(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電磁波シールド用めっき繊維布
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240124BHJP
B32B 15/14 20060101ALI20240124BHJP
C25D 5/56 20060101ALI20240124BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B15/14
C25D5/56 A
C25D7/00 R
(21)【出願番号】P 2020078360
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】395010794
【氏名又は名称】名古屋メッキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋
(72)【発明者】
【氏名】堀田 一男
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183178(JP,A)
【文献】特開平03-234094(JP,A)
【文献】特開2003-152389(JP,A)
【文献】特開平11-31894(JP,A)
【文献】特開昭59-139697(JP,A)
【文献】特開平6-152181(JP,A)
【文献】特開2001-226873(JP,A)
【文献】特開平6-53687(JP,A)
【文献】特開2001-267788(JP,A)
【文献】特開平11-340674(JP,A)
【文献】特開平11-1874(JP,A)
【文献】特開平4-286194(JP,A)
【文献】特開2016-157814(JP,A)
【文献】特開2009-88025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 15/14
C25D 5/56
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維のいずれか1種以上を含む繊維(2)の上に、銅又は銀のいずれか1種以上からなる厚さ1~5μmの第1めっき層(3)と、ニッケル-鉄合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト又はコバルト-鉄合金のいずれか1種類以上からなる厚さ0.5~3μmの第2めっき層(4)とを、いずれか一方を内層、他方を外層として有してなるめっき繊維(6)により形成されている
、目付が670~1270g/m
2
である電磁波シールド用めっき繊維布。
【請求項2】
めっき繊維布(1)は、織布であり、
繊維(2)は、マルチフィラメントであり、その各フィラメント(2a)の上に第1めっき層(3)と第2めっき層(4)とを有する請求項1記載の電磁波シールド用めっき繊維布。
【請求項3】
繊維(2)は、フィラメント束が平行に揃えられたマルチフィラメントである請求項2記載の電磁波シールド用めっき繊維布。
【請求項4】
アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維のいずれか1種以上を含む第1繊維(12)の上に、銅又は銀のいずれか1種以上からなる厚さ1~5μmの第1めっき層(13)を有してなる第1めっき繊維(16)により形成されている
、目付が670~1270g/m
2
である第1めっき繊維布(17)と、
アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維のいずれか1種以上を含む第2繊維(22)の上に、ニッケル、ニッケル-鉄合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト又はコバルト-鉄合金のいずれか1種類以上からなる厚さ0.5~3μmの第2めっき層(24)を有してなる第2めっき繊維(26)により形成されている
、目付が670~1270g/m
2
である第2めっき繊維布(27)とが、
重ねられてなることを特徴とする電磁波シールド用めっき繊維布。
【請求項5】
第1めっき繊維布(17)及び第2めっき繊維布(27)は、織布であり、
第1繊維(12)は、マルチフィラメントであり、その各フィラメント(12a)の上に第1めっき層(13)を有し、
第2繊維(22)は、マルチフィラメントであり、その各フィラメント(22a)の上に第2めっき層(24)を有する請求項4記載の電磁波シールド用めっき繊維布。
【請求項6】
第1繊維及び第2繊維は、フィラメント束が平行に揃えられたマルチフィラメントである請求項5記載の電磁波シールド用めっき繊維布。
【請求項7】
第1めっき繊維布(17)と第2めっき繊維布(27)は、接合されている請求項4、5又は6記載の電磁波シールド用めっき繊維布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド用めっき繊維布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野では、自動運転化やEV化のための電装品の増加と、軽量化のための金属から樹脂への置換が進んでいるため、電磁波による電装品の誤動作が問題になってきている。そのため、電磁波シールドの重要性が増している。
