(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】射出成形品の製造方法、模様形成体および射出成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/56 20060101AFI20240124BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B29C45/56
B29C45/37
(21)【出願番号】P 2023126955
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2023-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502133675
【氏名又は名称】内藤プロセス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正和
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/005920(WO,A1)
【文献】特開2022-123957(JP,A)
【文献】特開2018-105964(JP,A)
【文献】特許第7170252(JP,B2)
【文献】特開2003-014938(JP,A)
【文献】特開平07-088890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形品の製造方法であって、
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する平板状の金属板であって、前記第1面に、凹凸による模様が形成された金属板を準備する金属板準備工程と、
射出成形用の金型に、前記第1面をキャビティ内に向け
、かつ、前記第2面の一部と前記金型の内面の間に隙間を設けた状態で、前記金属板を固定する固定工程と、
前記金型を型締めする型締工程と、
前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して、前記溶融樹脂の圧力により前記金属板を塑性変形させて、前記第2面
の前記一部を前記金型の内面に押し付けるとともに、前記第1面の模様を前記溶融樹脂の製品面に転写させる成形工程と、
前記溶融樹脂の固化後、前記金属板を前記金型に残した状態で射出成形品を取り出す取出工程と、を有することを特徴とする射出成形品の製造方法。
【請求項2】
前記金属板準備工程において、前記第1面に、印刷により盛り上がった模様を形成することを特徴とする請求項1に記載の射出成形品の製造方法。
【請求項3】
前記金属板準備工程において、前記第1面に、フレーム処理またはプライマー処理を施した後、印刷により前記模様を形成することを特徴とする請求項2に記載の射出成形品の製造方法。
【請求項4】
前記金属板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の射出成形品の製造方法。
【請求項5】
前記金属板の厚みは、0.05mm以上、2mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の射出成形品の製造方法。
【請求項6】
前記金属板は、鋼板からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の射出成形品の製造方法。
【請求項7】
前記金属板の厚みは、0.01mm以上、0.7mm以下であることを特徴とする請求項
6に記載の射出成形品の製造方法。
【請求項8】
見る角度によって見える絵柄が変化するチェンジング画像が模様として形成された模様形成体であって、
前記チェンジング画像は、
第1方向に延びる複数の線分からなる第1パターンと、
前記第1方向とは異なる第2方向に延びる複数の線分からなる第2パターンと、
前記第1方向および前記第2方向とは異なる第3方向に延びる複数の線分からなる第3パターンと、を有し、
前記第1パターンは、長さが等しい一対の線分であって、前記第1方向に直交する第1幅方向において線分の長さL以下の間隔dを空けて並ぶ一対の線分からなる単位パターンが、前記第1方向および前記第1幅方向に複数、配列されてなり、
