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特許7425535フォトニックチップ、フィールドプログラマブルフォトニックアレイおよびフォトニック集積回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】フォトニックチップ、フィールドプログラマブルフォトニックアレイおよびフォトニック集積回路
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20240124BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20240124BHJP
   G11C 13/04 20060101ALI20240124BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G02F3/00
G02F1/01 F
G11C13/04 300
G02B6/12 361
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018247546
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020106747
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516365529
【氏名又は名称】ウニヴェルシダッド ポリテクニカ デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カプマニー フランコイ,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ガスラ メストレ,イバナ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス ロペス,ダニエル
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0208162(US,A1)
【文献】特開2006-251429(JP,A)
【文献】特表2015-528130(JP,A)
【文献】スペイン国特許出願公開第2694249(ES,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0354938(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0351293(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0129723(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0119226(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107193085(CN,A)
【文献】PEREZ, Daniel et al.,Programmable multifunctional integrated nanohotonics,Nanophotonics,ドイツ,De Gruyter,2018年07月28日,Vol.7, No.8,p.1351-1371,https://doi.org/10.1515/nanoph-2018-0051
【文献】PEREZ, Daniel et al.,Reconfigurable integrated waveguide meshes for photonic signal processing and emerging applications,Proceedings of SPIE Integrated Optics: Devices, Materials, and Technologies XXII,SPIE,2018年02月23日,Vol.10535,p.105351L-1 - 105351L-13,doi:10.1117/12.2292733
【文献】SHOKRANEH, Farhad et al.,A 4×4 Reconfigurable Optical Processor,2018 Asia Communications and Photonics Conference (ACP),IEEE,2018年10月26日,p.1-3,DOI:10.1109/ACP.2018.8596132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G02B 6/12 - 6/14
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニックチップであって、
a)複数のプログラマブルビルディングブロックに相互接続されて、前記複数のプログラマブルビルディングブロックのそれぞれの内部にフィードバック伝播を供給する、共鳴素子のない少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)と、
b)前記複数のプログラマブルビルディングブロックの内部にフィードバック伝播を供給するために相互接続されることができる、共鳴素子のない少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)であって、隣接する前記プログラマブルフォトニックアナログブロック同士の間に共鳴素子を入れずに、隣接する前記プログラマブルフォトニックアナログブロック同士を相互接続するように構成される、少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクションと、
