(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ツース盤
(51)【国際特許分類】
E02F 3/40 20060101AFI20240124BHJP
E02F 9/28 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E02F3/40 B
E02F9/28 A
(21)【出願番号】P 2023023466
(22)【出願日】2023-02-17
【審査請求日】2023-02-17
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309012616
【氏名又は名称】生企工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】本村 安紀
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-125180(JP,A)
【文献】特開2016-089499(JP,A)
【文献】特開2017-020314(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200239(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-2315125(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3186592(JP,U)
【文献】登録実用新案第3052290(JP,U)
【文献】特開2022-093886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/40
E02F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベル機械用のバケット底部先端に所定の間隔で固着されたアダプタに対し、それぞれ連結されることによって互いに連接した状態で左右一列に配置されるツース盤であって、
上記アダプタが挿入されるアダプタ挿入部と、
上記アダプタ挿入部の前方に形成された刃部と、
上記アダプタ挿入部の左右両側に形成された平板状部とを備え、
上記アダプタ挿入部が、上記平板状部に対して上記バケットの内側と同じ側となる表側に配置されることにより、上記平板状部と上記バケット底部先端とが段違い状の配置関係となり、前方から見て当該平板状部と上記バケット底部先端との間に段差方向のギャップが形成されるようになっており、
左右一列に配置された複数の上記ツース盤は、連接する上記平板状部の少なくとも一部が互いに重なった状態で、左右にスライド移動することにより、複数の上記ツース盤の全体の幅が調整可能に構成されており、
左右に連接する一方の上記ツース盤における上記平板状部が、他方の上記ツース盤における上記平板状部から露出して溝底となる溝状部が形成されることにより、当該溝状部において上記段差方向のギャップが大きくなるように構成され、
前方から見て
上記ギャップにおける少なくとも上記溝状部の全体を前後方向に遮蔽することにより、上記溝状部から上記バケットの裏側へ土砂が漏れるのを防ぐ遮蔽部を備え
、
上記平板状部は、上記アダプタ挿入部の斜め後ろ側に配置された部分である後部を有しており、
上記遮蔽部は、上記後部に一体形成され、且つ上記後部から上記表側に突設されている、ツース盤。
【請求項2】
請求項1に記載のツース盤において、
上記アダプタ挿入部の側部に設けられて側方に延びる板状の連結部を備え、
上記連結部は、当該ツース盤に隣接する上記他方のツース盤における上記平板状部に対向配置されて、互いに連接する上記ツース盤同士を連結するように構成され、
上記他方のツース盤における上記平板状部の表面であって、上記連結部に一部が対向する上記表面は、平坦な面に形成されている、ツース盤。
【請求項3】
請求項1に記載のツース盤において、
上記遮蔽部は、連接する他の上記ツース盤における上記平板状部を左右にガイドする、ツース盤。
【請求項4】
請求項1に記載のツース盤において、
上記平板状部は、上記アダプタ挿入部の斜め後側に配置された部分である後部を有しており、
上記遮蔽部は、上記平板状部の後部に突設されており、
上記遮蔽部から前方に延設されることにより、上記平板状部の後部と上記アダプタが配置される側とを遮蔽する延設部を有している、ツース盤。
【請求項5】
請求項1に記載のツース盤において、
上記遮蔽部は、上記バケット底部先端の少なくとも一部を前方から覆うように形成されている、ツース盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル機械用のバケットの底部先端に装着されるツース盤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、ショベル機械のバケットには、その底部先端位置に複数のアダプタが所定の間隔で固着されている。ツース盤は、各アダプタにそれぞれ装着される。これにより、バケットの底部先端には、複数のツース盤が横並び状態で連接して配置されることとなる。バケットに装着されたツース盤は、土砂の掘削や整地などに利用される。