前記第1方向に隣接する2つの単位パターンの一方を第1単位パターンとし、他方を第2単位パターンとしたとき、前記第2単位パターンは、前記第1単位パターンに対し、前記第1方向に前記長さL以下の距離L1で離間し、かつ、前記第1幅方向に前記間隔d未満の距離d1だけずれて配置されることを特徴とする模様形成体。
【請求項9】
前記第2パターンは、長さが等しい一対の線分であって、前記第2方向に直交する第2幅方向において前記間隔dを空けて並ぶ一対の線分からなる単位パターンが、前記第2方向および前記第2幅方向に複数、配列されてなり、
前記第2方向に隣接する2つの単位パターンの一方を第3単位パターンとし、他方を第4単位パターンとしたとき、前記第4単位パターンは、前記第3単位パターンに対し、前記第2方向に前記距離L1で離間し、かつ、前記第2幅方向に前記距離d1だけずれて配置されることを特徴とする請求項8に記載の模様形成体。
【請求項10】
前記第1パターンを構成する単位パターンは、前記第2方向に距離L2だけオフセットして複数配列され、前記第2パターンを構成する単位パターンは、前記第1方向に前記距離L2だけオフセットして複数配列され、
前記第1パターンの単位パターンを構成する一対の線分は、前記第2方向に距離Dを空けて配置され、
前記第2パターンの単位パターンを構成する一対の線分は、前記第1方向に距離Dを空けて配置され、
前記第1パターンと前記第2パターンが重なった領域では、前記第1パターンを構成する前記第1幅方向に隣接した2つの単位パターンに含まれる2つの線分と、前記第2パターンを構成する前記第2幅方向に隣接した2つの単位パターンに含まれる2つの線分とが、一辺の長さL2の菱形を形成し、前記菱形は、前記距離Dを空けて前記第1方向および前記第2方向に複数、配列されていることを特徴とする請求項9に記載の模様形成体。
【請求項11】
前記第3パターンは、線分が前記第3方向に間隔を空けて直線上に並ぶ破線パターンを有することを特徴とする請求項10に記載の模様形成体。
【請求項12】
前記チェンジング画像が印刷により形成された金属板であることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の模様形成体。
【請求項13】
見る角度によって見える絵柄が変化するチェンジング画像が模様として形成された射出成形品であって、
前記チェンジング画像は、
第1方向に延びる複数の線分からなる第1パターンと、
前記第1方向とは異なる第2方向に延びる複数の線分からなる第2パターンと、
前記第1方向および前記第2方向とは異なる第3方向に延びる複数の線分からなる第3パターンと、を有し、
前記第1パターンは、長さが等しい一対の線分であって、前記第1方向に直交する第1幅方向において線分の長さL以下の間隔dを空けて並ぶ一対の線分からなる単位パターンが、前記第1方向および前記第1幅方向に複数、配列されてなり、
前記第1方向に隣接する2つの単位パターンの一方を第1単位パターンとし、他方を第2単位パターンとしたとき、前記第2単位パターンは、前記第1単位パターンに対し、前記第1方向に前記長さL以下の距離L1で離間し、かつ、前記第1幅方向に前記間隔d未満の距離d1だけずれて配置されることを特徴とする射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に模様が形成された射出成形品の製造方法と、表面に模様が形成された模様形成体および射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細なラインピッチによる微細線からなる模様を、樹脂製フィルムの表面にスクリーン印刷によって形成した型面形成用シートを作成し、この型面作成用シートを金型内に配置して、射出成形品の表面に模様を転写する発明が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の発明における型面形成用シートは、射出成形時の熱により金型の内面に沿って熱変形し、金型の内面に張り付くようにして金型内に残り、キャビティとパーティングラインの境目などの形状変化があるところにおいて強い折り目が付く。そして、この強い折り目の部分から割れ易いという問題がある。
【0003】