を備えることを特徴とする、フォトニックチップ。
【請求項2】
上記少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)は少なくとも2つの光導波路素子を備えることを特徴とする、請求項1に記載のフォトニックチップ。
【請求項3】
上記光導波路素子は両方向に伝播可能であるように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のフォトニックチップ。
【請求項4】
上記光導波路素子は光路を配列に配置するようにプログラム可能であるように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のフォトニックチップ。
【請求項5】
上記少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)は、4つの構成要素の中でそれぞれ位相関係が異なる4つの構成要素を有する、SU(2)で表される、次数2の特殊ユニタリー群のユニタリー2×2回転行列によって記述される、少なくとも2つの入力ポート((a1、b1)、(a2、b2))と、2つの出力ポート((a3、b3)、(a4、b4))とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のフォトニックチップ。
【請求項6】
上記少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロックは、少なくとも1つの入力ポートと2つの出力ポートとの間に、任意の分割比K(0<=K<=1)および共通の位相シフトΔPPABを独立して構成することができることを特徴とする、請求項5に記載のフォトニックチップ。
【請求項7】
上記少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)は、共通値ΔRPIに対する独立かつ調節可能な差動位相シフトφを、以下の送信アレイ:
【数1】

によって、上記少なくとも2つの光導波路素子の2つの光導波路入力フィールドに提供するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のフォトニックチップ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の、少なくとも2つのフォトニックチップを備えるフィールドプログラマブルフォトニックアレイ。
【請求項9】
請求項8において定義された少なくとも2つのフォトニックチップの相互接続のためのプログラム可能でかつ調節可能な結合器を備えるフォトニック集積回路であって、上記少なくとも2つのフォトニックチップは、上記プログラム可能でかつ調節可能な結合器を用いて干渉構造を構成する、フォトニック集積回路。
【請求項10】
上記フィールドプログラマブルフォトニックアレイが、光増幅、光源、電気光学変調、オプトエレクトロニック光検出、光吸収および遅延線アレイ、可視光波長および偏光(逆)多重化、光ルーティング等の基本的な光学的処理タスクを行うように構成された高性能のビルディングブロックに相互接続されることを特徴とする、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【請求項11】
上記フィールドプログラマブルフォトニックアレイが、スペクトル的に循環的な方法またはスペクトル的に非循環的な方法のどちらかで光の波長多重化/逆多重化を行うように構成された高性能のビルディングブロックに相互接続されることを特徴とする、請求項に記載のフォトニック集積回路。
【請求項12】
マッハツェンダ干渉計(MZI)型の非共鳴型干渉計で実装されるプログラマブルフォトニックアナログブロック設計および再構成可能な光インターコネクション設計を特徴とする、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【請求項13】
長さが等しい2つのアームを備えるマッハツェンダ干渉計型の非共鳴型干渉計で実装されるプログラマブルフォトニックアナログブロック設計および再構成可能な光インターコネクション設計を特徴とする、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【請求項14】
二重駆動方向性結合器で実装されるプログラマブルフォトニックアナログブロック設計および再構成可能な光インターコネクション設計を特徴とする、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【請求項15】
任意の多数のポートを備えるプログラマブルフォトニックアナログブロックおよび再構成可能な光インターコネクションを特徴とする、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【請求項16】
位相チューナおよび振幅チューナがMEMS、熱光学効果、電気光学効果、オプトメカニクス効果または電気容量効果に基づく、プログラマブルフォトニックアナログブロックおよび再構成可能な光インターコネクションを特徴とする、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【請求項17】
