタープレート16は、開口部34を覆うように配置される。接合材13及び電子部品12Aを基板11に接合する際には、孔部44及び開口部34を接合材接合ヘッド10又は電子部品接合ヘッド17が出入りし、シャッタープレート16は開口部34の孔部44が交差する位置以外の領域を閉鎖する。このようにすることによって、接合加工室20(筐体15)に開口部34が形成されていても低酸素濃度環境を維持することが可能となる。
【0071】
接合装置1は、接合材接合ヘッド18、電子部品接合ヘッド17及びシャッタープレート16から構成される接合ユニットを1ユニットとしたとき、基板11に接合すべき複数の電子部品12A~12Dのそれぞれに対応する接合ユニットU1~U2が所定の間隔を有して配列される。接合加工室20は、接合ユニットU1~U2の配置位置全部に亘って延長されており、接合加工室20は、対向する側壁部28,29から水平方向に不活性ガスを噴出する側部噴出し孔32と、天井板部34から垂直方向下方に不活性ガスを噴出する上部噴出し孔37と、を有している。
【0072】
一般に、電子部品12A~12Dが同一部品であることは稀であり、使用するコレット46,51も電子部品毎の仕様となる。このような場合においては、電子部品毎に接合ユニットU1~U4によって電子部品12Aから順に、電子部品12B、12C,12Dを基板11に接合する。筐体15(接合加工室20)は、接合ユニットU1~U4ともに共通使用である。接合加工室20内全体には、側部噴出し孔32から不活性ガスが噴出され、上部噴出し孔37からは、接合領域38に向かって垂直方向下方に不活性ガスが噴射される。従って、各接合ユニットの接合領域38において酸素濃度を100ppm以下に維持し、基板11、接合材13及び電子部品12A~12Dそれぞれの接合面の酸化を抑制することが可能となる。
【0073】
また、接合装置1においては、接合時に、接合領域38の酸素濃度が100ppm以下に制御されている。図9に示すように、CAEシミュレーションの結果から、接合領域38及びその上部空間は酸素濃度を100ppm以下にすることが可能である。酸素濃度が100ppm以下であれば、基板11、接合材13及び電子部品12A~12Dそれぞれの接合面が酸化することを防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1…接合装置、10…ワーク、11…基板(被接合部材)、12A~12D…電子部品(接合対象部材)、13…接合材、15…筐体、16…シャッタープレート、17…接合材接合ヘッド、18…電子部品接合ヘッド、19…上下2視野認識ユニット、20…接合加工室、24…下部ヒータ、28,29…側壁部、30,31…側部ガス流路、32…側部噴出し孔、33…天井板部、34…開口部、35,36…上部ガス流路、37…上部噴出し孔、38…接合領域、39…酸素濃度センサ、44…孔部、45…ヘッド本体部、46…コレット、47…上部ヒータ、48…真空吸引孔、50…ヘッド本体部、51…コレット、52…真空吸引孔、55…上部空間、U1~U4…接合ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9