これに対し、本願発明者は、射出成形品の製造方法として、凹凸による模様が形成された、エラストマーからなる型面形成用シートを、金型内に配置して、射出成形品の表面に模様を転写する方法を発明した(特許文献2参照)。この方法では、エラストマーからなる型面形成用シートが、従来の樹脂フィルムよりも柔軟性に富み破損しにくいので、従来の樹脂フィルムよりも耐久性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5750747号公報
【文献】特許第6994277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の型面形成用シートでも、射出成形を何回も繰り返すと、キャビティとパーティングラインの境目などの形状変化があるところにおいて強い折り目が付き、破損することがあるため、耐久性をさらに向上させることが望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、射出成形品に模様を転写するための部材の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る射出成形品の製造方法は、金属板準備工程と、固定工程と、型締工程と、成形工程と、取出工程と、を有する。
金属板準備工程では、平板状の金属板を準備する。金属板は、凹凸による模様が形成された第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有する。
固定工程では、射出成形用の金型に、金属板を固定する。詳しくは、固定工程において、第1面をキャビティ内に向けた状態で、金属板を金型に固定する。
型締工程では、金型を型締めする。
成形工程では、キャビティ内に溶融樹脂を射出して、溶融樹脂の圧力により金属板を塑性変形させて、第2面を金型の内面に押し付けるとともに、第1面の模様を溶融樹脂の製品面に転写させる。
取出工程では、溶融樹脂の固化後、金属板を金型に残した状態で射出成形品を取り出す。
【0008】
この方法によれば、成形工程において平板状の金属板が塑性変形することで、射出成形品を取り出した後も、金属板が金型の内面にフィットした状態で金型に残る。そのため、その後に、射出成形品の製造を何度も繰り返しても、金属板は容易には破損しないので、射出成形品に模様を転写するための部材の耐久性を向上させることができる。
【0009】
また、金属板準備工程において、第1面に、印刷により盛り上がった模様を形成してもよい。
【0010】
また、金属板準備工程において、第1面に、フレーム処理またはプライマー処理を施した後、印刷により模様を形成してもよい。
【0011】
金属板の第1面にフレーム処理またはプライマー処理といった表面処理を施すことで、第1面からインクが剥がれにくくなるので、金属板の交換頻度を低くすることができる。
【0012】
また、金属板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなっていてもよい。
この場合、金属板の厚みは、0.05mm以上、2mm以下とすることができる。
【0013】
アルミニウム等からなる金属板の厚みを0.05mm以上、2mm以下とすることで、金属板を金型の内面にフィットさせるように塑性変形させることができる。
【0014】
また、金属板は、鋼板からなっていてもよい。
この場合、金属板の厚みは、0.01mm以上、0.7mm以下とすることができる。
【0015】
鋼板からなる金属板の厚みを0.01mm以上、0.7mm以下とすることで、金属板を金型の内面にフィットさせるように塑性変形させることができる。
【0016】
また、本発明は、前述した製造方法で製造するのに適した、または、製造方法での利用に適した模様形成体である。
模様形成体は、見る角度によって見える絵柄が変化するチェンジング画像が模様として形成されたものである。
チェンジング画像は、第1方向に延びる複数の線分からなる第1パターンと、第1方向とは異なる第2方向に延びる複数の線分からなる第2パターンと、第1方向および第2方向とは異なる第3方向に延びる複数の線分からなる第3パターンと、を有する。
第1パターンは、長さが等しい一対の線分であって、第1方向に直交する第1幅方向において線分の長さL以下の間隔dを空けて並ぶ一対の線分からなる単位パターンが、第1方向および第1幅方向に複数、配列されてなる。
第1方向に隣接する2つの単位パターンの一方を第1単位パターンとし、他方を第2単位パターンとしたとき、第2単位パターンは、第1単位パターンに対し、第1方向に長さL以下の距離L1で離間し、かつ、第1幅方向に間隔d未満の距離d1だけずれて配置される。