【0003】
ツース盤は、連接するツース盤同士の左右の重なり幅が増減可能になっており、連接するツース盤全体の幅が調整可能になっている。そのことにより、ツース盤は、アダプタの間隔が異なる複数種類のバケットに適合して装着できるようになっている。
【0004】
すなわち、ツース盤は、アダプタが挿入されるアダプタ挿入部と、その左右に形成された左平板状部及び右平板状部とを有している。例えば、左側ツース盤における右平板状部には、右側ツース盤の左平板状部が重ねられる。そして、右側ツース盤の左平板状部が、左側ツース盤の右平板状部の表面に沿って左右にスライド移動することにより、複数のツース盤全体の幅が調整される。
【0005】
そして、連接するツース盤全体の幅が広げられたとき、右側ツース盤の左平板状部から左側ツース盤の右平板状部が露出して溝底となる溝状部が形成される。ツース盤全体の幅が広がるに連れて、溝状部の幅も広くなる。
【0006】
ところで、特許文献1のツース盤は、バケットの底部先端がツース盤の平板状部よりも表側に配置されている。ここで、
図12は、アダプタに連結された従来のツース盤100を示す側面図である。
図13及び
図14は、それぞれ、互いに連接した従来のツース盤100を示す斜視図及び底面図である。
【0007】
図12~
図14に示すように、アダプタ挿入部101は、右平板状部102及び左平板状部107よりも表側(バケットの内側であって
図12で上側)に配置されている。そのことにより、ツース盤100は、横方向に延びる取付ピン106によってアダプタ103に固定できるようになっている。
【0008】
したがって、アダプタ103がアダプタ挿入部101に挿入された状態で、バケットの底部先端104は、右平板状部102及び左平板状部107よりも表側に配置されることとなる。すなわち、右平板状部102及び左平板状部107とバケット底部先端とは、段違い状の配置関係となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来のツース盤では、段違い状の配置関係となっている平板状部102,107とバケット底部先端104との間に、
図12で上下方向のギャップSが生じてしまう。そのため、ツース盤100にすくい取られた土砂が、このギャップSを通じてバケットの裏側へ漏れ出てしまうおそれがある。
【0011】
特に、連接するツース盤100同士の間に形成される溝状部105ではギャップSが大きくなるため、土砂がバケットの裏側へ漏れ出やすくなる。さらに、連接するツース盤100全体の幅を広げたときは、これに伴って溝状部105の溝幅も大きくなるので、この問題はより顕著になる。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、すくい取られた土砂がバケットの裏側へ漏れ出にくいツース盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るツース盤は、ショベル機械用のバケット底部先端に所定の間隔で固着されたアダプタに対し、それぞれ連結されることによって互いに連接した状態で左右一列に配置されるツース盤であって、上記アダプタが挿入されるアダプタ挿入部と、上記アダプタ挿入部の前方に形成された刃部と、上記アダプタ挿入部の左右両側に形成された平板状部とを備えている。そして、上記アダプタ挿入部が、上記平板状部に対して上記バケットの内側と同じ側となる表側に配置されることにより、上記平板状部と上記バケット底部先端とが段違い状の配置関係となり、前方から見て当該平板状部と上記バケット底部先端との間に段差方向のギャップが形成されるようになっており、左右一列に配置された複数の上記ツース盤は、連接する上記平板状部の少なくとも一部が互いに重なった状態で、左右にスライド移動することにより、複数の上記ツース盤の全体の幅が調整可能に構成されており、左右に連接する一方の上記ツース盤における上記平板状部が、他方の上記ツース盤における上記平板状部から露出して溝底となる溝状部が形成されることにより、当該溝状部において上記段差方向のギャップが大きくなるように構成され、前方から見て上記ギャップにおける少なくとも上記溝状部の全体を前後方向に遮蔽することにより、上記溝状部から上記バケットの裏側へ土砂が漏れるのを防ぐ遮蔽部を備え、上記平板状部は、上記アダプタ挿入部の斜め後ろ側に配置された部分である後部を有しており、上記遮蔽部は、上記後部に一体形成され、且つ上記後部から上記表側に突設されている。
【0014】