プログラマブルフォトニックアナログブロックおよび再構成可能な光インターコネクションは均一アレイで分布する導波路のメッシュ配列を定義する、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【請求項18】
プログラマブルフォトニックアナログブロックおよび再構成可能な光インターコネクションは不均一アレイで分布する導波路のメッシュ配列を定義する、請求項9に記載のフォトニック集積回路。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)と、少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)とを組み合わせることによって実現されるフォトニックチップに関する。当該フォトニックチップは、そのリソース(すなわち、PPABおよびRPI)の適切なプログラミングと、その入力ポートならびに出力ポートの選択と、それに組み合わせて任意の高性能な周辺ビルディングブロックとによって、1つまたは同時に多種のフォトニック回路および/または線形マルチポート変換を実装できる。
【0002】
〔背景技術〕
プログラマブル多機能性フォトニクス(PMP)は、適切なプログラミングによって多種多様な機能性を備え得る、統合された光ハードウェアの共通の構成を設計することを目指している。様々な著者が、カスケードビームスプリッタまたはマッハツェンダ干渉計(MZIs)に基づいたプログラマブル回路の種々の構成および設計原理を提案する理論的な研究を取り扱ってきた。これらの提案においては、プログラマブル回路を実施するために多方面の解決策が提示されているが、これらの提案のどれ一つとして、単一の回路、複合回路、または同時に存在する任意の回路さえ実施するようにプログラミングされ得るフォトニックデバイスについての設計上の完全な解決策を明確に述べるものはない。
【0003】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本明細書に記載される本発明の目的は、上で提示した問題を解決すること、かつ、電子フィールドプログラマブルアナログゲートアレイにおけるのと同様に、単一の総合的なハードウェアプラットフォームによって複数の機能性を提供できるようにすることにある。
【0004】
本発明の目的は、プログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)のユニットおよび再構成可能な光インターコネクション(RPI)のユニットを、好ましくはフォトニックチップを介して反復および相互接続することに基づく。PPABは、基本的な任意のアナログ動作(再構成可能な光パワー/エネルギー分割および独立した位相シフト)を実施するための基本的な構成要素を提供する。非常に広い意味では、再構成可能な処理は、プログラマブルロジックブロック(PLB)が電子FPGAでデジタル動作を行うのと同様、あるいは再構成可能なアナログブロック(CBA)が電子フィールドプログラマブルアナログアレイ(FPAA)でアナログ動作を行うのと同様であり、相互接続はRPIによって提供されるPPAB間において再構成可能であると考えられる。このため、かつ、前述のことを考慮すれば、本発明の目的は、1つまたは多種の同時に存在するフォトニック回路および/または線形マルチポート変換を、それらのリソース(すなわち、対応するPPABおよびRPI)を適切にプログラミングすることにより、またそれらの入力ポートおよび出力ポートを選択することにより、可能にすることが分かる。
【0005】
本発明の目的は、一組の請求項に記載されており、参照することにより、本明細書に含まれる。
【0006】
提案された、本発明のフォトニックチップ、フィールドプログラマブルフォトニックアレイ(FPPA)は、フィールドプログラマブルハードウェアアプローチ特有の一連の利益をもたらす。これらは、
・製造時間がより短く、より短い時間で市場へ出せること、
・プロトタイプ開発費用および経常外エンジニアリング費用が低いこと、
・構想を展開する際の、および構想をASPICに変える際の金銭上のリスクが低減されること、
・多機能動作およびマルチタスク動作、
・回路の最適化、
を含む。
【0007】
提案された、本発明のフォトニックチップおよびフィールドプログラマブルフォトニックアレイ(FPPA)は、以下の用途に適している:
・航空宇宙および防衛(航空電子工学、通信、セキュアソリューション、宇宙):
・自動車(高解像度映像、画像処理、車両ネットワーキングおよびコネクティビティ、オートモーティブインフォテインメント)
・データセンタ(サーバ、ルータ、スイッチ、ゲートウェイ)
・高性能計算(サーバ、スーパーコンピュータ、SIGINTシステム、高性能レーダ(RADAR)、高性能ビーム形成システム、量子計算、高速ニューラルネットワーク)
・集積回路設計(ASPICプロトタイピング、ハードウェアエミュレーション)
有線通信および無線通信(光伝送ネットワーク、ネットワーク処理5Gコネクティビティインターフェース、モバイルバックホール)
・ハードウェアアクセラレータ
機械およびディープラーニングアプリケーション。
【0008】
〔図面の簡単な説明〕
成されている説明を補足するため、かつ、本発明の特徴をより理解しやすくする目的で、本発明の好ましい実用的な実施形態に基づき、説明の不可欠な一部として図一式を添える。図一式には、例示的かつ非限定的なかたちで以下のことが示されている。
図1〕提案された本発明のフォトニックチップの概略図例である。拡大図は、左上から右下への伝播方向に関連するプログラマブルフォトニックアナログブロックの詳細を示す。