【0017】
また、第2パターンは、長さが等しい一対の線分であって、第2方向に直交する第2幅方向において間隔dを空けて並ぶ一対の線分からなる単位パターンが、第2方向および第2幅方向に複数、配列されてなり、第2方向に隣接する2つの単位パターンの一方を第3単位パターンとし、他方を第4単位パターンとしたとき、第4単位パターンは、第3単位パターンに対し、第2方向に距離L1で離間し、かつ、第2幅方向に距離d1だけずれて配置されていてもよい。
【0018】
また、第1パターンを構成する単位パターンは、第2方向に距離L2だけオフセットして複数配列され、第2パターンを構成する単位パターンは、第1方向に距離L2だけオフセットして複数配列され、第1パターンの単位パターンを構成する一対の線分は、第2方向に距離Dを空けて配置され、第2パターンの単位パターンを構成する一対の線分は、第1方向に距離Dを空けて配置され、第1パターンと第2パターンが重なった領域では、第1パターンを構成する第1幅方向に隣接した2つの単位パターンに含まれる2つの線分と、第2パターンを構成する第2幅方向に隣接した2つの単位パターンに含まれる2つの線分とが、一辺の長さL2の菱形を形成し、菱形は、距離Dを空けて第1方向および第2方向に複数、配列されていてもよい。
【0019】
また、第3パターンは、線分が第3方向に間隔を空けて直線上に並ぶ破線パターンを有していてもよい。
【0020】
また、模様形成体は、チェンジング画像が印刷により形成された金属板であってもよい。詳しくは、模様形成体は、前述した製造方法で利用される金属板であってもよい。この場合、射出成形品には、金属板の模様としてのチェンジング画像が転写される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、射出成形品に模様を転写するための部材の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の製造方法で製造された射出成形品の正面図(a)と、(a)のチェンジング画像を構成する各パターンと各パターンを重ねたパターンを示す図(b)である。
【
図2】第1パターン、第2パターン、第3パターンおよび各パターンを重ねたパターンを拡大して示す図(a)~(d)である。
【
図3】模様が形成された金属板を示す部分拡大断面図である。
【
図4】射出成形の工程を説明する図であり、(a)金属板を固定する固定工程と、(b)金属板を金型に固定して型締めする型締工程と、(c)溶融樹脂を射出する成形工程と、(d)金型を開いて射出成形品を取り出す取出工程とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)に示すように、本発明の製造方法により製造される模様形成体の一例としての射出成形品50は、表面に凹凸による模様Mが形成されたものである。射出成形品50は、模様Mがある面が盛り上がっており、裏側が凹んでいる。模様Mを構成する線は、凹んだ形状が長く延びることで形成されている
【0024】
模様Mは、見る角度によって見える絵柄が変化するチェンジング画像となっている。チェンジング画像は、
図1(b)に示す、第1パターンG1、第2パターンG2および第3パターンG3を有する。
【0025】
第1パターンG1は、第1方向に延びる複数の線分1からなる。
第2パターンG2は、第1方向とは異なる第2方向に延びる複数の線分2からなる。
第3パターンG3は、第1方向および第2方向とは異なる第3方向に延びる複数の線分3からなる。本実施形態において、第3方向に対する第1方向の角度と、第3方向に対する第2方向の角度は、等しい。
【0026】
図1(a)に示すように、模様Mは、三角形の第1画像M1と、四角形の第2画像M2と、背景となる第3画像M3とを有する。第2画像M2は、第1画像M1と重なっている。
【0027】
第3画像M3は、第3パターンG3からなる。第1画像M1は、第1パターンG1からなり、第3画像M3に重ねられている。第2画像M2は、第2パターンG2からなり、第1画像M1と第3画像M3に重ねられている。第1画像M1、第2画像M2および第3画像M3が重なった部分は、第1パターンG1、第2パターンG2および第3パターンG3のすべてが重なったパターンGA(
図1(b)参照)となっている。
【0028】
