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  • 特許-感熱記録体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/42 20060101AFI20240124BHJP
   B41M 5/333 20060101ALI20240124BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20240124BHJP
   B41M 5/44 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B41M5/42 221
B41M5/333 220
B41M5/41 200
B41M5/44 220
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022020572
(22)【出願日】2022-02-14
(65)【公開番号】P2023117811
(43)【公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】播摩 英伸
(72)【発明者】
【氏名】郷地 有治
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-193551(JP,A)
【文献】特開2021-123009(JP,A)
【文献】特開2022-146283(JP,A)
【文献】特開2023-001789(JP,A)
【文献】特開2022-067451(JP,A)
【文献】特開2021-045972(JP,A)
【文献】特開2020-059283(JP,A)
【文献】特開昭62-134288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた感熱記録層と
前記感熱記録層上に設けられ、滑剤と充填剤とを含有するトップコート層と
を少なくとも備える感熱記録体であって、
前記滑剤が、ポリエチレン及びパラフィンの少なくとも一方であり、
前記充填剤がポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、
前記トップコート層の全体に対する前記ポリメタクリル酸メチルの含有量が2.5質量%以上50質量%未満であり、
前記トップコート層の全体に対する前記滑剤の含有量が11.0質量%以上22.0質量%以下であることを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記基材が、合成紙または合成樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記感熱記録層が顕色剤を含有し、
前記顕色剤がN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素及び3-[(3-フェニルウレイド)フェニル]-4-メチルベンゼンスルホナートの少なくとも一方のみであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記顕色剤が前記N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素であることを特徴とする請求項3に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関し、更に詳しくは、加熱処理に起因する白濁を防止することができ、耐熱性に優れた感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録体は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベルなどとして広範な用途に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、感熱記録体には様々な性能が求められており、特に、食品用のラベルとして感熱記録体を使用する場合は、例えば、バーコードによる読み取り適性が良好な発色性に優れた感熱記録体が求められている。
【0004】
このような感熱記録体としては、例えば、支持体上に無色ないし淡色の電子供与性のロイコ染料と電子受容性の顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、感熱記録層が、顕色剤としてスルホン化合物及びフェノール系化合物を含有し、更に、増感剤として1,2-ビス-(3-メチルフェノキシ)エタンを含有するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-362027号公報
【文献】特許6781356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、耐熱性の高い感熱記録体は、常温のみならず、加熱(ボイル)して使用する場合が想定される。また、耐熱性の高い顕色剤を使用した感熱記録体の開発が進められているが、滑剤として、従来、使用されているステアリン酸亜鉛を含有するトップコート層を備える感熱記録体を加熱すると、トップコート層が白濁するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、加熱処理に起因するトップコート層の白濁を防止して、耐熱性に優れる感熱記録体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明では、基材と、基材上に設けられた感熱記録層と感熱記録層上に設けられ、滑剤と充填剤とを含有するトップコート層とを少なくとも備える感熱記録体であって、滑剤が、ポリエチレン及びパラフィンの少なくとも一方であり、充填剤がポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、トップコート層の全体に対するポリメタクリル酸メチルの含有量が2.5質量%以上50質量%未満であり、トップコート層の全体に対する滑剤の含有量が11.0質量%以上22.0質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、加熱処理に起因するトップコート層の白濁を防止することが可能になるため、耐熱性に優れた感熱記録体を提供することができる。