図2〕本発明のデバイスの、4種類の好ましい2×2PPABブロック、および破線で示された、それらの内部の信号結合レイアウトを示す。
図3〕本発明のデバイスの、ポートにおいて内部および外部の光場を含むA型のPPABブロックを示す。
図4〕フォトニック信号処理において必要とされる非常に基本的な動作を生じさせる、少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)と、少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)の単純なプログラミングの非限定的ないくつかの例を示す。
図5〕2つのアクセスRPI位相シフト素子と、1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)と、左上のポートから右下のポートへの伝播方向用のA型のPPBAとの複合効果を示す図である(左:PPABに先立つPRI。右:PPABに続くPPAB)。
図6〕正方形型の均一なフォトニックチップ設計に関連する第1設計のレイアウトを示す。A型およびB型のPPAB素子は、デバイスのすべての縦列および横列においてインターリーブされており、この設計をABABABと表す。
図7〕第2設計を示す。インターリーブされたA型およびB型のPPABの縦列が、C型のPPABによって形成された縦列とインターリーブされており、この設計をABCCABと表す。
図8〕第3設計の例を示す。インターリーブされたA型およびB型のPPABの縦列が、D型のPPABによって形成された縦列とインターリーブされており、この設計をABDDABと表す。
図9〕左側に、本発明のフォトニックチップの設計/構成フローに関係する主な工程を示しており、右側に、フォトニックチップのソフト層およびハード層、および周辺の高性能ブロックを含む拡大レイアウトを示す。
図10〕輪状の空洞、マッハツェンダ干渉計、および本発明のフォトニックチップのABABAB設計を用いた3x3マルチポート干渉計を同時に実装することを示す。
図11〕輪状の空洞、マッハツェンダ干渉計、および本発明のフォトニックチップのABCCAB設計を用いた3x3マルチポート干渉計を同時に実装することを示す。
図12〕輪状の空洞、マッハツェンダ干渉計、および本発明のフォトニックチップのABDDAB設計を用いた3x3マルチポート干渉計を同時に実装することを示す。
図13〕PPAB素子(上方)、いくつかのフィールドプログラマブルフォトニックアレイ(FPPA)レイアウト(中間)、および他のFPPAの可能な構成(下方)を実装するためのいくつかの技術選択肢を示す。
図14〕波長多重化および逆多重化タスクをもたらす高性能ビルディングブロックによるFPPA実装を示す。基本的な処理ユニットの配列をこのブロックに結合して、異なるチャネルおよび異なる波長で処理ができるようにすることができる。
【0009】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の目的の好ましい実施形態において、デバイスは、図1に示すように提供される。図1に示すのは、少なくとも1つであるが好ましくは多数のプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)と、フォトニックチップ基板上に作成された一連の光導波路素子によって実現される少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)とを備えるフィールドプログラマブルフォトニックアレイ(FPPA)である。また、RPIを構成する導波路素子は、プログラマブル特性を有し、光を両方向に伝播し得る。図1の設計は、どの特定の導波路アレイの構造も想定していないこと、および、図1に示された正方形の設計は例示のみを目的としていることを考慮されたい。PPBAに対して種々の構成が考えられるが、ここでは、非常に基本的な2×2(2つの入力ポート/2つの出力ポートを有するPPBAユニット)を用いた設計を例示する。上記PPABのスキームは、特定の軸配向に対して、かつ、内部の結合路を除いて、図1の正方形に示されている。概括的に、様々な選択肢を以下で検討するが、それらのどれもAから得られ得るものである(例えば、B、C、Dが回転によって得られる特定の例を参照)。Aにおいて、第1入力ポートは縦方向に揃えられ、第2入力ポートは横方向に揃えられ、第1出力ポートは縦方向に揃えられ、第1出力ポートは横方向に揃えられ、従来の回転によってさまざまな選択肢が得られる(BはAを90°回転したもの、CはAを45°回転したもの、DはAを-45°回転したもの)。図2は、考えられる選択肢を示す。PPABは、独立した電力結合関係および調整可能な位相調整(以下で説明)をもたらす機能を有する。
【0010】
PPABの独立した動作は、A型の場合に関する図3に図示されている(他の型についての説明は、同様の論理の筋道に従う)。図3は、入力ポートおよび出力ポート(b1、b2、b3、b4)における光場の表示、また、PPABを囲む入力/出力RPI素子(a1、a2、a3、a4)における外部場の表示を含む、A型のPPBAの設計を示す。
【0011】
PPABは、光導波路入力フィールドと出力光導波路出力フィールドとの間に、共通する調節可能な位相シフトΔPPABおよび調節可能な光パワー分割比K=sinθ(0<=K<=1)を独立して構成可能な2×2フォトニック部品である。2つの伝播方向が考えられ、第1の伝播方向は、左上のポートから右下のポートへの方向であり、以下の2つの送信アレイのいずれかによって特徴付けられる。