すなわち、ツース盤前端の刃部ですくい取られた土砂は、後方の平板状部及びバケット底部先端を通じてバケット内に集められる。このとき、段違い状の配置関係となっている平板状部とバケット底部先端との間には段差方向のギャップが形成されている。ここで、複数のツース盤の全体の幅が調整可能な構成であるときは、すくい取られた土砂の経路に、ギャップに至る溝状部が形成される。つまり、ギャップは溝状部において大きくなる。よって、従来のように遮蔽部を設けない場合には、ギャップからバケットの裏側へ漏れ出る土砂の量が多くなってしまう問題がある。これに対し、上記ツース盤では、特にギャップが大きくなる溝状部を遮蔽部によって遮蔽するようにしたので、溝状部からバケットの裏側へ土砂が漏れ出るのを防止することが可能になる。
【0015】
さらに、上記アダプタ挿入部の側部に設けられて側方に延びる板状の連結部を備え、上記連結部は、当該ツース盤に隣接する上記他方のツース盤における上記平板状部に対向配置されて、互いに連接する上記ツース盤同士を連結するように構成され、上記他方のツース盤における上記平板状部の表面であって、上記連結部に一部が対向する上記表面は、平坦な面に形成されているようにしてもよい。
【0016】
このことにより、ツース盤を一つずつバケットのアダプタに装着していくことが可能になる。
【0017】
さらに、上記遮蔽部は、連接する他の上記ツース盤における上記平板状部を左右にガイドするようにしてもよい。
このような遮蔽部を有することにより、バケット裏側への土砂の漏出を抑制しつつ、連接する他のツース盤をその平板状部においてガイドしてツース盤全体を適切に幅調整できることとなる。
【0018】
さらにまた、上記平板状部は、上記アダプタ挿入部の斜め後側に配置された部分である後部を有しており、上記遮蔽部は、上記平板状部の後部に突設されており、上記遮蔽部から前方に延設されることにより、上記平板状部の後部と上記アダプタが配置される側とを遮蔽する延設部を有していてもよい。
【0019】
このように、延設部を有することにより、平板状部とバケット底部先端とのギャップからの土砂の漏出を抑制すると同時に、平板状部の後部からアダプタ側へ向かおうとする土砂の漏出を延設部によって抑制できる。
【0020】
また、上記遮蔽部は、上記バケット底部先端の少なくとも一部を前方から覆うように形成されていてもよい。このような構成にすれば、遮蔽部によって、バケット裏側への土砂の漏出を抑制しつつ、バケット底部先端の損耗を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、すくい取られた土砂がバケットの裏側へ漏れ出にくいツース盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、バケットに装着された複数のツース盤を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態1のツース盤を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態1のツース盤を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態1のツース盤を示す底面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態1のツース盤を示す右側面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態1における互いに連接した複数のツース盤を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態1における互いに連接した複数のツース盤を示す正面図である。
【
図8】
図8は、アダプタに連結された本実施形態1のツース盤を示す右側面図である。
【
図9】
図9は、アダプタに連結された本実施形態2のツース盤を示す右側面図である。
【
図10】
図10は、アダプタに連結された本実施形態2のツース盤を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、アダプタに連結された本実施形態2のツース盤を示す底面図である。
【
図12】
図12は、アダプタに連結された従来のツース盤を示す右側面図である。
【
図13】
図13は、互いに連接した従来のツース盤を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、互いに連接した従来のツース盤を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
《実施形態1》
【0024】
図1は、バケット1に装着された複数のツース盤11,12,13を示す斜視図である。
図2~
図5は、本実施形態1のツース盤11(中央ツース盤11)を示している。
図6及び
図7は、本実施形態1における互いに連接した複数のツース盤11,12,13を示している。
図8は、アダプタ2に連結された本実施形態1のツース盤11を示している。
【0025】
本実施形態において、
図1でツース盤11,12,13の上側を「表側」といい、
図1でツース盤11,12,13の下側を「裏側」という。また、
図1でバケット1の先端側及び
図3で下側を「前方」といい、
図3で上側を「後方」という。
【0026】