【0003】
特許文献1には、プラスチック、セラミック等の非導電体に、銅を主体としためっき層と、ニッケルを主体としためっき層の、二層からなる電磁波シールド層を形成する方法が記載されている。
【0004】
しかし、プラスチック、セラミック等をベースにした電磁波シールド部材は、重量が大きいという問題がある。また、めっき層を上記二層とした理由は、使用雰囲気中で銅めっき層が酸化され、電磁波シールド効果が劣化するのをニッケルめっき層により防止するようにしたというものであり、電磁波シールド効果を高めるためではなかった。
【0005】
特許文献2には、樹脂、繊維等の不導体基板と、10~60wt%の複合金属酸化物水化物と40~90wt%のバインダーとから構成される下地層と、銅及び/又はニッケルを無電解メッキすることにより構成される金属層とからなる電磁波シールドが記載されている。不導体基板が繊維の場合には、軽量化が可能である。
【0006】
しかし、上記二層とした理由は、複合金属酸化物水化物系下地層が、有機溶剤系下地層に比べて、表面硬度が高く、耐薬品性に優れる結果、不導体基板から剥離されにくいので、金属層による電磁波シールド効果が長期発揮されるというものであり、電磁波シールド効果を高めるためではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平2-175895号公報
【文献】特許第3385163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、軽量で、低周波領域から高周波領域までの電磁波シールド効果が高いめっき繊維布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において、単に「…の上に」というときは、…の上に接して、と、…の上に他の層を介して、の両者を含む。他の層は特に限定されない。
【0010】
(1)第1の発明は、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO(poly(p-phenylenebenzobisoxazole))繊維のいずれか1種以上を含む繊維の上に、銅又は銀のいずれか1種以上からなる厚さ1~5μmの第1めっき層と、ニッケル-鉄合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト又はコバルト-鉄合金のいずれか1種類以上からなる厚さ0.5~3μmの第2めっき層とを、いずれか一方を内層、他方を外層として有してなるめっき繊維により形成されている、目付が670~1270g/m
2
である電磁波シールド用めっき繊維布である。
【0011】
(2)第2の発明は、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維のいずれか1種以上を含む第1繊維の上に、銅又は銀のいずれか1種以上からなる厚さ1~5μmの第1めっき層を有してなる第1めっき繊維により形成されている、目付が670~1270g/m
2
である第1めっき繊維布と、
アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維のいずれか1種以上を含む第2繊維の上に、ニッケル、ニッケル-鉄合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト又はコバルト-鉄合金のいずれか1種類以上からなる厚さ0.5~3μmの第2めっき層を有してなる第2めっき繊維により形成されている、目付が670~1270g/m
2
である第2めっき繊維布とが、
重ねられてなることを特徴とする電磁波シールド用めっき繊維布である。
【0012】
[作用]
第一の発明又は第二の発明に係る電磁波シールド用めっき繊維布は、ベースが繊維布であるから軽量である。また、繊維がアラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維であるから、高抗張力であり、繊維布の高強度とさらなる軽量化とを両立させることができる。
そして、銅又は銀のいずれか1種以上からなる厚さ1~5μmの第1めっき層は、主に高周波の電場に対するシールド効果を発揮する。また、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維のいずれか1種以上を含む繊維の上に、ニッケル、ニッケル-鉄合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト又はコバルト-鉄合金のいずれか1種類以上からなる厚さ0.5~3μmの第2めっき層は、主に低周波の電場および磁場に対するシールド効果を発揮する。
しかも、めっき繊維布の目付が670~1270g/m
2