【0010】
また、発色性(印字特性)に優れた感熱記録体を提供することが可能になる。
【0011】
また、第2の発明では、第1の発明において、基材が、合成紙または合成樹脂フィルムであることを特徴とする。
【0012】
上記構成によると、ボイルして使用される感熱記録体の耐熱性を向上させることができる。
【0013】
また、第3の発明では、第1または第2の発明において、感熱記録層が顕色剤を含有し、顕色剤がN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素及び3-[(3-フェニルウレイド)フェニル]-4-メチルベンゼンスルホナートの少なくとも一方のみであることを特徴とする。
【0014】
上記構成によると、耐熱性と発色性に優れた感熱記録体を提供することができる。
【0015】
また、非フェノール系の(すなわち、フェノール構造を有する化合物を含まない)顕色剤を有する感熱記録層を得ることが可能になる。
【0016】
また、第4の発明では、第3の発明において、顕色剤がN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素であることを特徴とする。
【0017】
上記構成によると、感熱記録体の発色性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加熱処理に起因するトップコート層の白濁を防止することが可能になるため、耐熱性に優れた感熱記録体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態の感熱記録体を説明するための断面図である。
図2】実施例12における罫線飛び評価の結果を示す図である。
図3】比較例5における罫線飛び評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本実施形態の感熱記録体を説明するための断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の感熱記録体1は、シート状の基材2上に、アンカー層6、加熱によって発色する感熱記録層3、中間層4、及び、トップコート層5が積層された構造となっている。
【0023】
基材2としては、例えば、ポリプロピレン紙などの合成紙、及び不織布などの多孔質材料を用いることができる。また、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどの透明の合成樹脂フィルムを用いることができる。なお、基材2の厚さは特に限定されないが、例えば、10μm~100μm程度が塗工性及び透明性に優れ、好ましい。
【0024】
アンカー層6は、基材2と感熱記録層3との密着性を向上させる機能を有するものであり、例えば、変性スチレンアクリル系樹脂を用いることができる。
【0025】
感熱記録層3を形成する材料としては、加熱により発色する染料、顕色剤、結着剤、滑剤、増感剤、保存性向上剤、及び顔料などが挙げられる。
【0026】
より具体的には、染料であるロイコ染料としては、例えば、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオロランや2-アニリン-3メチル-6-(N-メチル-P-トルイジノ)フルオランなどを挙げることができ、それらの粒子径は、0.1~1.0μmであることが好ましい。ここで、粒子径とは、マイクロトラックレーザー解析・散乱式粒度分析機による測定50%平均粒子径をいう。
【0027】
上記の結着剤としては、例えば、変性スチレンブタジエン共重合体、変性スチレンアクリル共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリルニトリル、メチルビニルエーテルなどの水系樹脂を単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記の滑剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、酸化パラフィン、及び酸化ポリエチレン等を用いることができる。なお、これらの滑剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
上記の保存性向上剤としては、例えば、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4,ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、トリス(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4-(2-メチルグリシルオキシ)-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ジエチルチオウレア、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、及び4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)等を用いることができる。また、公知の紫外線吸収剤、界面活性剤を添加してもよい。なお、これらの保存性向上剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