図1に示すように、バケット1はショベル機械用のバケットである。バケット1の底部先端3には、複数のアダプタ2が所定の間隔で溶接等により固着されている。ツース盤11,12,13は、それぞれアダプタ2に連結されることにより、バケット1に装着されている。ツース盤11,12,13は、例えば鋳鋼によって形成されている。
【0027】
ここで、
図6及び
図7に示すように、複数のツース盤11,12,13は、アダプタ2に連結されることによって互いに連接した状態で左右一列に配置されている。このツース盤11,12,13の列には、表側の正面から見て左端に設けられた左端ツース盤12と、右端に設けられた右端ツース盤13と、左端ツース盤12及び右端ツース盤13の間に配置された3枚の中央ツース盤11とが含まれる。以降では、本実施形態の特徴について、主に中央ツース盤11を例に挙げて説明するが、左端ツース盤12についても同様である。
【0028】
複数のツース盤11,12,13は、例えば5枚構成でバケット1に装着されることにより、土砂の掘削、運搬又は地均しを行うようになっている。尚、ツース盤11,12,13の枚数は5枚に限らず、バケット先端の幅に応じてその他の複数枚であってもよい。例えば、左端ツース盤12及び右端ツース盤13の2枚からなるツース盤12,13をバケット1に装着してもよく、左端ツース盤12及び右端ツース盤13の2枚と、1枚以上の中央ツース盤11とからなる3枚以上のツース盤11,12,13をバケット1に装着してもよい。
【0029】
図1~
図8に示すように、中央ツース盤11、左端ツース盤12及び右端ツース盤13は、それぞれ全体として板状に形成されており、その中央から後端に至る部分(言い換えれば基端部)には、アダプタ2が挿入されるアダプタ挿入部5が形成されている。一方、各ツース盤11,12,13の前端部(言い換えれば先端部)には、刃部7が形成されている。すなわち、刃部7は、アダプタ挿入部5の前方に形成されている。
【0030】
アダプタ挿入部5の左右両側には、平板状部15,16,25,36が形成されている。すなわち、中央ツース盤11は、アダプタ挿入部5の左側に形成された左平板状部15と、アダプタ挿入部5の右側に形成された右平板状部16とを有している。
【0031】
また、左端ツース盤12は、アダプタ挿入部5の左側に形成された左平板状部25と、アダプタ挿入部5の右側に形成された右平板状部16とを有している。さらに、右端ツース盤13は、アダプタ挿入部5の左側に形成された左平板状部15と、アダプタ挿入部5の右側に形成された右平板状部36とを有している。
【0032】
アダプタ挿入部5は、アダプタ2が嵌挿される凹陥部4を有している。また、
図5及び
図8に示すように、アダプタ挿入部5は、平板状部15,16,25,36に対して、バケット1の内側と同じ側となる表側(
図8で上側)に配置される。
【0033】
アダプタ2の先端は、平板状部15,16,25,36の表側において、アダプタ挿入部5の凹陥部4に挿入される。そのことにより、平板状部15,16とバケット1の底部先端3との間にギャップSが形成される。すなわち、平板状部15,16とバケット1の底部先端3とが段違い状の配置関係となっており、これらの間に
図8で上下方向のギャップSが生じる。
【0034】
アダプタ挿入部5の左右両側部には、ツース盤11,12,13をアダプタ2に固定するためのピン穴6が形成されている。一方、アダプタ2には、ピン穴6に対応して左右横方向に延びる穴部(図示省略)が形成されている。そうして、凹陥部4にアダプタ2が挿入され、ピン穴6がアダプタ2の穴部に連続するように位置づけられた状態で、これらピン穴6及び穴部に取付ピン8を挿入して固定する。そのことにより、ツース盤11,12,13は、アダプタ2に連結固定される。
【0035】
中央ツース盤11及び左端ツース盤12は、アダプタ挿入部5の右側部に設けられて右方に延びる板状の連結部17を備えている。連結部17は、右平板状部16に対向している。連結部17は、右平板状部16と共に、互いに連接するツース盤11,12,13同士を連結するためのものである。一方、右端ツース盤13は、アダプタ挿入部5の右側部に設けられて右方に延びる突出部37を備えている。
【0036】
さらに、中央ツース盤11及び右端ツース盤13は、左平板状部15の前側部分において表側に膨出した段差部18を有している。段差部18は、左側に隣接するツース盤11,12の連結部17の前端を支持可能に構成されている。すなわち、段差部18は、左側に隣接するツース盤11,12の前方への脱落を防止するストッパとして機能するようになっている。
【0037】
右端ツース盤13は、右平板状部36の前側部分において表側に膨出した段差部38を有している。また、左端ツース盤12は、左平板状部28の前側部分において表側に膨出した段差部28を有している。段差部28及び段差部38は、板厚に形成されることにより、耐摩耗性が高められている。
【0038】
ここで、
図6及び