であることにより、該電磁波シールド効果と柔軟性及びコストを両立させやすい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量かつ高強度で、低周波領域から高周波領域までの電磁波シールド効果が高く、しかも該電磁波シールド効果と柔軟性及びコストを両立させやすいめっき繊維布を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は実施例1~3の電磁波シールド用めっき繊維布を順次拡大して示す図である。
【
図2】
図2は実施例4,5の電磁波シールド用めっき繊維布を順次拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1>めっき繊維布
めっき繊維布、第1めっき繊維、第2めっき繊維はそれぞれ、織布でもよいし、不織布でもよい。
目付は、特に限定されないが、電磁波シールド効果と柔軟性及びコストを両立させやすい点で、670~1270g/m2 が好ましい。
第2発明において、第1めっき繊維と第2めっき繊維は、接合されていることが好ましい。接合手段としては、接着、縫合、ステープル等を例示できる。
【0016】
<2>繊維
繊維、第1繊維、第2繊維は、前記のとおり、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル繊維又はPBO繊維のいずれか1種以上を含むものとする。これらの繊維は高抗張力であり、めっき繊維布の強度確保と軽量化を図れるからである。抗張力が13cN/dtex以上の繊維が好ましい。
第1繊維と第2繊維は、同じものでもよいし、異なるものでもよい。
繊維、第1繊維、第2繊維は、モノフィラメントでも、マルチフィラメント(複数本のフィラメントの束)でもよい。
1本のフィラメントの直径は、特に限定されず、10~200μmを例示できる。マルチフィラメントの場合、1本のフィラメントの直径は10~25μmが好ましい。
繊維、第1繊維、第2繊維の繊度は、特に限定されないが、電磁波シールド効果と柔軟性を両立させやすい点で、440~1700dtexが好ましい。
【0017】
第1発明において、めっき繊維布が織布である場合、
繊維はマルチフィラメントであり、その各フィラメントの上に第1めっき層と第2めっき層とを有する態様が好ましい。めっき層の面積が大きくなり、電磁波シールド効果の点で有利となるからである。
【0018】
さらに、同繊維はフィラメント束が平行に揃えられたマルチフィラメントであることが好ましい。同繊維は織布に織られると、断面偏平に変形して幅広となり、織目の隙間を減少させるように作用するため、電磁波シールド効果が高くなる。
【0019】
第2発明において、第1めっき繊維布及び第2めっき繊維布が織布である場合、
第1繊維はマルチフィラメントであり、その各フィラメントの上に第1めっき層を有し、
第2繊維は、マルチフィラメントであり、その各フィラメントの上に第2めっき層を有する態様が好ましい。めっき層の面積が大きくなり、電磁波シールド効果の点で有利となるからである。
【0020】
さらに、第1繊維及び第2繊維はフィラメント束が平行に揃えられたマルチフィラメントであることが好ましい。第1繊維及び第2繊維はそれぞれ織布に織られると、断面偏平に変形して幅広となり、織目の隙間を減少させるように作用するため、電磁波シールド効果が高くなる。
【0021】
<3>第1めっき層
第1めっき層の膜厚は、特に限定されないが、電磁波シールド効果とコストを両立させやすい点で、0.5~5μmが好ましい。
第1めっき層の形成方法としては、無電解めっき、電気めっき、無電解めっきの後に電気めっき、等を例示できる。
【0022】
<4>第2めっき層
第2めっき層は、ニッケル、ニッケル-鉄合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト又はコバルト-鉄合金に、ネオジム等の微粒子を導入した、複合めっきを含む。
第2めっき層の膜厚は、特に限定されないが、電磁波シールド効果とコストと両立させやすい点で、0.5~3μmが好ましい。
第2めっき層の形成方法としては、無電解めっき、電気めっき、無電解めっきの後に電気めっき、等を例示できる。
【0023】
<5>その他
<5-1>前処理
繊維は、めっき処理前に、めっき付着性向上等を目的とする前処理を行うことが好ましい。前処理としては、特に限定されないが、次の(a)(b)を例示できる。
(a)湿式前処理
アルカリエッチング→中和→表面調整→触媒付与→活性化、の順で行うことができる。
表面調整は、例えば、カチオン界面活性剤液に浸漬して行うことができる。
触媒付与は、例えば、錫-パラジウムコロイドに浸漬して行うことができる。
活性化は、例えば、酸またはアルカリ液に浸漬してコロイドの塩化第一錫を溶解する工程である。
(b)乾式前処理
超臨界核付け→熱処理(還元)、の順で行うことができる。
超臨界核付けは、高温・高圧で超臨界状態になるパラジウム錯体をチャンバーにいれ、超臨界状態でパラジウムを繊維に付着させることで行うことができる。
【0024】
<5-2>変色防止層
めっき繊維は、最外層として変色防止層を有することが好ましい。変色防止層の変色防止剤としては、特に限定されないが、チオエーテル系、チオール系、Ni系有機化合物系、ベンゾトリアゾール系、イミダゾール系、オキサゾール系、テトラザインデン系、ピリミジン系、チアジアゾール系等を例示できる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。実施例1~3は第1の発明を具体化したものであり、実施例4,5は第2の発明を具体化したものである。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0026】