また、上記の顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、及び尿素-ホルマリン樹脂などの無機、ならびに有機顔料を用いることができる。なお、これらの顔料は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記の顕色剤としては、例えば、下記一般式(1)で表されるN、N’-ジアリール尿素誘導体等を用いることができる。
【0032】
【化1】

(式中、Rはアルキル基を表し、nは0~3の整数を表す。)
【0033】
このN、N’-ジアリール尿素誘導体としては、例えば、下記式(2)で表されるN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素や、N,N’-ジ-[3-(p-キシレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(m-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素などを挙げることができる。
【0034】
【化2】
【0035】
また、本実施形態における感熱記録層3においては、上記の顕色剤として、例えば、下記一般式(3)で表される化合物を用いることができる。
【0036】
【化3】

(式(3)中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基を表す。)
【0037】
この化合物としては、例えば、下記式(4)で表される3-[(3-フェニルウレイド)フェニル]-4-メチルベンゼンスルホナートを挙げることができる。
【0038】
【化4】
【0039】
そして、顕色剤として、上記一般式(1)で表されるN、N’-ジアリール尿素誘導体、及び上記一般式(3)で表される化合物の少なくとも一方のみを使用することにより、感熱記録体1において、耐熱性と発色性を向上させることが可能になる。
【0040】
また、上記一般式(1)で表されるN、N’-ジアリール尿素誘導体、及び上記一般式(3)で表される化合物は、非フェノール系の顕色剤であるため、非フェノール系の(すなわち、フェノール構造を有する化合物を含まない)顕色剤を含有する感熱記録層3を得ることが可能になる。
【0041】
なお、上記一般式(1)で表されるN、N’-ジアリール尿素誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、発色性をより一層向上させるとの観点から、上記一般式(1)で表されるN、N’-ジアリール尿素誘導体のみを使用することが好ましい。
【0042】
また、感熱記録層3の全体に対する顕色剤の含有量は、10質量%以上30質量%以下が好ましい。これは、顕色剤の含有量が10質量%未満の場合は、顕色剤不足に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)場合があり、顕色剤の含有量が30質量%よりも多い場合は、顕色剤過多(則ち、染料不足)に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)場合があるためである。
【0043】
なお、上述のアンカー層6を省略して、基材2の表面上に感熱記録層3を設ける構成としてもよい。
【0044】
水や油に対するバリアー性を有する中間層4は、主に、樹脂によって形成されている。この中間層4の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂のエマルジョン、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂等の水溶性樹脂や、SBR樹脂などが挙げられる。
【0045】
上記樹脂は、水溶性部分を有する樹脂、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)樹脂、あるいは、疎水性のコア粒子を水溶性のシェルポリマーでコーティングしたコアシェル構造の樹脂、例えば、コアシェル型アクリル樹脂などを使用することにより、透明性が向上する。
【0046】
コアシェル型の樹脂は、例えば、コアシェル型アクリル樹脂として、バリアスター(三井化学社製)の名称で市販されているものなどを使用することができる。
【0047】
トップコート層5は、サーマルヘッドに対する感熱記録体1のマッチング性を向上させて、感熱記録層3の発色が順調に行われるようにするものであり、このトップコート層5は、結着剤中に滑剤、充填剤、架橋剤などを添加したものが用いられる。
【0048】
結着剤である樹脂としては、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、例えば、炭酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0049】
ここで、本実施形態における感熱記録層3においては、滑剤が、ポリエチレン及びパラフィンの少なくとも一方である点に特徴がある。
【0050】
そして、滑剤として、ポリエチレン及びパラフィンの少なくとも一方を使用することにより、感熱記録体1において、ボイル等の加熱処理に起因するトップコート層の白濁を防止して、耐熱性を向上させることが可能になる。
【0051】
なお、印字適正の観点から、トップコート層5の全体に対する滑剤の含有量が13.5質量%であることが好ましい。
【0052】
また、滑剤であるポリエチレン及びパラフィンの平均粒子径は、1.5μm以下であることが好ましい。
【0053】
また、ここでいう「平均粒子径」とは、マイクロトラックレーザー解析・散乱式粒度分析機による測定50%(D50)のことを言う。
【0054】
また、本実施形態における感熱記録層3においては、充填剤が、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、トップコート層5の全体に対するポリメタクリル酸メチルの含有量が2.5質量%以上50質量%未満である点に特徴がある。
【0055】
そして、このような構成により、表面に凹凸ができ、これによりサーマルヘッドとの接地面積が少なくなり、滑り性が向上するため、後述の罫線飛びの発生を抑制することができ、発色性(印字特性)に優れた感熱記録体1を提供することが可能になる。