図7に示すように、左右一列に配置された複数のツース盤11,12,13は、連接する平板状部15,16の少なくとも一部が互いに重なった状態で、左右にスライド移動することにより、複数のツース盤11,12,13の全体の幅が調整可能に構成されている。
【0039】
すなわち、中央ツース盤11及び左端ツース盤12の右平板状部16は、その右隣のツース盤11,13における左平板状部15と一部が重なっている。そして、左右に連接する一方のツース盤11,12における右平板状部16が、他方のツース盤11,13における左平板状部15から露出して溝底22となる溝状部23が形成されている。
【0040】
隣り合うツース盤11,12,13同士が互いに近づくように左右にスライド移動すると、平板状部15,16同士の重なり幅が広くなり、溝状部23の溝幅が狭くなって溝底22の露出面積が小さくなる。一方、隣り合うツース盤11,12,13同士が互いに離れるように左右にスライド移動すると、平板状部15,16同士の重なり幅が狭くなり、溝状部23の溝幅が広くなって溝底22の露出面積が大きくなる。
【0041】
このように、ツース盤11,12,13を左右にスライド移動させることにより、アダプタ2のピッチが異なる複数種類のバケット1に対応して、ツース盤11,12,13を装着させることができる。
【0042】
そして、
図8に示すように、ツース盤11,12は、平板状部15,16とバケット1の底部先端3とのギャップSの少なくとも一部を前後方向に遮蔽する遮蔽部20を備えている。そうして、平板状部15,16を前方から後方へ移動する土砂を遮蔽するようになっている。
【0043】
ここで、
図3に示すように、右平板状部16は、アダプタ挿入部5の斜め後側に配置された部分である後部16aを有している。そして、この右平板状部16の後部16aに遮蔽部20が突設されている。
図8に示すように、遮蔽部20の突出端は、バケット1の底部先端3の裏面近傍まで至っている。
【0044】
遮蔽部20は、後部16aの後縁に沿って左右に延びる壁状に形成されている。こうして、
図7に示すように、遮蔽部20は、ツース盤11,12、13が連接した状態で、右平板状部16の溝状部23においてギャップSを前後方向Aに遮蔽すると共に、左平板状部15の左側部分においてギャップSを前後方向Aに遮蔽することとなる。
【0045】
さらに、遮蔽部20は、後部16aの後縁に沿って左右に延びることにより、連接する他のツース盤11,13における左平板状部15を左右にガイドすることが可能になっている。
【0046】
また、ツース盤11,12は、遮蔽部20から前方に延設されることにより、右平板状部16の後部16aとアダプタ2が配置される側とを遮蔽する延設部21を有している。延設部21は、右平板状部16の後部16aにおける左縁に沿って前後に延びる壁状に形成されており、遮蔽部20と一体となっている。そうして、延設部21は、右平板状部16の後部16a上の土砂が、アダプタ2側である左方へ移動しないように遮蔽する。
【0047】
延設部21は、その左右方向の厚み分だけ右平板状部16の左縁から右方に出っ張っている。この凸形状に対応して、左平板状部15は、その左縁部が右方に窪んでいる。そのことにより、延設部21がツース盤11,13の左方への移動を阻害しないようになっている。
【0048】
上記ツース盤11,12,13をバケット1に装着する場合、まず、左端ツース盤12を左端のアダプタ2に装着した状態で、取付ピン8をピン穴6に固定する。そのことにより、左端ツース盤12をアダプタ2に連結固定する。
【0049】
次に、中央ツース盤11を、左端ツース盤12に隣接する位置でアダプタ2に装着する。すなわち、中央ツース盤11の左平板状部15を、左端ツース盤12の連結部17と右平板状部16との間に差し込む。このとき、中央ツース盤11を遮蔽部20及び連結部17に沿って左右にスライド移動させることにより、アダプタ挿入部5の位置をアダプタ2に合わせる。続いて、この位置合わせ状態で取付ピン8をピン穴6に固定することにより、中央ツース盤11をアダプタ2に連結固定する。
【0050】
次に、残る2つの中央ツース盤11についても同様に、その左平板状部15を、左側の中央ツース盤11の連結部17と右平板状部16との間に差し込みつつ左右に位置合わせした状態で、取付ピン8によりアダプタ2に連結固定する。
【0051】
その後、右端ツース盤13を、中央ツース盤11に隣接する位置でアダプタ2に装着する。すなわち、右端ツース盤13の左平板状部15を、中央ツース盤11の連結部17と右平板状部16との間に差し込みつつ左右に位置合わせした状態で、取付ピン8によりアダプタ2に連結固定する。このようにして、ツース盤11,12,13をバケット1に装着する。
【0052】
このように、本実施形態1のツース盤11,12,13によれば、その前端の刃部7ですくい取られた土砂は、後方の左平板状部15及び右平板状部16からバケット1の底部先端3を通じてバケット1内に集められる。このとき、段違い状の配置関係となっている左平板状部15及び右平板状部16とバケット1の底部先端3との間にギャップSが形成されているが、そのギャップSの少なくとも一部が遮蔽部20によって遮蔽されているため、ギャップSからバケット1の裏側へ土砂が漏れ出るのを抑制することができる。