[実施例1]
実施例1の電磁波シールド用めっき繊維布1は、
図1に示すように、繊維2上に、内層としての銅からなる第1めっき層3と、外層としてのニッケル-鉄合金からなる第2めっき層4と、最外層の変色防止層5とを有してなるめっき繊維6により、平織されてなるめっき繊維布である。
【0027】
詳しくは、繊維2は、繊度が1670dtex-300f(フィラメント2aが300本集まって1束(1670dtex)となる)であるポリアリレート繊維束である。その各フィラメント2a(直径は22μm)の上に、第1めっき層3と第2めっき層4とが形成されている。
【0028】
第1めっき層3は、無電解めっきにより形成された膜厚0.2μm分(下記(2))と、電気めっきにより形成された膜厚1.8μm分(下記(3))との合計の、膜厚2μmのものである。
第2めっき層4は、膜厚を0.5μm,1μm,1.5μm,2μmと異ならせ(下記(4))、それぞれ実施例1-1,1-2,1-3,1-4とした。
【0029】
このめっき繊維布1は、次のように作製した。
(1)フィラメント2aを湿式前処理法で前処理した。湿式前処理法は、前述したアルカリエッチング→酸中和→表面調整→触媒付与→活性化の順に、前述した材料にて行った。膜厚約50nmの触媒(パラジウム核)(図示略)が繊維の上に接して付着した。
【0030】
(2)フィラメントの上に触媒に接して膜厚0.2μmの銅めっき層を、無電解銅めっきにより形成した。使用しためっき液は、次の組成の水溶液である。EDTA-4Naはエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムである。
硫酸銅 15g/L
ホルマリン 3g/L
EDTA-4Na 35g/L
水酸化ナトリウム 5g/L
安定剤 少量
潤滑剤 少量
【0031】
(3)銅めっき層の上に接して膜厚1.8μmの銅めっき層を、電気めっきにより形成した。使用しためっき液は、次の組成の水溶液である。
硫酸銅 200g/L
硫酸 50g/L
【0032】
(4)銅めっき層に接して実施例毎に膜厚0.5μm,1μm,1.5μm,2μmのニッケル-鉄合金めっき層を、電気めっきにより形成した。使用しためっき液は、次の組成の水溶液であり、PH2.5、液温50℃に調整した。アノードにニッケル60%-鉄40%合金を用い、電流密度3.5A/dm2 にて電気めっきした。
硫酸ニッケル 0.95mol/L
塩化ニッケル 0.17mol/L
ホウ酸 0.49mol/L
【0033】
(5)ニッケル-鉄合金めっき層に接して変色防止剤を塗布して変色防止層を形成した。使用した変色防止剤は、奥野製薬工業社製の商品名「トップ防錆剤Y」である。
【0034】
(6)以上のようにして作製しためっきフィラメントの束を平行に揃えて、ダイヤ巻きにしてボビンに巻き取って、めっき繊維6とした。
【0035】
(7)このめっき繊維6を平織して、めっき繊維布1とした。
図1に示すように、めっき繊維6は織られると断面偏平に変形して幅広となり、織目の隙間を減少させた。めっき繊維布1の目付は、実施例1-1が792g/m
2 、実施例1-2が910g/m
2 、実施例1-3が1028g/m
2 、実施例1-4が1146g/m
2 である。
【0036】
[実施例2]
実施例2の電磁波シールド用めっき繊維布は、第2めっき層4が膜厚1μmのニッケル-コバルト合金めっき層である点においてのみ実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
【0037】
このめっき繊維布は、実施例1と同様の(1)~(3)を行った後、銅めっき層に接してニッケル-コバルト合金めっき層を、電気めっきにより形成した。使用しためっき液は、次の組成の水溶液であり、PH4、液温45℃に調整した。アノードにニッケル35%-コバルト65%合金を用い、電流密度2A/dm2 にて電気めっきした。その後、実施例1と同様の(5)の変色防止層を形成した。
硫酸ニッケル 130g/L
硫酸コバルト 110g/L
ホウ酸 20g/L
塩化カリウム 10g/L
【0038】
[実施例3]
実施例3の電磁波シールド用めっき繊維布は、第2めっき層4が膜厚1μmのコバルトめっき層である点においてのみ実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
【0039】
このめっき繊維布は、実施例1と同様の(1)~(3)を行った後、銅めっき層に接してコバルトめっき層を、電気めっきにより形成した。使用しためっき液は、次の組成の水溶液であり、PH3、液温25℃に調整した。アノードに不溶性陽極(チタンに膜厚1μmのプラチナめっきを施したもの)を用い、電流密度2A/dm2 にて電気めっきした。その後、実施例1と同様の(5)変色防止層を形成した。
スルファミン酸コバルト 200g/L
ホウ酸 30g/L