第1画像M1が、第1パターンG1を有することで、第1パターンG1の反射率が高くなる所定方向から見て、第1画像M1が見えやすくなっている。第2画像M2が、第2パターンG2を有することで、所定方向とは異なる方向から見て、第2画像M2が見えやすくなっている。
【0029】
図2(a)に示すように、第1パターンG1は、複数の単位パターンP1を有する。単位パターンP1は、長さが等しい一対の線分1からなる。一対の線分1は、第1方向に直交する第1幅方向において、線分1の長さL以下の間隔dを空けて並ぶ。第1パターンG1の単位パターンP1を構成する一対の線分1は、第2方向に距離Dを空けて配置される。単位パターンP1は、第1方向および第1幅方向に複数、配列されている。
【0030】
第1方向に隣接する2つの単位パターンP1の一方を第1単位パターンP11とし、他方を第2単位パターンP12としたとき、第2単位パターンP12は、第1単位パターンP11に対し、第1方向に長さL以下の距離L1で離間し、かつ、第1幅方向に間隔d未満の距離d1だけずれて配置される。第1パターンG1を構成する単位パターンP1は、第2方向に距離L2だけオフセットして複数配列されている。
【0031】
本実施形態では、距離L2を、長さLと等しい大きさとする。なお、距離L2は、長さLよりも小さい値であってもよい。
【0032】
図2(b)に示すように、第2パターンG2は、第1パターンG1を構成する単位パターンP1の配列を反転させた配列となっている。詳しくは、第2パターンG2は、複数の単位パターンP2を有する。単位パターンP2は、長さが等しい一対の線分2からなる。線分2の長さは、線分1の長さLと等しい。一対の線分2は、第2方向に直交する第2幅方向において、間隔dを空けて並ぶ。第2パターンG2の単位パターンP2を構成する一対の線分2は、第1方向に距離Dを空けて配置される。単位パターンP2は、第2方向および第2幅方向に複数、配列されている。
【0033】
第2方向に隣接する2つの単位パターンP2の一方を第3単位パターンP23とし、他方を第4単位パターンP24としたとき、第4単位パターンP24は、第3単位パターンP23に対し、第2方向に距離L1で離間し、かつ、第2幅方向に距離d1だけずれて配置されている。第2パターンG2を構成する単位パターンP2は、第1方向に距離L2だけオフセットして複数配列されている。
【0034】
図2(d)に示すように、第1パターンG1と第2パターンG2が重なった領域では、第1パターンG1を構成する2つの線分1B,1Cと、2つの線分2B,2Cとが、一辺の長さL2の菱形Rを形成し、菱形Rは、距離Dを空けて第1方向および第2方向に複数、配列されている。2つの線分1B,1Cは、第1幅方向に隣接した2つの単位パターンP1に含まれる4つの線分1A,1B,1C,1Dのうち、内側の2つの線分1B,1Cである。2つの線分2B,2Cは、第2パターンG2を構成する第2幅方向に隣接した2つの単位パターンP2に含まれる4つの線分2A,2B,2C,2Dのうち、内側の2つの線分2B,2Cである。
【0035】
線分1Bに対して図示左上(第1幅方向の一方)に位置する外側の線分1Aは、線分1B,1Cで形成した菱形R1に対して図示左上に位置する菱形R2を形成する。線分1Cに対して図示右下(第1幅方向の他方)に位置する外側の線分1Dは、菱形R1に対して図示右下に位置する菱形R3を形成する。
【0036】
線分2Bに対して図示右上(第2幅方向の一方)に位置する外側の線分2Aは、線分2B,2Cで形成した菱形R1に対して図示右上に位置する菱形R4を形成する。線分2Cに対して図示左下(第2幅方向の他方)に位置する外側の線分2Dは、菱形R1に対して図示左下に位置する菱形R5を形成する。
【0037】
図2(c)に示すように、第3パターンG3は、線分3が第3方向に間隔d2を空けて直線上に並ぶ破線パターンPBを複数有する。複数の破線パターンPBは、第3方向に直交する第3幅方向において、間隔d2よりも大きい間隔d3を開けて並ぶ。第3幅方向において隣接する2つの破線パターンPBの一方を第1破線パターンPB1とし、他方を第2破線パターンPB2としたとき、第2破線パターンPB2を構成する各線分3は、第1破線パターンPB1を構成する各線分3に対して第3方向にずれている。詳しくは、第2破線パターンPB2を構成する一の線分3が、第1破線パターンPB1を構成する2つの線分3の間に位置するように、各破線パターンPB1,PB2が第3方向にずれている。