【数1】

式中、σo、σ、およびσは、それぞれ、ゼロ、第1パウリ行列、および第2パウリ行列を示す。両方とも、線形関係によって、2つの外部の制御信号(電気信号、機械信号、音響信号)を用いて変更できる。第2の伝播方向は、右下のポートから左上のポートへの方向であり、以下の送信アレイによって特徴付けられる。
【数2】

図4は、光信号の処理に必要な、非常に基本的な動作に導くRPI+PPABの単純なプログラミングのいくつかの例を示す。さらに多くのプログラミングが可能である。
【0012】
動作モードおよび類似したカラーコードは、再度、B型、C型、およびD型のPPABに対して定義され得る。
【0013】
RPI素子が無損失の調節可能な相変化をもたらし、RPI素子をPPAB素子と組み合わせることによって、2×2送信アレイにおいてより高い柔軟性をもたらすと想定される。図5は、左上のポートから右下への伝播方向のA型のPPBA素子に関するこの特徴(類似した手順が、逆の伝播方向およびPPBA型のB型、C型、およびD型に対して確立され得る)を示す。
【0014】
光導波路のRPI素子は、PPABにアクセスする2つの入力導波路および/または出力導波路に、共通値ΔRPIに対して独立かつ調節可能な差動位相シフトφをもたらし得る。例えば、図5の左側の部分を参照する。
【数3】

式中、σは第3パウリ行列を示す。PPAB素子とその先行するRPI素子との複合作用は、少なくとも以下の2つの方法で変換できる。
【数4】

式中、共通の位相因子がΔ=ΔRPI+ΔPPABによって求められる。
【0015】
同様に、PPAB素子とそれに続くRPI素子(図5の右部分に示されている)の複合作用は、以下の式によって求められる。
【数5】
【0016】
適切なプログラミングおよび連続するRPI+PPABおよび/またはPPAB+RPIユニットの連結により、従来の光処理回路をRPIおよびPPABユニットに離散化することによって、FPPAは、複合的な自律および/または並列フォトニック回路ならびに信号処理変換を実装することができる。
【0017】
この概念は、詳細には、図6図7および図8にそれぞれ示されている3つの概括的な設計によって図示される。
【0018】
本発明に係るフィールドプログラマブルフォトニックアレイ(FPPA)は、多種多様な用途のために構成されているユーザ仕様に従って相互接続され得るコミットされていない素子のアレイである。FPPAは、最も基本的な再構成可能なフォトニック集積回路が有するプログラム可能性を、拡張可能な相互接続構造と結び付けたものであり、非常に処理密度が高いプログラマブル回路を可能にする。このように、処理の複雑さは相互接続性に由来する。
【0019】
図9の左部分は、これから説明される設計フロープロセスの主な工程を示す。設計フローの開始点は、実行されるべき初期アプリケーションエントリーである。その後、当該仕様を最適化プロセスによって処理することにより、最終的な回路の面積と性能を向上させる。その後、FPPA処理ブロック(技術マッピング)の互換回路に仕様が変換されることにより、遅延、性能またはブロックの数等の属性が最適化される。
【0020】
技術マッピング位相は、最適化されたネットワークを、限られた回路素子一式(FPPA処理ブロック)で構成される回路に変換する。これは、利用可能な基礎回路素子の1つによってそれぞれ実装され得るネットワークの一部を選択することによって、かつ、これらの素子の相互接続方法を特定することによって行われる。これにより、目標とされる実装に必要な処理ブロックの総数が決まる。
【0021】
その後、配置の決定が続き、各処理ブロックをFPPAの特定の場所に割り当てる。その際、アクセス光路として機能する処理ユニットを選択することにより、グローバルルーティングが行われる。この構造は、FPGAとは対照的に、処理ブロックと相互接続リソースとを物理的には区別しない。元々、処理ブロック構成は、相応して選択され、かつ、性能計算および設計検証が行われる。これは、プログラミングユニットにすべての必要な構成データを与えて最終的なチップを構成すること、またはFPPAの正確なモデルを採用することのどちらかによって物理的に行われ得る。各工程において、前の工程の任意の一つを再構成することを決定し得る最適化プロセスを実行することが可能である。
【0022】
前述の説明から、FPPAは、物理的なハードウェアであるフォトニック層および制御電子層を含むだけでなく、ソフトウェア層で構成されること(図9の上部右参照)が好ましい。
【0023】
概括的な設計フローに含まれる各工程は、FPPAの自律性および機能に応じて、ソフトウェア層、ユーザ、または、ソフトウェア層とユーザとの2つの組合せによって自動的に行われ得る。さらに、各工程のいずれかにおける不具合により、仕様がうまく完遂されるまで反復プロセスが必要となる。さらなる並列最適化プロセス(主に自動)は、物理的デバイスに対し、ロバスト動作、自己回復属性および付加的処理能力を可能にする。
【0024】
現代のFPGA類と同様に、FPPAは、周辺および内部の高性能ブロック(HPB)を有することでその性能を拡張し、より高いレベルの機能をチップに備えることができる。このことは、図9の右下部に概略的に示されている。これらの共通する機能をチップに埋め込むことにより、必要な面積を削減するとともに、初めから機能を構築するのに比べてこれらの機能の性能を増大させる。さらに、それらの機能のいくつかは、離散化されたバージョンの基本的な処理ブロックによっては得ることができない。これらの例として、幾つかの例を挙げれば、高分散素子、螺旋状導波路遅延線、概括的な変調サブシステムおよび光検出サブシステム、光増幅器および光源サブシステム、ならびに高性能フィルタリング構造がある。