【0040】
[実施例4]
次に、実施例4の電磁波シールド用めっき繊維布11は、
図2に示すように、第1繊維12上に銅からなる第1めっき層13と変色防止層15とを有してなる第1めっき繊維16により平織されてなる第1めっき繊維布17と、第2繊維22上に(銅からなる導電性付与層を含む)ニッケル-鉄合金からなる第2めっき層24と変色防止層25を有してなる第2めっき繊維26により平織されてなる第2めっき繊維布27とが、重ねられてなるものである。
【0041】
詳しくは、第1めっき繊維布17の第1繊維12は、実施例1と同じポリアリレート繊維であり、そのフィラメント12aの上に第1めっき層13が形成されている。
第2めっき繊維布27の第2繊維22も、実施例1と同じポリアリレート繊維であり、そのフィラメント22aの上に第2めっき層24が形成されている。
【0042】
第1めっき層13は、無電解めっきにより形成された膜厚0.2μm分(下記(2))と、電気めっきにより形成された膜厚1.8μm分(下記(3))との合計である、膜厚2μmのものである。
第2めっき層24は、ニッケルの無電解めっきにより形成された膜厚0.3μm分(下記(ii))と、ニッケル-鉄合金の電気めっきにより形成された膜厚1.7μm分(下記(iii))との合計の、膜厚2μmのものである。
【0043】
第1めっき繊維布17は、次のように作製した。
(1)フィラメント12aを湿式前処理法で前処理した。詳細は、実施例1の(1)と同様である。
(2)フィラメントの上に触媒に接して膜厚0.2μmの銅めっき層を、無電解銅めっきにより形成した。詳細は、実施例1の(2)と同様である。
(3)銅めっき層の上に接して膜厚1.8μmの銅めっき層を、電気めっきにより形成した。詳細は、実施例1の(3)と同様である。
(4)銅めっき層に接して変色防止剤を塗布して変色防止層を形成した。詳細は、実施例1の(5)と同様である。
(5)以上のようにして作製しためっきフィラメントを集束させ撚りをかけて、第1めっき繊維16とした。
(6)この第1めっき繊維16を平織して、第1めっき繊維布17とした。第1めっき繊維布17の目付は、674g/m2 である。
【0044】
第2めっき繊維布27は、次のように作製した。
(i)フィラメント22aを湿式前処理法で前処理した。詳細は、実施例1の(1)と同様である。
(ii)フィラメントの上に触媒に接して膜厚0.3μmの銅めっき層(導電性付与層)を、無電解銅めっきにより形成した。詳細は、実施例1の(2)と同様である。
(iii)銅めっき層の上に接して膜厚1.7μmのニッケル-鉄合金めっき層を、電気めっきにより形成した。詳細は、実施例1の(4)と同様である。
(iv)ニッケル-鉄合金めっき層に接して変色防止剤を塗布して変色防止層を形成した。詳細は、実施例1の(5)と同様である。
(v)以上のようにして作製しためっきフィラメントの繊維束を平行に揃えて、ダイヤ巻きにしてボビンに巻き取って、第2めっき繊維26とした。
(vi)この第2めっき繊維26を平織して、第2めっき繊維布27とした。第2めっき繊維布27の目付は、829g/m2 である。
【0045】
そして、第1めっき繊維布17と第2めっき繊維布27とを重ね合わせ、縫合にて接合して、めっき繊維布11とした。
【0046】
[実施例5]
実施例5の電磁波シールド用めっき繊維布は、第2めっき繊維の第2めっき層が膜厚1μmのニッケルめっき層である点においてのみ実施例4と相違し、その他は実施例4と共通である。
【0047】
この第2めっき繊維は、実施例4と同様の(i)~(ii)を行った後、銅めっき層(導電性付与層)に接してニッケルめっき層を、電気めっきにより形成した。使用しためっき液は、次の組成の水溶液であり、PH4、液温50℃に調整した。アノードにニッケル100%を用い、電流密度3A/dm2 にて電気めっきした。その後、実施例4と同様の(iv)の変色防止層を形成した。
硫酸ニッケル 250g/L
塩化ニッケル 50g/L
ホウ酸 45g/L
【0048】
[比較例1]
実施例4の第1めっき繊維布17の単体を、比較例1とした。
【0049】
[比較例2]
実施例4の第2めっき繊維布27の単体を、比較例2とした。
【0050】
[電磁波シールド効果]
以上のとおり作製した実施例1~5、比較例1,2について、り電磁波シールド効果をアドバンテスト法によ測定した。測定結果を次の表1に示す。
【0051】
【0052】
表1のとおり、比較例1はシールド効果が高周波領域では高いが、低周波領域では低い。比較例2はシールド効果が低周波領域では高いが、高周波領域では低い。実施例1~5はシールド効果が低周波領域でも高周波領域でも高い。
【0053】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 めっき繊維布
2 繊維
2a フィラメント
3 第1めっき層
4 第2めっき層
5 変色防止層
6 めっき繊維
11 めっき繊維布
12 第1繊維
12a フィラメント
13 第1めっき層
15 変色防止層
16 めっき繊維
17 めっき繊維布
22 第2繊維
22a フィラメント
24 第2めっき層
25 変色防止層
26 めっき繊維
27 めっき繊維布