【0056】
なお、発色性(印字特性)をより一層向上させて、後述の罫線飛びを確実に防止するとの観点から、トップコート層5の全体に対するポリメタクリル酸メチルの含有量が30質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0057】
また、これら充填剤であるポリメタクリル酸メチルの平均粒子径は、1.0μm以上であることが好ましい。
【実施例
【0058】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0059】
(実施例1~6、比較例1~3)
(感熱記録体の作製)
<感熱記録層>
ロイコ染料である、粒子径が0.6~0.7μmの3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオロランを15質量%と、顕色剤であるN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を40質量%と、結着剤であるスチレンアクリル共重合体エマルジョンを27質量%と、顔料である炭酸カルシウム(ヘキサメタリン酸ナトリウム5%水溶液に分散させることにより固形分濃度が30%の分散液にしたもの)を11質量%と、滑剤であるポリエチレンワックスを1.6質量%とを含有する感熱記録層形成用の塗液を調製し、調製した感熱記録層形成用の塗液を、上述の基材の上に、塗布量が、乾燥重量で4.0g/mとなるように塗布し、厚さが3.6μmの感熱層を形成した。なお、各配合材料(水を除く)の数値は、乾燥時における重量比率を示している。
【0060】
<中間層>
アクリルエマルジョン(固形分濃度30%)液を、上述の感熱記録層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.6g/mであり、厚さが1.5μmの中間層を形成した。
【0061】
<トップコート層>
表1に示すトップコート層形成用の塗液を調製し、調製したトップコート層形成用の塗液を上述の中間層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.0g/mであり、厚さが0.9μmのトップコート層を形成した。なお、表1において、各配合材料(水を除く)の数値は、乾燥時における重量比率を示している。
【0062】
また、配合材料として、結着剤は、アクリルエマルジョン(固形分濃度30%)を使用し、充填剤は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を使用し、架橋剤は、炭酸ジルコニウムを使用した。また、滑剤として、以下の材料を使用した。
【0063】
(1)滑剤1:ポリエチレン(中京油脂(株)製、商品名:Q340、平均粒子径:1.3μm、軟化点:110℃)
(2)滑剤2:ポリエチレン(三井化学(株)製、商品名:W700、平均粒子径:1.0μm、軟化点:132℃)
(3)滑剤3:ポリエチレン(中京油脂(株)製、商品名:L618、平均粒子径:0.1μm、軟化点:138℃)
(4)滑剤4:パラフィン(中京油脂(株)製、商品名:L-700、平均粒子径:1.0μm、軟化点:75℃)
(5)滑剤5:パラフィン(中京油脂(株)製、商品名:PF-60、平均粒子径:0.3μm、軟化点:66℃)
(6)滑剤6:低密度ポリエチレンワックス(三井化学(株)製、商品名:WF-4002、平均粒子径:0.2μm、軟化点:110℃)
(7)滑剤7:ステアリン酸亜鉛(中京油脂(株)製、商品名:O128、平均粒子径:5.5μm、軟化点:120℃)
(8)滑剤8:ステアリン酸亜鉛(中京油脂(株)製、商品名:R577、平均粒子径:0.9μm、軟化点:120℃)
(9)滑剤9:ステアリン酸亜鉛(中京油脂(株)製、商品名:L111、平均粒子径:0.2μm、軟化点:120℃)
【0064】
以上の方法により、実施例1~6、及び比較例1~3の感熱記録体を作製した。
【0065】
(白濁性評価)
作製した感熱記録体に対して、95℃で、1分間、ボイル(湯煎)を行い、その後、感熱記録体における光学濃度(OD値)を、分光光度計(X-rite社製、商品名:eXact)を用いて測定し、ボイルの熱による感熱記録体(トップコート層)の白濁具合を確認した。
【0066】
なお、光学濃度(OD値)1.35以上の場合を◎(すなわち、ボイルの熱により白濁せず、耐熱性が極めて良好である)、1.20以上1.35未満の場合を〇(すなわち、ボイルの熱により殆ど白濁せず、耐熱性が良好である)、1.20未満を×(すなわち、ボイルの熱により白濁し、耐熱性に乏しい)とした。以上の結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、実施例1~6の感熱記録体においては、滑剤として、ポリエチレン及びパラフィンの少なくとも一方を使用しているため、光学濃度(OD値が)1.20以上となっており、ボイルによる加熱処理を行った場合であっても、トップコート層の白濁を抑制されており、耐熱性に優れていることが分かる。
【0069】
(実施例7~16、比較例4~6)
(感熱記録体の作製)
<アンカー層>
基材であるポリプロピレン(厚さ:(90)μm)上に、乾燥配合比で変性スチレンアクリル樹脂100質量%を水で希釈、攪拌させたアンカー層用塗液を塗布し、乾燥させて、乾燥時の塗布量が0.50g/mであり、厚さが0.45μmのアンカー層を形成した。なお、各配合材料(水を除く)の数値は、乾燥時における重量比率を示している。
【0070】
<感熱記録層>