【0053】
特に、本実施形態1のツース盤11,12,13は、その全体の幅が調整可能な構成であって、全体幅が広げられたときに右平板状部16の一部が左平板状部15から露出して、溝状部23が形成される。すなわち、ツース盤11,12,13にすくい取られた土砂の経路に、ギャップSに至る溝状部23が形成されることとなる。
【0054】
この場合、ギャップSは、溝状部23において大きくなってしまう。したがって、遮蔽部20を設けない従来のツース盤では、ギャップSからバケット1の裏側へ漏れ出る土砂の量が多くなってしまう問題がある。これに対し、本実施形態1におけるツース盤11,12では、特にギャップSが大きくなる溝状部23を遮蔽部20によって前後方向Aに遮蔽するようにしたので、ギャップSからバケット1の裏側へ土砂が漏れ出るのをより好適に抑制できる。
【0055】
さらに、遮蔽部20を、連接する他のツース盤11,13における左平板状部15を左右にガイドする構成としたので、バケット1の裏側への土砂の漏出を抑制しつつ、連接する他のツース盤11,13をその左平板状部15においてガイドしてツース盤11,12,13の全体を適切に幅調整することができる。
【0056】
加えて、遮蔽部20が右平板状部16の後部16aに突設されており、遮蔽部20から前方に延設された延設部21を有する構成としたので、右平板状部16の後部16aアダプタ2が配置される側とを延設部21によって遮蔽することができる。したがって、平板状部15,16とバケット1の底部先端3とのギャップSからの土砂の漏出を抑制すると同時に、右平板状部16の後部16aからアダプタ2側へ向かおうとする土砂の漏出を抑制することができる。
《実施形態2》
【0057】
図9~
図11は、実施形態2のツース盤11(中央ツース盤11)を示している。尚、本実施形態2では、上記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施形態2における遮蔽部40は、バケット底部先端3の少なくとも一部を前方から覆うように形成されている。遮蔽部40は右平板状部16の後部16aに突設されており、その突出端がバケット1の底部先端3における表側面(
図9で上側面)の近傍まで至っている。そのことにより、遮蔽部40はバケット1の底部先端3における前端面に対して前後方向Aに重なっている。こうして、遮蔽部40は、段違い状の配置関係となっている平板状部15,16とバケット底部先端3とのギャップSを前後方向Aに遮蔽すると共に、バケット底部先端3を前方から覆っている。また、延設部41は遮蔽部40と一体に形成されており、延設部41の突出端は遮蔽部40と同じ高さまで至っている。
【0059】
したがって、本実施形態2によれば、遮蔽部40によって、ギャップSを前後方向Aに遮蔽することによりバケット1の裏側への土砂の漏出を抑制しつつ、バケット底部先端3を前方から覆うことにより当該バケット底部先端3の損耗を防止することができる。さららに、延設部41によって右平板状部16の後部16aからアダプタ2側へ向かおうとする土砂の漏出を好適に抑制できる。
【0060】
尚、以上では、左平板状部15が右平板状部16の表側に重なるように各ツース盤11,12,13が連接した例について説明したが、本実施形態はこれに限らず、その逆の配置関係となる構成(すなわち、
図7の連接形態に対して左右線対称となる構成)であってもよい。その場合、ツース盤11,12,13は、右平板状部16が左平板状部15の表側に重なるように連接する。そして、遮蔽部20及び延設部21は、ツース盤11,13の左平板状部15に形成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、ショベル機械用のバケットの底部先端に装着されるツース盤について有用である。
【符号の説明】
【0062】
A 前後方向
S ギャップ
1 バケット
2 アダプタ
3 バケットの底部先端
5 アダプタ挿入部
7 刃部
11 中央ツース盤
12 左端ツース盤
13 右端ツース盤
15 左平板状部
16 右平板状部
16a 後部
20 遮蔽部
21 縁設部
22 溝底
23 溝状部
【要約】
【課題】すくい取られた土砂がバケットの裏側へ漏れ出にくいツース盤を提供する。
【解決手段】ツース盤11は、アダプタ2が挿入されるアダプタ挿入部5と、アダプタ挿入部5の前方に形成された刃部7と、アダプタ挿入部5の左右両側に形成された平板状部16とを備えている。そして、アダプタ挿入部5が、平板状部16に対して、バケットの内側と同じ側となる表側に配置されることにより、平板状部16とバケット底部先端3とが段違い状の配置関係となって当該平板状部と16バケット底部先端3との間にギャップSが形成されるようになっており、ギャップSの少なくとも一部を前後方向Aに遮蔽する遮蔽部を備えている。
【選択図】
図8