【0038】
第3パターンG3の各線分3は、第3方向に隣接する2つの菱形Rの近接した2つの頂点同士を結ぶ位置に配置されている。具体的に、間隔d2は、菱形Rの短い方の対角線の長さと等しい。間隔d3は、菱形Rの長い方の対角線の長さの半分より大きい。
【0039】
以下、射出成形品50の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、まず、
図3に示すように、凹凸による模様MRが形成された平板状の金属板30を準備する(金属板準備工程)。ここで、模様MRは、前述した模様Mを反転した模様である。金属板30は、第1面31と、第1面31とは反対側の第2面32とを有する。
【0040】
金属板準備工程においては、まず、金属板30の第1面31に、フレーム処理またはプライマー処理を施す。その後、平板状の金属板30の第1面31に、印刷により盛り上がった模様MRを形成する。この場合の印刷は、スクリーン印刷やインクジェット印刷の手法を用いることができる。印刷に用いるインクは、紫外線硬化性インクを用い、インクを金属板30の第1面31に載せた後に、紫外線を当てることで、迅速に盛り上げ印刷を行うことができる。若しくは、通常のインクを用いて、インクが乾く前に樹脂パウダーをインクにかけ、樹脂パウダーを溶融して定着させる、いわゆるバーコ印刷を用いてもよい。なお、模様MRを構成する凹凸の金属板30の厚さ方向の大きさは、金属板30の厚さより小さい。
【0041】
金属板30の材質は、インクが定着可能である限り、特に限定されないが、例えば、アルミニウムや、アルミニウム合金や、亜鉛メッキ鋼板・ステンレス鋼板などの鋼板などを用いることができる。金属板30の材質をアルミニウムまたはアルミニウム合金とした場合、金属板30の厚みは、0.05mm以上、2mm以下とすることができる。金属板30の材質を鋼板とした場合、金属板30の厚みは、0.01mm以上、0.7mm以下とすることができる。
【0042】
金属板30を準備した後、
図4(a)に示すように、凹み形状の内面42Aを有する射出成形用の金型40に、第2面32を金型40の内面42Aに向け、第1面31をキャビティ内に向けた状態で、金属板30を固定する(固定工程)。
【0043】
具体的には、金型40は、一例として、固定型41と可動型42を有し、可動型42に、凹み形状の内面42Aを有する。固定型41は、凹み形状の内面42Aに対応して、凸形状の内面41Aを有している。凹み形状の内面42Aは、固定型41と可動型42のいずれが有していてもよい。可動型42は、金属板30を固定するピンPNを有していてもよい。この場合、金属板30に、ピンPNが係合する穴35を形成してもよい。
【0044】
金属板30を金型40に固定する場合には、凹み形状の内面42Aの外側の平面部分44に固定するとよい。なお、金属板30を金型40に固定する場合に、接着剤や両面テープを用いてもよい。金属板30を金型40に固定した状態において、金属板30は、平板状であるので、可動型42に固定しただけでは、凹み形状の内面42Aに密着しない(二点鎖線参照)。
【0045】
図4(b)に示すように、金型40を型締めすると(型締工程)、金属板30は、凸形状の内面41Aに押されて伸びるが、凹み形状の内面42Aには密着しない。この金型40において、材料が充填されるキャビティは、金属板30と凸形状の内面41Aの間の空間(次の成形工程で溶融樹脂MPが充填される空間)である。
【0046】
次に、
図4(c)に示すように、キャビティ内に溶融樹脂MPを射出して、溶融樹脂MPの圧力により金属板30を塑性変形させて、第2面32を金型40の内面42Aに押し付けるとともに、第1面31の模様MRを溶融樹脂MPの製品面PSに転写させる(成形工程)。
【0047】
そして、
図4(d)に示すように、溶融樹脂MPの固化後、金属板30を金型40に残した状態で射出成形品50を取り出す(取出工程)。射出成形品50にランナー59などが残っている場合には、ランナー59を切除する。射出成形品50の表面には、金属板30の第1面31の凹凸形状が転写され、模様Mが形成される。模様Mは、凹形状53による模様となる。
【0048】
金型40によって最初の射出成形品50を形成した後、塑性変形した金属板30は、可動型42の内面42Aに密着した状態で可動型42内に残る。そのため、2つの目以降の射出成形品50を製造する場合には、内面42Aに密着した金属板30を用いて、射出成形を行うことができる。