【0025】
HPBの特例は、基本処理ユニットの配列と入力/出力波長多重化/逆多重化デバイスとの相互接続であり、どちらか一方は、スペクトル的に循環的であり、もう一方は非循環的であり得る。図14に図示しているように、これは、異なる柔軟度をもたらし、これにより、多波長の処理が可能になる。ここで、当該システムは種々の周波数チャネル/周波数モードと同様に、種々の空間チャネル/空間モードの処理も可能にすることがわかる。
【0026】
〔動作例〕
図10図11および図12は、種々の種類のFPPAが、種々のフォトニック回路をエミュレートしかつ実装するようプログラムされているいくつかの例を提供している。いずれの場合にも、図は、先に定義したコードおよび実装される回路のレイアウトに従った、着色されたPPBAを備えるFFPAのレイアウトを含む。
【0027】
〔物理的実装〕
FPPAデバイスの物理的実装は、シリコンフォトニクスプラットフォーム、または、III-Vとシリコンとの混成/異種フォトニクスプラットフォームに基づく統合された光学アプローチを必要とする。図13は、利用可能な物理的選択肢についての情報を提供している。
【0028】
PPAB素子に関しては、現在利用可能な光学技術の選択肢が図13の上部に記載されている。ABABAB、ABCCABおよびABDDABのFPPAのレイアウトの実装に関しては、図13の中間部分が、基本的な複製ブロックを示す。これらの複製ブロックは、正方形、六角形および三角形の導波路メッシュのユニットブロックに相当するため、これらの複製ブロックは実装するのに自然かつ小サイズの選択肢である。最後に、前述したように、より複雑なFPPAのレイアウトを、提案した種類のPPBAをインターリーブすることによって設計できる。そのいくつかの例が、図13の下部に示されている。
態様1.
フォトニックチップであって、好ましくは、
a)少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)と、
b)少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)と、
をフォトニックチップを介して実装することを特徴とする、フォトニックチップ。
態様2.
上記再構成可能な光インターコネクション(RPI)は少なくとも2つの光導波路素子を備えることを特徴とする、態様1に記載のフォトニックチップ。
態様3.
上記光導波路素子は両方向に伝播可能であるように構成されることを特徴とする、態様2に記載のフォトニックチップ。
態様4.
上記光導波路素子は上記光路を上記配列に配置するようにプログラム可能であるように構成されることを特徴とする、態様2に記載のフォトニックチップ。
態様5.
上記プログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)は、4つの構成要素の中でそれぞれ位相関係が異なる特殊ユニタリー群2SU(2)のユニタリー2×2回転行列によって記述される、少なくとも2つの入力ポート((a1、b1)、(a2、b2))と、2つの出力ポート((a3、b3)、(a4、b4))とを備えることを特徴とする、態様1に記載のフォトニックチップ。
態様6.
フォトニックチップは、少なくとも1つの入力ポートと2つの出力ポートとの間に、任意の分割比K(0<=K<=1)および共通の位相シフトΔ PPAB を配置するようにプログラムされることを特徴とする、態様5に記載のフォトニックチップ。
態様7.
上記少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)は、共通値Δ RPI に対する独立しかつ調節可能な差動位相シフトφを、以下の送信アレイ:
【数2】

によって、2つの光導波路入力フィールドに提供するように構成されることを特徴とする、態様2に記載のフォトニックチップ。
態様8.
上記少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)および上記少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)は、フォトニックチップ基板上に作成された一連の光導波路素子によって実装されるように構成されることを特徴とする、態様1に記載のフォトニックチップ。
態様9.
態様1から8のいずれか1項に記載の、少なくとも2つのフォトニック素子を備えるフィールドプログラマブルフォトニックアレイ。
態様10.
態様9において定義された少なくとも2つのプログラマブルフォトニック素子の相互接続のためのプログラム可能でかつ調節可能な結合器を備えるフォトニック集積回路であって、上記少なくとも2つのプログラマブルフォトニック素子は、上記プログラム可能でかつ調節可能な結合器を基本素子として用いて干渉構造を構成する、フォトニック集積回路。
態様11.
上記プログラム可能でかつ調節可能な結合器は、さらなる位相構成を基本素子として有する上記調節可能な結合器を用いて、光キャビティならびにフィードフォワードおよびフィードバック干渉構造の構成を可能にするように相互接続可能である、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様12.