ロイコ染料である、粒子径が0.6~0.7μmの3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオロランを15質量%と、顕色剤であるN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を40質量%と、結着剤であるスチレンアクリル共重合体エマルジョンを27質量%と、顔料である炭酸カルシウム(ヘキサメタリン酸ナトリウム5%水溶液に分散させることにより固形分濃度が30%の分散液にしたもの)を11質量%と、滑剤であるポリエチレンワックスを1.6質量%とを含有する感熱記録層形成用の塗液を調製し、調製した感熱記録層形成用の塗液を、上述のアンカー層上に塗布量が、乾燥重量で4.0g/mとなるように塗布した後、乾燥を行うことにより、厚さが3.6μmの感熱層を形成した。
【0071】
<中間層>
アクリルエマルジョン(固形分濃度30%)液を、上述の感熱記録層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.6g/mであり、厚さが1.5μmの中間層を形成した。
【0072】
<トップコート層>
表2に示すトップコート層形成用の塗液を調製し、調製したトップコート層形成用の塗液を上述の中間層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.0g/mであり、厚さが0.9μmのトップコート層を形成した。なお、表2において、各配合材料(水を除く)の数値は、乾燥時における重量比率を示している。
【0073】
また、配合材料として、結着剤は、アクリルエマルジョン(固形分濃度30%)を使用し、充填剤は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を使用し、架橋剤は、炭酸ジルコニウムを使用した。また、滑剤としては、上述の滑剤6を使用した。
【0074】
以上の方法により、実施例7~16、及び比較例4~6の感熱記録体を作製した。
【0075】
(動的感度特性評価)
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシミュレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0kV、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギーが0.20mJ/dot、0.24mJ/dot、及び0.40mJ/dotの条件で印字を行い、各印字エネルギー条件における光学濃度(OD値)を、分光光度計(X-rite社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
【0076】
そして、光学濃度(OD値)が0.24mJ/dotの時、0.40以上の場合を、印字エネルギーが小さい場合であっても発色しており、発色性が良好であると評価した。以上の結果を表2に示す。
【0077】
(罫線飛び評価)
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(サトー社製、商品名:レスプリR412STD)を用い、印字速度が50mm/sec、濃度設定が3の条件で、10cmの幅を有する碁盤目状の印字を行い、以下の基準に基づいて、目視、及び顕微鏡にて罫線飛び(感熱記録体の表面が滑りにくく、プリンターで印字した際に、引っかかったように罫線が印字されず飛んだ状態)の発生の有無について評価した。以上の結果を表2に示す。
【0078】
罫線飛びが発生しておらず、発色性(印字特性)に優れている:◎
顕微鏡で認識可能な罫線飛びがわずかに発生しているが、目視では罫線飛びを全く認識することができず、発色性(印字特性)が良好である:〇
目視において認識可能な罫線飛びが、多数、発生しており、発色性(印字特性)に乏しい:×
【0079】
【表2】
【0080】
表2に示すように、実施例7~16の感熱記録体においては、トップコート層の全体に対するポリメタクリル酸メチルの含有量が2.5質量%以上50質量%未満であるため、罫線飛びが抑制されており、発色性(印字特性)に優れていることが分かる。
【0081】
なお、実施例12における罫線飛び評価の結果を図2に示す。図2に示すように、実施例12においては、罫線飛びが発生しておらず、発色性(印字特性)に優れていることが分かる。
【0082】
一方、比較例4~6の感熱記録体においては、トップコート層の全体に対するポリメタクリル酸メチルの含有量が2.5質量%未満、または50質量%以上であるため、表面に凹凸が少なくなり、これによりサーマルヘッドとの接地面積が多くなり、摩擦力が大きくなるため、罫線飛びが発生しており、発色性(印字特性)に乏しいことが分かる。
【0083】
なお、比較例5における罫線飛び評価の結果を図3に示す。図3に示すように、比較例5においては、目視において認識可能な多数の罫線飛びが発生しており、発色性(印字特性)に乏しいことが分かる。
【0084】
また、表2に示すように、実施例10~16の感熱記録体においては、光学濃度(OD値)が0.24mJ/dotの時、0.40以上となっており、印字エネルギーが小さい場合であっても発色性が良好であり、動的感度特性が高く、発色性に優れていることが分かる。
【0085】
なお、実施例7~9、及び比較例4の感熱記録体においては、動的感度特性評価において、表面が滑らず印字できなかったため、各印字エネルギー条件における光学濃度(OD値)を測定することができなかった。これは、動的感度特性評価において使用した感熱紙印字試験装置(パルスシミュレーター)が、上述の罫線飛び評価において使用した感熱紙印字試験装置(レスプリR412STD)と異なるため、感熱紙印字試験装置による印字エネルギーの違いや印字デザインの違いに起因して、表面が滑らず印字ができなかったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上に説明したように、本発明は、バーコード等が印字される感熱記録体に、特に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 感熱記録体
2 基材
3 感熱記録層
4 中間層
5 トップコート層
6 アンカー層
図1
図2
図3