【0049】
以上に説明した本実施形態の射出成形品の製造方法によれば、次のような効果を奏することができる。
成形工程において平板状の金属板30が塑性変形することで、最初の射出成形品50を取り出した後も、金属板30が可動型42の内面42Aにフィットした状態で可動型42内に残る。そのため、その後に、射出成形品50の製造を何度も繰り返しても、金属板30は容易には破損しないので、射出成形品に模様を転写するための部材の耐久性を向上させることができる。
【0050】
金属板30の第1面31にフレーム処理またはプライマー処理といった表面処理を施すことで、第1面31からインクが剥がれにくくなるので、金属板30の交換頻度を低くすることができる。
【0051】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板30の厚みを0.05mm以上とすることで、金属板30が塑性変形する際に、金属板30に割れが生じるなどの問題を抑えることができる。また、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板30の厚みを2mm以下とすることで、溶融樹脂MPの圧力でも金属板30を可動型42の内面42Aに密着するまで塑性変形させることができる。
【0052】
鋼板からなる金属板の厚みを0.01mm以上とすることで、金属板30が塑性変形する際に、金属板30に割れが生じるなどの問題を抑えることができる。また、鋼板からなる金属板の厚みを0.7mm以下とすることで、溶融樹脂MPの圧力でも金属板30を可動型42の内面42Aに密着するまで塑性変形させることができる。
【0053】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、前記実施形態では、金属板30に印刷により凹凸を形成したが、金属板準備工程においては、金属板の第1面に、レーザー彫刻、機械加工、職人による加工によって凹凸を形成してもよい。
さらに、金属板は、自ら作成せずに他人に作成させてもよい。
【0054】
また、模様は、チェンジング画像に限らず、どのような模様であってもよい。
【0055】
金型を構成する第1型および第2型のうち、凹形状の内面を有する第1型に溶融樹脂を注入する注入口がある場合には、第1型の凹形状の内面に、金属板の第1面を向けて配置してもよい。この場合、溶融樹脂を注入すると、金属板の第2面が、第2型の凸形状の内面に押し付けられる。
【0056】
菱形が距離Dを空けて第1方向および第2方向に複数、配列された画像を形成するためには、第2単位パターンは、第1単位パターンに対して、第1幅方向にずれていなくてもよい。つまり、第2単位パターンは、第1単位パターンに対して間隔を空けて第1方向に並んでいてもよい。第3単位パターンと第4単位パターンについても同様である。なお、前記実施形態のように、第1単位パターンと第2単位パターンを第1幅方向にずらす場合には、菱形の長手方向に隣接する2つの菱形の間隔を小さくすることができる。
【0057】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0058】
30 金属板
31 第1面
32 第2面
40 金型
42A 内面
50 射出成形品
MP 溶融樹脂
MR 模様
PS 製品面
【要約】
【課題】射出成形品に模様を転写するための部材の耐久性を向上させることを目的とする。
【解決手段】射出成形品50の製造方法は、金属板準備工程と、固定工程と、型締工程と、成形工程と、取出工程を有する。金属板準備工程では、平板状の金属板30を準備する。金属板30は、凹凸による模様MRが形成された第1面31と、第1面31とは反対側の第2面32を有する。固定工程では、射出成形用の金型40に、第1面31をキャビティ内に向けた状態で、金属板30を固定する。型締工程では、金型40を型締めする。成形工程では、キャビティ内に溶融樹脂MPを射出して、溶融樹脂MPの圧力により金属板30を塑性変形させて、第2面32を金型40の内面42Aに押し付けるとともに、第1面31の模様MRを溶融樹脂MPの製品面PSに転写させる。取出工程では、溶融樹脂MPの固化後、金属板30を金型40に残した状態で射出成形品50を取り出す。
【選択図】
図4