光増幅、光源、電気光学変調、オプトエレクトロニック光検出、光吸収および遅延線アレイ、可視光波長および偏光(逆)多重化、光ルーティング等の基本的な光学的処理タスクを行うように構成された高性能のビルディングブロックに相互接続されることを特徴とする、態様11に記載のフォトニック集積回路。
態様13.
スペクトル的に循環的な方法またはスペクトル的に非循環的な方法のどちらかで光の波長多重化/逆多重化を行うように構成された高性能のビルディングブロックに相互接続されることを特徴とする、態様11に記載のフォトニック集積回路。
態様14.
マッハツェンダ干渉計(MZI)型の非共鳴型干渉計で実装されるPPAB設計およびRPI設計を特徴とする、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様15.
長さが等しい2つのアームを備えるマッハツェンダ干渉計型の非共鳴型干渉計で実装されるPPAB設計およびRPI設計を特徴とする、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様16.
共鳴型干渉計で実装されるPPAB設計およびRPI設計を特徴とする、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様17.
二重駆動方向性結合器で実装されるPPAB設計およびRPI設計を特徴とする、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様18.
任意の多数のポートを備えるPPABおよびRPIを特徴とする、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様19.
上記位相チューナおよび振幅チューナは、MEMS、熱光学効果、電気光学効果、オプトメカニクス効果または電気容量効果に基づくことを特徴とする、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様20.
PPABおよびRPIの上記導波路のメッシュ配列は一様位相で分布する、態様10に記載のフォトニック集積回路。
態様21.
PPABおよびRPIの上記導波路のメッシュ配列は非一様位相で分布する、態様10に記載のフォトニック集積回路。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】提案された本発明のフォトニックチップの概略図例である。拡大図は、左上から右下への伝播方向に関連するプログラマブルフォトニックアナログブロックの詳細を示す。
図2】本発明のデバイスの、4種類の好ましい2×2PPABブロック、および破線で示された、それらの内部の信号結合レイアウトを示す。
図3】本発明のデバイスの、ポートにおいて内部および外部の光場を含むA型のPPABブロックを示す。
図4】フォトニック信号処理において必要とされる非常に基本的な動作を生じさせる、少なくとも1つのプログラマブルフォトニックアナログブロック(PPAB)と、少なくとも1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)の単純なプログラミングの非限定的ないくつかの例を示す。
図5】2つのアクセスRPI位相シフト素子と、1つの再構成可能な光インターコネクション(RPI)と、左上のポートから右下のポートへの伝播方向用のA型のPPBAとの複合効果を示す図である(左:PPABに先立つPRI。右:PPABに続くPPAB)。
図6】正方形型の均一なフォトニックチップ設計に関連する第1設計のレイアウトを示す。A型およびB型のPPAB素子は、デバイスのすべての縦列および横列においてインターリーブされており、この設計をABABABと表す。
図7】第2設計を示す。インターリーブされたA型およびB型のPPABの縦列が、C型のPPABによって形成された縦列とインターリーブされており、この設計をABCCABと表す。
図8】第3設計の例を示す。インターリーブされたA型およびB型のPPABの縦列が、D型のPPABによって形成された縦列とインターリーブされており、この設計をABDDABと表す。
図9】左側に、本発明のフォトニックチップの設計/構成フローに関係する主な工程を示しており、右側に、フォトニックチップのソフト層およびハード層、および周辺の高性能ブロックを含む拡大レイアウトを示す。
図10】輪状の空洞、マッハツェンダ干渉計、および本発明のフォトニックチップのABABAB設計を用いた3x3マルチポート干渉計を同時に実装することを示す。
図11】輪状の空洞、マッハツェンダ干渉計、および本発明のフォトニックチップのABCCAB設計を用いた3x3マルチポート干渉計を同時に実装することを示す。
図12】輪状の空洞、マッハツェンダ干渉計、および本発明のフォトニックチップのABDDAB設計を用いた3x3マルチポート干渉計を同時に実装することを示す。
図13】PPAB素子(上方)、いくつかのフィールドプログラマブルフォトニックアレイ(FPPA)レイアウト(中間)、および他のFPPAの可能な構成(下方)を実装するためのいくつかの技術選択肢を示す。
図14】波長多重化および逆多重化タスクをもたらす高性能ビルディングブロックによるFPPA実装を示す。基本的な処理ユニットの配列をこのブロックに結合して、異なるチャネルおよび異なる波長で処理ができるようにすることができる。
図1
図2
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